JP2005342886A - 回転式及び／又は打撃式工具における装着端部 - Google Patents

Abstract

【課題】 大トルクを支障なく伝達すると共に，最適な衝撃パルス伝達特性を有する装着端部を提案する。
【解決手段】 少なくとも部分的に中心軸線Ａに沿って回転駆動及び／又は打撃駆動される工具２の装着端部は，中心軸線Ａに沿って最大ガイド径Ｄ内で延在し，互いに対向する少なくとも２本の係止溝５ａ，５ｂと，円周方向で係止溝と交互に配置され，かつ，互いに対向する少なくとも２本のトルク伝達溝６ａとを具える。係止溝は遊端４から離れた側に位置する軸線方向係止端３に係止肩部１１を有し，かつ，各係止肩部に対して軸線方向で工具側に位置する停止肩部１２が対向して設けられている。トルク伝達溝は，接触長Ｋに亙って延在する少なくとも１個のトルク伝達面７を有する。本発明では，停止肩部が，ガイド径Ｄの少なくとも３倍の長さＬだけ軸線方向係止端から工具側に離間した位置に配置されている。
【選択図】 図１ａ

Description

本発明は，少なくとも部分的に回転駆動及び／又は打撃駆動される工具，例えば，岩石，コンクリート又は壁材を加工するためのドリルチゼル，チゼル，カッタードリルクラウン等のための装着端部に関するものである。

通常，回転駆動及び／又は打撃駆動される工具は，手持ち式の回転工具装置及び／又は打撃工具装置のために，中心軸線に沿って延在する装着端部を具える。多種多様な工具を選択的に使用可能とするため，工具の装着端部と手持ち式工具装置の工具ホルダとの間のインタフェースには，少なくとも出力等級毎に互換性が求められる。現在，ハンマードリルシステムで世界的に最も多く使用され，実質的に規格化されている装着端部及び対応する工具ホルダは，ドイツ特許出願公開２５５１１２５号公報（特許文献１）及び同３７１６９１５号公報（特許文献２）に記載されている。その装着端部は，工具側の円筒形状のガイド面と，遊端に向けて軸線方向に閉鎖した係止溝と，遊端に向けて軸線方向に開放した台形断面のトルク伝達溝とを具える。対応する工具ホルダは，半径方向に変位可能な少なくとも1個の係止部材が装着端部における係止溝に係合して，工具ホルダ内における工具の可動性を制限するものである。
ドイツ特許出願公開２５５１１２５号公報 ドイツ特許出願公開３７１６９１５号公報

ドイツ特許出願公開２５５１１２５号公報（特許文献１）に記載されている装着端部及び工具ホルダは，いわゆるデファクト・スタンダードであり，ガイド径が１０ｍｍとされている。互いに直径対向位置に配置された同一形状の各２本の係止溝及びトルク伝達溝は，円周方向で鏡像対象的に分配されている。係止溝に対して僅かに長いトルク伝達溝には，ガイド面が工具側で接続する。ガイド面は装着端部の工具側端部まで延在するものであるが，トルク伝達には関与しない。装着端部は，当初は１７ｍｍ以下のドリル径を対象として設計されていた。すなわち，出力６５０Ｗ未満の小型低出力ハンマードリルのカテゴリに分類されるものである。大出力の手持ち式ハンマードリル等の場合，特定の作動モードでは工具に大トルクが伝達可能である。ドリル径３０ｍｍ以下のハンマードリルについて，その実質的な使用領域が拡大している。更に，ワークから工具を取り外す際，特にドリル孔内で工具がロックされた場合，工具には手持ち式工具装置から大トルクが伝達される。１７ｍｍを超えるドリル径の場合には損傷を生じかねず，装着端部が係止溝領域内で破損し，又は工具ホルダ内で破壊することもある。破損した端部はハンマードリル内に残留し，ハンマードリルの前側部分を分解しなければ工具ホルダから除去できないため，処理が非常に煩雑である。大径のコアドリルでは破損に至らない場合でも装着端部に塑性変形が生じ，工具ホルダに過度に大きな磨耗の生じる原因となる。往々にして，これらの工具を工具ホルダから取り外すことは困難である。

