JP2005336503A - 鉄損に優れた無方向性電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents

鉄損に優れた無方向性電磁鋼板およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2005336503A
JP2005336503A JP2004135675A JP2004135675A JP2005336503A JP 2005336503 A JP2005336503 A JP 2005336503A JP 2004135675 A JP2004135675 A JP 2004135675A JP 2004135675 A JP2004135675 A JP 2004135675A JP 2005336503 A JP2005336503 A JP 2005336503A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
mass
inclusions
steel sheet
rem
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2004135675A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4280197B2 (ja
Inventor
Wataru Ohashi
渡 大橋
Akito Kiyose
明人 清瀬
Masafumi Miyazaki
雅文 宮嵜
Kenichiro Miyamoto
健一郎 宮本
Takeshi Kubota
猛 久保田
Yosuke Kurosaki
洋介 黒崎
Yoshihiro Arita
吉宏 有田
Takashi Sawai
隆 澤井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2004135675A priority Critical patent/JP4280197B2/ja
Publication of JP2005336503A publication Critical patent/JP2005336503A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4280197B2 publication Critical patent/JP4280197B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Manufacturing Of Steel Electrode Plates (AREA)
  • Soft Magnetic Materials (AREA)

Abstract

【課題】 打ち抜き加工後の焼鈍がより低温より短時間であっても結晶粒を充分に粗大成長させて低鉄損化することが可能な無方向性電磁鋼板を提供する。
【解決手段】 鋼板内に含まれる球相当径100nm未満の介在物の個数密度が1×1010[個/mm3]以下であり、さらに、質量%で、C:0.01%以下、Si:0.1%以上7.0%以下、Al:0.1%以上3.0%以下、Mn:0.1%以上2.0%以下、REM:0.0003%以上0.05%以下、Ti:0.02%以下、S:0.005%以下、N:0.005%以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、かつ、[Al]で示されたAlの質量%、[N]で示されたNの質量%、ならびに、[Ti]で示されたTiの質量%が下記(1)式を満たすことを特徴とする鉄損に優れた無方向性電磁鋼板。
log([Ti]×[N])−1.19×log([Al]×[N])+1.84>0 ・・・(1)
【選択図】 図1

