JP2005333502A - Sawデバイスの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 SAW発振器などのSAWデバイスの製造において、量産レベルで高精度の周波数安定性及び高い周波数精度を実現する。
【解決手段】 所望の使用周波数f0 及び周波数安定度±appm を有するSAW発振器を製造するために、パッケージのベースに実装したSAWチップの圧電基板表面をエッチングして周波数調整を行う工程で、パッケージ封止後に起こり得る周波数変動幅(ppm)を+b1,−b2と予測して、周波数安定度(ppm)を+(a−b1),−(a−b2)に設定する。横軸xを使用周波数f0 に対する周波数偏差としかつ縦軸yを所定の動作温度範囲における周波数変動幅とする直交座標系において、SAW発振器の周波数変動幅ΔfT に関する周波数偏差Δf0 が、−(a−b2 )≦x≦(a−b1 )、かつ0≦y≦x+(a−b2 )の範囲内に入るように、好ましくは直線y=2x−(b2 −b1 )を満足するように、狙い値の周波数を決定して周波数調整を行う。
【選択図】 図2

Description

本発明は、弾性表面波(Surface Acoustic Wave:SAW)を利用した、発振器などのSAWデバイスを製造する方法に関し、特にその使用周波数及び周波数安定度に対応した周波数調整を行う工程を有するSAWデバイスの製造方法に関する。
従来から通信技術の分野では、発振立ち上がり特性、耐ノイズ特性、耐衝撃性、低消費電流などに優れた特性を有するSAW共振子がクロック源として広く利用されている。特に高速ネットワーク通信分野におけるクロック源は、高周波化、低位相ノイズ及び良好な周波数安定度が要求されている。SAW共振子とその駆動を制御するICとを同一パーケージに搭載したSAW発振器は、低位相ノイズについて良好な特性を有することが知られている。ところが、一般にSAW共振子は周波数安定度で厚みすべり振動のATカット水晶振動子に劣っており、高い周波数精度及び周波数安定度が要求されている。
一般にSAWデバイスは、その製造工程においてSAW素子のIDT(Interdigital Transducer)電極をエッチングし、かつ/又は圧電基板の表面をエッチングすることにより、周波数調整を行う(例えば、特許文献1を参照)。また、周波数調整精度を向上させるために、圧電基板表面にIDT電極をパターン形成する際にそのエッチング時間を計測して目標周波数とのずれを推測し、その差の時間だけIDT電極をエッチングするSAW共振子の製造方法が知られている(特許文献2を参照)。
更に、周波数のばらつきが小さいSAW装置をウエハ状圧電基板に多数形成するために、リフトオフ法を用いてIDT電極などを成膜する工程で、該圧電基板に形成した周波数測定用素子の周波数を測定するSAW装置の製造方法が知られている(特許文献3を参照)。また、本願出願人は、SAW装置のIDT電極の電極幅のばらつきに対して共振周波数の変動を小さくするために、オイラー角(0°,113〜135°,±40〜49°)の面内回転STカット水晶板を使用し、かつIDT電極の電極幅と電極間ピッチとの比を0.5〜0.65の範囲内にしたSAW装置を提案している(特許文献4を参照)。
SAW共振子は温度変化によって共振周波数が大きく遷移するという温度特性を持つ。この温度特性による周波数変動を補正するために、補償回路を内蔵したSAW発振器や、SAW発振器の周波数のずれを補正するようにした発振回路が知られている(例えば、特許文献5,6を参照)。また、硼酸リチウム単結晶基板をオイラー角(90゜+λ,90゜+μ,90゜+θ)で、λ=42゜±1゜,μ=0゜±1゜,θ=0゜±1゜の範囲に切り出し、その表面にIDT電極及び反射器を形成することにより、量産時に良好な温度特性を有しかつ中心周波数、共振周波数の再現性に優れたSAW共振子の製造方法が知られている(特許文献7を参照)。
更に、本願出願人は、有限要素法を用いた解析手法を利用することによって、SAW共振子の周波数温度特性の改良について既に報告している(非特許文献1)。この報告によれば、オイラー角(0°,123°,±39〜44°)の面内回転33°Yカット水晶板を用いたSAW共振子の周波数温度特性を解析したところ、面内回転角42〜44°で2次温度係数を約1/2にすることができ、広い温度範囲で周波数偏差を小さくすることができた。
