JP2005349438A - 傾斜材料の製造装置及び傾斜材料の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】所望の傾斜組成分布を持つ傾斜材料を容易に製造することができる傾斜材料の製造装置及び傾斜材料の製造方法を提供する。
【解決手段】複数の物質を含み、複数の物質の組成が徐々に変化する傾斜材料の製造装置であって、各物質の粉末を収納する収納部と、収納部を振動させる振動手段と、を有し、収納部には、複数の落下孔の少なくとも2組が、他の組と領域が仕切られて設けられ、仕切られた領域それぞれに各粉末が収納され、収納部を振動させることにより、粉末を落下孔より落下させて成形型内に充填する傾斜材料の製造装置である。
【選択図】図1

Description

本発明は、傾斜材料の製造装置及び傾斜材料の製造方法に関する。
傾斜材料(Functionally Gradient Materials)は、1つの材料の中で組成等が連続的にまたは段階的に変化(傾斜)していることにより、物理的、化学的機能が均一ではなく連続的にまたは段階的に変化している材料である。傾斜材料は、航空、宇宙、エネルギ、高分子、機械、生体、オプトデバイス、電気・電子デバイス等、幅広い分野での応用が検討されている。
傾斜材料の製造方法としては、従来、物理気相成長法(PVD)、化学蒸着法(CVD)等の気相法や、プラズマ溶射積層法等、各種方法が知られている。その中でも、金属材料、セラミック材料、高分子材料等の粉末を、組成を連続的・段階的に変化させて成型、焼結して傾斜材料を製造する方法が知られている。
粉末の組成を連続的・段階的に変化させて成型、焼結して傾斜材料を製造する方法としては、例えば、特開平7−310103号公報(特許文献1)には、混合比率を徐々に変えた多種類の均一混合粉を製造し、それらをそれぞれ加圧、焼結して複数の成形体を作成した後、これらを組み合わせて加熱、加圧して傾斜材料を製造する方法が示されている。
また、特開平6−65605号公報(特許文献2)には、比重の異なる粉末を成形型に充填し、成形型を振動させることにより、混合原料粉を比重の差を利用して傾斜組成分布を有するように配列後、加圧、焼結して傾斜材料を製造する方法が示されている。
特開平7−310103号公報 特開平6−65605号公報
しかしながら、PVD、CVD等の気相法では、成膜速度が1mm/hrと極めて遅く、機械部品等厚みのある材料は現実的には製造することが困難である。また、プラズマ溶射積層法では、異種材料を正確に同一に溶射することが困難であり、所望の傾斜組成分布に対して変動が大きくなる。さらに、プラズマ溶射積層法では、気相法と同様に成膜速度が遅く、緻密な材料、ある程度厚みのある材料の製造は困難である。
また、特許文献1の方法では、傾斜組成が段階的であり、組成の不連続部において材料のなじみが悪く、焼結後に剥離あるいは亀裂が入る可能性がある。また、段階的傾斜組成の幅を小さくすることには限界がある。
さらに、特許文献2の方法では、成形型を振動させて混合原料粉を傾斜組成分布を有するように配列するのには非常に時間がかかり、量産性に問題がある。また、この方法では、成形型の深さ方向に傾斜組成分布を有するように原料粉を配列することはできるが、成形型の底部方向に沿って傾斜組成分布を持たせることは困難である。
本発明は、所望の傾斜組成分布を持つ傾斜材料を容易に製造することができる傾斜材料の製造装置及び傾斜材料の製造方法である。
本発明は、複数の物質を含み、前記複数の物質の組成が徐々に変化する傾斜材料の製造装置であって、前記各物質の粉末を収納する収納部と、前記収納部を振動させる振動手段と、を有し、前記収納部には、複数の落下孔の少なくとも2組が、他の組と領域が仕切られて設けられ、前記仕切られた領域それぞれに前記各粉末が収納され、前記収納部を振動させることにより、前記粉末を前記落下孔より落下させて成形型内に充填する。
また、前記傾斜材料の製造装置において、前記複数の落下孔のうち少なくとも2つは、大きさが異なることが好ましい。
また、前記傾斜材料の製造装置において、前記複数の落下孔は、漸次大きさが異なることが好ましい。
