JP2005500058A - シアリル化したオリゴサッカリドの化学的酵素的合成 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
本発明は、1個以上のシアル基を含むオリゴサッカリドを調製するための方法の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
ガングリオシドは、セラミドに連結する炭水化物部分を含む構造を有するグリコスフィンゴリピドの1つのクラスである。この炭化水素部分は、少なくとも1つのモノサッカリドおよびシアル酸部分を含む。このシアル酸部分は、1以上のシアル酸基(N−アセチルノイラミン酸またはN−グリコールノイラミン酸)から構成される。
【0003】
ガングリオシドは、その糖部分内のモノサッカリドの数およびその構造中に存在するシアル酸基の数に従って分類される。ガングリオシドは、シアル酸残基の数に依存して、モノ−シアロガングリオシド、ジ−シアロガングリオシド、トリ−シアロガングリオシド、またはポリ−シアロガングリオシドとして知られている。これらの分子を識別するために使用される略記号としては、「GM1」、「GD3」、「GT1」などが挙げられ、この「G」は、ガングリオシドを意味し、そして、「M」、「D」、「T」などは、シアル酸残基の数をいい、そしてこの数字またはこの数字に文字を加えたもの(例えば、「GT1a」)は、この分子について観察されたTLCアッセイにおける溶出の順序を示している。Lehninger,Biochemistry,pg.294〜296(Worth Publishers,1981);Wiegandt,Glycolipidら:New Comprehensive Biochemistry(Neubergerら編,Elsevier,1985),199〜260頁を参照のこと。
【0004】
例えば、国際記号GM1aは、広範に研究されたより一般的なガングリオシドのうちの1つを示す。この記号における「M」は、このガングリオシドがモノシアロガングリオシドであり、そして「1」はTLC溶出プロファイルにおけるその位置を規定する。添え字の「a」、「b」、または「c」もまた、特定のガングリオシドのTLCアッセイにおける位置を示す。この末端のサッカリドは、炭水化物部分の末端に位置しており、そしてセラミド部分に結合する末端の反対側にあるサッカリドである。
【0005】
多くのグリコスフィンゴリピド(GSL)は、グロコシルセラミド(GlcCer)に由来し、これは、セラミドおよびUDP−グルコースから酵素的に形成される。GlcCer形成に関与する酵素は、UDPグルコース:N−アシルスフィンゴシングルコシルトランスフェラーゼ(GlcCer合成酵素)である。生理条件下のGLcCer形成の速度は、UDP−グルコースの組織レベルに依存し得、順次、特定の組織におけるグルコースのレベルに依存している(Zador,I.Z.ら,J.Clin.Invest.91:797〜803(1993))。内在性セラミドに基づくインビトロアッセイは、付加されたセラミドを含む混合物より低い合成速度を生じ、このことは、セラミドの組織レベルがまた、通常は速度限定的であることを示唆している(Brenkert,A.らBrain Res.36:183〜193(1972))。
【0006】
GSLのレベルによって、種々の細胞機能(例えば、増殖、分化、細胞間接着または細胞−マトリクスタンパク質の間の接着、細胞に対する微生物およびウイルスの結合、ならびに腫瘍細胞の転移)が制御される。さらに、このGlcCer前駆体、セラミドは、細胞増殖の分化または阻害を引き起こし得(Bielawska,A.ら、FEBS Letters 307:211〜214(1992))、そして、ビタミンD3の機能化、腫瘍壊死因子α、インターロイキン、およびアポトーシス(プログラム化された細胞死)に関与する。これらのスフィンゴール(sphingol)(スフィンゴシン塩基)、セラミドの前駆体、およびセラミドの異化の産物はまた、プロテインキナーゼインヒビターC(PKC)を阻害することによって多くの細胞に系に影響を与えることが示されている。
【0007】
ガングリオシドは、神経系において機能的において機能的に重要であることが知られており、そして、ガングリオシドは末梢神経系の障害において治療において有用であることが主張されている。多くのガングリオシドおよびそれらの誘導体は、パーキンソン病(ガングリオシドGM1は、現在、パーキンソン病の処置のために第II期の臨床進行において使用されている(FIDIA,イタリア))および大脳虚血性脳卒中(米国特許第4,940,694号;同第4,937,232号および同第4,716,223号)を含む広範な種々の神経系障害の治療において有用である。ガングリオシドは、食細胞の活性に影響を及ぼすため(米国特許第4,831,021号)、そして、胃腸疾患を生じる生物体(米国特許第4,762,822号)を処置するために使用され得る。これらのガングリオシドGM2およびGD2(これらは、動物の脳から精製される)は、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に結合体化して、そして、アジュバントQS21と混合され、そして、第II期および第III期の試験における癌ワクチンの基礎としてこれらのガングリオシドに対する免疫応答を誘起するのに使用される(Progenics,Tarrytown,NY)。ガングリオシドGM3は、抗がん剤としての用途のために調べられている(WO 98/52577;Noleら,Exp.Neurology 168:300−9(2001)))。グリコリピドはまた、炎症性腸疾患の処置において有益である。Tubaroら,Naunyx−Schmiedebergg’s Arch.Pharmacol.348:670−678(1993)を参照のこと。
【0008】
ガングリオシドは、組織(特に動物の脳)から精製されることによって一般的には単離される(GLYCOLIPID METHODOLOGY,Lloyd A.Witting編,American Oil Chemists Society,Champaign,III.187−214(1976);米国特許第5,844,104号;同第5,532,141号;Sonninoら.,J.Lipid Res.33:1221−1226(1992);Sonninoら,Ind.J.Biochem.Biophys.,25:144−149(1988);Svennerholm,Adv.Exp.Med.Biol.125:533−44(1980))。ガングリオシドは、ウシバターミルクから単離される(Renら,J.Bio.Chem.267:12632−12638(1992);Takamizawaら,J.Bio.Chem.261:5625−5630(1986))。最適な条件下においてさえ、純粋な ガングリオシド(例えば、GM2およびGM3)の収量は、限りなく少ない。さらに、哺乳動物組織からの精製は、それとともに、夾雑物(例えば、ウイルス、プリオン粒子など)を伝達する危険性を保持する。したがって、ガングリオシド特異的抗体を確保するための代替的な方法が非常に望まれる。
【0009】
ガングリオシドの重要性のために、高収量で純粋なガングリオシドを合成すウル方法を開発するのための努力が拡大している。ガングリオシドを化学合成する方法は、Hasegawaら,J.Carbohydrate Chemistry,11(6):699−714(1992)およびSugimoto et al.,Carbohydrate Research,156:C1−C5(1986)に記載されている。米国特許第4,918,170号は、GM3およびGM4の合成を開示している。Schmidtらは、GM3の化学合成を記載している(米国特許第5,977,329号)。これらの参考文献は、困難な保護−活性化−カップリング−脱保護のストラテジーを使用する多段階合成手順(一般的に抽出とカラムクロマトグラフィーを併用することによってこれらの各工程において中間体が精製される)を記載する。さらに、これらの合成方法のいずれも、ガングリオシドの大規模調製にとって適切ではない。
【0010】
炭化水素の化学合成に関連する困難性の観点において、糖タンパク質の炭水化物部分を合成するための酵素の使用は、糖タンパク質を調製することに対する有望なアプローチである。酵素に基づく合成は、レジオ選択性および立体選択性の利点を有する。さらに、酵素的合成は、未保護の基質を使用して実施され得る。3つの主要なクラスの酵素が、炭水化物の合成において使用される(グリコシルトランスフェラーゼ(例えば、シアリルトランスフェラーゼ、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ)、グリコアミニダーゼ(例えば、PNGase F)およびグリコシダーゼ)。このグリコシダーゼは、以下のようにさらに分類される:エキソグリコシダーゼ(例えば、β−マンノシダーゼ、β−グルコシダーゼ)、およびエンドグリコシダーゼ(例えば、Endo−A、Endo−M)。酵素の3つのクラスの各々は、好適に使用され、炭水化物を調製する。一般的な概説のために、Croutら,Curr.Opin.Chem.Biol.2:98−111(1998)およびArsequell(前出)を参照のこと。
【0011】
グリコシルトランスフェラーゼは、オリゴサッカリドを調製するために使用され、そして、十分な立体選択的制御およびレジオ選択的制御を行って特定の生成物を精製するたのに非常に有効であることが示されている。例えば、βl,4−ガラクトシルトランスフェラーゼを使用してラクトサミンを合成して、炭水化物の合成におけるグリコシルトランスフェラーゼの有用性を例示した(例えば、Wongら,J.Org.Chem.47:5416−5418(1982)を参照のこと)。さらに、多くの合成手順が、シアリルトラスフェラーゼを利用してシチジン−5’モノホスホ−N−アセチルノイラミン酸からガラクトースの3−OHまたは6−OHへとシアル酸を転移させている(例えば、Kevinら,Chem.Eur.J.2:1359−1362(1996)を参照のこと)。治療用途について複合糖質(糖結合体)合成の最近の進歩の議論については、Koellerら,Nature Biotechnology 18:835−841(2000)を参照のこと。
【0012】
グリコシダーゼは、通常は、グリコシド結合の加水分解を触媒するが、適切な条件下では、グリコシダーゼはグリコシド結合を形成するために使用され得る。炭水化物合成に使用されるほとんどのグリコシダーゼは、エキソグリコシダーゼであり;グリコシルの転移はその基質の非還元末端で生じる。このグリコシダーゼは、グリコシル酵素(glycosylenzyme)中間体においてグリコシルドナーを取り上げ、これ水により切り取られて加水分解生成物を与えるかまたはアクセプターにより切り取られて新規のグリコシドまたはオリゴサッカリドを与える。
【0013】
エキソグリコシドを使用する例示的な経路は、全てのN結合糖タンパク質のコアトリサッカリド(よく知られた困難なβ−マンノシダーゼ結合(これは、β−マンノシダーゼの作用によって形成された)を含む)の合成である(Singhら,Chem.Commun.993−994(1996))。
【0014】
これらの使用は、エキソグリコシダーゼの使用よりも一般的ではないが、エンドグリコシダーゼもまた、炭水化物の調製のために使用される。エンドグリコシダーゼの使用に基づく方法は、(モノサッカリドよりも)オリゴサッカリドが転移されるという利点を有している。オリゴサッカリドフラグメントを、エンド−β−N−アセチルグルコサミン(例えば、endo−F,endo−M)を使用して基質に付加した(Wangら,Tetrahedron Lett.37:1975−1978);およびHanedaら,Carbohydr.Res.292:61−70(1996))。
【0015】
化学的合成エレメントと酵素的合成エレメントの両方を合わせる方法もまた、知られている。例えば、Yamamotoおよび共同研究者ら(Carbohydr.Res.305:415−422(1998))は、基質であるグリコシル化ペプチドTをエンドグリコシダーゼを使用して化学酵素的に合成することを報告した。このN−アセチルグルコサミニルペプチドは、純粋な化学的手段によって合成された。その後、このペプチドは、ヒトトランスフェリン基質のオリゴサッカリドで酵素的に産生された。このサッカリド部分は、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼでこのペプチドを処理することによってこのペプチドに付加された。得られたグリコシル化ペプチドは、非常に安定であって、そしてペプチドTおよびN−アセチルグルコサミニルペプチドTと比較した場合のタンパク質分解に対して耐性があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記のような酵素的合成法の多くの利点にもかかわらず、いくつかの場合において、欠陥が依然として残っている。多くの市販されている重要な組換え的に産生され、またはトランスジェニック的産生された基質の生物学的活性は、特定のグリコフォームの存在、または特定のグリコフォームの非存在に依存するので、インビトロ手順において(特に、セラミド、スフィンゴシン、およびそれらのアナログのような基質における)グリコシル化パターンを酵素的に改変する必要性が存在する。本発明は、これらの必要性および他の必要性を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(発明の要旨)
酵素的合成プロトコルを使用して、ガングリオシドおよびガングリオシドアナログが注目すべき収量、高い純度およびすばらしい立体化学的特異性で容易に合成されることを、ここで、発見した。従って、グリコシル化した種を調製する改善された方法についての必要性に応答して、本発明は、グリコシル基と選択された基質との間の結合体の酵素媒介性形成のための方法を提供する。
【0018】
第1の局面では、本発明は、以下の式Iに従う種をグリコシル化する方法を提供する:
(サッカリド)q−X (I)。
【0019】
この方法は、適切なドナーの存在下で、(サッカリド)s−Xを、トランスシアリダーゼまたはグリコシルトランスフェラーゼと接触して、(サッカリド)s+1−Xを得る工程を包含する。第1の反応の生成物を、必要に応じて、適切なドナーの存在下で、トランスシアリダーゼまたはグリコシルトランスフェラーゼと接触して、(サッカリド)s+2−Xを得る。第2の生成物を、必要に応じて、適切なドナーの存在下で、トランスシアリダーゼまたはグリコシルトランスフェラーゼと接触して、(サッカリド)s+3−Xを得る。所望のサッカリド構造が構築されるまで、このプロセスを続ける。上に提供される構造において、sは、0〜30の整数である。記号qは、2〜約30の整数を表す。本発明のプロセスは、トランスシアリダーゼにより媒介される少なくとも1つのシアリル化、および1つ以上のグリコシルトランスフェラーゼの作用により媒介される2つのグリコシル化を含むことが一般的に好ましい。この方法はまた、好ましくは、反応混合物への細胞成分の非存在下で実施され、そして好ましくは、全体がインビトロで行われる。
【0020】
別の局面では、本発明は、セラミド、スフィンゴシン、およびそれらのアナログをグリコシル化するための方法を提供する。
【0021】
なおさらなる局面では、本発明は、スフィンゴシン骨格のアルキル鎖が2以上の程度の不飽和を含む、セラミドおよびスフィンゴシンの誘導体を提供する。本発明のセラミドおよびスフィンゴシンの誘導体を含む薬学的組成物もまた提供される。
【0022】
本発明のさらなる目的および利点は、以下の詳細な説明から明らかである。
【0023】
(発明の詳細な説明および好ましい実施形態)
(略語)
サッカリド部分の略語は、サッカリドの置換アナログおよび非置換アナログの両方をいう。従って、アラビノシル;Fru、フラクトシル;Fuc、フコシル;Gal、ガラクトシル;GalNAc、N−アセチルガラクトシル;Glc、グルコシル;GlcNAc、N−アセチルグルコシル;Man、マンノシル;ManAc、マンノシルアセテート;Xyl、キシロシル;ならびにSiaおよびNeuAc、シアリル(N−アセチルノイラミニル)。これらの略語は、非修飾サッカリル部分、およびその置換アナログまたは他のアナログの両方を含むことを意図する。
【0024】
(定義)
他で定義されない限り、本明細書中で用いられる全ての技術用語および科学用語は、一般的に、本発明が属する当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に、本明細書中で用いられる命名法および分子生物学、有機化学、および核酸化学における実験手順、ならびに以下に記載されるハイブリダイゼーションは、当該分野で周知かつ一般的に用いられるものである。標準的な技術は、核酸合成およびペプチド合成のために用いられる。一般的に、酵素反応および精製工程は、製造業者の指示書に従って実施される。これらの技術および手順は、一般的に、当該分野で慣習的な方法、および本明細書を通じて提供される、種々の一般的参考文献(一般的に、Sambrookら、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL、第2版(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(これは、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)に従って行われる。本明細書中で用いられる命名法、ならびに以下に記載される分析化学および有機化学の実験手順は、当該分野で公知かつ用いられているものである。標準的な技術、またはその改変が、化学合成および化学分析について用いられる。
【0025】
本明細書中で用いられる場合、「分析物」は、診断試験が行われる、目的の任意の化合物または分子(例えば、生体高分子または低分子生理活性物質)を意味する。分析物は、例えば、タンパク質、ペプチド、糖質、ポリサッカリド、糖タンパク質、ホルモン、レセプター、抗原、抗体、ウイルス、基質、代謝物、遷移状態アナログ、補因子、インヒビター、薬物、色素、栄養素、成長因子などであり得るが、これらに制限されない。
【0026】
「ペプチド」は、モノマーがアミノ酸であり、そしてアミド結合を介して互いに連結されるポリマーをいう(あるいは、ポリペプチドといわれる)。アミノ酸がα−アミノ酸である場合、L−光学異性体またはD−光学異性体が用いられ得る。さらに、非天然のアミノ酸(例えば、β−アラニン)、フェニルグリシンおよびホモアルギニンもまた含まれる。遺伝子コードされないアミノ酸もまた、本発明に用いられる。さらに、反応性基を含むように改変されたアミノ酸もまた、本発明において用いられ得る。本発明に用いられるアミノ酸の全ては、D−異性体またはL−異性体のいずれかであり得る。L−異性体が、一般的に好ましい。さらに、他のペプチド模倣物もまた、本発明において有用である。一般的な総説については、Spatola,A.F.,CHEMISTRY AND BIOCHEMISTRY OF AMINO ACIDS,PEPTIDE AND PROTEINS,B.Weinstein編、Marcel Dekker,New York,p267(1983)を参照のこと。
【0027】
用語「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸に類似した様式で機能する、アミノ酸アナログおよびアミノ酸模倣物をいう。天然に存在するアミノ酸は、遺伝子コードによりコードされるアミノ酸、および後で修飾されるアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメート、およびO−ホスホセリン)である。アミノ酸アナログは、天然に存在するアミノ酸と基本的な化学構造(すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合しされるα−炭素)が同じである化合物(例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム)をいう。このようなアナログは、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と基本的な化学構造が同じなままである。アミノ酸模倣物は、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸に類似する様式で機能する、化学化合物をいう。
【0028】
本明細書中で用いられる場合、「核酸」は、DNA、RNA、一本鎖、二本鎖、またはより高度に凝集したハイブリダイゼーションモチーフ、およびその任意の化学修飾物を意味する。修飾としては、核酸リガンド塩基または核酸リガンド全体に対して、さらなる電荷、分極率、水素結合、静電的相互作用、および流動性を組み込む化学基を提供するものが挙げられるが、これらに限定されない。このような修飾としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ペプチド核酸、ホスホジエステル基修飾(例えば、ホスホロチオエート、メチルホスホネート)、2’−位糖修飾、5−位ピリミジン修飾、8位プリン修飾、環外アミンでの修飾、4−チオウリジンの置換、5−ブロモ−ウラシルまたは5−ヨード−ウラシルの修飾;骨格修飾、メチル化、異常な塩基対の組み合わせ(例えば、イソ塩基、イソシチジンおよびイソグアニンなど)。修飾としてはまた、3’修飾および5’修飾(例えば、PL、フルオロフォア、または別の部分でのキャッピング)が挙げられる。
【0029】
本明細書中で用いられる場合、「反応性官能基」は、以下を含むが、これらに限定されない基をいう:オレフィン、アセチレン、アルコール、フェノール、エーテル、オキシド、塩化物、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステル、アミド、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、アミン、ヒドラジン、ヒドラゾン、ヒドラジド、ジアゾ、ジアゾニウム、ニトロ、ニトリル、メルカプタン、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホン酸、スルフィン酸、アセタール、ケタール、無水物、スルフェート、スルフェン酸イソニトリル、アミジン、イミド、イミデート、ニトロン、ヒドロキシルアミン、オキシム、ヒドロキサム酸、チオヒドロキサム酸、アレン、オルトエステル、亜硫酸、エナミン、イナミン(ynamine)、尿素、プソイドウレア、セミカルバジド、カルボジイミド、カルバメート、イミン、アジド、アゾ化合物、アゾキシ化合物、およびニトロソ化合物。反応性官能基としてはまた、生物結合体(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、マレイミドなど)を調製するために用いられるものが挙げられる。これらの官能基の各々を調製するための方法は、当該分野で周知であり、そして特定の目的に対するそれらの適用または改変は、当業者の能力の範囲内である(例えば、SandlerおよびKaro編、ORGANIC FUNCTIONAL GROUP PREPARATIONS,Academic Press,San Diego,1989を参照のこと)。
【0030】
グリコシルトランスフェラーゼについての「アクセプター部分」は、特定のグリコシルトランスフェラーゼについてのアクセプターとして作用し得るオリゴサッカリド構造である。アクセプター部分が、対応するグリコシルトランスフェラーゼおよび糖ドナー部分、ならびに他の必要な反応混合物成分と接触され、そして反応混合物が、十分な時間の間インキュベートされる場合、グリコシルトランスフェラーゼは、糖ドナー部分から、アクセプター部分へと糖残基を移す。このアクセプター部分は、頻繁に、異なる型の特定のグリコシルトランスフェラーゼについて変化する。例えば、哺乳動物のガラクトシド2−L−フコシルトランスフェラーゼ(α1,2−フコシルトランスフェラーゼ)に対するアクセプター部分としては、オリゴサッカリドの非還元末端のGalβ1,4−GlcNAc−Rが挙げられ;このフコシルトランスフェラーゼは、フコース残基を、α1,2連結を介してGalに結合する。末端のGalβ1,4−GlcNAc−RおよびGalβ1,3−GlcNac−Rは、それぞれ、α1,3−フコシルトランスフェラーゼおよびα1,4−フコシルトランスフェラーゼについてのアクセプター部分である。しかし、これらに酵素は、フコースを、アクセプターのGlcNAc残基に結合する。従って、用語「アクセプター部分」は、特定の適用についての目的の特定のグリコシルトランスフェラーゼに関して用いられる。さらなるフコシルトランスフェラーゼおよび他のグリコシルトランスフェラーゼについてのアクセプター部分は、本明細書中に記載される。
【0031】
用語「シアル酸」は、9個の炭素のカルボキシル化糖のファミリーの任意のメンバーをいう。リンカー、反応性官能基、検出可能な標識および標的化部分で誘導体化されたアナログもまた含まれる。シアル酸ファミリーの最も一般的なメンバーは、N−アセチル−ノイラミン酸(2−ケト−5−アセトアミド−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクトノヌロピラノース(galactononulopyranos)−1−オン酸(頻繁に、Neu5Ac、NeuAc、またはNANAと略される))である。このファミリーの第2のメンバーは、N−グリコリル−ノイラミン酸(Neu5GcまたはNeuGc)であり、ここで、NeuAcのN−アセチル基は、ヒドロキシル化される。第3のシアル酸ファミリーのメンバーは、2−ケト−3−デオキシ−ノヌロソン酸(KDN)(Nadanoら(1986)J.Biol.Chem.261:11550−11557;Kanamoriら、J.Biol.Chem.265:21811−21819(1990))である。9置換シアル酸(例えば、9−O−C1−C6アシル−Neu5Ac様の9−O−ラクチル−Neu5Acまたは9−O−アセチル−Neu5Ac、9−デオキシ−9−フルオロ−Neu5Acおよび9−アジド−9−デオキシ−Neu5Ac)もまた含まれる。シアル酸ファミリーの総説については、例えば、Varki,Glycobiology 2:25−40(1992);Sialic Acids:Chemistry,Metabolism and Function,R.Schauer編(Springer−Verlag,New York(1992))を参照のこと。シアリル化手順におけるシアル酸化合物の合成および使用は、国際出願公開WO92/16640(1992年10月1日公開)に開示される。
【0032】
用語「組換え」は、細胞に関して用いられる場合、細胞が、異種核酸を複製するか、または異種核酸によりコードされるペプチドもしくはタンパク質を発現することを示す。組換え細胞は、ネイティブ(非組換え)形態の細胞の中で見出されない遺伝子を含み得る。組換え細胞はまた、ネイティブ形態の細胞において見出される遺伝子を含み得、ここで、遺伝子は、改変され、そして人工的手段により細胞へと再導入される。この用語はまた、細胞から核酸を除去することなく改変されている細胞に対して内因性の核酸を含む細胞を包含し;このような改変としては、遺伝子置換、部位特異的変異誘発、および関連する技術によりえられるものが挙げられる。「組換えポリペプチド」は、組換え細胞により産生されているものである。
【0033】
用語「単離された」は、ある物質を生成するために用いられる成分を実質的にまたは本質的に含まない物質をいう。本発明の方法により生成される組成物について、用語「単離された」は、通常、組成物を調製するために用いられる混合物中にある物質を伴う成分を実質的にまたは本質的に含まない物質をいう。「単離された」および「純粋」は、交換可能に用いられる。代表的には、本発明の方法により生成される単離された化合物は、好ましくは、ある範囲で表される、純度のレベルを有する。ペプチド化合物についての純度の範囲の下端は、約60%、約70%、または約80%であり、そして純度の範囲の上端は、約70%、約90%、または約90%よりも高い。
【0034】
本発明の方法により生成された化合物が、約90%よりも高い純度である場合、これらの純度はまた、好ましくは、ある範囲で表される。純度の範囲の下端は、約90%、約92%、約94%、約96%、または約98%である。純度の範囲の上端は、約92%、約94%、約96%、約98%、または約100%の純度である。
【0035】
純度は、当該分野で認識された任意の分析方法(例えば、銀染色ゲル、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、HPLC、または類似の手段におけるバンド強度)により決定される。
【0036】
本明細書中で用いられる場合、「本質的に、集団の各メンバー」とは、前駆体基質に添加された選択したパーセンテージのグリコシルドナーが、基質の集団の個々のメンバーに対して同一のアクセプター部位に添加される、本発明の方法により生成される化合物の集団の特徴を記載する。「本質的に、集団の各メンバー」は、グリコシルドナーに結合体化される基質に対する部位の「均一性」をいい、そして本発明の化合物をいい、これらは、少なくとも約80%、好ましくは、少なくとも約90%、およびさらに好ましくは、少なくとも約95%の均一性である。
【0037】
「均一性」は、グリコシルドナーが結合体化される、アクセプター部分の集団にわたる構造的一貫性をいう。従って、グリコシル化反応の終りに、反応の間に移動された各グリコシルドナーが、同じ構造を有するアクセプター部位に結合体化される場合、この組成物は、約100%の均一性であるといわれる。均一性は、代表的には、ある範囲で表される。ペプチド結合体についての均一性の範囲の下端は、約60%、約70%、または約80%であり、そして純度の範囲の上端は、約70%、約80%、約90%、または約90%よりも高い。
【0038】
