以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明者らは、DC帯電方式に用いる導電性部材として、導電性支持体と、その上に形成される1層以上の被覆層から構成されており、少なくとも最表面に位置する被覆層が表面粗し剤としての微粒子を含有し、該微粒子が球状粒子と異形粒子からなり、かつ微粒子中に占める異形粒子の体積比率が3〜30vol%とすることにより、感光ドラムと長期に亘り当接状態が続いても、導電性部材の圧縮変形に起因したセット跡が画像上に現れないという知見を得て本発明に至った。
また、従来は、DC帯電方式では低温低湿環境下で安定な帯電を得ることが難しかった。また、印刷メディアの厚さ等の理由により、1つの電子写真装置を異なる2つ以上のプロセススピードで使用するような場合には、DC帯電方式は、AC帯電方式に比較して良好な帯電特性を発揮するプロセススピードの範囲が狭いという問題点もあった。本発明においては、少なくとも最表面に位置する被覆層が表面粗し剤として微粒子を含有し、該微粒子が球状粒子と異形粒子からなり、かつ微粒子中に占める異形粒子の体積比率が3〜30vol%とすることにより、DC帯電法によって、例えば600dpiの中間調画像の様な高精細画像を出力した場合においても、良好な帯電特性により、異なるプロセススピードで使用しても長期間安定した帯電が行える導電性部材を提供する。このようなローラを使用することにより、異なるプロセススピードにて使用可能で、かつ電気抵抗のムラに対する要求が厳しいDC帯電方式に使用することができる導電性部材が得られることを発見し、本発明に至った。
次に、本発明の導電性部材、それを用いた画像形成装置及びプロセスカートリッジについて詳細に説明する。
<1>導電性部材
本発明の導電性部材の具体的な構成を図1に示す。図1(a)は導電性部材の横断面を示し、図1(b)は縦断面を示したものである。
本発明の導電性部材は、導電性支持体1とその外周に形成された導電性弾性層2と、導電性弾性層2の外周を被覆する表面層3とを有する導電性部材である。
図1に示す本発明で使用する導電性支持体1は、炭素鋼合金表面に5μmの厚さのニッケルメッキを施した円柱である。導電性支持体を構成する材料として他にも、例えば鉄、アルミニウム、チタン、銅及びニッケル等の金属やこれらの金属を含むステンレス、ジュラルミン、真鍮及び青銅等の合金、更にカーボンブラックや炭素繊維をプラスチックで固めた複合材料等の、剛直で導電性を示す公知の材料を使用することもできる。また、形状としては円柱形状の他に、中心部分を空洞とした円筒形状とすることもできる。
本発明では、まず上記導電性支持体1の外周に導電性弾性層2を成形する。導電性弾性層2は導電性弾性体からなっている。導電性弾性体は、導電剤と高分子弾性体とを混合して成形される。導電剤は少なくともイオン導電剤が含有されている。高分子弾性体としては例えば、NBR(ニトリルゴム)、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、あるいはSBS(スチレン・ブタジエン・スチレン−ブロックコポリマー)、SEBS(スチレン・エチレンブチレン・スチレン−ブロックコポリマー)等の熱可塑性エラストマー等が挙げられる。高分子弾性体としては特にエピクロルヒドリンゴムが好適に用いられる。エピクロルヒドリンゴムは、ポリマー自体が中抵抗領域の導電性を有し、導電剤の添加量が少なくても良好な導電性を発揮することができる。また、位置による電気抵抗のバラツキも小さくすることが出来るので、高分子弾性体として好適に用いられる。
エピクロルヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体及びエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体等が挙げられる。この中でも安定した中抵抗領域の導電性を示すことから、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体が特に好適に用いられる。エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体は、重合度や組成比を任意に調整することで導電性や加工性を制御できる。
高分子弾性体はエピクロルヒドリンゴムを主成分とするが、必要に応じてその他の一般的なゴムを含有してもよい。
その他の一般的なゴムとしては、例えばEPM(エチレン・プロピレンゴム)、EPDM(エチレン・プロピレンゴム)、NBR(ニトリルゴム)、クロロプレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ウレタンゴム及びシリコーンゴム等が挙げられる。また、SBS(スチレン・ブタジエン・スチレン−ブロックコポリマー)、SEBS(スチレン・エチレンブチレン・スチレン−ブロックコポリマー)等の熱可塑性エラストマーを含有してもよい。
上記の一般的なゴムを含有する場合、その含有量は、高分子弾性体全量に対し1〜50質量%であるのが好ましい。
導電剤としては、導電性弾性層の電気抵抗率のムラを小さくするという目的により、イオン導電剤を含有することが好ましい。イオン導電剤が高分子弾性体の中に均一に分散し、導電性弾性体の電子抵抗率を均一化することにより、帯電ローラを直流電圧のみの電圧印加で使用したときでも均一な帯電を得ることができる。
イオン導電剤としては、例えば、LiClO4やNaClO4等の過塩素酸塩及び4級アンモニウム塩等が挙げられ、これらを単独又は2種類以上組み合わせて用いることができる。イオン導電剤の中でも、環境変化に対して抵抗が安定なことから特に過塩素酸4級アンモニウム塩が好適に用いられる。
