JP2005327772A - 低鉄損一方向性電磁鋼板 - Google Patents

低鉄損一方向性電磁鋼板 Download PDF

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Abstract

【課題】 従来の溝や歪形成以外の手段を用いて、ヒステリシス損の増加を抑制しつつ渦電流損をより低減することによって従来に比べて飛躍的に鉄損特性が向上する低鉄損一方向性電磁鋼板を提供する。
【解決手段】 鋼板表裏層の何れか一方又は両方における1箇所又は複数箇所に、磁気異方性定数がFeの磁気異方性定数より大きく、かつ鋼板面の法線方向に対して±60°以内の角度をなす向きに少なくとも1つの磁化容易軸を有する金属または金属化合物を含有し、該金属または金属化合物の鋼板面における総面積率が1.2%以上である低鉄損一方向性電磁鋼板。
【選択図】 図4

Description

本発明は、トランスの鉄心等に利用され、一方向性電磁鋼板の性能、特に低鉄損性に優れた一方向性電磁鋼板に関するものである。
近年、鋼板の圧延方向に磁化容易軸をもつ一方向性電磁鋼板は、主に変圧器やその他の電力変換器の鉄心に用いられているが、エネルギー変換時に生じる損失を小さくするために、鉄心の材料には、低い鉄損特性が強く要求されている。
電磁鋼板の鉄損は、大別してヒステリシス損と渦電流損とからなる。ヒステリシス損は、結晶方位、欠陥、粒界等による影響を受け、渦電流損は、材料の板厚、電気抵抗および180°磁区幅等により決まる。
従って、これまでは、ヒステリシス損低減の観点から結晶粒組織を(110)[001]方位に高度に揃え、結晶の欠陥を少なくするなどの方法が用いられ、渦電流損低減の観点から板厚を薄くし、Si含有量の増加などにより材料の抵抗値を高めたり、張力被膜の鋼板表面への塗布などにより180°磁区幅を細分化するなどの方法が用いられ、電磁鋼板の低損失化が試みられてきた。
また、近年、鉄損を飛躍的に減少させるために、鉄損の大部分を占める渦電流損低減の観点から、上記の鋼板表面への張力付与以外の手段を用いて、人為的に鋼板に磁極を発生させ、180°磁区を細分化させる方法が提案されている。
例えば、レーザを一方向性電磁鋼板表面の圧延方向と直角方向に対して、所定のビーム幅、エネルギー密度、照射間隔で照射することにより鋼板表面に局部的な高転位密度領域、すなわち微小塑性歪を加えることで、磁区の芽を発生させて磁区の細分化を行い、一方向性電磁鋼板の鉄損を低減する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、一方向性鋼板表面の所定方向及び所定荷重で溝を形成した後、歪取り燃鈍により歪導入部に微細結晶粒を生じさせ、二次再結晶粒との界面から磁区細分化の芽を発生させる方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
さらには、焼鈍済みの一方向性電磁鋼板の所定方向に溝付きロールなどにより機械的に所定深さの溝を形成した後、エッチングにより機械的歪により生じた微細粒を除去し溝を深めることで一方向性電磁鋼板の鉄損を低減する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
上記特許文献1〜3の方法は、一方向性電磁鋼板表面に溝又は局部的塑性歪(高転位密度領域)を形成し、180°磁区幅の細分化を行うことを技術思想とする技術であるが、これらの方法で得られる鋼板の鉄損(W17/50)は0.80〜0.78W/Kg程度が限界であった。なお、前記W17/50は磁束密度1.7T、周波数50Hzにおける鉄損を示す。
上記方法において鉄損低減効果に限界が生じる理由は、後述するように本発明者らの検討によれば、溝又は塑性歪の形成により180°磁区幅が細分化され、渦電流損は低減するものの、逆にヒステリシス損が増加する結果、鉄損が低減しないためであることを確認している。
以上の通り、従来技術を用いる限りは、一方向性電磁鋼板の鉄損をさらに改善することは期待できないため、従来に比べて飛躍的に鉄損を低減する方法が望まれている。