本発明の方法により調製される組成物が、約90%よりも高いかまたは約90%に等しい均一性であり、これらの均一性はまた、好ましくは、ある範囲で表される。均一性の範囲の下端は、約90%、約92%、約94%、約96%、または約98%である。純度の上端は、約92%、約94%、約96%、約98%、または約100%の均一性である。ペプチド結合体の純度は、代表的には、当業者に公知の1つ以上の方法(例えば、液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)、マトリクス支援レーザー脱離飛行時間型質量分析(MALDITOF)、キャピラリー電気泳動など)により決定される。
【0039】
「実質的に、均一な糖形態」または「実質的に均一なグリコシル化パターン」は、本発明の方法により調製された組成物を言及する場合、目的のトランスシアリダーゼまたはグリコシルトランスフェラーゼ(例えば、フコシルトランスフェラーゼ)によりグリコシル化されるアクセプター部分のパーセンテージをいう。例えば、α1,2フコシルトランスフェラーゼの場合、実質的に全て(以下に定義される)のGalβ1,4−GlcNAc−Rおよびそのシアリル化アナログが、本発明の方法により調製される組成物においてフコシル化される場合に、実質的に均一なフコシル化パターンが存在する。出発物質が、グリコシル化アクセプター部分(例えば、フコシル化Galβ1,4−GlcNAc−R部分)を含みうることが当業者に理解される。従って、計算されたパーセントのグリコシル化は、本発明の方法によりグリコシル化されるアクセプター部分、および出発物質中の既にグリコシル化されたアクセプター部分を含む。
【0040】
「実質的に均一」の上記定義における「実質的に」は、一般的に、少なくとも約40%、少なくとも70%、少なくとも80%、またはより好ましくは、少なくとも約90%を意味し、そしてさらにより好ましくは、特定のグリコシルトランスフェラーゼについて、少なくとも約95%以上のアクセプター部分がグリコシル化される。
【0041】
オリゴサッカリドは、還元末端のサッカリドが、実際に、還元糖であるか否かに関わらず、還元末端および非還元末端を有すると考えられる。受け入れられている命名法に従って、オリゴサッカリドは、左に非還元末端および右に還元末端を有して、本明細書中で示される。
【0042】
本明細書中に記載される全てのオリゴサッカリドは、非還元サッカリド(すなわち、Gal)についての名前または略語、次いで、グリコシド結合(αまたはβ)の立体配置、環結合(1または2)、この結合に関与する還元サッカリドの環の位置(2、3,4、6または8)、次いで、還元サッカリドの名前または略語(すなわち、GlcNAc)を用いて記載される。各サッカリドは、好ましくは、ピラノースである。標準的な糖鎖生物学命名法の総説については、Essentials of Glycobiology Varkiら編、CSHL Press(1999)を参照のこと。
【0043】
本明細書中で用いられる場合、「連結メンバー」は、少なくとも1つのヘテロ原子を含む共有化学結合をいう。例示的連結メンバーとしては、−C(O)NH−、−C(O)O−、−NH−、−S−、−O−などが挙げられる。
【0044】
本明細書中で用いられる場合、用語「標的化部分」は、特定の組織または身体の領域に選択的に局在する種をいう。この局在は、分子決定基、標的化剤または標的化結合剤のサイズ、イオン相互作用、疎水性相互作用などの特異的認識により媒介される。特定の組織または領域に対して薬剤を標的化する他の機構は、当業者に公知である。例示的な標的化部分としては、以下が挙げられる:抗体、抗体フラグメント、トランスフェリン、HS−糖タンパク質、凝固因子、血清タンパク質、β−糖タンパク質、G−CSF、GM−CSF、M−CSF、EPO、サッカリド、レクチン、レセプター、レセプターに対するリガンド、BSAのようなタンパク質など。標的化基はまた、低分子であり得、意図される用語としては、非ペプチドおよびペプチドを含む。
【0045】
記号
【0046】
【化8】
は、結合として利用されても、結合に対して垂直に表されても、表される部分は、分子の残りの部分、固体支持体などに結合される点を示す。
【0047】
本発明の特定の化合物は、非溶媒和形態、および水和形態を含む、溶媒和形態で存在し得る。一般的に、溶媒和形態は、非溶媒和形態と等価であり、そして本発明の範囲内に包含される。本発明の特定の化合物は、複数の結晶形態または非結晶形態で存在し得る。一般的に、全ての物理的形態は、本発明により包含される用途に等価であり、そして本発明の範囲内にあることが意図される。
【0048】
本発明の特定の化合物は、非対称炭素原子(光学中心)または二重結合を有し;ラセミ化合物、ジアステレオマー、幾何異性体および個別の異性体は、本発明の範囲内に包含される。
【0049】
本発明の化合物は、単一の異性体(例えば、鏡像異性体、シス−トランス、位置、ジアステレオマー)または異性体の混合物として調製され得る。好ましい実施形態では、この化合物は、実質的に単一の異性体として調製される。実質的に異性的に純粋な化合物を調製する方法は、当該分野で公知である。例えば、鏡像異性的に多い混合物および純粋な鏡像異性体化合物は、キラル中心の立体化学を変更しないか、または完全な逆転を生じるかのいずれかの反応と組合わせて、鏡像異性的に純粋である合成中間体を用いて調製され得る。あるいは、合成経路に沿った最終生成物または中間体が、単一の立体異性体へと分解され得る。特定の立体中心を逆転するかまたは変更しないための技術、ならびに立体異性体の混合物を分解するための技術は、当該分野で周知であり、そして特定の状況について適切な方法を選択することは、十分に、当業者の能力の範囲内である。一般的に、Furnissら(編),VOGEL’S ENCYCLOPEDIA OF PRACTICAL ORGANIC CHEMISTRY 第5版、Longman Scientific and Technical Ltd.,Essex,1991,809−816頁;およびHeller,Acc.Chem.Res.23:128(1990)を参照のこと。
【0050】
本発明の化合物はまた、そのような化合物を構成する1つ以上の原子について天然にない割合の同位体原子を有し得る。例えば、これらの化合物は、(例えば、トリチウム(3H)、ヨウ素125(125I)または炭素14(14C)のような)放射性同位体で放射標識され得る。本発明の化合物のすべての同位体の変化は、放射活性であるか否かに関らず、本発明の範囲に包含されることが意図される。
【0051】
置換基が、これらの慣用的な、左から右に書かれた化学式により特定される場合、これらは、右から左にその構造を書くことで生じる、化学的に同一な置換基を等しく包含する(例えば、−CH2O−は、−OCH2−もまた列挙することが意図される)。
【0052】
用語「アルキル」とは、他のように示されない限り、それ自体または別の置換基の一部として、直鎖もしくは分枝鎖、または環状の炭化水素ラジカル、あるいはそれらの組み合わせを意味し、これらは、完全な飽和でも、一不飽和でも、多価不飽和でもよく、そして二価ラジカルおよび多価ラジカルを含み得、指定された数の炭素原子を有する(すなわち、C1〜C10とは、1個〜10個の炭素を意味する)。飽和炭化水素ラジカルの例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、例えば、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−へプチル、n−オクチルなどのホモログおよび異性体のような基が挙げられるが、これらに限定されない。不飽和アルキル基は、1つ以上の二重結合または三重結合を有するアルキル基である。不飽和アルキル基の例としては、ビニル、2−プロペニル、クロチル、2−イソペンテニル、2−(ブタジエニル)、2,4−ペンタジエニル、3−(1,4−ペンタジエニル)、エチニル、1−プロピニル、および3−プロピニル、3−ブチニル、ならびにより高級のホモログおよび異性体が挙げられるが、これらに限定されない。用語「アルキル」とはまた、他のように示されない限り、以下により詳細に規定されるアルキルの誘導体(例えば、「へテロアルキル」および「アルキレン」)を含むことが意味される。炭化水素基に限定されたアルキル基は、「ホモアルキル」と称される。
【0053】
用語「アルキレン」とは、それ自体または別の置換基の一部として、−CH2CH2CH2CH2−により例示されるがこれに限定されないような、アルカンから誘導された二価ラジカルを意味し、以下に「ヘテロアルキレン」として記載される基をさらに含む。代表的には、アルキル基(またはアルキレン基)は、1個〜24個の炭素原子を有し、10個以下の炭素原子を有するこれらの基が、本発明において好ましい。「低級アルキル」または「低級アルキレン」とは、短鎖のアルキル基またはアルキレン基であり、一般的に8個以下の炭素原子を有する。
【0054】
用語「アルコキシ」「アルキルアミノ」および「アルキルチオ」(またはチオアルコキシ)は、これらの従来の意味において用いられ、それぞれ、酸素原子、アミノ基、またはイオウ原子を介して、それらの分子の残りに結合されたアルキル基をいう。
【0055】
用語「ヘテロアルキル」とは、他のように示されない限り、それ自体または別の用語と組み合わせて、安定した直鎖もしくは分枝鎖、または環状の炭化水素ラジカル、あるいはこれらの組み合わせであって、示された数の炭素原子と、O、N、SiおよびSからなる群より選択される少なくとも1つのへテロ原子とからなるものを意味し、ここで、窒素原子およびイオウ原子は、必要に応じて酸化されていてもよく、そして窒素へテロ原子は、必要に応じて四級化されていてもよい。ヘテロ原子O、N、およびSならびにSiは、ヘテロアルキル基の任意の内側部分またはアルキル基がその分子の残りに結合されている位置に位置し得る。例としては、−CH2−CH2−O−CH3−,−CH2−CH2−NH−CH3−、−CH2−CH2−N(CH3)−CH3、−CH2−S−CH2−CH3、−CH2−CH2−、−S(O)−CH3、−CH2−CH2−S(O)2−CH3、−CH=CH−O−CH3、−Si(CH3)3、−CH2−CH=N−OCH3、および−CH=CH−N(CH3)−CH3が挙げられるが、これらに限定されない。2個までのヘテロ原子が、連続し得る(例えば、−CH2−NH−OCH3および−CH2−O−Si(CH3)3のように)。同様に、用語「ヘテロアルキレン」は、それ自体または別の置換基の一部として、−CH2−CH2−S−CH2−CH2−および−CH2−S−CH2−CH2−NH−CH2−が例示されるが、これらに限定されない、ヘテロアルキルから誘導された二価ラジカルを意味する。ヘテロアルキレン基について、ヘテロ原子はまた、その鎖の末端のいずれかまたは両方を占め得る(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)。なおさらに、アルキレン結合基およびヘテロアルキレン結合基について、その結合基の方向は、その結合基の式が書かれた方向により意味されない。例えば、式−C(O)2R’−は、−C(O)2R’−および−R’C(O)2−の両方を表す。
【0056】
用語「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」とは、他のように示されない限り、それら自体または他の用語と組み合わせて、それぞれ、「アルキル」および「ヘテロアルキル」の環状のバージョンを表す。さらに、ヘテロシクロアルキルについて、ヘテロ原子は、複素環がこの分子の残りに結合されている位置を占め得る。シクロアルキルの例としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−シクロヘキセニル、3−シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロシクロアルキルの例としては、1−(1,2,5,6−テトラヒドロピリジル)、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−モルホリニル、3−モルホリニル、テトラヒドロフラン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イル、テトラヒドロチエン−2−イル、テトラヒドロチエン−3−イル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
用語「ハロ」または「ハロゲン」とは、他のように示されない限り、これら自体または別の置換基の一部として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を意味する。さらに、「ハロアルキル」のような用語は、モノハロアルキルおよびポリハロアルキルを含むことが意味される。例えば、用語「ハロ(C1〜C4)アルキル」としては、トリフルロロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、4−クロロブチル、3−ブロモプロピルなどが挙げられるが、これらに限定されないことが意味される。
【0058】
用語「アリール」とは、他のように示されない限り、多価不飽和の、芳香族炭化水素置換基を意味し、これは、単一の環または互いに縮合しているか共有結合している複数の環(好ましくは、1つ〜3つの環)であり得る。用語「ヘテロアリール」とは、N、O、およびSより選択される1個〜4個のヘテロ原子を含むアリール基(または環)をいい、ここで、窒素原子およびイオウ原子は、必要に応じて酸化されており、そして窒素原子は、必要に応じて四級化されている。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して、この分子の残りに結合され得る。アリール基およびヘテロアリール基の非限定の例としては、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、4−ビフェニル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、3−ピラゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、ピラジニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、2−フェニル−4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソキサゾリル、4−イソキサゾリル、5−イソキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、5−ベンゾチアゾリル、プリニル、2−ベンズイミダゾリル、5−インドリル、1−イソキノリル、5−イソキノリル、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、3−キノリル、および6−キノリルが挙げられる。上記アリール環系およびヘテロアリール環系の各々についての置換基は、下記の受容可能な置換基の群より選択される。
【0059】
簡潔にすると、用語「アリール」は、他の用語と組み合わせて用いられる場合(例えば、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキル)、上記で規定されたアリール環およびヘテロアリール環の両方を含む。従って、用語「アリールアルキル」とは、アルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチルなど)(炭素原子(例えば、メチレン基)が、例えば、酸素原子により置換されているアルキル基を含む)にアリール基が結合されているこれらのラジカル(フェノキシメチル、2−ピリジルオキシメチル、3−(1−ナフチルオキシ)プロピルなど)を含むことが意味される。
【0060】
上記用語の各々(例えば、「アルキル」、「ヘテロアルキル」、「アリール」、および「ヘテロアリール」)は、示されたラジカルの置換形態および非置換形態の両方を含むことが意味される。各々の型のラジカルについての好ましい置換基が、以下に提供される。
【0061】
アルキルラジカルおよびヘテロアルキルラジカルについての置換基(しばしば、アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロシクロアルケニルと呼ばれる置換基を含む)は、0〜(2m’+1)の範囲の数(ここで、m’は、そのラジカルにおける炭素原子の総数である)において、以下から選択されるが、これらに限定されない種々の基のうちの1つ以上であり得る:−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R’’、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R’’R’’’、−OC(O)R’、−C(O)R’、−CO2R’、−CONR’R’’、−OC(O)NR’R’’、−NR’’C(O)R’、−NR’−C(O)NR’’R’’’、−NR’’C(O)2R’、−NR−C(NR’R’’R’’’)=NR’’’’、−NR−C(NR’R’’)=NR’’’、−S(O)R’、−S(O)2R’、−S(O)2NR’R’’、−NRSO2R’、−CNおよび−NO2。好ましくは、R’、R’’、R’’’およびR’’’’は、各々、独立して、水素、置換または非置換のヘテロアルキル基、置換または非置換のアリール基(例えば、1個〜3個のハロゲンで置換されたアリール基)、置換または非置換のアルキル基、アルコキシ基またはチオアルコキシ基あるいはアリールアルキル基をいう。本発明の化合物が、1つより多いR基を含む場合、例えば、各々のR基は、1つより多いR’基、R’ ’ 基、R’’’ 基、およびR’’’’基が存在する場合、各々がこれらの基であるように、独立して、選択される。R’およびR’’が同じ窒素原子に結合されている場合、これらは、窒素原子と組み合わされて、5員環、6員環または7員環を形成し得る。例えば、−NR’R’’としては、1−ピロリジニルおよび4−モルホリニルが挙げられるが、これらに限定されないことが意味される。上記置換基の考察から、当業者は、用語「アルキル」が、水素基以外の基に結合されている炭素原子を含む基(例えば、ハロアルキル(例えば、−CF3および−CH2CF3)およびアシル(例えば、−C(O)CH3、−C(O)CF3、−C(O)CH2OCH3など))を含むことが意味される。
【0062】
アルキルラジカルについて記載された置換基と同様に、アリール基およびヘテロアリール基についての置換基は、変化し、例えば、0から芳香族環系上の開放状態の価数(open valence)の総数までの範囲の数においての、以下から選択される:ハロゲン、−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R’’、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R’’R’’’、−OC(O)R’、−C(O)R’、−CO2R’、−CONR’R’’、−OC(O)NR’R’’、−NR’’C(O)R’、−NR’−C(O)NR’’R’’’、−NR’’C(O)2R’、−NR−C(NR’R’’R’’’)=NR’’’’、−NR−C(NR’R’’)=NR’’’、−S(O)R’、−S(O)2R’、−S(O)2NR’R’’、−NRSO2R’、−CNおよび−NO2、−R’、−N3、−CH(Ph)2、フルオロ(C1〜C4)アルコキシ、およびフルオロ(C1〜C4)アルキル。本発明の化合物が、1より多いR基を含む場合、例えば、各々のR基は、1つより多いR’基、R’ ’ 基、R’’’ 基、およびR’’’’基が存在する場合、各々がこれらの基であるように、独立して、選択される。
【0063】
アリール環またはヘテロアリール環の隣接する原子上の2つの置換基は、必要に応じて、式−T−C(O)−(CRR’)q−U−で置換され得る。ここで、TおよびUは、独立して、−NR−、−O−、−CRR’−または単結合であり、そしてqは、0〜3の整数である。あるいは、アリール環またはヘテロアリール環の隣接する原子上の2つの置換基は、必要に応じて、式−A−(CH2)r−B−の置換基で置換され得る。ここで、AおよびBは、独立して、−CRR’−、−O−、−NR−、−S−、−S(O)−、−S(O)2−、−S(O)2NR’−または単結合であり、そしてrは、1〜4の整数である。そのようにして形成された新しい環の単結合のうち1つは、必要に応じて、二重結合で置換され得る。あるいは、アリール環またはヘテロアリール環の隣接する原子上の2つの置換基は、必要に応じて、式−(CRR’)s−X−(CR’’R’’’)d−の置換基で置換され得る。ここで、sおよびdは、独立して、0〜3の整数であり、そしてXは、−O−、−NR’−、−S−、−S(O)−、−S(O)2−、または−S(O)2NR’−である。好ましくは、置換基R、R’、R’’およびR’’’は、独立して、水素または置換もしくは非置換の(C1〜C6)アルキルより選択される。
【0064】
本明細書中で使用される場合、用語「ヘテロ原子」とは、酸素(O)、窒素(N)、イオウ(S)およびケイ素(Si)を含むと意味される。
【0065】
(導入)
多くの化合物(例えば、糖脂質)の生物学的活性は、特定の糖形態(glycoform)の存在または不存在に依存する。グリコシル化パターンの変化した糖脂質組成物の利点としては、例えば、減少したクリアランス速度に起因して増加した治療的半減期、増強されたバイオアベイラビリティー、および変化された生体活性が挙げられる。さらに、化合物のグリコシル化パターンを変更することは、抗原決定基をマスクし得、従って、この化合物に対する免疫応答を軽減または排除する。糖脂質の糖形態の変化はまた、この糖脂質を、変化されたオリゴサッカリドに特異的である特定の組織または細胞表面レセプターに対して標的化するために用いられ得る。この変化されたオリゴサッカリドはまた、その天然のリガンドの結合を防ぐ、レセプターのインヒビターとして用いられ得る。本発明は、グリコシル化基質を調製するための酵素的方法を提供する。本発明の方法は、糖脂質(例えば、セラミド、スフィンゴシン、およびこれらのアナログ)の合成へのこれらの適用を参照して、本明細書中に例示される。議論の焦点を絞ったのは、説明の明瞭さのためのものであり、そして当業者は、本発明が糖脂質の調製に限定されないことを理解する。
【0066】
(方法)
本発明は、選択されたグリコシル化パターンを有する種を調製する方法を提供する。本発明は、広く、酵素的に媒介される無細胞系の、インビトロでの基質のグリコシル化に関する。当業者は、本発明が、実質的に任意の基質(ペプチド、核酸、合成ポリマー、小さな有機ラジカル、および脂質の成分が挙げられるが、これらに限定されない)に対して実施され得ることを理解する。本発明は、本明細書中において、糖脂質(特に、ガングリオシド)の調製に対するその適用により例示される。ガングリオシドに対する議論の焦点を絞ったのは、説明の明瞭さのためのみであり、そして、それは、本発明の範囲を限定しない。
【0067】
従って、第一の局面において、本発明は、以下の式Iに従う種をグリコシル化する方法を提供する:
(糖類)q−X (I)。
この方法は、(糖類)s+1−Xを産生するために適切なドナーの存在下で、(糖類)s−Xをトランス−シアリダーゼまたはグリコシルトランスフェラーゼと接触させる工程を包含する。この第一の反応の生成物を、必要に応じて、(糖類)s+2−Xを産生するために、適切なドナーの存在下で、トランスシアリダーゼまたはグリコシルトランスフェラーゼと接触させる。この第二の反応の生成物を、必要に応じて、(糖類)s+3−Xを産生するために、適切なドナーの存在下で、トランスシアリダーゼまたはグリコシルトランスフェラーゼと接触させる。このプロセスを、所望の糖の構造が構築されるまで続ける。上で提供される構造において、sは、0〜約30の整数である。記号qは、2〜約30の整数を表す。一般的には、本発明のプロセスが、トランスシアリダーゼにより媒介される少なくとも1回のシアリル化、および1つ以上のグリコシルトランスフェラーゼの活性により媒介される2回のグリコシル化を含むことが好ましい。好ましくは、この方法はまた、反応混合物に対して細胞成分の非存在下で実施され、好ましくは、完全にインビトロで実施される。
【0068】
代替的な実施形態において、第一のグリコシル化工程は、トランスシアリダーゼではなく、シアリルトランスフェラーゼおよびシアル酸ドナーを利用する。
【0069】
例示的な実施形態において、Xに結合されていない糖類の末端は、ガラクトース残基である。ガラクトース残基が存在しない場合、それは、必要に応じて、例えば、糖類をガラクトシルトランスフェラーゼと接触させることによって付加される。
【0070】
当業者に理解されるように、本発明の方法の個々のグリコシル化工程は、所望の構造を提供する任意の順番で実施される。この工程を構成する際の実際上の唯一の制限は、基質が、特定の工程で付加されるべきグリコシル単位についてのアクセプターを含まなくてはならないことである。このアクセプターは、本発明の方法により基質に付加され得るか、またはそれは、ネイティブの基質上に存在し得る。それが1回以上のグリコシル化反応により基質の構造に付加されることに加えて、アクセプターは、所望のアクセプターをマスクするグリコシル単位をトリミングし戻すことにより露出され得る。さらに、基質は、所望のグリコシル化工程のためのアクセプターになる構造についての適切なアクセプターである部分にトリミングさ戻され得る。例えば、WO 98/31826を参照のこと。
【0071】
基質上に存在する炭化水素部分の付加または除去は、化学的または酵素的のいずれかで達成される。好ましくは、化学的な脱グリコシル化は、基質のトリフルオロメタンスルホン酸、または等価な化合物への曝露によって実施される。化学的な脱グリコシル化は、Hakimuddinら、Arch.Biochem.Biophys.259:52(1987)およびEdgeら、Anal.Biochem.118:131(1981)により記載されている。基質上の炭化水素部分の酵素的切断は、Thotakuraら、Meth.Enzymol.138:350(1987)により記載されるような種々のエンドグリコシダーゼおよびエキソグリコシダーゼの使用により達成され得る。
【0072】
グリコシル部分の化学的付加は、当該分野において認識される任意の方法により実施される。好ましくは、糖部分の酵素的付加は、本明細書中に示される方法を用いて達成される。糖部分を付加する他の有用な方法は、米国特許第5,876,980号、同第6,030,815号、同第5,728,554号、および同第5,922,577号に開示されている。
【0073】
別の例示的な実施形態において、本発明は、式IIに従う化合物を調製するための、インビトロでの、無細胞系の、酵素的方法を提供する:
【0074】
【化9】
。式IIにおいて、X1は、置換または非置換のアルキル、検出可能な標識、キャリア分子または標的化部分を表す。記号Xは、以下より選択されるメンバーを表す:
【0075】
【化10】
。記号mは、0〜20の整数を表す。記号Qは、以下より選択されるメンバーを表す:
【0076】
【化11】
。記号n、oおよびtは、独立して、0〜20より選択される整数を表す。
【0077】
この方法は、(a)トランスシアリダーゼがSia部分を、ドナーから基質に転移させるのに適切な条件下で、トランスシアリダーゼおよびSiaドナーと、式III:
【0078】
【化12】
に従う基質とを接触させ、それにより式IIに従う化合物を形成する工程、を包含する。シアル酸部分は、必要に応じて、シアリルトランスフェラーゼおよびシアル酸ドナーにより基質に転移され得る。
【0079】
当業者は、本発明の方法がまた、構造:Glc−X1を有する基質上で開始し得、この場合、第一の工程が、一般的に、ガラクトシルトランスフェラーゼおよびガラクトースドナーを用いる、Gal部分の付加であることを理解する。
【0080】
別の例示的な実施形態において、本発明は、(b)GalNAcトランスフェラーゼがGalNAc部分をドナーから工程(a)において形成された化合物へと転移させるのに適する条件下で、工程(a)において形成された化合物を、GalNAcトランスフェラーゼおよびGalNAcドナーと接触させる工程、をさらに包含する方法を提供する。
【0081】
代替的な実施形態において、この方法は、(b)SiaトランスフェラーゼがSia部分をドナーから工程(a)において形成された化合物へと転移させるのに適する条件下で、工程(a)において形成された化合物を、SiaトランスフェラーゼおよびSiaドナーと接触させる工程、を包含する。
【0082】
さらなる例示的な実施形態において、この方法は、(c)GalトランスフェラーゼがGal部分をドナーから工程(b)において形成された化合物へと転移させるのに適する条件下で、工程(b)において形成された化合物を、GalトランスフェラーゼおよびGalドナーと接触させる工程、をさらに包含する。
【0083】
代替的な実施形態において、この方法は、(c)GalNAcトランスフェラーゼがGalNAc部分をドナーから工程(b)において形成された化合物へと転移させるのに適する条件下で、工程(b)において形成された化合物を、GalNAcトランスフェラーゼおよびGalNAcドナーと接触させる工程、を包含する。
【0084】
なお別の例示的な実施形態において、本発明の方法は、(c)SiaトランスフェラーゼがSia部分をドナーから工程(b)において形成された化合物へと転移させるのに適する条件下で、工程(b)において形成された化合物を、SiaトランスフェラーゼおよびSiaドナーと接触させる工程、をさらに包含する。
【0085】
本発明の方法は、必要に応じて、(d)トランスシアリダーゼがSia部分をドナーから工程(c)において形成された化合物へと転移させるのに適する条件下で、工程(c)において形成された化合物を、トランスシアリダーゼおよびSiaドナーと接触させる工程、を包含する。
【0086】
さらなる例示的な実施形態において、この方法は、(d)FucトランスフェラーゼがFuc部分をドナーから工程(c)において形成された化合物へと転移させるのに適する条件下で、工程(c)において形成された化合物を、FucトランスフェラーゼおよびFucドナーと接触させる工程、を提供する。
【0087】
代替的な実施形態において、この方法は、(d)GalトランスフェラーゼがGal部分をドナーから工程(c)において形成された化合物へと転移させるのに適する条件下で、工程(c)において形成された化合物を、GalトランスフェラーゼおよびGalドナーと接触させる工程、をさらに包含する。
