JP2005325233A - 熱可塑性エラストマ樹脂組成物および成形体 - Google Patents

熱可塑性エラストマ樹脂組成物および成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】柔軟でありながらペレット間のブロッキングがなくハンドリング性に優れ、繰り返し折り曲げても折癖がつくことがなく、成形性および成形品外観に優れ、さらに非極性硬質樹脂との熱接着性にも優れた熱可塑性エラストマ樹脂組成物およびそれを使用した成形体の提供。
【解決手段】ポリエステルブロック共重合体に、酸変性水添スチレンブロック共重合体と、特定の化学構造を有する変性水添スチレンブロック共重合体とを配合したポリプロピレン樹脂との熱接着性が一定の値以上に高い熱可塑性エラストマ樹脂組成物および成形体。
【選択図】なし

Description

本発明は、柔軟でありながらペレット間のブロッキングがないためハンドリング性に優れ、復元性に優れるため繰り返し折り曲げても折癖がつくことがなく、離型性が良いため射出成形などの成形性に優れ、表層剥離やブリードアウトを生じないため成形品表面外観に優れ、さらに非極性硬質樹脂との熱接着性に優れるためポリプロピレン樹脂を始めとする非極性硬質樹脂との複合成形体を提供することのできる熱可塑性エラストマ樹脂組成物およびそれを使用した複合成形体に関するものである。
結晶性芳香族ポリエステル単位をハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールのような脂肪族ポリエーテル単位をソフトセグメントとするポリエステルブロック共重合体は、柔軟で反発弾性が高いなどのゴム的性質を有し、機械的物性が高く、高温特性、低温特性、耐油性、耐薬品性など多くの点が優れる成形用材料であり、これらの物性バランスが良いことから、その用途を、シート、フィルム、繊維などの産業資材や、自動車、電気・電子部品、消費財などに拡大してきた。
しかし、このようなポリエステルブロック共重合体の特長を保持したままで、より柔軟化することを試みた場合には限界があり、その用途展開に制限を受けている。また、柔軟なポリエステルブロック共重合体では、硬質樹脂との熱接着性、特にポリプロピレン樹脂との熱接着性が不十分であるという問題もあった。
ポリエステルブロック共重合体の柔軟性を改良するために、ポリエステルブロック共重合体に、それより柔軟な熱可塑性エラストマを配合することが従来から多く試みられており、例えばスチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加誘導体とゴム用軟化剤とポリエステル系エラストマとからなる組成物(例えば、特許文献1参照)が知られている。
また、硬質樹脂との熱接着性を高めるための試みも行われており、水素添加されたスチレン系ブロック共重合体やそれをカルボン酸変性したブロック共重合体と融点が80℃〜180℃の範囲にある熱可塑性ポリエステルとからなる硬質樹脂との熱接着性を有する組成物(例えば、特許文献2参照)、水添SBSブロックコポリマなどの熱可塑性弾性体とポリエステルエラストマとからなる硬質樹脂との熱融着性に優れた組成物(例えば、特許文献3参照)、ポリスチレンブロックと水添または非水添のポリイソプレンブロックとからなるブロック弾性体とポリエステルエラストマなどの縮合重合系ブロック弾性体とからなる硬質樹脂との熱融着性に優れた組成物(例えば、特許文献4参照)、特定のポリエーテルエステルとスチレン系エラストマなどの弾性重合体とからなる硬質樹脂との熱融着性に優れた組成物(例えば、特許文献5参照)、および特定のスチレン系エラストマとポリエステルエラストマとからなる硬質樹脂との熱融着性に優れた組成物(例えば、特許文献6参照)などが知られている。
上記した従来の提案によれば、確かに従来のポリエステルブロック共重合体に比べて柔軟な樹脂組成物を得ることができるが、これらの技術をもってしても柔軟化したことによる弊害が顕在化する結果となる。例えば、柔軟化したことによって粘着性が増し、ペレットがブロッキングするようになるため、ペレット化やペレットの乾燥などのプロセスでのハンドリングに手こずるのを始めとして、乾燥後に20kg程度が入る紙袋などに分包して倉庫に積み上げておくと、ペレットが一体化して大きな一つの塊となり容易にはほぐれにくくなり、これは特に夏期には深刻な問題である。さらに、射出成形を試みると、柔軟化したことによって離型性が低下するため、成形サイクルが長くなったり、成形品が変形したりすることがある。また、上記した従来の提案の場合には、ポリマブレンド系の欠点である表層剥離が生じて成形品表面が剥がれてきたり、ゴム用軟化剤によるブリードアウトが起きて成形品表面外観が著しく低下したりするため、実際の製品として使用する際に問題となる現状にあった。また、上記した従来の提案によれば、確かにABS樹脂やポリカーボネート樹脂やポリブチレンテレフタレート樹脂のような極性硬質樹脂に対する熱接着性は向上するが、ポリプロピレン樹脂のような非極性硬質樹脂に対する熱接着性は不十分であった。
このような問題のうち、成形品のベタ付きや成形時の離型性の悪さを解決するために、特定のスチレン系エラストマとパラフィン系オイルとポリエステルエラストマなどの熱可塑性エラストマからなる硬質樹脂との熱融着性に優れベタ付き感がなく離型性も優れた組成物(例えば、特許文献7参照)が提案されている。しかし、この技術においてもパラフィン系オイルを使用するため、ブリードアウトが起きて成形品表面外観が著しく低下することがあり、実際の製品として使用する際に問題となる現状にあった。
また、ポリプロピレン樹脂のような非極性硬質樹脂に対する熱接着性を向上させる目的で、特定のスチレン系エラストマとポリエステルエラストマなどの熱可塑性エラストマとからなる組成物(例えば、特許文献8参照)が提案されている。この提案による樹脂組成物は、確かにポリプロピレン樹脂に対する熱接着性が向上しているものの、繰り返し折り曲げた場合の復元性が優れたものではなかった。
