JP2005329562A - インクジェットヘッド及びその製造方法、並びにそれを備えたインクジェット式記録装置 - Google Patents

インクジェットヘッド及びその製造方法、並びにそれを備えたインクジェット式記録装置 Download PDF

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Abstract

【課題】インクジェットヘッドにおいて、圧電素子の能動部に対応する部分の変位量を向上させるとともに上部電極の配線部の抵抗を下げる。
【解決手段】インクジェットヘッド41は、インク吐出口とインク吐出口に連通する圧力室8とが形成された圧力室部材7と、下面の一部が圧力室8に臨むように設けられた振動層6と、振動層6上に設けられかつ圧力室8内のインクに圧力を付与する圧電素子とを備えている。圧電素子は、下部電極5、圧電体層4、結晶配向制御層3及び上部電極2が順番に積層されて構成されている。上部電極2は、圧力室8に対応する位置に設けられた能動部13と、能動部13に接続された配線部14とを有する。上部電極2の能動部13の膜厚は上部電極2の配線部14の膜厚よりも薄い。
【選択図】図3

Description

本発明は、圧電効果を利用して記録を行うインクジェットヘッド及びその製造方法、並びにそれを印字手段として備えたインクジェット式記録装置に関するものである。
従来から、圧電素子の圧電効果を利用して記録を行うインクジェットヘッドが知られている(例えば特許文献1を参照)。このインクジェットヘッドは、例えば以下のように構成されている。すなわち、図5(f)に示すように、インクジェットヘッドは、ノズル121が形成されたノズルプレート102と加圧室110が形成された加圧室基板101と振動板層105と下地層106と下部電極171とチタン層108と該チタン層108によって結晶配向性を制御される圧電体層109と上部電極172とが積層されてなる。下部電極171、チタン層108、圧電体層109及び上部電極172が圧電素子を構成している。このインクジェットヘッドにおいて、上部電極172と下部電極171との間に交流電圧を印加すると、圧電体層109に撓み振動が発生して振動板層105が変位する。そして、その変位によって加圧室110内のインクに圧力が付与されてノズル121からインクが記録媒体に対して吐出される。
このインクジェットヘッドを製造するときは、まず、図5(a)に示すように、加圧室基板101に振動板層105及び下地層106を順番に成膜し、それから、図5(b)に示すように、下地層106上に下部電極171を成膜する。次に、図5(c)に示すように、下部電極171上にチタン層108を成膜した後、図5(d)に示すように、チタン層108上に圧電体層109及び上部電極172を順番に成膜する。この圧電体層109はゾル・ゲル法で成膜されている。次に、図5(e)に示すように、上部電極172上にレジストをスピンコートし、加圧室110を形成する位置に合わせて露光・現像してパターニングする。そして、残ったレジストをマスクとして上部電極172、圧電体層109、チタン層108及び下部電極171をエッチングし、圧電素子を加圧室110に対応する位置に設ける。続いて、図5(f)に示すように、加圧室110を形成する位置に合わせてエッチングマスクを施し、加圧室基板101を予め設定された深さまでドライエッチングして加圧室110を形成する。加圧室基板101のエッチングされずに残った部分は側壁となる。
しかしながら、このプロセスでは、振動板層105の形成後に圧電体層109を高温で形成するので、振動板層105の構成材料や形成条件が制限されてしまう。従って、圧電素子全体の応力を調整することが困難となり、そのため、変位バラツキが生じたり、印字品質が低下するという問題が発生した。