特開昭55−18566号公報 特開昭61−117218号公報 特開2000−169946号公報
上記従来技術の現状を踏まえ、本発明は、従来の溝や歪形成以外の手段を用いて、ヒステリシス損の増加を抑制しつつ渦電流損をより低減することによって、従来に比べて飛躍的に鉄損特性が向上する低鉄損一方向性電磁鋼板を提供するものである。
本発明は、上記課題を解決するものであり、その発明の要旨は以下の通りである。
(1)鋼板表裏層の何れか一方又は両方における1箇所又は複数箇所に、磁気異方性定数がFeの磁気異方性定数より大きく、かつ鋼板面の法線方向に対して±60°以内の角度をなす向きに少なくとも1つの磁化容易軸を有する金属または金属化合物を含有し、該金属または金属化合物の鋼板面における総面積率が1.2%以上であることを特徴とする低鉄損一方向性電磁鋼板。
(2)前記金属または金属化合物の少なくとも1つの磁化容易軸の向きが、鋼板表面の法線方向に対して平行であることを特徴とする前記(1)に記載の低鉄損一方向性電磁鋼板。
(3)前記金属または金属化合物の磁気異方性定数が2.4×10J/m以上であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の低鉄損一方向性電磁鋼板。
(4)前記金属または金属化合物は、鋼板面から板厚方向に35μm以下の範囲に有することを特徴とする前記(1)〜(3)の何れか1項に記載の低鉄損一方向性電磁鋼板。
(5)前記金属または金属化合物は、鋼板圧延方向に7mm以下の間隔で有することを特徴とする前記(1)〜(4)の何れか1項に記載の低鉄損一方向性電磁鋼板。
(6)前記金属または金属化合物は、鋼板圧延方向に対して60〜120°の角度をなす方向に連続して、又は所定間隔で有することを特徴とする前記(1)〜(5)の何れか1項に記載の低鉄損一方向性電磁鋼板。
本発明によれば、鉄損特性が非常に優れた一方向性電磁鋼板を提供でき、トランスのエネルギー損失が非常に小さくなる等、工業的効果が極めて大きい。
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明者らは、一方向性電磁鋼板の表面に溝または歪形成による従来の鉄損低減方法について確認試験を行い、以下の問題点を確認した。
図1は、表面に溝または歪を形成し低鉄損化した一方向性電磁鋼板における表面張力と鉄損との関係を示す図である。
表面に溝または歪を形成し低鉄損化した一方向性電磁鋼板の何れも、外部応力により鋼板表面の張力を増加することによって、さらに鉄損が低減する。
表面張力が2kgf/mmの場合に、表面に溝を形成した一方向性電磁鋼板ではW17/50で0.66(W/Kg)、表面に歪を形成した一方向性電磁鋼板ではW17/50で0.64(W/Kg)まで低鉄損化が図れるが、それ以上の低鉄損化は困難である。
鋼板圧延方向に対しておよそ直角な方向に溝を形成する方法では、表面の溝深さの増加とともに全損失を構成する渦電流損は磁区細分化が進行するため低減する。
しかし、全損失を構成するヒステリシス損は表面の溝深さの増加とともに逆に増加してしまうため、表面の溝形成による全損失の低減には限界がある。また、溝形成によって鋼板表面の凹状部から磁束密度が漏れるため、磁気特性の一つであるB8(磁界800A/mにおける磁束密度)が劣化する問題も生じる。
一方、レーザ照射等により鋼板圧延方向に対しておよそ直角な方向に歪を導入する方法では、歪量の増加とともに磁区細分化を図られ損失は低減される。この方法では表面溝形成方法に比べて、ヒステリシス損の増加や表面の漏れ磁界によるB8の劣化の問題は生じにくいため、図1に示すように溝形成方法に比べて低損失化の効果が高い。
しかし、本発明者らの確認試験結果から、レーザ照射により弾性歪の増加により磁区細分化は進むが、同時に塑性歪も増加し、塑性歪による磁壁移動が妨げられるためヒステリシス損が増加することを確認している。また、この方法で低損失化した鋼板は、歪取り焼鈍処理を行なう場合には歪による磁区細分化効果は消失してしまうため、約800℃の歪取り焼鈍処理が必要とする巻きトランスに使用する鋼板には、この方法は適用できず、焼鈍処理が不要な積みトランスの用途に制限されるという問題があった。
