JP2005348720A - 精神安定用飲食品及び飼料 - Google Patents

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充宏 古瀬
Tetsuya Tachibana
哲也 橘
Yuusuke Koga
優祐 古賀
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Abstract

【課題】 メンタルヘルスの改善、ストレスの緩和に有効で、安全かつ容易に体内吸収されるような物質およびその用途の開発を課題とする。

【解決手段】 クレアチンを食品あるいは飼料に添加して摂取すれば、人間のみならず動物のストレスの緩和に役立つことを見出した。
【選択図】 なし

Description

本発明は、クレアチンを用いて、精神安定をもたらす飲食品及び飼料の開発に関する。
現代社会はストレス社会と言われており、生活環境、職場環境の多様化、人間関係の複雑化により、家庭、仕事、対人関係にストレスを感じている人が多く、そのストレスより精神的、身体的健康を害すことが社会問題となっている。
近年、ハーブの研究が進み、ウコギ科に属するエゾウコギ、セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)、食品原料用ハーブのひとつであるシミシフーガ(学名:Cimicifuga racemosa 、慣用名:ブラックコホシュ)が抗うつ、リラクゼーションに効果があることが明らかになってきた。これらはハーブ抽出物を利用した飲料として、エゾウコギを含む栄養飲料(特開2003-38140号公報(特許文献6))等の開示がある。
メンタルヘルスの改善、ストレスの緩和は、心身において健康維持に重要な課題ではある。この効果を示す成分として、ハーブ抽出物(エゾウコギ、セントジョーンズワート等)があるが、味臭いの点から、広範囲な食品への応用が難しかった。また、植物の抽出物であるため、メンタルヘルスの改善、ストレスの緩和に効果のある成分以外の成分も摂取することになり、過剰摂取による安全性に疑問があると言われている。
一方、クレアチンは、グリシン、L−アラニン、S−アデノシルメチオニンからなる化合物であり、主に肝臓で合成され、筋肉や神経組織に存在し、遊離もしくはリン酸と結合したクレアチンリン酸として存在する化合物である。
体内のクレアチンの約95〜98%は、筋肉中に存在し、高エネルギーリン酸(クレアチンリン酸)として貯蔵され、急激な運動、多量なエネルギーを必要とされるときに筋肉のエネルギーとして利用される。
クレアチンは、筋肉のエネルギーとして利用されるため、アスリートの能力向上のため、アスリート用サプリメント食品素材として広く利用されている物質である(Persky, AM., Brazeau, GA., 2001 Pharmacological Review 53,161-176(非特許文献1))。クレアチン摂取の効果は、筋肉内クレアチン濃度とともにクレアチンリン酸濃度も上昇するため、筋肉の運動能力を上げ、特に瞬発力を必要とするスプリント競技で効果を発揮すると言われている。
また、クレアチン摂取の効果として、短期間に筋肉の疲労を回復させる効果が認められている。これらの効果を利用した食品として、抗疲労組成物(特開2002-338473号公報(特許文献1))、抗疲労効果を有する食肉製品(特開2003-135033号公報(特許文献2))などの開示がある。また、その他の機能については、筋肉増強効果として、筋肉強化用食品組成物および筋肉強化剤(特開2002-65212号公報(特許文献3))、骨強化効果として、骨強化剤および骨強化用食品組成物(特開2001-120226号公報(特許文献4))、体脂肪減少促進効果として、体脂肪減少促進剤および体脂肪減少促進食品組成物(特開2001-131065号公報(特許文献5))等が開示され、注目されている。