ドイツ特許出願公開３７１６９１５号公報に記載されている装着端部及び工具ホルダも，同様にデファクト・スタンダードとなっており，ガイド径が１８ｍｍとされている。互いに直径対向位置に配置した同一形状の２本の係止溝を具え，これら係止溝の間で一方の断面半部には一本のトルク伝達溝が，他方の断面半部には２本のトルク伝達溝がそれぞれ鏡像対称的に配置されている。この装着端部は，大トルクを伝達する高性能の大型ハンマードリル用として設計されている。ここでも，前項に言及した高い出力クラス又はトルクにおける問題点が生じる。ガイド径が１８ｍｍ，ドリル径がそれより遥かに小さい１４ｍｍの工具においては，衝撃パルスの伝達特性が良好でない。更に，このように不均整な工具の製造は非経済的である。

上述した構成の装着端部に生じる負荷は，次のように要約される。すなわち，一方において，装着端部の負荷はハンマードリルの衝撃エネルギによって生じ，他方ではカッターに生じるトルクによって決定され，工具ホルダの回転ウェッジから発するねじり負荷が装着端部のトルク伝達溝に伝達される。このトルク負荷は，例えば，コアドリル作業に際してカッターがロックされると顕著に増大する。ハンマードリルを引き戻す試みに際して，係止部材から係止溝の軸線方向係止端に対して付加的な負荷が及ぼされる。長年に亙って蓄積されたる経験則に基づき，特に軸線方向係止端の領域に配置された断面は，前記の多軸的に組み合わされた負荷により破壊に至る場合がある。その破壊力学的な要因は，軸線方向係止端で局部的に現れた多軸応力状態にあると推測される。この応力状態は，横収縮を介して局部的な補強作用を発現する。局部的な補強作用は典型的なクラックイニシエータであり，交番応力を受けた装着端部の耐久性を低下させる。

米国特許４６５５６５１号明細書（特許文献３）に開示された装着端部は，工具側のシリンダ胴形状のガイド面と，遊端に向けて軸線方向に開放した３本のＶ溝とを具える。これらのＶ溝は，遊端とは反対側に位置する各1個の係止肩部と一体化させて軸線方向に変位した複数本の係止溝を形成する。その際，１２０°の中心角を有する３本のＶ溝が，工具ホルダにおける把持部材のための凹所として機能する。このように半径に対して６０°だけ傾斜した装着端部は，特に工具がロック状態となったときに生じるような大トルクには適さない。更に，Ｖ溝に沿って一体化された係止溝は，トルク伝達に貢献する接触面積を減少する。
米国特許４６５５６５１号明細書

本発明の課題は，大トルクを支障なく伝達すると共に，最適な衝撃パルス伝達特性を有する装着端部を提案することにある。

この課題を解決するため，本発明は，独立請求項に記載した構成を有する装着端部を提供するものである。また，本発明の好適な実施形態は，従属請求項に記載したとおりである。

すなわち，本発明による装着端部は，中心軸線に沿って最大ガイド径内で延在し，互いに対向する少なくとも２本の係止溝と，円周方向で係止溝と交互に配置され，かつ，互いに対向する少なくとも２本のトルク伝達溝とを具え，前記係止溝が遊端から離れた側に位置する軸線方向係止端に係止肩部を有し，かつ，各係止肩部に対して軸線方向で工具側に位置する停止肩部が対向して設けられ，前記トルク伝達溝が，接触長に亙って延在する少なくとも１個のトルク伝達面を有し，さらに，前記停止肩部が，ガイド径の少なくとも３倍の長さだけ軸線方向係止端から工具側に離間した位置に配置されていることを特徴とするものである。

本発明によれば，停止肩部が，軸線方向係止端から工具側に可能な限り離間した位置に配置されているため，その断面変化が装着端部の工具側端部近傍で実現する。それにより，少なくともガイド径以下のシャフト径を有する工具においては，少なくともガイド径のｅ倍（但し，ｅは自然対数の底）の長さに亘って音響インピーダンスを変化させると共に，衝撃パルス伝達に干渉作用を及ぼす反射領域が回避される。その結果，小さなガイド径でより大きなトルクを支障なく作用させることが可能となる。すなわち，小さなドリル径における衝撃パルス特性が改善されるものである。

停止肩部は，ガイド径の１．５倍以上の長さだけ軸線方向でトルク伝達溝の工具側溝端部から工具側に離間した位置に配置するのが有利である。この場合には，接線方向負荷を受けるトルク伝達溝の工具側溝端部に対して断面変化部分が軸線方向で十分に離間しているため，荷重係止領域の工具側端部で多軸応力状態を回避することができる。

