JP2005354109A - n型ダイヤモンドを用いた半導体デバイス - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 n型ダイヤモンドの不純物原子がイオウ原子で、このイオウ原子が、0.38eVの単一のドナーレベルを形成し、n型ダイヤモンドの室温における電子キャリア濃度が1.4×1013cm-3以上で、電子移動度が室温において580cm2 V-1・s-1以上である。電子移動度が、室温以上の温度(T)領域においてT-3/2依存性を有し、ラマンスペクトルの半値幅が2.6cm-1以下であり、自由励起子及び励起子発光が観測され、反射電子線回折において鮮明な菊池パターンが観測されることから、結晶性がよい。小型ハイパワーデバイス、高出力高周波デバイス及び耐放射線集積回路等の電子デバイスなどに利用できる。
【選択図】 図6
Description
これに対し、ダイヤモンドはワイドバンドギャップ半導体であり、電子及び正孔移動度がもっとも高く、ブレークダウン電界が非常に高いうえ、高温や放射線下での電子正孔対の発生が非常に少ないため、過酷な環境に適応し得ることから、ハイパワー、高周波動作、高温動作用のデバイスに使用可能である。このようなダイヤモンド半導体デバイスを実現するためには、高品質のダイヤモンド結晶薄膜が必要である。
例えば、チッソをドープしたダイヤモンドは活性化エネルギーが低いため室温では絶縁体になってしまうことが報告されている(非特許文献1参照)。さらにリンをドープしたn型ダイヤモンド結晶薄膜も報告されているが、電気抵抗が高すぎて現実的な使用には適さない(非特許文献2参照)。
しかし、このマイクロ波プラズマCVD法によると、ダイヤモンド中へは水素と結合した状態のリンがドープされるため、リンは電子の供給体とはならず、またリンがドープされたとしても、n型半導体ダイヤモンドのキャリヤ移動度が低く、準位も深いため半導体電子デバイスに適用できる品質のn型半導体は得られていない。
以上のようにCVD法では、これまでにも、n型半導体ダイヤモンド結晶薄膜の各種製造法について報告はあるが、半導体電子デバイスに適用できるレベルの品質のものは得られていない。
しかし、黒鉛と赤リンの反応速度や蒸発速度の違いのため、リン濃度の制御が困難となり、高品質のn型半導体は得られない。
また、本発明のn型ダイヤモンドを用いた半導体デバイスは、n型ダイヤモンドの不純物原子がイオウ原子であり、このイオウ原子が、0.38eVの単一のドナーレベルを形成し、n型ダイヤモンドの室温における電子キャリア濃度が1.4×1013cm-3以上であることを特徴とする。
上記構成において、好ましくは、n型ダイヤモンドの電子移動度が、室温において580cm2 V-1・s-1以上である。
電子移動度は、好ましくは室温以上の温度(T)領域においてT-3/2依存性を有する。ラマンスペクトルの半値幅は、好ましくは2.6cm-1以下である。
また、自由励起子及び励起子発光が観測されると共に、反射電子線回折において鮮明な菊池パターンが観測される。
また、半導体デバイスはpn接合を有する。この半導体デバイスは、好ましくはパワーデバイス又は高周波デバイスである。
なお、n型半導体ダイヤモンド成長法としては、原料ガスを活性化する方法に応じ、電気、熱及び光エネルギーのいずれかを利用する成長法でよいが、本実施例では電気エネルギー及び熱エネルギーを利用したマイクロ波プラズマCVD(化学気相成長)装置によるエピタキシャル成長法を使用する。
最初に、本実施例のエキタピシャル成長基板の前処理を説明する。この基板前処理は、(1)ダイヤモンド(100)面方位基板表面をこの面法線が<100>方向と<010>方向又は<100>方向と<001>方向とが成す平面内で<100>方向を基準として1.5〜6度の範囲のいずれかの角度(傾斜角)で傾くように機械研磨して傾斜基板を作製し、(2)この傾斜基板を、水素プラズマに晒して表面を平滑化することを、特徴としている。
(2)の表面平滑化処理は、下記に説明するマイクロ波プラズマ装置を使用し、2.45GHzのマイクロ波出力200〜1200W、水素圧力10〜50Torr、基板温度700〜1200℃、処理時間0.5〜5時間でおこなう。なお、この表面平滑化処理は、アセチレン等の燃焼炎の酸化炎に晒すことによっても可能である。
この図に示すように、この傾斜基板表面は、包絡面が機械研磨時に設定した所定の傾斜角(α)を有するが、ミクロに見ると、原子オーダーで非常に凹凸が多い。
この図に示すように、この基板表面は、この平滑化処理によって、原子オーダーで表面が平滑化され、また(100)面が原子層オーダーでステップ状に連なった表面になる。
この図から、表面に段差が多数存在すること、また、機械研磨に使用した砥粒による細い筋状痕も多数存在することが判る。
すなわち、上記(1)によって作製した傾斜基板の表面は、図1(a)の模式図に示したように、この傾斜基板表面の包絡面が機械研磨時に設定した所定の傾斜角度を有し、ミクロに見ると、原子オーダーで非常に凹凸が多い。