Description

本発明は、モーター鉄芯などに用いられる無方向性電磁鋼板の鉄損を下げて、エネルギーロスを少なくし、電気機器の効率化を図り、省エネに寄与すべく、鉄損、特に、歪取焼鈍後の鉄損に優れた無方向性電磁鋼板を提供することを目的とする。
無方向性電磁鋼板は、結晶粒径が150μm程度で鉄損が最小となることが知られている。このため、製品特性の観点から、あるいは、製造の簡略化、高生産性化の観点から、仕上げ焼鈍での結晶粒成長性のより良い鋼板が望まれている。
一方、需要家によって鉄心の打ち抜き加工が施される際には、打ち抜き加工における打ち抜き精度は、結晶粒が細かいほど良く、結晶粒径は、例えば40μm以下が好ましい。このように、結晶粒径に対する鉄損と打ち抜き加工精度の要求が相反する場合もある。
特に、この相反する要求を満たす場合は、製品板の結晶粒径を細かいまま出荷し、需要家の打ち抜き加工の後に、例えば、750℃×2時間程度の歪取り焼鈍を行って、結晶粒を成長させる方策が択られている。
近年、需要家より低鉄損材の要求ニーズが強く、また、需要家の生産性向上によって歪取り焼鈍の短時間化が志向されてきており、歪取り焼鈍での結晶粒成長性のより良い製品板のニーズが増大してきた。
結晶粒成長を阻害する主たる要因のひとつは、鋼中に微細に分散する介在物である。製品中に含まれる介在物の個数がより多くなるほど、また、大きさが小さくなるほど、結晶粒成長が阻害されることが知られている。
すなわち、ゼナー(Zener)が提示したように、介在物の球相当半径rと鋼中に占める介在物の体積占有率fで表されるr/f値がより小さいほど、結晶粒成長は、より悪化する。したがって、結晶粒成長を良好化するためには、介在物の個数をより少なくすることは勿論、介在物の大きさを、より粗大化させることが肝要である。
無方向性電磁鋼板の介在物の径および個数の好ましい範囲に関しては、例えば、特許文献1において、介在物径が0.1[μm]から1[μm]ならびに1[μm]超の介在物を、単位断面積当たり、それぞれ、5000以上105以下[個/mm2]ならびに500以下[個/mm2]の範囲内にすることが開示されている。
実態がより理解しやすいように、この数値を単位体積の鋼中に存在する介在物の個数、すなわち、介在物の個数密度に換算すると、それぞれ、5×106から1×109[個/mm3]ならびに5×105以下[個/mm3]の範囲となる。
無方向性電磁鋼板の結晶粒成長を阻害する介在物としては、シリカやアルミナなどの酸化物、硫化マンガンなどの硫化物、窒化アルミや窒化チタンなどの窒化物が知られている。
これらの介在物を除去するために、溶鋼段階で高純化を図ればよいことは自明であるが、別法として、種々の元素を鋼に添加して介在物の無害化を図る方法が、いくつか知られている。
酸化物に関しては、技術進歩により、強脱酸元素であるAlを充分量添加し、酸化物の浮上除去時間を充分に採ることにより、溶鋼段階で酸化物を除去し無害化することが可能となっている。
硫化物に関しては、溶鋼段階で高純化を図る他、例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4などに開示されるように、脱硫元素REMなどの添加によってSを固定する方法が知られている。また、窒化物に関しても、特許文献5あるいは特許文献6などに開示されるように、Bの添加によって粗大介在物としてNを固定する方法が知られている。
特開2001−271147号公報 特開昭51−62115号公報 特開昭56−102550号公報 特許3037878号公報 特許1167896号公報 特許1245901号公報
しかし、溶鋼段階での高純化は、製鋼コストアップが避けられないので好ましくなく、上述の添加元素による方法も、製品板の仕上げ焼鈍あるいは打ち抜き加工後の歪取り焼鈍などの、さらなる低温短時間化に伴う結晶粒成長の良好化ならびに鉄損の低減は、不十分であった。
特に記すべきは、前述の特許文献1に開示された推奨範囲内に介在物の個数密度を調整しても、歪取り焼鈍をより低温短時間化すると、結晶粒成長が依然として改善されない場合があった。
この原因は、従来知見に基づいて調整した介在物径や個数密度が、結晶粒成長を実際に阻害する介在物の組成や径や個数密度と異なるためであることが、後述の様に明らかであった。
本発明は、結晶粒を充分に粗大成長させて低鉄損化することが可能であり、特に、打ち抜き加工後の焼鈍がより低温かつより短時間であっても、結晶粒を充分に粗大成長させて低鉄損化することが可能な無方向性電磁鋼板を提供することを目的とする。
本発明の要旨は次の通りである。
(1)鋼板内に含まれる球相当径100nm未満の介在物の個数密度が1×1010[個/mm3]以下であることを特徴とする鉄損に優れた無方向性電磁鋼板。
(2)鋼板内に含まれる球相当径50nm未満の介在物の個数密度が2.5×109[個/mm3]以下であることを特徴とする鉄損に優れた無方向性電磁鋼板。
(3)質量%で、C:0.01%以下、Si:0.1%以上7.0%以下、Al:0.1%以上3.0%以下、Mn:0.1%以上2.0%以下、REM:0.0003%以上0.05%以下、Ti:0.02%以下、S:0.005%以下、N:0.005%以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、かつ、[Al]で示されたAlの質量%、[N]で示されたNの質量%、および、[Ti]で示されたTiの質量%が、下記(1)式を満たすことを特徴とする前記(1)または(2)に記載の鉄損に優れた無方向性電磁鋼板。
log([Ti]×[N])−1.19×log([Al]×[N])
+1.84>0 ・・・(1)
(4)前記鋼板が、さらに、質量%で、P:0.1%以下、Cu:0.5%以下、CaまたはMg:0.05%以下、Cr:20%以下、Ni:1.0%以下、SnおよびSbの一種または二種の合計:0.3%以下、Zr:0.01%以下、V:0.01%以下、O:0.005%以下、B:0.005%以下の一種以上を含有することを特徴とする前記(3)に記載の鉄損に優れた無方向性電磁鋼板。
(5)質量%で、C:0.01%以下、Si:0.1%以上7.0%以下、Al:0.1%以上3.0%以下、Mn:0.1%以上2.0%以下、REM:0.0003%以上0.05%以下、Ti:0.02%以下、S:0.005%以下、N:0.005%以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、かつ、[Al]で示されたAlの質量%、[N]で示されたNの質量%、および、[Ti]で示されたTiの質量%が、下記(1)式を満たす鋼を、1200℃以上1300℃以下の温度範囲に1分間以上経過させることを特徴とする鉄損に優れた無方向性電磁鋼板の製造方法。
log([Ti]×[N])−1.19×log([Al]×[N])
+1.84>0 ・・・(1)
(6)前記鋼が、さらに、質量%で、P:0.1%以下、Cu:0.5%以下、CaまたはMg:0.05%以下、Cr:20%以下、Ni:1.0%以下、SnおよびSbの一種または二種の合計:0.3%以下、Zr:0.01%以下、V:0.01%以下、O:0.005%以下、B:0.005%以下の一種以上を含有することを特徴とする前記(5)に記載の鉄損に優れた無方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明により、無方向性電磁鋼板中に内包される微細な介在物のサイズと個数密度を適正範囲内にでき、従来に比べてより簡易な仕上げ焼鈍や歪取り焼鈍でも充分良好な磁気特性を示すことが可能となり、需要家のニーズを満たしつつ省エネに貢献できる。
以下に、本発明について具体的に述べる。
本発明者は、無方向性電磁鋼板における磁気特性は、鋼板中に内包される微細な介在物が影響していることに着目し、磁気特性や打ち抜き性を良好に示すための介在物のサイズと個数密度の適正範囲を新たに見出した。