イオン導電剤に加えて、導電性弾性体の電気抵抗にムラを生じさせない範囲で、電子導電性の導電剤を添加することができる。電子導電性の導電剤は、電子導電性の導電剤の担う導電性が、イオン導電剤の担う導電性よりも小さい範囲で使用することができる。電子導電性の導電剤としては、例えば、アルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀等の金属系の粉体や繊維や酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛等の金属酸化物や、適当な粒子の表面を酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化モリブデン、亜鉛、アルミニウム、金、銀、銅、クロム、コバルト、鉄、鉛、白金又はロジウムを電解処理、スプレー塗工、混合振とうにより付着させた粉体や、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、PAN(ポリアクリロニトリル)系カーボン及びピッチ系カーボン等のカーボン粉がある。これらを単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明において、これらの導電剤の配合量は導電性弾性体の体積抵抗率が、低温低湿環境(環境1;15℃/10%RH)、常温常湿環境(環境2:23℃/50%RH)、高温高湿環境(環境3:30℃/80%RH)で、中抵抗領域(体積抵抗率が1×104〜1×1010Ω・cm)になるような量が好ましい。
導電性弾性体の体積抵抗は、厚さ1mmのシートに成型した後、両面に金属を蒸着して電極とガード電極とを作製し、微小電流計(ADVANTEST R8340A ULTRA HIGH RESISTANCE METER (株)アドバンテスト社製)を用いて200Vの電圧を印加して30秒後の電流を測定し、膜厚と電極面積とから計算して求める。
導電性弾性体の体積抵抗率がこれよりも小さいと、像担持体である感光体にピンホールがあった場合に大電流がピンホールに一気に集中してしまい、印加電圧が降下し、電流が流れなくなって、高精細なハーフトーン画像上に帯状となって帯電電位が不足した部分が現れてしまう。また、ピンホールをより大きくしてしまう、といった不具合が発生する恐れがある。逆に体積抵抗率が大き過ぎると、所望する帯電電位を得るためには高電圧を印加しなければならない。
この他にも導電性弾性体には必要に応じて、可塑剤、充填剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、分散剤及び離型剤等の配合剤を加えることもできる。
導電性弾性体の成形方法としては、上記の導電性弾性体の原料を密閉型ミキサー等で混合して、例えば、押し出し成形や射出成形、圧縮成形等の公知の方法により成型するのが好ましい。また、導電性弾性体基層は、導電性支持体の上に直接導電性弾性体を成形して作製してもよいし、予めチューブ形状に成形した導電性弾性体を導電性支持体上に被覆形成させてもよい。なお、導電性弾性層の作製後に表面を研磨して形状を整えてもよい。
導電性弾性層の形状は、帯電ローラ2と電子写真感光体1の均一性密着性を確保するために中央部を一番太く、両端部に行くほど細くなる形状、いわゆるクラウン形状に形成することが好ましい。一般に使用されている帯電ローラ2が、支持体の両端部に所定の押圧力を与えて電子写真感光体1と当接されているので、中央部の押圧力が小さく、両端部ほど大きくなっているために、帯電ローラ1の真直度が十分であれば問題ないが、十分でない場合には中央部と両端部に対応する画像に濃度ムラが生じてしまう場合がある。クラウン形状は、これを防止するために形成する。
また、ローラ回転時の当接ニップ幅が均一となるために、導電性弾性層ローラの外径差振れは小さい方が好ましい。
振れの測定値は、図2のように、導電性支持体を回転軸として導電性弾性層ローラを回転させ、回転軸と垂直に非接触レーザー測長器(本発明においては、(株)キーエンス製 LS−5000)で測定した導電性弾性層ローラの半径の最大値と最小値の差を値として求める。導電性弾性層ローラの軸方向に1cmピッチで前記半径の最大値と最小値の差を求め、その値の中で最大の値を導電性弾性層ローラの振れの値とする。
また、ローラの直径とは、同様に導電性支持体を回転軸として導電性弾性体基層ローラを回転させ、回転軸と垂直に非接触レーザー測長器で測定した導電性弾性体基層の直径の最大値と最小値の平均とする。
導電性弾性層ローラの軸方向中央部の直径と、弾性体の中央部から10mm端部側の部分の直径の値2つの平均との差を、クラウン量の値として求める。
導電性弾性層ローラの振れの好ましい値は、ローラ中央部の直径の0.5%以下、特には0.25%以下である。例えば、ローラの直径が12mm程度の場合、振れの値は具体的には60μm以下が好ましく、より好ましくは30μm以下とする。
クラウン量の値は出来上がったローラのニップ幅が均一になるように決めるが、好ましくはローラ直径の5.0%以下が好ましい。具体的には直径12mm程度の場合、600μmが好ましい。
導電性弾性体の硬度は、マイクロ硬度(MD−1型)で70°以下が好ましく、より好ましくは60°以下である。マイクロ硬度(MD−1型)が70°を超えると、帯電部材と感光体との間のニップ幅が小さくなり、帯電部材と感光体との間の当接力が狭い面積に集中し、当接圧力が大きくなる。これによって帯電が安定しなくなったり、あるいは感光体や帯電部材の表面に現像剤その他が付着し易くなったりする等の弊害が顕著になる。
なお、「マイクロ硬度(MD−1型)」とは、アスカー マイクロゴム硬度計 MD−1型(高分子計器株式会社製)を用いて測定した帯電部材の硬度であり、常温常湿(23℃/55%RH)の環境中に12時間以上放置した帯電部材に対して硬度計を10Nのピークホールドモードで測定した値とする。
マイクロ硬度(MD−1型)を小さくするため、導電性弾性体に可塑剤を配合する。配合量は、好ましくは1質量部〜30質量部であり、より好ましくは3質量部〜20質量部である。可塑剤としては、高分子タイプのものを用いることが好ましい。高分子可塑剤の分子量は、好ましくは2000以上、より好ましくは4000以上である。分子量が2000より小さいと可塑剤がローラの表面に染み出してきて感光体を汚染する可能性がある。
導電性弾性層は、必要に応じて導電性支持体と接着剤を介して接着される。この場合、接着剤は導電性であることが好ましい。導電性とするため、接着剤には公知の導電剤を有することができる。
接着剤のバインダーとしては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等の樹脂が挙げられ、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系、ポリエーテル系及びエポキシ系等の公知の接着剤を用いることができる。
