JP2005351882A - 微小分析デバイスと酵素の分析方法 - Google Patents

微小分析デバイスと酵素の分析方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2005351882A
JP2005351882A JP2004295138A JP2004295138A JP2005351882A JP 2005351882 A JP2005351882 A JP 2005351882A JP 2004295138 A JP2004295138 A JP 2004295138A JP 2004295138 A JP2004295138 A JP 2004295138A JP 2005351882 A JP2005351882 A JP 2005351882A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
enzyme
substrate
electrode
solution
sample solution
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2004295138A
Other languages
English (en)
Inventor
Hiroaki Suzuki
博章 鈴木
Hitoshi Kusakabe
均 日下部
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Yamasa Shoyu KK
Original Assignee
Yamasa Shoyu KK
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Yamasa Shoyu KK filed Critical Yamasa Shoyu KK
Priority to JP2004295138A priority Critical patent/JP2005351882A/ja
Publication of JP2005351882A publication Critical patent/JP2005351882A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Apparatus Associated With Microorganisms And Enzymes (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)

Abstract

【課題】小型な装置で酵素反応についての分析が可能であり、且つ分析のための時間も短時間で十分な微小分析デバイスの提供を目的とする。
【解決手段】基板と、基質溶液の流路と試料液の流路が合流される合流部を備え前記基板上に形成される微小混合流路と、前記合流部に臨んで形成される複数の電極からなる電極系と、前記電極系の中の1つの電極の近傍に配置され所要の酵素を前記合流部で合流した前記基質溶液及び前記試料液と反応させる酵素供給手段とを設け、前記電極系に生ずる電流値によって前記試料液の酵素活性を検量する。
【選択図】 図1


Description

本発明は微量試料の分析、検出を簡便に行なうための微小分析デバイス及び酵素の分析方法に関し、特にガンマ・グルタミルトランスペプチダーゼ(γ‐GTP)、グルタミック・オキサロアセテック・トランスアミナーゼ(GOT)、グルタミック・ピルビック・トランスアミナーゼ(GPT)の如き肝臓機能の検査項目とされる酵素の定量分析に適した微小分析デバイスと酵素の分析方法に関する。
近年、医療技術の急速な進歩に伴い、病院や検査センターなどの臨床検査室では、各種の分析装置が導入されている。なかでも血液や尿中の成分で内臓の疾患を把握できる生化学自動分析装置は、医療機関の規模を問わず必要不可欠な装置となっている。一方で、医療費抑制策等の影響などにより、病院や検査センターを取り巻く経営環境は、非常に厳しくなっており、医療サービスの品質の維持・向上、トータルコストの低減、業務の効率化などが大きな課題となっている。
現在の血液検査では20種類以上に及ぶさまざまな検査が行われているが、その中から肝臓機能の検査に注目した。肝臓機能をチェックする代表的な検査としてγ‐GTP、GOT、GPTの項目がある。これらはほとんどすべての組織に含まれている酵素であり、特にGOTは心臓・肝臓・筋肉に、GPTは肝臓に多く存在する。そのため肝臓や心臓に障害が起きて細胞が壊れると、これらの酵素が血液中に流れこの値が上昇する。疑われる病気としてはGOTのみが高い場合は心筋梗塞・進行性筋ジストロフィー、GOT、GPTともに高い場合は急性肝炎、さらにGPTがGOTより大きい場合なら慢性肝炎・脂肪肝、GOTがGPTより大きい場合ならば肝硬変・肝臓ガンなどがある。特に、緊急時(心筋梗塞が疑われる場合など)には迅速な測定を要するため、ポータブルなセンサあるいは分析システムが望まれている。
現在、科学センサの分野では、マイクロマシーニングの技術や、フォトリソグラフィーなどの半導体技術を利用して分析システムを微小化、集積化する研究が盛んに行われている。これらは微小化学物質分析システム(Micro Total Analysis System : μTAS)と呼ばれている。μTASの利点としては、装置が小さいため場所をとらずにどこでも測定ができ、検体が微量で済み、迅速な分析が可能であることである。μTASの持つこれらの利点はまさに現在の医療の現場で求められているものであり、医療用としてのμTASの実現に向けた研究の意義は非常に大きい。
ところで、医療診断に必要な測定を患者近傍で行なうベッドサイド診断用の分析(POC(point of care)分析)可能なデバイスの一例として、一対の平板状部材間にキャピラリを形成し、該キャピラリ内に液体状の試薬と試料を流し、その混合液体中の所定成分を分析するチップ型の分析装置(例えば特許文献1、特許文献2参照。)が知られている。また、肝臓機能の検査に特化した装置としては、チップ上にサンプルと基質を混合し、センシングを行なうGOT、GPT測定用のバイオセンサアレイも知られており(例えば非特許文献1参照。)、このバイオセンサにおいては、サンプルの入り口、混合のためのミアンダ状に引き回される流路、及びガラス基板に形成されたセンサチップからなり、サンプルの入り口からサンプルと基質を流し、センサチップでGOT、GPTの測定を行なう。
特開2001−165939号公報 特開2000−2677号公報 I.Moser, G. Jobst, P Svasek, M Varaham, G Urban "Rapid Liver Enzyme Assay with Miniaturized Liquid Handling System Comprising Thin Film Biosensor Array" Sensors and Actuators B, 1997, vol. 44, 377-380
ところで、肝臓機能の検査項目であるγ‐GTP、GOT、GPTは、いずれも同じ反応生成物であるL-グルタミン酸を検出することで測定可能となり、グルタミン酸オキシダーゼを使用した酵素センサーを用いれば、これらγ‐GTP、GOT、GPTの3項目を1つの分析システムで検出することができる。詳しくは、