介在物のサイズおよび個数密度が、磁気特性へ及ぼす影響について、以下に示す鋼を用いて説明する。但し、この鋼は一例であり、本発明は、これに限定されるものではない。
C、Si、Al、Mn、REM、Ti、S、Nを含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる成分の鋼を連続鋳造し、熱延し、熱延板を熱延板焼鈍し、厚さ0.5mmに冷延し、850℃×30秒の仕上げ焼鈍を行い、さらに、絶縁皮膜を塗布して製品とした製品板に、750℃×1.5時間の歪取り焼鈍を施した。
そして、歪取り焼鈍後の製品板における介在物と結晶粒径と鉄損を調査した。その結果を、表1、ならびに、図1および図2に示す。
表1および図1から明らかなように、焼鈍後の結晶粒径および鉄損は、介在物の球相当直径(以降、本発明の介在物については、球相当直径を介在物径または径と記載する。)100nm未満の介在物個数密度と相関があり、介在物個数密度が1×1010[個/mm3]以下で、結晶粒成長ならびに鉄損は良好であった。
また、図2に示すように、介在物径50nm未満の介在物個数密度が2.5×109[個/mm3]以下の場合に、際立って、特性が良好であった。
一方、介在物径100nm以上の介在物の個数密度が1×109[個/mm3]以下であっても、介在物径100nm未満の介在物個数密度が1×1010[個/mm3]超であれば、特性不良であった。
特記すべきことは、介在物径0.1μm(=100nm)以上の介在物の個数密度が1×109[個/mm3]以下であったサンプルにも、多数の100nm未満の介在物が検知されたことであり、介在物径100nm未満、特に、介在物径50nm未満の微細な介在物が結晶粒成長の主たる阻害要因であり、ひいては、鉄損の悪化を引き起こす原因であることを特定できた。
なお、以上の結果は、歪取り焼鈍を750℃×1.5時間行った場合であり、一般的に行われている歪取り焼鈍750℃×2時間より短時間で行った結果であるが、従来レベルの歪取り焼鈍を行った場合には、微細介在物のピン止め作用による結晶粒成長差がより顕著化するので、以上述べた結晶粒成長性ならびに鉄損の適不適が、一層明確になることは言うまでもない。
以上により、従来知見を参考にして介在物径100nm以上の介在物の個数密度を特定するだけでは、必ずしも望ましい製品特性が得られないことが判明した。さらに、径100nm未満の介在物個数密度を特定することによって、好ましい製品特性が得られることと、径50nm未満の介在物個数密度を特定することによって、さらに良好な製品特性を得られることが今回明らかとなった。
なお、本発明では、鋼板中の介在物のサイズおよび個数密度が、本発明の範囲を満足していれば、良好な製品特性が発揮されるので、鋼を構成する成分は、特に限定されるものではない。
ここで、介在物調査方法の一例を説明する。サンプルである製品板を表面から適宜厚さにまで研磨して鏡面とし、後述のエッチングを施した後にレプリカを採取し、レプリカに転写された介在物をフィールドエミッション型透過電子顕微鏡により観察した。この場合、レプリカでなく薄膜を作成して観察してもよい。
介在物の径と個数密度は一定観察面積中の介在物を全て計測して評価し、また、介在物の組成は、エネルギー分散型エックス線分析装置ならびにディフラクションパターン解析により決定した。
介在物の最小サイズに関しては、介在物の格子定数が数オングストローム程度であるので、それ以下のサイズは存在し得ないのは明白であるが、安定的に存在する介在物核の径の下限値は、およそ5nm程度であるので、そのレベルまで観察できる方法(例えば倍率など)を選択すればよい。
エッチング方法は、例えば、黒沢らの方法(黒沢文夫、田口 勇、松本龍太郎:日本金属学会誌、43(1979),p.1068)により、非水溶溶媒液中でサンプルを電解腐食し、介在物を残したまま鋼のみ溶解させて、介在物を抽出した。
このような方法により、前述の様なTiを含有する鋼の、製品中の微細介在物の組成を調査した結果、径100nm未満の介在物のうち、主たるもの(個数にして50%以下)は、TiN、TiS、または、TiCなどのTi化合物であることが判明した。
これについて、以下に説明する。電磁鋼において、TiN、TiS、および、TiCの生成開始温度は、それぞれ、1200〜1300℃、1000〜1100℃、および、700〜800℃の範囲内にあることが、別途検討により明らかである。
すなわち、TiNは、スラブ等鋳造後の冷却過程で生成し、TiSおよびTiCは、スラブ等鋳造後の冷却過程で生成した後、常法の焼鈍工程にて融解し、その後の冷却により再生成する。
この時、鋼中でのTiの拡散移動速度が、それぞれの生成開始温度領域において、他の金属元素に比して数分の一程度に遅いため、Ti化合物は、他の介在物に比して充分に成長しきれず、Ti化合物は、介在物径100nm以上になり得ず、介在物径100nm未満、あるいは場合により、介在物径50nm未満の微細となる。
なお、介在物径がより微細なほうが、介在物の個数密度が必然的に増えるので、結晶粒成長をより強く阻害することは、前述の通り自明である。
しかし、電磁鋼における結晶粒成長を特により強く阻害する主たる介在物が、介在物径100nm未満の微細介在物であり、これらの個数密度を限定することにより、結晶粒成長、ひいては、鉄損が著しく改善されること、そして、これら介在物径100nm未満の介在物の多くが、TiN、TiS、または、TiCなどのTi化合物であることは、本発明により初めて開示された知見である。
なお、Tiは、製造工程において微量の混入を防ぐことが、通常、困難である。すなわち、通常の製鋼工程では、電磁鋼以外にもTiを相当量含有する鋼種も製造されるので、耐火物への付着鋼や付着スラグから、電磁鋼には不可避的にTiが混入することがある。
あるいは、電磁鋼のみの製造においても、例えば、Siの成分調整に用いるフェロシリコン合金からの混入や、あるいは、スラグと溶鋼が反応してスラグ内の酸化チタンが還元されて、鋼中に金属Tiが覆するなどにより、鋼中にTiが混入することがある。
従来、不可避的に微量混入するTiが結晶粒成長を阻害することは知られていたが、本発明者による調査によって、不可避的に混入するTiを許容し、さらには、好ましいTi範囲になるように積極的な添加によってTi量をコントロールすることにより、結晶粒成長性のより良い無方向性電磁鋼板を得ることが可能であることが判明した。
以下に、介在物への鋼成分の影響について、より詳細に検討した内容を説明する。
Ti化合物のうちTiSを無害化するにあたりREMを用いる技術、すなわち、REM添加によりSを固定して硫化物系介在物を減少させる技術は、従来から知られている。
ここで、REMとは、原子番号が57のランタンから71のルテシウムまでの15元素に原子番号が21のスカンジウムと原子番号が39のイットリウムを加えた合計17元素の総称である。
本発明者が、REM添加により起こる現象を仔細に検討した結果、REMがオキシサルファイドないしサルファイドとしてSを固定することにより、微細なTiSの生成を抑制できるのみならず、REMオキシサルファイドないしREMサルファイド上にTiNが複合して析出することによってTiを無害化できる適正な成分範囲を見出すに至った。
すなわち、電磁鋼において、TiNとAlNの生成開始温度は近いが、量的には圧倒的にAlが優勢なので、AlNの生成開始温度が僅かでもTiNの生成開始温度を上回る場合には、鋼中のNはAlと優先的に結合してAlNの生成に消費され、Alに比べて量的に僅少なTiとNが結合するチャンスが著しく少なくなる。
しかしながら、TiNが生成する条件下であるためTiNは生成するが、N量が不十分なために充分に成長できず、また、REMオキシサルファイドないしREMサルファイド上で成長するチャンスを奪われるため、その結果、TiNは、単独で微細に生成することとなるのである。