さらに、ポリエステルエラストマとグラフト物の末端が酸である水添スチレン系エラストマとエポキシ化合物からなる高粘度で耐屈曲疲労性に優れる組成物(例えば、特許文献9参照)も知られているが、この樹脂組成物はブロー成形に適した高い溶融粘度を有する樹脂組成物あって、射出成形性とポリプロピレン樹脂との熱接着性のいずれもが優れた樹脂組成物ではなかった。
このように、柔軟でありながらペレット間のブロッキングがなくてハンドリング性に優れ、復元性に優れるため繰り返し折り曲げても折癖がつくことがなく、離型性が良いことにより成形性に優れ、表層剥離やブリードアウトを生じないため成形品外観に優れ、ポリプロピレン樹脂のような非極性硬質樹脂に対する熱接着性にも優れた材料を得る事には限界があった。特に、自動車内装用にポリプロピレン樹脂とその一端で複合成形されて用いられる際に、ポリプロピレン樹脂と熱融着していないことにより自由に変形可能な部分が存在することになるため、その部分が繰り返し折り曲げ変形を受けるような使い方をされるカバー類に使用可能な性能を有する材料は、未だ見いだされていないが現状であった。
一方、スチレン系ブロックと共役ジエンブロックからなるブロック共重合体に、アルコキシシリル基、アミノ基、アルコキシシリル基とアミノ基の両者のいずれかを含有する分子単位が結合したブロック共重合体を水素添加した変性水添共役ジエン系重合体が知られていて、この重合体にポリエステルエラストマを配合する技術(例えば、特許文献10参照)も提案されている。そして、この技術には、変性水添共役ジエン系重合体とポリエステルエラストマの両者を配合することによって、耐衝撃性、強度、成形加工性、接着性のバランスに優れた成形品を与えることが開示されているが、同技術はポリエステルブロック共重合体の柔軟性と粘着性のバランスの改良や、復元性の維持や、ポリプロピレン樹脂との熱接着性の向上については何ら示唆するものではない。
特開平1−193352号公報 特開平1−230660号公報 特開平3−100045号公報 特開平6−65467号公報 特開平10−80977号公報 特開平10−130451号公報 特開平8−72204号公報 特開平9−124887号公報 特開平2−276853号公報 特開2003−246817号公報
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、柔軟でありながらペレット間のブロッキングがないためハンドリング性に優れ、復元性に優れるため繰り返し折り曲げても折癖がつくことがなく、離型性が良いため射出成形などの成形性に優れ、表層剥離やブリードアウトを生じないため成形品表面外観に優れ、さらに非極性硬質樹脂との熱接着性に優れるためポリプロピレン樹脂を始めとする非極性硬質樹脂との複合成形体を提供することのできる熱可塑性エラストマ樹脂組成物およびそれを使用した成形体を提供することにある。
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、ポリエステルブロック共重合体に対し、特定の酸変性水添スチレンブロック共重合体と特定の変性水添スチレンブロック共重合体とを配合した樹脂組成物、またはポリエステルブロック共重合体に対し、特定の酸変性水添スチレンブロック共重合体と特定の変性水添スチレンブロック共重合体と水添スチレンブロック共重合体とを配合した樹脂組成物により、上記の目的が効果的に達成されることを見いだし、本発明に到達した。
すなわち、本発明によれば、主として結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a)と、主として脂肪族ポリエーテル単位からなる低融点重合体セグメント(b)とを主たる構成成分とするポリエステルブロック共重合体(A)50〜85重量%に対し、少なくとも1つのビニル芳香族化合物重合体ブロック(c)と少なくとも1つの共役ジエンブロック(d)とからなり水素添加されているブロック共重合体にカルボン酸基またはその誘導体基を含有する分子単位が結合した酸変性水添スチレンブロック共重合体(B)5〜45重量%と、少なくとも1つのビニル芳香族化合物重合体ブロック(c)と少なくとも1つの共役ジエンブロック(d)とからなるブロック共重合体にアルコキシシリル基を含有する分子単位が結合したブロック共重合体を水素添加したブロック共重合体(C1)、少なくとも1つのビニル芳香族化合物重合体ブロック(c)と少なくとも1つの共役ジエンブロック(d)とからなるブロック共重合体にアミノ基を含有する分子単位が結合したブロック共重合体を水素添加したブロック共重合体(C2)、および少なくとも1つのビニル芳香族化合物重合体ブロック(c)と少なくとも1つの共役ジエンブロック(d)とからなるブロック共重合体にアルコキシシリル基とアミノ基を含有する分子単位が結合したブロック共重合体を水素添加したブロック共重合体(C3)の中から選ばれた1種以上の変性水添スチレンブロック共重合体(C)5〜45重量%とを、(B)+(C)の合計量が50〜15重量%であり、(A)+(B)+(C)の合計量が100重量%となるように配合した熱可塑性エラストマ樹脂組成物、および前記ポリエステルブロック共重合体(A)50〜85重量%と、前記酸変性水添スチレンブロック共重合体(B)5〜45重量%と、前記変性水添スチレンブロック共重合体(C)5〜45重量%と、少なくとも1つのビニル芳香族化合物重合体ブロック(c)と少なくとも1つの共役ジエンブロック(d)とからなり水素添加されている水添スチレンブロック共重合体(D)5〜45重量%とを、(B)+(C)+(D)の合計量が50〜15重量%であり、(A)+(B)+(C)+(D)の合計量が100重量%となるように配合した熱可塑性エラストマ樹脂組成物が提供される。
なお、本発明の熱可塑性エラストマ樹脂組成物においては、
JIS K7113に記載された方法に従って測定した10%引張強さが0.5〜6MPaであること、
以下の方法で測定した残留変形量が6mm以下であること、
