JP2005328708A - Nat2*5の変異の検出法ならびにそのための核酸プローブおよびキット - Google Patents

Nat2*5の変異の検出法ならびにそのための核酸プローブおよびキット Download PDF

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Abstract

【課題】 N−アセチルトランスフェラーゼ2遺伝子のcDNAの341位の変異(T341C変異)を検出する方法を提供する。
【解決手段】 T341C変異を含む領域をPCRで増幅し、末端が蛍光色素で標識され、ハイブリダイゼーションしたときに蛍光色素の蛍光が減少する核酸プローブであって、特定の塩基配列からなる前記核酸プローブを用いて、蛍光色素の蛍光を測定することにより融解曲線分析を行い、融解曲線分析の結果に基づいて変異を検出する。
【選択図】 図4

Description

本発明は、N−アセチルトランスフェラーゼ2(NAT2)の遺伝子の変異の検出法およびそのためのキットに関する。
NAT2は、抗結核薬であるイソニアジドを代謝する酵素である。NAT2の遺伝子のcDNAの341位のTがCに置換する変異(T341C変異)が存在すると、NAT2の114番目のIleがThrに変異し、タンパク質の構造が異常になる。従って、この変異アレルがホモ又は他の酵素不活性化変異アレルとヘテロで存在すると、薬剤の代謝効率が減少し、副作用等のリスクが上昇する(非特許文献2)。T341C変異を有する遺伝子はNAT2*5アレルと呼ばれている。
T341C変異が存在するとその部分の制限酵素の認識部位が消失するため、PCRで変異部分を含むように増幅を行い、制限酵素で切断し、その後電気泳動で切断されたかどうかを検出するという方法(PCR-RFLP)で検出を行うことが出来る。
PCRは数分子の鋳型から数10億倍もの分子を増幅するため、増幅産物がほんの少し混入した場合でも偽陽性、偽陰性の原因になり得る。PCR-RFLPはPCR反応後に増幅産物を取り出して制限酵素処理を行うという必要があるため、増幅産物が次の反応系に混入する恐れがある。よって、偽陽性、偽陰性の結果が得られてしまうことがある。さらに、PCR終了後、制限酵素で処理を行い、その後電気泳動を行うため、検出に必要な時間も非常に長くかかってしまう。また、操作が複雑なため、自動化が困難である。
T341C変異の検出方法として、また、NAT2遺伝子の341番目の塩基に相補的な塩基を3'末端に持つプライマーを用いてPCRを行い、その後増幅されたかどうかを検出するという方法(ASP-PCR)が知られている(特許文献2)。
この方法は増幅反応を、TとCそれぞれで1反応ずつ行わなければならないため、試薬が倍量必要である。また、用いる鋳型量が異なると反応条件が異なってくるなど反応条件の設定が困難で、結果の信頼性が低い。
一方、一般に、変異を含む領域をPCRで増幅した後、蛍光色素で標識された核酸プローブを用いて融解曲線分析を行い、融解曲線分析の結果に基づいて変異を解析する方法が知られている(非特許文献1、特許文献1)。
クリニカルケミストリー(Clinical Chemistry)、2000年、第46巻、第5号、p.631−635 ミューテーション・リサーチ(Mutation Research)、1997年、第376巻、p.61−70 特開2002−119291号公報 特開2001−17185号公報
本発明の課題は、T341C変異を検出するのに有効な消光プローブを特定し、T341C変異を
検出する方法およびそのためのキットを提供することを課題とする。
上述のプローブを用いる方法に関する文献においては、プローブの設計に関し、末端部が蛍光色素により標識された消光プローブが標的核酸にハイブリダイゼーションしたとき、末端部分においてプローブ−核酸ハイブリッドの複数塩基対が少なくとも一つのGとCのペアを形成する、または、その末端から1〜3塩基離れて標的核酸の塩基配列にGが存在するように設計するという教示があるのみである(特許文献1段落番号0048)。本発明者らは、T341C変異に関し、上記条件を満たす消光プローブを設計し、検出を試みたが、容易に検出を可能とする消光プローブは得られなかった。
本発明者は、T341C変異を含む特定の領域に基づいて消光プローブを設計することにより、消光プローブを用いる融解曲線分析によりT341C変異を検出できることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、以下のものを提供する。
(1)末端が蛍光色素で標識され、ハイブリダイゼーションしたときに蛍光色素の蛍光が減少する核酸プローブであって、下記(a)を満たす前記核酸プローブ。
(a)配列番号5に示す塩基配列を有し、3’末端が蛍光色素で標識されている。
(2)一塩基多型の部位を有する核酸について、蛍光色素で標識された核酸プローブを用いて、蛍光色素の蛍光を測定することにより融解曲線分析を行い、融解曲線分析の結果に基づいて変異を検出する方法であって、一塩基多型は、NAT2遺伝子のcDNAにおける341位の変異であり、核酸プローブは、(1)の核酸プローブである前記方法。