特開2002−33633号公報 特開平7−273582号公報 特開2002−271157号公報 特開2003−258601号公報 特開2000−114873号公報 特開2003−124804号公報 特開平7−307635号公報 飯澤慶吾、外3名,「面内回転33°Yカット水晶におけるSAW共振子の温度特性」,第10回高機能EM回路デバイス調査専門委員会,平成15年1月21日
一般に、SAW発振器の周波数安定度を考える上で考慮すべき周波数の変動要素は、次の5つ、即ち、
1)SAW共振子の周波数温度特性
2)SAWチップの加工時における初期周波数精度
3)SAW発振器の実装時におけるリフローによる影響
4)SAW発振器の使用によるエージング特性
5)SAW発振器に搭載したICの電源電圧変動による影響
である。
上記1)の周波数温度特性は、非特許文献1に記載されるように、オイラー角(0°,123°,42〜44°)の面内回転33°Yカット水晶板を用いることによって、大幅に改善することができる。一般にSAW共振子の周波数温度特性は、少なくとも通常使用される温度範囲で図4に示すような上向きに凸の2次関数で表される。ここで、SAW共振子の動作温度範囲を0〜70℃とすると、その頂点温度θmax における周波数と0℃又は70℃における周波数のいずれか低い方との差ΔfT が、動作温度範囲における周波数変動幅である。目標の使用周波数をf0 とすると、それと頂点温度θmax におけるSAW共振子の周波数との差が周波数偏差Δf0 である。
図5は、このような644MHz帯面内33°Yカット水晶SAW共振子(以下、Yカット水晶SAW共振子という)の周波数温度特性の測定データを例示したものである。同図から、従来のSTカット水晶SAW共振子に比して、2次温度係数が約1/2に小さくなっていることが分かる。しかしながら、その場合にも、周波数温度特性が上向きに凸の2次関数であることに変わりはないから、動作温度による周波数変動幅ΔfT は依然として残り、周波数安定度に影響を与える。また、周波数変動幅ΔfT 及び頂点温度は、同じウエハから製造されたSAWチップにおいても一定でなく、或る程度のばらつきがある。このため、個々のSAW共振子のばらつきに応じて個別に温度補償を調整する必要があるが、これは製造管理上大きな負担であり、製造コストを増大させると考えられている(例えば、特許文献5を参照)。
次に、上記2)の初期周波数精度は、圧電ウエハにIDT電極、反射器及び配線をパターン形成するウエハ工程で生じる周波数のばらつきである。その原因は、主にフォトリソグラフィ工程での露光に起因する電極線幅及び膜厚の変動・ばらつきによるものである。これが、図4における所望の使用周波数f0 に関する周波数偏差Δf0 となって表れる。周波数偏差Δf0 は、同じウエハから製造されたSAWチップにおいても一定でなく、或る程度のばらつきが存在する。
これに対して、本願出願人は、上記特許文献4において、電極線幅比η(=電極線幅/電極ピッチ)に対する周波数の関係から、電極線幅及び膜厚の最適化設計により周波数のばらつきを抑制できることを示している。図6は、同じく644MHz帯Yカット水晶SAW共振子(オイラー角(0°,123°,43°)、H/λ=0.03(但し、H:電極膜厚、λ:SAW波長)、η=0.5)の同一ウエハ内における周波数のばらつきを、従来のSTカット水晶SAW共振子と比較したものである。同図は、横軸が一定幅で周波数レベルを漸次変化させたデータ区間で、縦軸が周波数分布を頻度で表している。同図から、STカット水晶SAW共振子と比較して、周波数のばらつきが約1/3〜1/4に低減していることが分かる。しかしながら、この場合にも、周波数偏差Δf0 及びそのばらつきが完全に解消されるものではない。