それに対して、特許文献2には、圧電体層を高温で形成した後、振動板層を形成することにより圧電素子全体の応力調整を容易にする、インクジェットヘッドの製造方法が開示されている。以下、この方法について説明する。すなわち、まず、図6(a)に示すように、基板200の一方の面上に上部電極201、結晶配向制御層(初期層)202、圧電体層203、下部電極204及び振動板層205を順番に成膜する。この上部電極201は貴金属からなるものであり、また、結晶配向制御層202は圧電体層203の結晶配向性を制御するものである。次に、図6(b)に示すように、振動板層205上に圧力室部材206を接合する。この圧力室部材206は、圧力室207を互いに隔てるための隔壁208とノズル209が形成されたノズル板210とからなる。圧力室部材206の接合後、基板200をエッチング除去する。次に、図6(c)に示すように、上部電極201を所定の形状になるようにドライエッチング法でパターニングする。最後に、結晶配向制御層202及び圧電体層203を上部電極201と同じ形状になるようにウェットエッチング法でパターニングする。
図7は、このインクジェットヘッドの要部の拡大斜視図である。図7には2ノズルのみが示されているが、実際にはこのインクジェットヘッドにはノズルが400個配置されている。上部電極201は、各圧力室207に対応する位置に設けられた能動部211と、一端が能動部211に接続された配線部212と、配線部212の他端に接続されかつ能動部211に電圧を印加するための電圧印加パッド部213とを有する。このインクジェットヘッドにおいて、上部電極201(詳細には、電圧印加パッド213)と下部電極(共通電極)204との間に交流電圧を印加すると、圧電体層203に撓み振動が発生して振動板層205が変位する。そして、その変位によって圧力室207内のインクに圧力が付与されてノズル209からインクが記録媒体に対して吐出される。
このインクジェットヘッドでは、上部電極201が貴金属からなるため、圧電体層203を高温で形成することができる。そして、その後に振動板層205を形成するため、振動板層205の構成材料や形成条件の制約を少なくすることができ、圧電素子全体の応力調整が容易になる。
特開2001-88294号公報 特開2001-113712号公報 特開2001-88301号公報
ところで、近年、インクジェットヘッドに対しては、高精細の印字や印画を高速度で印刷することが要請されている。その要請に応えるためには、1ピンのサイズを小さくする必要があり、さらにそのような小サイズのピンでインクを吐出するためには、振動板層を大きく振動させて圧電素子の変位量を増加させる必要がある。
しかしながら、上記特許文献2で示す方法では、上部電極にヤング率が大きいIr、Pt、Ruなどの貴金属を用いているため、それが圧電素子の変位を妨げる要因となっている。
このような構成において圧電素子の変位量を向上させるためには、ヤング率が大きい上部電極全体を薄くすることが考えられる。しかしながら、上部電極全体を薄くすると、今度は配線部の抵抗が大きくなってしまう。一般に、抵抗とコンデンサーが直列に接続されてなる回路に交流電圧を印加した場合、入力の変化に対する出力の応答時間は、抵抗の抵抗値Rとコンデンサーの静電容量Cとの積に比例する。ここで、上記インクジェットヘッドは、配線部が抵抗として、能動部がコンデンサーとして働き、それらが直列に接続されてなるものと考えられる。よって、圧電素子の変位量を向上させるため上部電極全体を薄くしたことにより配線部の抵抗が大きくなると、電圧印加パッドから電圧を印加した際、コンデンサー、すなわち、能動部の充電に時間がかかる。そのため、インク吐出の応答に遅れが生じ、インクの着弾位置にずれが発生する。
ここで、配線部の抵抗を下げるため、該配線部の幅を大きくすることが考えられる。しかしながら、配線部の面積が大きくなると、配線部の静電容量が大きくなり、上述と同様に、インク吐出の応答に遅れが生じ、インクの着弾位置にずれが発生する。
さらに、圧電素子の変位量を向上させる方法として、例えば特許文献3には、圧電体層の優先配向方位との関連において上部電極又は下部電極の応力状態を設定するものが示されている。しかしながら、この方法では、上部電極又は下部電極に応力を与えるため熱アニール処理、酸化処理又は窒化処理がなされる必要があり、それゆえに、応力の制御が非常に困難である。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、インクジェットヘッド及びその製造方法、並びにそれを備えたインクジェット式記録装置において、圧電素子の能動部に対応する部分の変位量を向上させつつ、個別電極の配線部の抵抗を低下させる技術を提供することにある。
