JP2005329585A - 積層シート、被覆構造、並びに、積層シートの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとオレフィン系熱可塑性エラストマーとを必須成分とした混合物を溶融させてシート状に成形した主層13と、繊維により構成された基材層10とを積層した積層シート1である。また、ポリウレタン系熱可塑性材料の硬さは前記オレフィン系熱可塑性材料よりも硬い。
【選択図】 図1
Description
また、樹脂シートの材質としては、成形性や柔軟性などの理由により成形しやすく可塑剤による可塑化が容易な塩化ビニル樹脂が用いられていた。
ここで、炭化水素系オイルにより可塑化されたオレフィン系熱可塑性材料と、ポリウレタン系熱可塑性材料との軟らかさを比較する温度は、常温(25℃)である。
また、「成形温度でのトルク」とは、主層の成形温度における各材料(オレフィン系、ウレタン系)を、成形の温度まで加熱して溶融状態で測定されたトルクである。そして、このトルク測定は、一定量の成分を攪拌するのに要する単位時問当たりのエネルギー(仕事率)を測定するものであり、混練時の温度条件における粘性を確認することができる。
このトルク測定の具体的な方法としては、株式会社東洋精機製作所製のLABO PLASTOMILL(MODEL 30C150)を用い、可塑化されたオレフィン系熱可塑性材料、及び、ポリウレタン系熱可塑性材料のそれぞれについて、主層の成形温度(例えば200℃)で混練し、混練開始後、5分経過してトルクが安定した状態におけるトルクを測定する。そして、これらの大きさを比較して行う。
また、炭化水素系オイルとは実質的に炭素原子と水素原子からなる分子によって構成され、常温常圧で揮発分が少ない液状のものである。炭化水素系オイルの例としては、パラフィンオイルがあり、このパラフィンオイルは、炭素の結合構造が鎖構造であるものを主成分とし、環状構造(ナフテン系、アロマ系)の成分が少ないものである。
また、前記炭化水素系オイルにより可塑化されたオレフィン系熱可塑性材料は、前記ポリウレタン系熱可塑性材料に対して軟らかいので、積層シートの風合いがよい。すなわち、前記炭化水素系オイルにより可塑化されたオレフィン系熱可塑性材料が前記ポリウレタン系熱可塑性材料に対して硬いと、主層が硬くなってしまうので、出来た製品の風合いが損なわれる。
さらに、前記炭化水素系オイルにより可塑化されたオレフィン系熱可塑性材料は、前記ポリウレタン系熱可塑性材料に対して、成形温度での溶融時のトルクが150〜1000%であるので、カレンダー加工が行いやすく耐摩耗性能に優れる。そして、前記炭化水素系オイルにより可塑化されたオレフィン系熱可塑性材料のトルクが150%より小さいとオレフィン系熱可塑性材料が島状でポリウレタン系熱可塑性杖料が海状となっているいわゆる海島構造となりにくく、表面にウレタン成分を露出させにくく、耐摩耗性能が低下しやすい。また1000%より大きいとカレンダー加工時にカレンダーロール間で適切なバンクが出来ず、シートの厚み精度がでない。
そして、オレフィン系熱可塑性材料及び炭化水素系オイルの混合物が20重量部より少ないとカレンダー加工時にロールからのリリース性が悪くシートの厚み精度が出にくく、また、150重量部より多いと得られたシートの耐久性が低下してしまう。
請求項2、請求項3に記載の発明によれば、主層がカレンダー成形によって成形されているので、生産性がよい。
また、発泡層としてオレフィン系熱可塑性材料を用いてもよい(請求項6)。さらに、この発泡層のオレフィン系熱可塑性材料と、主層に用いるオレフィン系熱可塑性材料とを同じ材料を用いることができる。
この「オレフィン系熱可塑性材料は内部で独立状に分散して、ポリウレタン系熱可塑性材料がその隙間を埋める状態に存在」する状態は、いわゆる海島構造であり、オレフィン系熱可塑性材料が島状であり、ポリウレタン系熱可塑性材料が海状である。
また、オレフィン系熱可塑性材料が炭化水素系オイルにより可塑化されている場合には、ブリードアウトすることによる経時変化が小さい。これは、かかるオイルは、オレフィン系熱可塑性材料を可塑化しやすいが、ポリウレタン系熱可塑性材料は可塑化しにくい。そして、オレフィン系熱可塑性材料は、いわゆる島状に分散しているので、この島状の周りにはポリウレタン系熱可塑性材料が存在しているため、可塑剤が外部に移動しにくくなるからである。
ここで、エンボス加工とは、凹凸の有するロールの間にシートを通過させるなどして、シートの表面に所定の凹凸を形成させる加工のことであり、熱可塑性材料などの場合には加熱した状態で行われる。
なお、基材層10とそれに積層される層との接着性が高い場合には、プライマー層11を省略することができる。