これらSAW共振子の周波数温度特性及び初期周波数精度に起因する周波数偏差Δf0 は、SAW発振器の製造工程において、SAWチップをパッケージに封止する前の周波数調整工程により、目標周波数に合わせ込むように調整される。図7は、同一ウエハ内で形成されたYカット水晶SAW共振子を用いたSAW発振器の周波数分布を、前記周波数調整工程の前後で比較したものである。但し、同図における横軸のデータ区間は、図6の場合よりも各区間の周波数幅が小さく設定されている。同図のように、周波数調整精度を上げることによって、より高い周波数安定度で目標の使用周波数に合わせ込むことが可能である。特に、Yカット水晶SAW共振子を用いた場合には、元より周波数偏差が小さく、従って周波数調整量を少なくできるので有利である。尚、図7において周波数調整後も周波数のばらつきが多少あるが、これは主に、周波数調整後にSAW発振器を封止する工程での影響によるものである。
例えば同じウエハから同一条件で製造されるSAWチップについて、最終的にSAW発振器の使用周波数に合わせ込むために前記周波数調整工程で目標とする周波数の狙い値を1つに絞ることができれば、量産性が向上する。しかしながら、個々のSAWチップは上述したように周波数偏差Δf0 及び動作温度による周波数変動幅ΔfT にばらつきがある。そのため、特に周波数変動幅ΔfT を個別に測定して狙い値周波数を決定し、周波数調整していたのでは、生産性が著しく低下する。また、周波数変動幅ΔfT に対応した最適の狙い値周波数を設定する方法は、少なくとも本願発明者らが知る限り確立されていない。そこで従来の周波数調整は、経験的に最適の狙い値周波数を設定して行なわれているが、周波数精度及び/又は周波数安定性を損ない、良品率を低下させる虞がある。
また、上記3)〜5)の周波数変動要素は、SAW発振器の製造及び周波数調整において、実際にはほとんど考慮されていない。ユーザは、SAW発振器を実装する例えば通信機などを、SAW発振器の仕様及び保証された周波数特性に応じて設計しているだけである。
そこで本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、SAW発振器などのSAWデバイスの製造において、高精度の周波数安定性、及び更に好ましくは高い周波数精度をも実現し得る方法を提供することにある。
更に本発明の目的は、量産レベルで高い周波数安定性及び周波数精度が得られるSAWデバイスの製造方法を提供することにある。
本願発明者らは、上記3)及び4)の周波数変動要素を検討するために、後述するようにそれぞれリフロー特性、及び高温高湿バイアス試験による動作エージング加速試験を行った。その結果、SAWデバイスを使用する実装構造が決まれば、その周波数変動量は略一定であることが分かった。また、上記5)の周波数変動要素については、使用するICが決まると、同様にその周波数変動量は略一定であることが分かった。
本発明は、かかる知見に基づいてなされたものであり、所望の使用周波数f0 及び周波数安定度±a(ppm)を有するSAWデバイスを製造するために、圧電基板の表面に形成した電極膜を所望の電極パターンにエッチングして、IDT電極を有するSAWチップを形成する工程と、SAWチップをパッケージのベースに実装する工程と、SAWチップの圧電基板表面をエッチングして周波数調整を行う工程と、パッケージを封止する工程とを有し、前記周波数調整工程において、パッケージ封止後におけるSAWデバイスの実装による周波数変動幅を+b1,−b2(ppm)として、SAWデバイスの周波数がf0 −(a−b2 )〜f0 +(a−b1 )の範囲内に入るように周波数調整を行うSAWデバイスの製造方法が提供される。
上述したように、SAWデバイス完成後の各要素による周波数変動幅を予め見込むことができるので、それらを考慮して周波数調整を行うことによって、SAW発振器などのSAWデバイスを使用するユーザは、その実装側における周波数変動を心配することなく、所望の周波数安定性及び周波数精度が得られる。
更に本願発明者らは、後述するように、水晶SAW共振子の周波数温度特性を、その使用周波数に対する周波数偏差及び動作温度範囲における周波数変動幅との関係において検討した。上述したように周波数温度特性曲線が上向きに凸の2次関数で表される(即ち、頂点温度を含む)動作温度範囲において、周波数安定度即ち所望の使用周波数に対する許容誤差範囲の正(+)側は、頂点温度で周波数が最大になることから、ΔfT の値に拘わらず、一定と考えることができる。ここで、周波数安定度を+α1 〜−α2 (ppm)の範囲と仮定すると、−側の境界は+α1 である。これに対し、周波数安定度の負(−)側は、上向き凸の2次曲線が下向きに減少するから、ΔfT の値に対応して線形にかつ正(+)の傾きをもって変化すると考えられる。−側の周波数偏差の限界は、最小のΔfT =0において−α2 、最大のΔfT =α1 +α2 において+α1 となるから、これら2点を結ぶ直線によって画定される。