また、L-グルタミン酸オキシダーゼを用いた反応は次のようであり、L-グルタミン酸を酸化的に脱アミノ化する酵素であって、反応生成物としては過酸化水素やアンモニアが生成される。この過酸化水素によって生ずる酸化電流値を測定することでL-グルタミン酸濃度が測定され、この測定からγ‐GTP、GOT、GPTの値も検出可能となる。
ところで、上述の公報記載の技術は、一対の平板状部材を用いてキャピラリーを形成することから、例えば80mm×120mm程度の比較的に大きなチップとなり、そのような平板状のチップに形成される流路に試薬及び試料を流すことから、比較的に分析時間が長くなってしまう。また、これらの公報記載の技術では、検出手段が光学的な検量手段によるため、装置が大型化してしまい、厳密な意味でのPOC分析には未だ対応できるものではない。
また、上述の非特許文献1記載の技術は、比較的小さなチップサイズのチップを用いる技術を開示しており、センサー自体も電気化学反応を電流値で捉えることから、分析部分のサイズを極めて小さくでき、応答も速くできるという利点がある。しかしながら、前述のようにグルタミン酸オキシダーゼを用いてγ‐GTP、GOT、GPTの値を測定する場合には、基質溶液と試料液を混合させて第1段階のL-グルタミン酸を一旦生じさせ、その次の段階で発生したL-グルタミン酸に対して特異性の極めて高いグルタミン酸オキシダーゼを用いて検量分析を行うという2段階の反応操作が必要であり、測定時間を短くするためには基質溶液と試料液を混合した直後に酵素を作用させることが望ましい。上述の非特許文献1記載の技術では、ミアンダ状に引き回される流路で第1段階の基質溶液と試料液の混合が行われており、その流路を送液して混合する間に時間がかかり、ひいては測定・分析の時間が長くなってしまうという問題が生じていた。
また、従来の酵素活性を用いた検量方法においては、基質溶液と試料液を予め混合した液を流した上で送液を停止し、そこからの電流上昇値を計ることになるため、送られてきた混合液の状態によっては電流上昇の基準点がばらついてしまい、測定誤差が生じることになる。
そこで、本発明は上述の技術的な課題に鑑み、小型な装置で酵素反応についての分析が可能であり、且つ分析のための時間も短時間で十分な微小分析デバイスの提供を目的とする。また、本発明の他の目的は、分析データについて高い信頼性を得ることができる酵素の分析方法の提供である。
上述の技術的な課題を解決するための本発明の代表的な微小分析デバイスは、基板と、基質溶液の流路と試料液の流路が合流される合流部を備え前記基板上に形成される微小混合流路と、前記合流部に臨んで形成される複数の電極からなる電極系と、前記電極系の中の1つの電極の近傍に配置され所要の酵素を前記合流部で合流した前記基質溶液及び前記試料液と反応させる酵素供給手段とからなり、前記電極系に生ずる電流値によって前記試料液の酵素活性を検量することを特徴とする。
本発明にかかる微小分析デバイスでは、前記電極系が前記基質溶液及び前記試料液が合流する合流部に臨むように形成されることから、前記基質溶液及び前記試料液の合流直後の状態からのデータを得ることができ、電極系に電位を与えて生ずる電流を計測することで、酵素の検量が可能とされる。
本発明においての微小混合流路は、基質溶液の流路と試料液の流路が合流される合流部を備えた構造を有し、例えばY字状やT字状の溝を基板に形成することで、所要の流速を以って合流部に基質溶液と試料液の両方を送りこむことができる。基質溶液の流路と試料液の流路の端部には、それぞれの液体の導入口が開口し、例えばマイクロポンプや、マイクロシリンジポンプなどの機構部を導入口に取り付けることも可能であり、これらの機構部はオンチップ(基板搭載型)であっても良く、チップの外部に接続するような構造であっても良い。微小混合流路の流れ方向に垂直な断面形状については、特に限定されるものではないが、作り易さの点から矩形状や円形、楕円形などとされるのが一般的であり、角部分を丸くさせて抵抗を減らしたり、流路全体で一部に傾斜部や狭くなる部分などがあっても良い。
この微小混合流路の合流部においては、拡散による混合現象を用いて基質溶液と試料溶液を混合する方法が用いられる。一般的に、微小流体中での流体の流れの様子は、レイノルズ数(Re)により推測される。断面が長方形である流路中でのレイノルズ数は次のように定義される。
ρはサンプル溶液の密度、φは単位時間当たりの流量、a及びbは流体断面の縦・横の長さ、ηは粘性係数を示す。レイノルズ数は粘性力と慣性力の比を表し、レイノルズ数が小さければ層流、大きければ乱流になる。本発明の如き微小流路においては、レイノルズ数は一般的に小さくなり、その流れは層流となる。従って、特に流速が早い場合には、限られた流路長での溶液の混合が難しくなる。しかし、溶液の拡散に要する時間(τ)は、Lを拡散を問題としている長さ、dを問題としている次元、Dを拡散係数としたとき、次のような式で表され、Lの2乗に比例する。
従って、流れに垂直な方向について、本発明のような微小分析デバイスにおいては、拡散を問題としている長さLが小さいことから、溶液の拡散に要する時間(τ)が小さくなり、拡散による混合が速やかに進行することがわかる。これは、基質溶液と試料液を層流を形成している状態でその流れを止め、その直後に基質溶液と試料液が速やかに拡散して混合することを意味する。また、換言すれば微小な流路の採用によって、送液を遅くするか停止するだけで、直ぐに拡散が進行することになり、本発明の微小分析デバイスはこのようなサイズからの作用により、コイル状や螺旋状の混合部を排除しても所望の検量が可能となる。
本発明において、前記基板はガラス、合成樹脂、セラミック、金属、木材、紙、これらの複合材など種々の材料を用いることが可能であり、所要の形状で流路を形成し、少なくとも基質溶液と試料液を流してその合流部に電極などを保持できる機能を有していれば良い。本発明の一例においては、ガラス基板上にフォトレジストで流路パターンを形成し、その上にPDMS(ポリジメチルシロキサン)などの透明樹脂層を形成してパターン化されたフォトレジストを除去して流路を形成している。基板自体は使用者の取扱いの便宜性から、所要の剛性を有していても良く、可とう性を有していても良い。
本発明の微小分析デバイスにかかる電極系は、前記合流部が電気化学セルとして機能することから、2電極より好ましくは3電極で構成される。3電極方式の場合、作用電極、参照電極、及び対極で電極系が形成され、例えば、板状部材上に所要のパターンで薄膜の金属膜を形成し、その金属薄膜の一部を前記合流部に臨ませることで、電流を流しての測定が可能となる。金属薄膜を形成する場合の金属材料としては種々のものを用いることが可能であるが、白金や銀などの材料を用いることができ、使い捨て用途ではカーボン系の導電ペーストなどを利用して電極とすることも可能である。本発明の微小分析デバイスを使い捨て用途ではなく、何回か使用したり、長時間に亘って使用する場合には、参照極に銀と塩化銀の積層膜を用い、電極を覆う樹脂層の一部に小さな窓部を形成して寿命を長期化させるようにすることも可能である。