上記の課題を解決するため、本発明のインクジェットヘッドでは、ヤング率が高い個別電極の能動部の膜厚を配線部の膜厚よりも薄いものとした。
すなわち、第1の発明は、個別電極、圧電体層及び共通電極が順に積層されてなる圧電素子と、該圧電素子の上記共通電極側の面に設けられた振動層と、該振動層の上記圧電素子とは反対側の面に接合されかつインクを収容する圧力室と該圧力室に連通するノズルとが形成された圧力室部材とを備え、上記個別電極が、上記圧力室に対応する位置に設けられた能動部と該能動部に接続された配線部とを有し、上記圧電体層の圧電効果により上記振動層を層厚方向に変位させて上記圧力室内のインクを上記ノズルから吐出させるインクジェットヘッドであって、上記能動部の膜厚が上記配線部の膜厚よりも薄いことを特徴とするものである。
本発明では、圧電素子の能動部に対応する部分の変位量を向上させるため、個別電極の能動部の膜厚を薄くしている。また、本発明では、個別電極の配線部の膜厚を能動部の膜厚よりも厚くすることにより、配線部の抵抗が増加することを防いでいる。すなわち、本発明では、能動部の膜厚を配線部の膜厚よりも薄くすることで、配線部の抵抗を増加させることなく、圧電素子の能動部に対応する部分の変位量を向上させることができる。
第2の発明では、上記第1の発明において、上記個別電極は貴金属からなることを特徴とするものである。
これにより、個別電極は、貴金属からなるので、圧電体層をスパッタ法で形成するときの成膜温度に十分に耐えることができる。
また、個別電極を、電極として適切な材料である貴金属により構成することができる。
第3の発明では、上記第1の発明において、上記能動部の膜厚は50nm以上300nm以下であることを特徴とするものである。
ところで、本発明において個別電極の能動部の膜厚が50nm未満である場合は、場合によっては個別電極の配線部の膜厚が50nm未満になり、このとき、配線部の抵抗が大きくなってしまう。また、個別電極の能動部の膜厚が300nmよりも大きい場合は、能動部の剛性が高くなるため、圧電素子の能動部に対応する部分の変位量が低下してしまう。
ここで、本発明によれば、個別電極の能動部の膜厚は50nm以上300nm以下であるため、インク吐出の応答に遅れが生じることなく、圧電素子の能動部に対応する部分の変位量を十分に確保することができる。
第4の発明では、上記第1の発明において、上記圧電体層は、チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする、(001)面に優先配向したペロブスカイト型結晶構造の圧電材料からなることを特徴とするものである。
本発明によれば、圧電体層を圧電特性が良好な圧電材料によって構成しているため、高性能のインクジェットヘッドを提供することができる。
第5の発明では、上記第1の発明において、上記個別電極と上記圧電体層との間に設けられ、該圧電体層の結晶配向性を制御する結晶配向制御層を備えたことを特徴とするものである。
これにより、結晶配向制御層は圧電体層の結晶配向性を制御するため、圧電体層の結晶配向性を確実に向上させることができる。
第6の発明は、基板の一方の面上に上部電極を成膜する工程と、上記上部電極の上に圧電体層を成膜する工程と、上記圧電体層上に共通電極を成膜する工程と、上記共通電極上に振動層を成膜する工程と、上記振動層上に、インクを収容する圧力室と該圧力室に連通するノズルとが形成された圧力室部材を接合する工程と、上記基板をエッチング除去する工程と、上記上部電極をパターニングして、上記圧力室に対応する位置に設けられた能動部と該能動部に接続された配線部とを有する個別電極を形成する工程と、上記能動部の膜厚を上記配線部の膜厚よりも薄くする工程と、上記圧電体層をパターニングする工程とを備えたことを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法である。
これにより、個別電極の能動部の膜厚を個別電極の配線部の膜厚よりも薄くするため、圧電素子の能動部に対応する部分の変位量が大きくかつ配線部の抵抗が小さいインクジェットヘッドを製造することができる。