【0088】
さらなる例示的な実施形態において、この方法は、(d)GalNAcトランスフェラーゼがGalNAc部分をドナーから工程(c)において形成された化合物へと転移させるのに適する条件下で、工程(c)において形成された化合物を、GalNAcトランスフェラーゼおよびGalNAcドナーと接触させる工程、を包含する。
【0089】
なお別の実施形態において、この方法は、(e)SiaトランスフェラーゼがSia部分をドナーから工程(d)において形成された化合物へと転移させるのに適する条件下で、工程(d)において形成された化合物を、SiaトランスフェラーゼおよびSiaドナーと接触させる工程、をさらに包含する。
【0090】
なおさらなる例示的な実施形態において、この方法は、(e)トランスシアリダーゼがSia部分をドナーから工程(d)において形成された化合物へと転移させるのに適する条件下で、工程(d)において形成された化合物を、トランスシアリダーゼおよびSiaドナーと接触させる工程、をさらに包含する。
【0091】
代替的な実施形態において、この方法は、(e)GalトランスフェラーゼがGal部分をドナーから工程(d)において形成された化合物へと転移させるのに適する条件下で、工程(d)において形成された化合物を、GalトランスフェラーゼおよびGalドナーと接触させる工程、を包含する。
【0092】
別の例示的な実施形態において、この方法は、(f)SiaトランスフェラーゼがSia部分をドナーから工程(e)において形成された化合物へと転移させるのに適する条件下で、工程(e)において形成された化合物を、SiaトランスフェラーゼおよびSiaドナーと接触させる工程、を提供する。
【0093】
さらなる実施形態において、この方法は、(f)工程(e)で形成された化合物を、トランスシアリダーゼおよびSiaドナーと、このトランスシアリダーゼがSia部分をこのドナーから工程(e)で形成された化合物に転移させるのに適切な条件下で接触させる工程を包含する。
【0094】
当業者は、トランスシアリダーゼを利用する工程が、シアリルトランスフェラーゼを使用する工程で置き換えられ得ることを理解する。さらに、シアル酸のトランスシアリダーゼ媒介付加の前に、シアリルトランスフェラーゼにより媒介されるシアル酸転移が生じ得る。
【0095】
別の実施形態において、この方法は、(g)工程(a)の前に、式IV:
Q−Gal−Glc−X1 (IV)
の基質を、GalNAcトランスフェラーゼおよびGalNAcドナーと、このGalNAcトランスフェラーゼが、GalNAc部分をこのドナーからこの基質へと転移するのに適切な条件下で接触させる工程を包含する。QおよびX1のアイデンティティは、式IIについて記載されるとおりである。
【0096】
なおさらなる例示的実施形態において、この方法は、(h)工程(g)で形成された化合物を、GalトランスフェラーゼおよびGalドナーと、このGalトランスフェラーゼがGal部分をこのドナーから、工程(g)で形成された化合物へ転移させるのに適切な条件下で接触させる工程を包含する。
【0097】
別の実施形態において、この方法は、(i)工程(a)の後に、工程(a)で形成された化合物を、SiaトランスフェラーゼおよびSiaドナーと、このSiaトランスフェラーゼがSia部分をこのドナーから、工程(a)で形成された化合物へと転移させるのに適切な条件下で接触させる工程を包含する。
【0098】
この方法はまた、(j)選択された回数だけ工程(i)を繰り返し、それによりその化合物上にポリ(シアル酸)置換基を形成する工程を包含する。
【0099】
さらなる例示的な実施形態において、この方法は、(k)工程(a)で形成された化合物を、SiaトランスフェラーゼおよびSiaドナーと、このSiaトランスフェラーゼがSia部分をこのドナーから、工程(a)で形成された化合物へと転移させるのに適切な条件下で接触させる工程を包含する工程を包含する。
【0100】
この方法はまた、(l)選択された回数だけ工程(k)を繰り返して、それによりこの化合物上にポリ(シアル酸)置換基を形成する工程を必要に応じて包含する。
【0101】
本発明の方法は、アシル化ガングリオシドおよびlyso−ガングリオシドの両方に対して実施され得る。このlyso−ガングリオシドは、最終産物へと至る反応サイクルの間の任意の中間点においてアシル化され得るか、または炭水化物構造が完全に適切な配置になったあとにアシル化され得る。
【0102】
上述の本発明の方法により形成される例示的な化合物としては、ガングリオシドGM2、GM1、GD1a、GT1a、Fuc−GM1、GD3、GD2、GD1b、GT1b、GQ1b、GM1b、GD1α、GT1β、GQ1B、GT3、GT2、GT1c、GQ1c、グロボシド(例えば、グロボ−Hなど)およびポリシアリル化ラクトースが挙げられる。
【0103】
本発明の方法は、図1〜図9として本明細書に添付されるスキームを参照することによりさらに理解される。これらの図面は、本発明の方法に従う代表的な合成を記載する。
【0104】
図1を参照して、基質(アグリコン)は、酵素的(グルコシルトランスフェラーゼ)または化学的のいずれかでグルコースで官能基化される。このグルコシル誘導体を、ガラクトシルトランスフェラーゼで処理して、そしてこのガラクトシル化化合物を、トランスシアリダーゼを使用してシアリル化する。経路1において、GalNAcは、シアリル化種のガラクトース残基に付けられる。ガラクトースを、ガラクトシルトランスフェラーゼによりGalNAc部分に結合させ、そしてGal残基を、フコシルトランスフェラーゼの作用によりフコシル化する。
【0105】
図2の経路2において、このシアリル化された基質を、シアリルトランスフェラーゼを使用するシアリル基の既存のシアル酸部分への付加によりさらにシアリル化する。Gal残基を、GalNAcトランスフェラーゼを使用してGalNAcで修飾する。ガラクトース残基を、ガラクトシルトランスフェラーゼを使用してGalNAcに結合させる。シアル酸部分をシアリルトランスフェラーゼを使用してシアリル化する。
【0106】
図3は、本発明の方法を使用する、ガングリオシド、ならびにそのスフィンゴシンアナログおよびセラミドアナログの例示的合成を記載する。従って、グルコシルスフィンゴイド1を、ガラクトシルトランスフェラーゼを使用してガラクトシル化する。得られたGlu−Galスフィンゴイド2をトランスシアリダーゼを用いてシアリル化する。シアリル化されたスフィンゴイド部分3の1級アミンを、塩化ステアロイルでアシル化し、対応するセラミド4を生成する。このセラミド4は、次いで、GalNAcトランスフェラーゼの存在下でGalNAcと反応し、5を形成する。化合物5は、Galドナーの存在下でガラクトシルトランスフェラーゼと接触されて化合物6を生成する。
【0107】
図4は、本発明の方法に従う、ガングリオシドの別の例示的な合成を提供する。これにより、1のスフィンゴシン部分の1級アミンを、塩化ステアロイルでアシル化してセラミド7を生成し、これをトランスシアリダーゼによりシアリル化して4を形成する。
【0108】
図5は、本発明の方法により調製された選択されたガングリオシドへの一連のスキームである。化合物3をシアリルトランスフェラーゼでシアリル化して、化合物8を形成する。化合物8のアミンを、塩化ステアロイルでアシル化してGD39を生成する。あるいは、化合物8をGalNAcトランスフェラーゼおよびGalNAcドナーで処理して化合物10を生成し、これを、塩化ステアロイルでアシル化してGD211を形成する。あるいは、化合物10をガラクトシル化して12を形成し、これを塩化ステアロイルでアシル化してGD114を生成する。
【0109】
図6のスキームは、本発明の方法を使用する、ガングリオシドへのさらなる例示的な経路を記載する。スフィンゴイド15を、グルコシル化し、16を形成し、これにガラクトシル残基を付加して17を形成する。化合物17をトランスシアリダーゼを用いてシアリル化して18を形成し、これを1級アミンにおいて塩化ステアロイルを用いて必要に応じてアシル化してGM322を生じる。あるいは、17をGalNAcトランスフェラーゼおよびGalNAcドナーで処理して19を生成し、これを必要に応じてアシル化してGM223を生じる。あるいは、19をガラクトシル化して20を形成し、これを必要に応じてアシル化してGM124を生成する。あるいは、20をフコシル化して21を形成し、これを必要に応じてアシル化してフコシル−GM125を得る。
【0110】
図7は、本発明の方法を使用してガングリオシドを形成する例示的な経路を記載する。スフィンゴシン18をシアリルトランスフェラーゼを使用してシアリル化し、26とする。化合物26を1級アミンにおいて塩化ステアロイルを使用して必要に応じてアシル化してGD3 30を形成する。あるいは、26をGalNAcトランスフェラーゼおよびGalNAcドナーで処理して27を形成する。化合物27をガラクトシル化して28を形成し、これをシアリルトランスフェラーゼを使用してシアリル化する。化合物27、28および29の各々を、塩化ステアロイルを用いてアシル化してGD2(31)、GD1(32)またはGT1b(33)をそれぞれ形成し得る。
【0111】
図9は、本発明の方法に従ってポリシアリル化スフィンゴシンを調製するためのスキームを提供する。これらのスフィンゴシンは、必要に応じてアシル化されて対応するセラミドを形成する。
【0112】
図10は、インタクトなセラミド基質に対して本発明の方法を実施する例示的なスキームを記載する。セラミド22をシアリル化してポリシアリル化種(例えば、35および36)の混合物を生成し、これにGalNAcを結合して31を得る。化合物31をガラクトシル化し、化合物32を得る。
【0113】
サッカリド残基を基質に結合するための本発明により提供される方法は、以前に記載されるグリコシル化方法と異なり、基質メンバーが実質的に均一なグリコシル化パターンを有する基質の集団を提供し得る。したがって、好ましい実施形態において、基質の集団は、その集団の各メンバーのグリコシル化パターンに対して実質的に単分散である。本発明の方法の適用後、所望のサッカリド残基(例えば、フコシル残基)が、高い割合のアクセプター部分に結合される。
【0114】
本発明はまた、基質に対して既知のグルコシル化パターンを再生させる方法を提供する。この方法は、基質を予め選択された(すなわち、既知の)レベルまでグリコシル化する(この時点でグルコシル化が停止する)工程を包含する。特に好ましい実施形態において、この基質は、既知のレベルまでフコシル化される。本発明の方法は、治療剤のレプリカである組成物を調製する際に特に有用であり、これは、現在臨床的に利用されるかまたは臨床試験に進んでいる。
【0115】
この方法はまた、改変した基質の大規模産生(パイロット規模および工業的規模の両方の調製を含む)のために実用的である。従って、本発明の方法は、選択されたグリコシル化パターンを有する基質の大規模調製のための実用的な手段を提供する。このプロセスは、組成物中に存在する基質に対して増加した一定のレベルの所望のグリコフォーム(glycoform)を提供する。
【0116】
本発明はまた、本発明の方法を実施するためのキットを提供する。このキットは、一般的に、本発明の方法を実施する際に使用する1つ以上の酵素、および本発明の方法を実施するための指示書を備える。
【0117】
(基質)
本発明の方法は、グリコシルトランスフェラーゼ、トランスシアリダーゼなどに適切なアクセプター部分を含む任意の基質を使用して実施され得る。例示的な基質としては、スフィンゴシンおよびそのアナログ、セラミドおよびそのアナログ、ペプチド、ガングリオシドならびに本発明の方法により改変され得るその他の生物学的構造体(例えば、糖脂質、全細胞など)が挙げられるが、これらに限定されず、この生物学的構造体は、当業者に公知の細胞上の多数の基質および炭水化物構造のいずれかを含む。
【0118】
例示的実施形態において、本発明の方法は、X1の構造が、式V:
【0119】
【化13】
で記載される基質を利用し、
ここで、Zは、O、SおよびNR5から選択される。記号R1およびR2は、独立して、NHR4、SR4、OR4、OCOR4、OC(O)NHR4、NHC(O)OR4、OS(O)2OR4、C(O)R4、NHC(O)R4、検出可能な標識または標的部分を表す。R4およびR5は、H、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のヘテロアルキル、検出可能な標識または標的部分から独立して選択されるメンバーである。R3は、置換または無置換のアルキルおよび置換または無置換のヘテロアルキル基から選択される。例示的な実施形態において、R3は、少なくとも2度の不飽和を含む。この不飽和は、少なくとも2つの二重結合または少なくとも1つの三重結合の形態で存在し得る。
【0120】
なおさらなる例示的な実施形態において、X1の構造は、式VI:
【0121】
【化14】
で記載され、式中、R6は、H、C(O)R7、検出可能な標識、および標的部分から選択されるメンバーであり;そしてR7は、置換または無置換のアルキル、置換または無置換のヘテロアルキル、検出可能な標識および標的部分から選択されるメンバーである。R3は、概して上記のとおりである。
【0122】
別の例示的な実施形態において、基質は、アシル化される。このアシル化工程は、炭水化物を組み立てるために使用される酵素反応スキームの間の任意の中間の時点において、炭水化物部分を組み立て始める前でも、炭水化物部分が完全に組み立てられた後でもよい。例えば、式Vに従う基質が利用され、そしてR1がNH2、OHおよびSHから選択されるメンバーである場合、この基質は、必要に応じてR1においてアシル化される。リゾガングリオシドをアシル化する方法は、当該分野で公知であり、例えば、「Lysogangliosides:Synthesis and Use in Preparing Labeled Gangliosides」Gunther SchwarzmannおよびKonrad Sandhoff、METHODS IN ENZYMOLOGY、138巻、319〜341頁(1987)を参照のこと。
【0123】
記載された手順に従うアシル化は、従来の様式で(例えば、出発産物を、アシル化剤、特にその残基が導入される酸の反応性官能基誘導体と反応させることにより)実行され得る。例示的な酸の反応性官能基誘導体としては、ハロゲン化物、無水物、および活性エステルが挙げられる。このアシル化は、塩基(例えば、TEA、ピリジンまたはコリジン)の存在下で実行され得る。アシル化は、必要に応じて無水条件下で、室温または加熱して行われる。Shotten−Baumann法はまた、無機塩基の存在下で水性条件下でアシル化を行うために使用され得る。いくつかの場合、反応性官能基誘導体として酸のエステルを使用することも可能である。アシル化のために、活性化カルボキシル誘導体(例えば、ペプチド化学において知られるもの、例えば、混成無水物またはカルボジイミドもしくはイソオキサゾール塩を用いて得られる誘導体を使用する)を含む方法を使用することも可能である。
【0124】
アシル化の例示的方法としては以下が挙げられる:(1)リゾガングリオシド誘導体と酸のアジドとの反応;(2)リゾガングリオシド誘導体と、N,N’−カルボニルジイミダゾールを用いて酸から得られるこの酸のアシルイミダゾールとの反応;(3)リゾガングリオシド誘導体と、この酸およびトリフルオロ酢酸の混成無水物との反応;(4)リゾガングリオシド誘導体と酸の塩化物との反応;(5)リゾガングリオシド誘導体と酸との、カルボジイミド(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド)および必要に応じて1−ヒドロキシベンゾトリアゾールのような基質の存在下での反応;(6)リゾガングリオシド誘導体と酸との加熱による反応;(7)リゾガングリオシド誘導体と酸のメチルエステルとの高温での反応;(8)リゾガングリオシド誘導体と酸のフェノールエステル(例えば、パラ−ニトロフェノールとのエステル)との反応;および(9)リゾガングリオシド誘導体と、酸の塩とヨウ化1−メチル−2−クロロピリジンとの間の交換反応から誘導されるエステルまたは類似の生成物との反応。
【0125】
これらの酸は、飽和または不飽和の、分枝鎖または直鎖の、置換または無置換のアルキル酸、置換または無置換の脂肪酸(例えば、ヒドロキシ脂肪酸)から誘導され得る。このアシル基は、以下の部分構造を含み得る:−(CH2)pCH3、−CH=CH−(CH2)pCH3、−CHOH−(CH2)pCH3、−CH=CH−(CH2)2−CH=CH−(CH2)pCH3、−CH=CH−(CH2)2−C≡C−(CH2)pCH3、−CHOH−(CH2)3−CH=CH−(CH2)pCH3、アリール、アルキルアリール、またはリンカー(ここでpは、0〜40である)。一般的に、アシル成分の長さは、好ましくは8〜25個の炭素であり、より好ましくは10〜20個であり、そしてより好ましくは16〜18個の炭素である。
【0126】
遊離のヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、または1級アミノ基もしくは2級アミノ基を含む酸から誘導されるアシル基の特定の場合において、このような基をアシル化反応の間保護することが一般的に好ましい。このような基を保護する方法は、当該分野で利用可能である。このような保護基は、反応の終わりに容易に除去されるべきである。例示的な保護基としては、フタロイル基およびベンジルオキシカルボニル基(これは、アミノ基の保護に有利に作用する)が挙げられる。従って、例えば、γ−アミノ酪酸を服務誘導体の調製において、アミノ基がフタロイル基に結合したこの酸の誘導体が最初に調製され、リゾガングリオシド誘導体とのアシル化の後に、このフタロイル基がヒドラジン分解により除去される。このベンジルオキシカルボニル基は、水素化分解により除去され得る。この残基はまた、ヒドロキシ基の保護にも役立ち得る。カルボキシ基は、例えば、ペプチド化学において使用されるアルコールとのエステル化により保護され得る。
【0127】
(化合物)
本発明はまた、基質のアルキル部分(例えば、式VまたはVIにおけるR3)が、2度以上の不飽和を含む化合物を提供する。本発明のこの局面は、そのアルキルキが、少なくとも2つの二重結合または少なくとも1つの三重結合を有するスフィンゴシンおよびセラミドにより例示される。
【0128】
本発明の例示的な化合物としては、以下が挙げられる:
【0129】
【化15】
ここで、Rは、H、置換もしくは無置換のアルキル、または上記のような酸から誘導されるアシルである。記号nは、0〜40の整数を表し;好ましくは、n=6または7であり(その結果、例えば、スフィンゴシン塩基は、d18:2(例えば、トランス トランス)、d18:2(例えば、トランス シス)、d18:1:1、t18:1、またはd18:2:9メチルである)、そしてRは、Hまたは脂肪酸(例えば、ステアリン酸またはパルミチン酸)から誘導されるアシル基である。
【0130】
他の例示的な実施形態において、Rは、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸(lignocerate)、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、およびアラキドン酸からなる群から選択される脂肪酸から誘導されるアシル部分、またはそれらのα−ヒドロキシ誘導体である。本明細書中で使用される場合、用語「脂肪酸」とは、炭化水素鎖および末端カルボキシル基を有し、そして式CH2(CH2)nCOOH(ここで、n=1〜24)を有する酸をいう。特に好ましい実施形態において、Rは、ステアリン酸またはパルミチン酸から誘導されるアシル部分である。
【0131】
別の例示的な実施形態において、本発明は、化合物の内部エステル(ここで、サッカリド部分のヒドロキシル基の1つ以上が、酸の1つ以上のカルボキシ基でエステル化されている)を調製する方法を提供する。この方法はまた、ガングリオシドの「外部」エステル(すなわち、脂肪族系、アリール脂肪族(araliphatic)系、脂環式系または複素環式系の種々のアルコールとシアル酸のカルボキシ官能基とのエステル)の形成も包含する。シアル酸のアミドもまた含まれる。これらの誘導体の各々を調製する方法は、当該分野で公知である。例えば、米国特許第4,713,374号を参照のこと。
【0132】
本発明はまた、遊離のカルボキシ官能基を有する、本発明に従うガングリオシド化合物の金属塩または有機塩基の塩を調製する方法を提供し、そしてこれらは、本発明の一部を形成する。遊離酸官能基を有する本発明の他の誘導体(例えば、二塩基酸とのエステルまたはペルアシル化アミド)の金属塩または有機塩基の塩を調製することも可能である。塩基性官能基(例えば、遊離アミノ官能基)を含むガングリオシド誘導体(例えば、アミノアルコールとのエステル)の酸付加塩もまた本発明の一部を形成する。金属塩または有機塩基の塩のうち、治療において使用され得るものには、特に言及するべきである:例えば、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩(例えば、カリウム、ナトリウム、アンモニウム、カルシウムまたはマグネシウムの塩)、またはアルミニウムの塩、および有機塩基の塩(例えば、脂肪族、芳香族、もしくは複素環式の、1級、2級もしくは3級のアミン(例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ピペリジン、モルホリン、エフェドリン、フルフリルアミン、コリン、エチレンジアミンおよびアミノエタノール))。本発明のガングリオシド誘導体の酸付加塩を与え得る酸のうち、特に言及するべきものは、以下である:水素酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸)、最大7個の炭素原子を有する低級脂肪族酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸およびマレイン酸)。治療的に有用ではない酸または塩基(例えば、ピクリン酸)は、本発明のガングリオシド誘導体の精製に使用され得、そしてまた本発明の一部を形成する。
【0133】
グリコシル残基もアシル部分もいずれも含まない基質で本発明の合成を開始するのに加えて、本発明の合成は、所望のガングリオシドに対する前駆体であるリゾガングリオシドで始め得る。リゾガングリオシドは、セラミドデアシラーゼを用いる窒素の酵素的脱アシル化によりガングリオシドから得られ得る(J.Biochem.103:1(1988)を参照のこと。出発産物としても使用され得る脱−N−アシル−リゾガングリオシドは、アルカリ加水分解剤(例えば、テトラアルキルアンモニウムの水酸化物、水酸化(hydrate)カリウムおよびその他)を用いてガングリオシドから得られ得る(Biochemistry 24:525、(1985);J.Biol.Chem.255:7657,(1980);Biol.Chem.Hoppe Seyler 367:241(1986);Carbohydr.Res.179:393(1988);Biochem.Biophys.Res.Comm.147:127(1987)を参照のこと)。
【0134】
(酵素)
(a.選択されたグリコシル化パターンを有する基質を調製するためのグリコシルトランスフェラーゼおよび方法)
本発明の方法は、選択されたグリコシル化パターンを有するサッカリドを生成するそれらの能力について選択されたグリコシルトランスフェラーゼ(例えば、フコシルトランスフェラーゼ)を利用する。例えば、所望の特異性を有するだけでなく、基質中の高い割合の所望のアクセプター基をグリコシル化し得るグリコシルトランスフェラーゼが、選択される。オリゴサッカリドアクセプター部分(例えば、可溶性オリゴサッカリドまたは比較的短いペプチドに結合されたオリゴサッカリド)を使用するアッセイ系を使用して得られた結果に基づいて、グリコシルトランスフェラーゼを選択することが好ましい。特定の実施形態において、グリコシルトランスフェラーゼは、融合タンパク質である。代表的な融合タンパク質としては、2つの異なるグリコシルトランスフェラーゼ(例えば、シアリルトランスフェラーゼおよびフコシルトランスフェラーゼ)の活性を示すグリコシルトランスフェラーゼが挙げられる。他の融合タンパク質は、同じトランスフェラーゼ活性の2つの異なるバリエーションを含む(例えば、FucT−VIおよびFucT−VII)。さらに他の融合タンパク質は、トランスフェラーゼ活性の有用性を増強する(例えば、増強された溶解性、安定性、代謝回転など)ドメインを含む。
【0135】
グリコシルトランスフェラーゼを使用して所望のオリゴサッカリド構造を合成する多数の方法が公知であり、そして概して本発明に適用可能である。例示的な方法は、例えば、WO96/32491,Itoら、Pure Appl.Chem.65:753(1993)、ならびに米国特許第5,352,670号、同第5,374,541号および同第5,545,553号に記載される。
【0136】
グリコシルトランスフェラーゼは、活性化糖(ドナーNDP−糖)の、基質(例えば、タンパク質、糖ペプチド、脂質、糖脂質または伸長するオリゴサッカリドの非還元末端)への逐次的様式での付加を触媒する。膨大な数のグリコシルトランスフェラーゼが当該分野で公知である。
【0137】
本発明の方法は、任意のグリコシルトランスフェラーゼを利用し得る。但し、これは選択された部位に所望のグリコシル残基を付加し得る。このような酵素の例は、Leloir経路のグリコシルトランスフェラーゼ(例えば、ガラクトシルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ、フコシルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、マンノシルトランスフェラーゼ、キシロシルトランスフェラーゼ、グルクロノニルトランスフェラーゼなど)が挙げられる。
【0138】
本発明は、トランス−シアリダーゼ(trans−sialidase)およびグリコシルトランスフェラーゼの組み合わせを使用して、実行される。例えは、当業者は、トランス−シアリダーゼに加えて、シアリルトランスフェラーゼ、およびガラクトシルトランスフェラーゼの組み合せを使用し得る。1つより多くの酵素を使用する実施形態において、1つより多くの酵素および適切なグリコシルドナーは、必要に応じて、開始反応混合物中に混ぜられる。あるいは、引き続く酵素性反応のための酵素および試薬を、一旦その前の酵素性反応が完了するかまたはほぼ完了して、その反応媒体に添加する。単一容器内で2つの酵素反応を連続して行うことによって、全体の収量は、中間体の種を単離する手順よりも向上される。さらに、余剰の溶媒および副生成物の除去および廃棄が軽減される。
【0139】
本発明の方法で使用され得るグリコシルトランスフェラーゼとしては、ガラクトシルトランスフェラーゼ、フコシルトランスフェラーゼ、グルコシルトランスフェラーゼ、N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、グルクロニルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、マンノシルトランスフェラーゼ、グルクロン酸トランスフェラーゼ、ガラクツロン酸トランスフェラーゼ、およびオリゴサッカリルトランスフェラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。適切なグリコシルトランスフェラーゼとしては、真核生物および原核生物より得られるものが挙げられる。
【0140】
グリコシルトランスフェラーゼ反応を含む酵素的糖合成のために、グリコシルトランスフェラーゼがクローニングされ得るか、または任意の供給源より単離され得る。多くのクローニングされたグリコシルトランスフェラーゼが、それらのポリヌクレオチド配列のとおり、公知である。例えば、「The WWW Guide To Cloned Glycosyltransferases」(http://www.vei.co.uk/TGN/gt_guide.htm)を参照のこと。グリコシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列およびアミン酸配列が推定であり得るグリコシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列はまた、GenBank、Swiss−Prot、EMBLおよびその他を含む、様々な公的に利用可能なデータベースに見出される。
【0141】
グリコシルトランスフェラーゼをコードするDNAは、化学合成によるか、適切な細胞もしくは細胞株培養物由来のmRNAの逆転写物をスクリーニングすることによるか、適切な細胞からのゲノムライブラリーをスクリーニングすることによるか、またはこれらの手法の組み合せによって、入手され得る。mRNAまたはゲノムDNAのスクリーニングは、グリコシルトランスフェラーゼ遺伝子配列から形成されたオリゴヌクレオチドプローブを用いて実行され得る。プローブは、公知の手順に従って従来のハイブリダイゼーションアッセイにおいて使用される、蛍光基、放射性原子または化学発光基のような検出可能な基で標識され得る。代替的には、グリコシルトランスフェラーゼ遺伝子配列は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)手順の使用によって得られ得、PCRオリゴヌクレオチドプライマーがグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子配列から作製される。Mullisらに対する米国特許第4,683,195号、およびMullisらに対する米国特許第4,683,202号を参照のこと。
【0142】
