JP2005329559A - 積層体 - Google Patents
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Abstract
【課題】長時間高温雰囲気にさらされた後においても樹脂フィルムと電気伝導層との間の密着力の低下が少ない、すなわち耐熱密着性の高い、主として電気電子回路材料に用いる樹脂フィルムと電気伝導層との積層体を提供すること。
【解決手段】ポリイミド樹脂を含む樹脂フィルムの片面もしくは両面における表面上に、クロムを含む密着力向上層と、ニッケルまたはモリブデンを含む銅拡散バリア層と、銅または銅合金からなる導電層を形成する。樹脂フィルムと電気伝導層との剥離面において、全原子数に占める銅、鉄、アルミニウム、銀それぞれの原子数割合を0.1%以下とする。
【選択図】 図1
【解決手段】ポリイミド樹脂を含む樹脂フィルムの片面もしくは両面における表面上に、クロムを含む密着力向上層と、ニッケルまたはモリブデンを含む銅拡散バリア層と、銅または銅合金からなる導電層を形成する。樹脂フィルムと電気伝導層との剥離面において、全原子数に占める銅、鉄、アルミニウム、銀それぞれの原子数割合を0.1%以下とする。
【選択図】 図1
Description
本発明は、樹脂フィルム表面に電気伝導層を形成した積層体に関するものである。
近年、携帯電話やデジタルカメラなどの電化製品はますます高機能化かつ小型軽量化されている。そのような技術革新の一役を担っているのはフレキシブルプリント回路基板やTAB、COFなどの半導体実装技術に用いられている電気電子回路材料の高性能化である。そのような電気電子回路材料としては、絶縁支持担体としての樹脂フィルムと電気伝導層としての銅薄膜を接着剤を介して、あるいは直接接合した積層体を用いることが多い。
電化製品の信頼性を確保するためには、その内部に用いられる電気電子回路材料についても高い信頼性が必要とされている。信頼性を高めるためには、樹脂フィルムと銅薄膜との密着力が大きいことが必要である。さらに、長期的な信頼性を保証するには、耐環境加速試験後の密着力も十分大きくなければならない。耐環境加速試験の一つとして、150℃の大気中で168時間の熱処理を行った後で積層体の密着力を測定するという方法がある。ところが、このような熱処理の後では樹脂フィルムと銅薄膜との密着力が大幅に低下してしまうという問題があり、最悪の場合電気電子回路、ひいては電化製品の信頼性が確保できないという恐れがあった。つまり、電気電子回路に使用される積層体としては熱処理後においても樹脂フィルムと銅薄膜との間の密着力が低下しないこと、つまり耐熱密着性が高いことが重要である。
しかし、接着剤を用いて樹脂フィルムと銅薄膜とを貼り合わせた積層体の場合には、耐熱性の高い接着剤を得ることが難しいため、積層体の耐熱密着性は十分ではない。また貼合せ型の積層体における別の問題として、銅箔を薄くすればするほどその取り扱いが困難になることから銅箔の厚さをあまり薄くすることができないということがあげられる。銅箔が厚いと回路形成時に微細なパターン加工を施すことが難しくなることから、回路の高密度化、高集積化において要求される数十μmピッチのファインパターン回路形成において不利である。
そこで、接着剤を用いずに樹脂フィルム表面に銅層を直接形成した積層体が検討されている。樹脂フィルム表面に銅層を直接形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、無電解メッキ法などがあげられる。しかし、これらの方法を単純に適用しただけでは樹脂フィルムと銅層との密着力は一般に十分であるとはいえず、密着力を改善するための各種方法が提案されてきた。例えば、樹脂フィルムとして耐熱性の高いポリイミドフィルムを用い、ポリイミドフィルム表面に粗面化や官能基付与を目的としたプラズマ処理を施した後で金属層を形成する方法(例えば、特許文献1参照。)、ポリイミドフィルム表面をプラズマ処理してイミド環を開環させた後で金属層を形成する方法(例えば、特許文献2参照。)、ポリイミドフィルム表面をアルカリ溶液で処理した後で金属層を形成する方法(例えば、特許文献3参照。)などがある。また、これらを組み合わせた方法として、ポリイミドフィルム表面を放電処理した後アルカリ処理する方法(例えば、特許文献4参照。)や、アルカリ処理を行った後プラズマ処理する方法(例えば、特許文献5参照。)などもある。
しかし、これらのようなポリイミドフィルム表面を強く改質する方法では、熱処理前の密着力を向上させる効果は見られるものの、熱処理後の密着力についてはかえって低下させてしまうことがあった。この理由としては、表面改質の際ポリイミドの分子構造が損傷を受けることによりポリイミド自身の耐熱性が低下してしまうということなどが考えられる。
また別の密着力改善方法としては、ポリイミドフィルムと銅層との間にポリイミドとの密着性のよいクロム(Cr)を挿入する方法(例えば、特許文献6参照。)や、ニッケル・クロム合金(NiCr)を挿入する方法(例えば、特許文献7参照。)、さらにはモリブデン(Mo)、タングステン(W)、バナジウム(V)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)などの金属を挿入する方法(例えば、特許文献8参照。)などがある。これらはポリイミドへの密着性が銅よりも高い材料を挿入することで密着力を向上させようとするものであるが、材料の選択や挿入する厚さによってはパターンエッチング性が悪化したり、耐熱密着性の改善が不十分であったりした。
特開平5−251511号公報
特開平11−117060号公報
特開平7−216553号公報
特開平5−279497号公報
特開平5−136547号公報
特開平2−98994号公報
特開2002−252257号公報
特開平7−197239号公報
本発明の目的は、長時間高温雰囲気にさらされた後においても樹脂フィルムと電気伝導層との間の密着力の低下が少ない、すなわち耐熱密着性の高い、主として電気電子回路材料に用いる樹脂と電気伝導層との積層体を提供することにある。
上記目的を達成するために本発明によれば、以下に示すような積層体が提供される。す