従って、本発明によれば、更に、横軸xを使用周波数f0 に対する周波数偏差Δf0 とし、かつ縦軸yを所定の動作温度範囲における周波数変動幅ΔfT とする直交座標系において、SAWチップの周波数変動幅ΔfT に関するSAWチップの周波数偏差Δf0 が、y−(a−b2 )≦x≦(a−b1 )(但し、0≦y≦2a−(b1 +b2 ))の範囲内に入るように、狙い値の周波数を決定して周波数調整を行うSAWデバイスの製造方法が提供される。
これにより、SAWチップの周波数変動幅ΔfT に対応して、その周波数温度特性及び初期周波数精度に起因する周波数偏差Δf0 を解消し、所望の周波数安定度が得られるようにSAWチップを周波数調整することができる。
このとき、前記直交座標系において、SAWチップの周波数変動幅ΔfT に関するSAWチップの周波数偏差Δf0 が、y=2x−(b2 −b1 )(但し、(b2 −b1 )/2≦x≦a−b1 )を満たすように、狙い値周波数を決定することによって、周波数変動幅ΔfT に対応して、最適の周波数安定度及び周波数精度を得ることができる。
また、本発明によれば、例えばウエハ状の圧電基板に複数の電極パターンを形成しかつそれを個片化して複数のSAWチップを形成することによって、同じ製造条件下で複数のSAWチップを形成しかつ各SAWチップの周波数偏差Δf0 及び周波数変動幅ΔfT を前記直交座標系にプロットしたとき、その分布の中から選択した1つのSAWチップの周波数偏差Δf0 に基づいて、他のSAWチップにも共通の1つの狙い値周波数を決定する。多数のSAWチップを同じウエハ上で製造する場合など、製造条件を同じくすることによって、各SAWチップにおける周波数偏差Δf0 及び周波数変動幅ΔfT のばらつきを或る程度限られた範囲に収めることができる。従って、複数のSAWチップを1つの狙い値周波数に合わせ込むように周波数調整することによって、高い周波数安定度を維持しつつ、良品率を上げることができ、量産性が向上する。
更に本発明によれば、所定の数のSAWチップについてその周波数偏差Δf0 及び周波数変動幅ΔfT を前記直交座標系にプロットし、その分布の中から選択した1つのSAWチップの周波数偏差Δf0 に基づいて1つの狙い値周波数を予め決定しておき、その後にそれらSAWチップと同じ製造条件下で形成されるSAWチップについて、予め決定した前記狙い値周波数を適用して周波数調整を行う。このようにして、例えば事前の製造試験で所定数のサンプルについて得られた結果から狙い値周波数を予め決定しておけば、その後に同じ製造条件下で形成されるSAWチップは、同様の周波数偏差分布及び周波数変動幅分布を持つはずであるから、少なくとも同程度の高い周波数安定度及び周波数精度と良品率が得られるので、より一層量産性が向上する。
また、或る実施例では、圧電基板が、オイラー角(0°,123°,±42〜44°)の面内回転STカット(面内回転33°Yカット)水晶板からなり、SAWチップのIDT電極の電極幅と電極間ピッチとの比が0.5〜0.7の範囲内に設定される。このようにSAWチップを形成することによって、周波数温度特性が改善されかつ初期周波数精度による周波数の変動を抑制できるから、周波数調整量を小さくできる。従って、より高い周波数安定度及び高い良品率を得ることができる。
図1は、本発明の製造方法を適用したSAW発振器の製造工程を示している。先ず、ステップ1(ST1)において、SAWチップを形成する。洗浄した水晶ウエハの表面に例えばアルミニウム又はアルミニウム合金からなる電極膜を形成する。前記電極膜は、前記水晶ウエハに多数のSAWチップを形成するために、公知のフォトリソグラフィ技術を用いて所望のパターンにエッチングし、多数の組のIDT電極、反射器及び配線などを形成する。前記IDT電極をドライエッチングして、その共振周波数を上昇させるように周波数調整を行った後、水晶ウエハをダイシング(切断)して各SAWチップに個片化する。