また、前記傾斜材料の製造装置において、前記振動は、前記収納部が前記成形型の開口に対して水平方向に振動するように行われることが好ましい。
また、前記傾斜材料の製造装置において、前記落下孔には、メッシュが設けられていることが好ましい。
また、前記傾斜材料の製造装置において、前記収納部の振動速度をV(回/秒)、前記収納部の振動幅をa(mm)、前記成形型の開口の、前記収納部の振動方向の最大長さをL1(mm)、前記収納部と前記開口の底部との距離をH(mm)、前記粉末の最大粒度をD(μm)、前記メッシュの目の大きさをM(μm)、としたときに、V≧2、a/L1≧1、H/L1<8、D<M<4D、の関係にあることが好ましい。
また、本発明は、複数の物質を含み、前記複数の物質の組成が徐々に変化する傾斜材料の製造方法であって、前記各物質の粉末を落下させて成形体内に充填する工程と、前記充填された粉末を加圧成形して成形体を製造する工程と、前記成形体を焼結する工程と、を含み、前記各粉末の落下量を制御して成形体内に充填する。
また、前記傾斜材料の製造方法において、前記充填する工程において、複数の落下孔の少なくとも2組が、他の組と領域が仕切られて設けられた収納部の、前記仕切られた領域それぞれに収納された前記各粉末を、前記収納部を振動させることにより前記落下孔より落下させて成形型内に充填することが好ましい。
また、前記傾斜材料の製造方法において、前記複数の落下孔のうち少なくとも2つは、大きさが異なることが好ましい。
また、前記傾斜材料の製造方法において、前記複数の落下孔は、漸次大きさが異なることが好ましい。
また、前記傾斜材料の製造方法において、前記振動は、前記収納部が前記成形型の開口に対して水平方向に振動するように行われることが好ましい。
また、前記傾斜材料の製造方法において、前記落下孔には、メッシュが設けられていることが好ましい。
また、前記傾斜材料の製造方法において、前記収納部の振動速度をV(回/秒)、前記収納部の振動幅をa(mm)、前記成形型の開口の、前記収納部の振動方向の最大長さをL1(mm)、前記収納部と前記成形型の底部との距離をH(mm)、前記粉末の最大粒度をD(μm)、前記メッシュの目の大きさをM(μm)、としたときに、V≧2、a/L1≧1、H/L1<8、D<M<4D、の関係にあることが好ましい。
本発明において、複数の原料粉末の落下量を制御して、傾斜組成分布を有するように原料粉末を成形型に落下させることにより、所望の傾斜組成分布を持つ傾斜材料を容易に製造することができる傾斜材料の製造装置及び傾斜材料の製造方法を提供する。
以下、本発明の本実施形態について説明する。
従来、粉末の組成を連続的・段階的に変化させて成型、焼結して傾斜材料を製造する方法としては、前述したように比重の異なる粉末を成形型内に充填し、成形型を振動させることにより、混合原料粉を比重の差を利用して傾斜組成分布に配列後、加圧、焼結する方法が知られているが、成形型を振動させて混合原料粉を傾斜組成分布に配列するのには非常に時間がかかり、量産性に問題がある。また、従来の方法では、成形型の深さ方向に傾斜組成分布を有するように粉末を配列することはできるが、成形型の底部方向に沿って傾斜組成分布を持たせることは困難であった。しかし、材料によっては、成形型の底部方向に沿って傾斜組成分布を有するように粉末を配列することが望まれる。
そこで、成形型内への充填後に粉末の比重差を利用して傾斜組成分布に配列するのではなく、成形型内へ充填する際に粉末の落下量を制御することによって傾斜組成分布を有するように配列することを検討した。
成形型内へ充填する際の粉末の落下量の制御について種々検討した結果、本実施形態に係る傾斜材料の製造装置及び傾斜材料の製造方法を見出した。すなわち、本実施形態においては、複数の物質を含み、前記複数の物質の組成が徐々に変化する傾斜材料の製造装置として、各物質の粉末を収納する収納部と、収納部を振動させる振動手段と、を有し、収納部には、複数の落下孔の少なくとも2組が、他の組と領域が仕切られて設けられ、仕切られた領域それぞれに各粉末が収納され、収納部を振動させることにより、粉末を落下孔より落下させて成形型内に充填する。
