JP2005350972A - 防災事業計画支援システムとその方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 CLを精度よく且つ容易に演算可能であり、しかも追加データによる更新を精度を担保しながら短時間、低コストで実行可能な防災事業計画支援システムとその方法を提供する。
【解決手段】情報入力装置と、情報格納装置と、情報演算装置と、情報出力装置を有し、情報入力装置は、各地域における解析データと、CLを演算するための解析パラメータ及び解析モデルとを、情報格納装置に入力可能な手段であって、情報演算装置は、解析モデルに解析パラメータを入力する解析パラメータ設定部と、CLを演算する判別境界面解析部とを備え、情報出力装置は、解析データと解析パラメータと解析モデルとCLのうち少なくとも1の情報を出力可能な手段であるものである。
【選択図】 図1

Description

本発明は、土砂災害の発生限界線、避難基準線、警戒基準線を演算する防災事業計画支援システムとその方法に係り、特に、これらのCLの精度を要求水準を用いて検証することを可能にし、さらに、CLの演算のための解析モデルにサポートベクターマシンを採用することでCLの更新を効率的に実行することが可能な防災事業計画支援システムとその方法に関する。
土砂災害(土石流、がけ崩れ、地すべり)は、毎年、全国各地で発生しており、尊い人命が失われ、貴重な財産が破壊されている。これは、我が国の国土の約7割が山地で地質的にも脆弱な地域が多く、急峻な地形が多い等の地理的条件や、都市化の進展による山麓部の土砂災害危険箇所(土石流危険渓流、急傾斜地崩壊危険箇所、地すべり危険箇所)への人口増加等の社会的条件、更には土砂災害の誘因となる台風や梅雨等の集中豪雨に見舞われ易いといった気象的条件によるものであり、土砂災害は、我が国における宿命的な自然災害の一つとなっている。
かかる土砂災害危険箇所は、全国で約52万箇所と多く、ハード対策による整備率は20%程度と低いのが現状であり、また、これだけ多くの危険箇所全てにハード対策を実施するには予算的、時間的な制約もあることから、ソフト対策によりハード対策の遅れをカバーする必要性が認識されてきている。ソフト対策の目的は、土砂災害から人命を守り、更には財産の破壊を最小限に留めることにあり、ソフト対策には、警報の発令や避難の指示、被害状況に応じた応急対応や二次災害の防止対応の支援などを的確かつ迅速に行う機能が必要であり、また、種々の防災情報の収集・整理・伝達を如何に迅速に行うかが求められる。特に、的確な警報の発令や避難の指示は重要であり、これらは、通常、短期降雨指標と長期降雨指標を用いて設定された警戒や避難の基準線に基づき行われるが、複数の斜面あるいは複数の渓流を含む地域全体で一つの基準線を用いている場合が多く、また、直線で近似した基準線が殆どである。即ち、従来の多くの基準線では、斜面毎あるいは渓流毎に異なる地形要因による土砂災害発生の危険度(潜在危険度)は考慮されず、また、複雑な自然現象を直線近似で表現していることから、その精度については課題が残されていた。
そこで、近年では、複雑な自然現象を表現するために、基準線を非線形で表示する研究がなされている。
例えば、非特許文献1には、「RBFネットワークを用いた非線形がけ崩れ発生限界雨量線の設定に関する研究」として、RBF(放射状基底関数)の代表的な関数であるガウス関数を用いながら、入力層、中間層、出力層から構成される階層構造からなるRBFネットワークによって客観的で精度の高い非線形のがけ崩れ発生限界雨量線の設定に関する技術が開示されている。
このようにRBFネットワークを用いたがけ崩れ発生限界雨量線の設定は、発生データの教師値を−1、非発生の教師値を1と設定して、ガウス関数を重ね合わせるようにして判別境界面を構築するため、発生データと非発生データを用いて崩壊現象に関する判別境界面を構築してしまえば、がけ崩れ発生限界雨量線はその等高線から容易に求められる。
また、中間層の出力関数にガウス関数を用いていることから、データが存在しない範囲では、出力値は0となる。従って、非発生データが大量にある領域では出力値が1付近となるが、非発生データが少ない領域では出力値が低下する。従って、発生データがなくとも非発生データが少ない領域を危険領域とみなすことが可能であるため、非発生データのみでもがけ崩れ発生限界雨量線は引くことが可能である。
ところが、このRBFネットワークを用いたがけ崩れ発生限界雨量線を求めるための判別境界面は、前述のとおり発生データと非発生データについてガウス関数などの放射状基底関数を重ね合せて形成されるため、データの数が増えれば増えるほど解析に使用されるデータも増え、解析時間やコストが増加してしまうという課題があった。
このようなRBFネットワークを用いる解析のほかには、例えば特許文献1に開示されるように、サポートベクターマシンを解析モデルとして用いて、正しく判別されないデータが存在する可能性のある境界付近における種類判別の精度を高めた「類識別装置及び類識別方法」が開示されている。
本特許文献1は、サポートベクターマシンのみならず、ニューラルネットワークを用いた解析も同時に開示されているが、2種類の教師データを用いて、それらを類識別する際に、サポートベクターマシンを用いて解析している。
さらに、特許文献2には、「テンス・アスペクト・モダリティ翻訳処理方法、テンス・アスペクト・モダリティ翻訳システム」として、機械翻訳の際に変換先のテンス・アスペクト・モダリティを精度よく翻訳する際にサポートベクトルマシンを利用する技術が開示されている。
特許文献1及び特許文献2におけるサポートベクターマシンの利用に関しては、直接本願発明の技術分野には関連はないものの、特許文献1の図2や特許文献2の図4に示されるとおり、このサポートベクターマシンは、2種類の素性あるいは属性を備えるデータを判別する際に用いられている。
従って、本願発明における土砂災害の発生と非発生という2種類の事象に関するデータを判別する境界線を引くために用いることも可能である。このような観点から特許文献1と特許文献2について引用して開示した。
倉本和正 他5名:RBFネットワークを用いた非線形がけ崩れ発生限界雨量線の設定に関する研究、土木学会論文集、No.672/VI-50, pp.117-132, 2001.3 特開2003−208594号公報 特開2003−16067号公報
しかしながら、非特許文献1に開示された技術は、前述のとおり発生データと非発生データについてガウス関数などの放射状基底関数を重ね合せて形成されるため、データの数が増えれば増えるほど解析に使用されるデータも増え、解析時間やコストが増加してしまうという課題があった。
さらに、CLを解析する際にRBFネットワークを用いた場合には、格子間隔、基底関数の半径、非発生降雨の抑制パラメータ、発生降雨の抑制パラメータのそれぞれについて2種類、合計8つのパラメータを試行錯誤して検討する必要があるため、最適なパラメータを検討するのにも時間がかかるという課題もあった。
また特許文献1と特許文献2に開示される技術では、何らかの特性を備えた2種類のデータを判別するためにその境界となる線を引いているが、それらの精度を検証する手段を備えるものではなく、その境界線がどの程度の精度を担保可能な境界線であるかは判断できなかった。
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、土砂災害の発生限界線、避難基準線及び警戒基準線を演算する防災事業計画支援システムとその方法に係る前述の状況に鑑み、土砂災害の発生限界線、避難基準線及び警戒基準線の少なくともいずれかを、精度よく且つ容易に演算可能であり、しかも追加データによる更新を精度を担保しながら短時間、低コストで実行可能な防災事業計画支援システムとその方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明である防災事業計画支援システムは、情報入力装置と、情報格納装置と、情報演算装置と、情報出力装置を有し、各地域における降雨データと土砂災害発生・非発生の実績情報を用いてCLを演算する防災事業計画支援システムであって、情報入力装置は、各地域における解析データと、CLを演算するための解析パラメータ及び解析モデルとを、情報格納装置に入力可能な手段であって、情報演算装置は、解析モデルを情報格納装置から読み出して、この解析モデルに情報格納装置から読み出された解析パラメータ又は情報入力装置から入力された解析パラメータを入力する解析パラメータ設定部と、情報格納装置から解析データを読み出して又は情報入力装置から入力された解析データを用いてCLを演算する判別境界面解析部とを備え、情報出力装置は、解析データと解析パラメータと解析モデルとCLのうち少なくとも1の情報を出力可能な手段とするものである。
また、請求項2に記載される防災事業計画支援システムは、請求項1記載の発明において、情報入力装置は、演算されたCLに対する要求水準を入力可能な手段であって、情報演算装置は、降雨データと土砂災害発生・非発生の実績情報を情報格納装置から読み出して又は情報入力装置から入力された降雨データと土砂災害発生・非発生の実績情報を用いて、判別境界面解析部で演算されたCLに対して土砂災害が発生した場合の降雨データに対する発生的中率及び/又は土砂災害が発生しなかった場合の降雨データに対する非発生的中率を演算し、要求水準と比較してCLの精度を検証するCL精度検証部を備えるものである。
請求項3に記載された防災事業計画支援システムは、請求項1又は請求項2に記載の発明において、解析データには、降雨データ以外に、各地域内に含まれる地点の災害を引き起こす要因のうち少なくとも1要因に関する属性値又は評価値を含み、この属性値又は評価値を危険度とし、その大小に応じて地点を分類して、この分類毎にCLを演算するものである。
請求項4に記載される防災事業計画支援システムは、請求項1又は請求項2に記載された発明において、解析データには、降雨データ以外に、各地域内に含まれる土砂災害を引き起こす要因のうち少なくとも1要因に関する属性値又は評価値を含み、判別境界面解析部は、属性値又は評価値を含む解析データを情報格納装置から読み出し、あるいは情報入力装置から入力された解析データを用いて、要因のカテゴリー区間の各々で土砂災害発生・非発生の実績情報から土砂災害発生率を演算し、その土砂災害発生率を地点の危険度とし、大小に応じて地点を分類して、この分類毎にCLを演算するものである。
請求項5に記載された防災事業計画支援システムは、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載される発明において、解析モデルはサポートベクターマシンであって、判別境界面解析部は、CLの演算に用いた解析データの内、サポートベクターマシンによって分類されるサポートベクターを抽出し、これを情報格納装置に格納しておき、その後に解析データが追加データを蓄積した場合には、サポートベクターと追加データを用いてCLを演算するものである。
請求項6に記載された防災事業計画支援システムは、請求項5に記載される発明において、サポートベクターマシンによってサポートベクターに分類されなかった解析データの内、サポートベクターマシンの分離超平面f(x)=±1から予め定めた距離εに含まれる解析データをサポートベクターと追加データに含めてCLを演算するものである。
請求項7に記載された防災事業計画支援システムは、請求項5又は請求項6に記載される発明において、解析モデルのサポートベクターマシンは、式(1)で表現されるソフトマージンを有するサポートベクターマシンであるものである。