導電剤としては、前述したものを用いることができる。導電剤は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
導電性弾性層が作製した後に、その被覆層として表面層3を設ける。
本発明の導電性部材の表面層は、少なくとも表面粗し剤としての微粒子を含有し、該微粒子が球状粒子と異形粒子からなり、かつ微粒子中に占める異形粒子の体積比率が2〜30vol%である。
表面層に含有する粗し剤としては、架橋した高分子化合物からなる微粒子を用いることが好ましい。高分子化合物からなる微粒子は弾性を有するため無機微粒子に比べて被帯電体である感光ドラムを傷つける恐れが少ない。
また、架橋していない高分子化合物からなる微粒子だと表面層塗工用の塗料を作製としたときに溶解する恐れがあるので好ましくない。架橋した高分子微粒子を作るモノマーとしては、特には限定しないが、重合の容易さ等から、ビニル系のモノマーが好適に用いられる。
本発明に用いるビニル系モノマーは、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸へキシル等のメタクリル酸エステル、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン等の芳香族系ビニル単量体、酢酸ビニル及びアクリロニトリル等が挙げられる。
樹脂粒子が架橋された高分子微粒子となるために、本発明においては、上記のビニル系モノマー以外に、分子内にビニル基を2つ以上有する架橋性のビニル系モノマーを使用する。このような架橋性のビニル系モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート及びトリメチロールプロパントリメタアクリレート等が挙げられる。これら架橋性のビニル系モノマーの添加量は、非架橋性のビニルモノマーに対して1〜30質量部が好ましい。添加量が30質量部を超えると、ビーズ等の分散メディアを用いたビーズミル分散機で表面層塗工用の塗料作製すると、高架橋の微粒子は砕け易くなる傾向にあった。また、添加量が1質量部未満であると、塗料作製時に微粒子が溶解してしまう恐れがある。
これらの架橋された高分子微粒子は、シード乳化重合、分散重合、懸濁重合等により重合されるが、低分子の界面活性剤等の残留が少ないので、懸濁重合によって重合されることが好ましい。重合開始剤は、特に限定されないが、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の過酸化物系触媒、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ系触媒が挙げられる。
本発明で使用される架橋された高分子微粒子は、形状がより真球形状に近い球状粒子と、非球状の異形粒子を併せて用いるのが好ましい。
具体的には、球状粒子は平均円形度が0.95以上であることが好ましい。平均円形度が0.95以上となるように高分子微粒子の粒子形状を精密に制御することにより、導電性ローラ表面の凸部が均一になり、異なるプロセススピードで使用してもより均一な帯電特性を得ることが出来る。また、帯電ローラ表面へのトナーや外添剤の付着を最小限に抑えることができ、安定した帯電特性を長期に亘り維持することができる。
本発明における円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、本発明では導電性ローラ表面層を薄くスライスして、その断面を電子顕微鏡(SEM)を用いて粒子形状を実際に測定して、円形度を下式により求める;
円形度=(粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
ここで、「粒子投影面積」とは二値化された樹脂粒子像の面積であり、「粒子投影像の周囲長」とは該樹脂粒子像のエッジ点を結んで得られる輪郭線の長さと定義する。
本発明における円形度は、粒子の凹凸の度合いを示す指標であり、粒子が完全な球形の場合に1.000を示し、表面形状が複雑になる程、円形度は小さな値となる。
樹脂粒子の平均粒径は、0.5〜30μmであることが好ましい。更に好ましくは3〜15μmである。粒径が大き過ぎると帯電ローラ表面が粗れ過ぎて帯電が不均一になってしまうという弊害がある。また、小さ過ぎると樹脂粒子を添加して低プロセススピードの領域での帯電を安定化させる効果が現れないので好ましくない。
以下に、本発明における樹脂粒子の粒径測定の具体例を示す。
導電性ローラの表面層を断面が観察できるように剃刀等で薄くスライスする。少なくとも図3に示すように導電性ローラの軸方向に3箇所、その円周方向に3箇所の合計9箇所の断面を電子顕微鏡にて観察撮影する。
図4に示すように各断面観察用サンプルを電子顕微鏡で撮影し、その画像をコンピュータ処理により二値化して樹脂粒子の円形度及び樹脂粒子の断面積を求める。円形度が0.85以下の異形樹脂粒子の断面積の総和と樹脂粒子全体(SEM画像中)の断面積の総和との関係から、樹脂粒子全体に占める異形粒子の体積比率を予想する。本発明では断面積の比率をもって、体積比率の値とし、異形粒子の占める割合が粒子全体の3〜30vol%である。
樹脂粒子の添加量は塗工後の表面層中の質量割合として、1〜80質量%が好ましい。少な過ぎると樹脂粒子を添加して帯電が安定する効果が得られないし、多過ぎると表層塗料の粘度の制御が難しくなり、均一に塗工することが難しくなるので、好ましくない。
また、異形粒子は予め球状粒子を粉砕したものを表面層用塗料に調製するとき、球状粒子と共に本発明の比率となるように配合してもよい。
更には、本発明者等は塗料の分散を制御することによって樹脂粒子の一部を砕き異形粒子とすることが可能であることを見出した。具体的な方法としては、分散処理を低シェアで長時間行う方法、及び、表面層用塗料の固形分を小さくして分散処理を行う方法がある。本発明者等はこれらの方法を合わせて行い異形粒子の混在比率を制御することに成功した。
また、本発明においては導電剤以外に絶縁性の無機粒子を添加してもよい。無機粒子としては、シリカや酸化チタン等を含有することが好ましい。シリカや酸化チタンの一次粒子径は0.5μm以下の微粒子であることが好ましい。
