以下、本発明の実施の形態について、図面を交えて説明する。まず最初に微細凹凸面形成用転写母型を使用して製造される好適な反射体の例について説明する。図1は、反射体の構成の一例を示す部分斜視図であり、図2Aは、図1に示す反射体に形成された凹部の平面構成図であり、図2Bは、図2Aに示すG−G線に沿う断面構成図である。図1に示す反射体10は、AlやAg等の高反射率の金属反射膜12と、この金属反射膜12に所定の表面形状を与えるためのアクリル樹脂材料などからなる有機膜11とを備えて構成されている。この有機膜12の表面に、複数の凹部13が設けられており、この凹部13上に形成された金属反射膜12により反射性を得ている。
図2A、図2Bに示す凹部13の内面は、本発明で好適に用いられる凹部の一例であり、各々半径が異なる2つの球面の一部である第1曲面13aと、第2曲面13bとを含んでおり、これらの曲面13a,13bの中心O1,O2は凹部13の最深点Oの法線上に配置されており、第1曲面13aはO1を中心とする半径R1の球面の一部とされ、第2曲面13bはO2を中心とする半径R2の球面の一部とされている。そして、図2Aに示す平面図において、凹部13の最深点Oを通過し、G−G線に直交する直線Hの近傍において第1曲面13aと第2曲面13bとが概ね区画されている。
図3は、上記構成を備えた反射体10に、図2における図示右側から入射角30°で光を照射し、受光角を反射面(反射層25表面)に対する正反射の方向である30°を中心として±30°の範囲(0°〜60°;0°が液晶パネル20の法線方向に相当)で振って反射体10の反射率(%)を測定した結果を示すグラフである。
この図に示すように、上記構成を備えた反射体10によれば、半径の比較的小さい球面からなる第2曲面13bの傾斜角の分布幅が比較的大きいことから、反射光が広角に散乱されて約15°〜50°の広い受光角範囲で高い反射率を得ることができ、また、半径が比較的大きい球面からなる第1曲面13aにおける反射により、前記第2曲面13bよりも特定方向の狭い範囲に散乱される反射が生じるため、全体として反射率が正反射方向である30°よりも小さい角度で最大となり、そのピークの近傍における反射率も高くなる。
その結果、反射体10に入射し反射された光のピークが正反射方向よりも反射体10の法線方向に近い側にシフトするので、反射体10正面方向の反射輝度を高めることができる。従って、例えば本実施形態の反射体10を液晶表示装置の反射層に適用するならば、液晶表示装置の視角にマッチングさせて反射板の反射特性を制御することができる。例えば液晶表示装置の視角方向を正面方向に設定した場合、これに合わせて正面方向における反射輝度を向上させることができ、もって液晶表示装置の観察者方向への輝度を高め、視認性を改善することができる。
次に、上記構成の反射体を製造する方法について図面を参照して以下に説明する。図4は、本実施形態の製造方法において、反射体の凹凸形状を形成するための微細凹凸面形成用転写母型(以下母型と略記することもある。)の一実施の形態を示す斜視構成図であり、図5は、図4に示す母型を用いてロール版を作製する工程を示す断面構成図、図6は、図5に示す工程により作製されたロール版の断面構造を示す図、図7は、図6に示すロール版を用いて反射体の凹凸形状を形成する工程を示す斜視構成図である。
まず、図4に示す母型15は、その周面の加工領域16に微細な凹部が多数形成された領域を有する円柱状の部材であり、鉛や銅、真ちゅう、はんだ、ステンレス鋼などから構成されている。この母型15の周面に形成される凹部の形状は、図1に示す凹部13とほぼ同様の形状、又はその凹凸関係が逆転した形状にされている。特に形状を逆転させる場合には、得られた凹凸形状を電鋳工程等により反転を行うことができる。このような反転がなされた場合には、この周面の形状が図1に示す有機膜11の表面形状を凹凸が逆の関係になった状態に相当する。
次に、図5Aに示すように、図4に示す母型15の表面形状を転写樹脂膜17に転写する。この工程において、母型15は、ステージ19と、支持ローラ20との間に、これらの支持ローラ20と軸平行に垂直に配置されている。また、母型15とステージ19との間に、被加工物である転写樹脂膜17を表面に塗布された基板18が通過できるようになっている。