好ましくは、前記水晶ウエハにオイラー角(0°,123°,±42〜44°)の面内回転STカット水晶板を使用し、前記IDT電極の電極幅と電極間ピッチとの比を0.5〜0.7の範囲内に設定する。これによって、前記SAWチップの周波数温度特性が改善され、かつ初期周波数精度による周波数の変動を抑制することができる。
このように形成した各SAWチップは、その特性・外観を検査した後、ステップ2(ST2)においてSAW発振器用パッケージのベースに実装する。前記ベースには、前記SAWチップを駆動制御するためのICが先に実装されている。前記SAWチップは、例えば接着剤で前記ベースに固定され、アルミニウムワイヤなどを用いたワイヤーボンディングで前記ベースとかつ/又は前記ICと直接に電気的に接続される。この時点において、前記SAWチップは、その周波数が目標の使用周波数よりも少し高くなるように設定されている。
次に、ステップ3(ST3)において、後述するように、前記SAWチップの周波数を目標の使用周波数に合わせ込むように調整する。この周波数調整は、前記SAWチップの水晶基板表面をドライエッチングし、その周波数を下げるように行う。例えばCF4 ガスを用いたプラズマエッチングなどを用いると、前記IDT電極のアルミニウム又はアルミニウム合金はエッチングされないので、好ましい。
最後に、ステップ4(ST4)において、前記ベースにキャップをシーム溶接などで接合し、前記パッケージを気密に封止することにより、SAW発振器が完成する。前記SAW発振器は、特性検査及びリーク検査を行った後に出荷され、ステップ5(ST5)において、ユーザにより実機に例えば通信機などの回路基板に搭載して使用される。
別の実施例では、上記特許文献1に記載されるように、上記実施例のSAWチップを形成するステップ1(ST1)における、IDT電極のエッチングによる周波数調整を省略することができる。この場合、前記SAWチップは、その周波数が所望の使用周波数よりも少し高くなるように前記IDT電極を形成し、該SAWチップをパッケージのベースに固定する前又は固定した後に、上記実施例のステップ3(ST3)の周波数調整を行うことができる。
本発明によれば、ステップ3の周波数調整は次のようにして行う。上述した3)SAW発振器の実装時におけるリフロー、4)SAW発振器の使用によるエージング特性、及び5)SAW発振器に搭載したICの電源電圧変動による周波数変動量を予め決定する。上記3)及び4)については、SAW発振器を使用する側の実装構造が決まると、それに応じたリフロー特性試験、動作エージング試験を実行することによって、略一定の値を見込むことができる。上記5)は、搭載するICが決まると、例えばその性能などから同様に略一定の値を見込むことができる。従って、上記3)乃至5)の合計周波数変動量を予め略一定の値に決めることができる。
目標とする使用周波数f0 、所定の動作温度範囲における周波数安定度±appm のSAW発振器を製造する場合について考える。上記3)乃至5)の合計周波数変動量は、その発振器自体やICの特性、実装条件や実機での使用条件などによって、必ずしも正(+)側と負(−)側とで一致しないことから、+側をb1 ppm とし、−側をb2 ppm と仮定する。従って、本発明の周波数調整工程で達成するべき周波数安定度、即ち所望の使用周波数に対する許容誤差範囲は、+側に(a−b1 )ppm 、−側に−(a−b2 )ppm となる。完成したSAW発振器がこの周波数安定度を満足する限り、そのSAW発振器は、最終的に実機での使用において所望の周波数安定度±appm を実現する。
周波数調整しようとする各SAW発振器の狙い値周波数を、次のように決定する。各SAW発振器の周波数偏差Δf0 と周波数変動幅ΔfT との関係は、図2のように表すことができる。図2において、横軸xは使用周波数f0 を原点0とする周波数偏差(Δf0/f0 :単位ppm)、縦軸yは所定の動作温度範囲における周波数変動幅ΔfT(単位ppm)である。図中右側に破線の半円で囲まれた領域Rは、同一ウエハから形成したSAW発振器の周波数調整前における分布の一部分をプロットしたものである。