(測定方法:縦125mm、横75mm、厚さ2mmの角板試験片を射出成形し、その角板試験片から打ち抜いた縦80mm、横20mm、厚さ2mmの短冊型試験片を、チャック間距離60mmのデマッチャ屈曲疲労試験機にセットし、室温において5Hzのサイクルにてチャック間距離60mmから30mmの移動で3000回の屈曲変形を与えた後、変形した試験片が山型になるように平面上に置き、解放5分後に、平面から試験片の山型に変形した頂点における試験片下辺までの距離を測定して残留変形量を求める。)、および
以下の方法で測定したポリプロピレン樹脂に対する熱接着力が1MPa以上であること、(測定方法:ポリプロピレン樹脂を使用してJIS K7113で定められたJIS 2号型ダンベル試験片を射出成形により作成し、この試験片を中央で半分の長さに切断し、その試験片の一方を、JIS 2号型ダンベル試験片を成形するための金型内キャビティにセットした後、前記熱可塑性エラストマ樹脂組成物を用いてシリンダー温度230℃、型温50℃で射出成形する。得られた成形品を室温にて1日放置した後、歪み速度60%/分で引張ってウェルド強度を測定し、このウェルド強度をポリプロピレン樹脂に対する熱接着力とする。)
が、いずれも好ましい条件であり、これらの条件を適用することにより、一層優れた効果の取得を期待することができる。
また、本発明の成形体は、上記の熱可塑性エラストマ樹脂組成物を射出成形してなることを特徴とし、
複合成形体であること、
硬質樹脂と上記熱可塑性エラストマ樹脂組成物とからなる複合成形体であること、
ポリプロピレン樹脂と上記熱可塑性エラストマ樹脂組成物とからなる複合成形体であること、
自動車用の成形体であること、
自動車内装用の成形体であること、および
成形体がカバーであること、
がいずれも好ましい条件として挙げられる。
本発明によれば、以下に説明するとおり、柔軟でありながらペレット間のブロッキングがないためハンドリング性に優れ、復元性に優れるため繰り返し折り曲げても折癖がつくことがなく、離型性が良いため射出成形などの成形性に優れ、表層剥離やブリードアウトを生じないため成形品表面外観に優れ、さらに非極性硬質樹脂との熱接着性に優れるためポリプロピレン樹脂を始めとする非極性硬質樹脂との複合成形体を提供することのできる熱可塑性エラストマ樹脂組成物およびそれを使用した成形体を得ることができる。
以下、本発明について詳述する。
本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体(A)の高融点結晶性重合体セグメント(a)は、主として芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体から形成されるポリエステルであり、芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ジフェニル−4,4' −ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4' −ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸、および3−スルホイソフタル酸ナトリウムなどが挙げられる。主として芳香族ジカルボン酸を用いるが、必要によっては、芳香族ジカルボン酸の一部を、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、4,4' −ジシクロヘキシルジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸や、アジピン酸、コハク酸、シュウ酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、およびダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸に置換してもよい。ジカルボン酸のエステル形成性誘導体、たとえば低級アルキルエステル、アリールエステル、炭酸エステル、および酸ハロゲン化物などももちろん同等に用い得る。
ジオールの具体例としては、分子量400以下のジオール、例えば1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ジシクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールなどの脂環族ジオール、およびキシリレングリコール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニルプロパン、2,2' −ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4' −ジヒドロキシ−p−ターフェニル,4,4' −ジヒドロキシ−p−クオーターフェニルなどの芳香族ジオールが好ましく、かかるジオールは、エステル形成性誘導体、例えばアセチル体、アルカリ金属塩などの形でも用い得る。
これらのジカルボン酸、その誘導体、ジオール成分およびその誘導体は、2種以上併用してもよい。そして、好ましい高融点結晶性重合体セグメント(a)の例は、テレフタル酸および/またはジメチルテレフタレートと1,4−ブタンジオールから誘導されるポリブチレンテレフタレート単位である。また、テレフタル酸および/またはジメチルテレフタレートから誘導されるポリブチレンテレフタレート単位と、イソフタル酸および/またはジメチルイソフタレートと1,4−ブタンジオールから誘導されるポリブチレンイソフタレート単位からなるものも好ましく用いられる。
本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体(A)の低融点重合体セグメント(b)は、脂肪族ポリエーテルであり、脂肪族ポリエーテルの具体例としては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、およびエチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体などが挙げられる。これらのなかでも、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールおよび/またはポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物および/またはエチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体が好ましい。また、これらの低融点重合体セグメントの数平均分子量としては、共重合された状態において300〜6000程度であることが好ましい。
