JP2005344227A - 高強度複合繊維およびその製造方法 - Google Patents

高強度複合繊維およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2005344227A
JP2005344227A JP2004164368A JP2004164368A JP2005344227A JP 2005344227 A JP2005344227 A JP 2005344227A JP 2004164368 A JP2004164368 A JP 2004164368A JP 2004164368 A JP2004164368 A JP 2004164368A JP 2005344227 A JP2005344227 A JP 2005344227A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fiber
polyester
carbon nanotubes
spinning
kneading
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2004164368A
Other languages
English (en)
Inventor
Yutaka Ogoshi
豊 大越
Toshinori Matsuyama
俊紀 松山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Shinshu University NUC
Original Assignee
Shinshu University NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Shinshu University NUC filed Critical Shinshu University NUC
Priority to JP2004164368A priority Critical patent/JP2005344227A/ja
Publication of JP2005344227A publication Critical patent/JP2005344227A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Artificial Filaments (AREA)

Abstract

【課題】極細で高強度の複合繊維を提供すること。
【解決手段】本発明の高強度複合繊維は、ポリエチレンテレフタレートおよびカーボンナノチューブの両物質を含有し、両物質の総重量に占めるカーボンナノチューブの重量の割合が2%以上10%以下のものである。また、本発明の高強度複合繊維の製造方法は、ポリエチレンテレフタレートとカーボンナノチューブとを混合する混合工程と、混合工程で得られた素材を混練する混練工程と、混練工程で得られた材料を紡糸する紡糸工程と、紡糸工程で得られた繊維に、レーザー媒体が二酸化炭素であるレーザー光を照射して加熱しながら、この繊維を延伸する加熱延伸工程と、を有するものである。
【選択図】なし

Description

本発明は、高強度の複合繊維およびその製造方法に関する。
ポリエステルは、耐薬品性、耐熱性、高強度、高融点および高弾性等の特性を有し、食品、飲料または洗剤などの各種容器、衣料および写真フィルム等の原材料として、従来より広く使用されている。そして、高強度のポリエステルを得る方法として、ポリエステル繊維を加熱しながら延伸する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
一方、グラファイト六角網平面を丸めた形態のチューブ状物質であるカーボンナノチューブ(Carbon NanoTube:CNT)は、固体電解質電池、燃料電池あるいは蓄電池等の電極材料、半導体デバイス中の導電性材料、樹脂と混合して潤滑性あるいは導電性等を発現させる充填材料(フィラー)、光ファイバー等の光伝送媒体材料、触媒等の担持材料または走査型プローブ顕微鏡等の探針材料などの広範囲な応用が期待されている。
特開平6−207312号公報(要約、第20段落等)
ポリエステル繊維が延伸されて得られたポリエステル延伸繊維は、引っ張り強度が400MPa程度であり、通常の衣料用繊維として充分使用可能である。しかしながら、更に極細で高強度の繊維の開発が要請されている。
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、極細で高強度の繊維を提供することを目的とする。
上述の目的を達成するため、本発明の高強度複合繊維は、ポリエステルとカーボンナノチューブとを含有するものである。このため、極細で高強度の繊維を得ることができる。
ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートである構成を採用することができる。また、カーボンナノチューブは、気相成長炭素繊維である構成を採用することができる。この構成によって、比較的汎用な物質を用いて高強度の繊維を得ることができる。