更に、本発明においては、表面処理されているシリカや酸化チタン等の微粉体を用いることが好ましい。これら表面処理を行ったシリカや酸化チタンを含有すると、高抵抗な帯電ローラを使用しても帯電電位の絶対値(飽和帯電電位)が大きくなり、かつ安定する。また、帯電電位の環境依存性も小さくなるので、DC帯電ローラ用として特に好ましい。
表面処理するには、シリカ微粉体や酸化チタン微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物で化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ微粉体をシランカップリング剤で処理する方法、あるいはシリコーンオイルの如き有機ケイ素化合物で処理する方法、あるいはシランカップリング剤で処理した後、或いはシランカップリング剤で処理すると同時にシリコーンオイルの如き有機ケイ素化合物で処理する方法等が挙げられる。
表面処理に使用されるシランカップリング剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシランメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン及び1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサンが挙げられる。
表面処理に使用される有機ケイ素化合物としては、シリコーンオイルが挙げられ、好ましいシリコーンオイルとしては、25℃における粘度がおよそ30〜1,000センチストークスのものが用いられる。例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル又はフッ素変性シリコーンオイルを用いることが好ましい。
シリコーンオイルによる表面処理の方法としては、例えば、シランカップリング剤で処理されたシリカ微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサーの如き混合機を用いて直接混合してもよいし、ベースとなるシリカヘシリコーンオイルを噴射する方法によってもよい。あるいは、適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散せしめた後、ベースのシリカ微粉体と混合し、溶剤を除去することによって表面処理してもよい。
無機粒子の添加量は塗工後の表層中の質量割合として、0.1〜30質量%が好ましい。少な過ぎると無機粒子を添加して帯電が安定する効果が得られないし、多過ぎると表層塗料の粘度の制御が難しくなり、均一に塗工することが難しくなるので、好ましくない。
表面層のバインダーとしては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等の樹脂が用いられる。具体的には、ウレタン樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂及びポリアミド樹脂等が挙げられる。ラクトン変性アクリルポリオールを、イソシアネートとで架橋したウレタン樹脂が特に好適に用いられる。
イソシアネートは、イソシアヌレート型の3量体とすることがより好ましい。分子の剛直な3量体が架橋点となり、表面層がより密に架橋することができ、導電性弾性層からの低分子成分の染み出し物質がローラ表面に染み出してくることをより一層効果的に防止することができる。
また、イソシアネートは、イソシアネート基がブロック剤によりブロックされたブロックイソシアネートとすることがより好ましい。この理由としては、上記イソシアネート基は反応し易く、表面層塗工用塗料を常温に長時間放置しておくと徐々に反応が進み、塗料の特性が変化してしまう恐れがあるからである。これに対してブロックイソシアネートは、活性なイソシアネート基がブロックされ、ブロック剤の解離温度までは反応しないので、塗料の取り扱いが容易になるというメリットがある。マスキングを行うブロック剤には、フェノールやクレゾール等のフェノール類、ε−カプロラクタムのラクタム類及びメチルエチルケトオキシム等のオキシム類等が挙げられるが、本発明の場合、解離温度が比較的低温のオキシム類が好ましい。
また、ラクトン変性アクリルポリオールのOH価は80KOHmg/g程度であることが好ましい。OH価が少ないと、イソシアネートで架橋され難くなり、それによって樹脂が柔らかくなり過ぎて感光体に貼り付き易くなる。OH基が大き過ぎると塗膜が硬くなり過ぎて衝撃を受けたときに割れ易くなる。
ラクトン変性アクリルポリオールは、分子鎖骨格がスチレンとアクリルの共重合体であり、適度な硬度と非汚染性を有する。また、末端に水酸基を有する変性したラクトン基が多数の架橋点となり、イソシアネートで密に架橋することが可能であり、導電性弾性層からの低分子成分の染み出しを防止することができる。
表面層に用いる塗膜のガラス転移温度Tgは粘弾性測定法で、ピーク温度が45℃以上が好ましく、特には50℃以上あることが好ましい。45℃未満であると、感光体と当接したまま長期間放置した場合に感光体に貼り付いてしまったり、あるいは帯電ローラ表面がトナー等によって汚れ易くなったりするという弊害が生じることがある。
ガラス転移温度Tgの測定方法は以下のようにする。まず、測定用の表面層塗膜サンプルは、ローラ状態から表面層を剥がす、あるいはPET樹脂シートやフッ素系樹脂シートの上に塗布して表面層塗膜を形成した後に剥がし、5mm×40mm程度の短冊形に切り出す。測定装置は、動的粘弾性測定装置RSA−II(レオメトリックス・サイエンティフィック・エフ・イー(株)製)を用い、また治具としてフィルムテンションフィクスチャーを用いる。測定は、−50℃〜150℃の温度範囲において測定周波数6.28rad/sec、昇温速度5℃/min.、初期歪0.07〜0.25%のオートテンションモードで行う。損失正接tanδの温度分散を測定し、ピーク温度をTgとする。
また特に限定はしないが、あまりTgが高過ぎても樹脂の可撓性がなくなり、塗膜が割れ易くなるので好ましくない。Tgは、架橋させるイソシアネートの比率又は量によって調節する。