なわち、本発明は、樹脂フィルムの片面もしくは両面における表面上に電気伝導層を形成した積層体であって、該電気伝導層は樹脂フィルムの表面に隣接して形成された密着力向上層と、該密着力向上層の上側に形成された銅拡散バリア層と、該銅拡散バリア層の上側に形成された銅または銅合金からなる導電層とを具備することを特徴とする積層体が提供される。
なわち、本発明は、樹脂フィルムの片面もしくは両面における表面上に電気伝導層を形成した積層体であって、該電気伝導層は樹脂フィルムの表面に隣接して形成された密着力向上層と、該密着力向上層の上側に形成された銅拡散バリア層と、該銅拡散バリア層の上側に形成された銅または銅合金からなる導電層とを具備することを特徴とする積層体が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記樹脂フィルムがポリイミド樹脂を含むものであり、前記密着力向上層にクロムが含有され、かつ前記銅拡散バリア層にニッケルまたはモリブデンが含有されていることを特徴とする、積層体が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記樹脂フィルムと前記電気伝導層とを剥離した際の該電気伝導層側の剥離面における全原子数に占める炭素原子数の割合が75%以上であり、かつ該剥離面における全原子数に占める銅、鉄、アルミニウムおよび銀のそれぞれの原子数割合が0.1%以下であることを特徴とする、積層体が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記樹脂フィルムと前記電気伝導層とを剥離した際の該電気伝導層側の剥離面から測定した該電気伝導層内部における深さ方向の位置をd、全原子数に占める炭素原子数の割合が65%となる深さ方向位置をd1、全原子数に占める銅原子の割合が65%となる深さ方向位置をd2としたとき、d1<dCr<(d1+d2)/2を満たすある深さ方向位置dCrにおいて全原子数に占めるクロムの原子数割合が最大値を持ち、該最大値が少なくとも3%以上であり、かつ該最大値におけるクロムの左半値半幅が0.5nm以上5nm以下であることを特徴とする、積層体が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記樹脂フィルムと前記電気伝導層とを剥離した際の該電気伝導層側の剥離面から測定した該電気伝導層内部における深さ方向の位置をd、全原子数に占める炭素原子数の割合が65%となる深さ方向位置をd1、全原子数に占める銅原子の割合が65%となる深さ方向位置をd2としたとき、(d1+d2)/2<dNi<d2を満たすある深さ方向位置dNiにおいて全原子数に占めるニッケルの原子数割合が最大値を持ち、かつ深さ方向位置dNiにおいてニッケル原子数とクロム原子数の和に対するクロム原子数の割合が25%以下であり、かつ該最大値におけるニッケルの半値全幅が4nm以上30nm以下であることを特徴とする、積層体が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記樹脂フィルムと前記電気伝導層とを剥離した際の該電気伝導層側の剥離面から測定した該電気伝導層内部における深さ方向の位置をd、全原子数に占める炭素原子数の割合が65%となる深さ方向位置をd1、全原子数に占める銅原子の割合が65%となる深さ方向位置をd2としたとき、(d1+d2)/2<dMo<d2を満たすある深さ方向位置dMoにおいて全原子数に占めるモリブデンの原子数割合が最大値を持ち、かつその最大値が50%以上であり、かつ該最大値におけるモリブデンの半値全幅が4nm以上30nm以下であることを特徴とする、積層体が提供される。
本発明における積層体は、電気絶縁性を有する支持基材として樹脂からなるフィルムを用い、その表面上に電気回路を形成するための電気伝導層が形成されている。電気伝導層は、樹脂フィルムと電気伝導層との間の密着力を高めるための密着力向上層、導電層から銅が樹脂フィルム表面へと拡散するのを防止するための銅拡散バリア層、および、銅または銅合金からなる導電層の3層からなる。このように電気伝導層を3層構造とすることにより各層の機能を分離し、それぞれの性能を最大限に高めることができるのである。
本発明において、樹脂フィルムの素材として好適に用いられる樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、液晶ポリマーなどがあげられる。これらの樹脂は単一のままでも、共重合体や混合体、積層体であってもよい。もちろん、これらの樹脂には他の添加物、例えば無機粒子や有機粒子、滑剤、帯電防止剤などが含有されていてもよい。
電気電子回路材料として用いられる積層体には、電気配線のハンダ付け工程や半導体チップのボンディング工程などにおいてかなりの熱負荷が加わる。また、積層体を電化製品の可動部分にフレキシブルプリント回路基板として用いる場合には、信頼性を確保するために十分な機械的強度が必要である。さらに、TABキャリアテープやCOF基材として用いる場合には、厳しい位置決め精度が必要とされるために寸法安定性の高いことが要求される。これらの事項を勘案し、上記の樹脂の中でも、耐熱性、機械的強度および寸法安定性の点で優れた性質を持つポリイミドがもっとも好適である。
これらの樹脂の形状はフィルム状であることが連続加工性の観点から好ましい。またフィルムの厚さとしては1μm以上、50μm以下であることが好ましい。フィルムの厚さが1μm未満の場合は、フィルムのハンドリング性の悪化や機械的強度の不足および加工時の熱による変形が懸念されるため好ましくない。またフィルムの厚さが50μmを越えると、折り曲げ性が低下したり材料コストが増加するため好ましくない。
本発明において、樹脂フィルム表面に樹脂に隣接して形成する密着力向上層には、クロムが含有されていることが好ましい。クロムは数多くの樹脂との相性が良く、強固な金属−有機物結合を形成するため好適である。特にポリイミドに対しては、クロムは非常に強い密着力を発現させるため特に好ましい。クロムは単体で用いてもよいが、クロムを1成分とする合金または化合物を用いても構わない。