係止溝における停止肩部と，ガイド径を有する工具側ガイド端との間の軸線方向ガイド長は，ガイド径の１．５倍以下とするのが有利である。この場合，良好な衝撃パルスの伝達特性を維持しつつ，工具側での密着保持に十分な長さのガイド長を達成することができる。

トルク伝達面は，少なくとも接触長に亙って中心軸線に対する平行方向及び垂直方向に延在させるのが有利である。この場合，トルク伝達面の法線が正確に接線方向を指向し，トルク負荷に際して磨耗を助長するせん断力は誘起されない。

少なくとも接触長に亙るトルク伝達溝の溝深度は，溝幅の０．５〜１．０倍とするのが有利である。トルク伝達溝に係合する工具ホルダのトルク伝達ウェブが十分な曲げ剛性を有する場合には，断面積を減少させることなく大トルクを伝達することが可能である。

なくとも３本のトルク伝達溝を鏡像対称的に配置するのが有利である。それにより，大トルクを確実に伝達することが可能となる。

各係止溝の係止肩部に対して軸線方向で工具側に離間した停止肩部を，該係止溝から軸線方向で工具側に離間させると共に，該係止溝から離隔した別の係止溝で構成するのが有利である。この場合，打撃式工具ホルダで工具の軸線方向可動性を制限する中間肩部が形成される。

係止溝と，前記別の係止溝は互いに同一の断面形状を有するのが有利である。この場合，両係止溝には，対応する断面形状を有する打撃式工具ホルダの係止部材を係合させることが可能である。

以下，本発明を図示の好適な実施形態について更に具体的に説明する。

図１ａ及び図１ｂに示すように，中心軸線Ａに沿って回転及び打撃駆動される工具２の二要素で回転対称とする装着端部１は，中心軸線Ａに沿って最大ガイド径Ｄで延在すると共に，遊端４の反対側に位置する係止肩部１１を軸線方向係止端３に具える正確に２本とする直径対向位置に配置した同じ係止溝５ａ，５ｂを具える。遊端４に向けて開放した２本のトルク伝達溝６ａ，６ｂは，係止溝５ａ，５ｂに対して円周方向に交互に配置されている。トルク伝達溝６ａ，６ｂは，接線方向に見た溝幅Ｂ及び接触長Ｋに亙って延在し，中心軸線Ａに対して平行方向及び直角方向に延在するトルク伝達面７を有する。両係止溝５ａ，５ｂにつき，各係止肩部１１に対して工具側で軸線方向に対向する停止肩部１２を設ける。停止肩部１２は，ガイド径Ｄの３．５倍に相当する長さＬに亙って軸線方向係止端３の工具側に配置されている。係止溝５ａ，５ｂにおける工具側の停止肩部１２まで延在する，ガイド径Ｄを有する工具側ガイド端１３の間では，軸線方向ガイド長Ｆがガイド径Ｄの１／２とされている。停止肩部１２は，トルク伝達溝６ａの工具側溝端部１５からガイド径Ｄの２倍以上の長さだけ工具側で軸線方向に離間している。トルク伝達溝６ａ，６ｂは，ガイド径Ｄの２倍に相当する接触長Ｋに亙り，一定の溝幅Ｂがガイド径の１／３に相当する。両トルク伝達溝６ａ，６ｂの溝深度Ｔは，全接触長Ｋに亙って溝幅Ｂの１／２である。

図２ａ，２ｂに示すように，鏡像対称構造を有する装着端部１は，対応するトルク伝達手段９を具える打撃式工具ホルダ（暗示的に図示する）内に装着される。トルク伝達手段９は，半径方向内方に転向して工具側で前置された３個のトルク伝達ウェブと，係止ボール１０と，軸線方向に延在する係止キー１５等で構成される半径方向に変位可能な２個の係止手段とで構成する。更に，ガイド径の１／５に相当する一定溝幅Ｂを有するトルク伝達溝６ａ，６ｂ，6ｃが，装置側で遊端４に至るまで開放している。鏡像対称的に配置された３本のトルク伝達溝６ａ，６ｂ，6ｃは，直径対向位置に配置した両係止溝５ａ，５ｂから円周方向で鏡像対称的に配置する。各係止溝５ａ，５ｂの係止肩部１１に対して工具側で軸線方向に離間配置した停止肩部１２は，工具側で係止溝５ａ，５ｂから軸線方向に離間すると共に，係止溝５ａ，５ｂから分離した同一断面形状を有する別の係止溝５ｃ，5ｄで構成される。軸線方向で，係止溝５ａ，５ｂと別の係止溝５ｃ，5ｄとの間に中間肩部１６が形成される。