よって、微細TiNの生成を左右する要件は、TiNの生成温度がAlNの生成温度を上回ることであり、これは、溶解度積によって決定される。
すなわち、[Ti]でTiの質量%、[N]でNの質量%、[Al]でAlの質量%を表した場合、TiNならびにAlNの生成温度は、それぞれ、[Ti]×[N]、[Al]×[N]に応じたものとなる。
本発明者は、鋭意検討の結果、REM量が0.0003〜0.05質量%の範囲内にある場合において、成分値が下記(1)式を満たす場合に、REMオキシサルファイドないしREMサルファイドによって、TiNとしてTiが固定され、微細TiNの生成が抑制されることを見出した。
log([Ti]×[N])−1.19×log([Al]×[N])
+1.84>0 ・・・(1)
但し、[Ti]はTiの質量%、[N]はNの質量%、[Al]はAlの質量%を示す。
これにより、鋼板内に含まれる球相当径100nm未満の介在物の個数密度を1×1010[個/mm3]以下、または、鋼板内に含まれる球相当径50nm未満の介在物の個数密度を2.5×109[個/mm3]以下とすることができ、そのため、同一の焼鈍条件でも結晶粒成長がより良く、よって、焼鈍を短時間化できる無方向性電磁鋼板を提供することが可能となった。
特に、歪取り焼鈍において、低温短時間で良好な鉄損が得られるようになった。また、従来の一般的な歪取り焼鈍条件である750℃×2時間の焼鈍により、更なる低鉄損が得られるようになった。
以下に、具体的に、表2を用いて説明する。
No.11は、質量%で、C:0.0024%、Si:2.1%、Al:0.32%、Mn:0.2%、S:0.0025%、Ti:0.0016%、N:0.0019%、REM:0.0045%を含有した鋼である。
また、No.12からNo.20は、質量%で、C:0.0024%、Si:2.1%、Mn:0.2%、S:0.0025%、P:0.02%、Cu:0.01%を含有し、さらに、Al、Ti、NおよびREMの含有量を、表2に示すとおりに種々変更した鋼である。
これらの鋼を連続鋳造し、熱間圧延し、熱延板焼鈍し、厚さ0.50mmに冷間圧延し、850℃×30秒の仕上げ焼鈍を施し、絶縁皮膜を塗布して製品板を作成した。このときの製品板の結晶粒径は、いずれも、30〜33μmの範囲内にあった。
次に、これら製品板に、従来一般的に行われるより短時間の750℃×1.5時間の歪取り焼鈍を施した。その後に、結晶粒径ならびに磁気特性の調査を行った。結果を表2、ならびに、図3および図4に示す。
No.11からNo.14に示すように、製品成分値が適正であり、介在物量が本発明の範囲内にある場合には、歪取り焼鈍を施した後の結晶粒径は67〜71μmと粒成長し、また、磁気特性(鉄損:W15/50)は2.7[W/kg]以下と良好であった。
この製品板中の介在物の径、個数密度ならびに組成を、前述の方法により調査した結果、No.11には、径100nm未満のMnSが0.6×1010[個/mm3]存在し、No.12からNo.14には、径100nm未満のCu2Sが0.3〜0.5×1010[個/mm3]存在し、いずれも、1.0×1010[個/mm3]以下であった。また、製品中には、径が0.2[μm]〜2.0[μm]のREMオキシサルファイドならびにREMサルファイドが見られた。
図3に、REMオキシサルファイドの一例を示す。図3に示すように、含REM介在物の周辺にはTiNが複合析出し粗大化しているのが見られた。
このように、鋼中のREMがオキシサルファイドないしREMサルファイドを形成してSを固定することにより、微細サルファイドの生成が防止または抑制され、さらに、REMオキシサルファイドないしREMサルファイド上に、径数十nm超のTiNが複合析出して、Tiが固定されたことにより、微細な含Ti介在物の生成が防止されたことが明らかとなった。
No.15は、REM量が0.0003〜0.05質量%の範囲内にあるものの、Ti量が0.02質量%を超えており、この製品板中には、径100nm未満のTiSが2.5×1010[個/mm3]認められ、これにより、結晶粒成長が阻害され、歪取り焼鈍を施した後の結晶粒径は35[μm]に留まり、W15/50値は3.06[W/kg]と不良であった。
この場合、径100nm超の介在物としては、TiNが付随したREMオキシサルファイドならびにREMサルファイドが観察されたので、前述のように、Tiの無害化効果が発生した状態であったものの、Ti過多のために、REMオキシサルファイドないしREMサルファイドに固定しきれず、鋼中にTiが残留した。この鋼中Tiにより、熱延工程以降の温度履歴にて、TiCが相当量生成した。よって、Ti量の上限は0.02質量%が好ましい。
No.16、No.17、No.18は、REM量が0.0003〜0.05質量%の範囲内にあり、かつ、Ti量が0.02質量%以下であるものの、成分値が、前述の評価式(1)で規定される範囲から外れており、この製品板中には、径100nm超の介在物としてAlNが観察された。
また、径100nm未満のTiNが1.6〜1.8×1010[個/mm3]認められた。これにより、歪取り焼鈍を施した後の結晶粒径は38〜41[μm]であり、W15/50が2.76〜2.83[W/kg]と不良であった。
次に、図4に、前記(1)式の左辺の値と、介在物径100nm未満の微細TiNの有無との関係を示す。図中明らかなように、前記(1)式が満たされる場合には、微細TiNが抑制されることが判る。
また、図5に、前記(1)式の左辺の値と、焼鈍後の結晶粒径ならびに鉄損値との関係を示す。図中明らかなように、前記(1)式が満たされる場合には、結晶粒成長性が良く、かつ、鉄損値が良好であることが判る。
ここで特記すべきは、No.17およびNo.18に示すように、Ti量が少ない場合に、却って微細TiNが生成する場合があることである。これは前記(1)式からも示唆されるとおり、Ti量が過少な場合には、AlNの生成がより優先されるからである。
従来知見によると、Ti量は極力少ないほうが好ましいので、多大な労力を払ってでも、鋼中へのTiの混入防止が必要とされていたが、本発明によると、低Ti化に対する多大な労力を必要とせず、場合によっては積極的にTiを添加して、不可避的に混入するTi量よりも鋼中のTi量を高めるアクションを取る。
これにより、REMオキシサルファイド上またはREMサルファイド上にTiNが複合生成して、Tiが固定されるため、熱延以降の熱履歴でTiNが再溶解し、単独で微細に再析出することがなくなる。このため、熱延スケジュールの設定自由度が増す上に、良好な製品特性を得ることが可能となる。
すなわち、粒成長性良く鉄損に優れた電磁鋼板を得るために、上記に述べたTi量の好適範囲となるように、積極的なTi添加により制御を行う点や、または、Ti混入を抑制する場合にはTi混入量の制限を緩和できる点で、本発明の技術は、従来の技術と決定的に異なっている。
さらに、また、TiNの生成開始温度が、AlNの生成開始温度をより確実に上回る条件であれば、微細TiNの生成をより安定的に抑制することが可能となる。上記のTiNとAlNの生成開始温度の差として、約10℃程度以上を目安としている。
これを達成するための条件は、Ti、N、Alの各質量%値が、下記(2)式を満たせばよいことを、本発明者は併せて見出した。
log([Ti]×[N])−1.19×log([Al]×[N])
+1.70>0 ・・・(2)
但し、[Ti]はTiの質量%、[N]はNの質量%、[Al]はAlの質量%を示す。
あるいは、また、TiNとAlNの生成開始温度の差が約15℃以上であれば、TiNの生成開始温度が、AlNの生成開始温度をさらに確実に上回り、微細TiNの生成を、さらに安定的に抑制することが可能となるため、さらに好ましい。