以上の本発明者らの確認試験結果から、溝形成又は歪形成と張力付与等のような従来方法の組み合わせでは、一方向性電磁鋼板の低鉄損化に限界があり、大幅な低鉄損化は図れないことを確認した。
本発明は、上記のような従来方法とは全く異なる技術思想及び全く新たな方法により、大幅な低鉄損化を図った一方向性電磁鋼板を提案するものである。
先ず、本発明の技術思想について説明する。
図2の概念図に示すように、一般に、一方向性電磁鋼板の磁化容易軸は圧延方向に向いているため、磁区は、圧延方向に平行および反平行な磁化で構成され、180°磁区幅を形成する。
この状態でさらに鋼板表面の圧延方向に対して直角方向に溝を形成すると、鋼板の180°磁区幅は狭くなる、つまり、磁区の細分化が行われることは上述した通りである。
本発明者らは、表面の溝形成による磁区の細分化のメカニズムを磁区解析から検討した結果、この鋼板では溝の断面に磁極が発生し、これが磁区の再構成を促すために、結果的に180°磁区幅が細分化されることを見出した。
上述した鋼板表面に形成する溝深さを増加するとともに磁区の細分化が促進する理由は、溝深さの増加により溝断面積が増大するため、溝断面に発生する磁極も増加し、さらに磁区の再構成が促進するからであると考えられる。
しかし、この方法は、上述したように溝深さの増加とともにヒステリシス損を増加し鉄損低減を阻害するため、鉄損特性の低減には限界がある。
本発明は、上記磁区解析結果を踏まえ、鋼板の溝断面に比べて表面積が格段に広い鋼板表面に磁極を発生させることで磁極量を増加させ、磁区の再構成を促進し、より細分化させることを技術思想とする。
そのために、本発明は、図5に示すように板厚方向に磁化容易軸を有する物質を鋼板表層部の少なくとも一部に付与し、図3および図4に示すように、上記物質を付与した部分において各180°磁区を構成する磁化の向きを鋼板表面に向かう板厚方向に誘導し、鋼板表面に磁極を誘起する方法により、磁区の再構成、細分化の促進を実現するものである。
本発明によれば、鋼板表面に溝または歪を形成した一方向性電磁鋼板における溝深さまたは塑性歪の増加に伴うヒステリシス損増加の問題は生じ難いため、従来に比べて鉄損特性を飛躍的に改善できる一方向性電磁鋼板を提供することができる。
物質の磁化が、磁化容易軸に向き易いかどうかを示す指標は、磁気トルク法やマイクロ波共鳴法等により測定される正負の磁気異方性定数で決まる。
例えば、電磁鋼板の母材元素であるFeは、図6に示すように磁化容易軸が三つあり、その磁化容易軸の一つは圧延方向に向いている。
また、鉄の磁気異方性定数は、結晶の対称性から3方向が同等の正の磁気異方性定数:約4.8×10(J/m)を持つことが知られている。
従って、電磁鋼板の各180°磁区を構成する磁化の向き(鉄の容易軸方向である圧延方向)を鋼板表面に向かう板厚方向に誘導し、鋼板表面に磁極を誘起させるためには、板厚方向に容易軸を有する物質の磁気異方性定数が少なくとも鉄よりも大きくする必要がある。
上記の理由から、本発明の一方向性電磁鋼板において、鋼板表裏層の何れか一方又は両方における1箇所又は複数箇所に付与する金属または金属化合物の磁気異方性定数は、Feの磁気異方性定数より大きなものとする。
一方向性電磁鋼板に対して上記金属または金属化合物の付与する箇所は、鋼板表裏層の何れか一方又は両方における1箇所又は複数箇所のいずれの実施形態でも、従来の一方向性電磁鋼板に比べて鉄損を低減できる作用、効果は得られる。
本発明において、上記のメカニズムによる一方向性電磁鋼板の磁区の再編成、細分化の促進効果は、鋼板表面に誘起させる磁極の大きさにより決まる。
そのため、本発明において、鋼板に付与する上記金属または金属化合物の表面積(鋼板全体に対する総面積率(%))および磁化容易軸方向(鋼板面の法線方向に対する角度)を適正範囲に規定することが重要である。