他の発明の高強度複合繊維は、ポリエチレンテレフタレートおよびカーボンナノチューブの両物質を含有し、両物質の総重量に占めるカーボンナノチューブの重量の割合が2%以上10%以下のものである。
ポリエチレンテレフタレートおよびカーボンナノチューブの総重量に占めるカーボンナノチューブの重量の割合が2%以上であるため、樹脂状態のポリエチレンテレフタレートとカーボンナノチューブとを含有する材料を繊維化するのが容易となる。また、ポリエチレンテレフタレートおよびカーボンナノチューブの総重量に占めるカーボンナノチューブの重量の割合が10%以下であるため、繊維の製造工程において、カーボンナノチューブがポリエチレンテレフタレート中に分散することが可能である。
本発明の高強度複合繊維の製造方法は、ポリエステルとカーボンナノチューブとを混合する混合工程と、混合工程で得られた材料を紡糸する紡糸工程と、紡糸工程で得られた繊維を加熱しながら延伸する加熱延伸工程と、を有するものである。このため、極細で高強度の繊維を得ることができる。
他発明の高強度複合繊維の製造方法は、ポリエステルとカーボンナノチューブとを混合する混合工程と、混合工程で得られた素材を混練する混練工程と、混練工程で得られた材料を紡糸する紡糸工程と、紡糸工程で得られた繊維を加熱しながら延伸する加熱延伸工程と、を有するものである。このため、極細で高強度の繊維を得ることができる。
レーザー光をポリエステルとカーボンナノチューブとを含有する繊維に照射して、加熱延伸工程を行う方法を採用することができる。レーザー光は平行度が高いため、レンズ等による集束が容易である。このため、ポリエステルとカーボンナノチューブとを含有する繊維が細くても、電磁波を集中させて照射することが可能である。また、レーザー光は大きな出力が得られるため、ポリエステルとカーボンナノチューブとを含有する繊維を効率良く加熱することができる。
レーザー光を発生させるレーザー媒体は、二酸化炭素である方法を採用することができる。二酸化炭素から発振される電磁波の波長は、ポリエステルが適度の吸収を示す波長帯と重なっている。このため、ポリエステルとカーボンナノチューブとを含有する繊維を効率良く加熱することができる。
加熱延伸工程は、複数の延伸する工程を有していても良い。加熱延伸工程が複数の延伸する工程を有する場合は、各延伸する工程における延伸倍率の積が、総延伸倍率となる。なお、加熱延伸工程が1回の延伸する工程からなる場合には、総延伸倍率は、この1回の延伸する工程における延伸倍率となる。総延伸倍率を4倍以上として加熱延伸工程を行うことが好ましい。総延伸倍率を4倍以上として加熱延伸工程を行うことによって、より高強度の繊維を得ることができる。
さらに、加熱延伸工程は、延伸倍率を4倍以上6倍以下として延伸する工程を有することが好ましい。この方法によって、極細で高強度の繊維を得ることができる。
本発明によれば、極細で高強度の繊維が得られる。
以下、本発明の実施の形態に係る高強度複合繊維およびその製造方法、並びに、高強度複合繊維の製造工程で使用される各種装置について説明する。
まず、本発明の実施の形態に係る高強度複合繊維の構成成分であるポリエステルおよびカーボンナノチューブについて説明する。
ポリエステルとは、単量体(モノマー)同士の結合部分が、主にエステル結合によって構成されている高分子のことを言う。本発明で使用されるポリエステルについては、その種類は特に限定されない。例えば、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート(PolyButhylene Succinate:PBS)およびポリカプロラクトン(PolyCaproLactone:PCL)などの生分解特性を有する脂肪族ポリエステル、または、ポリエチレンテレフタレート(PolyEthylene Terephthalate:PET)、ポリプロピレンテレフタレート(polypropylene terephthalate)およびポリブチレンテレフタレート(polybuthylene terephthalate)などの難分解特性を有する芳香族ポリエステル等が使用可能である。また、ポリエステルは、基本構造となっているアルコールおよび酸以外の成分、例えば、グリセリンなどのアルコール、または、イソフタル酸などの酸等を含む共重合体であっても良い。
カーボンナノチューブ(Carbon NanoTube:CNT)とは、グラファイト六角網平面を丸めた形態のチューブ状物質のことを言う。本発明で使用されるカーボンナノチューブについては、その種類は特に限定されない。すなわち、カーボンナノチューブの構造は、多層であっても単層であっても良いし、カーボンナノチューブの製法は、アーク放電法、レーザー昇華法または化学気相析出(Chemical Vapor Deposition:CVD)法等のいかなる製法であっても良い。
次に、図1から図3を参照しながら、本発明の実施の形態に係る高強度複合繊維の製造方法について説明する。