また、密着力向上層の上側に形成する銅拡散バリア層には、ニッケルまたはモリブデンが含有されていることが好ましい。ニッケルおよびモリブデンは銅の拡散をブロックする能力が高く、また回路形成時のエッチング時にパターン残りを発生させにくいため、特に好ましい。
クロムは密着性改善効果の他に高い銅拡散防止性能も備えた金属であるが、クロムは通常銅のエッチングに用いられている塩化第2鉄によりエッチングできないため、過マンガン酸カリウムなどを用いた2段階エッチング等のプロセス追加が必要となる。我々は鋭意検討の結果、クロムの密着性改善効果を発現させるためには樹脂表層に極薄いクロム含有層を形成すればよく、その上に銅拡散バリア性能の高いニッケルまたはモリブデンを含有する層を形成することで、エッチングに関する問題も解決できることを見いだした。
密着力向上層および銅拡散バリア層を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、無電解めっき法などいずれの方法によるものでも構わないが、特にスパッタリング法が密着力および生産性の観点から好ましい。また、スパッタリング法により密着力向上層および銅拡散バリア層を形成する際には、密着力向上層を形成した後大気に触れさせることなく銅拡散バリア層を形成することが、密着を確保するという観点から好ましい。
本発明において、銅拡散バリア層の上に形成される導電層は、銅または銅を含む合金から形成される。銅は電気伝導率が高いため回路形成後使用時の電力損失、伝送損失、応答性等の観点から好ましい。導電層を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、電解めっき法、無電解めっき法など何れの方法によるものでもよく、またこれらの方法を複数組み合わせて形成したものでも構わない。例えば、銅拡散防止層の上にスパッタリングによって銅薄膜を形成し、それを核として電解めっきによる銅の厚膜化を行うなどという方法でもよい。
本発明においては、樹脂フィルムと電気伝導層を機械的に剥離した際の電気伝導層側の剥離面において、全原子数に占める炭素原子数の割合は75%以上であることが好ましい。75%以上であれば、電気伝導層側の剥離面にポリイミドが十分付着しており、剥離時の破壊はポリイミドの内層で発生していると考えられる。すなわちポリイミドと密着向上層との界面の密着力は非常に高いわけである。またこの剥離面において、全原子数に占める銅、鉄、アルミニウムおよび銀のそれぞれの原子数割合は0.1%以下であることが好ましい。ここに挙げた元素は装置内部の部品や原材料そのものに含有されていることがあり、密着力向上層を形成する際に混入してしまう恐れがある。これらの元素が樹脂と接触して存在した場合、高温度下における酸化触媒効果が働き樹脂の強度を劣化させる恐れがあるため、特に樹脂と密着向上層との界面にはできる限り存在しないことが好ましい。剥離面における銅、鉄、アルミニウム、銀それぞれの原子数割合を小さくするためには、密着向上層および銅拡散バリア層を形成する材料についてはこれらの含有率が0.1%以下のものを用いることが最低限必要である。そして、銅や銅合金からなる導電層を形成する際に銅が樹脂フィルムと密着向上層との界面に混入しないように装置内における成膜位置を離したり防着板を設けるなどの対策をとることが好ましい。さらに、装置内部で用いる各種支持部品やネジなどの材料からの混入も防止するために、これらの部材の材料として銅、鉄、アルミニウム、銀の含有率が少ないものを用いることも好ましい。
樹脂フィルムと電気伝導層とを機械的に剥離して剥離面を形成する方法は、JIS C6471:1995「フレキシブルプリント配線板用銅張積層板試験方法」の「8.1銅箔の引きはがし強さ」に記載の「方法B」による、銅箔を銅箔除去面に対して180°方向に引き剥がす方法によるものとする。試料は、積層体の銅をエッチングすることにより幅3mmのリボン状に加工したテストパターンとする。平らな板にこの試料の樹脂フィルム側を接着強度が十分に強い両面テープなどを用いて固定し、電気伝導層を180°折り返すようにして毎分50mm程度の速度で引きはがすようにすればよい(以下、上記方法を180剥離法という)。また、積層体の特定の部分における全原子数に占めるある原子数の割合を求めるためには、AES(オージェ電子分光分析法)を用いることができる。電気伝導層側の剥離面の最表面をAESにより分析し、全検出元素に対して銅、鉄、アルミニウムおよび銀のそれぞれの原子が占める割合を求めればよい。
AESでは、アルゴンイオンビームエッチングのエッチング手段を併用すると表面からの深さ方向分析プロファイルを得ることができる。この手法を用いて、積層体の樹脂フィルムと電気伝導層を剥離した際の電気伝導層側の剥離面を最表面として深さ方向に電気伝導層のAES分析を行ったときにおける、電気伝導層内部の深さ方向の位置をdとする。このようにして得られる電気伝導層の深さ方向分析プロファイルの例を図1に示す。図1に示すように、全原子数に占める炭素原子数の割合が65%となるような深さ方向の位置をd1、また全原子数に占める銅原子の割合が65%となるような深さ方向の位置をd2とする。
本発明においては、d1<dCr<(d1+d2)/2を満たすある深さ方向位置dCrにおいて、全原子数に占めるクロムの原子数割合が最大値を持つことが好ましい。この関係式は、銅拡散バリア層と区別可能な密着力向上層が樹脂フィルム表面に近接して存在することを示す。また、その最大値は少なくとも3%以上であることが好ましい。3%以下である場合は十分な密着力を得ることができないため、好ましくない。さらに、その最大値におけるクロムの左半値半幅が0.5nm以上5nm以下であることが好ましい。0.5nm未満の場合は密着力向上層が薄すぎるため十分な密着力が得られない。また、5nmを超える場合は回路パターン形成のためのエッチング加工時にクロムが残留してしまうため回路のショートや線間絶縁抵抗の低下を招き、好ましくない。ここで、クロムの左半値半幅とは図2に示すように、クロム原子数割合の深さ方向プロファイルにおける最大値の半分の値を取る時の剥離面側の深さ方向位置をdLとしたとき、dCr−dLで表されるものとする。