ラクトン変性アクリルポリオール樹脂とイソシアネートとの配合比は、配合した塗料中のイソシアネートの中のNCO基の数(A)と、ラクトン変性アクリルポリオール樹脂中のOH基の数(B)との比、NCO/OH比=A/Bが0.1〜2.0が好ましく、特に好ましくは0.3〜1.5の範囲になるように調整する。
ラクトン変性アクリルポリオールをイソシアネートで架橋することにより、導電性弾性層からの低分子成分の染み出しを防止するとともに、帯電ローラ自体がトナー等に対して汚れ難く、かつ感光体を汚染しない表面層を形成することができる。
表面層を形成する樹脂塗料には、レべリング剤を混合することも好ましい。レべリング剤としては、例えばシリコーンオイルが挙げられる。
表面層に用いる導電剤としては、例えばアルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀等の金属系の粉体や繊維や、酸化チタン、酸化錫及び酸化亜鉛等の金属酸化物や、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化モリブデン、亜鉛、アルミニウム、金、銀、銅、クロム、コバルト、鉄、鉛、白金又はロジウム等を電解処理、スプレー塗工、混合振とうにより表面に付着させた粉体や、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、PAN系カーボン及びピッチ系カーボン等のカーボン粉が挙げられる。
表面層の樹脂に加えるこれらの導電剤の添加量は、表面層の樹脂の体積抵抗率が低温低湿環境(環境1:15℃/10%RH)、常温常湿環境(環境2:23℃/50%RH)、高温高湿環境(環境3:30℃/80%RH)で、中抵抗領域(体積抵抗率が1×106〜1×1015Ω・cm)になるように決める。
表面層の体積抵抗率がこれよりも小さいと、帯電ローラとして使用した場合、感光体にピンホールがある時にピンホールに過大な電流が流れて印加電圧が電圧降下してしまい、ピンホール部の長手方向全域が帯状の帯電不良となって画像に表れてしまうので好ましくない。逆に体積抵抗率が大き過ぎると、帯電ローラに電流が流れず、感光体を所定の電位に帯電することができず画像が所望する濃度にならないという弊害がある。また、ある程度の電位に帯電したとしても帯電能力が低いためゴースト画像等の弊害が表れてしまうので好ましくない。
表面層の体積抵抗は、ローラ状態から表面層を剥がし、5mm×5mm程度の短冊形に切り出す。両面に金属を蒸着して電極とガード電極とを作製し測定用サンプルを得る。あるいはアルミニウムシートの上に塗布して表面層塗膜を形成し、塗膜面に金属を蒸着して測定用サンプルを得る。得られた測定用サンプルについて微小電流計(ADVANTEST R8340A ULTRA HIGH RESISTANCE METER (株)アドバンテスト社製)を用いて200Vの電圧を印加して30秒後の電流を測定し、膜厚と電極面積とから計算して求める。
導電剤の添加量としては、塗工後の表面層に対して2〜80質量%が好ましく、特に好ましくは20〜60質量%である。導電剤の一次粒子径は、示差走査型電子顕微鏡を用いた観察で、1.0μm以下が好ましく、0.1μm以下がより好ましい。表面層塗料中で二次粒子が小さくなるまで公知の方法で分散する。二次粒子径は、遠心沈降式粒度分布計(CAPA700:堀場製作所製)による体積平均粒径MEDIANの値で、1.0μm以下が好ましく、特に好ましくは0.5μm以下に分散する。二次粒子径が大きいと表面層材料の抵抗の位置によるばらつきが大きくなり、帯電ムラの原因となるので好ましくない。
本発明に用いられる導電剤は、表面がカップリング剤で表面処理されていることが好ましい。上記カップリング剤は、同一分子内に加水分解可能な基と疎水基を有し、珪素、アルミニウム、チタン又はジルコニウム等の中心元素に結合している化合物で、この疎水基部分に長鎖アルキル基を有するものである。
加水分解基としては、例えば比較的親水性の高い、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基及びブトキシ基等のアルコキシ基等が用いられる。その他、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、これらの変性体及びハロゲン等も用いられる。また疎水基としては、その構造中に炭素原子が6個以上直鎖状に連なる構成を含むものであればよく、中心元素との結合形態においては、カルボン酸エステル、アルコキシ、スルホン酸エステル又は燐酸エステルを介して、あるいはダイレクトに結合していてもよい。更に、疎水基の構造中に、エーテル結合、エポキシ基及びアミノ基等の官能基を含んでもよい。カップリング剤処理することで導電剤表面への水分の吸着を抑え、より環境変動の小さい表面層材料を得ることができる。本発明に用いるカップリング剤としては、反応性が高いシランカップリング剤が好ましい。
シランカップリング剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン及びヘキシルトリメトキシシラン等が挙げられるが、特に導電剤の体積抵抗率の環境変動を小さく抑えることができるので、トリフルオロプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
表面層の成形方法としては、上記の表面層を構成する材料を、サンドミル、ペイントシェーカ、ダイノミル及びパールミル等のビーズを利用した従来公知の分散装置を用いて公知の方法により分散させ、得られた表面層形成用の樹脂塗料を、ディッピング法やスプレーコート法により、帯電部材の表面、本発明においては導電性弾性層の上に塗工する。表面層塗料の利用効率を考慮すると、ディッピング法が好ましい。
表面層の膜厚は、好ましくは1〜100μm、より好ましくは5〜50μmである。表面層の膜厚が100μmよりも大きいと、ローラの柔軟性が損なわれ、ローラ硬度が高くなり、感光ドラム表面やローラ表面にトナー等が融着する恐れがあるので好ましくない。また、表面層の膜厚が1μmより小さいと、導電性弾性層から低分子成分が染み出してくる恐れがあるので好ましくない。なお、膜厚は、ローラ断面を鋭利な刃物で切り出して、光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察することで測定できる。