これを達成するための条件は、Ti、N、Alの各質量%値が、下記(3)式を満たせばよいことを、本発明者は併せて見出した。
log([Ti]×[N])−1.19×log([Al]×[N])
+1.58>0 ・・・(3)
但し、[Ti]はTiの質量%、[N]はNの質量%、[Al]はAlの質量%を示す。
あるいは、また、TiNとAlNの生成開始温度の差が約20℃以上であれば、TiNの生成開始温度が、AlNの生成開始温度を一層確実に上回り、微細TiNの生成を、一層安定的に抑制することが可能となるため、一層好ましい。
これを達成するための条件は、Ti、N、Alの各質量%値が、下記(4)式を満たせばよいことを、本発明者は併せて見出した。
log([Ti]×[N])−1.19×log([Al]×[N])
+1.49>0 ・・・(4)
但し、[Ti]はTiの質量%、[N]はNの質量%、[Al]はAlの質量%を示す。
さらに好ましくは、Ti、N、Alの各質量%値が、下記(5)式を満たせばよいことを、本発明者は併せて見出した。
log([Ti]×[N])−1.19×log([Al]×[N])
+1.35>0 ・・・(5)
但し、[Ti]はTiの質量%、[N]はNの質量%、[Al]はAlの質量%を示す。
ところで、No.19はREMを全く含有せず、また、No.20はREM量が0.0002質量%であり、いずれも0.0003質量%に満たなかった。この製品板中の介在物を、前述の方法により調査した結果、微細なTiSが2.3〜2.9×1010[個/mm3]存在していた。よって、この場合には、REMによるSの固定が不十分であったことが判る。
これらの焼鈍後の結晶粒径は33〜36[μm]に留まって粒成長せず、また、W15/50値は3.0[W/kg]前後と不良であった。
ところで、以上の結果は、歪取り焼鈍を従来一般的に行われているより短時間で行った結果であるが、従来レベルの歪取り焼鈍を行った場合には、微細介在物のピン止め作用による結晶粒成長差がより顕著化するので、以上述べた結晶粒成長性、ならびに、鉄損の適不適が一層明確になることは言うまでもない。
次に、本発明における成分組成の好ましい含有量の限定理由について説明する。
[C]:Cは、磁気特性に有害となるばかりか、Cの析出による磁気時効が著しくなるので、上限を0.01質量%とした。下限は0質量%を含む。
[Si]:Siは、鉄損を減少させる元素である。Siが、下限の0.1質量%より少ないと、鉄損が悪化する。なお、鉄損をさらに減少させる観点から、好ましい下限は0.3質量%、より好ましくは0.7質量%、さらに好ましくは1.0質量%である。
また、Siが、上限の7.0質量%を超えると、加工性が著しく不良となるため、上限を7.0質量%とした。なお、上限としてより好ましい値は、冷延性がより良好な4.0質量%であり、さらに好ましい値は3.0質量%であり、一層好ましい値は2.5質量%である。
[Al]:Alは、Si同様に鉄損を減少させる元素である。Alが、下限の0.1質量%未満では、鉄損が悪化し、上限の3.0質量%を超えると、コストの増加が著しい。Alの下限は、鉄損の観点から、好ましくは0.2質量%、より好ましくは0.3質量%、さらに好ましくは0.6質量%とする。
[Mn]:Mnは、鋼板の硬度を増加させ、打抜性を改善するために、0.1質量%以上添加する。なお、上限の2.0質量%は経済的理由によるものである。
[S]:Sは、MnSやTiS等の硫化物となり、粒成長性を悪化させ、鉄損を悪化させる。本発明により、REM介在物として固定されるものの、その実用上の上限として0.005質量%、より好ましくは0.003質量%とした。下限は0質量%を含む。
[N]:Nは、AlNやTiNなどの窒化物となり鉄損を悪化させる。本発明によって、REM介在物にTiNとして固定されるものの、その実用上の上限として、0.005質量%とした。なお、上記の理由により、上限として、好ましくは0.003質量%、より好ましくは0.0025質量%、さらに好ましくは0.002質量%である。
また、前記の理由により、Nは、できる限り少ないほうが好ましいが、0質量%に限りなく近づけるには、工業的な制約が大きいため、下限を0質量%超とする。なお、実用上の下限として0.001質量%を目安とし、0.0005質量%まで下げると、窒化物が抑制されてより好ましく、0.0001質量%まで下げると、さらに好ましい。
[Ti]:Tiは、TiN、TiSなどの微細介在物を生成し、粒成長性を悪化させ、鉄損を悪化させる。本発明により、REM介在物にTiNとして固定されるものの、その実用上の上限として0.02質量%とした。なお、上記の理由により、上限として、好ましくは0.01質量%、より好ましくは0.005質量%である。
なお、前述の通り、下限は0質量%超である。但し、Ti量が過少な場合には、REM介在物への固定効果が発揮されない。
Ti量が0.0012質量%を超えれば、REM介在物への固定効果が発揮されて好ましく、さらに0.0015質量%を超えれば、固定効果が強化されて好ましく、さらに0.002質量%以上であれば、なお好ましく、さらに0.0025質量%以上であれば、一層好ましい。
[REM]:REMは、オキシサルファイドないしサルファイドを形成してSを固定し、微細サルファイドの生成を防止または抑制する。また、TiNの複合生成サイトとなり、Tiの固定効果を発揮する。
下限値の0.0003質量%未満の場合は、上記効果が充分でなく、また、上限値の0.05質量%を超えると、含REM介在物により結晶粒成長が阻害されるため、0.0003質量%以上0.05質量%以下を適正範囲とした。
また、REMの元素であれば、1種だけ用いても、あるいは、2種以上の元素を組み合わせて用いても、本発明の範囲内であれば、上記効果は発揮される。
なお、Sを固定する効果は、REM量に比例して高まるため、REMの下限値としては、0.001質量%が好ましく、0.002質量%がより好ましく、0.0025質量%がさらに好ましく、0.003質量%が一層好ましい。
また、前述の通り、REMオキシサルファイドないしREMサルファイド上にTiNが生成し成長することによって、Tiが固定されるので、Ti量に対するREM量が多い程、TiN生成サイトとしてのREMオキシサルファイド、ないし、REMサルファイドが増えるため、上記効果が促進されるのは自明である。
実用的には、Ti量に対するREM量の比率、すなわち、[REM]/[Ti]値が0.25を超えれば所用に足るが、[REM]/[Ti]値が0.5を超えれば、上記効果が促進されて好ましく、さらに、[REM]/[Ti]値が1.0を超えれば、さらに好ましく、さらに、[REM]/[Ti]値が1.25を超えれば、一層好ましい。
以上、述べてきた成分以外の元素で、本発明の鋼の効果を大きくさまたげるものでなければ、含有していてもよく、本発明の範囲とする。
以下に、選択元素について説明する。なお、これらの含有量の下限値は、微量でも含有されていればよいため、すべて0質量%超とする。
[P]:Pは、材料の強度を高め、加工性を改善する。但し、過剰な場合は冷延性を損ねるため、0.1質量%以下が好ましい。
[Cu]:Cuは、耐食性を向上させ、また、固有抵抗を高めて鉄損を改善する。但し、過剰な場合は、製品板の表面にヘゲ疵などが発生して表面品位を損ねるため、0.5質量%以下が好ましい。
[Ca]および[Mg]:CaおよびMgは、脱硫元素であり、鋼中のSと反応してサルファイドを形成し、Sを固定する。しかし、REMと異なり、TiNを複合して析出させる効果は小さい。添加量を多くすれば、脱硫効果が強化されるが、上限の0.05質量%を超えると、過剰なCaおよびMgのサルファイドにより粒成長が妨げられる。よって、0.05質量%以下が好ましい。
[Cr]:Crは、耐食性を向上させ、また、固有抵抗を高めて鉄損を改善する。但し、過剰な添加はコスト高となるため、20質量%を上限とした。