本実施形態に係る傾斜材料の製造装置の一例の概略図を図1に示す。傾斜材料製造装置1は、粉箱10、加振装置12、等を含んで構成される。図1(a)は粉箱10の上面図、図1(b)は粉箱10の断面図、図1(c)は成形型20の上面図、図1(d)は成形型20の断面図を示す。また、図2(a)は図1(a)の拡大図、図2(b)は図1(c)の拡大図である。
粉箱10には、傾斜材料を形成するための原料となる物質の粉末を収納する。粉箱10の底部14には、複数の落下孔16が少なくとも2組設けられている。そして、複数の落下孔の1つの組が、他の組と混合しないように粉末仕切り板18等の仕切り手段によって領域が仕切られて設けられている。各原料粉末をそれぞれの領域に供給し、粉箱10を成形型20の開口22上に設置して、原料粉末を各落下孔16より開口22に落下させることにより、傾斜組成分布を有するように充填する。
傾斜組成分布を付けるためには、1組の複数の落下孔のうち、少なくとも2つは、大きさが異なることが好ましい。また、1組の複数の落下孔は、漸次大きさが異なることが好ましい。例えば、図1(a)及び図2(a)においては、1組の、漸次大きさの異なる5つの落下孔16x〜16xと、もう1組の、漸次大きさの異なる5つの落下孔16y〜16yと、が粉箱10の底部14に設けられている。
複数の落下孔16は、少なくとも2組設けられていればよく、何種類の物質により傾斜材料の傾斜組成分布を構成するかに応じて、組数を決めればよい。通常は、物質Aと物質Bを用いて、物質Aから物質Bへと徐々に組成が変化するように傾斜材料を形成するために、2組の、複数の落下孔16を設けるが、3種類以上の物質を用いて、傾斜組成分布を構成する場合には、3組以上の、複数の落下孔16を設ければよい。
このように、大きさの異なる複数の落下孔16を設けることにより、落下孔16の孔径が大きいほど、落下する粉末が多くなり、孔径が小さいほど落下する粉末は少なくなるため、落下する粉末の量を成形型20の開口22の場所によって変えることができる。さらに、複数の落下孔16の大きさが漸次変わることによって、落下孔16の大きさが漸次変化する方向に沿って、落下する粉末の量を漸次変化させることができる。したがって、粉末を充填する成形型20において、傾斜組成分布を付けたい方向に沿って、落下孔16の大きさを漸次変化させることが好ましい。例えば、図2(a)に示すように、2組の、漸次大きさの異なる複数の落下孔16を有する粉箱10において、1組の落下孔16xを有する領域に物質Aの粉末を、もう1組の落下孔16yを有する領域に物質Bの粉末を供給し、この粉箱10から成形型20の開口22中に粉末を落下させることにより、容易に傾斜組成分布を形成することができる。図2の例では、成形型20の左側ほど物質Aの濃度が高く、物質Bの濃度が低くなり、成形型20の右側ほど物質Bの濃度が高く、物質Aの濃度が低くなる。
図2では、成形型20の左側から右側に行くに従い徐々に物質Aの濃度が低下しているが、例えば、図3のように成形型20の中央部で物質Bの濃度が高く、右側及び左側では物質Aの濃度が高くなるように落下孔16の大きさと配置位置を変えてもよい。また、図2、図3では成形型20の開口22の長径(L2)方向に傾斜組成分布をつけているが、短径(L1)方向に傾斜組成分布をつけてもよい。このように、粉箱10の底部14に配置されている落下孔16の大きさと配置位置を変えることによって原料粉末の落下量を制御して、傾斜組成分布を所望の方向に容易に制御することができる。
1組の落下孔16x、16yにおける落下孔16の数は、2つ以上であればよいが、組成がなるべく連続性を有するようにするためには、落下孔16の数が多いほど好ましい。落下孔16の数は、目的の傾斜組成分布、製品の寸法、粉末の種類等に応じて決めればよい。1組の落下孔16における落下孔16の数は通常は、3個以上、好ましくは5個以上、より好ましくは7個以上である。
落下孔16の形状としては、粉末を安定して落下することができる形状であれば特に制限はないが、例えば、円形;楕円形;四角形等の多角形;等が挙げられる。落下孔16の形状は、通常は、円形、楕円形が用いられる。
