JP2005336423A - 耐水性で透明な熱可塑性有機組成物の製造方法およびその製造方法によって得られる熱可塑性有機組成物 - Google Patents

耐水性で透明な熱可塑性有機組成物の製造方法およびその製造方法によって得られる熱可塑性有機組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】伸展性、透明性および耐水性が飛躍的に向上した熱可塑性有機組成物の製造方法およびその製造方法によって得られる熱可塑性有機組成物を提供する。
【解決手段】デンプンを、炭酸ガスまたは加熱により炭酸ガスを放出する化合物および水の存在下で、該炭酸ガスが超臨界状態または亜臨界状態となる条件下で押し出す工程を含む熱可塑性有機組成物の製造方法であって、該炭酸ガスの配合量が、水を基準にして0.01〜1重量%である製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性有機組成物の製造方法およびその製造方法によって得られる熱可塑性有機組成物に関し、詳しくは高いMI値を有し(優れた伸展性を有し)、硬化物の透明性および耐水性に優れた熱可塑性有機組成物の製造方法およびその製造方法によって得られる熱可塑性有機組成物に関する。
本発明の熱可塑性有機組成物は加水分解縮重合多糖類からなる。加水分解縮重合多糖類に関する技術としては特許文献1に記載の技術があげられる。特許文献1には、デンプンを、水および水を基準にして0.1〜3重量%で配合された炭酸ガスの存在下、炭酸ガスが超臨界状態または亜臨界状態となる条件下で、加水分解して低分子量化した化合物同士、またはこの低分子量化した化合物とその他の化合物とを脱水縮合することによって加水分解縮重合デンプンが製造できることが開示されている。
特許文献1に記載の加水分解縮重合デンプンは、生分解性に優れ、確かに合成樹脂の代替品として画期的なものであったが、伸展性が小さく、非常にハードな条件でのフィルム成形が強いられ、かつその条件で得た硬化物でさえ透明性は劣っていた。そのため、高い透明性が要求されるカプセルなどに採用することは不可能であった。換言すれば、特許文献1に開示された技術によって得られた熱可塑性有機組成物からカプセルなどを製造しようとしても、透明性などの点で、カプセルに求められる厳しい物性が充分に満たされないという問題があった。さらに、デンプンは水溶性であるため単独での成形用途に限界があった。このように、特許文献1に記載の加水分解縮重合デンプンを成形して得たフィルムやシートなどの成型品の物性、とくに伸展性や透明性に関しては、いまだ満足のいくものではなく、研究開発が望まれていた。
国際公開第03/014164号パンフレット
本発明の目的は、伸展性、透明性および耐水性が飛躍的に向上した熱可塑性有機組成物の製造方法およびその製造方法によって得られる熱可塑性有機組成物を提供することである。
前記の課題を解決するために鋭意研究した結果、超臨界状態および亜臨界状態の条件下で配合される炭酸ガスの量を規定することで、得られる熱可塑性有機組成物を成形したシートやフィルムの伸展性、透明性および耐水性が飛躍的に向上することを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、デンプンを、炭酸ガスまたは加熱により炭酸ガスを放出する化合物および水の存在下で、該炭酸ガスが超臨界状態または亜臨界状態となる条件下で押し出す工程を含む熱可塑性有機組成物の製造方法であって、該炭酸ガスの配合量が、水を基準にして0.01〜1重量%である製造方法に関する。
本発明はまた、前記製造方法によって得られる熱可塑性有機組成物に関し、その熱可塑性有機組成物のMI値が5以上であること、その熱可塑性有機組成物をフィルムに成形したときのフィルムの、JIS K6714の試験方法により測定されるヘイズが20%以下であること、またはその熱可塑性有機組成物をフィルムに成形したときの未延伸フィルムの引張破断伸度が130%以上であることが好ましい。