[Ni]:Niは、磁気特性に有利な集合組織を発達させ、鉄損を改善する。但し、過剰な添加はコスト高となるため、1.0質量%を上限とした。
[Sn]および[Sb]:SnまたはSbは、偏析元素であり、磁気特性を悪化させる(111)面の集合組織を阻害し、磁気特性を改善する。これらは、1種だけ用いても、あるいは、2種を組み合わせて用いても、上記効果を発揮する。但し、0.3質量%を超えると冷延性が悪化するため、0.3質量%を上限とした。
[Zr]:Zrは、微量でも結晶粒成長を阻害し、歪取り焼鈍後の鉄損を悪化させる。よって、できる限り低減して、0.01質量%以下とすることが好ましい。
[V]:Vは、窒化物あるいは炭化物を形成し、磁壁移動や結晶粒成長を阻害する。このため、0.01質量%以下とすることが好ましい。
[O]:Oは、0.005質量%より多く含有されると、酸化物が多数生成し、この酸化物によって、磁壁移動や結晶粒成長が阻害される。よって、0.005質量%以下とすることが好ましい。
[B]:Bは、粒界偏析元素であり、また、窒化物を形成する。この窒化物によって粒界移動が妨げられ、鉄損が悪化する。よって、できる限り低減して、0.005質量%以下とすることが好ましい。
以上の他にも、公知の元素を添加することが可能であり、例えば、磁気特性を改善する元素として、Bi、Geなどを用いることができ、これらを、所用の磁気特性に応じて、適宜選択すればよい。
次に、本発明における好ましい製造条件ならびにその規定理由について説明する。
まず、製鋼段階において、転炉や2次精錬炉などの常法により精錬する際、スラグの酸化度、すなわち、スラグ中のFeO+MnOの質量比を1.0〜3.0%の範囲内とすることが好ましい。
この理由は、スラグの酸化度が1.0%未満であれば、電磁鋼のSi範囲内では、Siの影響によりTiの活量が上がるため、スラグからの覆Tiを有効に防止し難く、鋼中のTi量が不必要に上がり、また、スラグの酸化度が3.0%超であれば、スラグからの酸素供給によって、溶鋼中のREMが不必要に酸化されて含硫化物とならず、鋼中Sの固定が不十分となるからである。
さらに、炉材耐火物などを吟味して外来性の酸化源を極力排除することも重要である。さらに、また、REM添加時に、不可避的に生成するREMオキサイドの浮上に足る時間を確保するため、REM添加から鋳造までの時間を10分以上おくことが好ましい。以上述べた対策によって、狙い通りの組成範囲内の鋼を製造することが可能となる。
上記のような方法によって、所望の組成範囲内の溶鋼を溶製した後、連続鋳造、ないし、インゴット鋳造により、スラブ等の鋳片を鋳造する。
その際に、鋼中のREMオキシサルファイドないしREMサルファイドにTiNが複合生成するが、鋳片の冷却を不必要に早めないことが、複合生成するTiNの成長に足る時間を確保する観点から重要であり、ひいては、本発明に規定する大きさの介在物の個数密度を得るために肝要である。
すなわち、TiNの生成開始温度である1200℃以上1300℃以下の温度範囲に存在する時間を、適正に調整することが重要である。
ここで付記すべきことは、所望の組成範囲内の鋼が、高温状態からTiNの生成開始温度に初めて到達した時に、TiNが初めて生成するが、その際に、1200℃以上1300℃以下の温度範囲を速やかに通過すると、含REM介在物に付随して生成したTiNが十分に成長できず、固定が不十分となる。
そして、一旦、固定し損ねると、Tiは、TiSやTiCなどのTiNより低温で生成する介在物となり、後工程の熱処理によって再溶解し再析出して微細な介在物となる。したがって、前記の温度範囲を最初に通過する際の温度コントロールが重要である。
なお、最適な温度パターンは、製造する成分によって種々異なるのであるが、TiNの生成開始温度である1200℃以上1300℃以下の範囲において、少なくとも1分以上、好ましくは5分以上、より好ましくは20分以上の時間を経ることが重要である。鋼の温度の測定方法としては、放射温度計等を用いる測定や、伝熱計算による計算解析が適用できる。
前記の表2において、No.11ならびにNo.12は、1200℃以上1300℃以下の温度範囲を1分以上20分未満で経過させたものであるが、No.13ならびにNo.14は、さらに数倍の時間にわたり、緩冷却となるべく温度パターンを調節したものであり、歪取り焼鈍後の結晶粒径ならびに鉄損値が、さらに改善されているのがわかる。
このとき、別途調査により、径100nmよりさらに微細な径50nm未満の介在物を調査した結果、No.13ならびにNo.14の製品中に含まれる径50nm未満の介在物の個数密度は、それぞれ、2.1×109[個/mm3]、ならびに、2.3×109[個/mm3]であって、2.5×109[個/mm3]以下であった。
すなわち、1200℃以上1300℃以下の温度範囲に存在する時間をより長時間化すると、前記のTi固定効果がより顕著になって、50nm未満の微細な介在物の個数密度がより減少するため、製品特性がより向上することが明らかであった。
なお、上記の1200℃以上1300℃以下の温度範囲に存在する時間は一例であり、これに限定されるものではない。
1200℃以上1300℃以下の範囲に存在する時間を調整する方法は、鋳造設備により様々であるが、鋳片を保温する設備を用いればよいのはもちろん、保温設備がなくとも、例えば、冷却水量密度の調整、あるいは、鋳造サイズおよび鋳造速度の調整などによっても達成できる。
この後、さらに、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍し、一回または中間焼鈍を挟む二回以上の冷間圧延により製品厚に仕上げ、次いで、仕上げ焼鈍し、絶縁皮膜を塗布する。以上述べた方法により、製品板中の介在物を、本発明の範囲内に制御することが可能となる。
質量%で、C:0.0024%、Si:2.1%、Mn:0.2%、S:0.0025%を含有し、かつ、表2に示す成分を含有する鋼、ならびに、さらに、P:0.02%、Cu:0.01%を含む鋼を、それぞれ溶解精錬し、スラブを連続鋳造し、その際に、スラブの温度が1300℃から1200℃に低下する時間を3分に調整し、その後に、熱間圧延、熱延板焼鈍、冷間圧延を経て板厚0.5mmの冷延板を製造した。
次いで、850℃×30秒の仕上げ焼鈍を施し、絶縁皮膜を塗布して製品板を製造し、さらに、750℃×1.5時間の歪取り焼鈍を施した後に、製品板中の介在物調査、結晶粒径調査ならびに25cmエプスタイン法による磁気特性調査を行った。
介在物調査は、前述の要領で行い、結晶粒径は、板厚断面を鏡面研磨し、ナイタールエッチングを施して結晶粒を現出させて、平均結晶粒径を測定した。
前記の表2から明らかなように、本発明に準拠する製品板は、結晶粒成長ならびに鉄損値に関して良好な結果が得られた。一方、本発明の範囲外の製品板は、結晶粒成長ならびに鉄損値が劣る結果が得られた。
以上説明したとおり、本発明によれば、無方向性電磁鋼板中に内包される微細な介在物のサイズと個数密度を適正範囲内にすることにより、簡易な焼鈍でも充分良好な磁気特性が得られ、特に、簡易な歪取り焼鈍でも充分良好な磁気特性を得ることが可能となり、需要家のニーズを満たしつつ省エネに貢献できる。よって、本発明は、産業上の利用可能性の大きいものである。
鋼中における径100nm未満の介在物の存在密度に対する、焼鈍後の結晶粒径ならびに鉄損値との関係を示す図である。 鋼中における径50nm未満の介在物の存在密度に対する、焼鈍後の結晶粒径ならびに鉄損値との関係を示す図である。 REMオキシサルファイドの周辺にTiNが複合した介在物を示す図である。 成分値と前記(1)式により計算される指標と製品中の微細TiNの存在との関係を示す図である。 成分値と前記(1)式により計算される指標と、焼鈍後の結晶粒径ならびに鉄損値との関係を示す図である。