この図から、図2(a)に見られた段差が少なくなり、また、砥粒による細い筋状痕も無くなっており、原子オーダーで表面が平滑化されていることが判る。すなわち、上記(2)の表面平滑化処理によって、図1(b)の模式図に示したように、この基板表面は、原子オーダーで表面が平滑化され、また(100)面が原子層オーダーでステップ状に連なった表面になる。
図3(a)に見られるように、上記(1)及び(2)の基板前処理を施した基板にエピタキシャル成長させたn型ダイヤモンド薄膜の表面は非常に平坦であり、原子オーダーで平坦であることが判る。また、このn型ダイヤモンド薄膜は、下記に詳述するように、結晶性を評価する測定、例えば、移動度の温度依存性、励起子発光、或いはラマンスペクトル等の測定において、非常に高い完全結晶性を示している。
なお、(100)面に平行に、すなわち、傾斜角0で機械研磨し、(2)の平滑化処理をした場合の基板表面は、図1(c)に示すように、(100)面が原子層オーダーで互いに上下した、すなわち、(100)面が凹凸に連なった面になり、この面にエピタキシャル成長したn型ダイヤモンド薄膜の表面は図3(b)に示したような双晶が発生し、また、上記の結晶性を評価する測定においても良い結果が得られない。
図4を参照すると、本実施形態で使用するマイクロ波プラズマCVD装置10は、例えば2.45GHzのマイクロ波発生装置1と、アイソレータ及びパワーモニター3と、チューナー5とを有しマイクロ波が照射される反応管7と、この反応管7を真空排気する真空ポンプ(図示しない)と、反応管7に原料ガスである混合ガス又はパージ用ガスを切り換えて供給するガス供給ライン9と、複数の光学窓11,11と、反応管内に設けられた基板ホルダー13と、この基板ホルダー13上に設置された基板15を加熱又は冷却する温度制御システム17とを備え、基板15上にガスが供給されてマイクロ波プラズマ19が発生するようになっている。なお、基板温度は光高温計でモニターしている。
次に、マイクロ波プラズマCVD法によるn型半導体ダイヤモンドのエピタキシャル成長条件について説明する。この成長条件は、原料、温度、圧力、ガス流量、不純物添加量、基板面積等により異なる。
アルカンとしては例えばメタン、エタン、プロパンを使用し、アルケンとしては例えばエチレン、プロピレンを使用するが、揮発性炭化水素としてメタンはダイヤモンドの構成元素の炭素供給を最小限に抑えることが容易にできるので最も好ましい。
したがって、混合ガスとしてはメタン/硫化水素/水素を使用するのが好ましい。混合ガス中のメタン濃度は0.1%〜5%、好ましくは0.5%〜3.0%で使用するのがよい。混合ガス中の硫化水素の濃度は、1ppm〜2000ppm、好ましくは5ppm〜200ppmで使用するのがよい。
全ガス流量は装置の規模、例えば反応管部の体積、供給ガス流量及び排気量等によるが、本実施形態では200ml/minである。
マイクロ波プラズマCVDでは気圧がだいたい30〜60Torr内であり、本実施例では40Torrとした。マイクロ波放電では比較的高い圧力でグロー放電を維持する。
先ず、エキタピシャル成長用基板の前処理として、粒度0.5μm以下のダイヤモンド砥粒を使用して、ダイヤモンド(100)面方位基板表面を、この面法線が、<100>方向と<010>方向又は<100>方向と<001>方向とが成す平面内で<100>方向を基準として1.5〜6度の範囲のいずれかの角度(傾斜角)で傾くように機械研磨した傾斜基板を作製し、この傾斜基板を、上記に説明したマイクロ波プラズマ装置を使用し、2.45GHzのマイクロ波出力200〜1200W、水素圧力10〜50Torrの水素プラズマに晒して、基板温度700〜1200℃、処理時間0.5〜5時間で表面を平滑化する。なお、この表面平滑化処理は、アセチレン等の燃焼炎の酸化炎に晒すことによっても可能である。
所定膜厚になったら、ガス供給ラインを水素パージに切り換えるとともにマイクロ波放電を停止し、基板加熱を停止又は冷却する。
最後に室温に戻ったら、常圧復帰した反応管の基板ホルダーから、ダイヤモンド基板を取り出す。
図6は本実施形態に係るn型半導体ダイヤモンドのキャリア濃度の温度依存性を示す図である。
図6から分かるように、キャリア濃度は温度上昇につれて1012〜1016cm-3まで増加しており、ダイヤモンド薄膜の伝導度は室温で1.3×10-3Ω-1cm-1である。この図から判るように、キャリア濃度は温度の逆数に対して完全な指数関数依存性を示しており、このことは、キャリアが単一ドナー準位からのみ供給されていることを示している。図6から判るように、ドナー準位の活性化エネルギーは0.38eVである。
すなわち、本発明のn型半導体ダイヤモンドは、イオウ(S)原子が0.38eVの活性化エネルギーで単一ドナー準位を形成しているn型半導体ダイヤモンドである。
測定温度250〜550Kにおいて、すべて負のホール係数を示す。
図7から明らかなように、室温におけるキャリア濃度は1.4×1013cm-3で、移動度は580cm2 /V・sである。