請求項8に記載された防災事業計画支援システムにおいては、請求項5又は請求項6に記載される発明において、解析モデルのサポートベクターマシンは、式(2)で表現されるνサポートベクターマシンであるものである。
請求項9に記載された防災事業計画支援システムは、降雨データと土砂災害発生・非発生の実績情報と土砂災害を引き起こす要因毎の評価値を用いてCLを演算する防災事業計画支援方法であって、解析パラメータ設定部によって、予め情報格納装置に格納された解析モデルを読み出して、この解析モデルに情報格納装置から読み出された解析パラメータ又は情報入力装置から入力された解析パラメータを入力する工程と、判別境界面解析部によって、情報格納装置から解析データを読み出して又は情報入力装置から入力された解析データを用いてCLを演算する工程と、情報出力装置によって、解析データと解析パラメータと解析モデルとCLのうち少なくとも1の情報を出力する工程を有するものである。
請求項10に記載された防災事業計画支援システムは、降雨データと土砂災害発生・非発生の実績情報と土砂災害を引き起こす要因毎の評価値を用いてCLを演算し、このCLを要求水準で検証する防災事業計画支援方法であって、要求水準設定部によって、予め情報格納装置に格納された要求水準を読み出し又は入力部から入力された要求水準を用いてCLに対する要求水準を設定する工程と、解析パラメータ設定部によって、予め情報格納装置に格納された解析モデルを読み出して、この解析モデルに情報格納装置から読み出された解析パラメータ又は情報入力装置から入力された解析パラメータを入力する工程と、判別境界面解析部によって、情報格納装置から解析データを読み出して又は情報入力装置から入力された解析データを用いてCLを演算する工程と、CL精度検証部によって、降雨データと土砂災害発生・非発生の実績情報を情報格納装置から読み出して又は情報入力装置から入力された降雨データと土砂災害発生・非発生の実績情報を用いて、判別境界面解析部で演算されたCLに対して土砂災害が発生した場合の降雨データに対する発生的中率及び/又は土砂災害が発生しなかった場合の降雨データに対する非発生的中率を演算し、要求水準と比較してCLの精度を検証する工程と、情報出力装置によって、解析データと解析パラメータと解析モデルとCLのうち少なくとも1の情報を出力する工程を有するものである。
本発明は、現実に取得された降雨データと土砂災害の実績データを用いてCLを設定するため、利用者の経験と勘を要さず、客観的にCLを設定可能であり、汎用性の高いCLを作成することができる。従って、短期間に土砂災害のデータベースの更新が可能で迅速性が要求される災害対策などにも対応可能であり、国土保全や人命救助に多大な恩恵を発揮することができる。
また、特に請求項2に記載された防災事業計画支援システムにおいては、降雨データと土砂災害発生・非発生の実績情報を用いて、降雨データに対する発生・非発生的中率を演算し、要求水準と比較してCLの精度を検証するため、常に高い精度を担保可能な防災事業計画支援システムを提供することができる。
さらに、特に請求項5乃至8では、解析モデルにサポートベクターマシンを導入することによって、高精度に加えて容易に演算可能であり、しかも追加データによる更新を行う際にも短時間、低コストで実行可能であり、時間的、経済的に高効率の解析が可能である。
本発明の実施の最良の形態及び実施例を説明する前に、本願特許請求の範囲及び明細書に記載される発明、実施の形態及び実施例の理解を容易にするため、本願明細書及び特許請求の範囲の中で使用される語の定義を示す。中には従来の技術にて説明したものもあるが、ここでまとめて記載する。
まず、本願でいう「防災事業」とは、直接的に防災のための施設を施工する事業に限らず、斜面或いは渓流の危険性を調査するために行う調査事業など、その施工につき優先順位付けを必要とする全ての防災に係る事業を包含するものである。
また、本願でいう土砂災害発生の危険度に係る「要因」とは、表土の厚さ、地盤の状況、斜面と不連続面の関係、断層の有無、岩石区分等の地形や地質に係る要因、植生、樹木の樹齢、伐採痕の有無、湧水の有無、崩壊履歴の有無等の環境に係る要因、時間雨量、実効雨量、連続雨量等の降雨に係る要因を含み、これらをCLの設定に供される危険度の解析を実行するための属性として用いることができる。例えば、所定降雨要因条件下での土砂災害発生・非発生の実績を、降雨要因を除く他の要因を属性として加えてCLを解析した場合には、潜在的な危険度を評価した上でCLを設定することができる。
本願でいう「カテゴリー」とは、各要因を評価するための物理量あるいは非物理量に基づいて区分したものをいい、「カテゴリー区間」とは、その区分された範囲をいう。例えば、河川の流域平均勾配という地形要因であれば、「°」という物理量に対して、0°〜10°をカテゴリー1、10°〜20°をカテゴリー2などとし、0°〜10°の区間自体をカテゴリー区間という。また、渓流方位という地形要因では、「東西南北」という非物理量に対して東をカテゴリー1、西をカテゴリー2などとし、このような場合、カテゴリー区間としてはその一方向をいう。
本願でいう「属性値」とは、各要因における複数のカテゴリー区間名あるいはカテゴリー区間を示す序数、すなわち、カテゴリー1、カテゴリー2などの1又は2のことをいう。また、「評価値」とは、前述の河川の流域平均勾配という地形要因であれば、実際の地域や地点における平均勾配の測定値をいい、具体的には15°などの数値となる。
さらに、土砂災害の「発生の的中率」とは、全発生降雨に対する災害発生時刻以前にCLを越えた発生降雨の数の割合を意味し、「非発生の的中率」は全非発生降雨に対する一連降雨中すべての降雨がCLを超過しなかった非発生降雨の数の割合を意味する。
以下、本発明の実施の形態に係る防災事業計画支援システムと防災事業計画支援方法について図1乃至図10に基づいて説明する。
図1は、本実施の形態に係る防災事業計画支援システムの構成図である。また、図2乃至図5は防災事業計画支援方法のフローチャートを示す。本実施の形態においては、判別境界面の解析やその解析結果に基づくCLの設定に、土砂災害の発生データの集合と非発生の集合を完全に分離するハードマージンによるサポートベクターマシン、ある程度の誤差を許容したソフトマージンによるサポートベクターマシン、土砂災害の非発生データのみを用いる1クラスのサポートベクターマシン(以下、νSVMと略す)を用いて説明する。
防災事業計画支援システムは、情報入力装置1と情報演算装置2と情報出力装置3と情報格納装置4から構成される。情報入力装置1は、情報格納装置4に格納されるデータを予め入力したり、あるいは情報演算装置2の作動時に直接データを入力するために使用されるものである。情報演算装置2は、要求水準設定部5、モデル選択部6、解析パラメータ設定部7、判別境界面解析部8及びCL精度検証部9から構成されるものであり、情報格納装置4から読み出したデータや情報入力装置1から入力されるデータと解析のモデルを用いて判別境界面の解析やその判別境界面の解析結果に基づいてCLを設定したり、さらにそのCLの更新のための解析を行うものである。
情報演算装置2を構成する要素を説明する前に、先に情報格納装置4に格納されるデータ等について説明する。
情報格納装置4には、大きく分けて実データ11と要求水準データ15、解析パラメータ16、モデルデータ17、CLデータ18、サポートベクターデータ19が格納されている。これらのデータは、前述の情報入力装置1から入力されるものである。また、解析パラメータ16の一部は、情報演算装置2において演算して求められる。
実データ11は、ある地域あるいはその地域に含まれる各地点における降雨データ12や、それらの地域や地点において、土砂災害が発生したかあるいは発生しなかったかの実績を発生・非発生で示す災害実績データ13、土砂災害を引き起こす要因に関する評価値あるいは属性値に関する要因評価値データ14を含むものである。なお、降雨データ12は、実際の測定値でもよいし、それを規格化したようなデータであってもよいし、例えば半減期が21日の実効雨量データなどの降雨指標であってもよい。これらの降雨データ12、災害実績データ13、要因評価値データ14は解析の対象となる地域、地点に関するID符号を付した状態でデータテーブルとして格納されるものであり、これらのID符号をキーとして検索が可能となっている。
要求水準データ15は、モデルを用いて解析された判別境界面の結果から得られるCLの精度についての要求水準であり、発生の的中率と非発生の的中率によって表現される。
また、解析パラメータ16は使用される解析モデルによって変動するが、いずれのサポートベクターマシンにおいても共通するカーネル関数の半径rや、分離超平面の法線ベクトルを表す変数w、バイアス項と呼ばれる変数bやρ、スラック変数ξiに対する重みパラメータC、さらには1クラスのサポートベクターマシンにおいて誤分類されるデータの割合を表すパラメータであるνなどが含まれる。これらの変数、パラメータあるいは係数も含めて数値のセットを指すものである。
モデルデータ17は、まず、線形のモデルと非線形のモデルの区別があり、これらの区別に対して、それぞれハードマージンによるサポートベクターマシンのモデル、ソフトマージンによるサポートベクターマシンのモデル、νサポートベクターマシンのモデルが含まれる。本実施の形態においては、サポートベクターマシンをモデルとして選択する場合を用いているものの、そのほかの解析モデルを用いてもよく、その際には、採用する解析モデルに関するデータが含まれる。
CLデータ18は、解析によって得られた判別境界面をベースに得られたCLに関するデータである。解析の更新によってCLデータ18は書き換えられるようにしておいてもよいし、過去において得られた古いデータを、更新されたデータとは区別しながら格納されるようにしておいてもよい。また、CLを設定するための判別境界面に関するデータも含める場合がある。
サポートベクターデータ19は、モデルデータ17と解析パラメータ16のセットを指すもので、具体的には例えばソフトマージンによるサポートベクターマシンにおいて、解析パラメータ16から特定のカーネル関数の半径r、特定のパラメータCなどが代入された個々のサポートベクターに関するデータを意味するものである。また、実施例の説明の際に後述するようにサポートベクターの重要性に関する情報や異常値といえるか否かなどの情報に関するデータを含むものである。
次に、情報演算装置2について説明する。
情報演算装置2は、情報入力装置1と情報出力装置3、さらには情報格納装置4にも接続されており、情報入力装置1を介して入力される情報を用いて設定や解析、さらに検証などの演算を行なうことができるし、情報入力装置1を介して予め格納されたデータを情報格納装置4から読み出して用いることも可能である。
情報演算装置2で実行される設定や解析あるいは検証に用いられるデータやそれらの演算の結果については、情報出力装置3を介して出力あるいは表示される。
情報演算装置2の要求水準設定部5では、CLの設定や更新などの演算に先立って要求水準を設定する。この要求水準の設定のための要求水準データ15は、前述のとおり土砂災害の発生の的中率と非発生の的中率によって表現されるが、いずれの程度の的中率とするかの設定を行なうものである。要求水準設定部5は、情報入力装置1からの入力値を採用することで設定することも可能であるが、予め情報格納装置4に格納された要求水準データ15のいずれかを読み出してもよい。その読み出しの際には、予め格納されている要求水準データ15を複数として候補となる要求水準データ15を情報出力装置3に表示しながら、その中から選択可能とするとよい。