本発明はさらに、前記熱可塑性有機組成物からなるカプセル、フィルムまたはモールド成形体に関する。
本発明により、生分解性に優れ、成形して得たフィルムやシートなどの成形品の物性、とくに伸展性や透明性などに優れた熱可塑性有機組成物が得られる。耐水性をもたせることでデンプンを単独で、従来の限られた用途以外の用途に使用できる。さらに、得られた熱可塑性有機組成物をポリ乳酸などの化学合成品と併用しても、たとえば、透明性および伸展性が高く、混合されたデンプン部分が水によって流れ出ることがない。
汎用樹脂とデンプンのブレンドの場合、樹脂の配合量が少ないと、強度にも水にも弱い組成物となるが、本発明によれば、わずかな樹脂量でも強度を維持することができる。生分解性フィルムシートなど、とくに伸展性や透明性、耐水性などが要求される成型品の製造が可能となる。
本発明は、デンプンを、炭酸ガスまたは加熱により炭酸ガスを放出する化合物および水の存在下で、該炭酸ガスが超臨界状態または亜臨界状態となる条件下で押し出す工程を含む熱可塑性有機組成物の製造方法であって、該炭酸ガスの配合量が、水を基準にして0.01〜1重量%である製造方法に関する。
[原料]
(デンプン)
デンプンは、たとえば、大麦、ライ麦、カラス麦、小麦、米およびとうもろこしなどの穀物、じゃがいもならびにタピオカなどのいも類から生産されている。本発明では、原料デンプンの種類はとくに限定されないが、とうもろこしデンプンは経済性に優れるので好ましい。デンプンは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、ポリ乳酸などの化学合成品と併用することもでき、透明性および伸展性が高い生分解性フィルムシートの製造が可能となる。
(炭酸ガス)
本発明において使用される炭酸ガスとしては、炭酸ガスそのもの以外にも、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウムなどの加熱されることにより炭酸ガスを放出する化合物を使用することができる。これらの化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、炭酸ガスと併用することもできる。本明細書中において「炭酸ガス」という場合、加熱により炭酸ガスを放出する化合物も含む。
[製造条件など]
本発明の熱可塑性有機組成物は加水分解縮重合多糖類からなる。加水分解縮重合多糖類は、デンプンを、炭酸ガスと水の存在下で、炭酸ガスが超臨界状態または亜臨界状態となる条件下で、押し出すことにより製造することができる。
水の使用量は、たとえば、デンプン100重量部(水分を除く)に対して、デンプン中に含まれる水分(通常12〜13重量%)と併せて30〜80重量部、好ましくは50〜70重量部とする。水の使用量が30重量部未満の場合、デンプンの反応率が低下する傾向があり、また、80重量部をこえると、分子量の回復が少なくなる、所定時間内に乾燥せず含気した成形物(たとえば、フィルムシート)となる、乾燥するための脱水に必要なエネルギーが大きくなり経済的に好ましくない、ならびに流動化により必要な圧力が得られないなどの傾向がある。
炭酸ガスの使用量は、水を基準にして0.01〜1重量%であり、好ましくは0.03〜0.08重量%である。炭酸ガスは、デンプンの分解反応の際、触媒的に作用するので、微量でも効果を発揮する。
デンプンと炭酸ガスとを、水の存在下、炭酸ガスが超臨界状態または亜臨界状態となる条件下で、ホッパーから第1ベント口までのあいだで反応させる。
炭酸ガスは、温度31.1℃以上、圧力7.48MPa以上の条件下で超臨界状態となり、温度31.1℃以上、圧力7.48MPa未満の条件下および温度31.1℃未満、圧力7.48MPa以上の条件下で亜臨界状態となる。超臨界状態または亜臨界状態の炭酸ガスは、デンプンの加水分解反応を促進するとともに、加水分解したデンプンとの脱水縮重合反応に寄与し、より均一な分子鎖長をもつ多糖類を形成する。