グリコシルトランスフェラーゼは、グリコシルトランスフェラーゼをコードするDNAを含むベクターで形質転換された宿主細胞において合成され得る。ベクターは複製可能なDNA構築物である。ベクターは、グリコシルトランスフェラーゼ酵素をコードするDNAを増幅すること、および/またはグリコシルトランスフェラーゼ酵素をコードするDNAを発現することのいずれかのために、使用される。発現ベクターは、このグルコシルトランスフェラーゼ酵素をコードするDNAが、適切な宿主において、グリコシルトランスフェラーゼの発現をもたらし得る適切な制御配列に作動可能に連結された、複製可能なDNA構築物である。このような制御配列の必要性は、選択された宿主および選ばれた形質転換方法に依存して変化する。一般的に、制御配列は、転写プロモーター、転写を制御する任意の作動配列、適切なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、および転写終結および翻訳終結を制御する配列、を含む。増幅ベクターは、発現制御ドメインを必要としない。必要とされる全てのものは、宿主細胞中で複製する能力(通常、複製起点のより付与される)、および形質転換体の認識を容易にするための選択マーカーである。
【0143】
本発明の組成物の調製における使用のための、適切なグリコシルトランスフェラーゼの例は、本明細書中に記載される。当業者は、様々な量(例えば、1〜100mU/mgのタンパク質)の各酵素を、基質(例えば、1〜10mg/ml)と反応させることによって、他の適切なグリコシルトランスフェラーゼを識別し得、この基質に、目的のグリコシルトランスフェラーゼに対する潜在的なアクセプター部位を有するオリゴコッサリドが結合されている。グリコシルトランスフェラーゼが所望の部位に糖残基を付加する能力を、比較する。基質と結合したオリゴサッカリドの潜在的アクセプター部位を、同じ特異性を有する他のグリコシルトランスフェラーゼよりも効率的にグリコシル化する能力を示すグリコシルトランスフェラーゼは、本発明の方法における使用に適切である。
【0144】
いくつかの実施形態のために、基質に対する酵素の低い比率を使用して所望の糖化形態(glycoform)を達成するグリコシルトランスフェラーゼを使用することは、有利である。いくつかの実施形態において、グリコシル化の所望の程度が、基質1mgにつき約50mU以下のグリコシルトランスフェラーゼを使用して得られる。酵素のコストをより下げるために、基質1mgにつき約40mU未満のグリコシルトランスフェラーゼが使用され得、よりさらに好ましくは、基質に対するグリコシルトランスフェラーゼの比率は、約35mU/mg以下、そしてより好ましくは約25mU/mg以下である。酵素のコストの観点から最も好ましくは、所望のグリコシル化の所望の程度が、1mgの基質につき約10mU/mg未満のグリコシルトランスフェラーゼを使用して得られる。代表的反応条件は、約5〜25mU/mgの基質の範囲、または少なくとも1〜2mg/mlの濃度で存在する基質と共に10〜50mU/mlの反応混合物の範囲で存在するグリコシルトランスフェラーゼを有する。複数酵素の反応において、これらの酵素量は、グリコシルトランスフェラーゼ数、スルホトランスフェラーゼ数、またはトランス−シアリダーゼ数に比例して増加され得る。
【0145】
しかし、他の実施形態において、より多くの酵素量を使用することが望ましくあり得る。例えば、より早い反応速度を得るために、当業者は、約2〜10倍まで酵素量を増加させ得る。反応温度もまた、より速い反応速度を得るために増加され得る。例えば、約30℃〜約37℃の温度が適切である。
【0146】
本発明の方法の有効性は、組換え産生されたグリコシルトランスフェラーゼの使用によって増大され得る。組換え産生は、大規模な基質修飾に必要とされる、多量のグリコシルトランスフェラーゼの産生を可能とする。グリコシルトランスフェラーゼの膜係留ドメインの欠失(このことは、このグリコシルトランスフェラーゼを可溶性にし、従って、多量のグリコシルトランスフェラーゼの産生および精製を容易にする)は、このグリコシルトランスフェラーゼをコードする改変された遺伝子の組換え発現によって達成され得る。グリコシルトランスフェラーゼの組換え生産に適切な方法の記載については、米国特許第5,032,519号を参照のこと。
【0147】
標的基質が固体支持体上に固定化されたグリコシル化方法もまた、本発明によって提供される。用語「固体支持体」はまた、準固体支持体(semi−solid support)を含む。好ましくは、標的基質は可逆的に固定化されて、グリコシル化反応が完了した後に基質が解放され得る。適切なマトリクスは、当業者に公知である。例えば、イオン交換を使用して、グリコシル化反応が進行する間に、適切な樹脂上に基質を一時的に固定化し得る。目的の基質に特異的に結合するリガンドもまた、親和性ベースの固定化のために使用され得る。目的の基質に結合する抗体が適切である。グリコシル化され得る目的基質に特異的に結合する色素および他の分子もまた適切である。別の実施形態において、1つ以上の酵素がグリコシダーゼである。
【0148】
例示的な実施形態において、使用される全ての酵素は、トランス−シアリダーゼを除外して、グリコシルトランスフェラーゼである。
【0149】
(1.フコシルトランスフェラーゼ反応)
多くのサッカリドは、生物学的反応を示すために特定のフコシル化構造物の存在を必要とする。細胞内の認識機構は、しばしば、フコシル化オリゴサッカリドを必要とする。例えば、細胞接着分子として機能する多くのタンパク質(P−セレクチン、E−セレクチンを含む)は、特定の細胞表面フコシル化炭水化物構造体(例えば、シアリルLewis xおよびシアリルLewis構造体)を結合する。さらに、ABO血液型系を形成する特定の炭水化物構造体が、フコシル化される。3つの群の各々の中の炭水化物構造体は、Fucα1,2Galβ1−ジサッカリド単位を共有する。血液型Oの構造体において、このジサッカリドは、末端の構造である。血液型Aの構造体は、このジサッカリドに末端GalNAc残基を付加するα1,3GalNAcトランスフェラーゼによって形成される。血液型Bの構造体は、末端のガラクトース残基を付加するα1,3ガラクトシルトランスフェラーゼによって形成される。これらLewis血液型構造体はまた、フコシル化される。例えば、Lewis xおよびLewis構造体は、それぞれ、Galβ1,4(Fucα1,3)GlcNacおよびGalβ1,4(Fucα1,4)GlcNacである。これらの構造体の両方は、さらにシアリル化(NeuAcα2,3−)されて対応するシアリル化構造体を形成し得る。目的の他のLewis血液型構造体は、Fucα1,2Galβ1,4(Fucα1,3)GlcNAcβ−ORおよびFucα1,2Galβ1,3(Fucα1,4)GlcNAc−ORのそれぞれである、Lewis y構造体およびb構造体である。ABO血液型構造体およびLewis血液型構造体の構造体およびそれらの合成に関与する酵素の記載については、Essentials of Glycobiology、Varkiら編、16章(Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、NY、1999)を参照のこと。
【0150】
フコシルトランスフェラーゼは、グアノシン−5’−ジホスホフコースからサッカリドアクセプターの特定のヒドロキシルにフコース単位を転移する合成経路において使用されている。例えば、Ichikawaは、クローニングしたフコシルトランスフェラーゼを用いてシアリル化ラクトースアミンのフコシル化を含む方法によって、シアリルLewis−Xを調製した(Ichikawaら、J.Am.Chem.Soc.114:9283−9298(1992))。Loweらは、細胞中で非天然フコシル化活性を発現させ、これによってフコシル化糖タンパク質、フコシル化細胞表面などを作製する方法を記載している(米国特許第5,955,347号)。
【0151】
1つの実施形態において、本発明の方法は、フコシルトランスフェラーゼに対するアクセプター部分を有する基質と、フコースドナー部分、フコシルトランスフェラーゼおよびフコシルトランスフェラーゼ活性に必要な他の試薬を含む反応混合物とを接触させることによって実行される。フコースをフコースドナー部分からフコシルトランスフェラーゼアクセプター部分に転移するのに十分な時間、かつそれに適切な条件下で、基質を反応混合物中でインキュベートする。好ましい実施形態において、このフコシルトランスフェラーゼは、組成物中で、少なくとも60%のフコシルトランスフェラーゼのそれぞれのアクセプター部分のフコシル化を触媒する。
【0152】
多くのフコシルトランスフェラーゼが当業者に公知である。簡潔に述べると、フコシルトランスフェラーゼとしては、GDP−フコースからアクセプターの糖のヒドロキシ部分にL−フコースを転移する、任意の酵素が挙げられる。いくつかの実施形態において、例えば、アクセプターの糖は、オリゴサッカリドグリコシドにおけるGalβ(1→3,4)GlcNAc群中のGlcNAcである。この反応に適切なフコシルトランスフェラーゼとしては、公知のGalβ(1→3,4)GlcNAc α(1→3,4)フコシルトランスフェラーゼ(FucT−III E.C.No.2.4.1.65)(これはヒトの乳から得られる(例えば、Palcicら、Carbohydrate Res.190:1−11(1989);Prieelsら、J.Biol.Chem.256:10456−10463(1981);およびNunezら、Can.J.Chem.59:2086−2095(1981)を参照のこと))、ならびにβGal(1→4)βGlcNAc α(1→3)フコシルトランスフェラーゼ(FucT−IV、FucT−V、FucT−VIおよびFucT−VII、E.C.No.2.4.1.65)(これはヒトの血清中に見出される)が挙げられる。βGal(1→3,4)βGlcNAc α(1→3,4)フコシルトランスフェラーゼの組換え形態もまた利用可能である(Dumasら、Bioorg.Med.Letters 1:425−428(1991)およびKukowska−Latalloら、Genes and Development 4:1288−1303(1990)を参照のこと)。他の例示的なフコシルトランスフェラーゼとしては、α1,2フコシルトランスフェラーゼ(E.C.No.2.4.1.69)が挙げられる。酵素的フコシル化は、以下によって実施され得る:Molliconeら、Eur.J.Biochem.191:169−176(1990)または米国特許第5,374,655号に記載される方法;Schistosoma mansoni(Trotteinら、(2000)Mol.Biochem.Parasitol.107:279−287)由来のα1,3−フコシルトランスフェラーゼ;ならびにα1,3フコシルトランスフェラーゼIX(ヒトおよびマウスのFucT−IXのヌクレオチド配列は、Kaneko(1999)FEBS Lett.452:237−242に記載され、そしてヒト遺伝子の染色体座は、Kaneko(1999)Cytogenet.Cell Genet.86:329−330に記載される)。最近、アクセプターとしてN−連結GlcNAcを使用する、カタツムリLymnaea stagnalis由来およびリョクトウ由来の報告されたα1,3−フコシルトランスフェラーゼが、それぞれ、van Teteringら(1999)FEBS Lett.461:311−314およびLeiterら(1999)J.Biol.Chem.274:21830−21839に記載される。さらに、Raskoら(2000)J.Biol.Chem.275:4988−94に記載されるような、ヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)のα(1,3/4)フコシルトランスフェラーゼ、ならびにH.Pyloriのα1,2−フコシルトランスフェラーゼ(Wangら、(1999)Microbiology.145:3245−53)のような、細菌のフコシルトランスフェラーゼがある。また、本発明において有用なフコシルトランスフェラーゼの記載については、Staudacher,E.(1996)Trends in Glycoscience and Glycotechnology,8:391−408を参照のこと。
【0153】
いくつかの実施形態において、本発明の方法において使用されるフコシルトランスフェラーゼは、少なくとも約1U/mL、通常少なくとも約5U/mLの活性を有する。
【0154】
他の実施形態において、本発明の方法における使用のためのフコシルトランスフェラーゼとしては、FucT−VIIおよびFucT−VIが挙げられる。
【0155】
特定のFucT分子が、基質をフコシル化するのに著しく効果的である。例えば、FucT−VIは、基質をフコシル化するのに、FucT−Vより約8倍効果的である。従って、好ましい実施形態において、本発明は、フコシルトランスフェラーゼを使用して基質上のアクセプターをフコシル化する方法を提供し、このフコシルトランスフェラーゼは、FucT−Vを使用する同一条件下で達成されるよりも、少なくとも約2倍高い、より好ましくは少なくとも約4倍高い、なおより好ましくは少なくとも約6倍高い、さらにより好ましくは少なくとも約8倍高い、フコシル化の度合を提供する。現在好ましいフコシルトランスフェラーゼとしては、FucT−VIおよびFucT−VIIが挙げられる。
【0156】
選択された基質に対する特異性は、好まれるフコシルトランスフェラーゼが満たすべき唯一の第1の判定基準である。好ましくは、本発明の方法において使用されるフコシルトランスフェラーゼはまた、種々の基質を効率的にフコシル化し得、そして少なくとも約500mgの基質のフコシル化を可能とする反応のスケールアップを支持し得る。さらに好ましくは、フコシルトランスフェラーゼは、比較的低コストかつ低い製造設備(infrastructure)要求性で、少なくとも約1kgの基質、そしてさらに好ましくは少なくとも約10kgの基質の合成を可能とするフコシル化反応のスケールを支持する。
【0157】
フコース残基のフコシルトランスフェラーゼ触媒性結合に適切なアクセプター部分としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:GlcNAc−OR、Galβ1,3GlcNAc−OR、NeuAcα2,3Galβ1,3GlcNAc−OR、Galβ1,4GlcNAc−ORおよびNeuAcα2,3Galβ1,4GlcNAc−OR(ここで、Rは、少なくとも1つの炭素原子を有するアミノ酸基、サッカリド基、オリゴサッカリド基またはアグリコン基である)。Rは基質に結合するか、または基質の一部である。特定の反応に適切なフコシルトランスフェラーゼは、所望されるフコース結合の型(例えば、α2、α3またはα4)、目的の特定のアクセプター、およびフコシルトランスフェラーゼが所望の高収率のフコシル化を達成する能力に基づいて、選択される。適切なフコシルトランスフェラーゼおよびそれらの特性は、上に記載される。
【0158】
組成物中に、基質に結合するオリゴサッカリドの十分な割合がフコシルトランスフェラーゼアクセプター部分を含まない場合、適切なアクセプターを合成し得る。例えば、フコシルトランスフェラーゼに対するアクセプターを合成するための1つの好ましい方法は、GlcNAc残基をGlcNAcトランスフェラーゼアクセプター部位(これは基質に結合するオリゴサッカリド上に存在する)に結合させるためのGlcNAcトランスフェラーゼの使用を含む。好ましい実施形態において、目的の潜在的アクセプター部分の高率をグリコシル化する能力を有するトランスフェラーゼが選択される。次いで、この得られたGlcNAcβ−ORは、フコシルトランスフェラーゼに対するアクセプターとして使用され得る。
【0159】
得られたGlcNAcβ−OR部分は、フコシルトランスフェラーゼ反応の前にガラクトシル化されて、例えば、Galβ1,3GlcNAc−OR残基またはGalβ1,4GlcNAc−OR残基を生じ得る。いくつかの実施形態において、ガラクトシル化工程およびフコシル化工程は、同時に実施され得る。ガラクトシル化アクセプターを必要とするフコシルトランスフェラーゼを選択することによって、所望の生成物のみを生成する。従って、この方法は、以下を包含する:
(a) 式GlcNAcβ−ORの化合物を、UDP−ガラクトースの存在下で、化合物Galβ1,4GlcNAcβ−ORまたは化合物Galβ1,3GlcNAc−ORを生成するのに十分な条件下で、ガラクトシルトランスフェラーゼを用いてガラクトシル化する工程;ならびに
(b) (a)において生成した化合物を、フコシルトランスフェラーゼを使用して、GDP−フコースの存在下で、以下から選択される化合物を生成するのに十分な条件下で、フコシル化する工程:
Fucα1,2Galβ1,4GlcNAc1β−O1R;
Fucα1,2Galβ1,3GlcNAc−OR;
Fucα1,2Galβ1,4GalNAc1β−O1R;
Fucα1,2Galβ1,3GalNAc−OR;
Galα1,4(Fuc1,α3)GlcNAcβ−OR;または
Galα1,3(Fuc1,4)GlcNAc−OR。
【0160】
所望される活性を有するさらなるフコシルトランスフェラーゼを含むことによって、さらなるフコース残基が上記の構造体に付加され得る。例えば、これらの方法は、Fucα1,2Galβ1,4(Fucα1,3)GlcNAcβ−ORおよびFucα1,2Galβ1,3(Fucα1,4)GlcNAc−ORのようなオリゴサッカリド決定基を生成し得る。従って、別の好ましい実施形態において、この方法は、少なくとも2つのフコシルトランスフェラーゼの使用を包含する。複数のフコシルトランスフェラーゼを、同時的にまたは連続的にいずれかで使用する。フコシルトランスフェラーゼが連続的に使用される場合、一般的に、フコシル化多段工程の間で糖タンパクが精製されないことが好ましい。複数のフコシルトランスフェラーゼが同時に使用される場合、酵素活性は2つの別々の酵素から導かれ得るか,あるいは1つより多くのフコシルトランスフェラーゼ活性を有する単一の酵素から導かれ得る。
【0161】
(2.シアリルトランスフェラーゼ)
基質に対して所望の生物学的活性を付与するオリゴサッカリド決定基は、しばしばシアリル化される。従って、本発明は、高収率で基質に結合したオリゴサッカリドをシアリル化する方法を提供する。好ましい実施形態において、この方法は、メンバーが実質的に一様なシアリル化パターンを有する、基質集団を生成する。代表的に、本発明の方法によって生成される、シアリル化される種を有する基質上の糖鎖は、変更されない基質より、高い割合の末端ガラクトース残基がシアリル化される。好ましくは、基質に結合したオリゴサッカリド上に存在する約60%より多く、より好ましくは約80%より多くの末端ガラクトース残基が、本方法の使用によってシアリル化される。より好ましくは、本発明の方法は約90%より多くのシアリル化を生じ、そしてさらにより好ましくは、約95%より多くのシアリル化末端ガラクトース残基を生じる。最も好ましくは、組成物中の基質上に存在する、本質的に100%の末端ガラクトース残基が、本発明の方法を使用した修飾によってシアリル化される。これらの方法は、代表的に、約48時間以内、より好ましくは約24時間以内で所望されるレベルのシアリル化を達成し得る。
【0162】
組換えシアリルトランスフェラーゼ(アンカードメインを欠損したものを含む)ならびに組換えシアリルトランスフェラーゼを生産する方法の例は、例えば、米国特許第5,541,083号に見出される。少なくとも15個の異なる哺乳動物のシアリルトランスフェラーゼが記載され、そしてこれらのうちの13個のcDNAが今日までにクローニングされている(本明細書中で使用される系統的な命名法については、Tsujiら(1996)Glycobiology 6:v−xivを参照のこと)。これらのcDNAは、シアリルトランスフェラーゼの組換え産生のために使用され得、これらシアリルトランスフェラーゼは、次いで本発明の方法において使用され得る。
【0163】
シアリル化は、トランス−シアリダーゼまたはシアリルトランスフェラーゼのいずれかを使用して達成され、シアリルトランスフェラーゼが使用される場合で特定の決定基がα2,6−結合化シアル酸を必要とする場合を除く。本発明の方法は、適切なドナー部分の存在下でアクセプターと適切な酵素とを接触させることによって、シアリルトランスフェラーゼまたはトランス−シアリダーゼに対するアクセプターをシアリル化する工程を包含する。シアリルトランスフェラーゼについて、CMP−シアル酸が好ましいドナー部分である。しかし好ましくは、トランス−シアリダーゼは、このトランス−シアリダーゼがシアル酸を付加し得ない脱離基を含むドナー部分を使用する。
【0164】
目的のアクセプター部分としては、例えば、Galβ−ORが挙げられる。いくつかの実施形態において、アクセプター部分を、CMP−シアル酸の存在下で、シアル酸がアクセプター部分の非還元末端に転移される条件下で、シアリルトランスフェラーゼと接触させて、化合物NeuAcα2,3Galβ−ORまたは化合物NeuAcα2,6Galβ−ORを生成する。この式において、Rは、少なくとも1つの炭素原子を有するアミノ酸基、サッカリド基、オリゴサッカリド基、またはアグリコン基である。例示の実施形態において,
Galβ−ORはGalβ1,4GlcNAc−Rであり、ここで、Rは基質に結合するかまたは基質の一部である。
【0165】
例示の実施形態において、本方法はシアリル化およびフコシル化の両方がなされた化合物を提供する。このシアリルトランスフェラーゼ反応およびフコシルトランスフェラーゼ反応は一般的に、連続的に行われる。なぜなら、大部分のシアリルトランスフェラーゼは、フコシル化されたアクセプターに対して活性ではないからである。しかし、FucT−VIIは、シアリル化されたアクセプターのみに対して作用する。従って、FucT−VIIは、シアリルトランスフェラーゼと共に、同時性の反応において使用され得る。
【0166】
トランス−シアリダーゼを使用してシアリル化を達成する場合、フコシル化反応およびシアリル化反応は、同時的に、またはいずれかの順番で連続的にのいずれかで行われ得る。修飾される基質は、適切な量のトランス−シアリダーゼ、適切なシアル酸ドナー基質、フコシルトランスフェラーゼ(α1,3結合またはα1,4結合を形成し得る)および適切なフコシルドナー基質(例えば、GDP−フコース)を含む反応混合物と共にインキュベートされる。
【0167】
本発明における使用に適切であるシアリルトランスフェラーゼの例としては、以下が挙げられる:ST3Gal III(例えば、ラットまたはヒトのST3Gal III)、ST3Gal IV、ST3Gal I、ST6Gal I、ST3Gal V、ST6Gal II、ST6GalNAc I、ST6GalNAc IIおよびST6GalNAc III(本明細書中で使用されるシアリルトランスフェラーゼの命名法は、TsujiらGlycobiology 6:v−xiv(1996)に記載されるとおりである)。α(2,3)シアリルトランスフェラーゼ(EC 2.4.99.6)として引用される例示のα(2,3)シアリルトランスフェラーゼは、シアル酸を、Galβ1→3Glcジサッカリドまたはグリコシドの非還元性末端Galに転移する。Van den Eijndenら、J.Biol.Chem.256:3159(1981)、Weinsteinら、J.Biol.Chem.257:13845(1982)およびWenら、J.Biol.Chem.267:21011(1992)を参照のこと。別の例示のα2,3シアリルトランスフェラーゼ(EC 2.4.99.4)は、シアル酸を、ジサッカリドまたはグリコシドの非還元性末端Galに転移する。Rearickら、J.Biol.Chem.254:4444(1979)およびGillespieら、J.Biol.Chem.267:21004(1992)を参照のこと。さらなる例示の酵素としては、Gal−β−1,4−GlcNAc α−2,6シアリルトランスフェラーゼが挙げられる(Kurosawaら、Eur.J.Biochem.219:375−381(1994)を参照のこと)。α−2,8シアリルトランスフェラーゼをまた使用して、第2のシアル酸残基または複数のシアル酸残基を、本発明の方法において有用な基質に結合し得る。なおさらなる例は、Streptcoccus agalactiae由来のα2,3−シアリルトランスフェラーゼ(cpsK遺伝子として知られるST)、Haemophilus ducreyi由来のα2,3−シアリルトランスフェラーゼ(1st遺伝子として知られる)、Haemophilus influenza由来のα2,3−シアリルトランスフェラーゼ(HI0871遺伝子として知られる)である。Chaffinら、Mol.Microbiol.45:109−122(2002)を参照のこと。
【0168】
(表1:アクセプター基質としてGalβ1,4GlcNAc配列を使用するシアリルトランスフェラーゼ)
【0169】
【表1】
1)Goocheeら,Bio/Technology 9:1347−1355(1991)
2)Yamamotoら,J.Biochem.120:104−110(1996)
3)Gilbertら,J.Biol.Chem.271:28271−28276(1996)。
【0170】
特許請求している方法において有用なシアリルトランスフェラーゼの例は、ST3Gal IIIであり、これはまた、α(2,3)シアリルトランスフェラーゼ(EC 2.4.99.6)と称される。この酵素は、Galβ1,3GlcNAcグリコシドまたはGalβ1,4GlcNAcグリコシドのGalへのシアル酸の転移を触媒し(例えば、Wenら,J.Biol.Chem.267:21011(1992);Van den Eijndenら,J.Biol.Chem.256:3159(1991)を参照のこと)、そして、この酵素は、糖ペプチドにおけるアスパラギン連結オリゴサッカリドのシアリル化を担う。このシアル酸は、Galに連結して、2つのサッカリドの間にα結合を形成する。サッカリド間の結合(連結)は、NeulAcの2位とGalの3位との間に存在している。この具体的な酵素は、ラットの肝臓(Weinsteinら,J.Biol.Chem.257:13845(1982))から単離され得;ヒトのcDNA(Sasakiら(1993)J.Biol.Chem.268:22782−22787;KitagawaおよびPaulson(1994)J.Biol.Chem.269:1394−1401)およびゲノム(Kitagawaら(1996)J.Biol.Chem.271:931−938)のDNA配列が知られており、組み換え発現によるこの酵素の産生が容易に行われる。好ましい実施形態において、この特許請求されるシアリル化法は、ラットST3Gal IIIを使用する。
【0171】
本発明の用途における他の例示的なシアリルトランスフェラーゼとしては、Campylobacter jejuniから単離されるシアリルトランスフェラーゼ(α(2,3)シアリルトランスフェラーゼを含む)が挙げられる。例えば、W099/49051を参照のこと。別の実施形態において、本発明は、二機能性シアリルトランスフェラーゼポリペプチドを提供し、このポリペプチドは、α2,3シアリルトランスフェラーゼ活性とα2,8シアリルトランスフェラーゼ活性の両方を有する。この二機能性シアリルトランスフェラーゼは、適切なサッカリドアクセプター(例えば、末端のガラクトースを有するサッカリド)およびシアル酸ドナー(例えば、CMPシアル酸)との混合物中におかれた場合、ドナーからα2,3結合におけるアクセプターへの第1のシアル酸の転移を触媒し得る。次いで、このシアリルトランスフェラーゼは、ドナーからα2,8結合おける第1のシアル酸残基への第2のシアル酸の転移を触媒し得る。この型のSiaα2,8−Siaα2,3−Gal構造は、ガングリオシドにおいてしばしば、見出される。例えば、欧州特許出願第1147200号を参照のこと。
【0172】
いくつかの実施形態において、本方法において使用されるシアリル化法は、組換え的に産生されるかまたは天然の細菌細胞において産生されるかのいずれかの、細菌のシアリルトランスフェラーゼの使用を通して市販における実用性を増大させた。以下のような2つの細菌シアリルトランスフェラーゼが近年報告された:Photobacterium damsela由来のST6Gal II(Yamamotoら(1996)J.Biochem.120:104−110)およびNeisseria meningitidis由来のST3Gal V(Gilbertら(1996)J.Biol.Chem.271:28271−28276。これらの2つの最近記載された細菌酵素は、オリゴサッカリド基質上のGalβ1,4GlcNAc配列へとシアル酸を転移する。
【0173】
最近報告されたウイルスα2,3−シアリルトランスフェラーゼはまた、本発明のシアリル化法において適切に使用される(Sujinoら(2000)Glycobiology 10:313−320)。この酵素v−ST3GalIは、Myxomaウイルス感染細胞から得られ、そして、それぞれの代表的なアミノ酸配列の比較によって示されるように、この酵素は哺乳動物のST3Gal IVに関連するのは明白である。v−ST3Gal Iは、I型(Galβ1,3−GlcNAcβl−R)アクセプター、II型(Galβ1,4GlcNAc−βl−R)アクセプターおよびIII型(Galβl,3GalNAcβl−R)アクセプターのシアリル化を触媒する。この酵素はまた、フコシル化アクセプター部分(例えば、LewisXおよびLewisa)へとシアル酸を転移させ得る。
【0174】
(3.ガラクトシルトランスフェラーゼ)
実施形態の別の群において、グリコシルトランスフェラーゼは、ガラクトシルトランスフェラーゼである。例示的ガラクトシルトランスフェラーゼとしては、α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼ(E.C.番号2.4.1.151。例えば、Dabkowskiら,Transplant Proc.25:2921(1993)ならびにYamamotoら、Nature 345:229−233(1990)を参照のこと。ウシ(GenBank j04989,Joziasseら,J.Biol.Chem.264:14290−14297(1989))、マウス(GenBank m26925;Larsenら,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 86:8227−8231(1989))、ブタ(GenBank L36152;Strahanら,Immunogenetics 41:101−105(1995)についても参照のこと)が挙げられる。別の適切なα1,3ガラクトシルトランスフェラーゼは、血液型B抗原の合成に関与するα1,3ガラクトシルトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.37,Yamamotoら,J.Biol.Chem.265:1146〜1151(1990)(ヒト))である。