モデル選択部6では、まず、CLの更新を行なうのか、新規にCLの設定を行なうのかが選択される。この選択は解析を始める際に、情報入力装置1から入力されるようにしておくとよい。モデル選択部6では、この情報入力装置1からの情報の入力を受けて、CLの更新であるか新設であるかを判断する。
また、CLの解析に際して線形のモデルを用いるかあるいは非線形のモデルを用いるかという線形・非線形の選択、さらに本実施の形態においては、どのタイプのサポートベクターマシンを選択するかの2種類の選択を含むものである。但し、線形・非線形の選択は必須ではなく、常にいずれか一方のタイプの解析モデルが選択されるようにしておいてもよい。
これらの解析モデルは予め情報格納装置4に格納されているモデルデータ17を読み出して選択されるようにしてもよいし、可能であれば、情報入力装置1から解析に際して入力してもよい。
解析パラメータ設定部7は、モデル選択部6で選択された解析モデルに用いられる解析パラメータを設定するものであるが、この解析パラメータは情報格納装置4に格納されている解析パラメータ16を読み出して、情報出力装置3に表示し、その中から選択されるようにするものである。もちろん、情報入力装置1から入力されるようにしてもよい。解析パラメータは、解析モデルによって用いられるものが異なるため、解析パラメータ設定部7は、モデル選択部6で選択された解析モデルを判別しながらその判別結果に沿って解析パラメータを情報出力装置3に表示させ、選択されるようにすることが望ましい。
具体的には、解析モデルには、その解析モデルを認識可能なID符号を付しておき、さらに、解析パラメータにも解析モデルと共通のID符号を付した状態で情報格納装置4に格納しておくとよい。モデル選択部6で選択された解析モデルのID符号をモデル選択部6が判別し、そのID符号に関する情報を解析パラメータ設定部7に伝送し、解析パラメータ設定部7は、そのID符号を認識しながら、情報格納装置4に格納された解析パラメータ16の中からそのID符号を検索して合致する解析パラメータ16を読み出して情報出力装置3に表示するのである。
また、この解析パラメータ設定部7では、解析の対象となる地域、あるいは地域内の地点毎において、要因毎に前述の要因評価値データ14と災害実績データ13を読み出して、要因毎のカテゴリー区間のそれぞれで災害実績データ13から土砂災害発生率を算定して土砂災害発生率をその区間の土砂災害発生得点とすることで、地域のあるいは複数の地点毎の危険度が算出され、それをCLの解析、設定に反映することが可能となっている。すなわち、土砂災害発生得点が土砂災害に対する危険度として機能する。なお、土砂災害発生率の算定には、カテゴリー区間における属性値をもって整理してもよいし、カテゴリー区間内の要因毎の評価値をもって整理してもよい。
さらに、要因毎に演算された危険度を組合せて累積させることで複数の要因を考慮した危険度とすれば、危険度に対する精度を向上させることが可能である。
この危険度の解析は、選択的に実施されるものであり、予めこの危険度の算定を実施した上でCLを設定するか、危険度を算定せず降雨データ12のみでCLを設定するかを選択可能としておくとよい。この選択はこの解析パラメータ設定部7において、あるいは予め要求水準設定部5、モデル選択部6においてメッセージを情報出力装置3に表示するように制御しておき、情報入力装置1から選択に関する情報を入力するように促すようにしておくとよい。また、一旦危険度に関する解析を実行しておけば、CLの更新の際には再度危険度に関する解析は不要となるので、更新の解析を実行する際には、解析のアルゴリズムにおいて更新であることを認識するフラグを立てて危険度に関する算定の選択を回避するようにしておくとよい。但し、要因評価値データ14に追加や変更などが生じた場合にはこのフラグをリセットして危険度に関する算定の選択が可能となるようにしておくことが望ましい。さらに、算定された危険度は情報出力装置3によって表示されるようにしておくとよい。
なお、この解析パラメータ設定部7における危険度の解析については、図3を参照しながら後で詳細に説明する。
次に、判別境界面解析部8では、まず、情報格納装置4に格納された実データ11から解析に供するデータが選択される。この選択された実データ11が先に選択された解析モデルに入力されて判別境界面が解析され、その判別境界面からCLが設定される。また、設定されたCLはCLデータ18として情報格納装置4に格納される。この判別境界面解析部8においては、解析パラメータ設定部7において解析された危険度をCLに反映させるか否かによってその演算が異なるが、その詳細については、図4を参照しながら後述する。
最後にCL精度検証部9について説明する。このCL精度検証部9では、判別境界面解析部8によって解析されたCLを情報格納装置4から読みだして、その予測精度を検証する。予測精度は、土砂災害が発生した場合の降雨データに対する発生的中率及び/又は土砂災害が発生しなかった場合の降雨データに対する非発生的中率を演算し、情報格納装置4から要求水準データ15を読みだしてこれと比較することによって行う。CLの予測精度の検証結果については、要求水準データ15との比較結果を情報出力装置3に表示することによって行なう。要求水準を満足した場合には、検証を終了するが、満足しなかった場合には、モデル選択部6で再び解析モデルの選定を行い、さらに解析パラメータ設定部7において解析パラメータの選定も行なうことになる。
これら解析モデルや解析パラメータの選定によってもなおCLの予測精度が要求水準を満足しない場合には、要求水準設定部5において、再度要求水準を設定してもよい。そのような場合には、予め要求水準データ15を情報出力装置3に表示しておき、解析当初の要求水準データ15よりも、低い要求水準データ15を選択可能とするとよい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。先ず、実施例1として、個々の地域あるいは斜面、個々の渓流に対する土砂災害の発生限界線、避難基準線及び警戒基準線の少なくともいずれかを、精度よく且つ容易に設定する過程及びこれらの基準線を効率的に更新するための防災事業計画支援方法について説明する。
図2乃至図4は、個々の地域あるいは斜面、個々の渓流に対する土砂災害の非線形の発生限界線、避難基準線及び警戒基準線の少なくともいずれかを、精度よく且つ容易に設定可能とし、なおかつこれらの基準線を効率的に更新するための防災事業計画支援方法の好ましい工程・手順を示した概略フローチャートである。なお、本実施例において紹介するこれらの工程・手順は、先に説明した防災事業計画支援システムにおいても共通するものである。これらの図においては、図1との関連性、すなわちハードウェアとの具体的な協働を明示するために、ハードウェアの構成についても併記している。このことに関連して、図2乃至図4を参照する実施例では、図1に記載される構成要素の符号を交えて説明する。
まず、図2に示すようにステップS1において、CLを解析するための要求水準を設定する。要求水準は土砂災害の発生降雨に対する的中率と非発生降雨に対する的中率の2通りあることは前述のとおりである。この設定に際しては、予め情報格納装置4に要求水準データ15として格納しておいてもよいし、情報入力装置1から入力されるようにしておいてもよい。
次に、ステップS1と同時あるいはその前後において、様々な地形、地点における土砂災害発生の危険度に関わる複数の要因に関する評価値及びその属性値、雨量観測所から得られる観測所毎の時系列的に整理された降雨データの属性値と土砂災害発生日時などの土砂災害発生・非発生の実績情報を読み取り可能に情報格納装置に格納しておく。また、それぞれの評価値や属性値を得た地点についてはその特定ができるようにID符号などを付しておく。
解析対象とする複数の箇所について、要因毎の評価値と、土砂災害発生・非発生の実績情報、降雨データを抽出する雨量観測所名との組で表されるデータを収集し、地形、地点における土砂災害発生の危険度に関わる複数の要因毎にそれぞれ複数のカテゴリー区間に分割し、そのカテゴリー区間名をデータの複数の要因毎の評価値に対応してそれぞれ付与し、そのデータから、各要因のカテゴリー区間名を属性値、土砂災害発生・非発生の実績情報、降雨データを抽出する雨量観測所名を整理した一覧表と雨量観測所毎に時系列的な降雨データの属性値、土砂災害発生非発生の実績との組で表される一覧表を整理しておくとよい。また、属性値とせず、評価値のまま一覧表を整理してもよい。
また、この要因の選択を予め行った上で要因に関する評価値、属性値、土砂災害発生・非発生の実績情報やID符号などを情報格納装置に格納しておいても良い。
なお、図2における降雨データは図1における降雨データ12であり、土砂災害発生・非発生の実績情報は災害実績データ13、属性値と評価値は要因評価値データ14に相当する。一覧表とは、降雨データ12、災害実績データ13、要因評価値データ14をまとめて示す実データ11のデータ構造を示しているとも言える。
降雨データ12については、必要に応じて実効雨量などの降雨指標に変換し、雨量観測所毎に時系列的に整理しておくとよい。また実効雨量などに予め変換した上で時系列的に情報格納装置4に格納しておいてもよい。解析時間の短縮を図るために、土砂災害非発生の降雨データ12は、クラスタリング処理により代表値に変換してもよく、予め代表値に変換しておいて情報格納装置4に格納しておいてもよい。
次いでステップS2では、現況のCLを更新するか、あるいは新規にCLを設定するか否かが選択される。この選択は、情報入力装置1からの入力あるいは可能であれば、予め情報格納装置4にその選択の情報を格納しておいてそれを読みだして実行されるようにしておくとよい。地盤強度などの土砂災害発生・非発生の危険度に関する要因が大きく変化した場合や過去の災害実績と比較して大規模な災害が発生した場合、あるいは現時点の降雨に対して現況のCLの予測精度が低い場合などはCLの更新を行う必要がある。
次にステップS3乃至S6でCLの設定及び更新を行う。先ずステップS3ではCLを設定するための解析モデルの選択を行う。CLの解析モデルとしては、第一に線形CLと非線形CLの区別があり、さらにそれぞれを設定するためのいくつかの解析モデルの選択がある。例えば、完全分離を目的としたハードマージンによるサポートベクターマシン、ある程度の誤差を許容したソフトマージンによるサポートベクターマシン、土砂災害の非発生降雨のみでCLの設定を行う1クラスのサポートベクターマシンがあり、これらの選択を行う。これらの解析モデルに関するデータは、モデルデータ17として予め情報格納装置4に格納されている。
解析に使用するモデルが決まれば、それぞれのモデルに必要な解析パラメータ16の入力をステップS4で行う。解析パラメータ16には、前述のとおりどのモデルにも共通してカーネル関数の半径rを決める必要がある。またソフトマージンによるサポートベクターマシンでは、誤判別の許容に関係するパラメータCを決定する必要があり、1クラスのサポートベクターマシンでは、はずれ値とみなす割合の上限値としてνを指定する必要がある。これらの解析パラメータは情報入力装置1から入力してもよく。予め情報格納装置4に格納しておいてそこから読み出してもよい。
ステップS5では、複数の地形・地質・植生要因等の差異による土砂災害の危険度を降雨要因で設定したCLに反映させるか、降雨要因のみでCLを設定するかどうかの選択が行なわれる。選択は、解析前に格納された選択に関する情報を情報格納装置4から読み出すようにしてもよいし、情報入力装置1から入力されるように情報出力装置3に表示して作業者からの選択を促すようにしてもよい。