以下に本発明の一方向性電磁鋼板における磁気異方性定数がFeの磁気異方性定数より大きい金属または金属化合物の表面積及び磁化容易軸方向の適正範囲について説明する。
なお、以下の説明の便宜上、「磁気異方性定数がFeの磁気異方性定数より大きい金属または金属化合物」を「高磁気異方性物質」という。
図7は、板厚が0.23mmの一方向性電磁鋼板における高磁気異方性物質の磁化容易軸方向及び磁気異方性定数と、鉄損W17/50との関係を示す図である。
なお、高磁気異方性物質は、図5に示すように鋼板の圧延方向に対してほぼ直角方向に、鋼板表面からの深さが約20μmで、幅が約60μmの帯状範囲に存在し、帯状範囲の間隔(圧延方向距離)を約5mmとした。この際の高磁気異方性物質の鋼板面における総面積率は、約1.2%であった。
図7において、鉄損W17/50は、磁気測定装置を用いて、周波数50Hzで励磁し、最大磁束密度が1.7Tになる時の鉄損値を示す。
また、磁気異方性定数は、Feの磁気異方性定数(約4.8×10(J/m))に対する相対比率として示す。また、磁化容易軸方向は、高磁気異方性物質の少なくとも1つの磁化容易軸と鋼板面の法線方向とのなす角度(°)を示す。
図7から、従来の一方向性電磁鋼板に比べて鉄損値を充分に低減するためには、上述したように高磁気異方性物質がFeの磁気異方性定数よりも大きく(鉄の磁気異方性定数に対する相対比率が1を超える)するとともに、その容易軸方向が鋼板面の法線方向に対して±60度以内とする必要がある。
また、一方向性電磁鋼板の鉄損値をより低減させるためには、高磁気異方性物質の容易軸方向が鋼板面の法線方向に対して0°、つまり、法線方向と平行とすることが好ましい。
なお、上記容易軸方向の鋼板面の法線方向に対する角度において、[+]は時計周り方向、[−]は反時計周り方向を示す。
以上の理由から、本発明では、鋼板表裏層の何れか一方又は両方における1箇所又は複数箇所に、磁気異方性定数がFeの磁気異方性定数より大きく、かつ鋼板面の法線方向に対して±60°以内の角度をなす向きに少なくとも1つの磁化容易軸を有する金属または金属化合物(高磁気異方性物質)を含有させることとした。
また、一方向性電磁鋼板の鉄損値をより低減させるためには、高磁気異方性物質の容易軸方向が鋼板面の法線方向と平行とすることが好ましい。
なお、上記の磁気異方性定数がFeの磁気異方性定数より大きく、かつ鋼板面の法線方向に対して±60°以内の角度をなす向きに少なくとも1つの磁化容易軸を有する金属または金属化合物(高磁気異方性物質)としては、Co系合金、FeNiO系化合物、MnBi等が挙げられる。
また、物質の磁気異方性は、その結晶構造やその形状などに依存する。例えば、針状結晶構造の鉄粉の磁気異方性は、Fe自体の磁気異方性定数に比べて、針状方向の異方性が高い磁気異方性定数をもつことが知られている。
したがって、上記金属または金属化合物(高磁気異方性物質)として、上記の例示した金属または金属化合物で結晶構造や形状が異なり、特定方位の磁気異方性が異なるものも当然含むものである。
また、本発明において、上記金属または金属化合物(高磁気異方性物質)の形態は、金属系、合金系、化合物物系、酸化物系いずれでも良い。
また、図7から、高磁気異方性物質のFeの磁気異方性定数に対する相対比率が5以上、つまり、磁気異方性定数(絶対値)が約2.4×10(J/m)以上の高磁気異方性物質を用いれば、本発明が規定する磁化容易軸方向の範囲内で磁化容易軸方向にばらつきがあっても、安定して充分に鉄損値を低下することができる。
さらに、磁気異方性定数(絶対値)が約2.4×10(J/m)以上の高磁気異方性物質を用いれば、本発明が規定する高磁気異方性物質の総面積率の範囲内で高磁気異方性物質の総面積率にばらつきがあっても、安定して充分に鉄損値を低下できることも本発明者らは実験などで確認している。
このため、本発明では、一方向性電磁鋼板の鉄損値をより安定して充分に低減させるために、上記金属または金属化合物(高磁気異方性物質)の磁気異方性定数(絶対値)は、2.4×10(J/m)以上であることが好ましい。