所定の動作温度範囲において周波数温度特性曲線が上向きに凸の2次曲線であり、かつ頂点温度で周波数が最大値になる場合、周波数安定度即ち所望の使用周波数に対する許容誤差範囲の+側は、ΔfT の値に拘わらず、一定の値で画定することができる。即ち、+側の境界は、図中破線で示す横軸に垂直な直線L1:x=a−b1 (但し、0≦y≦fTmax=2a−(b1 +b2 ))で表される。
これに対し、周波数安定度の−側は、上向き凸の2次曲線が下向きに減少しているから、ΔfT の値に対応して線形にかつ正(+)の傾きで変化すると考えられる。ここで、最小のΔfT =0ppm においてΔf0 =−(a−b2 )ppm、最大のΔfTmax=2a−(b1 +b2 )ppm においてΔf0 =+(a−b1 )ppm となる。従って、これら2点を結んで図中破線で示す直線L2:y=x+(a−b2 )(但し、−(a−b2 )≦x≦(a−b1 ))によって、−側の限界が画定される。従って、これら2つの破線からなる直線L1及びL2が囲まれた領域S内、即ちy−(a−b2 )≦x≦(a−b1 )(但し、0≦y≦2a−(b1 +b2 ))の範囲内に入るように周波数調整すれば、所望の周波数安定度を実現できる。
図2において領域Sの中心を通る直線M:y=2x−(b2 −b1 )(但し、(b2 −b1 )/2≦x≦(a−b1 ))は、周波数変動幅ΔfT に関して最適の周波数偏差Δf0 をとる場合を示している。例えば、分布領域R内にプロットされた2点A及びBを考えた場合、それらの周波数変動幅ΔfTA、ΔfTBに関して最適の周波数安定度を発揮する周波数偏差Δf0A、Δf0Bは、それぞれx軸に平行な直線y=ΔfTA、y=ΔfTBが直線Mと交差する点から容易に求めることができる。従って、これら2点A及びBのSAW発振器は、それぞれΔf0A、Δf0Bを狙い値の周波数として周波数調整をすればよい。これにより、周波数変動幅ΔfT の値に対応して、周波数温度特性及び初期周波数精度に起因する周波数偏差Δf0 を解消し、所望の周波数安定度及び高い周波数精度が得られる。
このとき、分布領域R内の全てのSAW発振器を共通の1つの狙い値周波数で周波数調整することができれば、生産性が向上する。その場合、分布領域R内で周波数変動幅ΔfT が大きいSAW発振器を選択し、そのSAW発振器について直線Mとの交点から狙い値を決定する。この狙い値を適用して、それよりΔfT が小さい他のSAW発振器を周波数調整すると、それが少なくとも分布の母集団から大きく外れていない限り、領域Sに収まるはずである。従って、高い周波数精度及び高い周波数安定度が得られると共に、良品率が向上する。
また、本発明によれば、或る数のSAW発振器を試験的に製造し、それらの周波数偏差Δf0 及び周波数変動幅ΔfT を測定して、最適の狙い値周波数を決定する。そして、それらと同じ条件で製造されるSAW発振器についても、同じ狙い値周波数を適用して周波数調整すれば、同程度に高い周波数精度及び高い周波数安定度と高い良品率が得られるはずである。これにより、量産性が向上し、高性能・高品質のSAW発振器をより低コストで製造することができる。
上述した本発明の周波数調整工程を含む一連の製造工程に従って、使用周波数f0 =644MHz、動作温度範囲0〜70℃、周波数安定度±50ppm のSAW発振器を試作した。SAW発振器は、Yカット水晶SAW共振子及び専用のICを所定のセラミックパッケージ(パッケージサイズ:7×5×1.3mm)に接着剤で固定し、周波数調整後にシーム溶接で気密封止した。
事前に、上述した3)SAW発振器の実装時におけるリフロー、4)SAW発振器の使用によるエージング特性、及び5)ICの電源電圧変動による周波数変動量を決定した。リフロー特性試験は、170℃100秒、220℃超35秒、最大温度260℃の温度プロフィルを2回処理するリフロー処理条件で行った。その結果、周波数偏差は24時間経過後も概ね5ppm 以下であった。また、動作エージング加速試験として、+85℃×85%RH,2.625Vの条件で高温高湿バイアス試験を行った。その結果、1000時間での周波数安定度は10ppm 以下であった。更に、使用する専用ICの電源電圧変動による周波数変動量は、数ppm の範囲であった。