発泡層12を形成する際に、成形時に発泡させてもよく、また、シート状に成形した後に加熱して発泡してもよい。
例えば、後述する実施例では、オレフィン系熱可塑性材料と、ポリウレタン系熱可塑性材料と、可塑剤としてパラフィンオイルとを混合した材料が用いられるが、パラフィンオイルはオレフィン系熱可塑性材料を可塑化するものであり、硬さの比較は、オレフィン系熱可塑性材料とパラフィンオイルとが混合されたものと、ポリウレタン系熱可塑性材料とを比較される。
カレンダー成形は、図3に示されるような構造の装置90などを用いて行うものであり、材料96を上部にセットし、複数本の加熱ロ−ル91で圧延して一定厚みのフィルム94を作る成形方法である。また、図3のように、所定のシートである基材93上に、カレンダー成形によって成形されたフィルム94を成形しながら積層体92とすることができる。
まず、基材層10の上にプライマー層11を設ける。具体的には、液状のプライマーを基材層10の上に塗布し、その後に硬化させて行われる。このプライマーは、発泡層12の材質に合わせて使用され、具体的には、オレフィン系のものが用いられている。
具体的には、発泡層12の材料として、発泡剤が添加されているオレフィン系の熱可塑性エラストマーの材料96をセットし、加熱ローラ91を材料96の融点付近に加熱しながら回転させて、フィルム94に成形する。また、基材層10とプライマー層11からなる積層物を、プライマー層11側が発泡層12側となるように基材93として供給し、基材層10、プライマー層11、発泡層12の順に積層された積層体92とする。
具体的には、主層13の材料として、ポリウレタン系熱可塑性材料とオレフィン系熱可塑性材料とを必須成分とした混合物が用いられる。そして、この材料96を図3に示されるようにセットし、加熱ローラ91を材料96の融点付近に加熱しながら回転させて、フィルム94に成形する。また、基材層10、プライマー層11及び発泡層12からなる積層物を基材93とし、発泡層12側が主層13側となるように基材93として供給し、基材層10、プライマー層11、発泡層12、主層13の順に積層された積層体92とする。
中でも、直鎖ポリオール、ジイソシアネート、鎖伸長剤から構成された、いわゆるソフトセグメントとハードセグメントからなるポリウレタン系熱可塑性エラストマーを用いることができる。
このビニル芳香族・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物を構成するビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α―メチルスチレン、o−、m−またはp−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等があげられる。これらの中でもスチレン及びα−スチレン等のスチレン系が好ましい。ビニル芳香族化合物は単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。また、水添ブロック共重合体を構成する化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、もしくはブタジエンとイソプレンの混合物が好ましく、イソプレンとブタジエンの混合物を用いる場合の形態としてはランダム、ブロック、テーパードのいずれでもよい。さらに、一般的にビニル結合と呼ばれる1,2結合及び3,4結合を導入することも可能である。
なお水添ブロック共重合体における重合体ブロックの不飽和二重結合の割合は、ヨウ素価測定、赤外分光光度計、核磁気共鳴装置等により確認できる。
なお、オレフィン系熱可塑性エラストマーに対する可塑剤を添加する場合には、オレフィン系熱可塑性エラストマーと可塑剤を混合した状態での粘性が比較される。
また、この積層体92にエンボス加工を行う。エンボス加工は、表面に凹凸を有するロール間に加熱された積層体92を通過させて、積層体92の主層13側の表面に凹凸を形成させるものである。
表層14の形成は、エンボス加工や発泡工程の前でも後でもよく、さらに、前後の両方で行ってもよい。
例えば、基材層10、発泡層12、主層13、表層14の順に積層されたシートで、プライマー層11が無い構成でもよい。
また、図2に示されるように、基材層10、プライマー層11、主層13、表層14の順に積層されたシートで、発泡層12が無い構成でもよい。なお、この場合のプライマー層11は、主層13に対応する材質が選択される。
基材層10、プライマー層11が無く、主層13のみ、又は発泡層12と主層13が積層されたシートでも構成でもよい。このようなものを縫製によって物品の表面に縫い付けると基材層10がなく縫製部分からちぎれやすいので、物品の成形時に被覆するなどの他の方法によって物品に被覆される。