なお、被加工物は、転写樹脂膜17を表面に塗布された基板18以外にも、例えば、柔軟なフィルムに樹脂膜を形成したものや、フィルム単体でも良い。また、平板状のステージ19以外にも、例えば、母型を挟む一対のローラを用いても良い。この場合、ステージ19、ローラ或いは支持ローラ20に加熱機構が付加されているのが好ましい。
母型15と基板18及び又はステージ19との間には、母型15の滑りを防止するために回転/移動を同期するための手段を設けることもできる。また上記基板18の送り方向上流側に、基板18上に転写樹脂膜17を塗布形成する樹脂供給部22が設けられている。或いは基板18上に転写樹脂膜17を、スピンコータ、ロールコータ、スリットコータ等公知の方法により、予め塗布しておいても良い。母型15よりも下流側の基板18上方に紫外線照射部24が配設されている。なお、転写加工時の材料の粘度制御のために、樹脂供給部22と母型15との間の基板18上方に、第2の紫外線照射部もしくは熱源を設けても良い。
前記基板18は、ガラス基板やプラスチック基板、樹脂フィルム基板などを用いることができる。また、事前に塗布されるか或いは樹脂供給部22により基板18上に塗布形成される転写樹脂膜17は、本実施形態では紫外線硬化樹脂を用いているが、熱硬化樹脂であっても良く、その場合には、紫外線照射部24に代えてヒートランプ等の熱源を配設すればよい。
上記構成の図5Aに示す工程では、支持ローラ20を回転させるか、母型15を直接回転させた状態で、母型15とステージ19との間に基板18を挿入して基板18を図示右方向へ移動させながら、基板18上の転写樹脂膜17を母型15の表面に押し付けて母型15の表面形状を転写樹脂膜17に転写し、転写樹脂膜17表面に凹凸面25を形成する。
転写樹脂膜17は、基板18を図示右方向へ移動させながら、樹脂供給部22により樹脂材料を順次塗布することにより形成し、母型15による加工後に紫外線照射部24による硬化を行ってその表面形状を保持するようになっている。なお、基板18の全面に予め転写樹脂膜17を塗布しておいても良い。以上の工程により、転写樹脂膜17表面に母型15と逆凹凸の凹凸面25が形成された樹脂版26を得る。
次に、図5Bに示すように、図5Aに示す工程により得られた樹脂版26の凹凸面25上に、金属膜27を成膜する。次いで、金属膜27を電極として用いた電解メッキによりNi膜28を形成する(Ni電鋳)。上記金属膜27は、金メッキ膜等とすることが好ましく、このような金属膜を形成することで、金属膜27とNi膜28との剥離をNi膜28に破損を生じることなく容易に行うことができる。上記金属膜27及びNi膜28の膜厚は、特に限定されないが、金属膜27が10nm〜100nm程度、Ni膜28が10μm〜1mm程度とすればよい。
次に、図5Bに示すように金属膜27上にNi膜28を形成したならば、金属膜27とNi膜28との界面で両者を剥離し、Ni膜28に離型膜29を形成する。なお、離型膜29は、金属膜27を併用しても良い。このようにして一面側に母型15表面と略同一の凹凸形状が形成されたNi膜28と、Ni膜28の凹凸形状に沿う離型膜29とからなるNi版30を得る。
次に、図5Cに示すように、上記工程で得たNi版30の離型膜29上に、Ni電鋳によりNi膜31を形成する。このNi膜31の形成に際しては、図5Bに示すNi膜28と同様の形成方法を適用することができる。また、Ni膜31の膜厚は、特に限定されないが、10μm〜5mm程度とすればよい。次いで、上記にて形成したNi膜31を離型膜29から剥離して、母型15の表面と逆凹凸の表面形状を有するNi版を得る。
次に、図5Dに示すように、上記工程にて得られたNi版(Ni膜31)の凹凸面と反対側の面に、ゴムなどの弾性体からなる緩衝材32を貼着する。そして、図6に示すように、円柱状の基体34に、緩衝材32を内側にして巻き付けることで、母型15と逆凹凸の表面形状を有するロール版35が得られる。なお、緩衝材32の接着/接合には、トリアジンチオールを用いた加硫接着法を用いることもできる。あるいは、固定する手段が講じられれば接着接合をせずに挟み込みだけでも良い。