Claims (6)

  1. 鋼板内に含まれる球相当径100nm未満の介在物の個数密度が1×1010[個/mm3]以下であることを特徴とする鉄損に優れた無方向性電磁鋼板。
  2. 鋼板内に含まれる球相当径50nm未満の介在物の個数密度が2.5×109[個/mm3]以下であることを特徴とする鉄損に優れた無方向性電磁鋼板。
  3. 質量%で、C:0.01%以下、Si:0.1%以上7.0%以下、Al:0.1%以上3.0%以下、Mn:0.1%以上2.0%以下、REM:0.0003%以上0.05%以下、Ti:0.02%以下、S:0.005%以下、N:0.005%以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、かつ、[Al]で示されたAlの質量%、[N]で示されたNの質量%、および、[Ti]で示されたTiの質量%が、下記(1)式を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の鉄損に優れた無方向性電磁鋼板。
    log([Ti]×[N])−1.19×log([Al]×[N])
    +1.84>0 ・・・(1)
  4. 前記鋼板が、さらに、質量%で、P:0.1%以下、Cu:0.5%以下、CaまたはMg:0.05%以下、Cr:20%以下、Ni:1.0%以下、SnおよびSbの一種または二種の合計:0.3%以下、Zr:0.01%以下、V:0.01%以下、O:0.005%以下、B:0.005%以下の一種以上を含有することを特徴とする請求項3に記載の鉄損に優れた無方向性電磁鋼板。
  5. 質量%で、C:0.01%以下、Si:0.1%以上7.0%以下、Al:0.1%以上3.0%以下、Mn:0.1%以上2.0%以下、REM:0.0003%以上0.05%以下、Ti:0.02%以下、S:0.005%以下、N:0.005%以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、かつ、[Al]で示されたAlの質量%、[N]で示されたNの質量%、および、[Ti]で示されたTiの質量%が、下記(1)式を満たす鋼を、1200℃以上1300℃以下の温度範囲に1分間以上経過させることを特徴とする鉄損に優れた無方向性電磁鋼板の製造方法。
    log([Ti]×[N])−1.19×log([Al]×[N])
    +1.84>0 ・・・(1)
  6. 前記鋼が、さらに、質量%で、P:0.1%以下、Cu:0.5%以下、CaまたはMg:0.05%以下、Cr:20%以下、Ni:1.0%以下、SnおよびSbの一種または二種の合計:0.3%以下、Zr:0.01%以下、V:0.01%以下、O:0.005%以下、B:0.005%以下の一種以上を含有することを特徴とする請求項5に記載の鉄損に優れた無方向性電磁鋼板の製造方法。
JP2004135675A 2003-05-06 2004-04-30 無方向性電磁鋼板およびその製造方法 Expired - Lifetime JP4280197B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004135675A JP4280197B2 (ja) 2003-05-06 2004-04-30 無方向性電磁鋼板およびその製造方法