本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体(A)の低融点重合体セグメント(b)の共重合量は、通常、10〜90重量%、好ましくは30〜85重量%、さらに好ましくは50〜80重量%である。
本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体(A)は、公知の方法で製造することができる。その具体例としては、例えば、ジカルボン酸の低級アルコールジエステル、過剰量の低分子量グリコールおよび低融点重合体セグメント成分を触媒の存在下エステル交換反応せしめ、得られる反応生成物を重縮合する方法、ジカルボン酸と過剰量のグリコールおよび低融点重合体セグメント成分を触媒の存在下エステル化反応せしめ、得られる反応生成物を重縮合する方法などのいずれの方法をとってもよい。
本発明に用いられる酸変性水添スチレンブロック共重合体(B)の少なくとも1つのビニル芳香族化合物重合体ブロック(c)は、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、o−エチルスチレン、およびo,p−ジクロルスチレンなどから重合されるブロックであり、これらの中ではスチレンが好ましく用いられる。
本発明に用いられる酸変性水添スチレンブロック共重合体(B)の少なくとも1つの共役ジエンブロック(d)は、ブタジエン、イソプレン、ブタジエン/イソプレン共重合体、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、およびクロロプレンなどから重合されるブロックであり、これらの中でもスチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、およびスチレン−イソプレン/ブタジエンブロック共重合体が好ましく用いられる。
本発明に用いられる酸変性水添スチレンブロック共重合体(B)は、上記したような少なくとも1つのビニル芳香族化合物重合体ブロック(c)と上記したような少なくとも1つの共役ジエンブロック(d)とからなり、さらに水素添加されている。
本発明に用いられる酸変性水添スチレンブロック共重合体(B)は、上記したような少なくとも1つのビニル芳香族化合物重合体ブロック(c)と上記したような少なくとも1つの共役ジエンブロック(d)とからなり、さらに水素添加されていて、そのうえ、かルボン酸基またはその誘導体基を含有する分子単位が結合している。このようなカルボン酸基またはその誘導体基の具体例としては、マレイン酸、ハロゲン化マレイン酸、イタコン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンド−シス−ビシクロ[2,2,1]−5ヘプテン−2,3−ジカルボン酸やこれらジカルボン酸の無水物、エステル、アミド、イミドおよぴアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸やこれらモノカルボン酸のエステル、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジルやアミドなどの誘導体が挙げられる。これらの中でも無水マレイン酸とメタクリル酸グリシジルが好ましい。
本発明に用いられるもう1つの成分である変性水添スチレンブロック共重合体(C)の少なくとも1つのビニル芳香族化合物重合体ブロック(c)は、上記したブロック共重合体(B)の重合体ブロック(c)と同様である。
また、本発明に用いられる変性水添スチレンブロック共重合体(C)の少なくとも1つの共役ジエンブロック(d)も、上記した酸変性水添スチレンブロック共重合体(B)の重合体ブロック(c)と同様である。
本発明に用いられる変性水添スチレンブロック共重合体(C)は、上記したような少なくとも1つのビニル芳香族化合物重合体ブロック(c)と上記したような少なくとも1つの共役ジエンブロック(d)とからなり、さらにアルコキシシリル基、アミノ基、アルコキシシリル基とアミノ基の両者を含有する分子単位から選ばれた1種以上が結合したうえ、水素添加されている。すなわち、本発明に用いられる変性水添スチレンブロック共重合体(C)は、上記したような少なくとも1つのビニル芳香族化合物重合体ブロック(c)と上記したような少なくとも1つの共役ジエンブロック(d)とからなり、アルコキシシリル基を含有する分子単位が結合しているうえ、水素添加されているもの(C1)、上記したような少なくとも1つのビニル芳香族化合物重合体ブロック(c)と上記したような少なくとも1つの共役ジエンブロック(d)とからなり、アミノ基を含有する分子単位が結合しているうえ、水素添加されているもの(C2)、上記したような少なくとも1つのビニル芳香族化合物重合体ブロック(c)と上記したような少なくとも1つの共役ジエンブロック(d)とからなり、アルコキシシリル基とアミノ基の両者を含有する分子単位が結合しているうえ、水素添加されているもの(C3)、の中から選ばれた1種以上のものである。