そして、図7に示すように、ガラスやプラスチックなどからなる製品基板37の被加工領域38に、紫外線硬化樹脂や、熱硬化樹脂を塗布して有機膜を形成し、その後上述の工程により作製したロール版35を回転させながら被加工領域38に押圧することで前記被加工領域38の有機膜表面にロール版35のNi膜31の表面形状を転写する。次いで、加工された有機膜を紫外線照射や加熱により硬化し、有機膜表面にAlやAg等の高反射率の金属反射膜を形成することで、図1に示す反射体を得ることができる。
また、反射体の製造方法において、有機膜の加工に用いられるロール版35と、被加工領域38とは、ロール版35の加工面(Ni膜31表面の凹凸形状が形成された領域)35aの幅W1が被加工領域38の幅W2よりも広く、ロール版35の円周が被加工領域38の長さLよりも長くなるように組み合わされる。
あるいは、ロール版形成前に樹脂版26の幅寸法W1が、図8に示す被加工域の幅W2よりも広ければ、多面付けされたうちの一つの小パターンに相当する版を並べ(接合、貼合等による)た上で、例えばNi電鋳を行い、W1の幅をもつ大きなロール版35を作成することもできる。
これは、図6に示すロール版35の円周上に、図5Dに示すNi膜31を緩衝材32とともにロール状に巻回した継ぎ目が生じること、及びNi膜31の幅が有限であることによる。すなわち、図7に示す工程で、上記ロール版35の継ぎ目が被加工領域38上を通過しないようにする必要があり、また、加工領域35aの幅方向の端部も被加工領域38に掛からないようにする必要があるからである。
上述した反射体の製造方法において、図7に示す被加工領域38は、1つの反射体の有機膜で構成されていても良く、複数の反射体の有機膜を含んで構成されていていてもよい。また、図8に示すように、ロール版35の幅W1よりも小さい幅W2を有する複数の被加工領域38Aが配列形成された製品基板37Aを用い、ロール版35を用いた加工を各被加工領域38Aに対して行うようにすることもできる。つまり、ロール版35を1周回転させて加工することができる領域の面積と、被加工領域38,38Aの面積とが上述の関係となっていれば、被加工領域38,38A内に形成される有機膜の区画や、製品基板37,37Aの寸法等に制限はない。
また、上述の説明では、母型15と逆凹凸のロール版35を作製し、製品基板37の有機膜上に母型15と略同一形状の凹凸を形成する場合について説明したが、本発明に係る製造方法では、製品基板37の加工に際して種々の形態を採用することができる。
例えば、母型15を用いて直接製品基板37の有機膜の加工を行うこともでき、その場合には、図1及び図2に示す反射体10とは逆凹凸の表面形状を有する反射体を製造することができる。更には、Ni膜31をロール版35の形態とせずに、板状に保持したまま有機膜に押圧して製品基板37の加工を行っても良い。また、同様の加工にはNi膜28も適用することができる。
次に、本発明の母型の製造方法について詳述する。図9は、図4に示す母型15を作製するための母型製造装置の一実施の形態を示す工程図である。この図に示す母型製造装置40は、円柱状の母型基材41と、母型基材41の上方に配置され、母型基材41の表面に凹状の圧痕を打刻するための圧子47とをその要部として備えており、前記母型基材41は、その一側端面(図示左側側面)に係合部44を介して接続された基材駆動部45によりその軸周りに回転自在とされている。
また前記圧子駆動部(圧子駆動手段)48は、スライダ56に支持されて前記母型基材41の長さ方向(図示左右方向)に移動自在とされ、圧子駆動部48とスライダ56とにより基材41を加工するための加工ヘッドを成している。。前記母型基材41には、鉛や真ちゅう、はんだ、ステンレス鋼、金、ニッケル等の塑性加工が比較的容易な金属材料の基材が用いられる。
係合部44は基材駆動部45に接続されるとともに前記母型基材41の一端側を嵌合固定しており、前記基材駆動部45により母型基材41を回転できるようになっている。また、上記基材駆動部45は0.0数μm〜数μmのピッチで母型基材41の軸周りの位置を制御できるようになっている。そのため、基材駆動部45にはサーボモータやステッピングモータ、ダイレクトドライブモータなどの微小回転量を制御できる駆動手段が用いられる。