図8は、板厚が0.23mmの一方向性電磁鋼板における高磁気異方性物質の総面積率と、鉄損W17/50との関係を示す図である。
なお、高磁気異方性物質は、図5に示すように鋼板の圧延方向に対してほぼ直角方向に、鋼板面からの深さが約20μmに付与した帯状範囲の幅または帯状範囲の間隔(圧延方向距離)を変化させることにより、高磁気異方性物質の鋼板面における総面積率を変化させた。
また、高磁気異方性物質の磁気異方性定数は、Feに比べて大きい、約4.53×10(J/m)であった。また、高磁気異方性物質の少なくとも1つの磁化容易軸方向は、鋼板面の法線方向に対して60°であった。
図8において、鉄損W17/50は、磁気測定装置を用いて、周波数50Hzで励磁し、最大磁束密度が1.7Tになる時の鉄損値を示す。
図8から、従来の一方向性電磁鋼板に比べて鉄損値を充分に低減するためには、高磁気異方性物質の鋼板面における総面積率が1.2%以上とする必要がある。
以上の理由から、本発明では、鋼板表裏層の何れか一方又は両方における1箇所又は複数箇所に含有する、磁気異方性定数がFeの磁気異方性定数より大きい金属または金属化合物(高磁気異方性物質)の鋼板面における総面積率を1.2%以上とした。
本発明の一方向性電磁鋼板は、上述したように、鋼板表面に溝または歪を形成した一方向性電磁鋼板における溝深さまたは塑性歪の増加に伴うヒステリシス損増加の問題は生じ難いため、従来に比べて鉄損特性を飛躍的に改善することができる。
しかしながら、本発明者らの実験などの検討によれば、鋼板面から板厚方向の高磁気異方性物質の厚みが35μmを超えるような場合には、鋼板面に向いた板厚方向の磁化量が過度に増加し、この磁化方向を圧延方向に向けるための仕事量が増加する影響が無視できなくなり、ヒステリシス損がやや増加する傾向にある。
このため、鋼板面から板厚方向の高磁気異方性物質の厚みが35μmを超えるような場合には、高磁気異方性物質の付与による効果がやや減少する場合がある。また、高磁気異方性物質の厚みを過度に増加することは、高価な高磁気異方性物質の使用による鋼板コストを増加させる原因となり好ましくない。
このため、本発明において、前記金属または金属化合物(高磁気異方性物質)の鋼板面から板厚方向の深さ範囲は、35μm以下の範囲とすることが好ましい。
本発明の上記高磁気異方性物質が鋼板面の総面積率で1.2%以上付与された一方向性電磁鋼板を実際に製造する場合には、図5に示すように鋼板の圧延方向に対して所定方向の鋼板表面から所定深さ、所定幅の帯状範囲に、所定間隔(ピッチ)の凹状の窪みを作り、その鋼板をメッキ浴に浸し、高磁気異方性物質を積層させる実施形態が好ましい。
このような実施形態において、高磁気異方性物質を付与する帯状範囲の圧延方向の間隔(ピッチ)を7mm以下とすることが好ましい。上記間隔(ピッチ)が7mmを超えると、鋼板面における総面積率を1.2%以上にするために、局所的な帯状範囲の幅を増やす必要がある。
そのため、本発明の一方向電磁鋼板の実製造時において、局所的な積層領域の増加によるメッキ時間の増加などの問題を招く可能性があるため製造操業上好ましくない。
したがって、本発明において、前記金属または金属化合物(高磁気異方性物質)が存在する領域の鋼板圧延方向の間隔を7mm以下とするのが好ましい。
また、上記本発明実施形態において、上記高磁気異方性物質を付与する帯状範囲は、図5に示すように鋼板の圧延方向に対してほぼ直角方向が好ましい。
しかし、実製造時には、コイルに巻き取りながら、鋼板表面に凹状の窪みをつけ、メッキ浴で積層することになるので、高磁気異方性物質が付与された帯状範囲の方向は、鋼板圧延方向に対してずれが生じてしまうことを確認した。
前述した通り、磁区制御を施す前の一方向性電磁鋼板は、理想的には、鉄損を低減するために、圧延方向に磁化容易軸をもった(110)[001]方位の結晶粒で構成された集合組織鋼板であることが望ましい。
しかし、実際に工業的に製造し得る一方向性電磁鋼板における磁化容易軸は圧延方向と完全に平行ではなく、磁化容易軸は圧延方向に対してずれ角度が存在する。