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003128309 2003-05-06
JP2004029386 2004-02-05
JP2004130034 2004-04-26
JP2004135675A JP4280197B2 (ja) 2003-05-06 2004-04-30 無方向性電磁鋼板およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005336503A true JP2005336503A (ja) 2005-12-08
JP4280197B2 JP4280197B2 (ja) 2009-06-17

Family

ID=35490396

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004135675A Expired - Lifetime JP4280197B2 (ja) 2003-05-06 2004-04-30 無方向性電磁鋼板およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4280197B2 (ja)

Cited By (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2006048989A1 (ja) * 2004-11-04 2006-05-11 Nippon Steel Corporation 鉄損に優れた無方向性電磁鋼板
WO2013121924A1 (ja) 2012-02-14 2013-08-22 新日鐵住金株式会社 無方向性電磁鋼板
JP2015508454A (ja) * 2011-12-28 2015-03-19 ポスコ 無方向性電気鋼板およびその製造方法
CN105132808A (zh) * 2015-10-14 2015-12-09 安徽工业大学 一种复合元素处理的高效电机用无取向硅钢的制备方法
JP2016509625A (ja) * 2012-12-27 2016-03-31 ポスコ 鉄損に優れた方向性電磁鋼板及びその製造方法
JP2017128759A (ja) * 2016-01-19 2017-07-27 新日鐵住金株式会社 無方向性電磁鋼板及びその製造方法
JP2019035116A (ja) * 2017-08-16 2019-03-07 新日鐵住金株式会社 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP2019035114A (ja) * 2017-08-16 2019-03-07 新日鐵住金株式会社 無方向性電磁鋼板
JP2020509185A (ja) * 2016-12-19 2020-03-26 ポスコPosco 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP2020126014A (ja) * 2019-02-06 2020-08-20 東京電力ホールディングス株式会社 流量計測システム、流量計測装置および流量計測方法
CN112359287A (zh) * 2020-11-16 2021-02-12 湖南上临新材料科技有限公司 一种高效电机用无取向硅钢及其制备方法

Cited By (18)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2006048989A1 (ja) * 2004-11-04 2006-05-11 Nippon Steel Corporation 鉄損に優れた無方向性電磁鋼板
US7662242B2 (en) 2004-11-04 2010-02-16 Nippon Steel Corporation Non-oriented electrical steel superior in core loss
JP2015508454A (ja) * 2011-12-28 2015-03-19 ポスコ 無方向性電気鋼板およびその製造方法
US10096414B2 (en) 2011-12-28 2018-10-09 Posco Non-oriented electrical steel sheet and method of manufacturing the same
WO2013121924A1 (ja) 2012-02-14 2013-08-22 新日鐵住金株式会社 無方向性電磁鋼板
US8840734B2 (en) 2012-02-14 2014-09-23 Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation Non-oriented electrical steel sheet
US9847158B2 (en) 2012-12-27 2017-12-19 Posco Grain oriented electrical steel sheet having excellent core loss, and method for manufacturing same
JP2016509625A (ja) * 2012-12-27 2016-03-31 ポスコ 鉄損に優れた方向性電磁鋼板及びその製造方法
US10109405B2 (en) 2012-12-27 2018-10-23 Posco Grain oriented electrical steel sheet having excellent core loss, and method for manufacturing same
CN105132808A (zh) * 2015-10-14 2015-12-09 安徽工业大学 一种复合元素处理的高效电机用无取向硅钢的制备方法
JP2017128759A (ja) * 2016-01-19 2017-07-27 新日鐵住金株式会社 無方向性電磁鋼板及びその製造方法
JP2020509185A (ja) * 2016-12-19 2020-03-26 ポスコPosco 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
US11319619B2 (en) 2016-12-19 2022-05-03 Posco Non-oriented electrical steel sheet and manufacturing method therefor
JP2019035116A (ja) * 2017-08-16 2019-03-07 新日鐵住金株式会社 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP2019035114A (ja) * 2017-08-16 2019-03-07 新日鐵住金株式会社 無方向性電磁鋼板
JP7180059B2 (ja) 2017-08-16 2022-11-30 日本製鉄株式会社 無方向性電磁鋼板
JP2020126014A (ja) * 2019-02-06 2020-08-20 東京電力ホールディングス株式会社 流量計測システム、流量計測装置および流量計測方法
CN112359287A (zh) * 2020-11-16 2021-02-12 湖南上临新材料科技有限公司 一种高效电机用无取向硅钢及其制备方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP4280197B2 (ja) 2009-06-17

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR100742420B1 (ko) 철손에 우수한 무방향성 전자 강판 및 그 제조 방법
JP4568190B2 (ja) 無方向性電磁鋼板
KR100912974B1 (ko) 저철손 무방향성 전자기 강판
JP4681689B2 (ja) 無方向性電磁鋼板及びその製造方法
JP5733409B2 (ja) 無方向性電磁鋼板
JP4510911B2 (ja) 高周波用無方向性電磁鋼鋳片の製造方法
JP6350398B2 (ja) 方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP5360336B1 (ja) 無方向性電磁鋼板
JP4586741B2 (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP4280197B2 (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP5263012B2 (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
KR20010100866A (ko) 가공성이 우수한 저철손 무방향성 전자 강판 및 그 제조방법
KR950005791B1 (ko) 고스(Goss) 방위로 집적한 결정방위를 갖는 방향성 규소강판의 제조방법
TW201502288A (zh) 高頻率鐵損特性優良的無方向性電磁鋼板
JP4280224B2 (ja) 鉄損に優れた無方向性電磁鋼板
JP4280223B2 (ja) 鉄損に優れた無方向性電磁鋼板
JP4267437B2 (ja) 歪取焼鈍後の磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板とその製造方法
JP3252692B2 (ja) 磁気特性のすぐれた無方向性電磁鋼板およびその製造方法
CN113166871A (zh) 无取向电工钢板及其制造方法
JP7492163B2 (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法、ならびに熱延鋼板
TWI751812B (zh) 無方向性電磁鋼板及其製造方法、以及熱軋鋼板
WO2022219742A1 (ja) 無方向性電磁鋼板用熱延鋼板及びその製造方法
JP2003247052A (ja) 高周波特性に優れた無方向性電磁鋼板
KR20230109727A (ko) 무방향성 전자 강판 및 그 제조 방법, 그리고 열연 강판
TW202221149A (zh) 無方向性電磁鋼板及其製造方法、以及熱軋鋼板

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20061113

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20080325

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20080526

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20090303

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20090313

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120319

Year of fee payment: 3

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 4280197

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120319

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130319

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130319

Year of fee payment: 4

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130319

Year of fee payment: 4

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130319

Year of fee payment: 4

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130319

Year of fee payment: 4

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140319

Year of fee payment: 5

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350