反応圧力(反応最高圧力)は、好ましくは7.48〜29.4MPaであり、より好ましくは15.7〜23.5MPaとすることができる。7.48MPa未満では、反応率が低下する傾向があり、また、29.4MPaをこえると、得られる加水分解縮重合デンプンが着色し、分子量が著しく低下、脆化する傾向がある。高圧での反応時間は、好ましくは1〜10分間であり、より好ましくは3〜5分間である。反応時間が1分未満であると、反応率が低下し、充分な性能を有する加水分解縮重合多糖類が得られない傾向があり、また、10分をこえると、得られる加水分解縮重合デンプンが着色し、分子量が著しく低下、脆化する傾向がある。ここで、第2ベントロで強力に脱水をかけ、その後、ダイスまでの間で高圧力(20MPa以上)にもってくるとより耐水性になる。
また、反応温度は、好ましくは100〜350℃であり、より好ましくは135〜155℃である。100℃未満では反応率が低下し、350℃をこえると、得られる加水分解縮重合デンプンが着色し、分子量が著しく低下、脆化する傾向がある。
デンプンと炭酸ガスとを、前記のような条件下で反応させることにより、デンプンが加水分解され、本発明の熱可塑性有機組成物が生成される。デンプンと炭酸ガスとを前記各条件下で反応させることによって、デンプンの主鎖の加水分解反応と、加水分解されたデンプンの脱水縮重合とが連続しておこる。デンプンの主鎖の加水分解反応が進行し、かつデンプンの分岐が切断されてデンプンの分子量が減少するとともに、デンプンがランダムに結合する。ここで、グリセリン系の可塑剤を使用すると、これが糖鎖間に浸透して疎水性と柔軟性が付与され、熱可塑性有機組成物が熱可塑性を示すので好ましい。超臨界状態または亜臨界状態となる条件下で加水分解すると、デンプンの分子量がより減少するので、グリセリンが浸透しやすくなる。この場合、その後に水に触れても、水は糖鎖間に入り込みにくく、得られる熱可塑性有機組成物は優れた耐水性をもつようになる。これに対して、常圧で加熱してもデンプンの分子量はそれほど減少しないので、グリセリンは糖鎖間にうまく浸透せず、その後に水と触れると、その水によってグリセリンが押出されてしまい耐水性が損なわれる。
デンプンは、水の存在下、高圧かつ高せん断力下で加熱することにより加水分解される。デンプンの加水分解を高圧で短時間に行わせ、その後、引き続き脱水縮重合反応を行わせるために、デンプンと炭酸ガスとの反応には、脱水用ベント付き押出し機形式の連続反応機を使用することが好ましい。反応機としては、押出し機が使用され、たとえば、2ベント付き押出し機または3ベント付き押出し機が使用されることが好ましい。使用するスクリューは、好ましくは、供給部のみ食い込みをよくするため2軸とし、この後からダイまでは1軸で構成される。たとえば、3ベント付き押出し機は、好ましくは、スクリュー供給部、せん断混練り圧縮部、解放ベント部、混練り圧縮部、真空ポンプ吸引ベント部、混練り圧縮部、真空ポンプ吸引ベント部、混練り圧縮部から構成される。反応機として押出し機を使用する場合、たとえば、9.8〜24.5MPaのノズル前圧力で押出すことが好ましい。
押出し機を使用し、デンプンを、炭酸ガスと水の存在下で反応させる場合、たとえばノズル前圧力を15.7MPa以上に維持し、大気中に瞬時に押出して急激な脱水を起こさせることにより、グルコース単位のヒドロキシメチル基間に炭酸ガスの架橋を一部起こさせることができる。この部分的な炭酸架橋により、充分な架橋密度を有し、軟化点以上でチキソトロピー性を示す加水分解縮重合多糖類を得ることができる。架橋された加水分解縮重合多糖類は、単に軟化点以上に加熱しただけでは架橋が切れないので、表面張力を小さくするために球状になるということがなく原形を維持するが、この状態でわずかな荷重を加えると容易に流動・変形する。変形は荷重を取り除くと維持され、可逆的チキソトロピー性を示す。この架橋反応は、ヒドロキシメチル基間における脱水による架橋反応であるためより急激に脱水されるほど、すなわちより高圧からより急激に減圧されるほど、加水分解縮重合多糖類の架橋密度が高くなり、水膨潤性が低く、耐水性が高くなり、加水分解縮重合多糖類が膠着しにくくなる。なお、本発明では、使用する二酸化炭素の量が少量なので、炭酸ガスに由来する架橋をフーリエ変換赤外分光光度計によるFT−IR測定では確認できないことがある。