さらには、クレアチンは中枢神経でも合成され、代謝されているため、脳における機能についても、多くの注目と研究がなされている。クレアチンの投与が、パーキンソン病、ハンチントン病、脳症、乳酸アシドーシス、酸素欠乏症等に効果がある事が示されている(Balestrino, M. et.al., 1999, Brain Resarech 816, 124-130., 2002 Amino Acids 23, 221-229.(非特許文献2), Ferrante, RJ. et. al., 2000, Journal of Neuroscience 20, 4389-4397.(非特許文献3), Matthews, RT. et. al., 1998, Journal of Neuroscience 18, 156-163.(非特許文献4), 1999, Experimental Neurology 157, 142-149.(非特許文献5), Persky, AM. et. al., 2001, Pharmacological Reviews 53, 161-176.(非特許文献6))。以上のように、クレアチンの脳における機能について、注目を浴びている。
特開2002-338473号公報 特開2003-135033号公報 特開2002-65212号公報 特開2001-120226号公報 特開2001-131065号公報 特開2003-38140号公報 Persky, AM., Brazeau, GA., 2001 Pharmacological Review 53,161-176. Balestrino, M. et.al., 1999, Brain Resarech 816, 124-130., 2002 Amino Acids 23, 221-229. Ferrante, RJ. et. al., 2000, Journal of Neuroscience 20, 4389-4397. Matthews, RT. et. al., 1998, Journal of Neuroscience 18, 156-163. Matthews, RT. et. al., 1999, Experimental Neurology 157, 142-149. Persky, AM. et. al., 2001, Pharmacological Reviews 53, 161-176.
メンタルヘルスの改善、ストレスの緩和に有効で、安全かつ容易に体内吸収されるような物質およびその用途の開発を課題とする。
本願発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意努力した結果、クレアチンを食品あるいは飼料に添加して摂取すれば、人間のみならず動物のストレスの緩和に役立つことを見出した。
すなわち、本発明は
(1) クレアチンを含有することを特徴とする精神安定用飲食品、
(2) クレアチンを含有することを特徴とする精神安定用飼料、
(3) ニワトリヒナ用であることを特徴とする(2)記載の精神安定用飼料
に関する。
クレアチンについては、上記従来技術において抗疲労効果、筋肉増強効果等各種効果があることを述べたが、クレアチンが抗ストレス効果を持つことは、本願発明者等が初めて見いだしたことであり、クレアチンは生体内で合成される成分であり、かつ食品中に含まれる成分であるため、クレアチンを添加することにより、摂取しても安全で、商品形態が自由に設計される抗ストレス商品が創出可能となった。
本発明において、飲食品とは通常の食品であればいずれでも良く、また、調味料等の副材料に添加しても効果的である。更に飼料もニワトリの飼料は勿論のこと、ペットの飼料あるいは魚の飼料にも適用可能である。
また、クレアチンの摂取量については、人は1回当り約8g程度が好ましく、飼料では対象動物によって異なるが、1回当りヒヨコで16mg〜400mg、鶏で400mg〜1.2g、豚で4〜40g、牛では40〜280g程度が好ましい。
本発明により、メンタルヘルスの改善、ストレスの緩和に有効な飲食品あるいは飼料を
得ることが出来、しかも安全かつ容易に体内吸収されるので、ストレスを有する人間あるいは動物が摂取すればその緩和に有効である。
本発明を具体的に説明するために、実施例を示す。
ニワトリヒナを集団から1羽だけ隔離すると、鳴き声、運動量および血中コルチコステロン濃度が増加する。これは隔離されたヒナにストレスが負荷されていることを意味し、この状態を単離ストレスと呼ぶ。
単離ストレス時に脳内クレアチン含量の増加が認められ(図1)、クレアチンが脳内でストレス緩和に効果があると考えられたため、本実験でクレアチンの単離ストレス反応に及ぼす影響について検討を行った。実験1では、クレアチンの脳室投与の影響を、実験2ではクレアチンの経口摂取の影響を調査した。
クレアチンの脳室投与による効果
以下、実験の詳細を示す。
(実験動物)