1組の落下孔16におけるそれぞれの落下孔16の大きさは、粉箱10の大きさ、成形型20の開口22の大きさ、原料とする物質の粉末の粒度、目的の傾斜組成分布等に応じて決めればよく、特に制限はない。例えば、落下孔16が円形であり、粉箱10が図1のような長方体の場合には、1組の落下孔16のうち、最も大きい落下孔16xの直径Nxを、粉箱10の底部14の短径(P1)に対して1/2〜2/3程度とし、以下、直径Nxの1/8〜1/2ずつ直径を減らしていけばよい。
例えば、図2において、1組の落下孔16xのうち、最も大きい落下孔16xの直径Nxを12mmとし、以下、Nx=10mm、Nx=8mm、Nx=6mm、Nx=4mmと、2mmおきに5つの落下孔16x〜16xを設け、もう一組の落下孔16yのうち、最も大きい落下孔16yの直径Ny1をを12mmとし、以下、Ny=10mm、Ny=8mm、Ny=6mm、Ny=4mmと、2mmおきに5つの落下孔16y〜16yを設けることができる。なお、落下孔16の大きさは、図1及び図2にようにそれぞれの組の間で互いに同じ大きさであってもよいが、図4のように、それぞれの組の間で互いに異なる大きさであってもよく、原料となる物質の粉末の性状や、目的の傾斜組成分布等に応じて決めればよい。
なお、落下孔16の大きさは、落下孔16の形状が円形である場合には上述の通り円の直径で定義されるが、楕円形の場合には長径で、多角形の場合には対角線の長さで定義される。
粉末仕切り板18等の仕切り手段は、複数の落下孔16の1つの組の領域と、他の落下孔16の組の領域とを仕切るために使用され、各原料物質の粉末が混合することを防止する。粉末仕切り板18は、複数の落下孔16のそれぞれの組の領域が、ほぼ同じ面積になるように設置されることが好ましい。
粉箱10を構成する材料は、ある程度の強度を有し、加工が容易な材料であれば特に制限はないが、例えば、ステンレス鋼、タングステン、銅等の金属;Al、ZrO等のセラミックス等が挙げられる。
また、粉箱10の形状としては特に制限はなく、例えば、長方体、直方体等が挙げられるが、通常は長方体が用いられる。
なお、粉箱10の底部14の下には、収納した粉末がすぐに落下しないように、全ての落下孔16を塞ぐための充填仕切り板24を設置することが好ましい。各原料の粉末を粉箱10に収納し終わった後、充填仕切り板24を外すことにより、いっせいに粉末を落下させることが好ましい。
また、落下孔16の大きさによっては、単に落下孔16を設けただけでは粉末が短時間で落下してしまう場合があり、傾斜組成分布を制御しにくくなるため、落下孔16には、メッシュ26が設けられていることが好ましい。メッシュ26を設けることにより、粉末の落下速度を抑えることができるため、落下速度が安定し、粉末の傾斜組成分布を制御しやすくなる。
メッシュ26の目の大きさは、原料となる物質の粉末の粒度、粒度分布等に応じて決めればよいが、粉末の最大粒度をD(μm)、メッシュ26の目の大きさをM(μm)、としたときに、D<M<4D、の関係にあることが好ましく、D<M<2Dの関係にあることがより好ましい。MがDより小さいと、落下することができない粉末が生じ、Mが4Dより大きいと、粉末が短時間で落下してしまうので傾斜組成分布を制御しにくくなる。このように、粉末の最大粒度Dに応じて、メッシュ26の目の大きさMを設定することにより、粉末の傾斜組成分布をより制御しやすくなる。
また、メッシュ26の目の大きさMは、原料となる物質の粉末の体積平均粒径をDvとしたときに、0.5Dv<M<6Dvの関係にあることが好ましい。0.5Dvより小さいと粉末の充填に時間がかかり過ぎる可能性があり、6Dvより大きいと粉末が短時間で落下してしまうので傾斜組成分布を制御しにくくなる。
落下孔16に設けられたメッシュ26の目の大きさMについては、通常は各落下孔で同じ大きさとするが、各落下孔で異なった大きさとしてもよい。例えば、図2(a)において、一組の落下孔16xのうち一番大きい落下孔16xに設けられたメッシュ26の目の大きさMxを一番小さくし、以下徐々にMx,Mx,Mxと大きくしていき、一番小さい落下孔16xに設けられたメッシュ26の目の大きさMxを一番大きくしてもよい。