たとえば、押出し機のダイスに接触するホットカッターにより切断して得られる架橋された加水分解縮重合多糖類のペレットは、若干の空気を吹き付けられながら落下して、たとえば、1m下に設置された受け皿に留まった状態でも膠着しないので、そのまま圧送エジェクターにより搬送することができる。
[加水分解縮重合多糖類の性状など]
(分子量)
本発明の熱可塑性有機組成物に用いることができる加水分解縮重合多糖類の重量平均分子量は、30,000〜500,000であることが好ましく、50,000〜200,000であることがより好ましい。分子量が低い加水分解縮重合多糖類は、機械的物性が低い傾向があり、また分子量が高い加水分解縮重合多糖類は流動性が低く、成形しにくい場合がある。分子量は、デンプンと炭酸ガスとを反応させる際の反応温度を高くすることにより、または反応圧力を高くすることにより、低くなる傾向がある。
また、加水分解縮重合多糖類のMI値は5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。
(透明性)
本発明の熱可塑性有機組成物は、デンプンが粒子として存在しないため透明性に優れている。すなわち、たとえば、ホットプレスにより作製した1mm厚さのシートについて分光光度計によって求められるヘイズ(JIS K6714の試験方法により測定されるヘイズ)は、20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。ヘイズは、たとえばスガ試験機(株)製、HGM−2DPにより、Tt(全光線透過率(%))およびTd(拡散透過率(%))を測定し、ヘイズ(%)=Td÷Tt×100として算出することができる。本発明の熱可塑性有機組成物のシートは、水中に浸漬すると部分的な膨潤性の差により屈折率の部分差が生じ、光散乱を起こして徐々に白濁してくるが、乾燥することにより屈折率の曲部差がなくなり再度透明となる。
(引張破断伸度)
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、フィルムに成形したときの未延伸フィルムの引張破断伸度が130%以上であることが好ましく、150%以上であることがより好ましい。
(伸展性)
本発明の熱可塑性有機組成物は、たとえば、溶融紡糸によって紡糸することができる。
たとえば、紡出された糸を、整流された気流(空気)により冷却する場合、急速に冷却するよりも、緩やかに冷却した方が可紡性がよくなる傾向がある。気流により加水分解縮重合デンプンに含まれた水分が除去される。紡糸と同時または紡糸後に延伸を行ってもよい。未延伸糸の引張破断強度は、たとえば0.5g/d以上であり、引張破断伸度は、たとえば600%以上であることが好ましい。また、未延伸糸を延伸することにより、繊維強度を向上させることができる。繊維強度を向上させる点から、加水分解縮重合デンプンのガラス転移点以上の温度で、未延伸糸を延伸することが好ましい。未延伸糸を延伸することにより、たとえば引張破断強度が3g/d以上、延伸条件によっては5g/d以上の繊維を得ることができる。
広く知られている生分解性樹脂であるポリ乳酸は、未延伸状態における引張破断伸度が常温で2〜3%と非常に小さく脆弱で実用に耐えず、また、真空モールド成形しても、変形の大きい部分は延伸されるが、金型の縁の部分は殆ど延伸されないため、未延伸部分が残り、この部分が脆弱で実用に耐えない。これに対して、本発明の熱可塑性有機組成物から製造される未延伸フィルムは、引張破断伸度が常温(たとえば25℃)で130%以上であり、未延伸部分でも実用に供しても問題のない機械的物性を有する。
(他の物性)