【0175】
β(1,4)ガラクトシルトランスフェラーゼがまた、本発明の方法における用途について適切であり、これは、例えば、EC 2.4.1.90(LacNAcシンターゼ)およびEC 2.4.1.22(ラクトースシンターゼ)(ウシ(D’Agostaroら,Eur.J.Biochem.183:211−217(1989))、ヒト(Masriら,Biochem.Biophys.Res.Commun.157:657−663(1988))、マウス(Nakazawaら,J.Biochem.104:165−168(1988))、ならびにE.C.2.4.1.38およびセラミドガラクトシルトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.45,Stahlら,J.Neurosci.Res.38:234−242(1994))を含む。他の適切なガラクトシルトランスフェラーゼとしては、例えば、α1,2ガラクトシルトランスフェラーゼ(これは、例えば、Schizosaccharomyces pombeに由来する。Chapellら,Mol.Biol.Cell 5:519−528(1994))が挙げられる。他の1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼは、グロボシドを産生するために使用される1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼである。哺乳動物の酵素および細菌の酵素の両方が使用される。
【0176】
遺伝学的操作によってクローニングされた遺伝子に由来する酵素GalNAcTI−XIVのようなタンパク質の産生は、周知である。例えば、米国特許第4,761,371号を参照のこと。ある方法は、十分なサンプルの収集の必要を伴い、次いで、この酵素のアミノ酸配列は、N−末端配列決定によって決定される。次いで、この情報を使用して、全長(膜結合)トランスフェラーゼをコードするcDNAクローンを単離し、その発現に基づいて、昆虫細胞株Sf9中で発現されると完全に活性な酵素の合成を生じる。次いで、この酵素のアクセプター特異性は、16の様々なタンパク質における既知のグリコシル部位の周辺にあるアミノ酸の半定量的分析、その後の合成ペプチドのインビトログリコシル化研究を使用して決定され得る。この研究によって、特定のアミノ酸残基がグリコシル化されたペプチドセグメントにおいて過剰発現していること、およびグリコシル化されたセリン残基およびスレオニン残基の周辺の特定の位置の残基は、他のアミノ酸部分よりも、アクセプター効率に対する顕著な影響を有し得ることが証明された。
【0177】
本発明の用途における他の例示的なガラクトシルトランスフェラーゼとしては、β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼが挙げられる。適切な反応媒体中におかれると、このβ−1,3ガラクトシルトランスフェラーゼは、ドナー(例えば、UDP−Gal)から適切なサッカリドアクセプター(例えば、末端のGalNAc残基を有しているサッカリド)へのガラクトース残基の転移を触媒する。本発明のβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼの例は、Campylobacter species(例えば、C.jejuni)によって産生されるβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼである。本発明の好ましいβ1,3−ガラクトシル−トランスフェラーゼは、C.jejuni OH4384株のβ1,3−ガラクトシル−トランスフェラーゼである。
【0178】
ガラクトシルトランスフェラーゼを使用する本発明の方法によって形成される化合物における例示的な連結(結合)としては、以下が挙げられる:(1)Galβl→4Glc;(2)Galβ1→4GlcNAc;(3)Galβl→3GlcNAc;(4)Galβ1→6GlcNAc;(5)Galβ1→3GalNAc;(6)Galβ1→6GalNAc;(7)Galα1→3GalNAc;(8)Galα1→3Gal;(9)Galα1→4Gal;(10)Galβ1→3Gal;(11)Galβ1→4Gal;(12)Galβ1→6Gal;(13)Galβ1→4キシロース;(14)Galβ1→1’−スフィンゴシン;(15)Galβl→1’−セラミド;(16)Galβ1→3ジグリセリド;(17)Galβ1→O−ヒドロキシリジン;ならびに(18)Gal−S−システイン。例えば、米国特許第6,268,193号;および同第5,691,180号を参照のこと。
【0179】
(4.トランスシアリダーゼ)
上記のように、本発明のプロセスは、少なくとも1つの工程を包含し、この工程において、シアル酸の部分が、トランスシアリダーゼを使用して基質に付加される。本明細書中で使用する場合に、用語「トランスシアリダーゼ」は、α2,3グリコシド結合を介するガラクトースへのシアル酸の付加を触媒する酵素をいう。トランスシアリダーゼは、多くのTrypanosomy種およびいくつかの他の寄生生物において見出されている。これらの寄生生物のトランスシアリダーゼは、かなり低い効率であるが、通常のシアリダーゼの加水分解活性を保持しており、そして、CMP−シアル酸の非存在下で宿主のシアログリコ結合体(sialoglycoconjugate)から寄生生物の表面糖タンパク質への末端シアル酸の可逆的転移を触媒する。Trypanosome cruzi(これはシャガス病を引き起こす)は、表面トランスシアリダーゼ(殆どのシアリダーゼの代表的な加水分解反応の代わりに、末端βガラクトシル残基を含むアクセプターにα−2,3結合シアル酸の転移を優勢に触媒する酵素)を有する(Ribeiraoら,Glycobiol.7:1237−1246(1997);Takahashiら,Anal.Biochem.230:333−342(1995);Scudderら,J.Biol.Chem.268:9886−9891(1993);ならびにVandekerckhoveら,Glycobiol.2:541−548(1992))。T.cruziトランスシアリダーゼ(TcTs)は、サッカリドアクセプター、グリコリピドアクセプター、および糖タンパク質アクセプターの広範囲のものに対する活性を有しており、このTcTsは、β結合ガラクトース残基で終わり、そして排他的にα2−3シアロシド結合を合成する(Scudderら,前出)。低い速度で、TcTsはまた、合成α−シアロシド(α−sialoside)(例えば、p−ニトロフェニル−α−N−アセチルノイラミン酸)からシアル酸を転移させるが、NeuAc2−3Galβl−4(Fucα1−3)Glcは、ドナー基質ではない。N−アセチル−D−ノイラミン酸の改変された2−[4−メチルウンベリフェロン]−α−ケトシド(4MU−NANA)およびそれらのいくつかの誘導体はまた、TcTsにとってのドナーとしての役割を担う(LeeおよびLee,Anal.Biochem.216:358〜364(1994))。3’−シアリル−ラクト−N−ビオース Iの酵素合成は、アクセプターとしてのラクト−N−ビオース IとN−アセチルノイラミニル部分(acetylneuraminil moiety)のドナーとしての2’−(4−メチルウンベリフェリン)−α−D−N−アセチルノイラミン(acelyneuraminic)(Vetereら,Eur.J.Biochem.267:942−949(2000))からTcTsによって触媒された。α2,3シアリル化結合体を合成するためにトランスシアリダーゼを使用することに関するさらなる情報は、欧州特許出願第0 557 580 A2号および米国特許第5,409,817号(これらの各々は本明細書中で参考として援用される)においても見出され得る。leech Macrobdella decoraに由来する分子間トランスシアリダーゼは、シアログリコ結合体(sialoglycoconjugate)における末端のNeu5Ac(N−アセチルノイラミン酸)α2,3Gal結合の切断に対して厳密な特異性を提示し、そして、分子間トランスシアロシル反応を触媒する(Luoら,J.Mol.Biol.285:323−332(1999))。トランスシアリダーゼは、主に、ガラクトースアクセプターに対してシアル酸を付加するが、トランスシアリダーゼは、他のいくつかの糖に対してシアル酸を転移させる。しかし、GalNAcへのシアル酸の転移は、シアリルトランスフェラーゼを必要とする。トランスシアリダーゼの用途についての更なる情報は、PCT出願番号WO 93/18787;およびVetereら,Eur.J.Biochem.247:1083−1090(1997)に見出され得る。
【0180】
(5.GalNAcトランスフェラーゼ)
本発明はまた、β1,4−GalNAcトランスフェラーゼポリペプチドを使用し得る。このβ1,4−GalNAcトランスフェラーゼは、反応混合物中に置かれると、ドナー(例えば、UDP−GalNAc)から適切なアクセプターサッカリド(代表的には、末端のガラクトース残基を有するサッカリド)へのGalNAc残基の転移を触媒する。この得られた構造である、GalNAcβ1,4−Gal−は、多くのサッカリド化合物の中でも、ガングリオシドおよび他のスフィンゴイド(sphingoid)において見出される。
【0181】
本発明で有用なβ1,4−GalNAcトランスフェラーゼは、Campylobacter種(例えば、C.jejuni)によって産生される。本発明において好ましいβ1,4 GAlNAcトランスフェラーゼポリペプチドは、C.jejuni OH4384株のβ1,4 GAlNAcトランスフェラーゼポリペプチドである。
【0182】
本発明の用途の例示的なGalNAcトランスフェラーゼは、以下の連結を形成する:(1)(GalNAcα1→3)[(Fucα1→2)]Galβ−;(2)GalNAcα1→Ser/Thr;(3)GalNAcβ1→4Gal;(4)GalNAcβ1→3Gal;(5)GalNAcαl→3GalNAc;(6)(GalNAcβ1→4GlcUAβ1→3)n;(7)(GalNAcβ1→41dUAα1→3−)n;(8)Manβ→GalNAcαGlcNAcαAsn。例えば、米国特許第6,268,193号;および同第5,691,180号を参照のこと。
【0183】
(6.GlcNAcトランスフェラーゼ)
本発明は、必要に応じて、GlcNAcトランスフェラーゼを利用する。本発明の実施において有用な例示的N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼは、以下の連結を形成し得る:(1)GlcNAcβ1→4GlcNAc;(2)GlcNAcβ→Asn;(3)GlcNAcβ1→2Man;(4)GlcNAcβ→4Man;(5)GlcNAcβ→6Man;(6)GlcNAcβ1→3Man;(7)GlcNAcα1→3Man;(8)GlcNAcβ1→3Gal;(9)GlcNAcβl→4Gal;(10)GlcNAcβl→6Gal;(11)GlcNAcαl→4Gal;(12)GlcNAcαl→4GlcNAc;(13)GlcNAcβl→6GalNAc;(14)GlcNAcβ1→3GalNAc;(15)GlcNAcβ→4GlcUA;(16)GlcNAcαl→4GlcUA;(17)GlcNAcα1→4IdUA。例えば、米国特許第6,268,193号;および同第5,691,180号を参照のこと。
【0184】
(7.複数酵素オリゴサッカリ合成)
上で議論したように、いくつかの実施形態において、2以上の酵素を使用して、所望のオリゴサッカリド部分を形成する。例えば、特定のオリゴサッカリド部分は、所望の活性を提示するために、ガラクトース、シアル酸、およびフルクトースの付加を必要とする。したがって、本発明は、2以上の酵素(例えば、グリコシルトランスフェラーゼ、トランスシアリダーゼ、またはスルホトランスフェラーゼ)を使用して所望するオリゴサッカリド決定基の高収量合成を得る方法を提供する。
【0185】
いくつかの場合、基質結合オリゴサッカリドは、基質のインビボ生合成の際の目的とする特定のグリコシルトランスフェラーゼのためのアクセプター部分を含む。このような基質は、この基質のグリコシルパターンを事前に改変することなしに本発明の方法を使用してグリコシル化され得る。しかし、他の場合において、目的の基質が、適切なアクセプター部分を欠いている。このような場合、本発明の方法を使用して、基質のグリコシル化パターンを改変し得、その結果、次いで、基質結合オリゴサッカリドが、事前に選択された目的のサッカリド単位のグリコシルトランスフェラーゼ触媒結合部位のためのアクセプター部位を含み、所望のオリゴサッカリド決定基を形成する。
【0186】
基質結合オリゴサッカリドは、必要に応じて、はじめ、全体または部分的のいずれかにおいて「トリミング(trim)」され、グリコシルトランスフェラーゼについてのアクセプター部分または1以上の適切な残基が適切なアクセプターを得るために付加され得る部位のいずれかに曝露され得る。グリコシルトランスフェラーゼおよびエンドグリコシダーゼのような酵素は、付加反応およびトリミング反応にとって有用である。
【0187】
例示的な実施形態において、上記の節で記載した複数酵素法は、以下を含むサッカリドの形成にいたる:GaINAc、グルコース、ガラクトース、フコース、およびシアル酸。
【0188】
シアリルトランスフェラーゼまたはトランスシアリダーゼ(α2,3−連結シアル酸についてのみ)のいずれかは、このような方法において使用され得る。このトランスシアリダーゼ反応は、改変されるたんぱく質と反応混合物をインキュベートする工程を包含し、この反応混合物は、以下を含む:適切な量のガラクトシルトランスフェラーゼ(galβ1,3またはgalβ1,4)、適切なガラクトシルドナー(例えば、UDP−ガラクトース)、トランスシアリダーゼ、適切なシアル酸ドナー基質、フコシルトランスフェラーゼ(これは、α1,3連結またはα1,4連結を生成し得る)、適切なフコシルドナー基質(例えば、GDP−フコース)、および二価金属イオン。これらの反応は、連続的または同時にのいずれかで実施され得る。
【0189】
シアリルトランスフェラーゼが使用されると、例示的な実施形態において、この方法は、適切な量のガラクトシルトランスフェラーゼ(galβ1,3またはgalβ1,4)、適切なガラクトシルドナー(例えば、UDP−ガラクトース)、シアリルトランスフェラーゼ(α2,3またはα2,6)ならびに適切なシアル酸ドナー基質(例えば、CMPシアル酸)を含む反応混合物と共に改変されるタンパク質をインキュベートする工程を包含する。この反応は、完結するまで実質的に進行することが可能となり、次いで、フコシルトランスフェラーゼ(これは、α1,3連結またはα1,4連結を生成し得る)および適切なフコシルドナー基質(例えば、GDP−フコース)が付加される。シアリル化した基質(例えば、FucT VII)を必要とするフコシルトランスフェラーゼが使用される場合、この反応は同時に実施され得る。
【0190】
(8.グリコシルトランスフェラーゼ反応混合物)
グリコシルトランスフェラーゼ、基質および上述のような他の反応混合物成分は、反応媒体水溶液(溶液)中で混合することよって合わせられる。この媒体は一般的に、約5〜約9のpH値を有している。媒体の選択は、この媒体が所望のレベルでpH値を維持する能力に依存している。したがって、いくつかの実施形態において、この媒体は、約7.5のpH値に緩衝化する。緩衝剤が使用されない場合、この媒体のpHは、使用される特定のグリコシルトランスフェラーゼに依存して約5〜8.5に維持されるべきである。フコシルトランスフェラーゼについて、このpH範囲は、好ましくは、約7.2〜約7.8に維持されている。シアリルトランスフェラーゼについて、この範囲は、好ましくは、約5.5と約6.5との間にある。適切な塩基は、NaOHであり、好ましくは、6M NaOHである。
【0191】
酵素の量または濃度は、活性単位で表現され、これは触媒反応の初期速度の指標である。1活性単位によって、所定の温度(代表的には37℃)およびpH値(代表的には7.5)における1分間あたり1μmolの生成物の形成を触媒する。従って、10単位の酵素は、温度37℃かつpH値7.5において1分間で10μmolの基質が10μmolの生成物に変換されるときの触媒量の酵素である。
【0192】
反応媒体はまた、必要とされる場合、可溶化界面活性剤(例えば、TritonまたはSDS)および有機溶媒(例えば、メタノールまたはエタノール)を含み得る。これらの酵素は、溶液中に遊離して使用され得るかまたはポリマーのような支持体に結合してされ得る。したがって、この反応混合物は開始時において実質的に一様であるが、いくらかの沈降物が、その反応の間に形成し得る。
【0193】
上記の過程が実施される温度は、ちょうど凝固点よりも上から最も感受性の高い酵素が変性する温度までの範囲に及び得る。その温度範囲は、好ましくは、約0℃〜約45℃であり、そして、より好ましくは、約20℃〜約37℃である。
【0194】
このように形成された反応混合物は、グリコシル化される基質に結合されるオリゴサッカリド基上に存在する所望のオリゴサッカリド決定基を所望する高収量で取得するのに十分な時間に亘って維持される。大規模調製のために、この反応物は、8時間〜240時間に亘って進行されることがしばしば可能であり、12時間と72時間との間の時間が最も代表的である。
【0195】
1より多くのグリコシルトランスフェラーゼを使用して実質的に一様な基質を有する基質の組成物を得る実施形態において、第2のグリコシルトランスフェラーゼ反応のための酵素および試薬は、第1のグリコシルトランスフェラーゼ反応が完結に近づいて直に反応媒体に付加され得る。酵素のいくつかの組合せのために、グリコシルトランスフェラーゼおよび対応する基質が、単一の初期反応混合物中に合わされ得;このような同時反応における酵素は、好ましくは、他の酵素のためのアクセプターとしての役割を果たしえない生成物を形成しない。例えば、殆どのシアリルトランスフェラーゼは、フコシル化したアクセプターをシアリル化せず、その結果、シアリル化されたアクセプター上でのみで機能するフコシルトランスフェラーゼ(例えば、FucT VII)が使用されない限り、両方の酵素による同時反応は、最も可能性のある場合として、所望のオリゴサッカリド決定基の所望する高収量を生じない。単一のベッセル中で連続した2つのグリコシルトランフェラーゼ反応を実施することによって、全体の収量は、中間体種を単離する手順よりも改善される。さらに、余分な溶媒および副産物の浄化処理および廃棄処理が軽減される。
【0196】
1つ以上のグリコシルトランスフェラーゼ反応が、グリコシルトランスフェラーゼサイクルの一部分として実施され得る。グリコシルトランスフェラーゼサイクルの好ましい条件および説明が記載されている。多くのグリコシルトランスフェラーゼサイクル(例えば、シアリルトランスフェラーゼサイクル,ガラクトシルトランスフェラーゼサイクルおよびフコシルトランスフェラーゼサイクル)が、米国特許第5,374,541号およびWO 9425615 Aに記載される。他のグリコシルトランスフェラーゼサイクルは、IchikawaらJ.Am.Chem.Soc.114:9283(1992),WongらJ.Org.Chem.57:4343(1992),DeLucaら,J.Am.Chem.Soc.117:5869−5870(1995)、およびIchikawaらIn Carbohydrates and Carbohydrate Polymers.Yaltami編(ATL Press,1993)に記載されている。
【0197】
上記のグリコシルトランスフェラーゼサイクルについて、このプロセスにおいて使用される種々の反応物の濃度および量は、反応条件(例えば、温度およびpH値)およびグリコシル化されるアクセプターサッカリドの選択および量を含む多くの因子に依存する。このグリコシル化プロセスによって、触媒量の酵素の存在下ので、活性化ヌクレオチド、活性化されたドナー糖の再生および産生されたPPiの回収が可能となるので、このプロセスは、上で議論した立体化学的基質の濃度または量によって制限される。本発明の方法に従って使用され得る反応物の濃度についての制限は、このような反応物の安定性によって決定される。
【0198】
好ましくは、アクセプターが消費されつくされるまでグリコシル化が進行するように、活性化ヌクレオチド、ホスフェートドナー、ドナー糖、および酵素の濃度が選択される。シアリルトランフェラーゼの状況において、以下に議論される考察は、一般に、他のグリコシルトランスフェラーゼサイクルに応用可能である。
【0199】
これらの酵素の各々が、触媒量で存在する。この触媒量の特定の酵素は、酵素の基質の濃度ならびに反応条件(例えば、温値、時間およびpH値)に従って変化する。予め選択した基質濃度および反応条件下の所定の酵素のための触媒量を決定するための手段は、当業者にとって周知である。
【0200】
別の例示的な実施形態において、この反応混合物は、少なくとも1つのグリコシルトランスフェラーゼ、ドナー基質、アクセプター糖および二価の金属カチオンを含む。この反応媒体における二価の金属カチオンの濃度は、約2mMと約75mMとの間で維持されており、好ましくは、約5mMと約50mMとの間で維持されており、そして、より好ましくは、約5mMと約30mMとの間で維持されている。
【0201】
反応媒体中の金属イオン濃度を周期的にモニタリングし、そして、さらなる量の二価金属イオンをこの媒体に供給することによって、この反応サイクルは、適切な時間枠内で完結するように駆動され得る。さらに、1より多くのグリコシルトランスフェラーゼが使用される場合、構成的なサイクルが、中間生成物を単離することなしに同一の反応溶液内で実施され得る。さらに、阻害性ピロホスフェートを取り除くことによって、この反応サイクルは、実質的に高度の基質(アクセプター)濃度で実施され得る。本発明の使用において好ましい二価金属イオンとしては、Mn++、Mg++、Co++、Ca++、Zn++およびそれらの組合せが挙げられる。より好ましくは、この二価金属イオンは、Mn++である。
【0202】
さらなる例示的な実施形態において、この方法は、グリコシルトランスフェラーゼ(例えば、シアリルトランスフェラーゼ)を、1mgの糖タンパク質あたり約50mU以下の濃度、好ましくは1mg糖タンパク質あたり約5〜25mUの間の濃度で使用して方法が実施される。代表的には、反応混合物中のシアリルトランスフェラーゼの濃度は、10〜50mU/mlであり、この糖タンパク質濃度は、少なくとも約2mg/反応混合物mlである。好ましい実施形態において、本方法は、サッカリド上の適切なグリコシルアクセプター部分の約80%を超えるグリコシル化(例えば、シアリル化)を生じる。一般に、約80%を超えるグリコシル化を得るための必要時間は、約48時間以下である。
【0203】
(9.他のグリコシルトランスフェラーゼ)
他のグリコシルトランスフェラーゼを、フコシルトランスフェラーゼおよびシアリルトランスフェラーゼについて詳細に記載されたのと同様のトランスフェラーゼサイクルにて置換し得る。特に、このグリコシルトランスフェラーゼは、例えば、グルコシルトランスフェラーゼ(例えば、Alg8(Stagljovら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:5977(1994))またはAlg5(Heesenら,Eur.J.Biochem.224:71(1994)))、N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(例えば、α(1,3)N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ、β(1,4)N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(Nagataら,J.Biol.Chem.267:12082−12089(1992)およびSmithら,J.Biol Chem.269:15162(1994))およびポリペプチドN−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(Homaら,J.Biol Chem.268:12609(1993))であり得る。適切なN−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼとしては、GnTI(2.4.1.101,Hullら,BBRC 176:608(1991))、GnTII、およびGnTIII(Iharaら,J.Biochem.113:692(1993))、GnTV(Shoreibanら,J.Biol.Chem.268:15381(1993))、O結合型N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(Bierhuizenら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:9326(1992))、N−アセチルグルコサミン−1−ホスフェートトランスフェラーゼ(Rajputら,Biochem J.285:985(1992)およびヒアルロナンシンターゼが挙げられる。適切なマンノシルトランスフェラーゼとしては、α(1,2)マンノシルトランスフェラーゼ、α(1,3)マンノシルトランスフェラーゼ、β(1,4)マンノシルトランスフェラーゼ、Dol−P−Manシンターゼ、OCh1、およびPmt1が挙げられる。
【0204】
(10.精製)
上記のプロセスによって生成された生成物は、精製せずに使用され得る。しかし、いくつかの適用では、基質を精製することが所望される。基質の精製についての標準的な周知技術が適切である。アフィニティクロマトグラフィーは、適切な精製方法の一例である。特定の基質または基質上の特定のオリゴサッカリド決定基に対して親和性を有するリガンドを、クロマトグラフィーマトリクスに結合させ、そしてそのマトリクスを通して、基質組成物を通過させる。必要に応じて行われる洗浄工程の後で、その基質をそのマトリクスから溶出する。
【0205】
濾過もまた、基質の精製のために使用され得る(例えば、米国特許第5,259,971号および同第6,022,742号を参照のこと)。
【0206】
基質の精製が所望される場合、その基質は、実質的に精製された形態で回収されることが好ましい。しかし、いくつかの適用では、基質の精製なしかまたは中程度のレベルのみの基質の精製が必要とされる。
【0207】
さらに、本発明の別の局面に従って、膜および有機溶媒を使用して、反応生成物(例えば、本発明のプロセスに従って調製される反応生成物)を精製する改善された方法が提供される。糖脂質およびグリコスフィンゴリピドが、この精製方法によって精製され得る。本明細書中に記載される任意の酵素反応生成物が、この精製方法に従って精製され得る。この方法は、有機溶媒の添加を伴いながら、膜精製系において反応生成物を濃縮する工程を包含する。適切な溶媒としては、アルコール(例えば、メタノール)、ハロカーボン(例えば、クロロホルム)、および炭化水素とアルコールとの混合物(例えば、キシレン/メタノール)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、この溶媒はメタノールである。この濃縮工程は、任意の選択された程度まで、反応生成物を濃縮し得る。例示的な実施形態において、濃縮の程度は、約1倍〜約100倍(約5倍〜約50倍を含み、また、約10倍〜約20倍を含む)である。膜精製系は、当業者に公知の種々のこのような系から選択される。好ましい実施形態において、膜精製系は、10K中空繊維の膜精製系である。例示的な実施形態において、この方法は、10K中空繊維の膜精製系を使用して、反応生成物を約10倍に濃縮する工程、水を添加し、そして最初の容量の約1/10までその溶液をダイアフィルトレーションする工程、滞留物にメタノールを添加する工程、およびダイアフィルトレーションして、その反応生成物を浸透液に通過させる工程、を包含する。この浸透溶液の濃縮により、反応生成物が生じる。
【0208】
上記のプロセスによって生成された生成物は、精製せずに使用され得る。しかし、通常は、生成物を回収することが好ましい。薄層クロマトグラフィーもしくは厚層(thick layer)クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、または膜濾過のような、グリコシル化サッカリドの回収のための標準的な周知技術が使用され得る。膜濾過を使用すること、より好ましくは、逆浸透膜を利用すること、または本明細書中以降および本明細書中に引用される参考文献において考察されるような、回収のための1つ以上のカラムクロマトグラフィー技術を使用することが好ましい。例えば、膜濾過(ここで、膜は約3000〜約10,000の分子量カットオフを有する)を使用して、グリコシルトランスフェラーゼのようなタンパク質を除去し得る。次いで、ナノ濾過または逆浸透を使用して、塩を除去し得、および/または生成物のサッカリドを精製し得る(例えば、WO 98/15581を参照のこと)。ナノ濾過膜は、使用される膜に依存して、一価の塩を通過させるが、約100ダルトン〜約2,000ダルトンより大きな多価の塩および無電荷の溶質を保持する、逆浸透膜の一種である。従って、代表的な適用において、本発明の方法によって調製されるサッカリドは、この膜に保持され、そして夾雑している塩は通り抜ける。
【0209】