これらを総合すると、上記3)〜5)の合計周波数変動量として、±20ppm のマージンを見込めば十分である。従って、ユーザ側でSAW発振器の周波数安定度±50ppm を保証するためには、SAW発振器完成時における狙い値の周波数安定度を±(50−20)ppm =±30ppm に設定すればよい。
次に、前記セラミックパッケージのベースに実装して封止する前に、各SAW発振器の頂点温度における周波数偏差Δf0 と動作温度0〜70℃による周波数変動幅ΔfT とを測定した。尚、ここで言う頂点温度における周波数偏差は、実際には常温で測定したものである。上述したように同一ウエハ内でもSAW共振子の頂点温度にはばらつきがあること、及び頂点温度は常温に近いことから、このように常温での周波数偏差を頂点温度での周波数偏差に近似して取り扱っても、実質的に問題ないと考えられる。
この測定結果に従って、各SAW発振器の周波数調整前における周波数偏差Δf0 と周波数変動幅ΔfT との関係を図3に示す。図3において、+側の境界を示す直線L1は、x=30(但し、0≦y≦60)で表され、−側の境界を画定する直線L2は、y=x+30(但し、−30≦x≦30)で表され、両直線L1、L2で囲まれる領域S、即ちy−30≦x≦30(但し、0≦y≦60)の範囲が所望の周波数安定度を保証する。また、この領域Sの中心を通る直線Mは、y=2x(但し、0≦x≦30)で表される。
従来技術に関連して説明した図7からも分かるように、周波数調整前のSAW発振器は、図中右側に破線の細長い楕円で示す広い範囲に分布している。この細長い分布の中で周波数変動幅ΔfT の大きい点を選択し、そのΔfT に対応する直線M上の点から、狙い値の周波数を決定する。この狙い値周波数を共通のものとして、全てのSAW発振器に適用して周波数調整を行った。周波数調整後に各SAW発振器を封止し、その周波数偏差Δf0 と周波数変動幅ΔfT を測定した。
その結果、周波数調整後のSAW発振器は、周波数が下がる方向にシフトし、図3において実線の楕円で示す範囲内に分布した。周波数調整前と比較すると、周波数調整後は全体としてx軸方向の分布、即ち周波数偏差の分布が小さくなっている。そして、分布全体が領域Sの中に入っていることから、良品率は100%であった。
ここで、同じ狙い値に合わせ込むように周波数調整をしていることを考えると、本来であれば、全量のSAW発振器が、図3においてx軸方向に同じ値即ち同じ周波数偏差となるはずである。しかしながら、実際には、或る範囲で周波数のばらつきが生じている。これは、上述したように主に周波数調整後の封止工程によるものである。
比較のため、従来のSTカット水晶SAWチップを用いたSAW発振器について、周波数調整を行い、封止後に周波数偏差Δf0 と周波数変動幅ΔfT を測定した。その結果、図3の中央上部に示すように、本実施例の場合よりも高い位置に分布し、多くが領域S2からはみ出す結果となった。これは、元々周波数変動幅ΔfT が大きいためで、このような場合には、周波数調整精度を上げないと、前記領域に入り得るSAW発振器の数が少なくなり、良品率は低下する。
これに対し、本実施例では、面内回転33°Yカット水晶板を使用しかつIDT電極の電極幅と電極間ピッチとの比を0.5〜0.7の範囲内に設定することにより、元々周波数温度特性を改善しかつ初期周波数精度による周波数の変動を抑制している。そのため、周波数変動幅ΔfT 及び周波数偏差Δf0 が小さく、従って周波数調整量を小さくでき、より高い周波数安定度、周波数精度及び良品率を得ることができる。
以上、本発明の好適な実施例について詳細に説明したが、本発明はその技術的範囲において上記実施例に様々な変形・変更を加えて実施することができる。例えば、上記実施例はSAW発振器に関するものであるが、本発明は、発振器以外のSAWデバイスについても同様に適用することができる。