本発明の実施の形態に係る高強度複合繊維の製造方法は、ポリエステルとカーボンナノチューブとを混合する混合工程と、混合工程で得られた素材を混練する混練工程と、混練工程で得られた材料を紡糸する紡糸工程と、紡糸工程で得られた繊維を加熱しながら延伸する加熱延伸工程と、を有する。
混合工程は、混合撹拌機を用いて以下のように行われる。まず、ポリエステルとカーボンナノチューブとを、供給口から混合撹拌機の混合槽に供給する。次に、混合槽内を加熱してポリエステルを溶融させた状態で、混合槽内の撹拌羽根を回転させて、ポリエステルとカーボンナノチューブとをよく撹拌する。
次に、排出口から、ポリエステルとカーボンナノチューブとが混合された素材を取り出す。なお、混合工程で使用される混合装置は、その種類が限定されない。また、ポリエステルとカーボンナノチューブとを含有する素材には、染料もしくは顔料等の着色剤、紡糸するときの成形性を向上させる安定剤、混合槽内での撹拌性を向上させる増粘剤またはポリエステル中にカーボンナノチューブを均一に分散させるための分散剤等の各種添加剤が添加されていても良い。
ポリエステル中にカーボンナノチューブを均一に分散させるため、予めカーボンナノチューブに、その表面の親水性を向上させる処理を施しておいても良い。カーボンナノチューブの表面の親水性を向上させる処理としては、サイジングまたは酸などを用いた表面酸化処理等が挙げられる。
ポリエステルとしてポリエチレンテレフタレートを用いた場合、ポリエチレンテレフタレートおよびカーボンナノチューブの総重量に占めるカーボンナノチューブの重量の割合は、2%以上10%以下であることが好ましい。ポリエチレンテレフタレートおよびカーボンナノチューブの総重量に占めるカーボンナノチューブの重量の割合が2%以上であれば、樹脂状態のポリエチレンテレフタレートとカーボンナノチューブとを含有する材料を繊維化するのが容易となる。また、ポリエチレンテレフタレートおよびカーボンナノチューブの総重量に占めるカーボンナノチューブの重量の割合が10%以下であれば、繊維の製造工程において、カーボンナノチューブがポリエチレンテレフタレート中に分散することが可能である。
図1は、混練機である2軸押出機10を示す断面図である。この2軸押出機10は、混練容器12と、この混練容器12の周囲に配置された複数のヒータ14と、素材を混練容器12内に供給する供給口16と、素材を混練すると共に、螺旋状の溝を有する第1スクリュー20および第2スクリュー22と、駆動源(不図示)からの駆動力を受けて第1スクリュー20および第2スクリュー22をそれぞれ回転させる第1回転軸24および第2回転軸26と、混練されて得られた材料の排出口となる開口径が数mm程度のノズル28とを備えている。第1スクリュー20および第2スクリュー22は、供給部および排出部と、混練部とで異なる形状を有している。混練部では、混練むらが生じないように、第1スクリューおよび第2スクリューの形状が非対称になっている。
混練工程は、この2軸押出機10を用いて以下のように行われる。まず、混合工程で得られたポリエステルとカーボンナノチューブとを含有する素材が、供給口16から混練容器12内に供給される。なお、混合工程と同様に、各種添加剤を添加しても良い。一方、混練容器12は、ヒータ14によって、ポリエステルとカーボンナノチューブとを含有する素材が溶融する温度以上に維持される。このため、ポリエステルとカーボンナノチューブとを含有する素材は、溶融して混練され易い状態になる。
次に、第1回転軸24および第2回転軸26が、同じ方向に回転される。このため、溶融したポリエステルとカーボンナノチューブとを含有する素材は、第1スクリュー20および第2スクリュー22の溝部分に沿って、供給部から混練部に進行する。なお、第1回転軸24は、第2回転軸26と逆の方向に回転されても良い。次に、混練部に進行したポリエステルとカーボンナノチューブとを含有する素材は、排出部に進行しながら均一に混練される。なお、混練部の距離を混練距離と言う。そして、混練されたポリエステルとカーボンナノチューブとを含有する素材は、細長い形状のポリエステルとカーボンナノチューブとを含有する材料となって、ノズル28から押し出される。なお、混合工程または紡糸工程で、カーボンナノチューブがポリエステル中に均一に分散すれば、混練工程を省略することができる。
図2は、紡糸機である1軸押出機40を示す断面図である。この1軸押出機40は、紡糸容器42と、この紡糸容器42の周囲に配置された複数のヒータ44と、材料を紡糸容器42内に供給する供給口44と、螺旋状の溝を有するスクリュー46と、駆動源(不図示)からの駆動力を受けてスクリューを回転させる回転軸48と、材料を糸状にして排出するノズル50とを備えている。
紡糸工程は、この1軸押出機40を用いて以下のように行われる。まず、混練工程で得られたポリエステルとカーボンナノチューブとを含有する材料が、供給口44から紡糸容器42内に供給される。一方、紡糸容器42は、ヒータ44によって、ポリエステルとカーボンナノチューブとを含有する材料が溶融する温度以上に維持される。このため、ポリエステルとカーボンナノチューブとを含有する材料は、溶融して糸状に成形され易い状態になる。