本発明に用いられる変性水添スチレンブロック共重合体(C)は、例えば特開2003−155385号公報に開示されている。アルコキシシリル基を含有する分子単位を結合させるためには、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、1−トリメチルシリル−2−ジメトキシ−1−アザ−2−シランシクロペンタン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルメトキシシラン、トリメチルシロキシトリフェノキシシラン、トリメチルシロキシクリメトキシシラン、トリメチルシロキシトリエトキシシラン、トリメチルシロキシトリブトキシシラン、および1,1,3,3−テトラメチル−1−フェノキシジシロキサンなどが使用される。また、アミノ基を含有する分子単位を結合させるためには、共役ジエンと芳香族ビニル化合物を、3−リチオ−1−[N,N−ビス(トリメチルシリル)]アミノプロパン、2−リチオ−1−[N,N−ビス(トリメチルシリル)]アミノエタン、3−リチオ−2,2−ジメチル−1−[N,N−ビス(トリメチルシリル)]アミノプロパンなどのアミノ基を有する有機アルカリ金属化合物の存在下で重合する方法、共役ジエンとp−[N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ]スチレン、p−[N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノメチル]スチレン、p−{2−[N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ]エチル}スチレンなどのアミノ基を有する不飽和単量体またはこれらと芳香族ビニル化合物とを有機アルカリ金属化合物の存在下で重合する方法、および共役ジエンまたは共役ジエンと芳香族ビニル化合物を有機アルカリ金属化合物の存在下で重合し、得られた共役ジエン系重合体に、N−ベンジリデンメチルアミン、N−ベンジリデンブチルアミン、N−ベンジリデンアニリンなどを反応させる方法が用いられる。
本発明に用いられる変性水添スチレンブロック共重合体(C)は、以上のような方法によってアルコキシシリル基、アミノ基、あるいはアルコキシシリル基とアミノ基の両者を含有する分子単位を結合させた後、水素添加される。
本発明に用いられる変性水添スチレンブロック共重合体(C)は、少なくとも1つのビニル芳香族化合物重合体ブロック(c)と少なくとも1つの共役ジエンブロック(d)とからなるブロック共重合体に、アルコキシシリル基、アミノ基、またはアルコキシシリル基とアミノ基の両者を含有する分子単位が結合したブロック共重合体を水素添加したブロック共重合体であるが、その一部にポリオレフィンブロックを有していてもよい。このようなポリオレフィンブロックしては、ポリエチレンブロック、ポリプロピレンブロック、ポリエチレン/ポリプロピレン共重合ブロックなどが挙げられる。
本発明に用いられるもう1つの成分である水添スチレンブロック共重合体(D)の少なくとも1つのビニル芳香族化合物重合体ブロック(c)は、上記した変性水添スチレンブロック共重合体(B)の重合体ブロック(c)と同様である。
また、本発明に用いられる水添スチレンブロック共重合体(D)の少なくとも1つの共役ジエンブロック(d)も、上記した変性水添スチレンブロック共重合体(B)の重合体ブロック(c)と同様である。
本発明に用いられる水添スチレンブロック共重合体(D)は、上記したような少なくとも1つのビニル芳香族化合物重合体ブロック(c)と、上記したような少なくとも1つの共役ジエンブロック(d)とからなり、さらに水素添加されている。
本発明の熱可塑性エラストマ樹脂組成物においては、主として結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a)と、主として脂肪族ポリエーテル単位からなる低融点重合体セグメント(b)とを主たる構成成分とするポリエステルブロック共重合体(A)50〜85重量%、好ましくは55〜80重量%、さらに好ましくは60〜75重量%に対し、少なくとも1つのビニル芳香族化合物重合体ブロック(c)と少なくとも1つの共役ジエンブロック(d)とからなり水素添加されているブロック共重合体にカルボン酸基またはその誘導体基を含有する分子単位が結合した酸変性水添スチレンブロック共重合体(B)5〜45重量%と、少なくとも1つのビニル芳香族化合物重合体ブロック(c)と少なくとも1つの共役ジエンブロック(d)とからなるブロック共重合体にアルコキシシリル基を含有する分子単位が結合したブロック共重合体を水素添加したブロック共重合体(C1)、少なくとも1つのビニル芳香族化合物重合体ブロック(c)と少なくとも1つの共役ジエンブロック(d)とからなるブロック共重合体にアミノ基を含有する分子単位が結合したブロック共重合体を水素添加したブロック共重合体(C2)、少なくとも1つのビニル芳香族化合物重合体ブロック(c)と少なくとも1つの共役ジエンブロック(d)とからなるブロック共重合体にアルコキシシリル基とアミノ基を含有する分子単位が結合したブロック共重合体を水素添加したブロック共重合体(C3)の中から選ばれた1種以上の変性水添スチレンブロック共重合体(C)5〜45重量%とを、(B)+(C)の合計量が50〜15重量%、好ましくは45〜20重量%、さらに好ましくは40〜25重量%であり、(A)+(B)+(C)の合計量が100重量%となるように配合する。ポリエステルブロック共重合体(A)の配合量が上記の範囲未満では、樹脂組成物の耐熱性、耐薬品性、耐ブロッキング性、復元性、離型性などが不十分となるばかりか、表層剥離を生じて成形品の外観が悪くなるため好ましくない。また、ポリエステルブロック共重合体(A)の配合量が上記の範囲を越えると、柔軟性が低下するばかりか、ポリプロピレン樹脂に対する熱接着性が不十分となるため好ましくない。
本発明の熱可塑性エラストマ樹脂組成物において、ポリエステルブロック共重合体(A)と、酸変性水添スチレンブロック共重合体(B)と、変性水添スチレンブロック共重合体(C)と、水添スチレンブロック共重合体(D)とを配合する場合は、前記ポリエステルブロック共重合体(A)50〜85重量%、好ましくは55〜80重量%、さらに好ましくは60〜75重量%に対し、酸変性水添スチレンブロック共重合体(B)5〜45重量%と、変性水添スチレンブロック共重合体(C)5〜45重量%と、少なくとも1つのビニル芳香族化合物重合体ブロック(c)と少なくとも1つの共役ジエンブロック(d)とからなり水素添加されている水添スチレンブロック共重合体(D)5〜45重量%とを、(B)+(C)+(D)の合計量が50〜15重量%、好ましくは45〜20重量%、さらに好ましくは40〜25重量%であり、(A)+(B)+(C)+(D)の合計量が100重量%となるように配合する。ポリエステルブロック共重合体(A)の配合量が上記の範囲未満では、樹脂組成物の耐熱性、耐薬品性、耐ブロッキング性、復元性、離型性などが不十分となるばかりか、表層剥離を生じて成形品の外観が悪くため好ましくない。また、ポリエステルブロック共重合体(A)の配合量が上記の範囲を越えると、柔軟性が低下するばかりか、ポリプロピレン樹脂に対する熱接着性が不十分となるため好ましくない。