ステップS6について、図3にその内容を詳細に示しながら説明する。先ずステップS61では、解析の対象とした地域内の複数の地点毎に整理した地形・地質・植生要因等の属性値や評価値に関する要因評価値データ14及び土砂災害の実績情報に関する災害実績データ13を情報格納装置4から読み出す。次に読み出した要因毎のカテゴリー区間のそれぞれで災害実績データ13から土砂災害発生率を算定し、土砂災害発生率をその区間の土砂災害発生得点とする(ステップS62)。地形・地質要因等は、数年で大きく変化することは少なく、CLを更新する際に既に危険度を算出した危険箇所については、再度危険度を算出する必要がない場合も生じる。そこでステップ63では、予め複数の地点毎の危険度が算出されている場合は、情報格納装置から過去の危険度を読み出し,そのまま使用する。ステップS64では、複数の地点毎に各要因の属性値あるいは評価値と上記で算出した土砂災害発生得点を対応させ、土砂災害発生得点の全要因の累積値を地点毎の危険度として算出する。算出した危険度は情報出力装置3により出力・表示される。
図2に戻って説明する。図2のステップS7では、現況CLの更新や新規にCLが設定される。ステップS7については、図4にその内容を詳細に示しながら説明する。
まずステップS71では、解析データ、すなわち実データ11の選択を行う。CLを新規に設定する場合は、現時点までの土砂災害の実績情報を基に土砂災害発生降雨(以下、「発生降雨」という)と土砂災害非発生降雨(以下、「非発生降雨」という)を選択する。またCLを更新する場合は、現況CLの設定時に抽出した更新データと新たに入手した発生降雨、非発生降雨を選択する。従って、予めCLの更新であるか新設であるかの情報を情報格納装置4に格納しておき、その選択を読み出すかあるいは情報入力装置1からの入力を促すかして、その情報に基づいて、いずれの期間の実データ11を読み出すかについて判断する必要がある。更新かあるいは新設かの情報については、ID符号を付すようにしておき、このID符号を読みだしてそのID符号に対応した期間の実データ11の選択を行なうとよい。
また、CLは危険度を反映させる場合と反映させない場合の2通りで設定方法が異なるため、CLに危険度を反映させる場合は、ステップS72からステップS77の処理を実施し、危険度を反映させない場合はステップS78からステップS80の処理を実施する。以下にそれぞれのCL設定方法を示す
CLに危険度を反映させる場合は、ステップS72において設定の対象とする危険箇所などの地点を危険度の大小に応じていくつかのグループに分ける。次にステップS73では、上記のグループ毎に発生・非発生降雨を抽出する。ステップS74ではステップS3で選択したCLのモデルに応じてサポートベクターマシンによりグループ毎に分離超平面の法線ベクトルを表すw、バイアス項bの値を算出し、それらを用いて判別境界面を構築する。構築した各判別境界面から最適な閾値を検討し、それらを基本CLとする。ステップS75では、基本CLの設定に用いた分離超平面の法線ベクトル、バイアス項の値を解析パラメータ16として情報格納装置4に読み出し可能に格納する。また基本CLに対する重要度の高いサポートベクター(重要データ)、重要度の低い不要データ、異常値、更新データを抽出し、これらをサポートベクターデータ19として情報格納装置4に読み出し可能に格納する。
CLの設定に関わるデータ、すなわちCL周辺にあるデータを重要度の高いデータと言う。非発生データが集中的にある領域内の散発的な発生データを異常値という。それ以外のデータを重要度の低いデータとみなす。更にこれらのデータの中からCLの更新に必要な更新データを抽出する。
これらの重要度の高低や更新データ、異常値については後ほど説明する。
ステップS76では、降雨データの存在する範囲内に短期的な降雨指標の縦軸と長期的な降雨指標の横軸にそれぞれ一定間隔の格子を設定し、この格子毎にグループ毎の代表危険度(平均値)と各格子の重みの近似式を設定する。最後にステップS77では、CL設定の対象とする各地点の危険度を前述の近似式に入力し、地点毎にCLを構築する。構築したCLは情報出力装置4により出力・表示されるとともに情報格納装置4に読み出し可能に格納される。
CLに危険度を反映させない場合は、ステップS78において対象地域の発生・非発生降雨を抽出する。ステップS79では、ステップS3で選択したCLのモデルに応じてサポートベクターマシンにより分離超平面の法線ベクトルを表すw、バイアス項の値を算出し、それらを用いて判別境界面を構築する。構築した判別境界面から最適な閾値を検討し、それをCLとする。CLの構築に用いた分離超平面の法線ベクトル、バイアス項の値を解析パラメータ16として情報格納装置4に読み出し可能に格納する。
構築したCLは情報出力装置や情報表示装置により出力・表示されるとともに情報格納装置に読み出し可能に格納される。ステップS80では、CL設定に対して重要度の高いサポートベクター(重要データ)、重要度の低い不要データ、異常値、更新データを抽出し、情報格納装置に読み出し可能に格納する。
図2に戻って説明する。図2のステップS8では、設定したCLに対して発生・非発生降雨に対する予測精度を算出する。予測精度は、発生・非発生の的中率で評価する。ステップS8については、図5にその内容を詳細に示しながら説明する。
先ずステップS81では情報格納装置4から精度検証するCLを読み出す。次にステップS82では、情報格納装置4の実データ11からCL設定に用いた発生・非発生降雨(学習データ)の一連降雨あるいはCL設定に用いていない発生・非発生降雨(未学習データ)の一連降雨を抽出する。これらの発生・非発生降雨の一連降雨は情報入力装置1から入力してもよく、予め情報格納装置4に格納しておいて、そこから読み出してもよい。抽出した発生・非発生降雨の一連降雨とCLの関係からステップS83では、発生・非発生の的中率を算出する。発生の的中率は、全発生降雨に対する災害発生時刻以前にCLを越えた発生降雨の数の割合を意味し、非発生の的中率は全非発生降雨に対する一連降雨中全ての降雨がCLを超過しなかった非発生降雨の数の割合を指す。予測精度は情報出力装置により出力・表示される。
図2に戻って説明する。ステップS9ではステップS8で算出した予測精度がステップS1で設定した要求水準を満足する否かを検証する。要求水準を満足する場合は、ステップS10に移動する。要求水準を満足しない場合は、CL設定の解析モデルあるいは解析パラメータを変更してCLを再構築する、あるいは現時点までの全発生・非発生降雨を用いてCLを再構築する必要があるため、ステップS2に移動する。
ステップS10では、設定したCLを用いて、時々刻々と変化する降雨に対してリアルタイムで警戒勧告や避難指示のタイミングを決定する。またその結果は、GIS(地理情報システム)上で危険度に応じて色分けした矩形を地形図と合わせてリアルタイムに表示することで、操作者は視覚的に土砂災害の危険性が高い時間と場所を把握することができる。
次に、上述の実施例1をベースとしてさらに具体的な実例と計算例を示しながら、実施例2として説明する。
土砂災害危険箇所(以下、「危険箇所」という)に対する対策工整備(ハード対策)は、直接的な土砂災害防止対策であるが、全国には土砂災害危険箇所が約52万箇所と多く存在し、その整備率は約20%程度と低いのが現状であり、これだけ多くの危険箇所全てにハード対策を実施することは予算的、時間的や制約もあることから、早急な対応は困難な状況にある。そこで、ハード対策を補うために警戒避難等のソフト対策を実施し、人命を最優先で守ることが重要な課題となっている。
土砂災害の警戒避難のタイミングを計る基準として、国土交通省では過去の災害実績を基に線形のCLを提案している。しかしながら、上記のCLには、設定手法及び予測精度の面で次のような問題がある。現況の線形CLは、設定に用いる土砂災害の発生降雨の選定やCLの傾き等の設定に技術者の主観に頼るところが多い。近年、行政には情報公開が求められ、客観的な手法が望まれるため、現況の設定手法では実用的とはいえない。またCLの形状は線形であるため複雑な自然現象である土砂災害に対応できず、予測精度が低いなどの問題が指摘されている。したがって、客観的な手法に基づいた非線形CLの設定手法を確立し、土砂災害を高精度で予測する必要がある。
上記の問題に加えて、CLの更新においても次のような問題が挙げられる。CLは、過去の災害履歴を基に土砂災害の発生降雨と非発生降雨を分類し、これらの分布状況を考慮して設定される。したがってCLは、雨量データや災害状況に関する資料の密度と精度に依存する。特に発生降雨は非発生降雨と比較して数が少ないため、過去の災害実績を上回る災害が生じた場合は、以前よりも危険な降雨領域(以下、「危険領域」という)あるいは安全な降雨領域(以下、「安全領域」という)が変化することがある。また、地盤強度あるいは雨の降り方等の災害発生条件が変化する場合、対策工の整備が進んだ場合も上記の領域が変化することがある。これらのことからCLは、定期的あるいは状況変化に応じて見直しを重ねることが重要である。
しかしながら、発生降雨は非発生降雨とともに年々データが蓄積していくため、これら全てのデータをCL更新に用いると労力や時間の面で効率的ではない。また地盤条件の変化や対策工の効果等により、過去のデータが必ずしも有用とならない場合も生じる。例えば、中国地方の中でも土砂災害が多い山口県では、一年当たり数10件の土砂災害が発生している。また発生降雨と同様にCLの設定に欠かせない非発生降雨は、毎年約10,000個も蓄積される。このように年々蓄積していく発生・非発生降雨に対して、従来の技術ではCL設定に対して重要あるいは不要なデータを選別する術はなく、過去から蓄積されたデータと新たに入手したデータを含めた大量の発生・非発生降雨に対してCLを設定せざるを得ない。また近年では、従来の1時間雨量よりも更に詳細に土砂災害発生あるいは非発生降雨の状況を把握するために10分間雨量の情報が提供されはじめている。10分間雨量を用いる場合、データ数が1時間雨量の6倍となり、RBFネットワークを用いた先行技術では、CLの設定や更新作業が困難になると予想される。
非線形CLを設定する先行技術としてRBFネットワーク(以下、「RBFN」という)を利用した技術が公開されているが、特にこの技術では非線形CLの設定に多くの非発生降雨を必要とするため、CLの見直しには上記の問題が生じると予想される。したがって、過去の発生・非発生降雨を土砂災害に対する重要度に応じて選別し、重要度の低いデータを除いてCLを更新する方法を確立する必要がある。
本実施例では、現在パターン分類手法として注目されているサポートベクターマシンを利用して、前述のCLの設定手法及び精度の問題点、CL更新の問題点の解決を試みた。
従来技術では、CLの設定には発生降雨と非発生降雨が必要不可欠である。土砂災害の災害実績が少ない地域では、利用可能な観測所と発生場所との距離によっては、CLの設定に利用できる発生降雨が無くなってしまうことがある。また過去の災害履歴には発生場所が不明確なデータも多く、降雨データとの付き合わせができないため、地域によってはCL設定に必要な発生降雨を入手できないことも十分に考えられる。
従来手法では、上記のように発生降雨が入手できない場合、非発生降雨の上限でCLを設定している。この方法ではCLの安全領域が極端に大きくなりこともあり、危険側のCLとなることが多い。そのため豪雨時では土砂災害を見逃す恐れがある。現状では非発生降雨のみを用いて客観的に精度の良いCLをする手法は少ない。