加振装置12は、モータ、駆動伝達部等を含んで構成される。加振装置12は、粉箱10を振動させて、原料粉末を成形型20の開口22に落下させて充填するために使用される。上記に説明したような落下孔16を設けた粉箱10を、成形型20の開口22上に設置して、原料粉末を落下させて充填するだけでは、成形型20の開口22内において、組成むらが発生しやすくなる。したがって、加振装置12により、粉箱10を振動させ、組成むらの発生を抑制することが好ましい。
加振装置12による加振は、組成むらの発生を抑制する方法で行われればよく特に制限はない。粉箱10を、成形型20の開口22に対して水平方向に振動させてもよいし、垂直方向に対して振動させてもよいし、斜め方向に振動させてもよいが、成形型20の開口22に対して水平方向に振動させることが好ましい。水平方向への加振は、開口22内の傾斜組成分布を形成する方向と直行する方向に水平に振動させるように行われることがより好ましい。例えば、図5に示すように、粉箱10の長径(P2)方向に傾斜組成分布を形成する場合は、粉箱10の短径(P1)方向に水平に振動させることが好ましい。
このとき、粉箱10の振動速度をV(回/秒)、粉箱10の振動幅をa(mm)、成形型20の開口22の、粉箱10の振動方向の最大長さをL1(mm)、粉箱10と成形型20の底部(下パンチ)28との距離をH(mm)、としたときに、V≧2、a/L1≧1、H/L1<8、の関係にあることが好ましい。なお、粉箱10の振動幅aとは、粉箱10の振動方向に直交する軸が移動する1周期の1/4の距離をいう。
粉箱10の振動速度はV≧2であることが好ましく、V≧4であることがより好ましい。V<2であると、振動が遅く、組成むらの発生を十分に抑制することができない可能性がある。また、V≦30であることが好ましく、V≦20であることがより好ましい。Vが30を超えると、振動が速すぎて傾斜組成分布を制御しにくくなる。
また、a/L1については、a/L1≧1であることが好ましく、a/L1≧1.1であることがより好ましい。a/L1<1であると、成形型20の開口22の端部の粉末の量が不十分となる可能性がある。また、a/L1≦2であることが好ましく、a/L1≦1.5であることがより好ましい。a/L1が2を超えると、傾斜組成分布を制御しにくくなる。また、粉箱10に供給した粉末のうち、開口22に充填される粉末が少なくなり、無駄が発生する可能性がある。
また、H/L1については、H/L1<8であることが好ましく、H/L1<5であることがより好ましい。H/L1≧8であると、傾斜組成分布を制御しにくくなる。また、粉箱10に供給した粉末のうち、開口22に充填される粉末が少なくなり、無駄が発生する。また、H/L1≧0.5であることが好ましく、H/L1≧1であることがより好ましい。H/L1が0.5より小さいと、傾斜組成分布を制御しにくくなる。
本実施形態において原料として使用される物質としては、特に制限はないが、鉄、アルミニウム、チタン、クロム、銅等の金属;モリブデン、タングステン等の高融点金属;またはそれらを含む、ステンレス鋼等の合金;や、SiC、Si、SiO、TiO、ZrO等のセラミック;樹脂等が挙げられる。
原料として使用される物質は、粉末であることが好ましく、通常、粒径5μm〜300μmのものを使用することができる。
成形型20を構成する材料は、通常の成形に用いられる材料であれば特に制限はないが、例えば、SKD(合金工具鋼)、SKH(ハイス鋼)等の金属;樹脂;等が挙げられる。
また、成形型20の開口22の形状としては特に制限はなく、製造する傾斜材料の形状に応じて決めればよい。
このようにして、成形型20の開口22中に原料物質の粉末を傾斜組成分布を有するように充填した後は、公知の成形方法により成形すればよい。通常は、図6に示すように、成形型20の開口部に上パンチ30をセットし、所定の成形圧力で加圧して、プレフォームを作成する。プレフォームを成形型20から抜き出して、その後、焼結炉等の中で焼結を行い、傾斜材料を得ることができる。