(3)試料に含まれる核酸における一塩基多型の部位を含む領域を増幅して一塩基多型を有する核酸を得ることを含む(2)の方法。
(4)増幅をDNAポリメラーゼを用いる方法により行う(3)の方法。
(5)増幅を核酸プローブの存在下で行う(4)の方法。
(6)末端が蛍光色素で標識され、ハイブリダイゼーションしたときに蛍光色素の蛍光が減少する核酸プローブであって、下記(a)を満たす前記核酸プローブを含む、(2)の方法のためのキット。
(a)配列番号5に示す塩基配列を有し、3’末端が蛍光色素で標識されている。
(7)NAT2遺伝子のcDNAにおける341位の変異を含む領域を、DNAポリメラーゼを用いる方法で増幅するためのプライマーをさらに含む(6)のキット。
本発明によれば、T341C変異を検出するのに有効な消光プローブが提供され、さらに、それを用いるT341C変異を検出する方法およびそのためのキットが提供される。NAT2*5アレルはT341C変異を含むので、本発明の消光プローブならびに方法およびキットは、NAT2*5アレルの検出に使用できる。
Tm解析は数十秒で完了するため、検出に必要な時間が大幅に短縮出来る。プローブの存在下での核酸の増幅とTm解析を組み合わせる本発明の好ましい態様によれば、核酸の増幅後にプローブのTmを解析するだけなので、反応終了後増幅産物を取り扱う必要がない。よって、増幅産物による汚染の心配がない。また、さらに、増幅に必要な機器と同じ機器で
検出することが可能なので、容器を移動する必要すらない。よって、自動化も容易である。
<1>本発明プローブおよび本発明検出方法
本発明プローブは、末端が蛍光色素で標識され、ハイブリダイゼーションしたときに蛍光色素の蛍光が減少する核酸プローブであって、下記(a)を満たすことを特徴とする。
(a)配列番号5に示す塩基配列を有し、3’末端が蛍光色素で標識されている。
本明細書において、核酸プローブが塩基配列を有するとは、その塩基配列からなることを意味する。
本発明プローブは、配列番号1に示す塩基配列(T341C変異における野生型(正常型)の塩基を有する配列)において上記(a)に特定された条件を満たす他は、特許文献1に記載された消光プローブと同様でよい。蛍光色素としては、特許文献1に記載されたものが使用できるが、具体例としては、FAM(商標)、TAMRA(商標)、BODIPY(商標) FL等が挙げられる。蛍光色素のオリゴヌクレオチドへの結合方法は、通常の方法、例えば特許文献1に記載の方法に従って行うことができる。
本発明検出方法は、一塩基多型の部位を有する核酸について、蛍光色素で標識された核酸プローブを用いて、蛍光色素の蛍光を測定することにより融解曲線分析を行い、融解曲線分析の結果に基づいて変異を検出する方法であって、一塩基多型は、T341C変異であり、核酸プローブは本発明プローブであることを特徴とする。
本発明検出方法は、T341C変異を含む領域を増幅すること、および、本発明プローブを用いることの他は、通常の核酸増幅および融解曲線分析(Tm解析)の方法に従って行うことができる。
核酸増幅の方法としては、PCRポリメラーゼを用いる方法が好ましく、その例としては、PCR、ICAN、LAMP等が挙げられる。PCRポリメラーゼを用いる方法により増幅する場合は、本発明プローブの存在下で増幅を行うことが好ましい。用いるプローブに応じて、増幅の反応条件等を調整することは当業者であれば容易である。これにより、核酸の増幅後にプローブのTmを解析するだけなので、反応終了後増幅産物を取り扱う必要がない。よって、増幅産物による汚染の心配がない。また、増幅に必要な機器と同じ機器で検出することが可能なので、容器を移動する必要すらない。よって、自動化も容易である。
以下、PCRを用いる場合を例として、さらに説明する。PCRに用いるプライマー対は、本発明プローブがハイブリダイゼーションできる領域が増幅されるようにする他は、通常のPCRにおけるプライマー対の設定方法と同様にして設定することができる。プライマーの長さおよびTmは、通常には、12mer〜40merで40〜70℃、好ましくは16mer〜30merで55〜60℃である。プライマー対の各プライマーの長さは同一でなくてもよいが、両プライマーのTmはほぼ同一(通常には、相違が2℃以内)であることが好ましい。なお、Tm値は最近接塩基対(Nearest Neighbor)法により算出した値である。プライマー対の例としては、配列番号3および4に示す塩基配列を有するプライマーからなるものが挙げられる。
PCRは、本発明で使用される本発明プローブの存在下で行うことが好ましい。これにより、増幅反応終了後に増幅産物を取り扱う操作を行うことなくTm解析を行うことができる。用いるプローブに応じて、プライマーのTmやPCRの反応条件を調整することは当業者であれば容易である。
代表的なPCR反応液の組成を挙げれば、以下の通りである。
Figure 2005328708