本発明の微小分析デバイスでは、電極系のうちの1つの電極、例えば作用極に所要の酵素を前記合流部で合流した二液と反応させる酵素供給手段が設けられる。本発明の一例によれば、例えば、L-グルタミン酸を対象とし、酵素としてL-グルタミン酸オキシダーゼが用いられる場合では、担体結合法、架橋法、包括法或いはこれらの組み合わせからなる方法で電極近傍に酵素を固定する方法や、透過膜などを合流部の近傍に配して、該透過膜を介して酵素を供給する方法などが挙げられる。担体結合法は酵素を水不溶性の担体に固定する方法であり、その結合様式によって、物理吸着法、イオン結合法、共有結合法などが知られている。架橋法は、2個以上の官能基を持つ試薬を用いて酵素を架橋することで固定する方法である。架橋法では、温和な条件で簡単に固定できるため、酵素の失活も少なく、適切な担体を用いることで酵素の安定性を上昇させることもできる。一例として、ウシ血清アルブミン(BSA)を高分子担体とし、二官能性試薬グルタルアルデヒドを用いて酵素を架橋し、膜状に成形したものを電極に被着して酵素供給手段を構成しても良い。包括法は酵素を高分子ゲルの細かい格子の中に取り込む格子型と、半透膜の高分子膜によって被覆するマイクロカプセル型に分けることができ、酵素自体は結合反応を起こしていないため、多くの酵素固定に利用できる。
本発明にかかる微小分析デバイスで特に電極近傍に存在するように酵素供給手段によって供給される酵素としては、種々の酵素に対して適用可能であるが、特に肝臓機能の検査の目的では、L-グルタミン酸オキシダーゼ(EC 1.4.3.11)を用いることが可能である。このL-グルタミン酸オキシダーゼは、L-グルタミン酸に対して高い基質特異性を有する酵素であり、L-グルタミン酸を酸化的に脱アミノ化して、α-ケトグルタル酸、アンモニア、及び過酸化水素を生成させる。ここでL-グルタミン酸は、化1の式でも明らかなように、ガンマ・グルタミルトランスペプチダーゼ(γ‐GTP)、グルタミック・オキサロアセテック・トランスアミナーゼ(GOT)、グルタミック・ピルビック・トランスアミナーゼ(GPT)のそれぞれの反応で生成し、検量のための指標として機能することから、L-グルタミン酸オキシダーゼを供給できる構造とすることで、肝臓機能の主要な検査項目の3つに対応できることが判る。換言すれば、本発明の微小分析デバイスにおいて、L-グルタミン酸オキシダーゼを電極近傍に供給される酵素とすれば、同じ構造で3つの検査項目(γ‐GTP、GOT、GPT)の全てに対応できることになり、特にPOC分析に便利な装置となることは言うまでもないことである。
次に、本発明の酵素の分析方法は、基板上に形成された流路中に基質溶液及び試料液を送ることで合流させ、その基質溶液と試料液の合流部に臨み且つ少なくとも1つの電極に所要の酵素が固定された電極系に通電する際に、前記基質溶液及び前記試料液の送液停止若しくは低速化後の前記電極系に通電される電流の電流値の立ち上がりが略飽和するレベルの高さを以って前記試料液の酵素活性を検量することを特徴とする。なお、本明細書において、「略飽和」とは電流値の立ち上がりが所要のレベルに収束するような現象を指し、多少のノイズなどによる変動が計測されていても平均して収束するような場合であれば本明細書における略飽和の意味に含まれる。
この本発明の酵素の分析方法においては、電流値の立ち上がりが略飽和するレベルの高さを以って前記試料液の酵素活性を検量する。これは略飽和するレベルが比較的に安定して現れることが、一部の実験データから実証済みであり、時間変分という不確定な値に依存することなく、高精度なデータの取得が可能とされることになる。本発明においては、測定されるデータは前記基質溶液及び前記試料液の送液停止若しくは低速化後に現れる電流値であり、微小混合流路を拡散する速度は数秒乃至十数秒程度の極めて短い時間で済むことから、安定して精度の高いデータが得られるだけではなく、全体として短い測定時間での検量も可能となる。
また、本発明の他の酵素の分析方法は、基板上に形成された流路中に基質溶液及び試料液を送ることで合流させ、その基質溶液と試料液の合流部に臨み且つ少なくとも1つの電極に所要の酵素が固定された電極系に通電する際に、前記基質溶液及び前記試料液の送液後、前記電極系に通電される電流の電流値の立ち上がりの傾斜を以って前記試料液の酵素活性を検量することを特徴とする。電極系に通電される電流の電流値の立ち上がりの傾斜を以って前記試料液の酵素活性を検量することで、同様に比較的に短時間での検量が実現される。
また、本発明のさらに他の酵素の分析方法では、基板上に形成された流路中に基質溶液及び試料液を送ることで合流させ、その基質溶液と試料液の合流部に臨み且つ少なくとも1つの電極に所要の酵素が固定された電極系に通電する酵素の分析方法において、前記基質溶液を替えることで前記試料液の異なる酵素活性を検量することを特徴とする。
前述のように、例えば肝臓機能の検査に対しては、L-グルタミン酸オキシダーゼを電極近傍に供給される酵素とすれば、同じ構造で3つの検査項目(γ‐GTP、GOT、GPT)の全てに対応できることになり、この場合において、試料液は血液サンプル等が利用されることから、3種類の基質溶液が互いに混合せずにそれぞれ試料液に混合するように流路を形成することで、3つの検査項目の同時計測も可能であり、特にPOC分析に有効である。
上述のように、本発明の微小分析デバイスによれば、例え酵素を用いた検量分析が2段階の活性機構からなる場合であっても、前記電極系が前記基質溶液及び前記試料液が合流する合流部に臨むように形成されることから、前記基質溶液及び前記試料液の合流直後の状態からのデータを得ることができ、余分な基質溶液及び試料液を混合させるための混合部などが存在しないため、短時間での測定が可能である。
また、本発明の酵素の分析方法では、電流値の立ち上がりが略飽和するレベルの高さを以って前記試料液の酵素活性を検量することから、安定して精度の高いデータが得られるだけではなく、全体として短い測定時間での検量も可能となり、更に肝臓機能の検査のように、3つの検査項目に同時に対応しながら計測することも可能であり、特にPOC分析に有効である。また、電極系に通電される電流の電流値の立ち上がりの傾斜を以って前記試料液の酵素活性を検量することで、短時間での検量も可能である。
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は本実施の形態の微小分析デバイスの一例を示す斜視図であり、図2は電極側の構成を示す分解斜視図であり、図3は本実施の形態の微小分析デバイスの一例の電極側と流路側に分けて示す分解斜視図である。なお、以下の説明で用いる「略Y字」、「略平板」、「略円形」、「略L字」、「略クランク字」、及び「略全域」において、「略」とは実質的にその形状等を有していることを指し、細かな違いがある場合でも実質的にその形状等が備わっている場合であればすべて本明細書における「略・・・」の意味に含まれる。
図1に示すように、本実施の形態の微小分析デバイスは、L-グルタミン酸オキシダーゼを用いて、例えば肝臓機能の検査に対しては同じ構造で3つの検査項目(γ‐GTP、GOT、GPT)を測定できるチップ状の装置であり、略Y字状の溝からなる微小流路12が形成されてなる略平板状で矩形のPDMS(ポリジメチルシロキサン)基板10と、作用極25、参照極26、及び対極27を形成してなる電極側のガラス電極基板21とを貼り合わせた構造を有している。
PDMS基板10は、比較的柔らかな透明部材であり、フォトレジスト層を所要にパターンに形成したものを型にして微小流路12を形成する。このようにフォトレジスト層を型として微小流路12を形成する場合、フォトレジスト層の膜厚及びパターン幅で微小流路12の形状を高精度に制御することができる。微小流路12の大きさは、ここでは幅が約500μmであり、高さは70μmから500μm程度の範囲で選択される。