次に、回転軸48が回転され、溶融したポリエステルとカーボンナノチューブとを含有する材料は、スクリュー46の溝部分に沿って、ノズル50の方向に進行する。そして、ポリエステルとカーボンナノチューブとを含有する材料は、ポリエステルとカーボンナノチューブとを含有する繊維となって、ノズル50から押し出される。押し出された繊維は、巻き取り機等に巻き取られる。
なお、予めカーボンナノチューブを多く含み、かつ、ポリエステル中に均一に分散された材料を作製しておき、この材料とポリエステルとを紡糸機に供給して、紡糸機で混練しながら紡糸することによって、ポリエステルとカーボンナノチューブとを含有する繊維を作製することもできる。この方法によれば、ポリエステルとカーボンナノチューブとを混練する際に、ポリエステルが熱分解して複合繊維の強度が低下することを抑えることができる。
図3は、ポリエステルとカーボンナノチューブとを含有する繊維を加熱しながら延伸する延伸装置60を示す模式図である。この延伸装置60は、レーザー(Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation:LASER)光源62と、レンズ64と、遮光板66と、送り出しローラ68と、引き取りローラ70とを備えている。なお、延伸前の繊維と延伸後の繊維とを区別するため、延伸前の繊維を「未延伸繊維」と、延伸後の繊維を「延伸繊維」と言うことがある。
レーザー光源62は、ポリエステルとカーボンナノチューブとを含有する未延伸繊維に照射して加熱を行うレーザー光の発生源である。レーザー光は平行度が高いため、レンズ64等による集束が容易である。このため、未延伸繊維が細くても、電磁波を集中させて照射することが可能である。また、レーザー光は大きな出力が得られるため、未延伸繊維を効率良く加熱することができる。ただし、ポリエステルとカーボンナノチューブとを含有する未延伸繊維の加熱は、レーザー光を照射する方法に限定されない。レーザー光の照射以外の加熱としては、加熱気体の吹き付け、加熱炉内での加熱または2つの加熱ローラ間の通過等が挙げられる。
レーザー光源62は、対向配置された2つの平面鏡と、その間に充填されたレーザー媒体としての二酸化炭素(CO)を備える共振器(いずれも不図示)を有している。レーザー媒体としての二酸化炭素を使用する理由は、二酸化炭素から発振される電磁波の波長が9μmから12μmであり、ポリエステルが強い吸収を示す波長帯と重なっているからである。
なお、本発明の実施の形態で用いられるレーザー光源62では、レーザー媒体として二酸化炭素を使用しているが、これに代えて、ルビーまたはガラスなどの固体、アルゴン(Ar)もしくはヘリウム(He)−ネオン(Ne)の混合物などの気体、有機金属化合物のアルコール溶液などの液体またはガリウム−ヒ素(GaAs)などの半導体をレーザー媒体として使用しても良い。
レンズ64は、レーザー光源62から発せられたレーザー光を屈折させて、焦点72で集束させる。ポリエステルとカーボンナノチューブとを含有する材料にレーザー光を照射する位置は、焦点72からわずかにずらした位置としている。これは、未延伸繊維自体の太さ、および、未延伸繊維が延伸装置60を移動するときの「ぶれ」等を考慮したためである。なお、未延伸繊維にレーザー光を照射する位置は、図3に示すように、焦点72より遮光板66側であっても良いし、焦点72よりレーザー光源62側であっても良い。また、レンズ64は可動であり、レンズ64を動かすことによって、未延伸繊維に照射するレーザー光の径を調整することができる。
遮光板66は、未延伸繊維に吸収されなかったレーザー光を吸収する部材である。遮光板66を配置することによって、レーザー光が延伸装置60の外部に漏洩して作業者に危険を及ぼすのを防ぐことができる。遮光板66は、レンガから形成されている。遮光板66は、レンガ以外にも、照射されるレーザー光の波長に応じて、アクリル樹脂もしくはポリカーボネート等の樹脂材、または、樹脂を挟んだ複層ガラス等から形成されていても良い。
送り出しローラ68は、未延伸繊維を送り出すためのローラである。引き取りローラ70は、レーザー光を照射されながら延伸された延伸繊維を巻き取るためのローラである。送り出しローラ68から送り出される未延伸繊維の送り出し速度と、引き取りローラ70によって引き取られる延伸繊維の引き取り速度とを調整して、未延伸繊維の延伸倍率を設定している。
加熱延伸工程は、延伸装置60を用いて以下のように行われる。まず、未延伸繊維が巻回されている送り出しローラ68から未延伸繊維を引き出して、引き取りローラ70に固定する。次に、送り出しローラ68および引き取りローラ70を延伸装置に設置する。なお、送り出しローラ68から未延伸繊維を引き出して引き取りローラ70に固定する工程と、送り出しローラ68および引き取りローラ70を延伸装置60に設置する工程との順序を反対にしても良い。