また、本発明においては、(d1+d2)/2<dNi<d2を満たすある深さ方向位置dNiにおいて、全原子数に占めるニッケルの原子数割合が最大値を持つことが好ましい。この関係式は、銅拡散バリア層が密着力向上層と区別可能であることを示し、このとき2つの層の能力をそれぞれ高めることができるため好ましい。またこのとき、深さ方向位置dNiにおいてニッケル原子数とクロム原子数の和に対するクロム原子数の割合は25%以下であることが好ましい。クロム原子数の割合が25%を超えると、パターン形成時のエッチング残りの原因となることがあるため好ましくない。さらに、その最大値におけるニッケルの半値全幅は4nm以上30nm以下であることが好ましい。ここで半値全幅とは図3に示すように、ニッケル原子数割合の深さ方向プロファイルにおける最大値の半分の値を取るときの深さ方向位置をdLおよびdRとするとき、dR−dLで表されるものとする。半値全幅はおおよその膜厚であると考えることができ、ニッケルの半値全幅が4nm未満では銅拡散バリア性能が不十分であるため熱処理後の銅の拡散により耐熱密着性の低下を招くため、好ましくない。また、ニッケルの半値全幅が30nmを超える場合はパターン形成時のエッチング残りが発生したり、銅拡散バリア層が厚すぎて膜にクラックが入りバリア性能が低下したりするため、好ましくない。
さらに、本発明においては、(d1+d2)/2<dMo<d2を満たすある深さ方向位置dMoにおいて、全原子数に占めるモリブデンの原子数割合が最大値を持つことも好ましい。またこのとき、その最大値が50%以上であり、かつ該最大値におけるモリブデンの半値全幅が4nm以上30nm以下であることが好ましい。モリブデンの半値全幅が4nm未満では銅拡散バリア性能が不十分であり、また30nmを超えるとエッチング残りの発生やクラック発生など上記ニッケルの場合と同様の問題が生じる可能性があるため、好ましくない。
本発明の好ましい形態において重要なことは、樹脂フィルムの最表面に隣接する金属元素としてCrが含まれていること、および密着力を高める機能を持つ層の上に銅の拡散を抑制する機能を持つ別の層を形成するということである。さらに、銅、鉄、アルミニウム、銀は樹脂フィルム表面にできる限り存在させないのが好ましい。本発明者らは、密着力向上層と銅拡散バリア層のそれぞれの機能を併せ持つ層として単層のニッケル−クロム合金やクロム−モリブデン合金を各種検討したが、優れた耐熱密着性とエッチング性の両方を合わせ持つ積層体を得ることはできなかった。本発明者らの知見によると、密着力向上層と銅拡散バリア層を区別せずクロムを含有する合金を用いて単一の層として両方の機能を併せ持つ層を形成した場合、層を区別したときと同じ量のクロムを用いたならフィルム最表面に隣接するクロム量は実質的に減ってしまい密着力向上効果が不十分となる。よってクロム含有合金の膜厚を十分な密着力が得られるまで増やす必要があるが、その場合クロム含有合金層のエッチング性が悪化してしまうという問題があった。そこで鋭意検討の結果、樹脂表面にクロムを含有する密着力向上層を形成し、その上に銅拡散バリア層を形成するのがよく、より好ましくは密着力向上層と銅拡散バリア層の厚さを最適に設定することが優れた耐熱密着性と良好なパターン加工性を実現するための優れた方法であるということを知り得たのである。
本発明によれば、以下に説明するとおり、長時間高温雰囲気にさらされた後においても樹脂フィルムと電気伝導層との間の密着力の低下が極めて少ない積層体を得ることができる。
以下、本発明の最良の実施形態の例を、図面を参照しながら説明する。
図4は、本発明における積層体の一実施形態の概略断面図である。図4において1は樹脂フィルムであり、2は1の樹脂フィルムの表面に形成された電気伝導層である。電気伝導層は、樹脂フィルムに隣接して形成された密着力向上層3と、密着力向上層の上に隣接して形成された銅拡散バリア層4、そして銅拡散バリア層の上に隣接して形成された導電層5からなる。
図5は、本発明における積層体の別の一実施形態の概略断面図である。図5において5は2段階で形成された導電層であり、6は導電層の下部層、7は導電層の上部層である。以下図5を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について述べる。
樹脂フィルム1としては、耐熱性、機械的強度および寸法安定性の観点からポリイミドフィルムを用いることが最も好ましい。ポリイミドの種類としては特に限定されないが、ピロメリット酸二無水物とオキシジアニリンから合成されるポリイミド(PMDA−ODA)や、ビフェニルテトラカルボン酸とパラフェニレンジアミンから合成されるポリイミド(BPDA−PDA)などが好適である。PMDA−ODA系ポリイミドとしては東レ・デュポン(株)製『カプトン』、BPDA−PDA系ポリイミドフィルムとしては宇部興産(株)製『ユーピレックス』などを使用することができる。
密着力向上層3としては、クロムをスパッタリングによって形成することが好ましいが、クロムを含有する合金または化合物によって形成しても構わない。また、銅拡散バリア層4としては、ニッケルまたはモリブデンをスパッタリングによって形成することが好ましいが、ニッケル−クロム、ニッケル−コバルトなどのニッケル合金、モリブデン−チタン、モリブデン−タングステンなどのモリブデン合金を用いることも好ましい。また、導電層の下層部6としては、銅あるいは銅合金をスパッタリングによって形成することが好ましい。
密着力向上層3を形成してから銅拡散バリア層4および導電層の下層部6を形成するまでは、積層体を大気にさらすことなく真空中でそれぞれの層を連続的に形成した方がよい。具体的には、図6に示すような装置を用いて形成すればよい。図6において、11は真空槽、12は真空ポンプ、13は冷却ロール、14は巻き出しロール、15は巻き取りロールを示す。また、16、17、18はそれぞれ密着力向上層形成材料、銅拡散バリア層形成材料、導電層形成材料からなるスパッタリングターゲットである。19はプラズマ前処理装置である。巻き出しロール14から巻き出されたフィルム表面は、まずプラズマ前処理装置19により表面処理され、引き続きスパッタリングターゲット16、17、18によりそれぞれ密着力向上層3、銅拡散バリア層4、導電層の下層部6がそれぞれ形成され、巻き取りロール15に巻き取られる。