図8は780℃で成長させたn型半導体ダイヤモンドのホール係数測定による移動度の温度依存性を示す図である。基板温度以外の成長条件は同一であるが、基板温度が低いので、結晶中へのイオウ(S)の取り込み量は少ない。
図8に示す例では移動度が980cm2 /V・sであり、したがって本発明のn型半導体ダイヤモンドはイオウのドープ量が少ない場合においても極めて高い移動度を示す。
なお、IIa型ダイヤモンドの電子移動度は約2000cm2 V-1・s-1と推定されているが、本実施例の製造方法によれば、極めて結晶性がよく作製できるため、IIa型ダイヤモンド基板を用いれば103 cm2 V-1・s-1台の移動度も可能である。
図9中、□印は成長温度が780℃、○印が830℃での、本発明によるSドープn型半導体ダイヤモンドのデータであり、黒丸及び鎖線で示したものが従来のPドープn型半導体ダイヤモンドのデータである。
従来のPドープn型半導体ダイヤモンドでは、室温で移動度が10cm2 /V・s程度であり、最高値でも30cm2 /V・s程度である(Diamond and Related Materials 7 (1998) 540-544, S. Koizumi et al参照)。
これに対して、本実施例のSドープn型半導体ダイヤモンドでは、上述したように移動度が約600cm2 /V・s以上であり、極めて高移動度である。
さらに、本発明の製造方法によるイオウ(S)ドープn型半導体ダイヤモンドでは、移動度の温度特性が結晶欠陥が多い場合に示す温度依存性とは逆に、高温になるにつれて小さくなる、T-3/2依存性を示す。
この温度特性は、キャリアの散乱過程がフォノンによるものが支配的であることを示しており、完全結晶性の高い単結晶においてのみ観測されるものである。したがって、本実施例のイオウ(S)ドープn型半導体ダイヤモンドは、結晶欠陥が極めて少なく、したがって、キャリアの源が結晶欠陥などではなくドーパント原子によるものであり、半導体電子デバイスとして使用できる完全結晶性を有することが判る。
したがって、本発明によれば、半導体ダイヤモンド薄膜による半導体電子デバイスの工業的な製造が可能になり、小型ハイパワーデバイス、高出力高周波デバイス及び高温動作デバイス等が実現できる。
3 モニター
5 チューナ
7 反応管
9 ガス供給ライン
10 マイクロ波プラズマCVD装置
11 光学窓
13 基板ホルダー
15 基板
17 温度制御システム
19 マイクロ波プラズマ
α 傾斜角
Claims (10)
- n型ダイヤモンドの不純物原子がイオウ原子であり、このイオウ原子が、0.38eVの単一のドナーレベルを形成していることを特徴とする、n型ダイヤモンドを用いた半導体デバイス。
- n型ダイヤモンドの不純物原子がイオウ原子であり、このイオウ原子が、0.38eVの単一のドナーレベルを形成し、
該n型ダイヤモンドの室温における電子キャリア濃度が1.4×1013cm-3以上であることを特徴とする、n型ダイヤモンドを用いた半導体デバイス。 - 前記n型ダイヤモンドの電子移動度が、室温において580cm2 V-1・s-1以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のn型ダイヤモンドを用いた半導体デバイス。
- 前記電子移動度が、室温以上の温度(T)領域においてT-3/2依存性を有することを特徴とする、請求項3に記載のn型ダイヤモンドを用いた半導体デバイス。
- 前記n型ダイヤモンドのラマンスペクトルの半値幅が2.6cm-1以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のn型ダイヤモンドを用いた半導体デバイス。
- 前記n型ダイヤモンドにおいて、自由励起子及び励起子発光が観測されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のn型ダイヤモンドを用いた半導体デバイス。
- 前記n型ダイヤモンドにおいて、反射電子線回折において鮮明な菊池パターンが観測されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のn型ダイヤモンドを用いた半導体デバイス。
- 前記半導体デバイスが、pn接合を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のn型ダイヤモンドを用いた半導体デバイス。
- 前記半導体デバイスが、パワーデバイスであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のn型ダイヤモンドを用いた半導体デバイス。
- 前記半導体デバイスが、高周波デバイスであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のn型ダイヤモンドを用いた半導体デバイス。
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