PDMS基板10の端部には、基質溶液及び試料液を排出するための導出口16が開口している。この導出口16と反対側には、基質溶液の導入部14と試料液の導入部15が別個に設けられており、それぞれPDMS基板10の長手方向に並行して延在される合流部13に対して斜めにそれぞれ独自の流路を以って接続するように構成されている。基質溶液の導入部14と試料液の導入部15は略円形の溝となっているが、図示しないマイクロシリンジポンプのシリコンチューブが接続される。
略Y字状の微小流路12の下流部は、基質溶液と試料液の合流部13として機能し、この合流部13に作用極25、参照極26、及び対極27が臨むように構成される。この合流部13においては、基質溶液の導入部14と試料液の導入部15が送液状態のときでは層流状態を呈しており、両液の間の混合は極めて少ない状態となる。しかしながら、送液状態から液を送るのを停止したり、液を送る速度を大きく低下させた場合では、微小流路12内では直ちに拡散現象が生じ、その結果として基質溶液と試料液の混合が速やかに生ずることになる。
次に、電極側の構成としては、ガラス電極基板21上に電極系を構成する作用極25、参照極26、及び対極27が形成された構造を有している。これら作用極25、参照極26、及び対極27はガラス電極基板21上にスパッタ法などにより形成される白金や銀の薄膜からなり、作用極25と対極27は、クロム・白金系の金属薄膜からなるが、参照極26は耐久性を向上させるため銀・塩化銀層31が積層する構造とされる。作用極25は、合流部13の中で基質溶液の導入部14及び試料液の導入部15の最も近い位置に形成されており、ガラス電極基板21の表面を作用極25からクランク状に引き出された配線部30を介して作用極パッド部24まで延在され、その作用極パッド部24で後述するような電流計に接続される。参照極26は、作用極25の下流側に形成され、ガラス電極基板21の表面を参照極26から略L字状に引き出された配線部29を介して参照極パッド部23まで延在され、その参照極パッド部23で後述するような電流計に接続される。対極27は合流部13の最も下流に形成されており、ガラス電極基板21の表面を対極27から略クランク字状に引き出された配線部28を介して対極パッド部22まで延在され、その対極パッド部22で後述するような電流計に接続される。
ガラス電極基板21上に形成された作用極25、参照極26、及び対極27を保護するように全面にポリイミド膜32が図2に示すように張り合わせられ、このポリイミド膜32の合流部13に対応した位置で且つ作用極25、参照極26、及び対極27に対応した位置にそれぞれ作用極用窓部33、参照極用ピンホール34、及び対極用窓部35が当該ポリイミド膜32を貫通するように形成している。
作用極25には、本実施形態においては、酵素供給手段としてグルタルアルデヒドを用いて架橋して固定されたL-グルタミン酸オキシダーゼを膜状に形成した構造を有している。従って、作用極25の周囲をL-グルタミン酸が通過する場合、前述の化2の式に反応が生じ、L-グルタミン酸にL-グルタミン酸オキシダーゼが作用して過酸化水素が生成され、その過酸化水素に応じた電流が流れることになる。
図3は略Y字状の溝からなる微小流路12が形成されてなる略平板状で矩形のPDMS基板10と、作用極25、参照極26、及び対極27を形成してなる電極側のガラス電極基板21とを分解して示す斜視図であり、作用極パッド部24、参照極パッド部23、対極パッド部22が、PDMS基板10から側部に延長され、その部分で電気的な接続がなされることが示されている。
図4は本実施の形態の微小分析デバイスを用いて測定をする際のシステム構成を示す図である。本実施の形態の微小分析デバイスでは、基質溶液の導入部14と試料液の導入部15が別個に形成されており、それぞれのシリンジポンプ41、42が接続されている。シリンジポンプ41は基質溶液を導入するための送液装置であり、シリンダ部43に予め注入されている基質溶液がパイプ44及びシリコンチューブ45を介して基質溶液の導入部14に供給される。シリンジポンプ42は試料液を導入するための送液装置であり、シリンダ部46に予め注入される試料液がパイプ47及びシリコンチューブ48を介して試料液の導入部15に供給される。これらシリンジポンプ41、42は、図示のように手動のものでも良く、コンピュータ制御で自動的に送液を行なうような機構のもので良い。
前述の如き本実施の形態の微小分析デバイスの作用極25、参照極26、及び対極27には、それぞれポテンシオスタット51に接続するように取り付けられており、作用極パッド部24が電流計49を介して、参照極パッド部23が電圧計50と電流計49を介してポテンシオスタット51に接続される。
ここでシリンジポンプ41から導入される基質溶液は、活性を測定する酵素によって替えることができるものである。例えば、前述の化1に示すように、ガンマ・グルタミルトランスペプチダーゼ(γ‐GTP)について測定する場合では、γ-L-グルタミル-L-グルタミン酸とグリシル‐グリシンとを含んだ基質を用いことができ、グルタミック・オキサロアセテック・トランスアミナーゼ(GOT)について測定する場合では、L-アスパラギン酸とα-ケトグルタル酸を含んだ基質を用いることができ、グルタミック・ピルビック・トランスアミナーゼ(GPT)について測定する場合では、L-アラニンとα-ケトグルタル酸を含んだ基質を用いることができる。
このような構造の本実施の形態の微小分析装置では、先ず、シリンジポンプ41、42から基質溶液と例えば血液のような試料液がそれぞれ基質溶液の導入部14と試料液の導入部15に導入され、その結果として合流部13にも基質溶液と試料液のそれぞれが層流状態で流し込まれることになる。続いて、シリンジポンプ41、42を操作して送液を停止させる。すると直ちに流れ方向に垂直な方向での拡散が開始し、数秒乃至十数秒の時間で微小流路12の混合部の略全域に拡散が生じて、2つの基質溶液と試料液が混ざり合うことになる。
図5は、本実施の形態の微小流路を用いた例の送液停止後の拡散の様子を示す図であり、左から20μl/分で送液中の様子を示す図、次が送液停止3秒後の拡散の様子を示す図であり、右の図が送液停止10秒後の拡散の様子を示す図である。送液停止10秒後の拡散ですでに流れ方向とは垂直な方向で充分な拡散が得られていることがわかる。
このような短時間での混合を微小流路12の内部で生じさせた後、対極と作用極の間の電流値を測定して酵素の量を検量することができる。微小流路12内で基質溶液と試料液が混ざり合うことで、前述の化1の式に従ってL-グルタミン酸が発生し、そのL-グルタミン酸に対して高い基質特異性を有するL-グルタミン酸オキシダーゼが作用極25の表面に固定されていることから、L-グルタミン酸の存在濃度に従って過酸化水素が作用極25の表面に発生し、その過酸化水素の濃度に応じて検出される電流値が変化するため、L-グルタミン酸の検量が可能であり、γ‐GTP、GOT、GPTなどの酵素の量を極めて短い時間で正確に検量することができる。
次に、本実施の形態の微小分析デバイスをより明確にするための実施例につき説明をする。
[電極側の形成工程]