第7の発明は、上記第1〜5の発明のいずれか1つに記載のインクジェットヘッドと、上記インクジェットヘッドと記録媒体とを相対移動させる移動手段とを備えたことを特徴とするインクジェット式記録装置である。
これにより、高精細の印字や印画を高速で印刷できるインクジェット式記録装置を提供することができる。
以上、説明したように、本発明によれば、圧電素子を構成する個別電極において能動部の膜厚を配線部の膜厚よりも薄くすることにより、圧電素子の能動部に対応する部分の変位量を向上させつつ、配線部の抵抗を小さくすることができるため、変位特性が良好でかつインクの着弾位置のずれがないインクジェットヘッドを提供できる。さらに、高精細の印字や印画を高速度で印刷できるインクジェットヘッド式記録装置を提供できる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の実施形態に係るインクジェット式記録装置40はインクジェットヘッド41を備えていて、このインクジェットヘッド41のインク吐出口10(図2を参照)からインク滴を吐出させて記録用紙などの記録媒体42に着弾させて記録を行うものである。インクジェットヘッド41はキャリッジ44に搭載されていて、そのキャリッジ44が記録媒体42の幅方向(以下、主走査方向Xという)に延びているキャリッジ軸43に沿って往復移動するのに伴い主走査方向Xに往復移動する。インクジェット式記録装置40は、記録媒体42を主走査方向Xと略垂直な副走査方向Yに移動させる、上下3つずつのローラ45,45,…を備えている。これらローラ45,45,…・は、キャリッジ44が主走査方向Xに一走査分だけ移動するごとに、記録媒体42を副走査方向Yに所定量だけ搬送するように構成されている。なお、本発明に係る移動手段は、キャリッジ軸43、キャリッジ44、及びローラ45に対応する。
図2は、インクジェットヘッド41の断面図である。図2に示すように、インクジェットヘッド41は、少なくとも、複数のインク吐出口(ノズル)10,10,…と各インク吐出口10にそれぞれ連通する複数の圧力室8,8,…とが形成された圧力室部材7と、下面の一部が複数の圧力室8,8,…に臨むように設けられた振動層6と、振動層6上に設けられかつ各圧力室8内のインクにそれぞれ圧力を付与する複数の圧電素子12とを備えている。圧力室部材7は、複数の圧力室8,8,…を互いに隔てるための隔壁9,9,…と、複数のインク吐出口10,10,…が形成されたノズル板11とを有している。圧電素子12は、下部電極(共通電極)5、圧電体層4、結晶配向制御層3及び上部電極(個別電極)2が順番に積層されて構成されている。なお、本実施形態では、圧電素子12は、下部電極5、圧電体層4、結晶配向制御層3及び上部電極2が順番に積層されて構成されているが、結晶配向制御層3を備えず、下部電極5、圧電体層4及び上部電極2が順番に積層されて構成されていても良い。
上部電極2は貴金属からなる。図3に示すように、上部電極2は、各圧力室8に対応する位置にそれぞれ設けられた複数の能動部13,13,…と、一端が各能動部13にそれぞれ接続された複数の配線部14,14,…と、各配線部14の他端にそれぞれ接続されかつ各能動部13にそれぞれ電圧を印加するための複数の電圧印加パッド部15,15,…とを有する。能動部13及び電圧印加パッド部15は略矩形状に形成されている。
上部電極2の能動部13の膜厚は上部電極2の配線部14及び電圧印加パッド部15の膜厚よりも薄い。能動部13の膜厚は50nm以上300nm以下であることが好ましく、本実施形態では90nmである。これは、本実施形態において上部電極2の能動部13の厚みが50nm未満であるときは、場合によっては上部電極2の配線部14の厚みが50nm未満になり、このとき、上部電極2の配線部14の抵抗が大きくなってしまい、インク吐出の応答に遅れが生じる一因となるからである。一方、上部電極2の能動部13の厚みが300nmよりも大きいときは、上部電極2の能動部13の剛性が大きくなるため、圧電素子12の能動部13に対応する部分の変位量が低下してしまうからである。配線部14及び電圧印加パッド部15の膜厚は同じ値であり、本実施形態では150nmである。