本発明の熱可塑性有機組成物の水分率は、温度20℃、相対湿度60%の条件下で24時間放置することにより、実質的に恒量平衡に達したときに1〜6重量%であることが好ましい。また、常温(たとえば25℃)の水中に1時間浸漬して膨潤させた前後の重量測定と絶乾重量から算出される水膨潤率が150〜400%であることが好ましい。前記膨潤率が400%をこえると、熱可塑性有機組成物は耐水性が低く、またペレットが膠着しやすい傾向があり、150%未満であると、熱可塑性有機組成物の流動性が低くなる傾向がある。
本発明の熱可塑性有機組成物は、デンプンの主鎖中の一部に炭酸ガス架橋により形成する柔軟な線状有機基を有することにより、吸湿性が著しく大きいというデンプンの欠点が改良されており、熱可塑性であり、柔軟性を有する。すなわち、水と炭酸ガスの超臨界状態あるいは亜臨界状態で、デンプンは糖鎖間の水素結合が崩れ主鎖の交換反応(1−4,1−6→4−2,4−3など)が生じ、ネイティブなデンプン構造である粗密が崩れて、より均質な糖鎖配列が形成され、それに伴う新規な水素結合が形成される。その新規結合はネイティブな結合より強固であり、全体としては網状構造が形成され、可溶化や水和が抑制されていると考えられる。また、この新規結合を含む高次構造は酵素にも耐性を発現する。これは、加水→糊化→脱水の過程で生成される。とくに、超臨界状態あるいは亜臨界状態である高圧により、より糖鎖間距離が小さくなり、脱水・乾燥時にそれらの凝固な結合が生成される。
[用途]
本発明の熱可塑性有機組成物は、繊維からなる乾式不織布、湿式不織布、熱融着不織布、ケミカルボンド不織布などの不織布および布帛などの繊維製品、フィルム、シート、パイプ、棒などの押出成形品、モールド成形品および射出成形品の原料として使用することができる。
本発明の熱可塑性有機組成物は、たとえば、溶融紡糸によって紡糸することができる。すなわち、熱可塑性有機組成物を押出し機で溶融、混練し、ギアポンプで計量しつつ、ノズルから紡出し、オイリングしたのち、巻取ることによって、フィラメントを得ることができる。このフィラメントを、さらに延伸したり、他の繊維と混繊したり、仮撚り加工をしたり、交撚などの加工をすることにより、各種の繊維製品を得ることができる。
溶融紡糸するための材料としては、温度190℃、荷重2.16kgの条件下における2mm径のノズルからの10分間の流出量(g)で規定されるMI値が100〜500、とりわけ200〜400の熱可塑性有機組成物が好ましい。この条件下でのMI値が100未満、または500をこえる熱可塑性有機組成物では、繊維製品を製造する際の可紡性が低い。
本発明の熱可塑性有機組成物を紡糸したのち、集束して繊維束とし、熱延伸したのち、オイリング、クリンピングおよびカットすることにより、ステープル(短繊維)を得ることができる。カットすることにより得られたステープルは、通常、カットしたのち、すぐに梱包される。ステープルは、混紡により、他の繊維と混合して用いることができる。
本発明の熱可塑性有機組成物の繊維を用いた紡績糸は、他の糸と交撚したり、引き揃えをして用いることもできる。本発明の熱可塑性有機組成物の繊維は、一般的なフィラメントまたは紡績糸と同様にして、編織物を製造するために用いることができる。本発明の熱可塑性有機組成物のステープルは、一般的なステープルと同様にして、ニードルパンチング法、エアレイ法、スパンレース法、抄紙法により、不織布を製造するために使用することができる。
本発明の熱可塑性有機組成物を用いて、フィルムおよびシート成形品(袋用を含む)を製造することができる。たとえば、本発明の熱可塑性有機組成物をTダイ法により押出し成形することにより、フィルムおよびシートを製造することができる。Tダイ法でフィルムまたはシートを製造する場合、得られるフィルムまたはシートの厚さは、押出し量と引き取り速度とを調節することにより制御することができる。本発明の熱可塑性有機組成物のフィルムおよびシートは、インフレーション法によっても製造することができる。インフレーション法によってフィルムまたはシートを製造する場合には、操業上、粘度が、MI値で1〜10、とりわけ1〜5の熱可塑性有機組成物を用いることが好ましい。