次に、レーザー光源62を作動させて、レーザー光を未延伸繊維に照射する。この一方で、送り出しローラ68および引き取りローラ70を同じ方向に回転させる。こうして、未延伸繊維にレーザー光を照射しながら延伸して得られる延伸繊維が、引き取りローラ70に巻き取られる。
なお、加熱延伸工程は、複数の延伸する工程を有していても良い。加熱延伸工程が複数の延伸する工程を有する場合は、各延伸する工程における延伸倍率の積が、総延伸倍率となる。加熱延伸工程が1回の延伸する工程からなる場合には、総延伸倍率は、この1回の延伸する工程における延伸倍率となる。
以下の手順に従って、本発明の実施の形態に係る延伸繊維を製造した(試料1、2、3、4、9、10)。なお、比較例として、カーボンナノチューブを含有しないポリエチレンテレフタレートについても、以下の実施例と同様の手順に従って延伸繊維および未延伸繊維を製造した(試料5、6、7、8)。
なお、本実施例では、ポリエステルとして、汎用であるポリエチレンテレフタレートを使用した。また、カーボンナノチューブとして、1100〜1200℃の温度条件下で、ベンゼンまたはトルエン等の炭化水素を、Fe、CoまたはNi等の触媒存在下で熱分解する触媒合成法で合成された気相成長炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber:VGCF)を使用した。
まず、混合撹拌機(株式会社ダルトンのヘンシェルミキサー:5DML−03−r型)の混合槽内に、ポリエチレンテレフタレートペレット(数平均分子量:M=18,996、重量平均分子量:M=84,643)と、VGCF(昭和電工株式会社製)とを供給し、撹拌温度:200℃、撹拌時間:90分の条件で撹拌して混合した。なお、ポリエチレンテレフタレートおよびVGCFの総重量に占めるVGCFの重量の割合は、2%および10%の2種類とした。
次に、この混合工程で得られたポリエチレンテレフタレートとVGCFを含有する素材を、混練機である2軸押出機(株式会社テクノベルのKZW15−4560MG−SUS−MC型)の混練容器内に供給し、各種の混練距離、混練温度(混練機のノズルヘッドの温度)および第1、第2スクリュー回転速度の条件下で混練した。この各種条件および混練工程で得られる細長い材料への成形性の評価を表1に示す。
Figure 2005344227
表1に示すように、混練工程で得られる細長い材料への成形性は、ポリエチレンテレフタレートとVGCFを含有する素材では良好であった。なお、VGCFを10wt%含有する素材(試料4)では、VGCFのポリエチレンテレフタレート中への均一分散性を向上させるため、混練距離を長くしてある。
一方、ポリエチレンテレフタレートのみからなる素材では、細長い材料への加工が困難(試料5、6、7)または不能(試料8)であった。この結果から、ポリエチレンテレフタレートにVGCFを添加することによって、細長い材料への成形性が向上することが分かった。このことから、ポリエチレンテレフタレートにVGCFを添加することによって、繊維の生産性も向上すると考えられる。
次に、この混練工程で得られたポリエチレンテレフタレートとVGCFを含有する材料を、紡糸機である1軸押出機(株式会社ムサシノキカイのNT−169129型)の紡糸容器内に供給し、各種のノズルヘッド温度、ノズルヘッド圧力、スクリュー回転速度および繊維吐出量の条件下で紡糸した。この各種条件を表2に示す。表2の試料は、表1の試料の同一の番号に対応している。
なお、試料9および試料10は、混練工程で得られた試料4のVGCFを10wt%含有する材料と、VGCFを含有しないポリエチレンテレフタレートとを、紡糸機に供給し、紡糸機で混練しながら紡糸したものである。試料9および試料10では、得られる繊維のVGCFの含有量が2wt%となるように、試料4の材料とポリエチレンテレフタレートとの重量比を設定した。
Figure 2005344227
次に、延伸装置を用いて、この紡糸工程で得られたポリエチレンテレフタレートとVGCFを含有する未延伸繊維に、レーザー光を照射して延伸した。延伸装置は、送り出しローラと引き取りローラとの距離を1.6mに、未延伸繊維にレーザー光を照射する位置を送り出しローラから0.7m離れた地点に、延伸倍率を4倍、5倍および6倍の3種類に設定した。
また、レーザー光源(株式会社鬼塚硝子のPIN−20S)は、それぞれレーザー媒体が二酸化炭素、レーザー光の波長が10.6μm、レーザー光の定格出力が20W、レーザー光の定格直径が5.0mm、レーザー光の定格広がり角度が1.0mrad、偏光がランダムとされている。本実施例では、未延伸繊維にレーザー光を照射する位置で、それぞれレーザー光の直径を4mm、レーザー光の出力を20W、温度を10℃に設定した。