上記のように形成された積層体に銅の電解めっきを施して導電層の上層部7を形成し、所望の積層体を得ることができる。
以下にこの発明を実施例および比較例により更に具体的に説明するが、この発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
樹脂フィルムとして東レ・デュポン(株)製『カプトン100EN』を、図6に示す装置にセットした。真空槽の圧力が5×10-4Pa以下になるまで排気した後、Arガスを1Paになるように導入した。樹脂フィルムの搬送速度は3m/minとした。純度99.9%以上のクロム、ニッケルとクロムとの比が95:5であるニクロム、純度99.99%以上の銅のスパッタリングターゲットをそれぞれ用いて、密着力向上層としてクロムを、また銅拡散バリア層としてニクロムを、さらに導電層の下層部として銅をスパッタリングにより形成した。このようにして作成した積層体にさらに銅の電解めっきを施すことにより導電層の上層部を形成した。このとき、密着力向上層、銅拡散バリア層、導電層の厚さの合計が8μmとなるように導電層の上層部の膜厚を設定した。このようにして作成した積層体の樹脂フィルムと電気伝導層とを180度剥離法で機械的に剥離した際の電気伝導層側の剥離面をAESにより深さ方向元素分析したときの、全原子数に占める炭素原子数の割合が65%となる深さ方向位置d1、全原子数に占める銅原子の割合が65%となる深さ方向位置d2、(d2−d1)/2、全原子数に占めるクロムの原子数割合が最大値を取るときの深さ方向位置dCr、このときの最大値をmCr、クロムの左半値半幅をHWCr、全原子数に占めるニッケルの原子数割合が最大値を取るときの深さ方向位置dNi、dNiにおけるニッケル原子数とクロム原子数の和に対するクロム原子数の割合をrCr、Niの半値全幅をFWNiとし、それぞれの値が表1に示すものとなるように、スパッタリング条件を設定した。
樹脂フィルムとして東レ・デュポン(株)製『カプトン100EN』を、図6に示す装置にセットした。真空槽の圧力が5×10-4Pa以下になるまで排気した後、Arガスを1Paになるように導入した。樹脂フィルムの搬送速度は3m/minとした。純度99.9%以上のクロム、ニッケルとクロムとの比が95:5であるニクロム、純度99.99%以上の銅のスパッタリングターゲットをそれぞれ用いて、密着力向上層としてクロムを、また銅拡散バリア層としてニクロムを、さらに導電層の下層部として銅をスパッタリングにより形成した。このようにして作成した積層体にさらに銅の電解めっきを施すことにより導電層の上層部を形成した。このとき、密着力向上層、銅拡散バリア層、導電層の厚さの合計が8μmとなるように導電層の上層部の膜厚を設定した。このようにして作成した積層体の樹脂フィルムと電気伝導層とを180度剥離法で機械的に剥離した際の電気伝導層側の剥離面をAESにより深さ方向元素分析したときの、全原子数に占める炭素原子数の割合が65%となる深さ方向位置d1、全原子数に占める銅原子の割合が65%となる深さ方向位置d2、(d2−d1)/2、全原子数に占めるクロムの原子数割合が最大値を取るときの深さ方向位置dCr、このときの最大値をmCr、クロムの左半値半幅をHWCr、全原子数に占めるニッケルの原子数割合が最大値を取るときの深さ方向位置dNi、dNiにおけるニッケル原子数とクロム原子数の和に対するクロム原子数の割合をrCr、Niの半値全幅をFWNiとし、それぞれの値が表1に示すものとなるように、スパッタリング条件を設定した。
このようにして形成した積層体の電気伝導層表面に幅2mmのマスキングテープを貼り、塩化第2鉄によるエッチングを行い、電気伝導層を幅2mmの短冊状にパターン加工した。これを用いてJIS−C6471(1996)に記載の銅はくの引きはがし強さ試験方法のうち90°方向に引き剥がす方法(以下、この方法を90度剥離法という。)に従い、積層体を引きはがし強さ測定用しゅう動型支持金具に固定して熱処理前の電気伝導層引き剥がし強さを測定したところ、8.4N/cmであった。またこの積層体を150℃の大気中で168時間熱処理した後、積層体の電気伝導層引き剥がし強さを測定したところ、6.3N/cmであり、耐熱密着性は良好であった。
また、この積層体の樹脂フィルム側を180度剥離法で引き剥がしたときの剥離面のうち電気伝導層側表面をAESにより分析したところ、熱処理前後に関わらず剥離面における銅、鉄、アルミニウム、銀それぞれの原子数割合は0.1%以下であった。
[実施例2]
銅拡散バリア層として20nmのモリブデンをスパッタリングにより形成したこと以外は、実施例1と同様にして積層体を形成した。このようにして作成した積層体の樹脂フィルムと電気伝導層とを180度剥離法で機械的に剥離した際の電気伝導層側の剥離面をAESにより深さ方向元素分析したときの、全原子数に占めるモリブデンの原子数割合が最大値を取るときの深さ方向位置dMo、その最大値をmMo、モリブデンの半値全幅をFWMoとし、核パラメーターの値が表1に示すものとなるように、スパッタリング条件を設定した。
この積層体の熱処理前の90度剥離法による金属層引き剥がし強さは8.1N/cmであった。また熱処理後の金属層引き剥がし強さは5.9N/cmであり、耐熱密着性は良好であった。また、この積層体の金属層を180度剥離法で引き剥がしたときの金属層側をAESにより分析したところ、熱処理前後に関わらず樹脂フィルムと第1の層との界面における銅、鉄、アルミニウム、銀それぞれの原子数割合は0.1%以下であった。
[実施例3]