1日齢卵用種(Julia系統)雄ヒナを村田孵化場(福岡県)より購入し、2群に分けてそれぞれ集団ケージにて飼育した。24時間点灯、室温28℃の環境条件下で、市販飼料(AX、愛知県豊橋飼料株式会社)と水を不断給与して飼育した。
(脳室投与)
クレアチン1水和物(大阪府和光純薬工業株式会社より購入)を0.1%エバンスブルー入り生理食塩水に溶解し、脳室投与に用いた。投与量は1羽あたり2μg/10μlとし、対照群には同量のエバンスブルー入り生理食塩水を脳室投与した。このエバンスブルーは脳室投与の確認のために用いた。
なお、脳室投与の方法については、Davis,J.L.Et. al.,1979,Physiology & Behavior 22,693-695に記載されている方法に基づいて行った。
(単離ストレス負荷実験)
4日齢時の10時30分から13時00分の間に単離ストレス負荷実験を行った。ヒナに脳室投与を施し、その5分後にヒナを透明行動観察アクリルケージ(40×30×20cm)に移した。移動後10分間におけるヒナの鳴き声を録音するとともに自発行動量を測定した。自発行動量の測定には赤外線ビームセンサー(NSAS01およびDAS008、東京都株式会社ニューロサイエンス)を用いた。鳴き声についてはその回数を計数した。
(統計処理)
脳室投与が正確に施されていたヒナから得られたデータのみを用いた。データは対応のないt-検定で統計処理した。値は平均値±標準誤差で示した。
結果
(鳴き声数)
クレアチンの脳室投与により鳴き声数が有意に減少した(図2)。
すなわち、ストレスが負荷されていると、ヒナはピーピーと泣き止まないが、クレアチンの脳室投与により鳴き声数は10分の1程度に減少する。このことはクレアチンがヒナのストレス緩和に有効であることを表している。
(自発行動量)
クレアチンの脳室投与により自発行動量が有意に減少した(図3)。
すなわち、ストレスが負荷されていると、ヒナは落ち着きなくあちこち動き回るが、クレアチンの脳室投与により自発行動量は同様に10分の1程度に減少する。このことはクレアチンがヒナのストレス緩和に有効であることを表している。
クレアチンの経口投与での効果
以下実験の方法を詳細に示す。
(実験動物)
1日齢卵用種(Julia系統)雄ヒナを村田孵化場(福岡県)より購入し、2群に分けてそれぞれ集団ケージにて飼育した。24時間点灯、室温28℃の環境条件下で、市販飼料(AX、愛知県豊橋飼料株式会社)と水を不断給与して飼育した。
(経口投与)
クレアチン1水和物(大阪府和光純薬工業株式会社)を蒸留水に溶解し、経口投与した。投与量は体重1kgあたり400mgとし、対照群には同量の蒸留水を経口投与した。経口投与は1日2回(9時30分および21時30分)行った。1日齢時のみ21時30分の1回のみ投与した。
(単離ストレス負荷実験)
11日齢時の10時30分から14時30分の間に単離ストレス負荷実験を行った。ヒナを透明行動観察アクリルケージ(40×30×20cm)に移し、移動後5分間におけるヒナの鳴き声を録音するとともに自発行動量を測定した。自発行動量の測定には赤外線ビームセンサー(NSAS01およびDAS008、東京都株式会社ニューロサイエンス)を用いた。鳴き声については、その回数を計数した。
(統計処理)
得られたデータは対応のないt-検定で統計処理した。なお、文中の値は平均値±標準誤差で示す。
結果
(鳴き声数)
鳴き声の数については、対照群(337±27)とクレアチン群(299±73)の間に有意な差は認められなかった(P=0.571)。
(自発行動量)
自発行動量は、クレアチンの経口投与により減少する傾向が見られた(P=0.056、対照群:112±13、クレアチン群:62±22)。
自発行動量が減少する傾向がみられたということは、すなわち、クレアチンを経口投与した場合でもストレス緩和に有効であるということを表している。
単離ストレスがヒナ脳内のクレアチン含量に及ぼす影響を示す図。 クレアチンの脳室投与が単離ストレス下のヒナの鳴き声数に及ぼす影響を示す図。 クレアチンの脳室投与が単離ストレス下のヒナの自発行動量に及ぼす影響を示す図。

Claims (3)

  1. クレアチンを含有することを特徴とする精神安定用飲食品。
  2. クレアチンを含有することを特徴とする精神安定用飼料。
  3. ニワトリヒナ用であることを特徴とする請求項2記載の精神安定用飼料。
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