結晶配向制御層3は、圧電体層4の成膜時に該圧電体層4の結晶配向性を制御するものである。結晶配向制御層3及び圧電体層4は、上部電極2と同じ形状である。すなわち、結晶配向制御層3及び圧電体層4は、各能動部13、各配線部14及び各電圧印加パッド部15に対応する位置に設けられている。圧電体層4は、チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする、(001)面に優先配向したペロブスカイト型結晶構造の圧電材料からなる。
−インクジェットヘッドの製造方法−
以下、インクジェットヘッド41の製造方法について説明する。本実施形態では、基板としてSi基板1を用いる。なお、基板は、Si基板に限らず、石英などのガラス基板、SUSなどの金属基板、アルミナなどのセラミック基板等であっても良い。
まず、図4(a)に示すように、Si基板1の一方の面上に、厚さ0.15μmのPtからなる上部電極2をスパッタリング法で成膜した。この上部電極2は、Si基板1を400℃に加熱しながら1Paのアルゴンガス(以下、Arガスという)中で200Wの高周波電力を8分間印加することにより成膜した。なお、上部電極2には、Mg・Ca・Sr・Ba等のアルカリ土類金属、Ti・Fe・Co・Ni・Cu・Mn等の遷移金属、Alなどの添加物が含まれていても良い。
次に、上部電極2上に、厚さ60nmのチタン酸ランタン鉛(チタン酸鉛ランタン、以下、PLTという)からなる結晶配向制御層3をスパッタリング法で成膜した。この結晶配向制御層3は、Si基板を610℃に加熱しながら0.5PaのAr−O2ガス(ガス体積比Ar:O2=19:2)で300Wの高周波電力を10分間印加することにより成膜した。なお、結晶配向制御層3の構成材料は、PLTに限らず、チタン酸鉛(PbTiO3)、ジルコン酸チタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、チタン酸ストロンチウム等でも良い。さらに、結晶配向制御層3の膜厚は4nm以上300nm以下であることが好ましい。
次に、結晶配向制御層3上に、厚さ1.5μmのPbZr0.53Ti 0.473(ジルコン酸チタン酸鉛、以下、PZTという)からなる圧電体層4をスパッタリング法で成膜した。この圧電体層4は、Si基板を610℃に加熱しながら0.3PaのAr-O2ガス(ガス体積比Ar:O2=19:1)中で250Wの高周波電力を3時間印加することにより成膜した。なお、圧電体層4の構成材料は、Ti及びPbを成分として有する誘電体が望ましく、例えば、チタン酸鉛(PbTiO3)、ジルコン酸チタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La)TiO3)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O3)、マグネシウムニオブ酸ジルコン酸チタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O3)等が好ましい。さらに、圧電体層4の膜厚は、0.5〜5.0μmの範囲内であることが好ましい。また、結晶配向制御層3及び圧電体層4を形成する方法は、スパッタリング法に限らず、ゾル・ゲル法、蒸着法、CVD法、プラズマCVD法等でも良い。
次に、圧電体層4上に、厚さ0.2μmのPtからなる下部電極(共通電極)5をスパッタリング法で成膜した。この下部電極5は、Si基板の温度を室温にして1PaのArガス中で200Wの高周波電力を12分間印加することにより成膜した。
次に、下部電極5上に厚さ5μmのCrからなる振動層6をスパッタリング法で成膜した。この振動層6は、Si基板の温度を室温にして0.3PaのArガス中で200Wの高周波電力を150分間印加することにより成膜した。
次に、図4(b)に示すように、振動層6上に圧力室部材7を接合した。この圧力室部材7は、圧力室8,8,…を形成するための隔壁9とインク吐出口10,…が設けられたノズル板11とを有する。圧力室部材7の接合後、Si基板1をエッチング除去した。
次に、上部電極2をArガスを用いたドライエッチング法でパターニングして、能動部13、配線部14及び電圧印加パッド部15を有する上部電極(個別電極)2形成した(図3を参照)。なお、上部電極2のパターニングに用いるドライエッチングガスはArだけでなく、Ar以外の他のガスを含んでいても良い。