密着力向上層としてニッケルとクロムとの比が40:60であるニクロムを7nmスパッタリングにより形成し、銅拡散バリア層としてニッケルとクロムとの比が95:5であるニクロムを25nm形成したこと以外は、実施例1と同様にして積層体を形成した。このようにして作成した積層体の樹脂フィルムと電気伝導層とを180度剥離法で機械的に剥離した際の電気伝導層側の剥離面をAESにより深さ方向元素分析したときの、全原子数に占める炭素原子数の割合が65%となる深さ方向位置d1、全原子数に占める銅原子の割合が65%となる深さ方向位置d2、全原子数に占めるクロムの原子数割合が最大値を取るときの深さ方向位置dCr、その最大値mCr、全原子数に占めるニッケルの原子数割合が最大値を取るときの深さ方向位置dNi、dNiにおけるニッケル原子数とクロム原子数の和に対するクロム原子数の割合rCrが表1に示す値となるように、スパッタリング条件を設定した。この積層体の熱処理前の90度剥離法による金属層引き剥がし強さは7.7N/cmであった。また熱処理後の金属層引き剥がし強さは6.1N/cmであり、耐熱密着性は良好であった。また、この積層体の金属層を180度剥離法で引き剥がしたときの金属層側をAESにより分析したところ、熱処理前後に関わらず樹脂フィルムと第1の層との界面における銅、鉄、アルミニウム、銀それぞれの原子数割合は0.1%以下であった。
[実施例4]
銅拡散バリア層としてモリブデンとタングステンとの比が50:50であるモリブデン−タングステン合金を15nmスパッタリングにより形成したこと以外は、実施例1と同様にして積層体を形成した。このようにして作成した積層体の樹脂フィルムと電気伝導層とを180度剥離法で機械的に剥離した際の電気伝導層側の剥離面をAESにより深さ方向元素分析したときの、全原子数に占める炭素原子数の割合が65%となる深さ方向位置d1、全原子数に占める銅原子の割合が65%となる深さ方向位置d2、全原子数に占めるクロムの原子数割合が最大値を取るときの深さ方向位置dCr、その最大値mCr、全原子数に占めるモリブデンの原子数割合が最大値を取るときの深さ方向位置dMo、その最大値をmMoは表1に示す値となるように、スパッタリング条件を設定した。この積層体の熱処理前の90度剥離法による金属層引き剥がし強さは7.9N/cmであった。また、熱処理後の金属層引き剥がし強さは5.7N/cmであり、耐熱密着性は良好であった。また、この積層体の金属層を180度剥離法で引き剥がしたときの金属層側をAESにより分析したところ、熱処理前後に関わらず樹脂フィルムと第1の層との界面における銅、鉄、アルミニウム、銀それぞれの原子数割合は0.1%以下であった。
[実施例5]
密着力向上層としてクロムとモリブデンとの比が50:50であるクロム−モリブデン合金を5nm、銅拡散バリア層としてモリブデンを20nmスパッタリングにより形成したこと以外は、実施例1と同様にして積層体を形成した。このようにして作成した積層体の樹脂フィルムと電気伝導層とを180度剥離法で機械的に剥離した際の電気伝導層側の剥離面をAESにより深さ方向元素分析したときの、全原子数に占める炭素原子数の割合が65%となる深さ方向位置d1、全原子数に占める銅原子の割合が65%となる深さ方向位置d2、全原子数に占めるクロムの原子数割合が最大値を取るときの深さ方向位置dCr、その最大値mCr、全原子数に占めるモリブデンの原子数割合が最大値を取るときの深さ方向位置dMo、その最大値をmMoは表1に示す値となるように、スパッタリング条件を設定した。この積層体の熱処理前の90度剥離法による金属層引き剥がし強さは8.0N/cmであった。また、熱処理後の金属層引き剥がし強さは5.8N/cmであり、耐熱密着性は良好であった。また、この積層体の金属層を180度剥離法で引き剥がしたときの金属層側をAESにより分析したところ、熱処理前後に関わらず樹脂フィルムと第1の層との界面における銅、鉄、アルミニウム、銀それぞれの原子数割合は0.1%以下であった。
[比較例1]
密着力向上層と銅拡散バリア層を区別せずにニッケルとクロムの比率が80:20であるニクロムを20nmスパッタリングにより形成したこと以外は、実施例1と同様にして積層体を形成した。この積層体の熱処理前の90度剥離法による金属層引き剥がし強さは5.9N/cmであったが、熱処理後の金属層引き剥がし強さは4.0N/cmであり、優れた耐熱性は示されなかった。
[比較例2]
密着力向上層と銅拡散バリア層を区別せずにモリブデンを20nmスパッタリングにより形成したこと以外は、実施例1と同様にして積層体を形成した。この積層体の熱処理前の90度剥離法による金属層引き剥がし強さは4.1N/cmであった。また、熱処理後の金属層引き剥がし強さは3.6N/cmであり、優れた耐熱密着性は示されなかった。また熱処理後の樹脂フィルムと第1の層との界面におけるCuの原子数割合は0.9%であり、Cuの拡散が観測された。
[比較例3]
密着力向上層と銅拡散バリア層を区別せずにクロムを10nmスパッタリングにより形成したこと以外は、実施例1と同様にして積層体を形成した。この積層体の熱処理前の90度剥離法による金属層引き剥がし強さは7.9N/cmであり、また熱処理後の金属層引き剥がし強さは5.5N/cmであった。しかし、パターンエッチングにおいてエッチング残りが発生し、実用に耐えなかった。
[比較例4]
密着力向上層と銅拡散バリア層を区別せずにニッケル、モリブデン、鉄の比率が65:30:5である合金を30nmスパッタリングにより形成したこと以外は、実施例1と同様にして積層体を形成した。この積層体の熱処理前の90度剥離法による金属層引き剥がし強さは5.5N/cmであった。また熱処理後の金属層引き剥がし強さは2.5N/cmであっり、優れた耐熱性は示されなかった。
[比較例5]
密着力向上層と銅拡散バリア層を区別せずにニッケル、クロム、鉄の比率が76:16:8である合金を25nmスパッタリングにより形成したこと以外は、実施例1と同様にして積層体を形成した。この積層体の熱処理前の金属層引き剥がし強さは5.9N/cmであった。また熱処理後の金属層引き剥がし強さは2.1N/cmであっり、優れた耐熱性は示されなかった。
[実施例2]
銅拡散バリア層として20nmのモリブデンをスパッタリングにより形成したこと以外は、実施例1と同様にして積層体を形成した。このようにして作成した積層体の樹脂フィルムと電気伝導層とを180度剥離法で機械的に剥離した際の電気伝導層側の剥離面をAESにより深さ方向元素分析したときの、全原子数に占めるモリブデンの原子数割合が最大値を取るときの深さ方向位置dMo、その最大値をmMo、モリブデンの半値全幅をFWMoとし、核パラメーターの値が表1に示すものとなるように、スパッタリング条件を設定した。