また、上記母型基材41は、軸周りの中心位置精度を保持するための手段、例えばローラ等の補助支持手段50により軸支されている。この補助支持手段50は、母型基材41の軸方向に移動可能に構成されていても良い。また、補助支持手段50は、母型基材41の垂直方向に高さの微調整を行う機能を兼備していても良い。
なお、補助支持手段50は、ローラ以外にも、例えば、母型基材41の端面を押圧しつつ支持するピンであってもよい。この場合、母型基材41であるピンの先端を母型基材41の中心軸に正確に合致させれば良い。
圧子47は、先に記載のように、圧子駆動部48により母型基材41の径方向に移動自在とされており、先端部(図示下方側)に向かって先細りに形成されており、先端47aは母型基材41に打刻する圧痕の形状に加工されている。すなわち、図2に示す形状の凹部13を有する図1の反射体10を製造するための母型を作製する場合には、図2に示す凹部13と逆凹凸の形状を圧子47の先端部47aに形成する。
図10は、図2に示す形状の凹部13を有する反射体を形成するための母型15の作製に好適な圧子の先端部47aの形状を示す断面構成図である。この図に示す圧子47は、その先端部47aが、各々半径が異なる外側に凸なる球面の一部を成す第1曲面47Aと、第2曲面47Bとを含んで構成された例を示している。すなわち、図2に示す凹部13の第1曲面13aの内面と図10に示す第1曲面47Aの外面とがほぼ一致する形状とされ、第2曲面13b内面と第2曲面47B外面とがほぼ一致する形状とされている。
なお、上記先端部の形状は、作製する反射体の凹部(又は凸部)の形状に応じて適宜変更することができる。圧子47は、例えばステンレス製の本体の先端に所定形状に加工されたダイヤモンドを設けたものを使用することができ、超硬鋼、セラミックス、タングステン等であっても良い。この圧子47の先端47aの材質は母型基材41の材質に応じて適宜選択することができる。
圧子駆動部48としては、上記圧子47を基材の径方向、例えばこの図では上下方向に駆動して母型基材41の加工を行うことができる駆動手段であれば問題なく用いることができ、例えばソレノイドやピエゾ素子(圧電素子)等を好適な例として挙げることができる。圧子駆動部48は、上下方向、前後方向および回転方向に移動自在で、回転方向の移動は母型15の中心軸を中心として回転可能にするのが好ましい。
また、図示してはいないが、圧子の設置位置は基材の上方に限らず、横方向、あるいは斜め方向であっても良く、圧子を備えたヘッド部の構造に合わせて適宜選択されて良い。
図9中、加工ヘッド移動手段57は、加工ヘッド(圧子駆動部48及びスライダ56)を母型基材41の軸方向に沿って移動可能に支持しており、さらに径方向位置決め制御手段55と係合されて加工ヘッドの基材41径方向の位置制御も可能にしている。そして、加工ヘッド移動手段57により加工ヘッドは0.0数μm〜数mmピッチで母型基材41の軸方向にミリオーダーの移動も可能なようになっている。
以上の構成を備えた母型製造装置40により母型基材41の加工を行うには、まず、図9に示すように、円柱状の母型基材41をローラ等の補助支持手段50上に載置するとともに係合部44に固定する。また、スライダ56に支持された圧子駆動部48及び圧子47を、前記母型基材41の中心軸上方の原点位置である初期位置(例えば母型基材41の右端部)に移動させる。上記母型基材41には、図5に示す転写樹脂膜17の幅(図5では紙面垂直方向の長さ)よりも凹部42が形成される領域の基材軸方向の長さWが大きいものを選択する。もしくはWが転写樹脂膜17の幅よりも狭くても、段階的に複数回の転写加工を繰り返して17のほぼ全体に凹凸形状を形成しても良い。
また、母型基材41の径は、特に限定されないが、基材41の径が小さすぎると圧子47により打刻される被加工面の曲率が大きくなり加工精度が低下するおそれがあるため、実用上は少なくとも10mmφ程度以上とすることが好ましい。
このようにして加工の準備が完了したならば、圧子駆動部48を作動させて圧子47を図示下方へ移動させ、圧子の先端47aにより母型基材41表面に凹部42を形成する。その後圧子47を上方へ移動させて母型基材41と離間させ、次いで、基材駆動部45を動作させて所定ピッチだけ母型基材41を回転駆動する。