得られた各延伸繊維について、繊維径、引っ張り強度、ヤング率、破壊伸びおよび動的粘弾性の測定、並びに、延伸繊維の生産性の評価を行った。繊維径は、顕微鏡(Carl Zeiss JENA社のInterphako Interference Microscope)写真を用いて測定した5箇所の数値の平均値とした。引っ張り強度、ヤング率および破壊伸びは、引っ張り試験機(株式会社オリエンテックのTensilon Model RCT−1250A)を用いて、クロスヘッド速度50mm/分の条件下で測定した10箇所の数値の平均値とした。この結果を表3に示す。なお、表3の試料は、表1および表2の試料の同一の番号に対応している。
Figure 2005344227
表3に示すように、VGCFを2wt%含有する未延伸繊維は、延伸繊維の生産性が良好の状態で、4〜6倍の各種倍率で延伸できることが分かった。また、VGCFを2wt%含有する延伸繊維では、延伸倍率を大きくするほど小径の繊維となった。また、VGCFを2wt%含有する延伸繊維では、延伸倍率を大きくするほど、引っ張り強度、ヤング率および破壊伸びの応力特性が向上した。さらに、VGCFを2wt%含有する延伸繊維(試料1、2、3、9、10)は、生産性が良好の状態で延伸されるポリエチレンテレフタレートのみからなる延伸繊維(試料5)と比べて、応力特性が優れていた。
特に、予めVGCFを多く含んだポリエチレンテレフタレートとVGCFとを含有する材料を作製しておき、この材料とポリエチレンテレフタレートとを紡糸機に供給して、紡糸機で混練しながら紡糸した繊維から得られた延伸繊維(試料9、10)の応力特性が優れていた。
なお、VGCFを10wt%含有する延伸繊維(試料4)は、ポリエチレンテレフタレートのみからなる延伸繊維(試料5、6、7)よりも、応力特性が向上しなかった。これは、混練距離(混練時間)が長いため、混練時にポリエチレンテレフタレートが熱分解したことが原因であると推測される。
これらのことより、VGCFをポリエチレンテレフタレート中に均一かつ高分散で添加することによって、VGCFを添加しないときよりも、繊維の応力特性が向上すると考えられる。したがって、ポリエチレンテレフタレートにVGCFを添加することによって、極細で高強度の繊維を工業的に生産することが可能であると考えられる。また、本実施例では、ポリエステルの出発物質がポリエチレンテレフタレートペレットであった。このため、本発明は、PETボトルまたはPETフィルム等のポリエチレンテレフタレート製品のリサイクルに好適である。
動的粘弾性は、動的粘弾性試験装置(有限会社アイティーケーのDVA−225)を用いて、試験片の繊維長さが20mm、加振周波数が10Hz、昇温速度が10℃/分の条件下で測定した。この結果を図4に示す。なお、図4のグラフでは、横軸が温度、縦軸が貯蔵弾性率となっている。
図4に示すように、VGCFを10wt%含有する延伸繊維(試料4)は、高温領域(例えば、150℃以上での温度領域)において、VGCFを2wt%含有する延伸繊維(試料1、3)およびポリエチレンテレフタレートのみからなる延伸繊維(試料5)よりも、弾性の損失が少なかった。このことより、ポリエチレンテレフタレートとVGCFを含有する延伸繊維において、VGCFの重量の割合を増加させると、特に高温領域での弾性率が向上すると考えられる。
以上より、ポリエチレンテレフタレートに添加するVGCFの重量の割合を調整することによって、目的に応じた延伸繊維を製造することができると考えられる。すなわち、機械特性に優れる延伸繊維を製造したいときには、ポリエチレンテレフタレートに添加するVGCFの重量の割合を比較的少なくし、動的弾性特性に優れる延伸繊維を製造したいときには、ポリエチレンテレフタレートに添加するVGCFの重量の割合を比較的多くすれば良いと考えられる。加えて、室温および高温における機械特性に優れる延伸繊維とするためには、VGCFの重量の割合を2%以上10%以下の範囲にするのが好ましい。
本発明は、衣料等の原材料となる繊維に利用することが可能である。また、本発明は、ポリエステル製品のリサイクル産業に利用することが可能である。
本発明の実施の形態に係る高強度複合繊維の製造に用いる混練装置である2軸押出機を示す断面図である。 本発明の実施の形態に係る高強度複合繊維の製造に用いる紡糸装置である1軸押出機を示す断面図である。 本発明の実施の形態に係る高強度複合繊維の製造に用いる延伸装置を示す模式図である。 本発明の実施の形態に係る高強度複合繊維の動的粘弾性を示すグラフである。
符号の説明
10 2軸押出機(混練装置)
40 1軸押出機(紡糸装置)
60 延伸装置
62 レーザー光源
64 レンズ
66 遮光板
68 送り出しローラ
70 引き取りローラ
72 焦点

Claims (10)

  1. ポリエステルとカーボンナノチューブとを含有することを特徴とする高強度複合繊維。
  2. 前記ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1記載の高強度複合繊維。
  3. 前記カーボンナノチューブは、気相成長炭素繊維であることを特徴とする請求項1または2記載の高強度複合繊維。