本発明の熱可塑性エラストマ樹脂組成物においては、JIS K7113に記載された方法に従って測定した10%引張強さが0.5〜6MPaであることが好ましく、さらには0.5〜4MPaであることが、またさらには0.5〜2MPaであることが好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマ樹脂組成物においては、以下の方法で測定した残留変形量が6mm以下であることが好ましく、さらには4mm以下であることが好ましく、またさらには2mm以下であることが好ましい。
(測定方法:縦125mm、横75mm、厚さ2mmの角板試験片を射出成形し、その角板試験片から打ち抜いた縦80mm、横20mm、厚さ2mmの短冊型試験片を、チャック間距離60mmのデマッチャ屈曲疲労試験機にセットし、室温において5Hzのサイクルにてチャック間距離60mmから30mmの移動で3000回の屈曲変形を与えた後、デマッチャ屈曲疲労試験機から試験片をはずし、変形した試験片が山型になるように平面上に置き、解放5分後に、平面から試験片の山型に変形した頂点における試験片下辺までの距離を測定して残留変形量を求める。)
本発明の熱可塑性エラストマ樹脂組成物においては、以下の方法で測定したポリプロピレン樹脂に対する熱接着力が1MPa以上、好ましくは・・・以上である。
(測定方法:ポリプロピレン樹脂を使用してJIS K7113で定められたJIS 2号型ダンベル試験片を射出成形により作成し、この試験片を中央で半分の長さに切断し、その試験片の一方を、JIS 2号型ダンベル試験片を成形するための金型内キャビティにセットした後、本発明の熱可塑性エラストマ樹脂組成物を用いてシリンダー温度230℃、型温50℃で射出成形する。得られた成形品を室温にて1日放置した後、歪み速度60%/分で引張ってウェルド強度を測定し、このウェルド強度をポリプロピレン樹脂に対する熱接着力とする。)
また、本発明の熱可塑性エラストマ樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲であれば、公知のヒンダードフェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系、アミン系などの酸化防止剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系などの耐光剤、ポリオレフィン系ワックス、脂肪族アミド化合物、脂肪族エステル化合物、脂肪酸金属塩などのアンチブロッキング剤、炭酸カルシウム、タルクなどの結晶化核剤、フタル酸エステル系、ベンゾエート系、トリメリット酸エステル系、ピロメリットエステル系などの可塑剤、パラフィン系オイルやナフテン系オイルなどのゴム用軟化剤、染料や顔料などの着色剤、酸化チタン、カーボンブラックなどの紫外線遮断剤、ガラス繊維やカーボンファイバー、チタン酸カリウムウィスカーなどの補強剤、難燃剤、発泡剤、接着剤、接着助剤、蛍光剤、架橋剤、および界面活性剤などを任意に含有せしめることができる。
本発明の熱可塑性エラストマ樹脂組成物は、柔軟でありながらペレット間のブロッキングがないためハンドリング性に優れ、復元性に優れるため繰り返し折り曲げても折癖がつくことがなく、離型性が良いため射出成形などの成形性に優れ、表層剥離やブリードアウトを生じないため成形品表面外観に優れ、さらに非極性硬質樹脂との熱接着性に優れるため、高性能の成形体、特にポリプロピレン樹脂を始めとする非極性硬質樹脂との複合成形体を提供することができることから、熱自動車、電子・電気機器、精密機器、および一般消費財用途の各種成形品などに有用であり、さらには、グリップ、チューブ、パッキン、ガスケット、クッション体、フィルム、およびシートなどにも適している。
また、本発明の熱可塑性エラストマ樹脂組成物からなる層と硬質樹脂層とを積層させてなる複合成形体を得ることも有用である。この場合に硬質樹脂層を構成する硬質樹脂としては、複合成形品の剛性を保持し、目的の機械的強度を有する樹脂であれば、特に限定されるものではないが、具体的には、ポリプロピレン樹脂が挙げられる。複合成形体は共押出成形法や、二色成形をはじめとする多色射出成形法、インサート成形法によるオーバーモールドなどによって製造される。本発明の熱可塑性エラストマ樹脂組成物は、ポリプロピレン樹脂との接着性に優れることから、本発明の複合成形体は、各種筐体、カバー、コネクター、グリップ、ローラー、キャスター、ホース、多層チューブなどに応用することができる。本発明の熱可塑性エラストマ樹脂組成物は、特にポリプロピレン樹脂との熱接着性に優れるため、自動車用途、特に自動車内装用途、具体的には、その一部が複合成形によってポリプロピレン樹脂に熱接着され、他方は自在に変形して繰り返し折り曲げ変形を受けるカバーなどに使用されるのに適している。
以下に実施例によって本発明の効果を説明する。なお、実施例中の%および部とは、ことわりのない場合すべて重量基準である。また、例中に示される物性は次のように測定した。
[融点]
差動走査熱量計(Du Pont社製DSC−910型)を使用して、窒素ガス雰囲気下、10℃/分の昇温速度で加熱した時の融解ピークの頂上温度を測定した。
[溶融粘度指数(MFR)]
ASTM D−1238にしたがって温度200℃、荷重2160gで測定した。
[ブロッキング性]
ペレット200gを、内寸が縦15cm×横7cm×高さ6cmの組立可能な箱型容器に入れ、ペレットの上に縦15cm×横7cmの板を乗せ、そこに16kgの荷重をかける。その状態で80℃の熱風オーブン中で20時間の熱処理を行う。試験後、箱型容器の側壁を取り除いて荷重をかけ、ブロッキング状態が崩れる最大荷重を測定した。
[表層剥離]