この積層体の熱処理前の90度剥離法による金属層引き剥がし強さは8.1N/cmであった。また熱処理後の金属層引き剥がし強さは5.9N/cmであり、耐熱密着性は良好であった。また、この積層体の金属層を180度剥離法で引き剥がしたときの金属層側をAESにより分析したところ、熱処理前後に関わらず樹脂フィルムと第1の層との界面における銅、鉄、アルミニウム、銀それぞれの原子数割合は0.1%以下であった。
[実施例3]
密着力向上層としてニッケルとクロムとの比が40:60であるニクロムを7nmスパッタリングにより形成し、銅拡散バリア層としてニッケルとクロムとの比が95:5であるニクロムを25nm形成したこと以外は、実施例1と同様にして積層体を形成した。このようにして作成した積層体の樹脂フィルムと電気伝導層とを180度剥離法で機械的に剥離した際の電気伝導層側の剥離面をAESにより深さ方向元素分析したときの、全原子数に占める炭素原子数の割合が65%となる深さ方向位置d1、全原子数に占める銅原子の割合が65%となる深さ方向位置d2、全原子数に占めるクロムの原子数割合が最大値を取るときの深さ方向位置dCr、その最大値mCr、全原子数に占めるニッケルの原子数割合が最大値を取るときの深さ方向位置dNi、dNiにおけるニッケル原子数とクロム原子数の和に対するクロム原子数の割合rCrが表1に示す値となるように、スパッタリング条件を設定した。この積層体の熱処理前の90度剥離法による金属層引き剥がし強さは7.7N/cmであった。また熱処理後の金属層引き剥がし強さは6.1N/cmであり、耐熱密着性は良好であった。また、この積層体の金属層を180度剥離法で引き剥がしたときの金属層側をAESにより分析したところ、熱処理前後に関わらず樹脂フィルムと第1の層との界面における銅、鉄、アルミニウム、銀それぞれの原子数割合は0.1%以下であった。
[実施例4]
銅拡散バリア層としてモリブデンとタングステンとの比が50:50であるモリブデン−タングステン合金を15nmスパッタリングにより形成したこと以外は、実施例1と同様にして積層体を形成した。このようにして作成した積層体の樹脂フィルムと電気伝導層とを180度剥離法で機械的に剥離した際の電気伝導層側の剥離面をAESにより深さ方向元素分析したときの、全原子数に占める炭素原子数の割合が65%となる深さ方向位置d1、全原子数に占める銅原子の割合が65%となる深さ方向位置d2、全原子数に占めるクロムの原子数割合が最大値を取るときの深さ方向位置dCr、その最大値mCr、全原子数に占めるモリブデンの原子数割合が最大値を取るときの深さ方向位置dMo、その最大値をmMoは表1に示す値となるように、スパッタリング条件を設定した。この積層体の熱処理前の90度剥離法による金属層引き剥がし強さは7.9N/cmであった。また、熱処理後の金属層引き剥がし強さは5.7N/cmであり、耐熱密着性は良好であった。また、この積層体の金属層を180度剥離法で引き剥がしたときの金属層側をAESにより分析したところ、熱処理前後に関わらず樹脂フィルムと第1の層との界面における銅、鉄、アルミニウム、銀それぞれの原子数割合は0.1%以下であった。
[実施例5]
密着力向上層としてクロムとモリブデンとの比が50:50であるクロム−モリブデン合金を5nm、銅拡散バリア層としてモリブデンを20nmスパッタリングにより形成したこと以外は、実施例1と同様にして積層体を形成した。このようにして作成した積層体の樹脂フィルムと電気伝導層とを180度剥離法で機械的に剥離した際の電気伝導層側の剥離面をAESにより深さ方向元素分析したときの、全原子数に占める炭素原子数の割合が65%となる深さ方向位置d1、全原子数に占める銅原子の割合が65%となる深さ方向位置d2、全原子数に占めるクロムの原子数割合が最大値を取るときの深さ方向位置dCr、その最大値mCr、全原子数に占めるモリブデンの原子数割合が最大値を取るときの深さ方向位置dMo、その最大値をmMoは表1に示す値となるように、スパッタリング条件を設定した。この積層体の熱処理前の90度剥離法による金属層引き剥がし強さは8.0N/cmであった。また、熱処理後の金属層引き剥がし強さは5.8N/cmであり、耐熱密着性は良好であった。また、この積層体の金属層を180度剥離法で引き剥がしたときの金属層側をAESにより分析したところ、熱処理前後に関わらず樹脂フィルムと第1の層との界面における銅、鉄、アルミニウム、銀それぞれの原子数割合は0.1%以下であった。
[比較例1]
密着力向上層と銅拡散バリア層を区別せずにニッケルとクロムの比率が80:20であるニクロムを20nmスパッタリングにより形成したこと以外は、実施例1と同様にして積層体を形成した。この積層体の熱処理前の90度剥離法による金属層引き剥がし強さは5.9N/cmであったが、熱処理後の金属層引き剥がし強さは4.0N/cmであり、優れた耐熱性は示されなかった。
[比較例2]
密着力向上層と銅拡散バリア層を区別せずにモリブデンを20nmスパッタリングにより形成したこと以外は、実施例1と同様にして積層体を形成した。この積層体の熱処理前の90度剥離法による金属層引き剥がし強さは4.1N/cmであった。また、熱処理後の金属層引き剥がし強さは3.6N/cmであり、優れた耐熱密着性は示されなかった。また熱処理後の樹脂フィルムと第1の層との界面におけるCuの原子数割合は0.9%であり、Cuの拡散が観測された。
[比較例3]
密着力向上層と銅拡散バリア層を区別せずにクロムを10nmスパッタリングにより形成したこと以外は、実施例1と同様にして積層体を形成した。この積層体の熱処理前の90度剥離法による金属層引き剥がし強さは7.9N/cmであり、また熱処理後の金属層引き剥がし強さは5.5N/cmであった。しかし、パターンエッチングにおいてエッチング残りが発生し、実用に耐えなかった。
[比較例4]
密着力向上層と銅拡散バリア層を区別せずにニッケル、モリブデン、鉄の比率が65:30:5である合金を30nmスパッタリングにより形成したこと以外は、実施例1と同様にして積層体を形成した。この積層体の熱処理前の90度剥離法による金属層引き剥がし強さは5.5N/cmであった。また熱処理後の金属層引き剥がし強さは2.5N/cmであっり、優れた耐熱性は示されなかった。