本発明の方法によって調製される化合物は、以下から選択される1つ以上の工程によって、不純物から分離され得る:イムノアフィニティクロマトグラフィー、イオン交換カラム分画(例えば、ジエチルアミノエチル(DEAE)またはカルボキシメチル基またはスルホプロピル基を含むマトリクスにおいて)、Blue−Sepharose、CM Blue−Sepharose、MONO−Q、MONO−S、レンチルレクチン−Sepharose、WGA−Sepharose、Con A−Sepharose、Ether Toyopearl、Butyl Toyopearl、Phenyl Toyopearl、またはプロテインA Sepharoseにおけるクロマトグラフィー、SDS−PAGEクロマトグラフィー、シリカクロマトグラフィー、等電点電気泳動、逆相HPLC(例えば、付加された脂肪族基を有するシリカゲル)、ゲル濾過(例えば、Sephadex分子篩またはサイズ排除クロマトグラフィーを使用する)、および化合物を選択的に結合するカラムにおけるクロマトグラフィー。
【0210】
別の実施形態では、本発明の方法によって化合物を生成する系に由来する上清を、まず、市販のタンパク質濃縮フィルター(例えば、AmiconまたはMillipore Pelliconの限外濾過ユニット)を使用して濃縮する。この濃縮工程の後で、濃縮物を、適切な精製マトリクスに適用し得る。例えば、適切なアフィニティマトリクスとしては、適切な支持体に結合された糖脂質についてのリガンドを含み得る。あるいは、アニオン交換樹脂(例えば、ペンダントDEAE基を有するマトリクスまたは基質)を使用し得る。適切なマトリクスとしては、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロース、またはタンパク質精製において通常使用される他の型のものが挙げられる。あるいは、カチオン交換工程が使用され得る。適切なカチオン交換体としては、スルホプロピル基またはカルボキシメチル基を含む種々の不溶性マトリクスが挙げられる。スルホプロピル基が特に好ましい。
【0211】
最後に、疎水性RP−HPLC媒体(例えば、ペンダントメチル基または他の脂肪族基を有するシリカゲル)を使用する1つ以上のRP−HPLC工程を使用して、ポリペプチド改変体組成物をさらに精製し得る。前述の精製工程のいくつかまたはすべてはまた、種々の組み合わせにおいて、均一な改変糖タンパク質を提供するために使用され得る。
【0212】
大規模発酵から得られる本発明の糖脂質は、Urdalら,J.Chromatog.296:171(1984)に開示される方法と類似の方法によって精製され得る。この参考文献は、分取用HPLCカラムにおける組換えヒトIL−2の精製のための2つの連続的なRP−HPLC工程を記載している。あるいは、アフィニティクロマトグラフィーのような技術を使用して、改変糖脂質を精製し得る。
【0213】
(結合体化)
本発明の方法によって生成される化合物で、その未結合形態にあるものは、一般的に、治療剤として有用である。本発明の化合物は、広範な種々の化合物に結合体化されて、特異的な標識、プローブ、分離媒体、診断用試薬および/または治療用試薬などを作製し得る。本発明の化合物を結合体化し得る種の例としては、例えば、生体分子(例えば、タンパク質(例えば、抗体、酵素、レセプターなど)、核酸(例えば、RNA、DNAなど))、生物活性分子(例えば、薬物、毒素など)、検出可能な標識(例えば、発蛍光団、放射性同位元素)、固体支持体(例えば、ガラスまたはポリマー性のビーズ、シート、繊維、膜(例えば、ナイロン、ニトロセルロース)、スライド(例えば、ガラス、石英))およびプローブ;などが挙げられる。
【0214】
(リンカー)
本発明の化合物は、その化合物を基に連結する1つ以上のリンカー部分で官能化され得、このリンカーを通して化合物は、必要に応じて、別の種に繋がれ得る。このリンカーは、グリコシル部分(例えば、シアル酸)に付着され得、このグリコシル部分は、その改変にもかかわらず、適切なグリコシルトランスフェラーゼについての基質として役立つ。
【0215】
本発明の方法において使用するための改変された糖の調製は、糖残基への改変基の結合、およびグリコシルトランスフェラーゼの基質となる安定な付加物の形成を包含する。従って、架橋剤を使用して、改変基と糖とを結合体化させることがしばしば好ましい。炭水化物部分に改変基を結合させるために使用され得る例示的な二官能性化合物としては、二官能性のポリ(エチレングリコール)、ポリアミド、ポリエーテル、ポリエステルなどが挙げられるが、これらに限定されない。他の分子に炭水化物を連結させるための一般的なアプローチは、文献において公知である。例えば、Leeら,Biochemistry 28:1856(1989);Bhatiaら,Anal.Biochem.178:408(1989);Jandaら,J.Am.Chem.Soc.112:8886(1990)およびBednarskiら,WO 92/18135を参照のこと。以下に続く考察において、反応性基は、新生改変糖の糖部分において良好なものとして(as benign)処理される。この考察の焦点は、例示の明確化である。当業者は、この考察が、改変基における反応性基にも同様に関連することを理解する。
【0216】
例示的なストラテジーは、ヘテロ二官能性架橋剤SPDP(n−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート)を使用して、保護されたスルフヒドリルを糖に組み込む工程、次いで、改変基における別のスルフヒドリルとのジスルフィド結合の形成のために、そのスルフヒドリルを脱保護する工程、を包含する。
【0217】
SPDPが、改変糖のグリコシルトランスフェラーゼ基質として作用する能力に悪影響を与える場合には、一連の他の架橋剤のうちの1つ(例えば、2−イミノチオランまたはN−スクシンイミジルS−アセチルチオアセテート(SATA))を使用して、ジスルフィド結合を形成する。2−イミノチオランは一級アミンと反応して、すぐに、アミン含有分子上の保護されていないスルフヒドリルを組み込む。SATAはまた、一級アミンと反応するが、保護されたスルフヒドリルを組み込む。このスルフヒドリルは後に、ヒドロキシルアミンを使用して脱アセチル化され、遊離のスルフヒドリルを生成する。各々の場合において、組み込まれたスルフヒドリルは、他のスルフヒドリルまたは保護されたスルフヒドリルと自由に反応して、SPDPと同様に必要とされるジスルフィド結合を形成する。
【0218】
上記のストラテジーは、本発明において使用されるリンカーの例示であり、そして限定ではない。ペプチドに改変基を架橋するための異なるストラテジーにおいて使用され得る他のリンカーが利用可能である。例えば、TPCH(S−(2−チオピリジル)−L−システインヒドラジドおよびTPMPH((S−(2−チオピリジル)メルカプト−プロピオノヒドラジド)は、穏やかな過ヨウ素酸塩での処理によって予め酸化された炭水化物部分と反応し、そのようにして、架橋剤のヒドラジド部分と過ヨウ素酸塩により生成されたアルデヒドとの間でヒドラゾン結合を形成する。TPCHおよびTPMPHは、糖に対して2−ピリジルチオン保護スルフヒドリル基を導入し、このスルフヒドリル基はDTTで脱保護され得、次いで、成分間におけるジスルフィド結合の形成のような結合体化のために、引き続いて使用され得る。
【0219】
ジスルフィド結合形成が、安定な改変糖の生成のために不適切であることが見出された場合には、成分間においてより安定な結合を組み込む他の架橋剤を使用し得る。ヘテロ二官能性架橋剤GMBS(N−γ(gama)−マレイミドブチリルオキシ(malimidobutyryloxy))スクシンイミド)およびSMCC(スクシンイミジル4−(N−マレイミド−メチル)シクロヘキサン)は一級アミンと反応し、そのようにして、マレイミド基を成分に導入する。マレイミド基は、引き続いて、他の成分におけるスルフヒドリル(これは、先に言及した架橋剤によって導入され得る)と反応し得、そのようにして、成分間に安定なチオエーテル結合を形成する。成分間における立体障害が、いずれかの成分の活性に、または改変糖がグリコシルトランスフェラーゼ基質として作用する能力に干渉する場合には、成分間に長いスペーサーアームを導入する架橋剤が使用され得る。この架橋剤は、先に言及したいくつかの架橋剤(すなわち、SPDP)の誘導体を含む。従って、有用である適切な架橋剤は豊富に存在し;その各々は、最適なペプチド結合体生成および改変糖生成に対してそれらが有する効果に依存して選択される。
【0220】
別の例示的な実施形態において、脂質は、対応するアルデヒドまたはケトンに変換され(例えば、オゾン化によって)、そしてアミン含有キャリア分子は、改変脂質での還元アミノ化を介して誘導体化される。
【0221】
種々の試薬が、分子間の化学的架橋によって改変糖の成分を改変するために使用される(架橋試薬および架橋手順の概説については、以下を参照のこと:Wold,F.,Meth.Enzymol.25:623−651,1972;Weetall,H.H.,およびCooney,D.A.,ENZYMES AS DRUGS.(HolcenbergおよびRoberts編)395−442頁,Wiley,New York,1981;Ji,T.H.,Meth.Enzymol.91:580−609,1983;Mattsonら,Mol.Biol.Rep.17:167−183,1993(これらはすべて、本明細書中で参考として援用される))。好ましい架橋試薬は、種々のゼロレングス(zero−length)の架橋試薬、ホモ二官能性の架橋試薬、およびヘテロ二官能性の架橋試薬に由来するものである。ゼロレングスの架橋試薬は、外因性物質の導入を全く伴わない、2つの内因性化学基の直接的な結合を含む。ジスルフィド結合の形成を触媒する薬剤は、このカテゴリーに属する。別の例は、カルボキシル基および一級アミノ基の濃縮を誘導してアミド結合を形成する試薬(例えば、カルボジイミド、エチルクロロホルメート、ウッドワード試薬K(2−エチル−5−フェニルイソキサゾリウム−3’−スルホネート)、およびカルボニルジイミダゾール)である。これらの化学試薬に加えて、酵素であるトランスグルタミナーゼ(グルタミル−ペプチドγ−グルタミルトランスフェラーゼ;EC 2.3.2.13)が、ゼロレングスの架橋試薬として使用され得る。この酵素は、基質として一級アミノ基を通常使用して、タンパク質に結合したグルタミニル残基のカルボキサミド基において、アシル転移反応を触媒する。好ましいホモ二官能性試薬およびヘテロ二官能性試薬は、アミノ基、スルフヒドリル基、グアニジノ基、インドール基、または非特異的な基と反応性であり得る、2つの同一の部位または2つの異なる部位をそれぞれ含む。
【0222】
例示的な実施形態において、本発明は、式Iに従う化合物を提供する。ここで、グリコシル残基またはYから選択されるメンバーは、以下の式:
【0223】
【化16】
を有し、ここでL1は、置換アルキルまたは非置換アルキル、置換ヘテロアルキルまたは非置換ヘテロアルキル、および置換アリールまたは非置換アリールから選択されるメンバーであり;そしてYは、保護された反応性官能基または保護されていない反応性官能基、検出可能な標識、および標的化部分から選択されるメンバーである。
【0224】
別の例示的な実施形態において、L1は、エーテルまたはポリエーテルであり、好ましくは、エチレングリコール、エチレングリコールオリゴマー、およびそれらの組み合わせから選択されるメンバーであり、約60ダルトン〜約10,000ダルトン、より好ましくは、約100ダルトン〜約1,000ダルトンの分子量を有する。
【0225】
代表的なポリエーテルベースの置換基としては、以下の構造:
【0226】
【化17】
が挙げられるが、これらに限定されず、ここでjは、好ましくは、1以上100以下の数である。他の官能化ポリエーテルは当業者に公知であり、そして多くのものが、例えば、Shearwater Polymers,Inc.(Alabama)から、市販されている。
【0227】
別の好ましい実施形態において、リンカーは、分子または表面にオリゴサッカリド化合物を結合体化させるための反応性基を含む。代表的な有用な反応性基を、以下に続く節において、より詳細に考察する。有用な反応性基に関するさらなる情報は、当業者に公知である。例えば、Hermanson,BIOCONJUGATE TECHNIQUES,Academic Press,San Diego,1996を参照のこと。
【0228】
改変グリコシルドナー種(「改変糖」)は、好ましくは、改変糖ヌクレオチド、活性化された改変糖、およびヌクレオチドでもなく活性化もされていない単純なサッカリドである改変糖から選択される。任意の所望される炭水化物構造が、本発明の方法を使用して、基質に付加され得る。代表的には、この構造はモノサッカリドであるが、本発明は、改変されたモノサッカリド糖の使用に限定されず;オリゴサッカリドおよびポリサッカリドも同様に有用である。
【0229】
改変基は、酵素的手段、化学的手段、またはそれらの組み合わせによって糖部分に結合され、それにより改変糖を生成する。糖は、改変部分の結合を可能にする任意の位置で置換され、それらはなお依然として、その糖が、基質に改変糖を連結させるために使用される酵素に対する基質として機能することを可能とする。好ましい実施形態において、シアル酸が糖である場合、そしてそのシアル酸は、ピルビル(pyruvyl)側の鎖の9位またはシアル酸において通常アセチル化されているアミン部分の5位のいずれかにおいて、改変基により置換されている。
【0230】
本発明の特定の実施形態において、改変糖ヌクレオチドは、基質に改変糖を付加するために利用される。改変形態で本発明において使用される例示的な糖ヌクレオチドとしては、ヌクレオチドモノホスフェート、ヌクレオチドジホスフェート、もしくはヌクレオチドトリホスフェート、またはそれらのアナログが挙げられる。好ましい実施形態において、改変糖ヌクレオチドは、UDP−グリコシド、CMP−グリコシド、またはGDP−グリコシドから選択される。さらにより好ましくは、改変糖ヌクレオチドは、UDP−ガラクトース、UDP−ガラクトサミン、UDP−グルコース、UDP−グルコサミン、GDP−マンノース、GDP−フコース、CMP−シアル酸、またはCMP−NeuAcから選択される。
【0231】
本発明はまた、改変糖(例えば、改変ガラクトース、改変フコースおよび改変シアル酸)を使用して、化合物を合成する方法を提供する。改変シアル酸を使用する場合、シアリルトランスフェラーゼまたはトランス−シアリダーゼ(α2,3−結合型シアル酸に対してのみ)のいずれかを、これらの方法において使用し得る。
【0232】
他の実施形態において、改変糖は、活性化された糖である。本発明において有用である活性化された改変糖は代表的には、活性化された脱離基を含むように合成的に改変されたグリコシドである。本明細書中で使用される場合、用語「活性化された脱離基」は、酵素により調節される求核置換反応において容易に置換される部分をいう。多くの活性化された糖が当該分野で公知である。例えば、Vocadloら,CARBOHYDRATE CHEMISTRY AND BIOLOGY,Vol.2.Ernstら編,Wiley−VCH Verlag:Weinheim,Germany,2000;Kodamaら,Tetrahedron Lett.34:6419(1993);Lougheedら,J.Biol.Chem.274:37717(1999))を参照のこと。
【0233】
活性化する基の例としては、フルオロ、クロロ、ブロモ、トシレートエステル、メシレートエステル、トリフレートエステルなどが挙げられる。本発明において使用するために好ましい活性化された脱離基は、アクセプターへのグリコシドの酵素的転移をさほど立体的に妨害しない基である。従って、活性化されたグリコシド誘導体の好ましい実施形態としては、グリコシルフルオリドおよびグリコシルメシレートが挙げられ、グリコシルフルオリドが特に好ましい。グリコシルフルオリドの中でも、α−ガラクトシルフルオリド、α−マンノシルフルオリド、α−グルコシルフルオリド、α−フコシルフルオリド、α−キシロシルフルオリド、α−シアリルフルオリド、α−N−アセチルグルコサミニルフルオリド、α−N−アセチルガラクトサミニルフルオリド、β−ガラクトシルフルオリド、β−マンノシルフルオリド、β−グルコシルフルオリド、β−フコシルフルオリド、β−キシロシルフルオリド、β−シアリルフルオリド、β−N−アセチルグルコサミニルフルオリドおよびβ−N−アセチルガラクトサミニルフルオリドが最も好ましい。
【0234】
例として、グリコシルフルオリドは、まず糖をアセチル化し、次いで、それをHF/ピリジンで処理することによって、遊離の糖から調製され得る。これにより、保護(アセチル化)されたグリコシルフルオリドの熱力学的に最も安定なアノマー(すなわち、α−グリコシルフルオリド)が生成される。安定性の低いアノマー(すなわち、β−グリコシルフルオリド)が所望される場合、それは、過アセチル化された糖をHBr/HOAcまたはHClで変換してアノマー性の臭化物または塩化物を生成することによって調製され得る。この中間体を、フッ化物の塩(例えば、フッ化銀)と反応させて、グリコシルフルオリドを生成する。アセチル化されたグリコシルフルオリドは、メタノール(例えば、NaOMe/MeOH)中における弱(触媒性)塩基との反応によって脱保護され得る。さらに、多くのグリコシルフルオリドが市販されている。
【0235】
他の活性化されたグリコシル誘導体が、当業者に公知の従来の方法を使用して調製され得る。例えば、グリコシルメシレートは、完全にベンジル化された糖のヘミアセタール形態を塩化メシルで処理することによって、次いで、ベンジル基を除去するための触媒性水素添加によって、調製され得る。
【0236】
さらに例示的な実施形態において、改変糖は、触角様の構造を有するオリゴサッカリドである。好ましい実施形態において、触角の1つ以上の末端は改変部分を有する。1つより多くの改変部分が、触角様構造を有するオリゴサッカリドに結合される場合、このオリゴサッカリドは、改変部分を「増幅」するために有用である;ペプチドに結合体化された各オリゴサッカリドユニットは、複数のコピーの改変基をペプチドに結合する。
【0237】
(反応性官能基)
上記で考察したように、本発明の特定の化合物は、リンカーアームの成分のような反応性官能基を保有し、これらは、任意のアリール核もしくはアリール核に結合された鎖(例えば、アルキル鎖)またはキレート剤の骨格における任意の位置に位置づけられ得る。これらの化合物を、本明細書中では「反応性リガンド」という。反応性基が、アリール核に繋がれたアルキル鎖または置換アルキル鎖に結合される場合、この反応性基は好ましくは、アルキル鎖の末端の位置に位置づけられる。本発明を実施するにおいて有用な反応性基および反応のクラスは、一般的に、生体結合体化学の分野において周知であるものである。本発明の反応性リガンドに利用可能な現在好ましい反応のクラスは、比較的穏やかな条件下で進行するものである。これらとしては、求核性置換(例えば、アミンおよびアルコールと、アシルハライド(活性エステル)との反応)、求電子性置換(例えば、エナミン反応)、ならびに炭素−炭素および炭素−ヘテロ原子の多重結合への付加(例えば、Michael反応、Diels−Alder付加)が挙げられるが、これらに限定されない。これらのおよび他の有用な反応が、例えば、March,ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY,第3版,John Wiley&Sons,New York,1985;Hermanson,BIOCONJUGATE TECHNIQUES,Academic Press,San Diego,1996;およびFeeneyら,MODIFICATION OF PROTEINS;Advances in Chemistry Series,Vol.198,American Chemical Society,Washington,D.C.,1982において考察されている。
【0238】
有用な反応性官能基としては、例えば、以下が挙げられる:
(a)カルボキシル基およびその種々の誘導体(N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、N−ヒドロキシベンズトリアゾールエステル、酸ハライド、アシルイミダゾール、チオエステル、p−ニトロフェニルエステル、アルキル、アルケニル、アルキニルおよび芳香族エステルを含むが、これらに限定されない);
(b)ヒドロキシル基(これはエステル、エーテル、アルデヒドなどに変換され得る);
(c)ハロアルキル基(ここで、ハライドは、後に求核性基(例えば、アミン、カルボン酸アニオン、チオールアニオン、カルボアニオンまたはアルコキシドイオン)で置換され得、それによりハロゲン原子の部位において新たな基の供給結合を生じる);
(d)ジエノフィル基(これはDiels−Alder反応に関与し得る(例えば、マレイミド基)である)。
(e)アルデヒド基またはケトン基(その結果、引き続く誘導体化は、カルボニル誘導体(例えば、イミン、ヒドラゾン、セミカルバゾンまたはオキシム)の形成を介して、またはGrignard付加もしくはアルキルリチウム付加のような機構を介して、可能となる);
(f)スルホニルハライド基(例えば、スルホンアミドを形成するための、アミンとの引き続く反応のため);
(g)チオール基(これはジスルフィドに変換され得るか、またはアシルハライドと反応し得る);
(h)アミン基またはスルフヒドリル基(これは、例えば、アシル化、アルキル化または酸化され得る);
(i)アルケン(これは、例えば、付加環化、アシル化、Michael付加などを受けえる);
(j)エポキシド(これは、例えば、アミンおよびヒドロキシル化合物と反応し得る);ならびに
(k)ホスホルアミダイトおよび核酸合成において有用な他の標準的な官能基。
【0239】
反応性官能基は、これらがオリゴサッカリドを構築するのに必要な反応に関与することも、このような反応を妨害することもないように、選択され得る。あるいは、反応性官能基は、保護基の存在によって、反応への関与から保護され得る。当業者は、特定の官能基が選択した一連の反応条件を妨害しないように、この官能基をどのように保護するかを理解している。有用な保護基の例については、例えば、Greeneら、PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS,John Wiley & Sons,New York,1991を参照のこと。
【0240】
(検出可能な標識)
例示的な実施形態において、本発明の方法により調製される化合物は、検出可能な標識(例えば、蛍光団または放射性同位体)を含む。この検出可能な標識は、標識されたグリコシル部分が本明細書中で考察されるような適切なグリコシルトランスフェラーゼに対する基質として働くことをなお可能にする様式で、リンカーアームによってグリコシル部分(例えば、シアル酸)に付加し得る。
【0241】
標識が使用される本発明の実施形態は、蛍光標識の使用によって例示される。蛍光標識は、その取り扱いにおいてほとんど注意をはらう必要がないという利点、およびハイスループット可視化技術(コンピュータを含む一体型システムにおける分析物の画像のデジタル化を含む光学分析)に受け入れられるという利点を有する。好ましい標識は、代表的に、高い感度、高い安定性、低いバックグラウンド、長い寿命、低い環境感度および標識における高い特異性により特徴付けられる。
【0242】
多くの蛍光標識は、本発明の組成物中に組み込まれ得る。多くのこのような標識は、例えば、SIGMA chemical company(Saint Louis,MO)、Molecular Probes(Eugene,OR)、R&D systems(Minneapolis,MN)、Pharmacia LKB Biotechnology(Piscataway,NJ)、CLONTECH Laboratories,Inc.(Palo Alto,CA)、Chem Genes Corp.、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)、Glen Research,Inc.、GIBCO BRL Life Technologies,Inc.(Gaithersburg,MD)、Fluka Chemica−Biochemika Analytika(Fluka Chemie AG,Buchs,Switzerland)およびApplied Biosystems(Foster City,CA)、ならびに当業者に公知の多くの他のメーカーから市販されている。さらに、当業者は、特定の用途に適切な蛍光団をどのように選択するかを理解しており、商業的に容易に入手可能ではない場合、必要な蛍光団を新たに合成し得るか、または市販の蛍光化合物を合成的に改変して所望の蛍光標識を達成し得る。
【0243】
(ポリマー)
別の例示的な実施形態において、本発明は、式Iに従うサブユニットを含むポリマーを提供する。このポリマーは、合成ポリマー(例えば、ポリ(スチレン)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(リジン)、ポリエーテル、ポリイミン、デンドリマー、シクロデキストリンおよびデキストラン)、または生体ポリマー(例えば、ポリペプチド(例えば、抗体、酵素、血清タンパク質)、サッカリド、核酸、抗原、ハプテンなど)であり得る。ポリマーは、このようなポリマー(例えば、抗体)に付随する活性を有し得るか、またはこのポリマーは、単に、キャリア分子(例えば、デンドリマー)として働き得る。
【0244】
キャリア分子はまた、多価(polyvalentまたはmultivalent)の種(例えば、本発明の化合物のダイマー、トリマー、テトラマーおよびより高級なホモログ、またはその反応性アナログを含む)である本発明の化合物の骨格として使用され得る。多価の種は、本発明の単一の種または1より多い種から構築され得る。例えば、ダイマー構築物は、「ホモダイマー」または「ヘテロダイマー」であり得る。さらに、本発明の化合物およびその反応性アナログ、がオリゴマーフレームワークまたはポリマーフレームワーク(例えば、ポリリジン、デキストラン、ヒドロキシエチルスターチなど)に結合している多価構築物は、本発明の範囲内である。このフレームワークは、好ましくは、多官能性である(すなわち、本発明の化合物を結合するための、多数の反応性部位を有する)。さらに、このフレームワークは、本発明の単一の種または1より多い本発明の種で誘導体化され得る。
【0245】
さらに、キャリア分子の特性は、同様には官能化されない類似の化合物よりも増大した水溶性を有する化合物を提供するように選択され得る。従って、本明細書中に記載される任意の置換基は、増大した水溶性を有する類似の基で置換され得る。例えば、ヒドロキシル基をジオールで、またはアミンを4級アミン、ヒドロキシルアミンまたは類似のより水溶性の部分で置換することは、本発明の範囲内である。好ましい実施形態において、さらなる水溶性は、本明細書中に記載される化合物のイオンチャネルに対する活性に必須ではない部位を、親化合物の水溶性を増大する部分で置換することによって、与えられる。有機化合物の水溶性を増大する方法は、当該分野で公知である。このような方法としては、有機核を、永久的に荷電した部分(例えば、4級アンモニウム)、または生理学的に関連したpHで荷電される基(例えば、カルボン酸、アミン)で官能化することが挙げられるが、これに限定されない。他の方法としては、有機核を、ヒドロキシル含有基またはアミン含有基(例えば、アルコール、ポリオール、ポリエーテルなど)に付加することが挙げられる。代表的な例としては、ポリリジン、ポリエチレンイミン、ポリ(エチレングリコール)およびポリ(プロピレングリコール)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの化合物に適切な官能化化学および方法論は、当該分野で公知である。例えば、Dunn,R.L.ら編、POLYMERIC DRUGS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS,ACS Symposium Series 第469巻,American Chemical Society,Washington,D.C.1991を参照のこと。
【0246】
別の実施形態において、本発明の方法によって生成される化合物は、免疫原性キャリアに結合される。一般的に使用されるキャリアは、高度に免疫原性であり、このキャリアに結合したハプテンに免疫原性を与え得る大分子である。キャリアの例としては、タンパク質、脂質二重層(例えば、リポソーム)、合成ポリマーもしくは天然ポリマー(例えば、デキストラン、アガロース、ポリ−L−リジン)、または合成有機分子が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい免疫原性キャリアは、免疫原性を有し、ハプテンとの結合体化のための接近可能な官能基を有し、ハプテンでの誘導体化の後に適度に水溶性であり、そしてインビボで実質的に非毒性である、キャリアである。本発明の好ましいキャリアとしては、例えば、5000ダルトン以上の分子量を有するタンパク質キャリア、より好ましくは、アルブミンまたはヘモシアニンが挙げられる。
【0247】
本発明の方法によって調製される組成物の免疫原性は、この組成物を、細胞免疫応答を引き起こし得る1つ以上のペプチド配列に連結することによって、さらに増大され得る(例えば、WO94/20127を参照のこと)。細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を刺激するペプチド、およびヘルパーTリンパ球(HTL)応答を刺激するペプチドが、本発明の化合物に連結するために有用である。これらのペプチドは、上記のようなリンカー部分によって、連結され得る。例示的なリンカーは、代表的には、生理学的条件下で無電荷の比較的小さな中性の分子(例えば、アミノ酸またはアミノ酸模倣物)から構成される。
【0248】
本発明の方法によって調製される化合物は、集団の大部分においてTヘルパー細胞により認識されるTヘルパーペプチドに連結され得る。これは、HLAクラスII分子の多く、ほとんどまたは全てに結合するアミノ酸配列を選択することによって達成され得る。このようなTヘルパーペプチドの例は、830〜843位の破傷風トキソイドである(例えば、Panina−Bordignonら、Eur.J.Immunol.19:2237−2242(1989)を参照のこと)。
【0249】