表面層膜厚を調整するために表面層塗料の樹脂の固形分と塗工引き上げ速度を制御する。表面層塗料中の樹脂の固形分を大きくすると表面層の膜厚が大きくなり、固形分を小さくすると膜厚も小さくなる。表面層塗料においては、揮発する溶媒に対する樹脂の固形分を10〜40%に調整する。また、塗工引き上げ速度を大きくすると膜厚が大きくなり、速度を小さくすると膜厚も小さくなるので、塗工引き上げ速度を20〜5000mm/min.に調整する。
帯電部材の表面粗さとしては、好ましくはJIS B0601−1994による十点平均粗さRzで0.5μm以上20μm以下、Raで0.1μm以上5μm以下、より好ましくは十点平均粗さRzで1μm以上10μm以下、Raで0.4μm以上3μm以下である。表面粗さがあまり大き過ぎると導電性ローラ表面がトナー等で汚れ易くなる。また、凹凸が帯電ムラとして出力画像に表れ易い。一方、表面粗さが小さ過ぎると遅いプロセススピードでの帯電を安定させる効果が現れないので好ましくない。
平均粗さ(Ra、Rz)の測定方法としては、JIS B0601の表面粗さに基づき、小坂研究所製サーフコーダーSE3400にて、軸方向3箇所、その円周方向に2箇所の合計6点について各々測定し、その平均値をとる。本発明においては、接触針は先端半径2μmのダイヤモンドとし、測定スピード0.5mm/s、カットオフλc0.8mm、基準長さ0.8mm、評価長さ8.0mmとした。
上記範囲の表面粗さを有する導電性部材とするため、導電性弾性層の表面粗さ、表面層の膜厚、樹脂粒子の平均粒径と添加量を調整する。導電性弾性層の十点平均粗さはRzで15μm以下が好ましく、より好ましくは10μm以下とする。
また、帯電部材は、図7の様に、画像形成装置に用いた場合の使用状態と同様の応力で、感光体と同じ曲率の円相形円柱形金属に当接させて、使用状態と同様の回転速度で円柱形金属を回転させながら(本発明では軸の両端にそれぞれ5Nの力を加えて、直径30mmの金属円柱に当接させ、該金属円柱の周速45mm/sで回転させた)直流電圧−250Vを印加したときの帯電部材の電気抵抗が、30℃/80%RHの高温高湿の環境中では5×104Ω以上であり、15℃/10%の低温低湿の環境中では1×108Ω以下であることが好ましい。より好ましくは、30℃/80%RHの高温高湿の環境中では1×106Ω以上であり、15℃/10%の低温低湿環境中では6×107Ω以下であることが好ましい。
低温低湿の環境中の抵抗が上記に示した1×108Ωより小さいと、感光ドラムを所定の電位に帯電することができ、ゴースト画像がほとんど発生しないので好ましい。また、高温高湿環境中の抵抗が上記に示した5×104Ωより大きいと、感光体にピンホールがあったとしても印加電圧の電圧降下がほとんど起きないので、ハーフトーン画像上に横帯状の濃度ムラが現れることがないので好ましい。
電気抵抗を上記範囲とするためには、帯電部材の導電性弾性層の体積抵抗率を1×104〜1×107Ω・cmに、また表面層の体積抵抗率が1×108〜1×1015Ω・cmでかつ表面層の膜厚が5〜50μmになるように調整すればよい。
<2>画像形成装置
図5に本発明の導電性部材の一つの実施の形態である帯電ローラ6を用いた画像形成装置を示す。像担持体である感光体ドラム5は矢印の方向に回転しながら、帯電ローラ6によって一次帯電され、次に露光手段により露光11が照射され静電潜像が形成される。現像手段である現像ローラ4上の薄層になったトナーは、次いで感光体ドラム5の表面と接触することによって、静電潜像が現像され、可視化したトナー像が形成される。
現像されたトナー像は、転写部材である転写ローラ8と感光体ドラム5の間の現像部において、感光体ドラム5から被転写部材である印刷メディア7に転写され、その後定着部9で熱と圧力により定着され、永久画像となる。帯電前露光装置によって感光体ドラムに残った潜像に露光し、感光体ドラムの電位がアース電位に戻る。転写されなかった転写残トナーは、クリーニングブレード10で回収される。
現像ローラ4、トナー帯電ローラ29、帯電ローラ6、転写ローラ8のそれぞれには画像形成装置の電源18、19、20から、それぞれ電圧が印加されている。
ここで、帯電部材である帯電ローラ6には、電源19から直流電圧が印加される。印加電圧に直流電圧を用いることで、電源のコストを低く抑えることができるという利点がある。また、交流電圧を印加したときに発生する帯電音が発生しないという利点がある。
印加する直流電圧の絶対値は、空気の放電開始電圧と被帯電体表面(感光体表面)の一次帯電電位との和とすることが好ましい。通常空気の放電開始電圧は600〜700V程度、感光体表面の一次帯電電位は300〜800V程度なので、具体的な一次帯電電圧としては900〜1500Vとすることが好ましい。
また、カラー画像形成装置とする場合は、感光体ドラム、現像ローラ、転写ローラ、帯電ローラ、弾性規制ブレード、露光及びトナー容器等を後に示す図6のようにユニット化し、それぞれ4色分用意して、直列に配置することもできる。
<3>プロセスカートリッジ
本発明は、像担持体と、前記像担持体上に形成された静電潜像にトナーを転移させて可視化しトナー像を形成させる現像手段と、前記被転写部材にトナー像が転写された後に前記像担持体上に残留したトナーを除去するクリーニング手段と、から選ばれる1つ又は2つ以上が、帯電部材と一体に支持され、画像形成装置から着脱自在に構成されているプロセスカートリッジである。
本発明のプロセスカートリッジは、例えば、図6に示すように、感光体ドラム5や帯電ローラ6、現像ローラ4及びクリーニングブレード10等が一体に支持された、画像形成装置の本体と脱着自在な構成である。
電子写真プロセスカートリッジが使用される前には、トナーシール27で現像ローラ4とトナーの接触を避けておくことが好ましい。
以下に本発明の具体的な実施例について説明する。
(実施例1)
<帯電ローラの作製>
(1)導電性弾性層の作製
エピクロルヒドリンゴム(エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体)100質量部、充填剤としての炭酸カルシウム30質量部、滑剤としてのステアリン酸亜鉛1質量部、研磨性改善のための補強材としての着色グレードカーボン5質量部、酸化亜鉛5質量部、可塑剤として、セバシン酸とプロピレングリコールの共重合体(分子量8000)を5質量部、下記式で示される過塩素酸4級アンモニウム塩2質量部、