したがって、非発生降雨のみでも精度の良いCLを客観的に設定する手法が必要であり、非発生降雨精度のみでCLを設定し、精度の良い発生降雨を入手してCLの見直しを図るまでの間、仮のCLとして警戒避難に役立てることができる。本実施例ではνSVMを適用し、はずれ値を客観的に判断することで災害実績の少ない地域でも非発生降雨のみでCLの設定を試みる。
サポートベクターマシンとは1992年にVapnikらによって提案された手法で、現在パターン分類や関数近似の手法として注目されている。一般的なパターン分類では、線形分離可能な問題よりも線形分離不可能な問題の方が圧倒的に多いとされている。サポートベクターマシンでは、あるパターン分類問題が線形分離不可能な場合、ある非線形写像によって線形分離が可能な状態にすることができ、最適な分離超平面を求めることができる。
サポートベクターマシンには、二つの集合A、B(本発明でいう発生、非発生)の完全分離を目的としたハードマージン法と、ある程度の誤判別(ノイズ)を許容したソフトマージン法が存在する。
先ず完全分離を目的としたハードマージン法の概念を説明する。図6に示すように二つの集合A(発生)、B(非発生)がある場合、この二つの集合を分離する最適な分離超平面H0は、式(3)で表現され、
このH0は、式(4)、(5)で表現される最も接近したデータを通る二つの分離超平面H1、H2の間の距離(マージン)を最大化することで求めることができる。
これがハードマージン法であるが,現実問題では図7に示すようにデータにノイズが含まれている可能性が高いため、完全分離を行うハードマージン法は過学習に陥りやすく汎化能力(追加データに対する識別力)の面から必ずしも良いとは限らない。特に土砂災害の中でもがけ崩れ災害には、少雨で発生する散発的ながけ崩れが存在し、これらの災害は従来CL設定の際に前処理として取り除く必要がある。その処理はCLの設定と同様に主観的になり易い。
一方、ソフトマージン法は、図8に示すように、マージンを最大化すると同時にスラック変数ξを導入して、これを最小化する。スラック変数ξを導入することで、制約条件を緩め、誤判別を許容することができる。どの程度、誤判別を許容するかは、Cによって決まり、Cを大きくすれば、誤判別の度合いをより小さくするため、ハードマージン法に近い判別結果となる。
本実施例ではサポートベクターマシンの中でも特に上記のソフトマージン法に着目し、散発的ながけ崩れをノイズと解釈することで、このソフトマージン法を用いて客観的に散発的ながけ崩れを選別しながら、CLの設定を試みる。
以上の考えは、全て線形分離可能な問題に対して有効であり、非線形性が強く線形分離不可能な場合は、次のような検討を行う。図9に示すように原空間Xは、ある非線形写像(z=φ(x))によって高次元の特徴空間Zにマッピングされ、線形分離可能な状態となる。この状態に前述のソフトマージン法を適用すれば最適な非線形の分離超平面を得ることができる。本発明では、土砂災害発生限界線の設定に関して線形分離が可能な場合(線形CL)にも適用できるが、本実施例では特に線形分離不可能な場合(非線形CL)の例を取り上げることとした。
ソフトマージン法の定式化は、集合Aと集合Bを完全に分離するハードマージン法の定式に対してスラック変数ξを導入することで、制約を以下の式(6)のように緩め、ある程度の誤判別を考慮することができる。
また、誤判別を最小化する必要もあるので、ソフトマージン法の定式化は以下の式(7)のようになる。
ここで、Cはスラック変数ξに対する重みパラメータで、Cを大きくすれば誤判別の度合いをより最小化するため、完全分離に近い判別結果となる。またxは発生降雨、非発生降雨であり、yは教師値(発生降雨の場合:-1、非発生降雨の場合:1)を意味する。wは分離超平面の法線ベクトルと呼ばれる変数で、bはバイアス項と呼ばれる変数である。
ここで、式(7)に対するラグランジュ双対問題を考えると以下のようになる。
ここで、αはラグランジュ変数と呼ばれる。さらに、式(7)と式(8)との双対関係から、次式が成り立つ。
このとき、式(8)の目的関数の第2項に式(10)で表現されるベクトルの内積が存在するが、特徴空間 は一般に高次元であるので、この内積の計算は多大な時間を要する。
そこで、内積を保存するようなカーネル関数を用いることで計算の簡略化及び識別関数を非線形へ拡張することができる。本実施例では、カーネル関数の中でも特にガウシアンカーネルを適用した。したがって、式(8)及び識別関数f(x)は、式(9)と式(10)により、次のように書き換えることができる。
解析に使用したデータの中で、式(12)のαがα>0となるデータをサポートベクターと呼び、これらは主に分離超平面の周辺に存在する。したがって、サポートベクターは分離超平面の設定に必要不可欠なデータといえる。本実施例では、このサポートベクターの内、特に二つの分離超平面f(x)=±1の間に含まれるデータを重要度の高いサポートベクター(以下、「重要データ」という)と定義し、この間に含まれないサポートベクターを異常値と認識した。すなわち、従来から予測不可能といわれている散発的ながけ崩れは、安全領域内に存在する発生のサポートベクターと考えることができる。また、サポートベクター以外のデータは、分離超平面の設定に対して重要度の低いデータ(以下、「不要データ」という)と定義した。
なお重要データ(-1≦f(x)≦+1範囲に存在するサポートベクター)は、がけ崩れ発生と非発生の境界付近のデータであり、実際には発生するか否かの判断が困難なグレーゾーンのデータといえる。本実施例では、降雨要因のみで非線形CLの設定を行っているため、グレーゾーンのデータは地形・地質条件の差異が土砂災害の発生・非発生に影響したものと推察される。つまり、本発明のように客観的にグレーゾーンのデータを抽出できれば、降雨要因のみでは土砂災害発生・非発生の原因を解明できない地点や地域を特定できる。したがって、本発明から得られるこれらの情報を有効に活用すれば、膨大な調査箇所から特に詳細な現地調査を要する箇所を容易に絞り込むことが可能であり、効率的に防災事業を遂行できると考えられる。
νSVMは、1クラスで分離超平面の設定が可能であり、基本的な考え方は非線形写像によって特徴空間Zにマッピングした際に、入力空間で他から孤立しているはずれ点が特徴空間の原点近くに写像されるという性質を利用し、原点とサンプル群を分けるような分離超平面を考慮したものである。前述までのサポートベクターマシンは2クラス(発生:-1、非発生:+1)に対応しており、発生及び非発生降雨の両方が必要不可欠である。一方νSVMは非発生降雨のみでも非線形CLを設定できる利点を持つ。
とすれば、νSVMの定式化は以下のようになる。
ここで、xは発生降雨、非発生降雨で、νは誤分類されるデータの割合を表すパラメータである。wは分離超平面の法線ベクトルを表す変数で、ρはバイアス項と呼ばれる変数で、ξiはスラック変数である。
ここで、式(15)に対する双対問題を考えると以下のようになる。また非線形への拡張は、式(12)のサポートベクターマシンと同様にガウシアンカーネルを用いて行っている。

最適な分離超平面は、図10に示すようにあらかじめ決められた割合νのサンプル群(はずれ点)が原点側に残るように設定される。したがって、式(15)のνははずれ点の範囲を決定するパラメータであり、νが大きいほどはずれ点の範囲が広がる。すなわち非線形CLの安全領域が小さくなることを意味する。このνもサポートベクターマシンのパラメータ と同様に実験的に検討する必要がある。なおサポートベクターはα>0の非発生降雨となる。
式(15)と(16)を解き、得られたαとρによって、識別関数は以下のようになる。
次に具体的な計算例として、本実施例では山口県下関市の土砂災害、特にがけ崩れ災害の発生限界雨量線の設定に前述までのサポートベクターマシンを適用し、非線形CLの設定例を参考例1として図11乃至図22、表1乃至表6を用いて説明する。
中国地方でも山口県は土砂災害が多い地域であり、特に下関市は県内で危険箇所の数が最も多く、警戒避難体制の早期充実が望まれる地域の一つである。本実施例では、下関市内で発生した土砂災害の中で、下関気象台を中心に半径5km圏内で発生したがけ崩れ災害(1975年〜1999年:80件、2000年〜2003年:33件)を解析の対象とした。なお本実施例ではCL設定の最小単位を下関気象台から半径5km圏内に設定しているため、地点毎に異なる地形・地質・植生要因等の差異(危険度)は検討していない。
本実施例では従来技術に対する本発明の有用性を示すために、旧建設省(現国土交通省)が提案する線形CLと、先行技術として公開されているRBFNによる手法を用いて非線形CL(以下、「RBFN-CL」という)を設定し、本発明による非線形CLとの比較を行う。先ず線形CLの設定を行う。線形CLとしては、旧建設省(現国土交通省)が主催した「総合土砂災害対策検討会」の中で検討された「集中的に発生するがけ崩れに対する警戒避難基準雨量の設定手法(案)」(以下、「提言案」という)を用いる。この提言案は、集中的に発生するがけ崩れに対してのみ有効であり、設定の際には過去のがけ崩れ発生降雨を集中的な発生降雨(以下、「集中発生」という)と散発的な発生降雨(以下、「散発発生」という)に分類する必要がある。
集中的に発生するがけ崩れとは、定性的に実効雨量が一定以上となった場合に、一連降雨(24時間連続して無降雨である期間で区切られた一連の雨)のピーク付近で面的に限られた範囲で発生する崩壊と定義されている。本実施例では、この定義を参考に下記の条件で集中発生と散発発生を分類した。
集中発生:一連降雨の時間雨量及び実効雨量(半減期72時間)のピーク後3時間以内に発生した災害の中で、実効雨量(半減期72時間)が140以上
散発発生:上記以外のがけ崩れ災害
上記の条件により、本実施例では1975年〜1999年のがけ崩れ発生降雨80件を集中発生39件と散発発生41件に分類した。集中発生と散発発生の分類結果は、図11(a)に示すとおりである。線形CLの設定に用いる発生降雨は、発生時刻における実効雨量(半減期1.5時間)と実効雨量(半減期72時間)の組合せの中で集中発生のみを使用し、非発生降雨は非発生の一連降雨の中で原点から最も離れた実効雨量(半減期1.5時間)と実効雨量(半減期72時間)の組合せを使用した。線形CLは、図11(b)に示すように集中発生の中で最も原点よりの降雨に対する下限とし、直線の傾きは非発生降雨に対する的中率が最も高くなるように設定した。図11(b)より線形CLは、形状が直線であるためCLを超過した非発生降雨が複数存在することが分かる。
次にRBFNを利用したRBFN-CLの設定を行う。RBFN-CLは、提言案と同様に1975年〜1999年の発生・非発生降雨に対して先行技術を適用することで設定した。なお設定に用いた発生降雨は、集中発生と散発発生を分類せず、全発生降雨における発生時刻の実効雨量(半減期1.5時間)と実効雨量(半減期72時間)の組合せを使用した。非発生降雨は、発生の一連降雨を除く全ての一連降雨の実効雨量(半減期1.5時間)と実効雨量(半減期72時間)の組合せ(以下、「全非発生降雨」という)を用いた(図12参照)。ただし、その際に全非発生降雨は先行技術の方法に従って図13(a)に示すように降雨データの存在する範囲内に縦軸(実効雨量(半減期1.5時間))、横軸(実効雨量(半減期72時間))それぞれ一定間隔(ΔRx,ΔRy)の格子を設定し、図13(b)の斜線で示す領域(cluster1〜cluster4)のように格子の中にデータが存在する場合に限り、格子内のデータについては重心法を用いたクラスタリング処理を行った。このクラスタリングによる各領域の代表点を解析に用いる非発生降雨とした。