さらに、本発明の方法によって調製される化合物は、免疫原性を増大するために、複数の抗原決定因子に連結され得る。例えば、複数のHLA型のT細胞による認識を誘導するために、複数の重複T細胞抗原決定因子(クラスターペプチド)をコードする合成ペプチドを使用して、免疫原性を増大し得る(例えば、Ahlersら、J.Immunol.150:5647−5665(1993)を参照のこと)。このようなクラスターペプチドは、重複しているが、異なる抗原決定因子を含む。このクラスターペプチドは、本発明のペプチドによって、共直線的に合成され得る。このクラスターペプチドは、1つ以上のスペーサー分子によって、本発明の化合物に連結され得る。
【0250】
クラスターペプチドに連結された本発明の化合物を含むペプチド組成物はまた、CTL誘導エピトープに連結されたクラスターペプチドとの結合体化において使用され得る。このような組成物は、代替の経路によって、または異なるアジュバントを使用して、投与され得る。
【0251】
あるいは、CTLエピトープおよび/またはHTLエピトープをコードする複数のペプチドは、本発明の化合物との結合体化において使用され得る。
【0252】
ハプテンをキャリアに連結するための多くの方法が、当業者に公知である。例示的な実施形態において、本発明の方法によって調製される糖脂質としては、キーホールリンペットヘモシアニン(これはSMCC(スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート)で活性化されている)と容易に結合するスルフヒドリル基が挙げられる。Deweyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:5374−5378(1987)。この方法において有用なスルフヒドリル保有脂質は、当該分野で認識されている多数の方法によって合成され得る。例えば、末端カルボキシル基を有する脂質は、脱水剤(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC))を使用して、システアミンに連結されて、ジスルフィド架橋を介して連結されたダイマー糖脂質が形成される。このジスルフィド架橋は、還元によって切断されて、モノマースルフヒドリル誘導体化糖脂質を与える。
【0253】
さらに別の好ましい実施形態において、この組成物は、糖脂質とキャリアとの間に位置するリンカー部分を含む。リンカー部分の特徴についての上記の考察は、この実施形態にも実質的に適用可能である。例示的な実施形態において、リンカーアームは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)基を含む。この方法における使用のために適切な二官能性PEG誘導体は、市販されている(Shearwater Polymers)か、または当該分野で周知の方法によって調製され得る。例示的な実施形態において、SMCC活性化KLH(前出)は、スルフヒドリル基を有するPEG−糖脂質結合体と反応する。適切な結合体は、当業者に受入れ可能な多数の合成経路によって調製され得る。例えば、市販の製品(例えば、t−Boc−NH−PEG−NH2)は、脱水剤(例えば、DCC)の存在下で、カルボキシル末端糖脂質と反応し、それにより、この糖脂質のPEGアミドを形成する。t−Boc基は、酸処理(例えば、トリフルオロ酢酸、TFA)によって除去されて、糖脂質の保護されたアミノPEGアミドを与える。脱保護された糖脂質は、続いて、スルフヒドリル保護分子(例えば、3−メルカプトプロピオン酸または市販のチオール補とシステインおよびアミン保護システイン)と、脱水剤の存在下で反応する。次いで、チオール基が脱保護され、そしてこの結合体は、SMCC活性化KLHと反応して、PEGスペーサー基を介してキャリアに結合した自己誘導性アナログを提供する。
【0254】
上記の例示的な実施形態は、特定の本発明の化合物の調製において有用な一般的な反応スキームを例示することを意図し、本発明の範囲および本発明の化合物を生成するために有用な経路を限定すると解釈されるべきではない。
【0255】
(標的化部分)
TIAMおよび他のキレート剤のためのポリマー「支持体」または骨格を提供することに加えて、キャリア分子は、本発明のリガンド(または複合体)を、身体または組織内の特定の領域に、または選択された種または構造にインビトロで標的化するために、使用され得る。標的領域に対してある親和性での、ある種への結合による因子の選択的標的化は、当該分野で周知である。小分子およびポリマー標的化因子の両方が、本発明における用途を有する。
【0256】
リガンド(または複合体)は、標的化因子に結合され得、この標的化因子は、このリガンドを身体の細胞、器官または領域に送達する。例示的な標的化因子(例えば、抗体、レセプターに対するリガンド、レクチン、サッカリド、抗体など)は、当該分野で認識されており、本発明の実施を制限することなく、有用である。他の標的化因子としては、特定の分子認識モチーフ(リガンドに分子量を追加する高分子(例えば、ポリ(エチレングリコール)、ポリサッカリド、ポリアミノ酸など)を含む)を含まないクラスの化合物が挙げられる。本発明のリガンド−標的化因子結合体は、核酸−リガンド結合体の使用によって例示される。例示を明確にし、そして本発明のリガンド(または複合体)が結合体化され得る標的化因子の範囲を限定しないために、リガンド−オリゴヌクレオチド結合体に注目する。さらに、「リガンド」が、有利のリガンドおよびその金属複合体の両方を言及することが理解される。
【0257】
例示的な核酸標的因子としては、アプタマー、アンチセンス化合物および三重らせんを形成する核酸が挙げられる。代表的には、糖残基のヒドロキシル基、塩基残基由来のアミノ基、またはヌクレオチドのホスフェート酸素は、ヌクレオチドベースの標的化因子をリガンドに連結するために必要な化学官能基として使用される。しかし、当業者は、他の「非天然」反応性官能基が、従来の技術によって、核酸に付加され得ることを容易に理解する。例えば、糖残基のヒドロキシル基は、当該分野で周知の技術を使用して、メルカプト基またはアミノ基に変換され得る。
【0258】
アプタマー(または核酸抗体)は、特定の分子標的に結合する、一本鎖DNAもしくは二本鎖DNAまたは一本鎖RNA分子である。一般に、アプタマーは、血液中に循環している標的のプールに結合することによって、分子標的(例えば、タンパク質)の作用を阻害することによって、機能する。アプタマーは、化学官能基を有し、従って、本明細書中で記載されるように、リガンドに供給結合し得る。
【0259】
種々の分子標的は、アプタマー(小分子薬物、代謝産物、補因子、毒素、サッカリドベースの薬物、ヌクレオチドベースの薬物、糖タンパク質などを含む)と、非共有的であるが特異的な会合を形成し得るが、一般に、この分子標的は、タンパク質またはペプチド(血清タンパク質、キニン、エイコサノイド、細胞表面分子などを含む)を含む。アプタマーの例としては、Gileadの抗トロンビンインヒビターGS522およびその誘導体が挙げられる(Gilead Science,Foster City,Calif.)。Macayaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:3745−9(1993);Bockら、Nature(London)355:564−566(1992)、およびWangら、Biochem.32:1899−904(1993)もまた参照のこと。
【0260】
所定の生体分子に特異的なアプタマーは、当該分野で公知の技術を使用して同定され得る。例えば、Tooleら(1992)PCT公開番号WO92/14843;TuerkおよびGold(1991)PCT公開番号WO91/19813;WeintraubおよびHutchinson(1992)PCT公開番号92/05285;ならびにEllingtonおよびSzostak,Nature 346:818(1990)を参照のこと。簡潔には、これらの技術は、代表的に、分子標的と、オリゴヌクレオチドのランダム混合物との複合体化を包含する。アプタマー−分子標的複合体は、複合体化していないオリゴヌクレオチドから分離される。このアプタマーは、分離された複合体から回収され、そして増幅される。この分子標的に対する最高の親和性を有するアプタマー配列を同定するために、このサイクルが繰り返される。
【0261】
(切断可能基)
本発明はまた、結合(これはサッカリド結合体を切断して、遊離させるように設計される)を介して、別の部分(例えば、ポリマー、標的化部分、検出可能な標識、固体支持体)に結合したオリゴサッカリド結合体を調製する方法を提供する。切断可能基としては、可逆性(例えば、容易に加水分解される)の結合、または部分的に可逆性(例えば、部分的にまたはゆっくりと加水分解される)の結合が挙げられる。この結合の切断は、生物学的プロセスまたは生理学的プロセスを介して生じ得る。他の実施形態において、生理学的プロセスは、因子とデンドリマーとの間の結合の切断の前に、複合体内の他の位置の結合を切断し(例えば、他の場合には感受性の化学官能基に連結されたエステル基または他の保護基を除去する)、部分的に分解された複合体を生じる。他の切断もまた、例えば、スペーサーと標的化因子との間、およびスペーサーとリガンドとの間で生じ得る。
【0262】
例示的な実施形態において、本発明の方法において使用される結合は、酵素(例えば、非特異的アミノペプチダーゼまたはエステラーゼ、ジペプチジルカルボキシペプチダーゼ、血液凝固カスケートのプロテアーゼなど)によって、分解される。
【0263】
あるいは、切断は、非酵素プロセスを介する。例えば、化学的加水分解は、複合体により引き起こされるpHの差異により開始され得る。このような場合において、この複合体は、送達ビヒクル中の酸性または塩基性のpHにおいてより高い安定性を示すものの、7.4の生理学的pHにおける、高い化学的不安定度によって特徴付けられ得る。このようなプロセスにおいて切断される例示的な複合体は、N−Mannich塩基結合をそのフレームワーク内に組み込む複合体である。
【0264】
切断可能な化合物の別の例示的な群は、本明細書中で考察される非共有結合性タンパク質結合基に基づく群である。分解に対する切断可能基の感受性は、この群の加水分解変換または酵素変換の研究によって確認され得る。一般に、インビトロ活性とインビボ活性との間の良好な相関が、この方法を使用して見出される。例えば、Phippsら、J.Pharm.Sciences 78:365(1989)を参照のこと、この変換の割合は、例えば、分光光度法によって、または気体−液体クロマトグラフィーもしくは高圧液体クロマトグラフィーによって、容易に決定される。次いで、半減期および他の力学的パラメーターが、標準的な技術を使用して計算され得る。例えば、Lowryら、MECHANISM AND THEORY IN ORGANIC CHEMISTRY,第2版、Harper & Row,Publishers,New York(1981)を参照のこと。
【0265】
(組成物)
いくつかの実施形態において、本発明は実質的に均一なグリコシル化パターンを有する組成物を提供する。この組成物は、選択された糖形態(glycoform)が所望される基質に結合するサッカリドまたはオリゴサッカリドを含む。この組成物は、本発明の方法によって調製される。
【0266】
本発明の組成物において、予め選択されたサッカリド単位が、目的の可能なアクセプター部分の少なくとも約60%に連結される。より好ましくは、この予め選択されたサッカリド単位は、目的の可能なアクセプター部分の少なくとも約80%に、さらにより好ましくは、目的の可能なアクセプター部分の少なくとも95%に連結される。出発基質が目的のオリゴサッカリド構造における不均一性を示す(例えば、出発基質上のオリゴサッカリドのいくつかがすでに、目的のアクセプター部分に結合した予め選択されたサッカリド単位を有している)場合、これらの記載された割合は、このような予め結合したサッカリド単位を含む。
【0267】
(薬学的処方物)
さらに別の実施形態において、本発明は、本発明の方法によって生成された化合物を、薬学的に受容可能なキャリアとの混合物で含む薬学的組成物を提供する。
【0268】
上記の所望のオリゴサッカリド決定因子を有する基質は、次いで、種々の用途(例えば、抗原として、診断試薬として、または治療剤として)使用され得る。従って、本発明はまた、種々の状態の処置において使用し得る薬学的組成物を提供する。この薬学的組成物は、上記の方法に従って作製された基質から構成される。
【0269】
本発明の薬学的組成物は、種々の薬物送達系において使用するために適切である。本発明において使用するために適切な処方物は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mace Publishing Company,Philadelphia,PA,第17版(1985)において見出される。薬物送達のための方法の簡単な総説については、Langer,Science 249:1527−1533(1990)を参照のこと。
【0270】
この薬学的組成物は、予防的および/または治療的処置のための、非経口投与、鼻腔内投与、局所(topical)投与、経口投与もしくは局所(local)投与(例えば、エアロゾルによる)、または経皮投与が意図される。一般に、この薬学的組成物は、非経口投与(例えば、静脈内投与)される。非経口投与のための調製物としては、滅菌水溶液もしくは非水溶液、懸濁液およびエマルジョンが挙げられる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物性油(例えば、オリーブオイル)、および注射用有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)である。水性キャリアとしては、水、アルコール/水溶液、エマルジョンまたは懸濁液(生理食塩水および緩衝化媒体を含む)が挙げられる。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロール、デキストロースと塩化ナトリウム、乳酸加リンガー、または不揮発性油が挙げられ、静脈内ビヒクルとしては、流体および栄養補充剤、電解質補充剤(例えば、リンガーデキストロースに基づくもの)などが挙げられる。保存剤および他の添加剤(例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性気体など)もまた、存在し得る。この組成物は、生理学的条件に近づけるために、必要に応じて、薬学的に受容可能な賦形剤(例えば、pH調節剤および緩衝剤、張度調節剤、湿潤剤、界面活性剤など)を含み得る。
【0271】
その組成物はまた、免疫原性種(例えば、KLH)と結合体化した本発明の方法によって調製された無糖脂質(aglycolipid)を含み得る。さらに、本発明の方法によって調製される組成物、およびそれらの免疫原性結合体は、アジュバントと混ぜ合わせられ得る。
【0272】
これらの組成物を、従来の滅菌技術で滅菌してもいいし、または滅菌濾過してもいい。得られた水溶液を、そのまま使用のためにパッケージしてもいいし、または凍結乾燥しても良く、この凍結乾燥した調製物は、投与前に滅菌水溶性キャリアと合わせられる。この調製物のpHは、代表的には、3〜11の間、より好ましくは5〜9、そして最も好ましくは7〜8である。
【0273】
この化合物を含む組成物が、予防的処置および/または治療的処置のために投与され得る。治療的適用においては、上記に記載されるように、すでに疾患に苦しんでいる患者に対して、その疾患および合併症の症状を治療するのに十分な量または少なくとも部分的に停止させる量の化合物を投与する。これを達成する十分量は、「治療的有効用量」と規定される。この使用における有効量は、疾患の重篤度および患者の体重および全身状態に依存するが、一般に、70kgの体重の患者に対して、1日当り基質量は約0.5mg〜約2,000mgの範囲であり、1日当り約5mg〜約200mgの用量の化合物が、より一般的に使われる。
【0274】
予防的適用において、本発明の基質を含む化合物は、特定の疾患に感受性であるか、またはそれ以外にこの疾患の危険にある患者に対して投与される。そのような量は、「予防的有効量」と規定される。この使用において、正しい量は、再度患者の健康状態および体重に依存するが、一般的な範囲は、70kgの患者につき約0.5〜約1,000mgの範囲であり、より一般的には、体重70kg当り約5mg〜約200mgである。
【0275】
化合物の単回投与または複数回投与が、処置する医者によって選択される用量レベルおよびパターンで実施され得る。任意の事象において、その薬学的処方物は、患者を効果的に処置するのに十分な量の本発明の基質を提供すべきである。
【0276】
この基質はまた、診断試薬としての使用を見出し得る。例えば、標識化基質は、所望のオリゴサッカリド類決定基と対応するリガンドとの間の相互作用に起因して、体の中で基質が濃縮される位置を決定するのに使用され得る。この使用のために、この化合物は、適切な放射性物質(例えば、125I、14Cまたはトリチウム)または当業者に公知の他の標識で標識され得る。
【0277】
本発明のガングリオシドの投与の用量範囲は、免疫応答の症状がある程度の抑制を示す、所望の効果を生じるのに十分な大きさである。この用量は、有害な副作用を引き起こすほど大きくなるべきでない。一般に、用量は、年齢、状態、性別および動物内での疾患の程度によって変化し、当業者によって決定され得る。その用量は、あらゆる逆効果(counterindication)の事象の際に、個々の治療者によって調整され得る。
【0278】
さらなる薬学的方法が、作用の持続時間を制御するために用いられ得る。制御された調製物の放出は、ガングリオシドを結合体化するか、複合体を形成するかまたは吸着するポリマーの使用により達成される。制御された送達は、放出を制御するために、適切な高分子(例えば、ポリエステル、ポリアミノ、カルボキシメチルセルロースおよび硫酸プロタミン)およびこの高分子の濃度、ならびに取込みの方法を選択することにより、実行され得る。制御された調製物の放出による作用の持続性をコントロールするための別の可能な方法は、ポリマー化した材料(例えば、ポリエステル、ポリアミノ酸、ヒドロゲル、ポリ(乳酸)、またはエチレンビニルアセテートのコポリマー)の粒子にガングリオシドを組み込むことである。
【0279】
血漿タンパク質との結合からガングリオシドを保護するために、例えば、コアセルベーション技術によるかまたは界面重合体(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセルまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリレート(methymethacrylate))マイクロカプセルによって)によるか、またはコロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、ミクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)中か、またはマクロエマルジョン中に包含されることが望ましい。このような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第16版、A.Oslo,編,Mack,Easton,Pa.,1980)に開示される。
【0280】
本発明のガングリオシドは、目標を定めることの出来る薬物送達系(例えば、高分子複合体形態、ナノカプセル形態、ミクロスフェア形態、またはビーズ形態)、ならびに脂質ベース系の形態(水中の油のエマルジョン、ミセル、混合ミセル、リポソーム、および再封される赤血球を含む)の合成ポリマーまたは天然ポリマーにおける使用に、十分に適している。これらの系は、集団的なコロイド薬物送達系として、公知である。代表的に、分散ガングリオシド含むそのようなコロイド粒子の直径は、約50nm〜2μmである。コロイド粒子のサイズは、それらの粒子を静脈内に(例えば、注射によってまたはエアロゾルとして)投与するのを可能にする。代表的に、コロイド系の調製において使われる物質(例えば、アルブミン、エチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、レシチン、リン脂質、および大豆油)は、濾過滅菌によって滅菌可能であり、無毒性であり、そして生分解性である。高分子コロイド系は、ミクロカプセル化のコアセルベーションに類似のプロセスによって調製される。
【0281】
例示の実施形態において、そのガングリオシドは、リポソームの成分であり、標的化送達系として使われる。リン脂質を、水性媒体中に穏やかに分散させる場合、それらは膨張し、水和し、そして自発的に、水性媒体を分離する脂質二重層の層を有する多層状の同心円の二重層ベシクルを形成する。通常、このような系は、多層状の同心円のリポソームまたは多層状の同心円のベシクル(MLV)といわれ、約100nm〜約4μmにわたる直径を有する。MLVを超音波処理する場合、約20nm〜約50nmにわたる直径を有する、SUVのコア中に水性媒体を含む小さな単層ベシクル(SUVS)が形成される。
【0282】
リポソーム生成において有用な脂質の例としては、ホスファチジル化合物(例えば、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、およびホスファチジルエタノールアミン)が挙げられる。脂質部分が14〜18個の炭素原子、特に16〜18個の炭素原子を含み、かつ飽和しているジアシルホスファチジルグリセロールが、特に有用である。リン脂質の実例としては、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、およびジステアロイルホスファチジルコリンが挙げられる。
【0283】
本発明のガングリオシドを含むリポソームの調製において、ガングリオシドカプセル化の有効性、ガングリオシドの不安定性、得られるリポソーム集団の均質性およびサイズ、ガングリオシド対脂質の比、調製物の浸透力の不安定性、ならびに処方物の薬学的受容変動性のそのような可変性を、考慮すべきである。Szokaら,Annual Review of Biophysics and Bioengineering,9:467(1980);Deamer,ら,LIPOSOMES,Marcel Dekker,New York,1983,27:Hopeら,Chem.Phys.Lipids,40:89(1986)。
【0284】
本発明のガングリオシドを含むこの標的化送達系を、多様な方法(例えば、静脈内に、粘膜内に、皮下に、腹腔内に、血管内に、局所的に、腔内に、経皮的に、鼻腔内に、および吸入により)で、宿主(特に哺乳動物宿主)に対して投与し得る。ガングリオシドの濃度は、特定の用途、疾患の性質、投与の頻度などにより変化する。標的化送達系カプセル化ガングリオシドを、適切かつ生理学的に受容可能な水溶性媒体(例えば、生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水など)のような、他の化合物を含む処方物中に提供し得る。
【0285】
本発明の方法によって生成されるこれらの化合物はまた、特に本発明の化合物と反応するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の産生に対する免疫原として用いられ得る。種々の免疫グロブリン分子の産生および操作について、当業者に利用可能である多くの技術が、本発明において用いられ得る。抗体は、当業者に周知である種々の手段で作製し得る。
【0286】
非ヒトモノクローナル(例えば、マウス、ウサギ、ウマなど)の産生は、周知であり、例えば、本発明の基質を含む調製物を用いて動物を免疫することによって達成され得る。免疫化動物より得られた抗体産生細胞を、不死化してスクリーニングするか、または始めに所望の抗体の産生についてスクリーニングし、次いで不死化した。モノクローナル抗体産生の一般的な手順の議論については、HarlowおよびLane,Antibodies,A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Publications,N.Y.(1988)を参照のこと。
【実施例】
【0287】
(実施例1:ラクトシルセラミドおよびGM3の合成)
ラクトシルセラミド(d18:2)(7)。ラクトシルスフィンゴシン(2.2g)を、クロロホルム−メタノール−40mMリン酸緩衝液(pH=7.2)を含む110mLの溶液(60/40/9)中に溶解した。次いで、クロロホルム(55mL)およびトリメチルアミン(1.1mL)中に懸濁したN−ヒドロキシスクシンイミドステアレート(13.2g)を添加し、そしてこの反応物を、室温で一晩撹拌した。この溶液を、濃縮して乾燥させ、そしてこの残渣を、アセトン(110mL)中に再懸濁した。次いで、10%塩化マグネシウムのメタノール溶液(11mL)を添加し、そしてこの溶液をドライアイスで1時間冷却した。沈殿物を濾過し、そして冷アセトンで洗浄し、白色固体として3.2gのラクトシルセラミド(7)を得た。HPLC(Metachem Inertsil C8カラム;85%アセトニトリル/15%水、UV 205nm)、Rt=23.1分間、スキーム3を参照のこと。ラクトシルセラミドを合成するための、このプロトコルのさらなるバリエーションを表2に示す。
【0288】
(表2:ラクトシルセラミドの合成)
【0289】
【表2】
GM3(d18:2)(4)。ラクトシルセラミド(7)(5.12g)を、水(4.1L)および3’−シアリルラクトース(253g)および両性洗浄剤(Zwittergent)3−14(9.4g)中に再懸濁した。pHを,7.0に調整し、トランス−シアリダーゼ(174mLの細胞ホモジネート)を添加し、そしてこの反応物を2時間撹拌した。Folch抽出を、GM3を精製するために以下のように使用した。KCl(64g)を、この反応混合物に添加し、29LのCHCl3/CH3OH(2/1)で抽出した。この有機層を分離し、そして水(19L)で洗浄した。この水層を、10LのCHCl3/CH3OH(2/1)で抽出し、そして合わせた有機層を、濃縮して乾燥させ、6.1gのGM3(4)を得た。HPLC(MetaCapsil AMINOカラム;85%アセトニトリル、15% 5mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH=5.6;UV 197nm)、Rt=14.3分間。
【0290】
酵素反応後の代替の精製手順として、この反応混合物を、10K中空繊維膜精製系を使用して10倍に濃縮する。次いで、水(4L)を添加し、この溶液を、最終容量約0.4Lまでダイアフィルトレーションする(diafilter)。次いで、メタノール(4L)を、この保持物(retentate)に添加し、そしてこの溶液を、ダイアフィルトレーションし、GM3がこの浸透物中を通過するのを可能にする。メタノール溶液の濃縮してGM3を得る。
【0291】
GM3を合成するための、このプロトコルのさらなるバリエーションを表3に示す。
【0292】
(表3:GM3合成の最適化)
【0293】
【表3】
(実施例2:GM3、GM2、およびGM1の合成)
ラクトシルスフィンガジエニン(d18:2)(2)。(スキーム2を参照のこと)グルコシルスフィンガジエニン(d18:2)(1)(0.50mM、6.8g)、HEPES(20mM、141g)、MnSO4(50mM、2.5g)、UDP―ガラクトース(4.0mM、76.7g)、NaN3(160mM、5.92g)および水(30L)を、リアクタに添加した。この溶液のpHを、7.4に調整し、そして7.0〜7.5の間に維持した。次いで、β1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ(900単位)を、この反応混合物に添加し、そしてこの溶液を12時間撹拌して、HPLC分析によって決定されるような7.1gのラクトシルスフィンガジエニン(d18:2)(2)を得た。TLC(シリカゲル;CHCl3/CH3OH/H2O/2.5M NH4OH−60/40/5/3),Rf=0.67;HPLC(YMCベーシックカラム;アセトニトリル/リン酸ナトリウム緩衝液(10mM、pH6.5);30%〜80%のアセトニトリルの勾配;UV 205nm)、Rt=11.13分間および11.48分間。MS(エレクトロスプレー)、m/z 620.2[M−H]−。
【0294】
リソ−GM3(d18:2)(3)。3’−シアリルラクトース(16mM、388.8g)および両性洗浄剤(61mM、22.5g)を、上記の反応混合物に添加し、そしてこの反応物容量を、水で45Lに調整した。この懸濁液を、37℃まで加温し、そしてトランス−シアリダーゼ(90,000単位)を添加した。この反応混合物のpHを、このプロセスの間、7.0〜7.5の間に維持した。30分後、この溶液を50℃まで加熱し、次いで、室温まで冷却した。次いで、この反応混合物を、10K中空繊維濾過ユニットを使用して約5Lに濃縮した。水(10L)を、この保持物に添加し、そして保持物を、約5Lに濃縮した。次いで、この保持物を、保持物の容量を維持するために水中50%メタノール(45L)を使用してダイアフィルトレーションした。一旦、水中50%メタノール全体を消費すると、メタノール(10L)を、保持物に添加し、そして約2Lの容量に濃縮した。次いで、50%メタノール/水濾過工程の間に収集した浸透物を、逆相(C18)クロマトグラフィーカラムに直接ローディングした。このカラムを、まず水中50%メタノール、次いで水中85%メタノールで溶出し、そしてリソ−GM3(3)を含む適切な画分を収集して、HPLCによって決定されるような8gの生成物を得た。HPLC(YMCベーシックカラム;アセトニトリル/リン酸ナトリウム緩衝液(10mM、pH6.5);30%〜80%のアセトニトリルの勾配;UV 205nm)、Rt=10.23分間および10.56分間。MS(エレクトロスプレー);m/z 911.3([M+H]−、計算値=911.5)。
【0295】