本発明の熱可塑性有機組成物のフィルムまたはシートを製造する場合、熱可塑性有機組成物の押出し温度は、熱可塑性有機組成物の融点の上下20℃以内の範囲とすることが好ましく、たとえば、140〜180℃とすることが好ましい。
Tダイ法またはインフレーション法で得られた本発明の熱可塑性有機組成物のフィルムまたはシートを延伸することにより延伸フィルムまたは延伸シートを製造することができる。本発明の熱可塑性有機組成物のフィルムおよびシートを延伸する際の温度は、ガラス転位点以上、その30℃上までの範囲とすることが好ましい。
本発明の熱可塑性有機組成物の未延伸シートを、たとえば、真空モールド成形することによりモールド成形品を製造することができる。たとえば、厚さ0.2〜2mmのシートを赤外線ヒーターなどでガラス転位点以上に加熱し、真空モールド成形金型の上に移動し、金型から吸引することによりシートを金型の形に成形することができる。
[その他]
熱可塑性有機組成物のヒドロキシメチル基間を架橋剤により架橋し、これにより、水膨潤性を抑制し、耐水性を向上させることもできる。架橋の程度はわずかでも充分な水膨潤抑制効果を示す。架橋が増加するにしたがい水膨潤性が低下する。
架橋剤としては、たとえばリン酸類、多価カルボン酸類、ヒドロキシカルボン酸類、エポキシ、酸無水物、イソシアネート、シラン化物などを使用することができる。架橋剤としては、たとえばトリポリリン酸ナトリウムなどのリン酸塩;シュウ酸、マレイン酸、アジピン酸、フタル酸、コハク酸などの多価カルボン酸;アジピン酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、マレイン酸カルシウム、フタル酸カルシウム、コハク酸カルシウムなどの多価カルボン酸塩;乳酸などのヒドロキシカルボン酸;乳酸カルシウムなどのヒドロキシカルボン酸塩;炭酸ガス;重炭酸ナトリウム、重炭酸カルシウムなどの重炭酸塩;モノグリシジルエーテルなどのエポキシ;無水コハク酸、無水マレイン酸などの酸無水物;ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエン2,4−ジイソシアネートなどのイソシアネート;ビニルトリメチルシランなどのシラン化物;ヘキサヒドロ−1,3,5−トリスアクリロイル−s−トリアジンがある。架橋剤は、1種を単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
熱可塑性有機組成物に架橋剤を添加し、加熱(たとえば100〜180℃)して混練することにより、熱可塑性有機組成物を架橋することができる。架橋剤の添加量は、架橋する前の熱可塑性有機組成物を基準として、0.01〜3重量%が好ましい。架橋剤の添加量が少ないと熱可塑性有機組成物の水膨潤性を抑制し、耐水性を向上させる効果が小さい傾向があり、熱可塑性有機組成物が水に溶解してしまい、水膨潤性が無限大となる場合がある。架橋剤の添加量が多すぎると、熱可塑性有機組成物の熱可塑性および流動性が低下し、加工性が低下する場合がある。
なお、一般のポリマー用添加剤を用いることができる。これらの添加剤としては、たとえば着色剤(顔料、染料)、抗菌剤、防臭剤、防腐剤、防虫剤、静電防止剤、耐光剤、耐熱剤、ブロッキング防止剤などの添加剤があげられる。これらの添加剤は、単独で使用することができ、または、2種以上を併用することもできる。これらの添加剤の使用に関しては用途により食品としての特性、薬品としての特性、廃棄時の生分解性などに悪影響のないように配慮すべきである。
脂肪族有機酸およびそのグリセリドなどの可塑剤を加えることにより、熱可塑性を向上させることができる。可塑剤の配合量を増加させることにより、さらに熱可塑性を向上させることができる。
以下、本発明の詳細を実施例にて説明する。
実施例1