本実施例では上記のΔRx、ΔRyを先行技術の方法に従って、それぞれΔRx=5.0mm、ΔRy=1.5mmとした。その他にもRBFNを利用して非線形CLを設定するには、パラメータとして基底関数の半径Rx,Ry、非発生降雨に対する抑制パラメータλmax、λmin、発生降雨に対する抑制パラメータλmax、λminを設定する必要がある。本実施例では先行技術の方法に従ってそれらのパラメータをそれぞれRx=35.0mm、Ry=10.5mm、非発生降雨の抑制パラメータλmax=100、λmin=1、発生降雨の抑制パラメータλmaxmin=10とした。図14に設定したRBFN-CLを示す。
次にサポートベクターマシンを適用した非線形CL(以下、「SVM-CL」という)の設定を行う。SVM-CLは、提言案、RBFN-CLと同様に1975年〜1999年のがけ崩れ発生・非発生降雨を用いてサポートベクターマシンのソフトマージンを適用することで設定した。なお設定に用いた発生降雨は、RBFN-CLの設定と同様に集中発生と散発発生を分類せず、全ての発生降雨における発生時刻の実効雨量(半減期1.5時間)と実効雨量(半減期72時間)の組合せを使用した。またRBFN-CLとの比較を行うために、RBFN-CLと同様に非発生降雨はクラスタリング処理を行い、クラスタリングによる各領域の代表点を解析に用いる非発生降雨とした。
RBFNによる先行技術では、発生・非発生降雨の全てに基底関数を配置した場合、極端なデータの粗密により汎化能力の低い非線形CLが構築される恐れがある。したがってRBFNによる先行技術では、前処理として上記のクラスタリングを行い、データの密度をある程度均等化する必要がある。なおサポートベクターマシンでは、非線形CLを設定する際に非発生降雨に対して、上記のクラスタリング処理を行う必要はないため、RBFN-CLよりも解析が容易である。
サポートベクターマシンのソフトマージンでは、式(12)に示すカーネル関数の半径r及びパラメータCを決定する必要があるが、まずCに関しては、Cを大きくしすぎると、一般的には汎化能力が低くなる傾向があると知られている。したがって、Cを変化させてそれぞれの分離超平面を構築し、CLの形状や予測精度から汎化能力と判別能力を評価し最適値を決定する。ガウシアンカーネルの半径rに関しては、最適な決定法は特になく、先行研究を見ると、経験的に決められる事例が多い。本特許でも、様々なrについて検討した結果、データの標準偏差σを用いることにする。理論的な根拠はないが、これまでの多数の数値例を通じてデータの標準偏差σを用いると、判別能力がよいことが分っている。
一方、正規化した発生・非発生降雨に基づき決定したパラメータは、降雨条件の異なる地域においても、概ね最適なパラメータとして使用し得るものであり、本実施例により得られたサポートベクターマシンのパラメータのノウハウを利用でき、改めての試行錯誤を要さず、汎化能力の高いSVM-CLを設定することができる。本実施例では、SVM-CLを設定に用いる発生降雨及び非発生降雨を平均値 と標準偏差 によって次式(18)により正規化を行う。
ここで、x'は正規化後の発生・非発生降雨を意味する。上記の式(18)を式(12)に当てはめ、半径rを1に固定して式(12)を式変形すると次の式(19)のようになる。
これは、正規化を行う前のデータと半径rを標準偏差σとして式(12)に代入した場合と同等である。また前述したように半径rは経験的に標準偏差σとした場合に高い判別能力を有することが知られている。したがって、データを式(18)で正規化し、半径r=1として解析することは、正規化しないデータに対して半径rを標準偏差σとして解析することと同じである。これらの理由から本実施例ではデータを正規化後、半径r=1として解析している。
次にサポートベクターマシンのソフトマージンを用いて非線形CLの設定を試みる。ここでは、解析の手順が分かるように具体的な入力データと解析により得られる出力データを表1乃至表4を用いて説明する。表1は、がけ崩れ災害報告書の一部(以下、「災害データ一覧」と表記)であり、発生日時、降雨データを抽出する観測所名等が整理されている。なお降雨データを抽出する観測所は、災害発生箇所に近傍の観測所を選定することが望ましい。本実施例では、下関気象台を中心とした半径5km以内の災害発生箇所を対象としている。
表2は観測所から抽出した降雨データの一例(以下、「降雨データ一覧」と表記)であり、このような一覧表が観測所毎に整理されている。観測所の降雨データは、そのほとんどが毎正時の1時間雨量である。本実施例では、非線形CLの短期降雨指標に実効雨量(半減期1.5時間)、長期降雨指標に実効雨量(半減期72時間)を採用するため、降雨データ一覧には時間雨量から演算した実効雨量も示されている。また精度の良い非線形CLを設定するには、その地域毎に最適な降雨指標を選定する必要がある。短期降雨指標や長期降雨指標には、実効雨量の他に時間雨量や累積雨量、他の半減期を用いた実効雨量もあるため、降雨データ一覧には時間雨量を基に考えられる降雨指標を全て演算して整理しておくと良い。
次に発生降雨と非発生降雨の抽出に関して説明する。発生降雨は、災害データ一覧の発生日時における降雨指標を降雨データ一覧から抽出し、非発生降雨は発生降雨を含む一連降雨を除いた全ての降雨指標を使用する。表3(a)は、降雨データ一覧から抽出した発生降雨と非発生降雨を整理した一覧表である。表3(a)に示す教師値とは、式(12)のyに相当し、値が1である降雨指標が非発生降雨、値が-1である降雨指標が発生降雨となる。表3(c)は、表3(a)の降雨指標のそれぞれで平均値、標準偏差を算出(表3(b)参照)し、式(18)によって複数の正規化された降雨指標と教師値(以下、「データセット」と表記)、式(12)に示すガウシアンカーネルの半径r、誤判別を許容する割合を決定するCが整理(以下、「解析データ一覧」と表記)されている。
サポートベクターマシンの解析は、解析データ一覧のデータから式(12)を用いて最適化し、αi (i=1,2,...,n)とバイアス項であるbの値を演算することにある。表4は、サポートベクターマシンによる解析結果を整理した一覧表(以下、「解析結果一覧」と表記)である。表4では、各データセットに対するrとCの値、αi (i=1,2,...,n)とbの値、f(x)の値、識別結果、重要度が整理されている。以下にf(x)の値、識別結果、重要度について説明する。
識別関数f(x)は式(11)で与えられるため、解析で得られた各データセットと各データセットに対するαi (i=1,2,...,n)とbの値、式(11)に入力してf(x)の値を演算する。
f(x)の値が正であれば識別は1(非発生)、負であれば−1(発生)となり、教師値と識別結果を比較して両者が一致する場合を正判別、逆に一致しない場合は誤判別となる。
重要度は、重要データ、不要データ、異常値の定義による各データセットの分類結果を示すものである。表4よりID1のデータセットは、非発生と正判別されており、αi>0であるため非発生のサポートベクターとなる。またf(x)の値は0.989であり、−1≦f(x)≦+1の範囲にあるため重要データに分類される。
表4よりID747のデータセットは、発生のサポートベクターであり、f(x)の値も-0.561であるためID1と同様に重要データに分類される。またID487のデータセットは発生のサポートベクターであるが、識別結果が誤判別(f(x)=1.003)であるため異常値(散歩発生)となる。その他のαi=0となるデータセットは全て不要データとなる。
次に解析手順に従って設定した分離超平面の設定例を図15乃至図20に示す。分離超平面とは、各データセットにおけるf(x)の値を等高線で表示したものである。図15乃至図20は、ガウシアンカーネルの半径rを1に固定し、Cを変化させた設定した分離超平面を示している。図15(a)〜(d)に示すようにCを大きくしていくと、誤判別(安全領域内の発生降雨あるいは危険領域内の非発生降雨)の度合いをより小さくするため、完全分離に近い判別結果となり、その形状は非線形性の強いものになる。
土砂災害の発生、非発生降雨の分離超平面としては、図21に示すように自然現象と矛盾しないためには傾きが常に負になる必要がある。図15に示す分離超平面は、非線形性が強く一部傾きが正になる領域があるため、現時点より大きな降雨を経験したにも関わらず、土砂災害発生の危険度が低くなるという点で自然現象に矛盾した形状といえる(図21参照)。したがって、図15に示すCの範囲は、分離超平面の設定に適さないと判断できる。
図16乃至図20は、Cを徐々に小さくして分離超平面を設定した例を示している。Cを小さくすることで誤判別を多めに許容することとなり、分離超平面はシンプルな形状を呈することが分かる。図16乃至図20のようにCをいくつか変更して分離超平面を設定した結果、C=1〜10で分離超平面が自然現象に矛盾しない滑らかな右下がりの形状を示した。その中でもC=1は非発生降雨をより多く捕捉している。また図19、図20のようにCを1より小さくしても形状や非発生降雨の的中率に差は生じないことから、同条件の場合はCがより大きい程学習が正確であるため、本実施例ではC=1を最適値と判断した。なお、半径rは、前述したようにr=1とした。
また図18よりサポートベクターマシンにより分離超平面を設定することで、分離超平面の設定に関して重要度の高いサポートベクター(重要データ)、不要なデータ、異常値を客観的に分類できることが分かる。
図18に示すようにサポートベクターマシンの解析結果から分離超平面は、f(x)=0、f(x)=+1、f(x)=−1の3種類を得ることができる。本実施例では土砂災害の見逃しがないように、安全面を考慮して原点側のf(x)=+1を非線形CLに採用した。以下、分離超平面f(x)=+1をSVM−CLと表記する。図22(a)にSVM−CL、RBFN-CL、提言案を示す。なおRBFN-CLは、図14に示すいくつかの等高線(0.2〜0.8)から発生降雨に対する的中率が最も高くなるように等高線0.8を採用した。図22(a)よりSVM−CLとRBFN-CLは、降雨分布を再現した非線形の形状を呈しており、提言案と比較して非発生降雨を多く捉えていることが分かる。なお図22(a)でSVM-CLとRBFN-CLの安全領域に発生降雨が存在するが、この災害は図22(b)に示すように災害時刻から3時間前にSVM-CL、RBFN-CLを超過したものである。したがってこの発生降雨は、CLを超過した時点で警戒避難を発令すれば十分に対応できるため発生的中と判断した。
SVM−CL、RBFN-CL、提言案の予測精度の検証結果は表5に示すとおりである。表5は解析に使用した1975年〜1999年の発生降雨と非発生降雨に対する予測精度の検証結果である。なお提言案との比較を行うため、発生降雨は提言案の定義に基づく集中発生に対してのみ行った。表5よりSVM-CL、RBFN-CL、提言案ともに集中発生に対しては的中率100%であるが、非発生降雨に対してはSVM-CL、RBFN-CLが提言案より7%程度精度向上がみられた。またRBFN-CLと比較してSVM-CLの予測精度は0.6%程高い結果となった。