また、代表的な温度サイクルを挙げれば、以下の通りであり、この温度サイクルを通常25〜40回繰り返す。
(1) 変性、90〜98℃、1〜60秒
(2) アニーリング、60〜70℃、10〜60秒
(3) 伸長、60〜75℃、10〜180秒
アニーリングおよび伸長を一ステップで行う場合には、60〜70℃、10〜180秒の条件が挙げられる。
Tm解析は、本発明プローブの蛍光色素の蛍光を測定する他は通常の方法に従って行うことができる。蛍光の測定は、蛍光色素に応じた波長の励起光を用い発光波長の光を測定することに行うことができる。Tm解析における昇温速度は、通常には、0.1〜1℃/秒である。Tm解析を行うときの反応液の組成は、プローブとその塩基配列に相補的な配列を有する核酸とのハイブリダイゼーションが可能であれば特に制限されないが、通常には、一価の陽イオン濃度が1.5〜5 mM、pHが7〜9である。PCR等のDNAポリメラーゼを用いる増幅方法の反応液は、通常、この条件を満たすので、増幅後の反応液をそのままTm解析に用いることができる。
Tm解析の結果に基づくT341C変異の検出は通常の方法に従って行うことができる。本発明における検出とは、変異の有無の検出の他、変異型DNAの定量、正常型DNAと変異型DNAの割合の測定も包含する。
<2>本発明キット
本発明キットは、本発明の検出方法に用いるためのキットである。このキットは、末端が蛍光色素で標識され、ハイブリダイゼーションしたときに蛍光色素の蛍光が減少する核酸プローブ(消光プローブ)であって、上記(a)を満たす核酸プローブを含むことを特徴とする。
消光プローブについては、本発明プローブに関し、上記に説明した通りである。
本発明検出キットは、消光プローブの他に、本発明の検出方法における核酸増幅を行うのに必要とされる試薬類、特にDNAポリメラーゼを用いる増幅のためのプライマーをさらに含んでいてもよい。
本発明検出キットにおいて消光プローブ、プライマーおよびその他の試薬類は、別個に収容されていてもよいし、それらの一部が混合物とされていてもよい。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。
NAT2遺伝子のcDNAの341位のT→C変異(T341C変異)の部位を含む塩基配列(配列番号1(野生型)又は配列番号2(変異型)、塩基番号302がNAT2遺伝子のcDNAの341位に相当)に基づき、T341C変異を含む部分を増幅できるように表2に示すプライマーを設計した。表2中、位置は、配列番号1または2における塩基番号を示す。
Figure 2005328708
次に、表3に示すプローブを設計した。表3中、位置は、配列番号1または2に示す塩基配列における塩基番号を示す。また、塩基配列中の大文字は、T341C変異の部位を示し、3'末端のPは、リン酸化されていることを示す。BODIPY FL及びTAMRAによる標識は、常法に従って行った。
Figure 2005328708
精製ヒトゲノム(GFX Genomic Blood DNA Purification Kitダイレクト法にて全血から抽出)をサンプルとして、Smart Cycler System(Cephied)を用い、以下の条件でPCRおよびTm解析を行った。Tm解析における励起波長および検出波長は、それぞれ450〜495 nmおよび505〜537 nm(BODIPY FL)、または、それぞれ527〜555 nmおよび565〜605 nm(TAMRA)であった。
Figure 2005328708
Figure 2005328708
各プローブを用いてPCRおよびTm解析を行った結果、プローブ3FL-mt-R9-16を用いたとき、Tm解析で解析の可能な蛍光強度の変化が認められた。なお、各プローブのT341C変異を含む塩基配列に対する配置を図1に示す。また、Tm解析で解析の可能な蛍光強度の変化が認められなかった各プローブのT341C変異を含む塩基配列に対する配置を図2に示す。図1および2中、野生型配列および変異型配列は、それぞれ配列番号1および2の塩基配列の塩基番号282〜321の塩基配列である。また、図中、Fは蛍光色素を示す。
サンプルとして、変異型配列および正常型配列を有するDNA(それぞれ、mt/mtおよびwt/wt)ならびに変異型配列および正常型配列の両方を有するDNA(wt/mt)を用い、プローブ3FL-mt-R9-16を用いてタイピングを行った。wt/mtの結果を図3に示す。また、DNAの量を変えて(10〜1000コピー)定量を行った結果を図4に示す。図3及び4において、Ncは対照である。これらの結果から、この定量方法は再現性がよく、感度が高いことが分かる。その他の、Tm解析で解析の可能な蛍光強度の変化が認められたプローブを用いた場合も同様の結果が得られた。
なお、図3及び4において縦軸は、蛍光強度の一次導関数の逆符号の値(-dF/dt)、横軸は温度(℃)である。
変異の識別可能な消光プローブの位置を示す。 変異の識別不可能な消光プローブの位置を示す。 実施例1の方法の再現性を示す。 実施例1の方法のゲノムDNAの絶対量に関する感度を示す。