[比較例5]
密着力向上層と銅拡散バリア層を区別せずにニッケル、クロム、鉄の比率が76:16:8である合金を25nmスパッタリングにより形成したこと以外は、実施例1と同様にして積層体を形成した。この積層体の熱処理前の金属層引き剥がし強さは5.9N/cmであった。また熱処理後の金属層引き剥がし強さは2.1N/cmであっり、優れた耐熱性は示されなかった。
本発明は、フレキシブルプリント回路基板やTAB、COFなどの半導体実装技術に限らず、電磁波シールド材料やその他先端電気電子材料にも応用することができるが、その応用範囲が、これらに限られるものではない。
1 樹脂フィルム
2 電気伝導層
3 密着力向上層
4 銅拡散バリア層
5 導電層
6 導電層の上層部
7 導電層の下層部
11 真空槽
12 真空ポンプ
13 冷却ロール
14 巻き出しロール
15 巻き取りロール
16、17、18 スパッタリングターゲット
19 プラズマ前処理装置
2 電気伝導層
3 密着力向上層
4 銅拡散バリア層
5 導電層
6 導電層の上層部
7 導電層の下層部
11 真空槽
12 真空ポンプ
13 冷却ロール
14 巻き出しロール
15 巻き取りロール
16、17、18 スパッタリングターゲット
19 プラズマ前処理装置
Claims (6)
- 樹脂フィルムの片面もしくは両面における表面上に電気伝導層を形成した積層体であって、該電気伝導層は樹脂フィルムの表面に隣接して形成された密着力向上層と、該密着力向上層の上側に形成された銅拡散バリア層と、該銅拡散バリア層の上側に形成された銅または銅合金からなる導電層とを具備することを特徴とする積層体。
- 前記樹脂フィルムがポリイミド樹脂を含むものであり、前記密着力向上層にクロムが含有され、かつ前記銅拡散バリア層にニッケルまたはモリブデンが含有されていることを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
- 前記樹脂フィルムと前記電気伝導層とを剥離した際の該電気伝導層側の剥離面における全原子数に占める炭素原子数の割合が75%以上であり、かつ該剥離面における全原子数に占める銅、鉄、アルミニウムおよび銀のそれぞれの原子数割合が0.1%以下であることを特徴とする、請求項2に記載の積層体。
- 前記樹脂フィルムと前記電気伝導層とを剥離した際の該電気伝導層側の剥離面から測定した該電気伝導層内部における深さ方向の位置をd、全原子数に占める炭素原子数の割合が65%となる深さ方向位置をd1、全原子数に占める銅原子の割合が65%となる深さ方向位置をd2としたとき、d1<dCr<(d1+d2)/2を満たすある深さ方向位置dCrにおいて全原子数に占めるクロムの原子数割合が最大値を持ち、該最大値が少なくとも3%以上であり、かつ該最大値におけるクロムの左半値半幅が0.5nm以上5nm以下であることを特徴とする、請求項2または3に記載の積層体。
- 前記樹脂フィルムと前記電気伝導層とを剥離した際の該電気伝導層側の剥離面から測定した該電気伝導層内部における深さ方向の位置をd、全原子数に占める炭素原子数の割合が65%となる深さ方向位置をd1、全原子数に占める銅原子の割合が65%となる深さ方向位置をd2としたとき、(d1+d2)/2<dNi<d2を満たすある深さ方向位置dNiにおいて全原子数に占めるニッケルの原子数割合が最大値を持ち、かつ深さ方向位置dNiにおいてニッケル原子数とクロム原子数の和に対するクロム原子数の割合が25%以下であり、かつ該最大値におけるニッケルの半値全幅が4nm以上30nm以下であることを特徴とする、請求項2〜4のいずれかに記載の積層体。
- 前記樹脂フィルムと前記電気伝導層とを剥離した際の該電気伝導層側の剥離面から測定した該電気伝導層内部における深さ方向の位置をd、全原子数に占める炭素原子数の割合が65%となる深さ方向位置をd1、全原子数に占める銅原子の割合が65%となる深さ方向位置をd2としたとき、(d1+d2)/2<dMo<d2を満たすある深さ方向位置dMoにおいて全原子数に占めるモリブデンの原子数割合が最大値を持ち、かつその最大値が50%以上であり、かつ該最大値におけるモリブデンの半値全幅が4nm以上30nm以下であることを特徴とする、請求項2〜4のいずれかに記載の積層体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2004147749A JP2005329559A (ja) | 2004-05-18 | 2004-05-18 | 積層体 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2004147749A JP2005329559A (ja) | 2004-05-18 | 2004-05-18 | 積層体 |
Publications (1)
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2012048460A1 (zh) * | 2010-10-13 | 2012-04-19 | 大连理工大学 | 低电阻率高热稳定性的Cu-Ni-Mo合金薄膜及其制备工艺 |
WO2018042979A1 (ja) * | 2016-09-05 | 2018-03-08 | 富士フイルム株式会社 | 導電性フィルムの製造方法、導電性フィルム、タッチパネルセンサー、及び、タッチパネル |
JP2021182616A (ja) * | 2020-05-15 | 2021-11-25 | プロマティック株式会社 | 積層体の製造方法 |
-
2004
- 2004-05-18 JP JP2004147749A patent/JP2005329559A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2012048460A1 (zh) * | 2010-10-13 | 2012-04-19 | 大连理工大学 | 低电阻率高热稳定性的Cu-Ni-Mo合金薄膜及其制备工艺 |
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