本発明の一実施形態に係る装着端部の側面図である。 図１ａの装着端部の拡大断面図である。 他の実施形態に係る装着端部の側面図である。 図２ａの装着端部の拡大断面図である。

符号の説明

１ 装着端部
２ 工具
３ 軸線方向係止端
４ 遊端
５ａ，５ｂ 係止溝
５ｃ，５Ｄ 係止溝
６ａ，６ｂ，６ｃ トルク伝達溝
７ トルク伝達面
８ 打撃式工具ホルダ
９ トルク伝達手段
１０ 係止球体
１１ 係止肩部
１２ 停止肩部
１３ ガイド端
１５ 係止キー

Claims (8)

1. 少なくとも部分的に中心軸線（Ａ）に沿って回転駆動及び／又は打撃駆動される工具（２）の装着端部であって，該装着端部が中心軸線（Ａ）に沿って最大ガイド径（Ｄ）内で延在し，互いに対向する少なくとも２本の係止溝（５ａ，５ｂ）と，円周方向で係止溝（５ａ，５ｂ）と交互に配置され，かつ，互いに対向する少なくとも２本のトルク伝達溝（６ａ，６ｂ）とを具え，前記係止溝（５ａ，５ｂ）が遊端（４）から離れた側に位置する軸線方向係止端（３）に係止肩部（１１）を有し，かつ，各係止肩部（１１）に対して軸線方向で工具側に位置する停止肩部（１２）が対向して設けられ，前記トルク伝達溝（６ａ，６ｂ）が，接触長（Ｋ）に亙って延在する少なくとも１個のトルク伝達面（７）を有する装着端部において，前記停止肩部（１２）が，ガイド径（Ｄ）の少なくとも３倍の長さ（Ｌ）だけ軸線方向係止端（３）から工具側に離間した位置に配置されていることを特徴とする装着端部。
2. 請求項１記載の装着端部において，停止肩部（１２）が，ガイド径（Ｄ）の１．５倍以上の長さだけ軸線方向でトルク伝達溝（６ａ，６ｂ）の工具側溝端部（１４）から工具側に離間した位置に配置されていることを特徴とする装着端部。
3. 請求項１又は２に記載の装着端部において，係止溝（５ａ，５ｂ）における停止肩部（１２）と，ガイド径（Ｄ）を有する工具側ガイド端（１３）との間の軸線方向ガイド長（Ｆ）が，ガイド径（Ｄ）の１．５倍以下であることを特徴とする装着端部。
4. 請求項１〜３の何れか一項に記載の装着端部において，トルク伝達面（７）が，少なくとも接触長（Ｋ）に亙って中心軸線（Ａ）に対する平行方向及び垂直方向に延在することを特徴とする装着端部。
5. 請求項１〜４の何れか一項に記載の装着端部において，少なくとも接触長（Ｋ）に亙るトルク伝達溝（６ａ，６ｂ，６ｃ）の溝深度（Ｔ）が，溝幅（Ｂ）の０．５〜１．０倍であることを特徴とする装着端部。
6. 請求項１〜５の何れか一項に記載の装着端部において，少なくとも３本のトルク伝達溝（６ａ，６ｂ，６ｃ）を具え，該トルク伝達溝（６ａ，６ｂ，６ｃ）が好適には鏡像対称的に配置されていることを特徴とする装着端部。
7. 請求項１〜６の何れか一項に記載の装着端部において，各係止溝（５ａ，５ｂ）の係止肩部（１１）に対して軸線方向で工具側に離間した停止肩部（１２）が，該係止溝（５ａ，５ｂ）から軸線方向で工具側に離間すると共に，該係止溝（５ａ，５ｂ）から離隔した別の係止溝（５ｃ，５ｄ）で構成されていることを特徴とする装着端部。
8. 請求項７記載の装着端部において，前記係止溝（５ａ，５ｂ）と，前記別の係止溝（５ｃ，５ｄ）とが互いに同一の断面形状を有することを特徴とする装着端部。

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