80℃で3時間乾燥したペレットを、温度200℃で射出成形することによって、長さ115mm、幅60mm、厚さ2mmの成形品を得た。成形品の表面に表層剥離が発生していないかどうかを肉眼で観察した。
[硬度(デュロメーターD)]
ASTM D−2240にしたがって測定した。
[機械的特性]
JIS K7113にしたがって、引張破断強度と引張破断伸度を測定した。
[10%引張強さ]
JIS K7113にしたがって測定した。
[残留変形量]
縦125mm、横75mm、厚さ2mmの角板試験片を射出成形し、その角板試験片から打ち抜いた縦80mm、横20mm、厚さ2mmの短冊型試験片を、チャック間距離60mmのデマッチャ屈曲疲労試験機にセットし、室温において5Hzのサイクルにてチャック間距離60mmから30mmの移動で3000回の屈曲変形を与えた後、デマッチャ屈曲疲労試験機から試験片をはずし、変形した試験片が山型になるように平面上に置き、解放5分後に、平面から試験片の山型に変形した頂点における試験片下辺までの距離を測定して残留変形量を求めた。
[離型性]
80℃で3時間乾燥した各ペレットを用いて、縦125mm、横75mm、厚さ2mmの角板試験片を、シリンダー温度230℃、金型温度50℃で射出成形する際に、角板試験片の金型からの取り出し易さを評価し、以下のように判定した。
○:角板試験片の全面が離型している。
△:角板試験片の一部が金型に密着している。
×:角板試験片の全面が金型に密着している。
[熱接着力]
ポリプロピレン樹脂として、”グランドポリプロ”J703W(グランドポリマ(株)製)を使用してJIS K7113で定められたJIS 2号型ダンベル試験片を射出成形により作成し、この試験片を中央で半分の長さに切断し、その試験片の一方を、JIS 2号型ダンベル試験片を成形するための金型内キャビティにセットした後、評価用樹脂組成物を用いてシリンダー温度230℃、型温50℃で射出成形した。得られた成形品を室温にて1日放置した後、歪み速度60%/分で引っ張ってウェルド強度を測定し、このウェルド強度をポリプロピレン樹脂に対する熱接着力とした。
[参考例]
[ポリエーテルエステルブロック共重合体(A−1)の製造]
ジメチルテレフタレート酸273部、1,4−ブタンジオール120部および数平均分子量約2000のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール723部を、チタンテトラブトキシド3部およびトリメリット酸無水物3部と共にヘリカルリボン型攪拌翼を備えた反応容器に仕込み、210℃で2時間30分加熱して、理論メタノール量の95%のメタノールを系外に留出させた。反応混合物に”イルガノックス”1330(チバガイギー社製ヒンダ−ドフェノ−ル系酸化防止剤)0.5部を添加した後、245℃に昇温し、次いで、50分かけて系内の圧力を27Paの減圧とし、その条件下で1時間50分重合をおこなった。得られたポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングによりペレットとした。
[ポリエーテルエステルブロック共重合体(A−2)の製造]
テレフタル酸329部、イソフタル酸96部、1,4−ブタンジオール403部および数平均分子量約1400のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール467部を、チタンテトラブトキシド2部と共にヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190〜225℃で3時間加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行なった。反応混合物に”イルガノックス”1098(チバガイギー社製ヒンダ−ドフェノ−ル系酸化防止剤)0.5部を添加した後、245℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を27Paの減圧とし、その条件下で2時間45分重合を行わせた。得られたポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングを行なってペレットとした。
表1にA−1、A−2の組成と物性を示す。
Figure 2005325233
[酸変性水添スチレンブロック共重合体(B)]
下記実施例において使用した酸変性水添スチレンブロック共重合体の内容および商品名を表2に示す。
Figure 2005325233
[変性水添スチレンブロック共重合体(C)]
下記実施例において使用した変性水添スチレンブロック共重合体の内容を表3に示す。
Figure 2005325233
[水添スチレンブロック共重合体(D)]
下記実施例において使用した水添スチレンブロック共重合体の内容および商品名を表4に示す。
Figure 2005325233
[実施例1〜8]
参考例で得られたポリエステルブロック共重合体(A−1)、(A−2)に、酸変性水添スチレンブロック共重合体(B−1)、変性水添スチレンブロック共重合体(C−1)、(C−2)、(C−3)、および必要に応じて水添スチレンプロック共重合体(D−1)、(D−2)、(D−3)を、表5に示す配合比率(重量%)でV−ブレンダーを用いて混合し、直径45mmで3条ネジタイプのスクリューを有する2軸押出機を用いて230℃で溶融混練し、ペレット化した。
これらのペレットを用いて、ブロッキングが崩れる荷重、表層剥離、ブリードアウト、融点、硬度、引張破断強度、引張破断伸度、10%引張強さ、残留変形量、離型性、ポリプロピレン樹脂との熱接着力を評価した結果を表5に併せて示す。
[比較例1〜7]
表5に示す配合比率(重量%)で、実施例1〜8と同様に溶融混練し、ペレット化した。実施例1〜8と同様に物性を評価した結果を表5に併せて示す。
Figure 2005325233