本発明の方法を適用したSAW発振器の製造工程を示すフロー図。 本発明によるSAW発振器の周波数調整を説明するために、周波数偏差Δf0 と周波数変動幅ΔfT との関係を直交座標系で示す図。 図2の直交座標系において、Yカット水晶SAW共振子を用いた本発明による実施例のSAW発振器における周波数調整の結果を示す図。 SAW共振子の周波数温度特性を使用周波数f0 との関係で示す図。 Yカット水晶SAW共振子の周波数温度特性の測定結果をSTカット水晶SAW共振子と比較して示す図。 同一ウエハ内におけるYカット水晶SAW共振子の周波数分布をSTカット水晶SAW共振子と比較して示すヒストグラム。 同一ウエハ内で形成されたYカット水晶SAW共振子を用いたSAW発振器の周波数分布を周波数調整の前後で比較して示すヒストグラム。

Claims (7)

  1. 所望の使用周波数f0 及び周波数安定度±a(ppm)を有するSAWデバイスを製造するために、
    圧電基板の表面に形成した電極膜を所望の電極パターンにエッチングして、IDT電極を有するSAWチップを形成する工程と、
    前記SAWチップをパッケージのベースに実装する工程と、
    前記SAWチップの前記圧電基板表面をエッチングして周波数調整を行う工程と、
    前記パッケージを封止する工程とを有し、
    前記周波数調整工程において、パッケージ封止後における前記SAWデバイスの実装による周波数変動幅を+b1,−b2(ppm)として、前記SAWデバイスの周波数がf0 −(a−b2 )〜f0 +(a−b1 )の範囲内に入るように周波数調整を行うことを特徴とするSAWデバイスの製造方法。
  2. 横軸xを前記使用周波数f0 に対する周波数偏差とし、かつ縦軸yを所定の動作温度範囲における周波数変動幅とする直交座標系において、前記SAWチップの周波数変動幅ΔfT に関する前記SAWチップの周波数偏差Δf0 が、y−(a−b2 )≦x≦(a−b1 )(但し、0≦y≦2a−(b1 +b2 ))の範囲内に入るように、狙い値の周波数を決定して周波数調整を行うことを特徴とする請求項1に記載のSAWデバイスの製造方法。
  3. 前記直交座標系において、前記SAWチップの周波数変動幅ΔfT に関する前記SAWチップの周波数偏差Δf0 が、y=2x−(b2 −b1 )(但し、(b2 −b1 )/2≦x≦a−b1 )を満たすように、前記狙い値周波数を決定することを特徴とする請求項2に記載のSAWデバイスの製造方法。
  4. 同じ製造条件下で複数の前記SAWチップを形成し、前記各SAWチップの周波数偏差Δf0 及び周波数変動幅ΔfT を前記直交座標系にプロットしたとき、その分布の中から選択した1つの前記SAWチップの周波数偏差Δf0 に基づいて、他の前記SAWチップについても共通の1つの前記狙い値周波数を決定することを特徴とする請求項2又は3に記載のSAWデバイスの製造方法。
  5. 所定の数の前記SAWチップについてその周波数偏差Δf0 及び周波数変動幅ΔfT を前記直交座標系にプロットし、その分布の中から選択した1つの前記SAWチップの周波数偏差Δf0 に基づいて前記共通の1つの狙い値周波数を決定した後、前記所定の数のSAWチップと同じ製造条件下で形成されるSAWチップについて、前記共通の1つの狙い値周波数を適用して周波数調整を行うことを特徴とする請求項4に記載のSAWデバイスの製造方法。
  6. ウエハ状の前記圧電基板に複数の前記電極パターンを形成しかつそれを個片化して複数の前記SAWチップを形成することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のSAWデバイスの製造方法。
  7. 前記圧電基板が、オイラー角(0°,123°,±42〜44°)の面内回転STカット水晶板からなり、前記SAWチップの前記IDT電極の電極幅と電極間ピッチとの比が0.5〜0.7の範囲内にあることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のSAWデバイスの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011061269A (ja) * 2009-09-07 2011-03-24 Seiko Epson Corp 弾性表面波デバイスの製造方法

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