GM3(d18:2)(4)。次いで、リソ−GM3を含む上記のカラム画分を、約1.5Lに濃縮し、そしてTHF(4.5L)を添加した。次いで、この溶液を、10℃に冷却し、そしてステアロイルクロリド(165mmole,50.0g)を、水酸化ナトリウムの同時添加によりpHを約7.7に維持しながら、撹拌しつつ、この反応溶液に滴下した。酸塩化物の添加が完了した後、この反応混合物を2時間撹拌し、そして1μmバッグフィルターを通して濾過した。この濾液を、逆相(C18)カラムにローディングし、そして水中50%メタノールおよび水中23%THFで洗浄した。この生成物を、まず水中85%メタノール、次いで水中90%メタノールで溶出した。適切な画分を収集し、そしてエバポレートして乾燥させた。次いで、この残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(CHCl3、CH3OH、水、濃NH4OH;50/40/2/0.1)を使用して精製し、濃縮後に白色固体として8.7gの(4)を得る。TLC(シリカゲル;CHCl3/CH3OH/H2O/2.5N NH4OH−60/40/50/3),Rf=0.60。HPLC(YMCベーシックカラム;アセトニトリル/リン酸ナトリウム緩衝液(1mM、pH6.85);8分間において60%〜95%のアセトニトリルの勾配;UV 205nm、1.4mL/分)、Rt=7.72分間。MS(エレクトロスプレー);m/z 1177.7([M+H]−、計算値=1177.7)。
【0296】
GM2(d18:2)(5)。GM3(7.1mmole、8.4g)、両性洗浄剤(29.4mmole、10.7g)、水溶性UDP−GalNAc/UDP−GlcNAc(14.7mmole)、アジ化ナトリウム(37mmole、1.4g)およびGM2シンテターゼ(28単位)を、反応容器に添加し、そして水を添加して容量を約7.0Lにした。この反応混合物を、37℃で12時間加熱した。次いで、この反応混合物を、10K中空繊維濾過ユニットを使用して約0.7Lに濃縮した。この保持物を、保持物の容量を維持するように水(7L)でダイアフィルトレーションした。水が完全に消費されると、次いで保持物の容量を維持しながら、100%メタノール(7L)でダイアフィルトレーションした。メタノールダイアフィルトレーションの間、この生成物を、浸透物中に収集した。この浸透物を、イオン交換カラム(Dowex 50、水素形態)に通し、そして適切な画分を収集した。溶出液のpHを、水酸化ナトリウムで7.4に調整し、そしてこの溶液を、逆相(C18)クロマトグラフィーカラムにローディングした。このカラムを、メタノール/水(50/50、80/20および90/10)で洗浄した。適切な画分を収集し、そして濃縮して乾燥させた。この残渣を水に溶解し、そして凍結乾燥して7.6gのGM2(5)を得た。HPLC(YMCベーシックカラム;4.6×100mm、3μm粒子径;アセトニトリル/リン酸ナトリウム緩衝液(1mM、pH6.85);8分間において60%〜95%のアセトニトリルの勾配;UV 205nm、1.4mL/分)、Rt=6.22分間、(d18:2、C18:0 GM2)。MS(エレクトロスプレー)、m/z 1380.8([M−H]−、計算値=1380.8)。
【0297】
GM1(d18:2)(6)(スキーム2を参照のこと)を、β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼを用いて、ガラクトースの添加によりGM2(d18:2)(5)から合成する。
【0298】
(実施例3:GD3の合成(スキーム9を参照のこと、最上部の反応GM3(22)+シアリルトランスフェラーゼおよびSiaドナーによりGD3(35)を得る))
GD3(d18:1)(35)。両性洗浄剤(0.05mg;0.1%)を、GM3(d18:1)のメタノール溶液(500μM;0.032mg)に添加し、そしてこの溶液をN2ガス流下でエバポレートした。次いで、HEPES(50mM、pH7.0)、CMP−シアル酸(0.02mg)、α−2,8−シアリルトランスフェラーゼ−CST−68を含む10%細胞溶解物(5μl)、MgCl2(10mM;0−1mg)および50μlの最終反応容量までの水を添加した。この反応物を、37℃で3時間インキュベートした。このシアリル化生成物を、Waters C18 Sep−pak lightカートリッジを使用して精製した。この溶出液を、エバポレートして乾燥させ、GD3、GT3およびGM3の他の多重シアリル化形態の混合物を得た。領域%としてHPLCにより計算される変換(%)は、:GM3、39%;GD3 38%;GT3、15%:GQ3、7%であった。HPLC−MS(YMCベーシックカラム−4.6×100mm、0.265mL/分で8分間に亘って、1mM NH4OH水溶液および50〜95%アセトニトリル、MeCNの勾配で溶出;UV=205nm)、GM3(保持時間=29.54分、m/z 1177.6[M−H]−、計算値=1177.7)、GD3(保持時間=22.34分間、m/z 1468.4[M−H]−計算値=1468.8、m/z 733.9[M−2H]2−、計算値=733.9)、GT3(保持時間=18.70分間、m/z 1759.4[M−H]−計算値=1759.9、m/z 879.4[M−2H]2−、計算値=879.5)、およびGQ3(保持時間=17.19分間、m/z 1025.0(M−2H]2−、計算値=1025.0)。
【0299】
(実施例4:リソ−GD3の合成(スキーム6を参照のこと))
リソ−GD3(d18:1)(8)。両性洗浄剤(0.05mg;0.1%)を、リソ−GD3(d18:1)のメタノール溶液(500μM;0.023mg)に添加し、そしてこの溶液をN2ガス流下でエバポレートした。次いで、HEPES(50mM、pH7.0)、CMP−シアル酸(0.02mg)、α−2,8−シアリルトランスフェラーゼ−CST−68を含む10%細胞溶解物(5μL)、MgCl2(10mM;0.1mg)および50μLの最終反応容量までの水を添加した。この反応物を、37℃で3時間インキュベートした。このシアリル化生成物を、Waters C18 Sep−pak lightカートリッジを使用して精製した。この溶出液を、エバポレートして乾燥させ、リソ−GD3、リソ−GT3およびリソ−GM3の他の多重シアリル化形態の混合物を得た。領域%としてHPLCにより計算される変換(%)は、:リソ−GM3、39%;リソ−GD3 42%;リソ−GT3、16%:リソ−GQ3、3%であった。HPLC(YMCベーシックカラム−4.6×100mm、1.0mL/分で15分間に亘って、10mM リン酸ナトリウム水溶液(pH6.5)および30〜80%アセトニトリル、MeCNの勾配で溶出;UV=205nm)、リソ−GM3(保持時間=11分間)、リソ−GD3(保持時間=10分間)、リソ−GT3(保持時間=9分間)、およびリソ−GQ3(保持時間=9分間)。リソ−GD3(d18:1)(8)を、メタノール/水勾配を使用した逆相(C18)クロマトグラフィーにより、この混合物から精製した。
【0300】
(実施例5:リソ−GD2の合成(スキーム6を参照のこと))
リソ−GD2(d18:1)(31)。両性洗浄剤(0.075mg;0.1%)を、リソ−GD3(d18:1)のメタノール溶液(1mM;0.060mg)に添加し、そしてこの溶液をN2ガス流下でエバポレートした。次いで、リン酸ナトリウム緩衝液(50mM、pH7.68)、UDP−GalNAc(0.07mg)、GM2シンテターゼを含む60%細胞溶解物(30μL)、MnSO4(10mM;0.08mg)および50μLの最終反応容量までの水を添加した。この反応物を、37℃で72時間インキュベートした。次いで、この生成物を、10K MWCOスピンフィルターを使用して精製し、浸透物を捨て、そしてメタノールを保持物に添加した。10,000rpmでの遠心分離により、浸透物中の生成物を溶出した。この溶出液を、エバポレートして乾燥させた。この溶出液は、リソ−GD3およびリソ−GD2の混合物を含有した。領域%としてHPLCにより計算される変換(%)は、:リソ−GD2、38%;リソ−GD3 61%であった。HPLC−MS(YMCベーシックカラム;2×100mm、0.250mL/分で25分間に亘って、1mM NH4OH水溶液および30〜100%、ACNの勾配で溶出;UV=205nm)、リソ−GM3(UV保持時間=14.383分間、m/z 1205.5[M−H]−、計算値=1204.5)、リソ−GD2(UV保持時間=14.0分間、m/z 1408.4[M−H]−計算値=1407.4)。
【0301】
(実施例6:リソ−GM3の合成(スキーム5を参照のこと))
リソ−GM3(d18:1)(18)。温度制御リアクタにおいて、3’−シアリルラクトース(16mM、444.5g)、両性洗浄剤3−14(0.05%、20.1g)、およびラクトシルスフィンゴシン(17;0.4mM、10.01g)を、20LのUSP水に添加した。この溶液を、37℃に加熱した。残りの19.25LのUSP水およびα2−3トランス−シアリダーゼ(2000単位/L、0.95L)を、リアクタに添加し、全合成容量を40.2Lにした。pHを7.0に調整し、そしてこの混合物を37℃で30分間撹拌した。次いでこの溶液を、さらに30分間、50℃に加熱し、次いでこの反応混合物を室温まで冷却した。
【0302】
次いで、この反応混合物(40.2L)を、10K中空繊維膜精製系を使用して、最初の容量(5L)の8分の1にまで濃縮した。次いで、水(10L)を、この保持物に添加し、そしてこの保持物を、さらなる40Lの水でダイアフィルトレーションした。次いで、この保持物を、5L容量まで濃縮し、そして10Lのメタノール/水(50/50)を、この保持物に添加した。次いで、この保持物を、40Lのメタノール/水(50/50)でダイアフィルトレーションし、そしてこの保持物を、5L容量まで濃縮した。この工程において、浸透物中にリソ−GM3(18)を溶出した。
【0303】
次いで、リソ−GM3(51L)を含む、この浸透物(メタノール/水 50/50)を、逆相(C18)クロマトグラフィーカラムにローディングした。このカラムを、10カラム容量(5L)のメタノール:水(50/50)で洗浄し、そして生成物を、10カラム容量(5L)のメタノール:水(85/15)で溶出した。適切な画分を収集し、そしてロトエバポレーションにより濃縮して乾燥させ、12.03gのリソ−GM3(18)を得た。HPLC(YMCベーシックカラム、4.6×100mm;勾配、30〜80%アセトニトリル/10mM NaH2PO4−pH6.5;15分間にわたって1.0mL/分;UV=205nm)、Rt=11.1分間。
【0304】
(表4.トランス−シアリダーゼ反応、ラクトシルスフィンゴシン)
【0305】
【表4】
(表5.リソ−GM3(18)の膜精製)
【0306】
【表5】
1保持物をこの溶媒で反応混合物の最初の容量まで希釈した。
2この工程において保持物をダイアフィルトレーションするために使用した溶媒の量。ダイアフィルトレーション後、この保持物を、再度濃縮した。3リソ−GM3(d18:1)は、この溶媒濃度において溶出し始めた。
【0307】
(実施例7:リソ−GM2の合成(スキーム5を参照のこと)
リソ−GM2(d18:1)(19)。温度およびpH制御リアクタにおいて、リソ−GM3(18;1mM、10.04g)、両性洗浄剤3−14(0.15%、16.5g)、硫酸マグネシウム(10mM、18.60g)、アジ化ナトリウム(0.02%、2.2g)、およびUDP−GalNAc(4mM、4.29Lg)を、1.5LのUSP水に添加した。この反応混合物37ECに加熱し、そしてpHを7に調整した。次いで、GM2−シンテターゼ(GalNAcトランスフェラーゼ、7.6U/L、0.85L)および残りの4.36LのUSP水をリアクタに添加し、最終容量を11Lにした。この反応混合物を、pHを制御しつつ、37℃で65時間撹拌した。次いで、この溶液を50℃にし、さらに30分間加熱し、次いで室温まで冷却した。
【0308】
次いで、この反応混合物(11L)を、3K中空繊維膜精製系を使用して、最初の容量(4L)の4分の1まで濃縮した。次いで、水(10L)を、この保持物に添加し、そしてこの保持物を、さらなる10Lの水でダイアフィルトレーションした。次いで、この保持物を、5L容量まで濃縮し、そして10Lのメタノール/水(25/75)を、この保持物に添加した。この保持物を、さらなる40Lのメタノール/水(25/75)でダイアフィルトレーションし、次いで、この保持物を5L容量まで濃縮した。次いで、メタノール/水(35/65)(10L)を、この保持物に添加し、この保持物を、さらなる40Lのメタノール/水(35/65)でダイアフィルトレーションし、次いで、5L容量まで濃縮した。メタノール/水(50/50)(10L)を、この保持物に添加し、この保持物を、さらなる40Lのメタノール/水(50/50)でダイアフィルトレーションし、次いで、5L容量まで濃縮した。リソ−GM2(19)は、最初の2つの溶出液中に主に見出され、これらを合わせ、そして逆相(C18)クロマトグラフィーカラムにローディングした。このカラムを、10カラム容量(5L)のメタノール:水(50/50)で洗浄した。生成物を、10カラム容量(5L)のメタノール/水(75/25)および10カラム容量(5L)のメタノール/水(80/20)で溶出した。適切な画分を収集し、そして濃縮して乾燥させた。
【0309】
この残渣を、90mLのCH3CN/CH3OH/CH2CI2(1/1/1)に溶解し、そして等量の4つの部分に分割した。各サンプルを、CH3CN/CH3OH/CH2Cl2/NH4OH(30/30/30/5)において平衡化したシリカゲルクロマトグラフィーカラムにローディングした。このカラムを、8カラム容量のCH3CN/CH3OH/CH2Cl2/NH4OH(30/30/30/5)で洗浄し、そしてこの生成物を、CH3CN/CH3/NH4OH(20/50/10)で溶出した。。適切な画分を収集し、そしてロトエバポレーションにより濃縮して乾燥させ、9.66gのリソ−GM2(19)を得た。HPLC(YMCベーシックカラム、4.6×100mm;勾配、30〜80%アセトニトリル/10mM NaH2PO4−pH6.5;15分間にわたって1.0mL/分;UV=205nm)、Rt=10.78分間。
【0310】
(表6.GM2−シンテターゼ(GalNAcトランスフェラーゼ)反応、リソ−GM3(d18:1))
【0311】
【表6】
(実施例8:リソ−GM1の合成(スキーム5を参照のこと))
リソ−GM1(d18:1)(20)。6Lフラスコにおいて、リソ−GM2(19;0.8mM、5.00g)、UDP−Gal(1.4mM、5.05g)、塩化マンガン(10mM、11.08g)、およびアジ化ナトリウム(0.02%、1.12g)を、3Lの水に添加した。このフラスコ内容物を、37ECに加熱し、そして37ECインキュベーターの中に置いた。残りの2.21Lの水およびGM1−シンテターゼ(β1−3ガラクトシルトランスフェラーゼ、7%粗溶解物、0.39L)を、フラスコに添加し、最終容量を5.6Lにした。この反応混合物を、そのpHがpH6.5あたりにあり続けるように調整して、37℃で一晩(16時間)撹拌した。次いで、この溶液を50℃にして、さらに30分間加熱し、次いで室温まで冷却した。
【0312】
次いで、この反応混合物(5.6L)を、3K中空繊維膜精製系を使用して、最初の容量(2L)の3分の1まで濃縮した。水(1L)を、この保持物に添加し、そしてこの保持物を、さらなる9Lの水でダイアフィルトレーションした。次いで、この保持物を、2L容量まで濃縮し、そしてメタノール/水(50/50)(1L)を、この保持物に添加した。次いで、この保持物を、さらなる19Lのメタノール/水(50/50)でダイアフィルトレーションし、そして2L容量まで濃縮した。リソ−GM1(20)を、メタノール/水(50/50)浸透物中に溶出した。
【0313】
次いで、生成物を含む浸透物(50/50)(20L)を、逆相(C18)クロマトグラフィーカラムにローディングした。このカラムを、10カラム容量(5L)のメタノール/水(50/50)で洗浄した。生成物を、10カラム容量(5L)のメタノール/水(90/10)で溶出した。適切な画分を収集し、そして濃縮して4.8gのリソ−GM1を得た。HPLC(YMCベーシックカラム、4.6×100mm;53%アセトニトリル/47%10mM NaH2PO4−pH6.5;7分間にわたって1.0mL/分;UV=205nm)、Rt=5.03分間。1H NMR(500MHz、CD3OD)δ5.84(m,1H,ビニルプロトン),5.50(m,1H,ビニルプロトン),4.44(d,J8.0Hz,1H),4.40(d,J8.0Hz,1H),4.30(m,1H),4.10−4.20(m,1H),3.20−3.40(m,糖環プロトン),2.75(dd,J4.5および12.5Hz,1H),2.10(q,3H),2.01(2s,6H,2Ac),1.42(t,3H).1.30(s,22H),0.90(t,3H,CH3)。
【0314】
本明細書中に記載される実施例および実施形態は、例示のみを目的とし、それらの種々の改変および変更が当業者に提案され、そして本願の精神および範囲ならびに添付の特許請求の範囲内であることが意図される。本明細書中に引用される全ての刊行物、特許、および特許出願は、全ての目的のために参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0315】
【図1】図1は、アグリコンから始まり、サッカリド単位の連続添加をたどる、GMシリーズ合成およびGDシリーズ合成の概要を示す、スキーム1(経路1)である。
【図2】図2は、スフィンゴイドから始まり、サッカリド単位の連続添加をたどる、GMシリーズ合成およびGDシリーズ合成の概要を示す、スキーム1(経路2)である。
【図3】図3は、グリコシル−スフィンゴシンd18:2からのGM1(d18:2)の合成を示す、スキーム2である。スキーム2は、グリコシル−スフィンゴシン(1)が、ガラクトシルトランスフェラーゼ反応により、ラクトシルスフィンゴシン(2)へと転換される、一般的なストラテジーの概要を述べる。ラクトシルスフィンゴシン(2)は、トランスシアリダーゼ反応によりlyso−GM3(3)へと転換される。このlyso−GM3(3)は、アシル化されて、GM3(4)を生成する。ガングリオシドGM3(4)は、さらに処理されて、さらなるサッカリドを加える。GM3(4)は、GalNAcトランスフェラーゼ反応により、初めに、GM2(5)へと転換され、次いで、GM2(5)は、ガラクトシルトランスフェラーゼ反応により、GM1(6)へと転換される。
【図4】図4は、グルコシルスフィンゴシンd18:2からのGM3(d18:2)の合成を示す、スキーム3である。スキーム3は、GM3が、グルコシル−スフィンゴシンから作製される、一般的なストラテジーを示す。このグルコシル−スフィンゴシンは、ガラクトシルトランスフェラーゼ反応により、ラクトシルスフィンゴシンへと転換される。ラクトシルスフィンゴシンは、アシル化反応によりラクトシルセラミドへと転換される。このラクトシルセラミドは、トランス−シアリダーゼ反応により、GM3へと転換される。
【図5】図5は、lyso−GM3(d18:2)からの、GD3(d18:2)、GD2(d18:2)、またはGD1b(d18:2)の合成を示す、スキーム4である。スキーム4は、サッカリドのlyso−GM3への添加からの反応性生物をアシル化することにより、GDシリーズにおいてガングリオシドが作製される、一般的ストラテジーの概要を述べる。Lyso−GM3(3)は、シアルトランスフェラーゼ反応により、Lyso−GD3(8)へと転換される。Lyso−GD3(8)は、アシル化によりGD3へと転換され得るか、またはGalNAcトランスフェラーゼ反応による、Lyso−GD2(10)へのその転換のような、サッカリド添加についてのアクセプターとして作用し得る。同様に、Lyso−GD2(10)は、アシル化によりGD2(11)へと転換され得るか、またはガラクトシルトランスフェラーゼ反応により、Lyso−GD1(12)へのその転換のような、サッカリド添加についてのアクセプターとして作用し得る。Lyso−GD1(12)は、アシル化により、GD1(14)へと転換され得る。
【図6】図6は、スフィンゴシンd18:1からのGM1(d18;1)、GM2(d18:1)、GM1(d18:1)、またはフコシル−GM1(d18:1)の合成を示す、スキーム5である。スキーム5は、スフィンゴシンを含まない脂肪酸へのサッカリドの添加により生成される反応生成物のアシル化により、GMシリーズにおけるガングリオシドが作製され得る一般的なストラテジーの概要を述べる。
【図7】図7は、lyso−GM3(d18:1)からの,GD3(d18:1)、GD2(d18:1)、GT1b(d18:1)、またはGT1bの合成を示す、スキーム6である。この一般的ストラテジーに従って、GDシリーズのメンバーは、アシル化メンバーへのサッカリドの添加を介するよりもむしろ、それらのlyso−GD形態のアシル化により作製される。
【図8】図8は、アグリコンとしての、セラミド(ここで、R1=H)およびスフィンゴシン(ここで、R1=脂肪酸または脂肪酸誘導体)の代表例を示す。本発明の方法により調製される例示的な化合物としては、サッカリドが存在しないか、または2〜20のメンバーのオリゴサッカリドであるものが挙げられる。
【図9】図9は、代表的なポリシアリル化スフィンゴシン分子およびセラミド分子の合成を示す、スキーム8である。スキーム8は、非アシル化スフィンゴシンに対するシアリルトランスフェラーゼ反応によるシアル酸の重合添加についての一般的なストラテジーの例を示す。
【図10】図10は、GM3(d18:1)からの、GDガングリオシド、およびポリシアリル化GD3の合成を示す、スキーム9である。スキーム9は、シアル酸モノマーの繰返し添加のための一般的なストラテジーの例を示す。
【図11】図11は、本発明の方法により調製された、式オリゴサッカリド−Xの例示的化合物を示す。
Claims (31)
- 式:
ここでX1は、置換または非置換アルキル、検出可能な標識および標的化部分から選択されるメンバーであって;
Xは、
ここで、mは0〜20の整数であって;
Qは、
n、oおよびsは、0〜20から独立して選択される整数であって;
該方法は、以下:
(a)トランス−シアリダーゼに対して適切な条件下で、該トランス−シアリダーゼおよびSiaドナー(構造:
を包含する、
方法。 - (b):工程(a)で形成された前記化合物を、GalNAc−トランスフェラーゼに対して適切な条件下で、該GalNAc−トランスフェラーゼおよびGalNACドナーと接触させ、該ドナーから工程(a)で形成された該化合物へとGalNAc部分を移動させる工程、
をさらに包含する、
請求項1に記載の方法。 - (c):工程(b)で形成された前記化合物を、Gal−トランスフェラーゼに対して適切な条件下で、該Gal−トランスフェラーゼおよびGalドナーと接触させ、該ドナーから工程(b)で形成された該化合物へとGal部分を移動させる工程、
をさらに包含する、
請求項2に記載の方法。 - (d):工程(c)で形成された前記化合物を、トランス−シアリダーゼに対して適切な条件下で、該トランス−シアリダーゼおよびSiaドナーと接触させ、該ドナーから工程(c)で形成された該化合物へとSia部分を移動させる工程、
をさらに包含する、
請求項3に記載の方法。 - (e):工程(d)で形成された前記化合物を、Sia−トランスフェラーゼに対して適切な条件下で、該Sia−トランスフェラーゼおよびSiaドナーと接触させ、該ドナーから工程(d)で形成された該化合物へとSia部分を移動させる工程、
をさらに包含する、
請求項4に記載の方法。 - (d):工程(c)で形成された前記化合物を、Fuc−トランスフェラーゼに対して適切な条件下で、該Fuc−トランスフェラーゼおよびFucドナーと接触させ、該ドナーから工程(c)で形成された該化合物へとFuc部分を移動させる工程、
をさらに包含する、
請求項3に記載の方法。 - (b):工程(a)で形成された前記化合物を、Sia−トランスフェラーゼに対して適切な条件下で、該Sia−トランスフェラーゼおよびSiaドナーと接触させ、該ドナーから工程(a)で形成された該化合物へとSia部分を移動させる工程、
をさらに包含する、
請求項1に記載の方法。 - (c):工程(b)で形成された前記化合物を、GalNac−トランスフェラーゼに対して適切な条件下で、該GalNac−トランスフェラーゼおよびGalNacドナーと接触させ、該ドナーから工程(b)で形成された該化合物へとGalNAc部分を移動させる工程、
をさらに包含する、
請求項7に記載の方法。 - (d):工程(c)で形成された前記化合物を、Gal−トランスフェラーゼに対して適切な条件下で、該Gal−トランスフェラーゼおよびGalドナーと接触させ、該ドナーから工程(c)で形成された該化合物へとGal部分を移動させる工程、
をさらに包含する、
請求項8に記載の方法。 - (e):工程(d)で形成された前記化合物を、トランス−シアリダーゼに対して適切な条件下で、該トランス−シアリダーゼおよびSiaドナーと接触させ、該ドナーから工程(d)で形成された該化合物へとSia部分を移動させる工程、
をさらに包含する、
請求項9に記載の方法。 - (f):工程(e)で形成された前記化合物を、Sia−トランスフェラーゼに対して適切な条件下で、該Sia−トランスフェラーゼおよびSiaドナーと接触させ、該ドナーから工程(e)で形成された該化合物へとSia部分を移動させる工程、
をさらに包含する、
請求項10に記載の方法。 - (c):工程(b)で形成された前記化合物を、Sia−トランスフェラーゼに対して適切な条件下で、該Sia−トランスフェラーゼおよびSiaドナーと接触させ、該ドナーから工程(b)で形成された該化合物へとSia部分を移動させる工程、
をさらに包含する、
請求項7に記載の方法。 - (d):工程(c)で形成された前記化合物を、GalNac−トランスフェラーゼに対して適切な条件下で、該GalNac−トランスフェラーゼおよびGalNAcドナーと接触させ、該ドナーから工程(c)で形成された該化合物へとGalNac部分を移動させる工程、
をさらに包含する、
請求項12に記載の方法。 - (e):工程(d)で形成された化合物を、Gal−トランスフェラーゼに対して適切な条件下で、該Gal−トランスフェラーゼおよびGal−ドナーと接触させ、該ドナーから工程(d)で形成された該化合物へとGal部分を移動させる工程、
をさらに包含する、
請求項13に記載の方法。 - (f):工程(e)で形成された前記化合物を、トランス−シアリダーゼに対して適切な条件下で、該トランス−シアリダーゼおよびSiaドナーと接触させ、該ドナーから工程(e)で形成された該化合物へとSia部分を移動させる工程、
をさらに包含する、
請求項14に記載の方法。 - (g):工程(a)の前に、式:Q−Glc−X1
を有する基質を、Gal−トランスフェラーゼに対して適切な条件下で、該Gal−トランスフェラーゼおよびGalドナーと接触させ、該ドナーから該基質へとGal部分を移動させる工程、
をさらに包含する、
請求項1に記載の方法。 - (g):工程(a)の前に、式:Q−Gal−Glc−X1
を有する基質を、GalNAc−トランスフェラーゼに対して適切な条件下で、該GalNAc−トランスフェラーゼおよびGalNAcドナーと接触させ、該ドナーから該基質へとGalNAc部分を移動させる工程、
をさらに包含する、
請求項1に記載の方法。 - (h):工程(g)で形成された前記化合物を、Gal−トランスフェラーゼに対して適切な条件下で、該Gal−トランスフェラーゼおよびGal−ドナーと接触させ、該ドナーから工程(g)で形成された該化合物へとGal部分を移動させる工程、
をさらに包含する、
請求項17に記載の方法。 - (i):工程(a)の後に、工程(a)で形成された前記化合物を、Sia−トランスフェラーゼに対して適切な条件下で、該Sia−トランスフェラーゼおよびSiaドナーと接触させ、該ドナーから工程(a)で形成された該化合物へとSia部分を移動させる工程、
をさらに包含する、
請求項18に記載の方法。 - (j):工程(i)を選択された回数繰り返し、それによって前記化合物上でポリ(シアル酸)置換基を形成する工程、
をさらに包含する、
請求項19記載の方法。 - (k):工程(a)で形成された前記化合物を、Sia−トランスフェラーゼに対して適切な条件下で、該Sia−トランスフェラーゼおよびSiaドナーと接触させ、該ドナーから工程(a)で形成された該化合物へとSia部分を移動させる工程、
をさらに包含する、
請求項1に記載の方法。 - (l):工程(k)を選択された回数繰り返し、それによって前記化合物上でポリ(シアル酸)置換基を形成する工程、
をさらに包含する、
請求項21記載の方法。 - R1がNH2、OHおよびSHから選択されるメンバーである、請求項23に記載の方法であって、該方法はR1をアシル化する工程をさらに包含する、
方法。 - 前記化合物が、GM2、GM1、GD1a、GT1a、Fuc−GM1、GD3、GD2、GD1b、GT1b、GQ1b、GM1b、GD1α、GT1β、GQ1B、GT3、GT2、GT1c、GQ1c、グロボシドおよびポリシアリル化ラクトースから選択されるメンバーである、
請求項25に記載の方法。 - 式:
ここで、ZはO、SおよびNR5から選択され;
R1およびR2は、NHR4、SR4、OR4、OCOR4、OC(O)NHR4、NHC(O)OR4、OS(O)2OR4、C(O)R4、NHC(O)R4、検出可能な標識および標的化部分から独立して選択されるメンバーであり、
ここで
R4およびR5は、H、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のヘテロアルキル、検出可能な標識および標的化部分から独立して選択されるメンバーであり;
Sacは、単糖およびオリゴサッカリドから選択されるメンバーであり;そして
R3は、少なくとも2の不飽和度を有する、置換または非置換のアルキル基および置換または非置換のヘテロアルキル基である、
化合物。 - R3が2つの二重結合を有する非置換アルキルであり、そしてSacがグルコシル以外である、
請求項27に記載の化合物。 - R3が少なくとも1つの3重結合を含む、
請求項27に記載の化合物。 - 前記化合物がd18:2およびd18:1:1から選択されるメンバーである、
請求項27に記載の化合物。 - 薬学的に受容可能な賦形剤を含む混合物中に請求項27に記載の化合物を含む薬学的組成物。
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