次に、上部電極2の能動部13の一部を該能動部13の膜厚が90nmとなるようにArガスを用いたドライエッチング法で除去した(図3を参照)。なお、上部電極2の能動部13の除去に用いるドライエッチングガスはArだけでなく、Ar以外の他のガスを含んでいても良い。
次に、図4(d)に示すように、結晶配向制御層3及び圧電体層4を上部電極2と同じ形状となるようにフッ硝酸を主成分とするエッチャントを用いたウェットエッチング法でパターニングした。なお、結晶配向制御層3及び圧電体層4のパターニングはドライエッチングで行っても良い。
なお、上記方法以外に、上部電極2の能動部13の厚さを配線部14及び電圧印加パッド部15の厚さよりも薄くする方法として、まず、能動部13と同じ厚さの上部電極2を形成し、その後、上部電極2のうち配線部14及び電圧印加パッド部15の上にのみ上部電極2と同じ電極材料を用いて追加して成膜することも考えられる。また、このように追加成膜する場合は、上部電極2と別の電極材料を用いて追加成膜しても良い。
−インクジェットヘッド式記録装置の動作−
以下、インクジェット式記録装置40の動作について説明する。まず、インクジェットヘッド41をキャリッジ44により主走査方向Xに往復移動させ、その移動時にインクジェットヘッド41のインク吐出口10からインクを記録媒体42に吐出させることにより、一走査分の記録を行う。この一走査分の記録が終了すると、記録媒体42をローラ45により副走査方向Yに所定量だけ移動させ、次の一走査分の記録を行う。
ここで、本実施形態に係るインクジェットヘッド41の構成及び製造方法は、以下の実施例の結果に基づいて決定されている。
(実施例1)
本実施例に係るインクジェットヘッドでは、各層の材料、膜厚、製造方法等を上記実施形態と同じにした。このインクジェットヘッドに30Vの電圧を印加したときの変位量を20ピン分だけ測定すると、その平均値は75nmであり、従来のインクジェットヘッドと比較して変位量が向上した。また、配線部の抵抗値を測定したところ、その測定値は158Ωであり、後述する比較例1の従来例よりも低い値であった。また、吐出ばらつきはσ=3.0%であり、比較例1の従来例よりも低い値であった。
(比較例1)
本比較例に係るインクジェットヘッドでは、上部電極をPtによって構成し、能動部、配線部及び電圧印加パッド部の厚さをすべて120nmとした。その他の点に関しては実施例1とほぼ同様である。
本比較例のインクジェットヘッドの変位量の平均値は52nmであった。また、配線部の抵抗値を測定したところ、その測定値は197Ωであった。また、吐出ばらつきはσ=8.1%であった。
(実施例2)
本実施例に係るインクジェットヘッドでは、上部電極をIrによって構成するとともに、上部電極を厚さが180nmとなるように形成した後、上部電極のうち能動部のみを厚さが55nmとなるようにエッチングした。その他の点に関しては実施例1とほぼ同様である。
本実施例のインクジェットヘッドの変位量の平均値は65nmであった。また、配線部の抵抗値を測定したところ、その測定値は75Ωであり、後述する比較例2の従来例よりも低い値であった。また、吐出ばらつきはσ=2.4%であり、比較例2の従来例よりも低い値であった。
(比較例2)
本比較例に係るインクジェットヘッドでは、上部電極をIrによって構成し、能動部、配線部及び電圧印加パッド部の厚さをすべて60nmとした。その他の点に関しては実施例1とほぼ同様である。
本比較例のインクジェットヘッドの変位量の平均値は49nmであった。また、配線部の抵抗値を測定したところ、その測定値は226Ωであった。また、吐出ばらつきはσ=5.7%であった。
(実施例3)
本実施例に係るインクジェットヘッドでは、上部電極をPdによって構成するとともに、上部電極を厚さが80nmとなるように形成した後、上部電極のうち配線部及び電圧印加パッド部の上にのみ厚さ100nmのAuをさらに形成して、配線部及び電圧印加パッド部の厚さを180nmとした。その他の点に関しては実施例1とほぼ同様である。
本実施例のインクジェットヘッドの変位量の平均値は63nmであった。また、配線部の抵抗値を測定したところ、その測定値は56Ωであった。また、吐出ばらつきはσ=3.1%であった。