また、加工ヘッド移動手段57に接続された径方向位置決め制御手段55とを動作させてスライダ56(及び圧子47)を所定ピッチだけ母型基材41の軸方向に移動させる。このようにして母型基材41及び圧子47の移動が完了したならば、上記と同様に圧子駆動部48を動作させて圧子47による母型基材41表面への凹部42の打刻を行う。
なお、母型基材41表面への凹部42の形成は、図9中のx方向に圧子駆動部48を動かし、一旦停止させつつ凹部42の打刻を行ったり、図9中のθ方向に母型基材41を回転させ、一旦停止させつつ凹部42の打刻を行ってもよい。あるいは、x方向に圧子駆動部48を動かしつつ、θ方向に母型基材41を回転させ、一旦停止して凹部42の打刻を行ってもよい。また、これらを一旦停止させずに、圧子駆動部48や母型基材41を動かしながら凹部42の打刻を行ってもよい。
そして、上記工程を順次繰り返し行い、図9に示すように、凹部42を母型基材41表面に形成していく。この工程により母型基材41表面の領域に、所定範囲のピッチと深さを有する多数の凹部42が形成され、図4に示すような加工領域16を備えた母型15が得られる。
こうした母型基材41表面への凹部42の打刻工程では、加工ヘッド移動手段57によって圧子47が原点位置から加工の終端位置(例えば母型基材41の左端部)まで移動した後、再び圧子47は母型基材41の初期位置に向けて移動しつつ母型基材41表面への凹部42の打刻を行う。このように、母型基材41表面へ凹部42を繰り返し打刻することより、母型基材41表面へ凹部42を隙間無く形成することができ、反射ムラの原因となる平坦部分をなくすことができる。こうした母型15を用いることによって、反射ムラの極めて少ない高反射率の反射体を得ることが可能になる。
加工ヘッド移動手段57による圧子47の移動は、上述したように、圧子47の原点位置から終端位置までの往路および復路でそれぞれ凹部42の打刻を行う以外にも、圧子47が原点位置から終端位置まで凹部42の打刻をして移動した後、一旦、圧子47を原点位置まで戻し、再び圧子47を終端位置に向けて移動しながら凹部42の打刻を行っても良い。このように圧子の往復移動時に加工を行うと、非加工時間が減少するため、一般的には加工効率が向上する。さらに、こうした圧子47を3回以上の行程で移動させて凹部42の打刻を行っても良い。
加工ヘッド移動手段57による圧子47の移動、および母型基材41の移動としては、図14に示す各種動作例を挙げることができる。図14に示すように、圧子(加工ヘッド)のX方向における一方向および両方向のそれぞれに連続移動や間歇移動を適宜選択し、かつ、母型基材41のθ方向における一方向および両方向のそれぞれに連続移動や間歇移動を組み合わせることによって、多彩なランダム配列の凹部42を母型基材41に形成することが可能である。なお、図15に示す各種動作例において、移動方向の説明を図15にまとめて表記しておく。
上記母型製造装置40により作製される母型15は、図9に示すように凹部42が隙間無く形成されているので、母型基材41の周方向で継ぎ目のない母型であり、この母型15を用いた形状転写において、母型15の回転方向であれば、連続的に加工を行うことができるという利点を有している。従って、繰り返し再現性よく微細凹凸形状を形成することができるとともに、1回の工程で処理できる被加工物の面積が大きく、極めて効率良く反射体表面の微細凹凸形状の形成を行うことができる。
また、上記母型製造装置40を用いた製造方法によれば、圧子47の先端部47aの形状を適宜変更するのみで、任意の形状の凹部42を母型基材41周面に形成することができるので、図5〜図7に示す製造工程により作製される反射体の反射面形状の変更に極めて容易に対応することが可能である。従って、反射体の設計変更に伴うリードタイムを大幅に短縮することが可能であり、効率的に最適な表面形状を備えた反射体の製造を行うことができる。