  4. ポリエチレンテレフタレートおよびカーボンナノチューブの両物質を含有し、上記両物質の総重量に占める上記カーボンナノチューブの重量の割合が2%以上10%以下であることを特徴とする高強度複合繊維。
  5. ポリエステルとカーボンナノチューブとを混合する混合工程と、
    上記混合工程で得られた材料を紡糸する紡糸工程と、
    上記紡糸工程で得られた繊維を加熱しながら延伸する加熱延伸工程と、
    を有することを特徴とする高強度複合繊維の製造方法。
  6. ポリエステルとカーボンナノチューブとを混合する混合工程と、
    上記混合工程で得られた素材を混練する混練工程と、
    上記混練工程で得られた材料を紡糸する紡糸工程と、
    上記紡糸工程で得られた繊維を加熱しながら延伸する加熱延伸工程と、
    を有することを特徴とする高強度複合繊維の製造方法。
  7. レーザー光を前記ポリエステルと前記カーボンナノチューブとを含有する繊維に照射して、前記加熱延伸工程を行うことを特徴とする請求項5または6記載の高強度複合繊維の製造方法。
  8. 前記レーザー光を発生させるレーザー媒体は、二酸化炭素であることを特徴とする請求項7記載の高強度複合繊維の製造方法。
  9. 総延伸倍率を4倍以上として前記加熱延伸工程を行うことを特徴とする請求項5から8のいずれか1項記載の高強度複合繊維の製造方法。
  10. 前記加熱延伸工程は、延伸倍率を4倍以上6倍以下として延伸する工程を有することを特徴とする請求項9記載の高強度複合繊維の製造方法。
JP2004164368A 2004-06-02 2004-06-02 高強度複合繊維およびその製造方法 Pending JP2005344227A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004164368A JP2005344227A (ja) 2004-06-02 2004-06-02 高強度複合繊維およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004164368A JP2005344227A (ja) 2004-06-02 2004-06-02 高強度複合繊維およびその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2005344227A true JP2005344227A (ja) 2005-12-15

Family

ID=35496866

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004164368A Pending JP2005344227A (ja) 2004-06-02 2004-06-02 高強度複合繊維およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2005344227A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2011080217A1 (en) * 2009-12-31 2011-07-07 Voith Patent Gmbh Paper machine clothing with monofilaments having carbon nanotubes
US8309149B2 (en) * 2007-07-27 2012-11-13 Isao Yokoyama Packing method and corresponding covers for hydrogen-reduced water or food production

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8309149B2 (en) * 2007-07-27 2012-11-13 Isao Yokoyama Packing method and corresponding covers for hydrogen-reduced water or food production
WO2011080217A1 (en) * 2009-12-31 2011-07-07 Voith Patent Gmbh Paper machine clothing with monofilaments having carbon nanotubes
CN102812180A (zh) * 2009-12-31 2012-12-05 沃依特专利有限责任公司 包含具有碳纳米管的单丝的造纸机网毯

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Igarashi et al. Manufacturing process centered on dry-pulp direct kneading method opens a door for commercialization of cellulose nanofiber reinforced composites