そして、詳細は後記するが、実施例1と比較例1〜3とは、主層13のみが異なるものである。さらに、実施例1と比較例1、2は、使用する原材料の種類は同じものを用い、配合割合を変更したものである。
以下に示すようにして実施例1の積層シート1を得た。
まず、表1に示す配合の樹脂配合物(a)をバンバリーミキサーにより5分間混練し、続いて2本ロールのウォームアップロールにより6分間混練する。しかるのち逆L字形4本ロールカレンダにより、上記配合物(a)をエステル・レーヨン製両面メリヤス編物(目付量 平方メートル当たり150g)の生地である基材層10にプライマー層11を設けたものに0.3mmの厚みに貼着して発泡層12を成形・積層した。
発泡積層シート1の各層(基材層10、プライマー層11、発泡層12、主層13、表層14)は薄いものであり、シート状である。
上記実施例1の発泡層12を設けないで、基材層10、プライマー層11、主層13、表層14からなる積層シート1を用いた。具体的には、以下のようにして実施例2の積層シート1を得た。
上記実施例1において、表2の樹脂配合物(b)を樹脂配合物(c)に置き換え、以下実施例1と同様の条件で樹脂配合物(c)を支持体シートと樹脂配合物(a)とからなる発泡層12からなる層上に0.2mmの厚みに重ねて貼着することにより主層13を成形・積層した。
得られた積層物において配合物(c)からなる層の表面に表層14となるウレタン系表面処理剤(大日本インキ化学工業製商品名「CRISVON3354」100重量部と顔料5重量部の混合物を塗布(ドライ付量平方メートル当たり2.5g)して乾燥した。しかるのち、この積層シートを温度210 ℃の発泡炉に2分間通して配合物(a)からなる層を発泡させながら表面にエンボス加工を施して、合計厚み0.9mmの皮革様のシボを形成した発泡シートとした。
上記実施例1において表2の樹脂配合物(b)を樹脂配合物(d)に置き換え、以下実施例1と同様の条件で樹脂配合物(d)を支持体シートと樹脂配合物(a)とからなる発泡層12からなる層上に0.2mmの厚みに重ねて貼着することにより主層13を成形・積層した。さらに配合物(d)からなる層の表面に表層14となるウレタン系表面処理剤(大日本インキ化学工業製商品名「CRISVON3354」100重量部と顔料5重量部の混合物を塗布(ドライ付量平方メートル当たり2.5g)して乾燥した。しかるのち、この積層シートを温度210 ℃の発泡炉に2分間通して配合物(a)からなる層を発泡させながら表面にエンボス加工を施して、合計厚み0.9mmの皮革様のシボを形成した発泡シートとした。
上記実施例1において表2の樹脂配合物(b)を表5の樹脂配合物(e)に置き換え、以下実施例1と同様の条件で樹脂配合物(e)を支持体シートと樹脂配合物(a)とからなる発泡層12からなる層上に0.2mmの厚みに重ねて貼着することにより主層13を成形・積層した。
上記で得た積層物において配合物(e)からなる層の表面に表層14となるウレタン系表面処理剤(大日本インキ化学工業製商品名「CRISVON3354」100重量部と顔料5重量部の混合物を塗布(ドライ付量平方メートル当たり2.5g)して乾燥した。しかるのち、この積層シートを温度210 ℃の発泡炉に2分間通して配合物(a)からなる層を発泡させながら表面にエンボス加工を施して、合計厚み0.9mmの皮革様のシボを形成した発泡シートとした。
耐久性の試験方法は、安田精機製作所製テーバー摩耗試験機を用い、JISK7204に基づいて試験を行った。また、試験条件は、摩耗輪がCS−10、荷重が1kg、回数は3000回であり、評価は外観の状態によって判断した。
上記結果と、主層13のカレンダー成形での成形のし易さ(主層加工性)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー100重量部に対するスチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物及びパラフィンオイルの混合物の配合部数、及び、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーの200℃混練時のトルクを基準としたスチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物及びパラフィンオイルの混合物のトルク比率を、表4に示す。