次にサポートベクターマシンやRBFNの解析に使用していない2000年〜2003年7月までの発生・非発生降雨(以下、「未学習データ」という)に対する精度検証結果を表6に示す。表6より未学習データに対してもSVM-CLとRBFN-CLの予測精度が高いため、汎化能力においても提言案より優れているといえる。またSVM-CLの予測精度は、発生、非発生降雨ともに100%であり、RBFN-CLよりも0.2%高い結果となった。以上から、サポートベクターマシンによる非線形CLは、従来技術と比較して予測精度が高く、設定手法自体も主観に頼るところが少ないため、土砂災害(がけ崩れ)発生限界雨量線として有効であると考えられる。またサポートベクターマシンはRBFNによる先行技術と比較すると、非線形CLの予測精度に大差はないが、設定手法自体に次に挙げる利点を有している。
(1)RBFNでは、非線形CLを設定する際に、前処理として非発生降雨のクラスタリングを行う必要があるが、サポートベクターマシンは前処理の必要がない。
(2)RBFNで非線形CLを設定するには、格子間隔ΔRx、ΔRy、基底関数の半径Rx、Ry、非発生降雨の抑制パラメータλmax、λmin、発生降雨の抑制パラメータλmax、λmin、計8つのパラメータ試行錯誤して最適値を検討する必要がある。一方、サポートベクターマシンでは基底関数の半径r、誤判別を許容する割合を決めるC、計2つのパラメータの最適値を検討するだけでよい。したがってサポートベクターマシンはRBFNと比較して検討するパラメータの数が少ない。
(3) サポートベクターマシンでは解析の結果、非線形CLを設定できるだけでなく、非線形CLの設定に関して重要度の高いサポートベクター(重要データ)、不要なデータ、異常値を客観的に分類することができる
以上、サポートベクターマシンによる非線形CLの設定手法は、上記の3点でRBFNによる先行技術よりも優れているといえる。なお上記に示した(3)の特徴を利用した実施例を参考例2として以下に説明する。
本実施例ではCL更新の問題を改善するため、現況CLの設定時に抽出した重要度の高いサポートベクター(重要データ)に新たに入手した発生・非発生降雨を追加した必要最低限のデータでCL更新を試みる。過去の全発生・非発生降雨を更新に使用せず、重要データに絞りこむことで、CLの見直し作業の効率化が期待できる。ただし、現況のCLを設定した際に不要データ(サポートベクター以外)や異常値と判定されたものが、CL更新の際に重要となる可能性も考えられる。したがって本実施例では、CL更新に使用する発生・非発生降雨として図23に示すように分離超平面f(x)=±1から距離εに含まれる不要データ及び異常値を重要データに追加して検討することとした。以下、重要データと合わせてこのデータを更新データと表記する。更新データの定義は以下に示すとおりである。
更新データ:-(1+ε)≦f(x)≦(1+ε)の重要データ、不要データ、異常値
以下本実施例では、非線形CLの更新例として、前述までの検討で設定した1975年〜1999年までの非線形CLを1年毎に2002年まで更新した参考例2を図24乃至図29に、1975年〜1983年で非線形CLを設定し、1993年、2003年と10年毎に更新した参考例3を図30乃至図38、表7に示す。検討の際には、εをいくつか変化させて検討を行った。
参考例2の結果を図24乃至図29に示す。図24乃至図29では、ε=0(重要データのみ使用)、ε=0.001、ε=0.005の3ケースで検討した。ε=0とした場合を図24(a),(b)、図25(a),(b)、ε=0.001とした場合を図26(a),(b)、図27(a),(b)、ε=0.005とした場合を図28(a),(b)、図29(a),(b)に示す。
図24乃至図29より、3ケースともに1年毎に更新した非線形CLでは、形状に大きな差異はないことが分かる。これは、更新期間がわずか3年であるため、地盤強度などの条件がほとんど変化せず、過去の災害実績に比べて大規模な発生降雨、あるいは非線形CLを超過する非発生降雨が生じない限り、CLは大きく変化しないと推察され、妥当な結果と判断できる。実際に対象地域では2000年〜2002年にがけ崩れ災害が3件のみであり、過去の災害実績と比べても特に大きな降雨ではなかった。
続いて参考例3として、10年毎に非線形CLの更新を行った例を図30乃至図38に示す。参考例2と比べて参考例3の更新期間では、1993年や1999年、2003年に大規模ながけ崩れ災害が発生しているため、非線形CLは大幅に改善されるものと推察される。参考例3では、参考例2と同様にε=0(重要データのみ使用)、ε=0.001、ε=0.005の3ケースで検討した。ε=0とした場合を図30(a),(b)、図31、ε=0.001とした場合を図32(a),(b)、図33、ε=0.005とした場合を図34(a),(b)、図35に示す。
図30乃至図35より、3ケースともに1993年の非線形CLは、1983年の非線形CLと比較すると、実効雨量(半減期1.5hr)60mm〜70mm付近に非発生の重要データが存在するため、安全領域が縦軸方向に大きく拡大している。また2003年にはがけ崩れが多発したこと、県内に密に配置された砂防雨量計の降雨データを使用できたことによって、信頼性の高い発生降雨をSVM-CLに反映することができた。その結果2003年の更新時では、今まで非発生降雨が少なく安全領域として信頼性の低かった範囲に発生降雨が増えたため、更新後の非線形CLでは縦軸方向の安全領域が以前より小さくなったことが分かる。このことからCLは、精度の良い発生・非発生の降雨が入手できた場合は逐次更新を行う必要があり、そのためにはCLの更新はできるだけ容易かつ効率的に実施することが重要と改めて認識できる。
なお、本実施例で使用したデータでは、εを変化させても更新結果に大きな差異は生じなかったが、他の地域で本発明を適用する場合には最適なεを実験的に検討する必要がある。
次にCLの更新に関して、RBFNよる先行技術とサポートベクターマシンを比較するため、RBFNでも同様のデータを用いて、図36乃至図38に示すようにRBFN-CLの更新を行った。図36乃至図38では、(a)にサポートベクターマシンによるCLを示し、(b)にRBFNによるCLを示している。表7に1993年更新時と2003年更新時において使用したデータ数及び解析時間を示す。表7よりSVM-CLでは、更新に使用したデータ数がRBFN-CLの約1/4と少ないことが分かる。これは非線形CLの更新に全データを用いず、重要度の高いデータのみで更新を行っているからである。またRBFN-CLでは1993年時と比較して2003年時ではデータ数が増加しているが、SVM-CLでは大差がないことが分かる。これはRBFNによる先行技術を用いて非線形CLの更新を行う場合、いつか取扱うデータ数が膨大となり、非線形CLの設定に時間と労力を要することを示唆している。またこのことは表7の解析時間からも容易に推定できる。以上から非線形CLの設定手法としては、非線形CLの更新を必要最小限のデータで実施できる点で、従来技術に比べ本発明の実用性は高いと考えられる。
過去に災害実績が少ない地域では、災害時刻の信頼性や災害発生箇所と雨量観測所との距離等の問題でCL設定に利用可能な発生降雨を入手できないことがある。そのような地域では、精度の良い発生降雨が入手できるまで、仮のCLとして非発生降雨のみでCLを設定し、警戒避難に対応する以外にない。
また近年、各都道府県は土砂災害の警戒避難や水防活動に役立てる目的で、雨量局を密に整備しはじめている。山口県でも県内に砂防雨量局が110箇所設置されており、10分間単位の精度の良い降雨データを入手することができる。すなわち、今後は発生降雨を含めて精度の良い非発生降雨をより細かい単位で入手することができると考えられる。したがって、細かい地域単位で警戒避難を実施する場合も発生降雨が入手できるまでの間、精度の良い非発生降雨で非線形CLを設定することは重要である。
本実施例では、非発生降雨のみで非線形CLを設定する参考例4として表8、表9及び図39を用いて説明する。上記の砂防雨量局の中で近年災害実績のない新町雨量局の非発生降雨(2000年〜2003年)を用いて、νSVMによる非線形CLの設定を次のように行った。
νSVMの解析に使用する発生降雨と非発生降雨は参考例1と同様に、発生降雨は災害データ一覧の発生日時における降雨指標を降雨データ一覧から抽出し、非発生降雨は発生降雨を含む一連降雨を除いた全ての降雨指標を使用する。表8(a)は、降雨データ一覧から抽出した発生降雨と非発生降雨を整理した一覧表である。表8(c)は、表8(a)の降雨指標のそれぞれで平均値、標準偏差を算出(表8(b)参照)し、式(18)によって複数の正規化された降雨指標と教師値(以下、「データセット」と表記)、式(16)に示すガウシアンカーネルの半径r、はずれ点の範囲を決定するパラメータνが整理されている。
νSVMの解析は、表8(c)のデータから式(16)を用いて最適化し、αi (i=1,2,...,n)とバイアス項であるρの値を演算することにある。
表9は、参考例4としてνSVMによる解析結果を整理した一覧表である。表9では、各データセットに対するrと の値、αi(i=1,2,...,n)とρの値、f(x)の値、識別結果、重要度が整理されている。f(x)の値、識別結果、重要度の意味は参考例1と同様である。
図39(a)〜(d)はそれぞれν=0.025、ν=0.050、ν=0.075、ν=0.100の4ケースで非線形CLを設定した結果である。図39(a)のν=0.025では、非線形CLの形状が滑らかな右下がりとならず、自然現象と矛盾した形状となった。νを大きくした他の3ケースでは、νの増加とともに形状がシンプルになり、非線形CLの安全領域が小さくなる傾向を示した。この4ケースの中では、シンプルな形状であり、かつ非発生降雨をより多く捉えているν=0.050の非線形CLが妥当と判断できる。非発生降雨のみで設定した非線形CLは、今後精度の良い発生降雨を入手した時点で、2クラスのサポートベクターマシンにより非線形CLを再設定することで、より信頼性の高い非線形CLで警戒避難に対応できるものと推察される。
以上、本発明の実施例を説明したが、特許請求の範囲で規定された本発明の本質と範囲から逸脱することなく、その形態や細部に種々の変更がなされても良いことは明らかである。
自治体や防災センターなど公的な機関における防災計画の立案業務やハザードマップ作成など幅広い用途がある。また、教育機関などにおいて災害の未然防止や避難訓練用の教材としても活用が見込まれ、さらに、建設・土木事業を営む私企業においても、防災事業のニーズ掘り起こしや事業提案のためのツール、あるいは公的機関との連携を図るための共有ツールとして活用が可能であり、企業の防災技術に関する研究開発や設計事業などの用途にも適用可能である。