老化防止剤としての2−メルカプトベンズイミダゾール1質量部を密閉型ミキサーで10分間混練し、更に、加硫促進剤としてのDM(2−ベンゾチアゾリルジサルファイド)1質量部、加硫促進剤としてのTS(テトラメチルチウラムモノサルファイド)0.5質量部、加硫剤としての硫黄1質量部を加えて、更にオープンロールで5分間混練した。
これをゴム押し出し機を使用して、外径13.5mm、内径5.5mmの円筒形に押し出し、250mmの長さに裁断し、蒸気加硫缶を使用して、160℃の水蒸気中で40分間一次加硫し、導電性弾性層ゴム一次加硫チューブを得た。
次に、直径6mm、長さ256mmの円柱形の導電性支持体(鋼製、表面はニッケルメッキ)の円柱面の軸方向中央部231mmに金属とゴムとの熱硬化性接着剤を塗布し、80℃で10分間乾燥した。この導電性支持体を、前記導電性弾性層ゴム一次加硫チューブに挿入し、その後、電気オーブン中で150℃で1時間、加熱処理を行い、未研磨層ローラを得た。
この未研磨層ローラのゴム部分の両端部を突っ切り、ゴム部分の長さを231mmとした後、ゴム部分を回転砥石で研磨し、端部直径12.00mm、中央部直径12.15mmのクラウン形状で表面の十点平均粗さRz6μm、振れ25μmの導電性弾性層を有するローラを得た。
導電性弾性層を有するローラをN/N(常温常湿:23℃/55%RH)環境に24時間以上放置した後、導電性弾性体基層を有する帯電ローラの抵抗を測定したところ、3.0×105Ωであった。
(2)表面層の作製
導電性酸化スズ粉体50質量部に、トリフルオロプロピルトリメトキシシランの1%イソプロピルアルコール溶液500質量部と平均粒径0.8mmのガラスビーズ300質量部を加え、ペイントシェーカで70時間分散後、分散液を500メッシュの網で濾過し、次にこの溶液をナウターミキサーで攪拌しながら100℃の湯浴で暖めてアルコールを揮発させ乾燥し、表面にシランカップリング剤を付与し表面処理導電性酸化スズ粉体を得た。
また、MIBK(メチルイソブチルケトン)でラクトン変性アクリルポリオールを溶解希釈し、固形分14質量%の溶液とした。このアクリルポリオール溶液200質量部に対して前記表面処理導電性酸化スズ粉体を40質量部、シリコーンオイルを0.05質量部、ヘキサメチレンジシラザンとジメチルシリコーンで表面処理した微粒子シリカ(一次粒径0.015μm)1.0質量部、平均粒径8μmの架橋ポリメチルメタクリレート15質量部を配合し、サンドミルを使い12時間分散した。なお、分散メディアには直径0.8mmのガラスビーズを用いた。
この分散液370質量部にイソホロンジイソシアネートのブロックタイプのイソシアヌレート型3量体を21質量部とヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型3量体を13質量部を混合し、ボールミルで1時間攪拌し、最後に200メッシュの網で溶液を濾過して表面層塗料を得た。塗料の粘度は23℃の環境下で7.0mPa・sであった。
前記表面層塗料をディッピンク法により前記導電性弾性層を有する帯電ローラの表面に塗工した。引き上げ速度400mm/minで塗工し、15分間風乾した後、ローラの塗工時の軸方向を反転してもう一度引き上げ速度400mm/minで2回目の塗工を行い、もう一度15分間風乾した後、90℃で30分間、160℃で30分間乾燥した。膜厚は15μm、表面層の体積抵抗率は2.5×1014Ω・cmであった。こうして完成したローラを実施例1の帯電ローラとした。
<感光体>
感光体はアルミニウムシリンダーに膜厚16μmのOPC層をコートした反転現像方式の感光ドラムであり、最外層は変性ポリカーボネートをバインダー樹脂とする電荷輸送層である。
<現像剤;トナー>
トナーは、ワックスを中心に荷電制御剤と色素等を含むスチレンとブチルアクリレートのランダムコポリマーを重合させ、更に表面にポリエステル薄層を重合させシリカ微粒子等を外添した、ガラス転移温度63℃、質量平均粒径6μmの重合トナーである。
<帯電ローラの評価>
(1)過酷保管試験(Cセット跡画像評価)
上記のようにして得られた帯電ローラを用いて、以下に示すようにして評価を行った。
図6に示すようなプロセスカートリッジの一次帯電の位置に本実施例の帯電ローラを取り付け、40℃/95%RHに設定した恒温恒湿槽にて、過酷保管試験を行った。過酷保管期間が2週間、1ヶ月経過した時点で、プロセスカートリッジを恒温恒湿槽から取り出した。
帯電ローラは感光ドラムと接触状態にあるため長期に亘り、その接触状態が続くと、帯電ローラの当接位置が圧縮変形してしまう。このような帯電ローラで画像出しを行うと、ローラ周期毎に帯状の画像不良(Cセット跡)が発生する。
本実施例では電子写真式レーザプリンタを用いて、常温常湿環境(環境2:23℃/50%RH)で、このCセット跡の画像評価を行った。
また、電子写真式レーザプリンタはA4縦出力用のマシンで、記録メディアの出力スピードは、100mm/secと30mm/secの2種類、画像の解像度は600dpiである。
得られた画像を目視にて評価した。このCセット跡が全く発生しなかったものをランクA、ごく僅かに発生しているレベルのものをランクB、少し発生しているがそれほど目立たないレベルのものをランクC、Cセット跡が目立つレベルのものをランクDとした。結果を表1に示した。
(2)連続複数枚数画像出し耐久試験
上記のようにして得られた帯電ローラを用いて、以下に示すようにして評価を行った。
本発明の評価で使用した電子写真式レーザプリンタはA4縦出力用のマシンで、記録メディアの出力スピードは、100mm/secと30mm/secの2種類、画像の解像度は600dpiである。
一次帯電は、上記で得られた実施例1の帯電ローラを用い、直流電圧−1100Vを帯電ローラに印加した。