とうもろこしデンプン100重量部に対して、イオン交換水を該デンプン中に含まれる通常12〜13重量%の水分とあわせて70重量部混合し、45mmトリプルベント付き1軸押出し機に供給した。ついで、その供給物に押出し機の導入口より二酸化炭素(CO2)0.035重量部(水を基準として、0.05重量%)を加圧下で導入した。ベント口から開放、水封ポンプ、油拡散ポンプで脱水した。押出し機のスクリューは、供給、混練り、圧縮、ベントから脱水、混練り、圧縮の過程を経るように設計し、通常の2軸押出し機に劣らない混練り効果を得られるようにした。加熱最高温度150℃、圧力22.5MPaでデンプンを加水分解し、加水分解されたデンプンと二酸化炭素とを引き続き、急激に開放し脱水縮重合させた。全滞留時間を3分、原料の供給速度を50kg/時間とした。
生成した熱可塑性有機組成物を100メッシュのフィルターで濾過後、直径1mmのノズルから押出し、ホットカッターでペレットに成形した。得られた熱可塑性有機組成物ペレットは、MI値(温度180℃)(メルトフローレートMFRと同義)が15と良好な熱可塑性を示した。
<フィルムの成形>
熱可塑性有機組成物ペレットをスリット0.5mmのTダイ押出し装置を使用してダイ温度160℃で押出し、膜厚約400ミクロンの未延伸フィルムを製造した。得られたフィルムの引張破断強度は0.7N/mm2、引張破断伸度は160%、ヘイズ(JIS K6714の試験方法により測定した)は8%であった。そして、温度20℃、相対湿度60%で24時間放置したのちの恒量水分率は4%、25℃の水中に1時間浸漬後の水膨潤率は380%であった。
なお、得られたフィルムについて、フーリエ変換赤外分光光度計によるFT−IR測定を行なったが、デンプンには認められないCO伸縮振動による1,724.9cm-1の吸収帯は確認されなかった。FT−IR測定には、パーキンエルマー社製フーリエ変換赤外分光光度計を使用した。
実施例2
第2ベント口からダイスまでの間を高圧力(23.5MPa)にした以外は実施例1と同様に熱可塑性有機組成物ペレットを得た。
得られた熱可塑性有機組成物ペレットの、25℃の水中に1時間浸漬後の水膨潤率は180%であった。
比較例1
二酸化炭素の配合量を、1.4重量部(水を基準として2重量%)とした以外は実施例1と同様に熱可塑性有機組成物ペレットを得た。
その熱可塑性有機組成物ペレットから得られたフィルムの引張破断強度は0.5N/mm2、引張破断伸度は125%、ヘイズ(JIS K6714の試験方法により測定した)は28%であった。そして、温度20℃、相対湿度60%で24時間放置したのちの恒量水分率は6%であり、25℃の水中に1時間浸漬後の水膨潤率については溶解した。
実施例3および比較例2
実施例1および比較例1で得られた組成物ペレットを使用して、従来公知の方法に従って実際にカプセルを製造した。
その結果、導入した炭酸ガスの量を、水を基準として0.01〜1重量%に規定して製造された熱可塑性有機組成物は、カプセルとしての用途に利用できる透明性を有していた。

Claims (8)

  1. デンプンを、炭酸ガスまたは加熱により炭酸ガスを放出する化合物および水の存在下で、該炭酸ガスが超臨界状態または亜臨界状態となる条件下で押し出す工程を含む熱可塑性有機組成物の製造方法であって、該炭酸ガスの配合量が、水を基準にして0.01〜1重量%である製造方法。
  2. 請求項1記載の製造方法によって得られる熱可塑性有機組成物。
  3. MI値が5以上である請求項2記載の熱可塑性有機組成物。
  4. 前記熱可塑性有機組成物をフィルムに成形したときのフィルムの、JIS K6714の試験方法により測定されるヘイズが20%以下である請求項2記載の熱可塑性有機組成物。
  5. 前記熱可塑性有機組成物をフィルムに成形したときの未延伸フィルムの引張破断伸度が130%以上である請求項2記載の熱可塑性有機組成物。
  6. 請求項2、3、4または5記載の熱可塑性有機組成物からなるカプセル。
  7. 請求項2、3、4または5記載の熱可塑性有機組成物からなるフィルム。
  8. 請求項2、3、4または5記載の熱可塑性有機組成物からなるモールド成形体。
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