前述した通り、一方向性電磁鋼板の磁区細分化により鉄損を低減するためには、鋼板の磁化方向、つまり、磁化容易軸に対して直角方向に帯状範囲を形成するのが有効であると考えられる。
本発明者らの実験結果によれば、上記磁化容易軸の圧延方向に対するずれ角度に起因して、圧延方向に対して60〜120°の方向に帯状範囲を形成する場合に、磁区細分化の効果による鉄損の低減が充分に得られることを確認した。
上記の角度範囲は、理想とする磁化容易軸方向、つまり、鋼板の圧延方向に対して直角な方向からずれ角度で30°以内の範囲に相当する。
この角度範囲から外れると鋼板の磁区細分化作用は少なくなるため、従来に比べてより安定して充分に鉄損値を向上するためには、上記高磁気異方性物質を付与する帯状範囲の方向を圧延方向に対して60〜120°の方向とするのが好ましい。
したがって、本発明において、前記金属または金属化合物(高磁気異方性物質)が存在する帯状範囲は、鋼板圧延方向に対して60〜120°の角度をなす方向に連続して、又は所定間隔で有することが好ましい。
本発明において、鋼板表裏層の何れか一方又は両方における1箇所又は複数箇所に、前記金属または金属化合物(高磁気異方性物質)を付与する方法は、特に限定する必要はない。例えば、その具体的な方法としては、通常の方法で得られる一方向性電磁鋼板に対して、さらに、エッチングや歯形ロール等の加工方法を用いて、その鋼板表面に溝を形成した後、上記高磁気異方性物質を積層しコイルに巻き取る方法が用いられる。
なお、上記高磁気異方性物質を積層する方法は、例えば、スパッタ法、蒸着法、メッキ法のいずれかの方法が用いられる。
また、鋼板に溝を形成せずに、母材鋼板を圧延で製造する過程に形成した窪み等を利用して上記高磁気異方性物質を積層しても良い。
あるいは、鋼板に溝を形成せずに、上記高磁気異方性物質を冷間または熱間圧延し埋め込んでも良い。
もしくは、上記高磁気異方性物質を積層ではなく、鋼板表面へのイオン注入やドーピング等の方法により付与する方法を利用しても良い。
質量%でSiが約3%含有し、残部はFeとその他の不純物の組成から成り、鋼板の結晶方位が(110)[001]の理想方位に対して平均値で約3度以下のずれを持つ集合組織を有し、厚さが0.23mmの一方向性電磁鋼板を製造した。このとき、この鋼板の鉄損値W17/50は、約0.9(W/Kg)であった。
その後、この鋼板の表層に、図5に示すように表1の条件で高磁気異方性物質を積層し、表層に高磁気異方性物質を付与した鋼板を製造した(表1の試料No.1〜14)。
また、高磁気異方性物質を付与した本発明の一方向性電磁鋼板に対する比較鋼板として、上記一方向性電磁鋼板の表層に溝を形成した鋼板(表1の試料No.15)、および上記一方向性電磁鋼板の表層に歪を形成した鋼板(表1の試料No.16)を製造した。
なお、一方向性電磁鋼板の表層に溝を形成した鋼板(表1の試料No.15)の溝深さは約20μm、溝幅は約0.1mm、溝間隔(ピッチ)は約5mmで、溝方向は圧延方向にほぼ直角方向に形成した。
また、一方向性電磁鋼板の表層に歪を形成した鋼板(表1の試料No.16)は、鋼板表面に1パルスあたり約3mJのエネルギーを持つパルスレーザーを圧延方向に約5mmピッチの間隔で照射し作成した。このとき、レーザ照射領域は、圧延方向にほぼ直角方向になるようにした。
表1に示すように、試料No.1〜11の発明例は、高磁気異方性物質の磁気異方性定数(Feの磁気異方性定数に対する相対比)、少なくとも1つの磁化容易軸方向(鋼板面の法線方向に対する角度)、および鋼板面における総面積率の条件が、本発明の規定範囲内であるため、鋼板の鉄損値(W17/50)が0.60(W/kg)未満に充分低減され、良好な鉄損特性を有する一方向電磁鋼板が得られた。
また、これらの発明例のうち、本発明で規定するさらに好ましい条件、つまり、高磁気異方性物質の磁気異方性定数の絶対値が2.4×10J/m以上、少なくとも1つの磁化容易軸方向が法線方向に平行、鋼板面から板厚方向の深さ(積層厚)が35μm以下、付与領域の鋼板圧延方向の間隔が7mm以下、付与領域方向の鋼板圧延方向に対する角度が60〜120°の条件を満足する試料No.1〜6の発明例は、それらの条件を外れた試料No.7〜11の発明例に比べて鋼板の鉄損値(W17/50)がより低減(0.47(W/Kg)以下)し、鉄損特性は飛躍的に改善された。