低温低湿環境(環境1:15℃/10%RH)、常温常湿環境(環境2:23℃/50%RH)、高温高湿環境(環境3:30℃/80%RH)において、印字濃度4%画像(感光体の回転方向と垂直方向に幅2ドット、間隔50ドットの横線を描くような画像)をプロセススピード100mm/secで連続複数枚の耐久試験を行い、各環境で、初期、5000枚画像出し後及び10,000枚画像出し後に画像チェックのためにハーフトーン(感光体の回転方向と垂直方向に幅1ドット、間隔2ドットの横線を描くような画像)画像を出力した。なお、画像チェックは2種類のプロセススピードで画像を出力し、評価を行った。
また、得られた画像を目視にて、帯電ムラが原因で発生する細かいスジ状の濃度ムラ(横スジ)を評価した。この横スジが全く発生しなかったものをランクA、ごく僅かに発生しているレベルのものをランクB、少し発生しているがそれほど目立たないレベルのものをランクC、横スジが目立つレベルのものをランクDとした。結果を表2に示した。
なお、5,000枚及び10,000枚画像出し後の画像チェックは、5,000枚及び10,000枚画像出しの直後と、その12時間後に行った(以後、直後の画像チェックをラスト画像チェック、12時間後を朝一画像チェックと呼ぶ)。
更に、各環境で、帯電ローラ表面の汚れ(トナーや外添剤の付着)が原因で発生する帯電ローラ周期毎の濃度ムラを目視にて評価した。ローラ周期毎の濃度ムラが全く発生しないものをランクA、ごく僅かに発生しているものをランクB、少し発生しているが目立たないレベルのものをランクC、非常にムラが目立つレベルのものをランクDとした。
(3)帯電ローラの抵抗測定
複数枚画出し耐久試験を行う前に帯電ローラの抵抗を常温常湿環境(環境2)下で測定した。抵抗の測定方法としては、まず図7(a)の様に、帯電ローラの両端の軸1を荷重のかかった軸受け33aと33bとにより感光体と同じ曲率の円柱形金属32に対して帯電ローラが平行になるように当接させる。次に図7(b)の様に、不図示のモータにより円柱形金属32を帯電ローラ使用状態と同様の回転速度で回転させ、ローラを円柱形金属に当接させたまま従動回転させながら安定化電源34から直流電圧−250Vを印加したときに帯電ローラに流れる電流を電流計35で測定して帯電ローラの抵抗を計算した(本発明では軸の両端にそれぞれ5Nの力を加えて、直径φ30mmの金属円柱に当接させ、該金属円柱の周速45mm/sで回転させた)。
なお、実施例1の帯電ローラの抵抗値は、1.1×105Ωであった。また、異形粒子の比率は10%であった。
実施例1の帯電ローラは過酷保管試験においても良好な画像が得られた。また、高温高湿環境でも低温低湿環境でも良好な画像を2種類のプロセススピードで出力し、更に耐久後も良好な画像を出力した。
(実施例2〜4)
表面層の塗料調製において、アクリルポリオール溶液の固形分をそれぞれ10、12、16%に変更し、その他の添加剤もアクリルポリオールの固形分比率に合わせて添加量を調整した以外は、実施例1の帯電部材と同様にして実施例2〜4の帯電部材を得た。過酷保管後も良好な画像が得られた。また、初期、耐久後の画像とも良好な画像が得られた。
なお、帯電ローラの抵抗値はそれぞれ、実施例2;1.6×105Ω、実施例3;3×105Ω、実施例4;9×104Ωであった。また、異形粒子の比率は、実施例2;30%、実施例3;18%、実施例4;3%であった。
(実施例5)
表面層に添加する樹脂粒子を変更した。アクリル樹脂の塊をグラインダーで粉砕し、次に液体窒素温度で更に粉砕し、風圧で分級することにより、平均粒径5μmかつ、平均円形度0.7の異形樹脂粒子を予め得た。表面層の塗料調製において、球状粒子と粉砕して得られた異形粒子の配合比率を85vol%/15vol%となるように混合配合した以外は、実施例1の帯電部材と同様にして実施例5の帯電部材を得た。過酷保管後も良好な画像が得られた。また、初期、耐久後の画像とも良好な画像が得られた。
なお、塗料調整時のアクリルポリオールの固形分は20%とした。また、帯電ローラの抵抗値は、5×105Ωであった。また、異形粒子の比率は、15%であった。
(実施例6〜9)
表面層に添加する樹脂粒子の平均粒径をそれぞれ、3μm、5μm、15μm、20μmに変更した以外は、実施例1の帯電部材と同様にして実施例6〜9の帯電部材を得た。実施例7、8は初期、耐久後の画像とも実用上は問題なかった。実施例6は耐久試験の朝一チェックにおいて画像に微小な横スジが見られたが、実用に耐えうる画像であった。また、実施例9は耐久後半に画像にローラ周期毎の汚れに起因した画像不良が少し発生していたが、実用に耐えうる画像であった。
なお、帯電ローラの抵抗値は、実施例6;1.5×105Ω、実施例7;2.0×105Ω、実施例8;6.5×105Ω、実施例9;1.0×106Ωであった。また、異形粒子の比率は、実施例6;8%、実施例7;9%、実施例8;12%、実施例9;11%であった。
(実施例10)
実施例1の架橋ポリメチルメタクリレートを架橋ウレタン樹脂粒子に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例10の帯電部材を得た。初期、耐久後ともに良好な帯電特性を示した。
なお、帯電ローラの抵抗値は、1.5×105Ωであった。また、異形粒子の比率は5%であった。
(実施例11)
実施例1のメチルメタクリレートをブチルメタクリレートに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例11の帯電部材を得た。初期、耐久後ともに良好な帯電特性を示した。
なお、帯電ローラの抵抗値は、1.2×105Ωであった。また、異形粒子の比率は8%であった。
(比較例1)
樹脂粒子を添加しなかった以外は、実施例1の帯電ローラと同様にして比較例1の帯電ローラを得た。初期から横スジの帯電不良が発生し、実用に足る帯電部材は得られなかった。
なお、帯電ローラの抵抗値は、5.0×105Ωであった。
(比較例2)
表面層に加える樹脂粒子を、変更した。アクリル樹脂の塊をグラインダーで粉砕し、次に液体窒素温度で更に粉砕し、風圧で分級することにより、平均粒径15μmかつ、平均円形度0.65の異形樹脂粒子を予め得た。この異形粒子のみを樹脂粒子として使用した以外は、実施例1の帯電部材と同様にして比較例2の帯電部材を得た。10,000枚耐久後の画像上に汚れに起因した画像不良がほぼ全面に見られた。
なお、帯電ローラの抵抗値は、3.0×105Ωであった。また、異形粒子の比率は90%であった。
以上の実施例と比較例の結果を表1と表2にまとめる。