以上の結果より、実施例1〜8に示した本発明の熱可塑性エラストマ樹脂組成物は、柔軟でありながらペレット間のブロッキングがなく、残留変形量が小さく、離型性に優れ、表層剥離やブリードアウトを生じない。さらにポリプロピレン樹脂との熱接着性に優れる。これに対し、比較例1〜2に示した樹脂組成物は、柔軟でペレット間のブロッキングがなく、残留変形量も小さいが、ポリプロピレン樹脂との熱接着力が低かった。また、比較例3〜7に示した樹脂組成物は、柔軟で、ポリプロピレン樹脂との熱接着性も、ある程度認められるが、ペレット間のブロッキングが大きく、離型性も悪かった。さらに相溶性に劣るため、成形品表面に表層剥離が生じ、残留変形量を測定しようと試みると屈曲部に甚だしい層状剥離を生じた。
本発明の熱可塑性エラストマ樹脂組成物は、上記した優れた特性を活かして、熱自動車、電子・電気機器、精密機器、および一般消費財用途の各種成形品などに有用であり、さらには、グリップ、チューブ、パッキン、ガスケット、クッション体、フィルム、およびシートなどにも適している。
また、本発明の熱可塑性エラストマ樹脂組成物からなる成形体、なかでも本発明の熱可塑性エラストマ樹脂組成物からなる層と硬質樹脂層とを積層させてなる複合成形体、特にポリプロピレン樹脂との複合成形体は、各種筐体、カバー、コネクター、グリップ、ローラー、キャスター、ホース、多層チューブなどに応用することができる。

Claims (12)

  1. 主として結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a)と、主として脂肪族ポリエーテル単位からなる低融点重合体セグメント(b)とを主たる構成成分とするポリエステルブロック共重合体(A)50〜85重量%に対し、少なくとも1つのビニル芳香族化合物重合体ブロック(c)と少なくとも1つの共役ジエンブロック(d)とからなり水素添加されているブロック共重合体にカルボン酸基またはその誘導体基を含有する分子単位が結合した酸変性水添スチレンブロック共重合体(B)5〜45重量%と、少なくとも1つのビニル芳香族化合物重合体ブロック(c)と少なくとも1つの共役ジエンブロック(d)とからなるブロック共重合体にアルコキシシリル基を含有する分子単位が結合したブロック共重合体を水素添加したブロック共重合体(C1)、少なくとも1つのビニル芳香族化合物重合体ブロック(c)と少なくとも1つの共役ジエンブロック(d)とからなるブロック共重合体にアミノ基を含有する分子単位が結合したブロック共重合体を水素添加したブロック共重合体(C2)、および少なくとも1つのビニル芳香族化合物重合体ブロック(c)と少なくとも1つの共役ジエンブロック(d)とからなるブロック共重合体にアルコキシシリル基とアミノ基を含有する分子単位が結合したブロック共重合体を水素添加したブロック共重合体(C3)の中から選ばれた1種以上の変性水添スチレンブロック共重合体(C)5〜45重量%とを、(B)+(C)の合計量が50〜15重量%であり、(A)+(B)+(C)の合計量が100重量%となるように配合した熱可塑性エラストマ樹脂組成物。
  2. 前記ポリエステルブロック共重合体(A)50〜85重量%と、前記酸変性水添スチレンブロック共重合体(B)5〜45重量%と、前記変性水添スチレンブロック共重合体(C)5〜45重量%と、少なくとも1つのビニル芳香族化合物重合体ブロック(c)と少なくとも1つの共役ジエンブロック(d)とからなり水素添加されている水添スチレンブロック共重合体(D)5〜45重量%とを、(B)+(C)+(D)の合計量が50〜15重量%であり、(A)+(B)+(C)+(D)の合計量が100重量%となるように配合した熱可塑性エラストマ樹脂組成物。
  3. JIS K7113に記載された方法に従って測定した10%引張強さが0.5〜6MPaである請求項1または2に記載の熱可塑性エラストマ樹脂組成物。
  4. 以下の方法で測定した残留変形量が6mm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマ樹脂組成物。
    (測定方法:縦125mm、横75mm、厚さ2mmの角板試験片を射出成形し、その角板試験片から打ち抜いた縦80mm、横20mm、厚さ2mmの短冊型試験片を、チャック間距離60mmのデマッチャ屈曲疲労試験機にセットし、室温において5Hzのサイクルにてチャック間距離60mmから30mmの移動で3000回の屈曲変形を与えた後、デマッチャ屈曲疲労試験機から試験片をはずし、変形した試験片が山型になるように平面上に置き、解放5分後に、平面から試験片の山型に変形した頂点における試験片下辺までの距離を測定して残留変形量を求める。)
  5. 以下の方法で測定したポリプロピレン樹脂に対する熱接着力が1MPa以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマ樹脂組成物。
    (測定方法:ポリプロピレン樹脂を使用してJIS K7113で定められたJIS 2号型ダンベル試験片を射出成形により作成し、この試験片を中央で半分の長さに切断し、その試験片の一方を、JIS 2号型ダンベル試験片を成形するための金型内キャビティにセットした後、前記熱可塑性エラストマ樹脂組成物を用いてシリンダー温度230℃、型温50℃で射出成形する。得られた成形品を室温にて1日放置した後、歪み速度60%/分で引張ってウェルド強度を測定し、このウェルド強度をポリプロピレン樹脂に対する熱接着力とする。)
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマ樹脂組成物を射出成形してなる成形体。
  7. 前記成形体が複合成形体である請求項6に記載の成形体。
  8. 前記複合成形体が、硬質樹脂と請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマ樹脂組成物からなる複合成形体である請求項6に記載の成形体。
  9. 前記硬質樹脂がポリプロピレン樹脂である請求項7または8に記載の成形体。
  10. 自動車用である請求項6〜9のいずれか1項に記載の成形体。
  11. 自動車内装用である請求項6〜9のいずれか1項に記載の成形体。
  12. カバーである請求項6〜9のいずれか1項に記載の成形体。
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