また、図1に示す反射体10を例えば液晶表示装置の反射層として適用する場合には、反射体10の反射面の凹部13の配列パターンと、液晶表示装置のパターン形状(例えば、画素電極やカラーフィルタ、ブラックマスクのパターン)とが干渉してモアレ模様が生じるのを避けるために、上記液晶表示装置のパターン形状に合わせて反射体10の凹部13の配列パターンを変更する必要がある。
従来は、このようなモアレ防止の対策のために、液晶表示装置の種類毎に異なる転写型を用意して反射体の有機膜の加工を行っていたが、上記母型製造装置40により作製される母型15、及びこれを用いた反射体の製造方法によれば、同一の母型15又はロール版35を用いながら、モアレ対策の施された反射体10を作製することができる。この製造方法について、図11を参照して以下に説明する。
図11A及び図11Bは、本実施形態の製造方法において、有機膜に形成される凹凸形状の配列パターンを変更する場合の製造工程を説明するための説明図であり、母型15又はロール版35を用いて製品基板37に配列形成された有機膜38aを加工する工程を示している。尚、図示及び説明は省略するが、図11に示す以外の工程は、図5及び図6、図9に示す反射体及び母型の製造方法に準ずるものとする。
本実施形態に係る製造方法では、反射体の凹凸の配列パターンが異なる反射体(又は液晶表示装置)を製造するに際して、例えばある1つの製品においては、図11Aに示すように、製品基板37の長辺と平行な向きに、母型15又はロール版35を有機膜38aに対して押圧しながら回転して加工を行い、他の種類の製品基板37を加工する場合に、図11Bに示すように、母型15又はロール版35の軸を、例えば角度θだけ回転させて製品基板37の片に対して傾斜する向きに母型15又はロール版35を転がして加工を行うことで、極めて容易に、凹凸形状の配列パターンの異なる有機膜38aを得ることができる。係る製造方法を採用するならば、製造工程をほとんど変更することなく、複数種の反射体(液晶表示装置)においてモアレ対策を講じることができ、極めて効率よく反射体の製造を行うことができる。
図12は、本発明に係る反射体の製造方法で製造した反射体を液晶表示装置の反射層に適用した例を示す斜視構成図であり、図13は、図12に示す液晶表示装置の部分断面構成図である。本実施形態の液晶表示装置は、図12及び図13に示すように、フロントライト(照明装置)110と、その背面側(図示下面側)に配置された反射型の液晶パネル120とを備えて構成されている。
フロントライト110は、図12に示すように、略平板状の透明の導光板112と、その側端面112aに沿って配設された中間導光体113と、この中間導光体113の片側の端面部に配設された発光素子115と、前記中間導光体113、発光素子115及び導光板112の側端部を覆うように中間導光体113側から被着された遮光性のケース体119とを備えて構成されている。
すなわち、前記発光素子115と中間導光体113とがフロントライト110の光源とされ、導光板の側端面112aが導光板の入光面とされている。また、図12に示すように、導光板112の外面側(図示上面側)に、中間導光体113が配設された入光面112aに対して傾斜した向きに延在するように複数のプリズム溝114が配列形成されている。
液晶パネル120は、対向して配置された上基板121と下基板122とを備えて構成され、図12に点線で示す矩形状の領域120Dが液晶パネル120の表示領域とされ、表示領域120D内には実際には液晶パネルの画素がマトリクス状に配列形成されている。
上記構成の液晶表示装置は、液晶パネル120の表示領域120D上に導光板112が配置され、この導光板112を透過して液晶パネル120の表示を視認できるようになっている。また、外光が得られない暗所では、発光素子115を点灯させ、その光を中間導光体113を介して導光板112の入光面113から導光板内部へ導入し、導光板112の図示下面112bから液晶パネル120へ向けて出射させ、液晶パネル120を照明するようになっている。