比較例1、2の主層13は、スチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物に対してパラフィンオイルの混合量が多く、可塑化されたオレフィン系熱可塑性材料の混練時の粘性がウレタン系熱可塑性エラストマーに対して小さいものである。そのため、成形後の状態は可塑化されたオレフィン系熱可塑性材料が海状であり、ウレタン系熱可塑性エラストマーが島状の海島構造となりやすい。
したがって、比較例1のように、可塑化されたオレフィン系熱可塑性材料の割合が多くなると表層14との接着性が低下して耐久性が低下し、また、溶融時の粘性が低下してカレンダー成形時、カレンダーロールからリリース性が悪くシートに伸びが生じ、厚み精度が出ないなど、カレンダー成形性が劣る。また、比較例2のように、可塑化されたオレフィン系熱可塑性材料の割合が少なくなると、主層13が硬くなってしまう。
比較例3の主層13は、実施例1、2のようにウレタン系熱可塑性エラストマーを用いておらず、ポリプロピレンを用いているものである。そのため、主層13の成形後の表面には、実施例1、2の表面のようにウレタン成分のような極性成分がないので、表層14との接着性が低下して耐久性が低下する。また、カレンダー成形時、樹脂の流れが悪く、成形性が悪く、物性も劣る。
10 基材層
11 プライマー層
12 発泡層
12a 空洞
13 主層
14 表層
Claims (11)
- ポリウレタン系熱可塑性材料とオレフィン系熱可塑性材料とを必須成分とした混合物を溶融させてシート状に成形した主層と、繊維により構成された基材層とを積層するものであり、前記主層の成形は、所定の成形温度まで材料を加熱した状態で成形されるものであり、前記オレフィン系熱可塑性材料は、前記ポリウレタン系熱可塑性材料に対して、軟らかく、かつ、成形温度での粘性が高いものであることを特徴とする積層シート。
- 主層の成形は、所定の成形温度まで材料を加熱した状態でカレンダー加工によって成形されるものであり、前記主層に用いる材料には炭化水素系オイルが添加されて、炭化水素系オイルによりオレフィン系熱可塑性材料を可塑化するものであり、前記炭化水素系オイルにより可塑化されたオレフィン系熱可塑性材料は、主層に用いるポリウレタン系熱可塑性材料に対して、軟らかく、かつ、カレンダー加工の成形温度でのトルクが150〜1000%であることを特徴とする請求項1に記載の積層シート。
- 主層に用いる材料は、ポリウレタン熱可塑性エラストマー100重量部に対しオレフィン系熱可塑性材料及び炭化水素系オイルの混合物が20〜150重量部配合された材料であり、前記主層の成形にはカレンダー加工が用いられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層シート。
- 主層と基材層との間には、内部に発泡剤による空洞が設けられているシート状の発泡層が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層シート。
- 発泡層は熱可塑性材料が用いられていることを特徴とする請求項4に記載の積層シート。
- 発泡層はオレフィン系熱可塑性材料が用いられていることを特徴とする請求項5に記載の積層シート。
- 主層の内部状態は、オレフィン系熱可塑性材料は内部で独立状に分散して、ポリウレタン系熱可塑性材料がその隙間を埋める状態に存在するものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の積層シート。
- ポリウレタン系熱可塑性材料とオレフィン系熱可塑性材料とを必須成分とした混合物を溶融させてシート状に成形し、前記シート状成形物を物品の表面に設けて被覆したものであり、前記オレフィン系熱可塑性材料は、前記ポリウレタン系熱可塑性材料に対して、軟らかく、かつ、成形の際の粘性が高いものであることを特徴とする被覆構造。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の積層シートを、基材層側が物品側となるように、物品の表面に被覆したことを特徴とする被覆構造。
- 請求項2〜7のいずれかに記載の積層シートの製造方法であって、主層の成形の際には、ポリウレタン系熱可塑性材料、オレフィン系熱可塑性材料及び炭化水素系オイルを混合して行われることを特徴とする積層シートの製造方法。
- 請求項4〜7のいずれかに記載の積層シートの製造方法であって、基材層上に発泡剤を含んだ熱可塑性材料を用いて発泡剤の発泡温度以下でカレンダー成形して未発泡状態で発泡層を積層する工程と、主層を積層して発泡温度以上に加熱して発泡層の発泡を行いながら表面のエンボス加工を行う工程とを有することを特徴とする積層シートの製造方法。
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