先ず、洗浄したガラス基板に所要のポジ型フォトレジストを500rpmで5秒、さらに2000rpmで10秒間スピンコートして塗布し、80℃で30分間プリベークを行って、レジスト層をガラス基板上に形成した。次に、クロム・白金パターン用マスクを用いて、マスクアライナー(ミカサ製MA-10)で60秒間露光を行なって電極パターンを形成した。
続いて、30℃のトルエンに30秒間、ガラス基板上にレジスト層を形成したものを揺すりながら浸漬し、そのガラス基板をトルエンから出し、80℃のオーブンで約15分間ベークした。次いで、30℃の現像液を用いて60秒間現像し、蒸留水でリンスし、窒素ガスで乾燥させて、レジストパターンを完成させた。
このレジストパターンの完成の後、レジストパターンを形成したガラス基板上に、300nm厚の白金層をスパッタにより形成した。スパッタ条件としては、出力100Wでクロムを5分間、白金を10分3回に計30分間形成した。このクロム・白金電極層の形成後に、レジスト層の剥離を行なった。これは先ず、ガラス基板をアセトンに浸し、ポジレジストを剥離させ、その後、清浄なアセトンで洗浄し、自然乾燥させることで行なった。
続いて、クロム・白金電極層に重ねて銀層を形成した。この銀層の形成工程は、先ず、前述のガラス基板にポジ型フォトレジストを500rpmで5秒、さらに2000rpmで10秒間スピンコートして塗布し、80℃で30分間プリベークを行って、銀パターン用マスクを用いて、マスクアライナーで60秒間露光した。以下、先のレジストパターン形成工程と同様に30℃のトルエンに30秒間、ガラス基板上にレジスト層を形成したものを揺すりながら浸漬し、そのガラス基板をトルエンから出し、80℃のオーブンで約15分間ベークした。次いで、30℃の現像液を用いて60秒間現像し、蒸留水でリンスし、窒素ガスで乾燥させて、銀層用のレジストパターンを完成させた。
次に、レジストパターンを形成したガラス基板上に、400nm厚の銀層をスパッタにより形成した。このときのスパッタ条件は例えば出力100Wで12分間である。そのガラス基板をアセトンに浸し、ポジレジストを剥離させて不要な銀層をリフトオフして除去した。その後、清浄なアセトンで洗浄し、自然乾燥させた。
この自然乾燥の後、ポリイミド前駆体溶液(東レ製、セミコファインSP-341)を700rpmで10秒、4000rpmで30秒スピンコーティングし、80℃のオーブンで30分間ベークした。このようにポリイミド膜は塗布によって形成することも可能であり、また、他の方法としてはフィルム状のものを張り合わせるようにすることも可能である。
次いで、ポリイミド膜のパターニングのため、ポリイミドを形成した基板にポジ型フォトレジストをスピンコートし、80℃で30分間プリベークを行った。このプリベークの後、ポリイミドパターン用マスクを用いてマスクアライナーで60秒間露光した。約30℃の現像液を用いて60秒間現像し、その後、蒸留水でリンスし、窒素ガスで乾燥させた。この際、下層のポリイミド膜もエッチングされた。次いで、基板ごとエタノールに浸し、レジストを剥離させた。その後、清浄なエタノールで洗浄した。
この時点でポリイミド膜は所要のパターンに形成されており、ポリイミドを硬化させるために、ホットプレートにて140℃で30分、200℃で30分、300℃で60分キュアを施した。その基板表面にポジ型フォトレジストの保護膜を形成した後、ダイシングソーにてダイシングした。ここで1つのチップのサイズは、15mm×20mmである。1枚のガラス基板から8枚のチップを取り出すことができ、先のポジ型フォトレジストをアセトン中で剥離した後、清浄なアセトン中で洗浄し、自然乾燥させてチップ形状のデバイス片を得た。
本実施例のデバイスでは、参照極を形成するため、各チップを1 M KCl-HCl溶液液 (pH 2.2、25℃) 中に浸漬し、ガルバノスタットを用いて1μAの一定電流を5分間流した。これにより、参照極の位置に対応した銀パターンの露出部に塩化銀が形成された。塩化銀形成後、蒸留水で十分洗浄し、自然乾燥させた。
L-グルタミン酸オキシダーゼ(8U/mg)を0.1 mgとり、10% BSA(牛血清アルブミン)を2μl加え、よく混ぜて溶かした。さらに10%グルタルアルデヒドを2μl加え、混ぜ合わせた。これを直ちに作用極上にマイクロピペットで塗布し、自然乾燥させた。これによりデバイスの電極側が完成した。作製したチップは密封し、冷蔵庫で保管した。
[PDMS基板側の形成工程]
PDMS基板側の形成工程においては、厚膜フォトレジストSU-8(日本化薬株式会社製)により、ガラス基板上に流路の型を形成し、その型を用いて流路をPDMS基板に形成することが行なわれる。先ず、密着層となるネガ型ポリイミドがガラス基板上にスピンコーターで塗布され、80℃で15分間プリベークされ、15分間真空に引いてポリイミド膜を密着させた。次いでマスクアライナーで90秒間露光し、CT950W(東芝ケミカル製)を用いて超音波中で70秒間現像した。その後、蒸留水でリンスし、窒素ガスで乾燥させ、ポリイミドを硬化させるために、ホットプレートにて150℃で15分、200℃で15分、300℃で30分キュアを施した。
厚膜フォトレジストSU-8をスピンコーターで500rpmで20秒、さらに840rpmで15秒間回転させて塗布した。この塗布膜をホットプレートで95℃で約10時間べークした。所要の流路パターンのマスクを用いて、マスクアライナーで30分露光した。これを超音波中で現像・リンスを行なって、窒素ガスで乾燥させて、ガラス基板上に流路パターンの型が形成されたことになる。
2液型シリコーン(KE-1300T、CAT−1300、信越化学工業製)をシリコーン10、硬化剤1の割合で混合してPDMS前駆体溶液を調整した。先に形成したガラス基板上に流路パターンの型に、当該PDMS前駆体溶液を所要の厚さに流し込み、その基板を真空容器に入れ、15分程度の脱気を行なった。これにより、前駆体中の気泡が除去されることになり、シリコーンの密着性が良くなることになる。室内で12時間以上乾燥させてPDMSが硬化したら、これを型から剥離する。最後に微小流路の導入口となる貫通孔を形成し、ここにシリコーンチューブを固定した。
[微小分析デバイスの組み立て]
既に各電極を形成したガラス基板と、流路を形成したPDMS基板の位置あわせをし、固定する。この場合、何らかの形で接着しても、アクリル板で押さえても良い。図4に示したように、微小電極デバイスの各パッド部にポテンショスタットからの配線を接続する。もし、ポテンショスタットを用いない場合でも、専用の装置があればそれに組み込むことも可能である。
[測定]
測定の際には、先ず、3電極系に電位を印加し、L-グルタミン酸センサをONの状態にする。マイクロシリンジポンプを用いて、GOTあるいはGTPの標準液と酵素の基質溶液をPDMS基板の2箇所の導入口からそれぞれL-グルタミン酸センサを形成した流路内に一定の流速で導入する。混合用流路内でこれら2つの溶液の流れは層流をなして流れるが、その厚みは流速比で決まる。
次いで、数秒待ち、2つの流れを止めるか、ほとんど止まる程度にまで流速を落とす。これにより標準液と基質溶液はすみやかに拡散し、混合する。センサのキャリブレーションを行い、マイクロシリンジポンプを用いて、酵素の基質溶液とサンプル溶液をPDMS基板の2箇所の導入口からそれぞれ一定の流速で導入する。2種類の溶液の流速比は先の送液条件と同じにする。
同様に、数秒待ち、2つの流れを止めるか、ほとんど止まる程度にまで流速を落とす。これによりサンプル溶液と基質溶液はすみやかに拡散し、混合する。先に行なったキャリブレーションのデータをもとに、GOTあるいはGPTの活性を決定する。
