JP2005320582A - ホウ素添加鉄系焼結合金の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた製造性及び加工性を有しつつ、構造部材として十分な強度及び耐摩耗性を備えたホウ素添加鉄系焼結合金を提供する。
【解決手段】黒鉛粉末を添加することなく、純鉄又は鉄系合金から成る粉末に0.1〜2.0質量%のホウ素を混合して、分散させた混合粉末を所定の形状に成形したのち、該成形体を焼結し、熱処理工程において上記焼結体に浸炭焼入れ焼戻して、マトリックス中に体積比で30%以下の鉄−ホウ素化合物Bが網目状に分散すると共に、この網目状化合物以外のマトリックスの表面側がマルテンサイト組織M、内部側がフェライト及び/又はパーライト組織となるようにする。
【選択図】図1
【解決手段】黒鉛粉末を添加することなく、純鉄又は鉄系合金から成る粉末に0.1〜2.0質量%のホウ素を混合して、分散させた混合粉末を所定の形状に成形したのち、該成形体を焼結し、熱処理工程において上記焼結体に浸炭焼入れ焼戻して、マトリックス中に体積比で30%以下の鉄−ホウ素化合物Bが網目状に分散すると共に、この網目状化合物以外のマトリックスの表面側がマルテンサイト組織M、内部側がフェライト及び/又はパーライト組織となるようにする。
【選択図】図1
Description
本発明は、構造用部材や摺動部材に好適に用いられる鉄系焼結合金の製造技術に係わり、特にホウ素を含有する鉄系焼結合金の製造方法と、このような方法によって製造したホウ素添加鉄系焼結合金に関するものである。
一般に、構造用として用いられる鉄系焼結合金は、鉄−炭素の2元系、又は鉄−銅−炭素の3元系をベースとし、さらに強度や耐摩耗性が要求される場合には、モリブデンやニッケルなどの合金元素を追加したり、熱処理条件を制御したりすることによって機械的性質を向上させている。
しかしながら、銅はリサイクル性が悪いことから、近年では銅代替元素の模索がなされている(例えば、非特許文献1参照)。
しかしながら、銅はリサイクル性が悪いことから、近年では銅代替元素の模索がなされている(例えば、非特許文献1参照)。
また、鉄系焼結合金の焼入れ性向上を目的として、300ppm以下のホウ素を含有させた例がある(例えば、特許文献1参照)。
さらに、鉄系焼結合金の剛性向上を目的として、マトリックス中にホウ化物を分散させた後に、焼結する手法が講じられている(例えば、特許文献2参照)。
黒木,Jornal of Japan Society of Powder and Powder Metallugy, Vol.48, No.4, p.293~304 特開平6−65693号公報
特開2002−285303号公報
さらに、鉄系焼結合金の剛性向上を目的として、マトリックス中にホウ化物を分散させた後に、焼結する手法が講じられている(例えば、特許文献2参照)。
黒木,Jornal of Japan Society of Powder and Powder Metallugy, Vol.48, No.4, p.293~304
しかしながら、上記特許文献に記載の方法によって、高強度、高剛性を備えた鉄系焼結合金材を得ようとすると、炭素を含有する材料に予めホウ素を添加して焼結処理を行うために、低融点の鉄−ホウ素−炭素3元共晶の発生によって、低温度で焼結が始まってしまい、著しく硬いホウ化物が生成する。
一般に、焼結材は、成形工程時の金型の形状によって、溶製材では得がたい複雑形状を得ることができることが特徴(いわゆる、ニアネットシェイプ)ではあるものの、実際には、仕上げ工程において切削加工を施すことによって、さらに厳しい寸法精度を満足させているのが現状である。したがって、著しく硬いホウ化物を含有する上記のような焼結合金材においては、後工程での加工が難しくなるために、加工コストの上昇を招くという問題がある。
本発明は、ホウ素を含有する従来の鉄系焼結合金における上記のような課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、優れた製造性及び加工性を有しつつ、構造部材として十分な強度及び耐摩耗性を備えたホウ素添加鉄系焼結合金を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく、原料粉末や焼結条件などについて鋭意検討した結果、原料粉末に含まれる炭素成分を極力低減することにより焼結時における鉄−ホウ素−炭素3元共晶の発生を抑えて、これによる高硬度ホウ素化合物の生成を抑制すると共に、原料粉末に基づく焼結合金中の炭素量不足を焼結後の浸炭処理によって補償することにより、上記の目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
本発明は上記知見に基づくものであって、本発明のホウ素添加鉄系焼結合金の製造方法においては、原料粉末混合工程において、黒鉛粉末を添加することなく、純鉄又は鉄系合金から成る粉末に0.1〜2.0質量%のホウ素を混合して、分散させ、この混合粉末を所定の形状に成形したのち、焼結工程において焼結した焼結体に、熱処理工程において浸炭焼入れ焼戻し処理を施すようにすることを特徴としている。