以上から、上記実施例1〜3のように、上部電極の能動部の厚さを配線部及び電圧印加パッド部の厚さよりも薄くすることで、インクジェットヘッドの能動部に対応する部分の変位量を確保しつつ、配線部の抵抗を小さくすることができ、また、吐出ばらつきも改善することができる。
本発明は、プリンター、ワープロ、ファクシミリ、印刷機などの記録装置等に有用である。
本発明の実施形態に係るインクジェットヘッド式記録装置の概略構成図である。 インクジェットヘッドの断面図である。 インクジェットヘッドの要部の拡大斜視図である。 インクジェットヘッドの製造工程図である。 従来のインクジェットヘッドの製造工程図である。 従来のインクジェットヘッドの製造工程図である。 従来のインクジェットヘッドの要部の拡大斜視図である。
符号の説明
1 基板
2 上部電極(個別電極)
3 結晶配向制御層
4 圧電体層
5 下部電極(共通電極)
6 振動層
7 圧力室部材
8 圧力室
9 隔壁
10 インク吐出口(ノズル)
11 ノズル板
12 圧電素子
13 能動部
14 配線部
15 電圧印加パッド
40 インクジェット式記録装置
41 インクジェットヘッド
42 記録媒体
43 キャリッジ軸(移動手段)
44 キャリッジ(移動手段)
45 ローラ(移動手段)

Claims (7)

  1. 個別電極、圧電体層及び共通電極が順に積層されてなる圧電素子と、該圧電素子の上記共通電極側の面に設けられた振動層と、該振動層の上記圧電素子とは反対側の面に接合されかつインクを収容する圧力室と該圧力室に連通するノズルとが形成された圧力室部材とを備え、上記個別電極が、上記圧力室に対応する位置に設けられた能動部と該能動部に接続された配線部とを有し、上記圧電体層の圧電効果により上記振動層を層厚方向に変位させて上記圧力室内のインクを上記ノズルから吐出させるインクジェットヘッドであって、
    上記能動部の膜厚が上記配線部の膜厚よりも薄いことを特徴とするインクジェットヘッド。
  2. 上記個別電極は貴金属からなることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
  3. 上記能動部の膜厚は50nm以上300nm以下であることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
  4. 上記圧電体層は、チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする、(001)面に優先配向したペロブスカイト型結晶構造の圧電材料からなることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
  5. 上記個別電極と上記圧電体層との間に設けられ、該圧電体層の結晶配向性を制御する結晶配向制御層を備えたことを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
  6. 基板の一方の面上に上部電極を成膜する工程と、
    上記上部電極の上に圧電体層を成膜する工程と、
    上記圧電体層上に共通電極を成膜する工程と、
    上記共通電極上に振動層を成膜する工程と、
    上記振動層上に、インクを収容する圧力室と該圧力室に連通するノズルとが形成された圧力室部材を接合する工程と、
    上記基板をエッチング除去する工程と、
    上記上部電極をパターニングして、上記圧力室に対応する位置に設けられた能動部と該能動部に接続された配線部とを有する個別電極を形成する工程と、
    上記能動部の膜厚を上記配線部の膜厚よりも薄くする工程と、
    上記圧電体層をパターニングする工程とを備えたことを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
  7. 上記請求項1〜5のいずれか1つに記載のインクジェットヘッドと、
    上記インクジェットヘッドと記録媒体とを相対移動させる移動手段とを備えたことを特徴とするインクジェット式記録装置。
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