プレフォームの焼結方法としては、メッシュ炉、真空焼結炉等による通常の焼結方法の他、HIP(熱間等方加圧焼結法)法、プラズマ焼結法等であってもよい。
本実施形態に係る傾斜材料の製造装置及び傾斜材料の製造方法により製造する傾斜材料は、自動車用エンジンのコンロット等の自動車用材料、電気絶縁部品、センサ用部品等に使用する傾斜材料として使用することができる。例えば、自動車用エンジンのコンロットにおいては、一端を高強度を有する材料を主体に構成し、他端を易加工性を有する材料を主体に構成することができる。
このように、本実施形態に係る傾斜材料の製造装置及び傾斜材料の製造方法において、原料粉末の落下量を制御して、傾斜組成分布を有するように原料粉末を成形型に落下させることにより、低コストで、所望の傾斜組成分布を持つ傾斜材料を容易に製造することができる。
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
表1に示す粒度分布を有する純Fe粉と、ステンレス鋼粉を、それぞれ物質A、物質Bとして用い、図1及び図2に示す装置を使用して、傾斜組成分布を持った傾斜材料を製造した。成形型20は、奥行き(L1)25mm×幅(L2)52mm×高さ(L3)100mmの長方体形状の開口を有し、材質SKDのものを使用した。粉箱10は、奥行き(P1)25mm×幅(P2)52mm×高さ(P3)70mmの長方体で、材質ステンレスのものを使用した。粉箱10は、粉末仕切り板18(材質:ステンレス)と円形の落下孔16を有する。落下孔16には、メッシュ26(材質:ステンレス)が設けられている。また、粉箱10には、加振装置12を設置した。粉箱10の落下孔16としては、図2(a)に示すように、大きさ(直径)Nx=12mm、Nx=10mm、Nx=8mm、Nx=6mm、Nx=4mmの孔が粉末仕切り板18の片側に、もう一方の側に、大きさ(直径)Ny=12mm、Ny=10mm、Ny=8mm、Ny=6mm、Ny=4mmの孔がそれぞれ配置されている。落下孔16に設けられたメッシュ26の目の大きさMと粉箱の振動速度Vとを表2に示す値として、傾斜材料の製造を行った。
傾斜材料の製造の工程を示す。純Fe粉を粉箱10の粉末仕切り板18で仕切られた片側に充填した。また、他方の側にはステンレス鋼粉を充填した。粉箱10を、成形型20の開口22上にH=75mmの高さに、開口22の位置と粉箱10の底部14の位置とが一致するように配置した。ここで、高さHは、下パンチ28から粉箱10の底部14までの距離である。加振装置12により、表2に示す所定の振動速度Vにて粉箱10を、短径(P1)方向(開口22の短径(L1)方向)に沿って水平に振動させた。振動幅aは25mmとした。振動が開始されたら、充填仕切り板24をスライドさせ、それぞれの粉末を落下孔16より落下させ、開口22内に粉末を充填させた。充填された粉末は、図1及び図2の向かって左側ほど、純Fe粉の量が多く、右側ほどステンレス鋼粉が多い、傾斜組成分布を持って充填される。所定の量(合計100g)を充填した後、成形型20の開口22に上パンチ30をセットし、8トン/cmの成型圧力で加圧し、プレフォームを作成した。プレフォームを開口22より抜き出して、真空焼結炉にて焼結し、傾斜材料を得た。
得られた傾斜材料について、傾斜組成分布を評価した結果を、表2に示す。なお、傾斜組成分布は、次のようにして評価を行った。
図7に示すように、得られた傾斜材料を両端は3.5mm厚に、その他は3mm間隔で厚さ3mmずつ切り出し、サンプルを採取した。採取したサンプルについて、高周波プラズマ発光分析法により成分分析を行い、純Fe粉と、ステンレス鋼粉との割合を算出した。図8に、得られた傾斜材料の端からの距離と、純Fe粉の混合割合との関係の一例を示す。
なお、傾斜組成分布の評価基準は以下の通りとした。
○:目標混合割合に対して±5%以下である
△:目標混合割合に対して±10%以下である
×:目標混合割合に対して±10%を超える