これに対して、試料No.12〜14の比較例は、それぞれ高磁気異方性物質の磁気異方性定数(Feの磁気異方性定数に対する相対比)が低く、全ての磁化容易軸方向(鋼板面の法線方向に対する角度)が高く、或いは鋼板面における総面積率が低く、何れかの条件が本発明の規定範囲から外れているため、鋼板の鉄損値(W17/50)が0.69(W/kg)以上と高くなり、一方向電磁鋼板の鉄損特性が劣る結果であった。
また、試料No.15、16の比較例は、従来の鋼板表層に溝を形成した鋼板または鋼板表層に歪を形成した鋼板であるが、それぞれの鋼板の鉄損値(W17/50)が0.69と0.65(W/kg)と高くなり、一方向電磁鋼板の鉄損特性が劣る結果であった。
Figure 2005327772
上記表1の試料No.3の本発明例と、同試料No.16の比較例(鋼板表面に歪形成)のそれぞれの一方向性電磁鋼板を約800℃の加熱温度で歪取り焼鈍を行った後、それぞれの鋼板の鉄損値を測定した。その結果を表2に示す。
表2から、本発明例の一方向性電磁鋼板は、歪取り焼鈍後であっても良好な鉄損値をほぼ維持することができた。
これに対して、比較例の鋼板表面に歪を形成した一方向性電磁鋼板は、歪取り焼鈍後に歪による磁区細分化効果は消失し、鉄損値W17/50が0.65から0.9に大幅に増加した。
Figure 2005327772
表面に溝または歪を形成し低鉄損化した一方向性電磁鋼板における表面張力と鉄損値との関係を示すグラフである。 鋼板に生じる磁区構造を示す概念図である。 本発明による磁区構造の再編成を示す概念図である。 磁区構造の再編成における鋼板表層近傍の磁化分布を示す断面図である。 鋼板表層部に高磁気異方性物質を付与した一実施形態を示す概念図である。 電磁鋼板の母材元素であるFeの3つの磁化容易軸を示す概念図である。 鋼板表面に付与した高磁気異方性物質の磁化容易軸方向及び磁気異方性定数と、鉄損値との関係を示すグラフである。 高磁気異方性物質の付与領域の総面積率と鉄損値との関係を示すグラフである。

Claims (6)

  1. 鋼板表裏層の何れか一方又は両方における1箇所又は複数箇所に、磁気異方性定数がFeの磁気異方性定数より大きく、かつ鋼板面の法線方向に対して±60°以内の角度をなす向きに少なくとも1つの磁化容易軸を有する金属または金属化合物を含有し、該金属または金属化合物の鋼板面における総面積率が1.2%以上であることを特徴とする低鉄損一方向性電磁鋼板。
  2. 前記金属または金属化合物の少なくとも1つの磁化容易軸の向きが、鋼板表面の法線方向に対して平行であることを特徴とする請求項1に記載の低鉄損一方向性電磁鋼板。
  3. 前記金属または金属化合物の磁気異方性定数が2.4×10J/m以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の低鉄損一方向性電磁鋼板。
  4. 前記金属または金属化合物は、鋼板面から板厚方向に35μm以下の範囲に有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の低鉄損一方向性電磁鋼板。
  5. 前記金属または金属化合物は、鋼板圧延方向に7mm以下の間隔で有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の低鉄損一方向性電磁鋼板。
  6. 前記金属または金属化合物は、鋼板圧延方向に対して60〜120°の角度をなす方向に連続して、又は所定間隔で有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の低鉄損一方向性電磁鋼板。
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