GOT溶液と基質溶液の2液送液中と、送液停止後のグルタミン酸センサ応答曲線を図6に示す。送液を停止後、直ちに電流値は上昇し、その後4〜5分間上昇し続けた。また、このときの最大の電流値をGOT活性に対してプロットしたものが図7である。電流値はGOT活性に対して比例関係となり、電流値からGOTの酵素活性を求めることができることが示された。
同様にGPT溶液と基質溶液の2液送液中と、送液停止後のグルタミン酸センサ応答曲線を図8に示す。GOTの場合と同様な結果が得られた。この電流値をGPT活性に対してプロットしたものが図9である。電流値はGPT活性に対して比例関係となり、電流値からGPTの酵素活性も、求めることができることが示された。
特に図6と図8のグラフより、前記電極系に通電される電流の電流値の立ち上がりが略飽和するレベルの高さを以って前記試料液の酵素活性を検量することが可能であることが示されている。それぞれGOTの場合もGPTの場合も酸素活性の量に応じた電流値の立ち上がりが略飽和するレベルの高さを有しており、これらの部分を早期に抽出するような処理をすることで、高精度なデータの取得が可能とされることになる。
また、図7と図9のグラフより、ほぼ飽和したレベルである最大電流値はGOTやGPTの活性値に線形の関係を有していることが示されている。この結果から線形の関係を利用してデータを補間することも容易であることもわかり、従って精度の高いGOTやGPTの活性値を得ることが本実施形態のシステムでは容易であることもわかる。
[基質溶液の液溜め部を有する実施例]
本実施例は基質溶液の液溜め部を有する例であり、図10にその構成を示す。基質溶液の液溜め部62と、試料液供給部61が形成され、これらは比較的に大きなサイズで形成されて、例えば使用者の指で押すことで液をセンサー側に送ることが可能とされる。基質溶液の液溜め部62には、予め基質溶液が満たされている。基質溶液側の流路67と試料液側の流路66は対向するように形成されて、これらの流路間には疎水部68が挟まれている。この疎水部68では通常は液溜め部62にある基質溶液を試料液側の流路66には透過させないように機能するが、使用者が指で基質溶液の液溜め部62を押したときには試料液側の流路66に基質溶液が到達して試料液と基質溶液の混合が生ずる。これによって作用極65、参照極63、及び対極64の間で電流が流れ、検量が可能となる。
図10のデバイスの作製法について簡単に説明する。
[電極パターンの形成]
先ず、先の実施例と同様に電極パターンを形成する。なお、以下のPDMS流路で2本の流路が近接している付近は疎水性の疎水部68を形成しておく。
[PDMS流路の形成]
先の実施例と同様にPDMS流路を形成する。ただし、先の実施例ではマイクロシリンジポンプを用いてサンプル溶液(試料液)と基質溶液を導入したが、ここでは指の圧力でサンプル溶液と基質溶液と導入する。流路は同様な略Y字状のパターンにする。サンプル吸引用の流路66も酵素基質溶液を蓄える流路67も導入口以外閉じており、末端部がサンプルを蓄えられるように比較的に大きめに形成され、電極基板側と同様に、PDMS流路で2本の流路が近接している付近は疎水性の疎水部68として構成される。
[微小分析デバイスの組み立て]
ここで電極を形成した基板とPDMS流路を形成した基板を先の実施例と同様に組み立てる。酵素基質溶液用流路末端部の液溜め部62に、あらかじめ酵素基質溶液を満たしておく。サンプル吸引用流路66が最初は何も満たされない状態になっており、試料液の供給を待つ状態とされる。
[測定]
当該実施例においても、3電極系に電位を印加し、L-グルタミン酸センサをONの状態にする。L-グルタミン酸センサはあらかじめキャリブレーションがなされており、その場では特にキャリブレーションが必要がない程度に特性の揃ったものを使用する。
また、サンプル吸引用流路の末端を指で押して、サンプル(試料液)を流路全域に満たす。次に、酵素基質溶液用流路末端部の液溜め部62を軽く押して、酵素基質溶液を流路67全域に満たす。さらに酵素基質溶液用流路末端部の液溜め部62を強く押すと、溢れ出た酵素基質溶液は疎水部68を渡って、試料液と混ざり合う。電流値からGOTあるいはGPTの活性を決定することが可能となる。
[他の微小分析デバイスの実施例]
本実施例の微小分析デバイスについて説明すると、薄膜3電極系がガラス基板上に従来のフォトリソグラフィ技術により形成され、作用極と対極が白金とされ、参照極が銀と塩化銀の積層膜からなる。ポリイミドで囲まれた作用極のサイズは500μmx300μmであり、グルタルアルデヒドを用いて架橋して固定されたL-グルタミン酸オキシダーゼを膜状に形成した構造を有している。次に実施例と同様にPDMS流路を形成する。通常の紫外線照射、現像、そして洗浄の工程から厚膜のSU-8フォトレジストでテンプレートを形成し、さらにPDMSの溶液を該テンプレート上にキャスティングした。これをキュアした後、PDMSシートはテンプレートから剥がした。注入部分の直径は8mmで深さは2.1mmとした。ここで、微小流路のサイズは500μmの幅と110μmの深さを有し、長さは10mmである。内径0.5mmのシリコーンラバーチューブが流路出口に取り付けられる。前述の微小分析デバイスと同様に、グルタミンセンサーを伴うガラス基板とPDMS基板は慎重に位置あわせされ、固定された。シリコーンラバーチューブの端部は、マイクロシリンジポンプに接続された。
測定に際して、先ず、デバイス全体が室温に維持され、50μLの緩衝溶液が注入口から満たされ、それからマイクロシリンジポンプを用いて引き出された。次いで60μLの基質溶液が同様に注入されて引き出された後、5μLの基質溶液が流路に流入され、試料液も流路に流入された。混合部で基質溶液と試料溶液は直ぐに混ぜ合わされ、L-グルタミン酸センサをONの状態にして電位計にて基質溶液と試料溶液の混ぜ合わせ後直ちに測定を行なった。
このデバイスでの測定結果を図11と図12に示す。図11は、流路に試料液を加えてからのγ-GTP活性による電流値の増加を示したものであり、図12はγ-GTP活性値の応答曲線の初期傾斜を示す。図11に示すように、本実施例の微小分析デバイスでは、試料のγ-GTP濃度に応じてほぼ直線的な応答特性が得られており、これは仮に例えば5分と言うような測定時間を設定した場合に、濃度に応じ線形の関係で電流値が得られて有効且つ確実な計測ができることを示している。また、図12に示すように、γ-GTP活性値の応答曲線の初期傾斜は、試料のγ-GTP濃度に応じてほぼ線形の傾き増加の傾向が得られていることから、本実施例の微小分析デバイスの検量に、測定開始からの電流の立ち上がり曲線の傾斜を利用することで比較的に短時間での測定が可能となる。
本実施の形態の微小分析デバイスの一例を示す斜視図である。 本実施の形態の微小分析デバイスの一例における電極側の構成を示す分解斜視図である。 本実施の形態の微小分析デバイスの一例の電極側と流路側に分けて示す分解斜視図である。 本実施の形態の微小分析デバイスを用いて測定をする際のシステム構成を示す図である。 本実施の形態の微小流路を用いた例の送液停止後の拡散の様子を示す図である。 本実施の形態の微小分析デバイスの一例におけるシステムでのGOT反応応答曲線を示すグラフである。 本実施の形態の微小分析デバイスの一例におけるシステムでのGOT反応応答曲線の最大電流値のGOT活性依存性を示すグラフである。 本実施の形態の微小分析デバイスの一例におけるシステムでのGPT反応応答曲線を示すグラフである。 本実施の形態の微小分析デバイスの一例におけるシステムでのGPT反応応答曲線の最大電流値のGPT活性依存性を示すグラフである。 本発明の微小分析デバイスの他の一例を示す模式図である。 本実施の形態の他の微小分析デバイスの一例におけるシステムでの時間での電流値の増加によりγ-GTP活性依存性を示すグラフである。 本実施の形態の他の微小分析デバイスの一例におけるシステムでのγ-GTP活性値の応答曲線の初期傾斜を示すグラフである。