このように、実施例1の傾斜材料製造装置及び傾斜材料製造方法により、傾斜組成分布を有する傾斜材料を容易に製造することができた。また、粉箱10の振動速度Vが、2回/秒未満では、純Fe粉とステンレス鋼粉とが開口22内で均一に混合されにくく、2回/秒以上のときに比べると傾斜組成分布がやや劣る。また、落下孔16に設けられたメッシュ26の目の大きさMについては、M/D≧4の場合には(D:使用粉末の最大粒度。実施例1では、純Fe粉、ステンレス鋼粉ともにD=250μm。)、粉箱10から速く粉末が落下するために傾斜組成分布がやや劣ることがわかる。
(実施例2)
粒径10μm(ほぼ均一粒径)のセラミック粉(材質:Al)と、粒径50μm(ほぼ均一粒径)のステンレス鋼粉を、それぞれ物質A、物質Bとして用い、傾斜組成分布を持った傾斜材料を製造した。成形型20は、実施例1に使用したものと同じものを使用した。粉箱10は、メッシュ26の目の大きさM以外は実施例1に使用したものと同じものを使用した。メッシュ26の目の大きさMは、セラミック粉側を20μm、ステンレス鋼粉側を100μmとした。粉箱10の振動速度Vは、3回/秒とした。振動幅aと、粉箱の高さHとを表3に示す値として、傾斜材料の製造を行った。
傾斜材料の製造の工程を示す。セラミック粉を粉箱10の粉末仕切り板18で仕切られた片側に充填した。また、他方の側にはステンレス鋼粉を充填した。粉箱10を、成形型20の開口22上に表3に示すHの高さに、開口22の位置と粉箱10の底部14の位置とが一致するように配置した。加振装置12により、振動速度V=3回/秒として、表3に示す所定の振動幅aにて粉箱10を、短径(P1)方向(開口22の短径(L1)方向)に沿って水平に振動させた。振動が開始されたら、充填仕切り板24をスライドさせ、それぞれの粉末を落下孔16より落下させ、開口22内に粉末を充填させた。充填された粉末は、図1及び図2の向かって左側ほど、セラミック粉の量が多く、右側ほどステンレス鋼粉が多い、傾斜組成分布を持って充填される。所定の量(合計80g)を充填した後、成形型20の開口22に上パンチ30をセットし、10トン/cmの成型圧力で加圧し、プレフォームを作成した。プレフォームを開口22より抜き出して、真空焼結炉にて焼結し、傾斜材料を得た。
得られた傾斜材料について、傾斜組成分布を評価した結果を、表3に示す。傾斜組成分布は、実施例1と同様にして評価を行った。
このように、実施例2においても、傾斜組成分布を有する傾斜材料を容易に製造することができた。また、粉箱10の振動幅aが、開口22の奥行きL1より小さい(a/L1<1)とき、粉箱10の振動方向において、セラミック粉とステンレス鋼粉とが開口22内で均一に混合されにくく、a/L1≧1のときに比べると傾斜組成分布がやや劣る。また、粉箱10の高さHについては、H/L1≧8の場合には、粉末が開口22内に十分に落下されにくいため、粉末が飛散し、傾斜組成分布がやや劣ることがわかる。
本発明の実施形態に係る傾斜材料の製造装置の一例の概略図を示す図である。(a)は粉箱の上面図である。(b)は粉箱の断面図である。(c)は成形型の上面図である。(d)は成形型の断面図である。 本発明の実施形態に係る傾斜材料の製造装置の一例の概略図を示す図である。(a)は粉箱の上面図である。(b)は成形型の上面図である。 本発明の実施形態に係る傾斜材料の製造装置の落下孔の配置の別の例を示す図である。 本発明の実施形態に係る傾斜材料の製造装置の落下孔の配置の別の例を示す図である。 本発明の実施形態に係る傾斜材料の製造装置における、粉箱の振動の例を示す図である。 本発明の実施形態に係る傾斜材料の製造方法における加圧成形の例を示す図である。 本発明の実施形態に係る傾斜材料の品質評価において、サンプルの採取方法を示す図である。 本発明の実施形態に係る傾斜材料の品質評価において、傾斜材料の端からの距離と、純鉄粉の混合割合との関係の一例を示す図である。
符号の説明
1 傾斜材料製造装置、10 粉箱、12 加振装置、14 底部、16 落下孔、18 粉末仕切り板、20 成形型、22 開口、24 充填仕切り板、26 メッシュ、28 底部(下パンチ)、30 上パンチ。

Claims (13)

  1. 複数の物質を含み、前記複数の物質の組成が徐々に変化する傾斜材料の製造装置であって、
    前記各物質の粉末を収納する収納部と、
    前記収納部を振動させる振動手段と、