Wang et al. Effect of surface modification on the dispersion, rheological behavior, crystallization kinetics, and foaming ability of polypropylene/cellulose nanofiber nanocomposites
Rangari et al. Alignment of carbon nanotubes and reinforcing effects in nylon-6 polymer composite fibers
Oishi et al. Structural and mechanical properties of cellulose composites made of isolated cellulose nanofibers and poly (vinyl alcohol)
JP6742580B2 (ja) グラフェン強化ポリエチレンテレフタレート
JP5544510B2 (ja) コンポジット繊維およびコンポジット繊維の製造方法
Chinchillas-Chinchillas et al. Synthesis of recycled poly (ethylene terephthalate)/polyacrylonitrile/styrene composite nanofibers by electrospinning and their mechanical properties evaluation
JP2007146039A (ja) 樹脂組成物およびその成形体
Seraji et al. Highly crystallized and tough polylactic acid through addition of surface modified cellulose nanocrystals
JP2015105441A (ja) カーボンナノチューブ含有繊維の製造方法およびカーボンナノチューブ含有繊維
Sayyed et al. Influence of intensified cellulose dissolution process on spinning and properties of lyocell fibres
Wu et al. Effect of elongational rheology on plasticization and properties of thermoplastic starch prepared by biaxial eccentric rotor extruder
Zhang et al. Comparison of regenerated cellulose fibers spun from ionic liquid solutions with Lyocell fiber
JP2010216018A (ja) ポリビニルアルコール系コンポジット繊維およびその製造方法
EP et al. Microstructural characterization and defects analysis of FDM based composite material (PLA-G-CF)
Beg et al. The effects of alkaline digestion, bleaching and ultrasonication treatment of fibre on 3D printed harakeke fibre reinforced polylactic acid composites
JP2011162767A (ja) 炭素繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、ならびにそれを用いた成形材料および成形品
JP2005344227A (ja) 高強度複合繊維およびその製造方法
KR20160106044A (ko) Pan계 탄소 섬유 및 그 제조방법
JP2021187885A (ja) セルロース樹脂組成物及びその製造方法
Li et al. The plasticized spinning and cyclization behaviors of functionalized carbon nanotube/polyacrylonitrile fibers
JP5390240B2 (ja) 炭素繊維の製造方法
JP5366172B2 (ja) ポリテトラフルオロエチレン繊維の製造方法、およびポリテトラフルオロエチレン繊維
JP7330594B2 (ja) 高分子複合体
Mallakpour et al. Preparation and characterization of reinforced poly (vinyl alcohol) films by a nanostructured, chiral, L-leucine based poly (amide-imide)/ZrO2 nanocomposite through a green method