本実施の形態に係る防災事業計画支援システムの構成図である。 防災事業計画支援方法のフローチャートである。 図2におけるステップS5の詳細を説明するためのフローチャートである。 図2におけるステップS6の詳細を説明するためのフローチャートである。 図2におけるステップS7の詳細を説明するためのフローチャートである。 ハードマージンのサポートベクターマシンを説明するための概念図である。 ソフトマージンのサポートベクターマシンを説明するための概念図である。 ソフトソフトマージンのサポートベクターマシンを説明するための概念図である。 サポートベクターマシンを説明するための概念図である。 1クラスのサポートベクターマシンを説明するための概念図である。 (a)、(b)は共に本実施の形態に係る防災事業計画支援システムあるいはその方法を用いて線形CLを設定した場合の概念図である。 CLの設定のための解析に用いる発生・非発生降雨の概念図である。 (a)、(b)は共に本実施の形態と比較して示すRBFNを用いた解析に用いる非発生降雨抽出の概念図である。 本実施の形態と比較して示すRBFNを用いた解析によって設定された非線形CLの概念図である。 (a)〜(d)はいずれも本実施の形態に係る防災事業計画支援システムあるいはその方法を用いて解析された非線形CLの概念図である。 本実施の形態に係る防災事業計画支援システムあるいはその方法を用いて解析された非線形CLの概念図である。 本実施の形態に係る防災事業計画支援システムあるいはその方法を用いて解析された非線形CLの概念図である。 本実施の形態に係る防災事業計画支援システムあるいはその方法を用いて解析された非線形CLの概念図である。 本実施の形態に係る防災事業計画支援システムあるいはその方法を用いて解析された非線形CLの概念図である。 本実施の形態に係る防災事業計画支援システムあるいはその方法を用いて解析された非線形CLの概念図である。 自然現象と矛盾した形状を備えるCLの概念図である。 (a)、(b)は共に本実施の形態に用いられたサポートベクターマシンと比較の対象とされたRBFNを用いて設定されたCLを比較する図である。 εを用いたCLの更新方法の概念図である。 (a)は1975年から1999年までのε=0のデータを用いて解析された非線形CLの概念図であり、(b)はε=0の更新データを用いて2000年に更新したCLを示した概念図である。 (a)、(b)はそれぞれε=0の更新データを用いて、2001年と2002年に更新したCLを示した概念図である。 (a)は1975年から1999年までのε=0.001のデータを用いて解析された非線形CLの概念図であり、(b)はε=0.001の更新データを用いて2000年に更新したCLを示した概念図である。 (a)、(b)はそれぞれε=0.001の更新データを用いて、2001年と2002年に更新したCLを示した概念図である。 (a)は1975年から1999年までのε=0.005のデータを用いて解析された非線形CLの概念図であり、(b)はε=0.005の更新データを用いて2000年に更新したCLを示した概念図である。 (a)、(b)はそれぞれε=0.005の更新データを用いて、2001年と2002年に更新したCLを示した概念図である。 (a)は1975年から1983年までのε=0のデータを用いて解析された非線形CLの概念図であり、(b)はε=0の更新データを用いて1993年に更新したCLを示した概念図である。 1993年に更新したCLを、ε=0の更新データを用いて2003年に更新したCLを示した概念図である。 (a)は1975年から1983年までのε=0.001のデータを用いて解析された非線形CLの概念図であり、(b)はε=0.001の更新データを用いて1993年に更新したCLを示した概念図である。 1993年に更新したCLを、ε=0.001の更新データを用いて2003年に更新したCLを示した概念図である。 (a)は1975年から1983年までのε=0.005のデータを用いて解析された非線形CLの概念図であり、(b)はε=0.005の更新データを用いて1993年に更新したCLを示した概念図である。 1993年に更新したCLを、ε=0.005の更新データを用いて2003年に更新したCLを示した概念図である。 (a)、(b)はそれぞれ1975年から1983年までに構築したSVM-CL とRBFN-CLを示した概念図である。 (a)、(b)はそれぞれ1993年に更新したSVM-CL とRBFN-CLを示した概念図である。 (a)、(b)はそれぞれ2003年に更新したSVM-CL とRBFN-CLを示した概念図である。 (a)〜(d)はぞれぞれν=0.025、ν=0.050、ν=0.075、ν=0.100の4ケースで非線形CLを設定した結果である。
符号の説明
1…情報入力装置 2…情報演算装置 3…情報出力装置 4…情報格納装置 5…要求水準設定部 6…モデル選択部 7…解析パラメータ設定部 8…判別境界面解析部 9…CL精度検証部 11…実データ 12…降雨データ 13…災害実績データ 14…要因評価値データ 15…要求水準データ 16…解析パラメータ 17…モデルデータ 18…CLデータ 19…サポートベクターデータ

Claims (10)

  1. 情報入力装置と、情報格納装置と、情報演算装置と、情報出力装置を有し、各地域における降雨データと土砂災害発生・非発生の実績情報を用いて土砂災害の発生限界線、避難基準線あるいは警戒基準線(以下、これらを総称してCLと略す場合がある。)を演算する防災事業計画支援システムであって、
    前記情報入力装置は、前記各地域における降雨データと土砂災害発生・非発生の実績情報(以下、降雨データと土砂災害発生・非発生の実績情報を解析データと呼ぶことがある。)と、前記CLを演算するための解析パラメータ及び解析モデルとを、前記情報格納装置に入力可能な手段であって、
    前記情報演算装置は、前記解析モデルを前記情報格納装置から読み出して、この解析モデルに前記情報格納装置から読み出された解析パラメータ又は前記情報入力装置から入力された解析パラメータを入力する解析パラメータ設定部と、
    前記情報格納装置から解析データを読み出して又は前記情報入力装置から入力された解析データを用いて前記CLを演算する判別境界面解析部を備え、
    前記情報出力装置は、前記解析データと解析パラメータと解析モデルとCLのうち少なくとも1の情報を出力可能な手段であることを特徴とする防災事業計画支援システム。
  2. 前記情報入力装置は、前記演算されたCLに対する要求水準を入力可能な手段であって、
    前記情報演算装置は、前記降雨データと土砂災害発生・非発生の実績情報を前記情報格納装置から読み出して又は前記情報入力装置から入力された降雨データと土砂災害発生・非発生の実績情報を用いて、前記判別境界面解析部で演算されたCLに対して土砂災害が発生した場合の降雨データに対する発生的中率及び/又は土砂災害が発生しなかった場合の降雨データに対する非発生的中率を演算し、前記要求水準と比較して前記CLの精度を検証するCL精度検証部を備えることを特徴とする請求項1記載の防災事業計画支援システム。
  3. 前記解析データには、降雨データ以外に、前記各地域内に含まれる地点の災害を引き起こす要因のうち少なくとも1要因に関する属性値又は評価値を含み、この属性値又は評価値を危険度とし、その大小に応じて前記地点を分類して、この分類毎に前記CLを演算することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の防災事業計画支援システム。
  4. 前記解析データには、降雨データ以外に、前記各地域内に含まれる土砂災害を引き起こす要因のうち少なくとも1要因に関する属性値又は評価値を含み、前記判別境界面解析部は、前記属性値又は評価値を含む解析データを前記情報格納装置から読み出し、あるいは前記情報入力装置から入力された解析データを用いて、前記要因のカテゴリー区間の各々で土砂災害発生・非発生の実績情報から土砂災害発生率を演算し、その土砂災害発生率を前記地点の危険度とし、大小に応じて前記地点を分類して、この分類毎に前記CLを演算することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の防災事業計画支援システム。
  5. 前記解析モデルはサポートベクターマシン(以下、SVMと略すことがある。)であって、
    前記判別境界面解析部は、前記CLの演算に用いた前記解析データの内、サポートベクターマシンによって分類されるサポートベクターを抽出し、これを前記情報格納装置に格納しておき、その後に前記解析データが追加データを蓄積した場合には、前記サポートベクターと前記追加データを用いてCLを演算することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の防災事業計画支援システム。
  6. 前記サポートベクターマシンによって前記サポートベクターに分類されなかった解析データの内、前記サポートベクターマシンの分離超平面f(x)=±1から予め定めた距離εに含まれる前記解析データを前記サポートベクターと前記追加データに含めてCLを演算することを特徴とする請求項5に記載の防災事業計画支援システム。
  7. 前記解析モデルのサポートベクターマシンは、下式で表現されるソフトマージンを有するサポートベクターマシンであることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の防災事業計画支援システム
    但し、xは発生降雨、非発生降雨であり、yは教師値(発生降雨の場合:-1、非発生降雨の場合:1)を意味する。wは分離超平面の法線ベクトルと呼ばれる変数で、bはバイアス項と呼ばれる変数で、ξiはスラック変数である。Cはマージン(wTw)とスラック変数(ξi)とのトレードオフを表す重みパラメータである。
  8. 前記解析モデルのサポートベクターマシンは、下式で表現されるνサポートベクターマシンであることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の防災事業計画支援システム
    但し、xは発生降雨、非発生降雨で、νは誤分類されるデータの割合を表すパラメータである。wは分離超平面の法線ベクトルと呼ばれる変数で、ρはバイアス項と呼ばれる変数で、ξiはスラック変数である。
  9. 降雨データと土砂災害発生・非発生の実績情報と土砂災害を引き起こす要因毎の評価値を用いてCLを演算する防災事業計画支援方法であって、
    解析パラメータ設定部によって、予め情報格納装置に格納された解析モデルを読み出して、この解析モデルに前記情報格納装置から読み出された解析パラメータ又は情報入力装置から入力された解析パラメータを入力する工程と、
    判別境界面解析部によって、前記情報格納装置から解析データを読み出して又は前記情報入力装置から入力された解析データを用いて前記CLを演算する工程と、
    情報出力装置によって、前記解析データと解析パラメータと解析モデルとCLのうち少なくとも1の情報を出力する工程を有することを特徴とする防災事業計画支援方法。
  10. 降雨データと土砂災害発生・非発生の実績情報と土砂災害を引き起こす要因毎の評価値を用いてCLを演算しこのCLを要求水準で検証する防災事業計画支援方法であって、
    要求水準設定部によって、予め情報格納装置に格納された要求水準を読み出し又は入力部から入力された要求水準を用いて前記CLに対する要求水準を設定する工程と、
    解析パラメータ設定部によって、予め前記情報格納装置に格納された解析モデルを読み出して、この解析モデルに前記情報格納装置から読み出された解析パラメータ又は前記情報入力装置から入力された解析パラメータを入力する工程と、
    判別境界面解析部によって、前記情報格納装置から解析データを読み出して又は前記情報入力装置から入力された解析データを用いて前記CLを演算する工程と、
    CL精度検証部によって、前記降雨データと土砂災害発生・非発生の実績情報を前記情報格納装置から読み出して又は前記情報入力装置から入力された降雨データと土砂災害発生・非発生の実績情報を用いて、前記判別境界面解析部で演算されたCLに対して土砂災害が発生した場合の降雨データに対する発生的中率及び/又は土砂災害が発生しなかった場合の降雨データに対する非発生的中率を演算し、前記要求水準と比較して前記CLの精度を検証する工程と、
    情報出力装置によって、前記解析データと解析パラメータと解析モデルとCLのうち少なくとも1の情報を出力する工程を有することを特徴とする防災事業計画支援方法。
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