また、本発明のホウ素添加鉄系焼結合金は、上記方法によって製造され、鉄−ホウ素化合物が網目状に、且つ30%以下の体積比で存在すると共に、これ以外の部位が浸炭の程度に応じてマルテンサイト組織と、フェライト及び/又はパーライト組織であることを特徴としている。
本発明によれば、黒鉛粉末が添加されていない鉄−ホウ素系原料粉末を用いて成形した圧粉体を焼結するようにしているため、焼結時における鉄−ホウ素−炭素3元共晶の発生を抑えることができ、これに起因して生成する著しく硬度が高い鉄系ホウ素化合物(例えば、FeB,Fe2Bなど)を低減して、高硬度ホウ素化合物に起因する切削加工性の劣化を防止することができる。そして、焼結後に浸炭焼入れ焼戻し処理を施すようにしているので、原料粉末の炭素不足によって低下した焼結合金の機械的強度が向上し、所望の強度及び耐摩耗性を備えたホウ素添加鉄系焼結合金とすることができる。
以下、本発明のホウ素添加鉄系焼結合金の製造方法と共に、当該製造方法に基づいて製造された焼結合金の特徴について、さらに詳細に説明する。なお、本明細書において、「%」は特記しない限り質量百分率を意味するものとする。
本発明のホウ素添加鉄系焼結合金の製造方法においては、上記したように、鉄系粉末に黒鉛粉末を添加することなくホウ素を分散させた原料粉末を用いて成形し、これを焼結することによって、焼結工程における高硬度ホウ素化合物の生成を抑制し、炭素含有量が低下することによって生ずる強度、硬度の不足を焼結後の浸炭焼入れ焼き戻し処理によって補償し、所望の強度及び耐摩耗性を確保するようにしているが、当該ホウ素添加鉄系焼結合金に切削加工を施して、焼結部材を製造するに当たっては、予め浸炭焼入れ焼戻し処理による寸法変化を把握した上で、上記焼結工程の後、且つ熱処理工程の前に切削加工を施すようにすることができ、これによって、より容易に切削加工を施すことができるようになり、加工コストのさらなる低減が可能になる。
本発明においてホウ素は、焼結合金の焼入性向上及び高硬度の鉄−ボロン化合物を得るために必須の元素であって、0.1〜2.0%の範囲で原料粉末中に混合し、分散させる必要がある。すなわち、ホウ素の添加量が0.1%に満たない場合には、このような焼入れ性向上効果が十分に得られず、逆に2.0%を超えて添加された場合には、焼結合金に脆化傾向が認められるようになることによる。
なお、上記ホウ素の原料としては、できるだけ炭素含有量の少ないものが望ましく、例えば、電解ホウ素のようなホウ素を単独で含有する材料や、フェロボロン粉末を用いることが望ましい。
なお、上記ホウ素の原料としては、できるだけ炭素含有量の少ないものが望ましく、例えば、電解ホウ素のようなホウ素を単独で含有する材料や、フェロボロン粉末を用いることが望ましい。
本発明においては、上記したように、黒鉛粉末の添加を避け、もって鉄−ホウ素−炭素3元共晶の発生や、これによる高硬度ホウ素化合物の生成を抑えるようにしているが、このような3元系共晶の発生を抑制し、高硬度ホウ素化合物の生成をさらに低減するためには、黒鉛粉末を添加しないことに加えて、鉄系粉末やホウ素材料粉末などから成る原料粉末に含まれる炭素量についても極力低減することが好ましく、著しく硬い上記ホウ素化合物の生成を防止するためには、原料粉末に含まれる炭素量を0.1%以下とすることが望ましい。
また、本発明においては、靭性や硬度などを向上させる目的で、上記原料粉末の混合に際して、原料粉末中にホウ素に加えて、Ni、Mo、Cu、Crなどの合金元素を下記の範囲で添加することも可能である。
この場合、これら合金元素は、合金成分としてこれら元素を予め含有している鉄系合金の粉末を使用することや、鉄粉中にホウ素材料と共に、これら合金元素を高濃度に含有する合金鉄や純金属の粉末を混合することによって添加することができる。なお、これら原料についても、炭素含有量のできるだけ少ないものが望ましいことは言うまでもない。
この場合、これら合金元素は、合金成分としてこれら元素を予め含有している鉄系合金の粉末を使用することや、鉄粉中にホウ素材料と共に、これら合金元素を高濃度に含有する合金鉄や純金属の粉末を混合することによって添加することができる。なお、これら原料についても、炭素含有量のできるだけ少ないものが望ましいことは言うまでもない。
Ni:1.0〜10%
Niの添加によって靭性向上の効果が得られるが、多量に加えると残留オーステナイトが生成し、基地強度の低下を招くことから、1.0〜10%の範囲で添加することが望ましい。
Niの添加によって靭性向上の効果が得られるが、多量に加えると残留オーステナイトが生成し、基地強度の低下を招くことから、1.0〜10%の範囲で添加することが望ましい。
Mo:0.1〜20%
Moは、焼結時、熱処理時に高硬度の基地を得るために添加され、主にNiとの複合添加によって拡散接合が促進され、強度の向上効果が得られる。但し、20%を超えると焼結時の拡散が不十分となって強度が低下する惧れがあるので、0.1〜20%の範囲で添加することが好ましい。