符号の説明
10 PDMS基板
12 微小流路
13 合流部
14、15 導入部
21 ガラス電極基板
25 作用極
26 参照極
27 対極
41、42 シリンジポンプ
49 電流系
50 電圧計
51 ポテンシオスタット

Claims (13)

  1. 基板と、基質溶液の流路と試料液の流路が合流される合流部を備え前記基板上に形成される微小混合流路と、前記合流部に臨んで形成される複数の電極からなる電極系と、前記電極系の中の1つの電極の近傍に配置され所要の酵素を前記合流部で合流した二液と反応させる酵素供給手段とからなり、前記電極系に生ずる電流値によって前記試料液の酵素活性を検量することを特徴とする微小分析デバイス。
  2. 前記微小混合流路は拡散による混合現象を用いて前記基質溶液と前記試料溶液を混合することを特徴とする請求項1記載の微小分析デバイス。
  3. 前記電極系は、前記酵素供給手段が形成された作用極と、電位の基準を得るための参照極と、対極とからなることを特徴とする請求項1記載の微小分析デバイス。
  4. 前記電極系は、前記基板と張り合わされる板状部材に導電性薄膜を用いて形成されることを特徴とする請求項1記載の微小分析デバイス。
  5. 前記酵素供給手段は前記酵素を前記電極系の中の前記1つの電極に固定する固定手段であることを特徴とする請求項1記載の微小分析デバイス。
  6. 前記固定手段は前記電極表面に酵素を含む膜を形成して構成されることを特徴とする請求項5記載の微小分析デバイス。
  7. 前記酵素はL-グルタミン酸オキシダーゼであり、前記試料液はガンマ・グルタミルトランスペプチダーゼ(γ‐GTP)、グルタミック・オキサロアセテック・トランスアミナーゼ(GOT)、グルタミック・ピルビック・トランスアミナーゼ(GPT)の中の少なくとも1つの酵素を含むことを特徴とする請求項1記載の微小分析デバイス。
  8. 基板上に形成された流路中に基質溶液及び試料液を送ることで合流させ、その基質溶液と試料液の合流部に臨み且つ少なくとも1つの電極に所要の酵素が固定された電極系に通電する際に、前記基質溶液及び前記試料液の送液停止若しくは低速化後の前記電極系に通電される電流の電流値の立ち上がりが略飽和するレベルの高さを以って前記試料液の酵素活性を検量することを特徴とする酵素の分析方法。
  9. 基板上に形成された流路中に基質溶液及び試料液を送ることで合流させ、その基質溶液と試料液の合流部に臨み且つ少なくとも1つの電極に所要の酵素が固定された電極系に通電する際に、前記基質溶液及び前記試料液の送液後、前記電極系に通電される電流の電流値の立ち上がりの傾斜を以って前記試料液の酵素活性を検量することを特徴とする酵素の分析方法。
  10. 前記基質溶液及び前記試料液は前記所要の酵素が固定された1つの電極の近傍で合流することを特徴とする請求項8または請求項9記載の酵素の分析方法。
  11. 前記基板上に形成された前記流路は略Y字状の形状に延在してなることを特徴とする請求項8または請求項9記載の酵素の分析方法。
  12. 前記酵素はL-グルタミン酸オキシダーゼであり、前記試料液はガンマ・グルタミルトランスペプチダーゼ(γ‐GTP)、グルタミック・オキサロアセテック・トランスアミナーゼ(GOT)、グルタミック・ピルビック・トランスアミナーゼ(GPT)の中の少なくとも1つの酵素を含むことを特徴とする請求項8または請求項9記載の酵素の分析方法。
  13. 基板上に形成された流路中に基質溶液及び試料液を送ることで合流させ、その基質溶液と試料液の合流部に臨み且つ少なくとも1つの電極に所要の酵素が固定された電極系に通電する酵素の分析方法において、前記基質溶液を替えることで前記試料液の異なる酵素活性を検量することを特徴とする酵素の分析方法。

JP2004295138A 2004-05-10 2004-10-07 微小分析デバイスと酵素の分析方法 Pending JP2005351882A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004295138A JP2005351882A (ja) 2004-05-10 2004-10-07 微小分析デバイスと酵素の分析方法

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004140055 2004-05-10
JP2004295138A JP2005351882A (ja) 2004-05-10 2004-10-07 微小分析デバイスと酵素の分析方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2005351882A true JP2005351882A (ja) 2005-12-22

Family

ID=35586475

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004295138A Pending JP2005351882A (ja) 2004-05-10 2004-10-07 微小分析デバイスと酵素の分析方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2005351882A (ja)

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007259762A (ja) * 2006-03-28 2007-10-11 Univ Of Tsukuba 微小分析装置及び微少試料の分析方法
WO2008047525A1 (fr) * 2006-10-18 2008-04-24 Konica Minolta Medical & Graphic, Inc. Procédé de mélange de réactifs dans une puce et système d'inspection de puce
US9616171B2 (en) 2013-08-05 2017-04-11 Cam Med Llc Conformable patch pump
JP2017070222A (ja) * 2015-10-05 2017-04-13 株式会社タカゾノテクノロジー 流体供給装置および流体観察装置
JP2017072426A (ja) * 2015-10-05 2017-04-13 株式会社タカゾノテクノロジー 電圧印加装置
JP2020078315A (ja) * 2015-10-05 2020-05-28 株式会社タカゾノテクノロジー 微生物検出装置
CN113000079A (zh) * 2020-06-02 2021-06-22 山东大学 一种重金属离子检测电化学微流控传感芯片及其制备方法