Claims (7)

  1. 末端が蛍光色素で標識され、ハイブリダイゼーションしたときに蛍光色素の蛍光が減少する核酸プローブであって、下記(a)を満たす前記核酸プローブ。
    (a)配列番号5に示す塩基配列を有し、3’末端が蛍光色素で標識されている。
  2. 一塩基多型の部位を有する核酸について、蛍光色素で標識された核酸プローブを用いて、蛍光色素の蛍光を測定することにより融解曲線分析を行い、融解曲線分析の結果に基づいて変異を検出する方法であって、一塩基多型は、NAT2遺伝子のcDNAにおける341位の変異であり、核酸プローブは、請求項1に記載の核酸プローブである前記方法。
  3. 試料に含まれる核酸における一塩基多型の部位を含む領域を増幅して一塩基多型を有する核酸を得ることを含む請求項2記載の方法。
  4. 増幅をDNAポリメラーゼを用いる方法により行う請求項3記載の方法。
  5. 増幅を核酸プローブの存在下で行う請求項4記載の方法。
  6. 末端が蛍光色素で標識され、ハイブリダイゼーションしたときに蛍光色素の蛍光が減少する核酸プローブであって、下記(a)を満たす前記核酸プローブを含む、請求項2記載の方法のためのキット。
    (a)配列番号5に示す塩基配列を有し、3’末端が蛍光色素で標識されている。
  7. NAT2遺伝子のcDNAにおける341位の変異を含む領域を、DNAポリメラーゼを用いる方法で増幅するためのプライマーをさらに含む請求項6記載のキット。
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