    を有し、
    前記収納部には、複数の落下孔の少なくとも2組が、他の組と領域が仕切られて設けられ、前記仕切られた領域それぞれに前記各粉末が収納され、
    前記収納部を振動させることにより、前記粉末を前記落下孔より落下させて成形型内に充填することを特徴とする傾斜材料の製造装置。
  2. 請求項1に記載の傾斜材料の製造装置であって、
    前記複数の落下孔のうち少なくとも2つは、大きさが異なることを特徴とする傾斜材料の製造装置。
  3. 請求項1または2に記載の傾斜材料の製造装置であって、
    前記複数の落下孔は、漸次大きさが異なることを特徴とする傾斜材料の製造装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1つに記載の傾斜材料の製造装置であって、
    前記振動は、前記収納部が前記成形型の開口に対して水平方向に振動するように行われることを特徴とする傾斜材料の製造装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1つに記載の傾斜材料の製造装置であって、
    前記落下孔には、メッシュが設けられていることを特徴とする傾斜材料の製造装置。
  6. 請求項5に記載の傾斜材料の製造装置であって、
    前記収納部の振動速度をV(回/秒)、
    前記収納部の振動幅をa(mm)、
    前記成形型の開口の、前記収納部の振動方向の最大長さをL1(mm)、
    前記収納部と前記開口の底部との距離をH(mm)、
    前記粉末の最大粒度をD(μm)、
    前記メッシュの目の大きさをM(μm)、
    としたときに、
    V≧2、a/L1≧1、H/L1<8、D<M<4D、
    の関係にあることを特徴とする傾斜材料の製造装置。
  7. 複数の物質を含み、前記複数の物質の組成が徐々に変化する傾斜材料の製造方法であって、
    前記各物質の粉末を落下させて成形体内に充填する工程と、
    前記充填された粉末を加圧成形して成形体を製造する工程と、
    前記成形体を焼結する工程と、
    を含み、
    前記各粉末の落下量を制御して成形体内に充填することを特徴とする傾斜材料の製造方法。
  8. 請求項7に記載の傾斜材料の製造方法であって、
    前記充填する工程において、
    複数の落下孔の少なくとも2組が、他の組と領域が仕切られて設けられた収納部の、前記仕切られた領域それぞれに収納された前記各粉末を、前記収納部を振動させることにより前記落下孔より落下させて成形型内に充填することを特徴とする傾斜材料の製造方法。
  9. 請求項8に記載の傾斜材料の製造方法であって、
    前記複数の落下孔のうち少なくとも2つは、大きさが異なることを特徴とする傾斜材料の製造方法。
  10. 請求項8または9に記載の傾斜材料の製造方法であって、
    前記複数の落下孔は、漸次大きさが異なることを特徴とする傾斜材料の製造方法。
  11. 請求項8〜10のいずれか1つに記載の傾斜材料の製造方法であって、
    前記振動は、前記収納部が前記成形型の開口に対して水平方向に振動するように行われることを特徴とする傾斜材料の製造方法。
  12. 請求項8〜11のいずれか1つに記載の傾斜材料の製造方法であって、
    前記落下孔には、メッシュが設けられていることを特徴とする傾斜材料の製造方法。
  13. 請求項12に記載の傾斜材料の製造方法であって、
    前記収納部の振動速度をV(回/秒)、
    前記収納部の振動幅をa(mm)、
    前記成形型の開口の、前記収納部の振動方向の最大長さをL1(mm)、
    前記収納部と前記成形型の底部との距離をH(mm)、
    前記粉末の最大粒度をD(μm)、
    前記メッシュの目の大きさをM(μm)、
    としたときに、
    V≧2、a/L1≧1、H/L1<8、D<M<4D、
    の関係にあることを特徴とする傾斜材料の製造方法。
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