KR20210075746A (ko) * 2019-12-13 2021-06-23 (주)셀라바이오텍 나노 잉크를 이용한 전위 측정 기반 수직 방향 입자 정량 측정 장치 및 그 방법

Cited By (14)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007259762A (ja) * 2006-03-28 2007-10-11 Univ Of Tsukuba 微小分析装置及び微少試料の分析方法
JP4660768B2 (ja) * 2006-03-28 2011-03-30 国立大学法人 筑波大学 微小分析装置及び微少試料の分析方法
WO2008047525A1 (fr) * 2006-10-18 2008-04-24 Konica Minolta Medical & Graphic, Inc. Procédé de mélange de réactifs dans une puce et système d'inspection de puce
JPWO2008047525A1 (ja) * 2006-10-18 2010-02-25 コニカミノルタエムジー株式会社 マイクロチップ内での試薬混合方法及びマイクロチップ検査システム
US9616171B2 (en) 2013-08-05 2017-04-11 Cam Med Llc Conformable patch pump
US10398832B2 (en) 2013-08-05 2019-09-03 Cam Med Ltd. Conformable patch pump
JP2017072426A (ja) * 2015-10-05 2017-04-13 株式会社タカゾノテクノロジー 電圧印加装置
WO2017061346A1 (ja) * 2015-10-05 2017-04-13 株式会社タカゾノテクノロジー 流体供給装置および流体観察装置
JP2017070222A (ja) * 2015-10-05 2017-04-13 株式会社タカゾノテクノロジー 流体供給装置および流体観察装置
JP2020078315A (ja) * 2015-10-05 2020-05-28 株式会社タカゾノテクノロジー 微生物検出装置
KR20210075746A (ko) * 2019-12-13 2021-06-23 (주)셀라바이오텍 나노 잉크를 이용한 전위 측정 기반 수직 방향 입자 정량 측정 장치 및 그 방법
KR102383813B1 (ko) 2019-12-13 2022-04-08 (주)셀라바이오텍 나노 잉크를 이용한 전위 측정 기반 수직 방향 입자 정량 측정 장치 및 그 방법
CN113000079A (zh) * 2020-06-02 2021-06-22 山东大学 一种重金属离子检测电化学微流控传感芯片及其制备方法
CN113000079B (zh) * 2020-06-02 2023-09-22 山东大学 一种重金属离子检测电化学微流控传感芯片及其制备方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Suzuki Advances in the microfabrication of electrochemical sensors and systems
US7419821B2 (en) Apparatus and methods for analyte measurement and immunoassay
US6801041B2 (en) Sensor having electrode for determining the rate of flow of a fluid
US10514354B2 (en) Biosensor structures for improved point of care testing and methods of manufacture thereof
US20210162418A1 (en) Thermal control system for controlling the temperature of a fluid
US11161114B2 (en) Ph control for analyte detection
US20110027873A1 (en) Micro-nano fluidic biochip for assaying biological sample
WO2005010519A1 (ja) バイオセンサおよびその製造方法
JP2006516721A (ja) 多孔質層上に試薬を含む複層化された電気化学系微小流体センサー
US11198123B2 (en) Cartridge device with bypass channel for mitigating drift of fluid samples
US20170010259A1 (en) Multiplexed microfluidic proteomic platform
US11009480B2 (en) Lab on a chip device for multi-analyte detection and a method of fabrication thereof
JP2005351882A (ja) 微小分析デバイスと酵素の分析方法
US20120298528A1 (en) Biosensor and analysis method using same
Moon et al. Development and characterization of a microfluidic glucose sensing system based on an enzymatic microreactor and chemiluminescence detection
KR100930859B1 (ko) 동시 다중면역 반응 측정을 위한 마이크로 바이오칩과 이의제조방법 및 이를 이용한 면역반응 여부를 검출하는 방법
JP3991034B2 (ja) 検出方法
Park et al. Fabrication and testing of a PDMS multi-stacked hand-operated LOC for use in portable immunosensing systems
Frey et al. Continuous-flow multi-analyte biosensor cartridge with controllable linear response range
Morimoto et al. Electrochemical microsystem with porous matrix packed-beds for enzyme analysis
Ghorbanpoor et al. Effect of microchannel dimensions in electrochemical impedance spectroscopy using gold microelectrode
JP4660768B2 (ja) 微小分析装置及び微少試料の分析方法
JP4301906B2 (ja) 生体液分析器具、及びかかる生体液分析器具を用いた生体液分析方法
CN117751286A (zh) 生物传感器
JP2022104432A (ja) マイクロチップ、マイクロチップ測定装置および被験物質の測定方法