フロントライト110の導光板112は、液晶パネル120の表示領域上に配置されて発光素子115から出射された光を液晶パネル120に落射する平板状の部材であり、透明なアクリル樹脂などから構成されている。図13の部分断面図に示すように、導光板112の図示上面(液晶パネル120と反対側の面)は、断面視くさび状のプリズム溝114が互いに平行に平面視ストライプ状に形成された反射面112cとされており、図示下面(液晶パネル120と対向する面)は、液晶パネル120を照明するための照明光が出射される出射面112bとされている。
前記プリズム溝114は、反射面112cの基準面Nに対して傾斜して形成された一対の斜面部により構成され、これらの斜面部の一方が緩斜面部114aとされ、他方がこの緩斜面部114aよりも急な傾斜角度に形成された急斜面部114bとされている。この緩斜面部114aは、導光板112の光伝搬方向の長さが短いほど傾斜角度を大きく、また前記長さが長いほど傾斜角度を小さく形成することで、フロントライト110の輝度の均一性を高めることができる。
そして、導光板112内部を図示右側から左側へ伝搬する光を、反射面面112cの急斜面部114bにより出射面112b側へ反射して導光板112の背面側に配置された液晶パネル120に向けて出射させるようになっている。
液晶パネル120は、カラー表示が可能な反射型のパッシブマトリクス型液晶ネルを示しているが、本発明は反射型又は半透過反射型のパッシブマトリクスあるいはアクティブマトリクス型パネルにも適用することができる。図13に示すように、対向して配置された上基板121と下基板122との間に、液晶層123を挟持して構成され、上基板121の内面側に、図示左右方向に延在する平面視短冊状の複数の透明電極126aとこの透明電極126a上に形成された配向膜126bとを備え、下基板122の内面側には、反射層125、カラーフィルタ層129、複数の平面視短冊状の透明電極128a、及び配向膜128bが順次形成されている。
上基板121の透明電極126aと、下基板122の透明電極128aは、いずれも短冊状の平面形状に形成されており、平面視ストライプ状に配列されている。そして、透明電極126aの延在方向と、透明電極128aの延在方向とは平面視において互いに直交するように配置されている。
従って、一つの透明電極126aと一つの透明電極128aとが交差する位置に液晶パネル120の1ドットが形成され、それぞれのドットに対応して後述する3色(赤、緑、青)のカラーフィルタのうち1色のカラーフィルタが配置されるようになっている。そして、R(赤)、G(緑)、B(青)に発色する3ドットが、液晶パネル120の1画素を構成している。
カラーフィルタ層129は、赤、緑、青のそれぞれのカラーフィルタ129R,129G,129Bが、周期的に配列された構成とされており、各カラーフィルタは、それぞれ対応する透明電極128aの下側に形成され、各画素120c毎にカラーフィルタ129R,129G,129Bの組が配置されている。そして、それぞれのカラーフィルタ129R,129G,129Bと対応する電極を駆動制御することで、画素120cの表示色が制御されるようになっている。
次に、図13に示す下基板122の内面側に形成された反射層125は、図1の斜視構成図に示す構成を備えたものであり、図1に示すように、AlやAg等の高反射率の金属反射膜12と、この金属反射膜12に所定の表面形状を与えるためのアクリル樹脂材料などからなる有機膜11とを備えて構成されている。この有機膜11の表面に、複数の凹部13が設けられており、この凹部13上に形成された金属反射膜12により所定の反射性を得ている。
従って、本実施形態に係る液晶表示装置の反射層125の凹部13は、図2に示す形状を有しており、図3に示す反射特性を有しているので、広い角度範囲で高輝度の反射表示が可能であるとともに、反射輝度のピークが、正反射方向よりもパネル法線方向へシフトしているため、通常液晶表示装置の観察者が配置されるパネル正面方向の輝度を高めることができ、実質的に明るい表示を得ることができる。
液晶パネル120に備えられた有機膜11は、本発明に係る反射体の製造方法により作製されるものであり、先に記載の反射体の製造方法により容易かつ再現性よく製造することができる。また、上記製造方法を適用することで、電極26a、28aや、カラーフィルタ層129のピッチに変更が生じた場合であっても、極めて容易に反射層125の凹凸の配列パターンを変更することができる。