Moは、焼結時、熱処理時に高硬度の基地を得るために添加され、主にNiとの複合添加によって拡散接合が促進され、強度の向上効果が得られる。但し、20%を超えると焼結時の拡散が不十分となって強度が低下する惧れがあるので、0.1〜20%の範囲で添加することが好ましい。
Cu:0.1〜5.0%
Cuには、焼結時における液相の発生を促し、強度を向上させる効果があるが、リサイクル性に劣るため、添加量の上限を5.0%とすることが望ましい。
Cuには、焼結時における液相の発生を促し、強度を向上させる効果があるが、リサイクル性に劣るため、添加量の上限を5.0%とすることが望ましい。
Cr:0.1〜20%
Crは、焼結時又は熱処理時に炭素と反応し、高硬度の炭化物を形成させて耐摩耗性を向上させる効果があり、基地のフェライト化作用を利用してステンレス系焼結材料として一般的に用いられるが、添加しすぎると耐酸化性を著しく低下させる可能性があるため、0.1〜20%の範囲で添加することが望ましい。
Crは、焼結時又は熱処理時に炭素と反応し、高硬度の炭化物を形成させて耐摩耗性を向上させる効果があり、基地のフェライト化作用を利用してステンレス系焼結材料として一般的に用いられるが、添加しすぎると耐酸化性を著しく低下させる可能性があるため、0.1〜20%の範囲で添加することが望ましい。
本発明の焼結合金製造方法の焼結工程においては、1100〜1200℃の温度範囲で焼結を実施することが望ましい。すなわち、1100℃に満たない焼結温度では、本発明のような鉄系焼結合金の焼結が効率的に進まず、1200℃を超えるような温度で焼成しようとすると、対応可能な焼結設備が限定され、既存の設備を使用することができないことがあることによる。
なお、焼結工程における雰囲気としては、真空中で行うことが望ましいが、大気、アンモニア、水素雰囲気中でも可能である。但し、窒素ガス雰囲気中で焼結した場合には、窒化ホウ素(BN)が生成し、機械的性質を悪化させる原因となるので好ましくない。
なお、焼結工程における雰囲気としては、真空中で行うことが望ましいが、大気、アンモニア、水素雰囲気中でも可能である。但し、窒素ガス雰囲気中で焼結した場合には、窒化ホウ素(BN)が生成し、機械的性質を悪化させる原因となるので好ましくない。
また、本発明の焼結合金製造方法においては、熱処理工程における浸炭処理に際して、カーボンポテンシャルが0.2〜1.0%の範囲内である炉内雰囲気で行うことが望ましい。すなわち、浸炭処理後における焼結合金の炭素等量としては、通常0.3〜0.8%となるようにしており、炉内カーボンポテンシャルが0.2%未満の場合には、十分な表面硬度が得られず、逆に炉内カーボンポテンシャルが1.0%を超えた場合には、極度に硬度が高くなって、焼結合金が脆くなる傾向があることによる。
本発明のホウ素添加鉄系焼結合金は、上記製造方法に基づいて製造することができ、熱処理工程における浸炭焼入れ焼戻しによって、マトリックス中に鉄−ホウ素化合物が網目状に存在すると共に、この網目状化合物以外の部位には、浸炭による影響の程度に応じて、表面側にはマルテンサイト及び/又はソルバイト(焼戻しマルテンサイト)組織が存在し、内部側にはフェライト及び/又はパーライト組織が存在する組織構成となる。
すなわち、鉄−ホウ素化合物がマトリックス中に網目状に分散し、しかも浸炭焼入れ焼戻し処理によって、表面側の残部マトリックスがマルテンサイトや焼戻しマルテンサイトとなることによって、構造部材としての十分な強度と、摺動部材としても有効な表面硬度を確保することができる。
このとき、網目状の上記鉄−ホウ素化合物としては、体積比で30%以下であることが望ましく、これによって、後工程における加工性を劣化させたり、焼結合金の延性を著しく損なったりすることなく、優れた強度及び硬度と共に、耐摩耗性を備えたホウ素添加鉄系焼結合金を得ることができる。
このとき、網目状の上記鉄−ホウ素化合物としては、体積比で30%以下であることが望ましく、これによって、後工程における加工性を劣化させたり、焼結合金の延性を著しく損なったりすることなく、優れた強度及び硬度と共に、耐摩耗性を備えたホウ素添加鉄系焼結合金を得ることができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されることはない。
(実施例1〜9)
水噴霧純鉄粉末(C含有量:0.05%)及びフェロボロン粉末(C含有量:0.005%)を原料粉末として使用し、ホウ素添加量がそれぞれ0.5%、1.0%、1.5%と成るように混合し、十分に分散させた後、得られた混合粉末を幅10mm×高さ5mm×長さ35mmとなるように成形した。
水噴霧純鉄粉末(C含有量:0.05%)及びフェロボロン粉末(C含有量:0.005%)を原料粉末として使用し、ホウ素添加量がそれぞれ0.5%、1.0%、1.5%と成るように混合し、十分に分散させた後、得られた混合粉末を幅10mm×高さ5mm×長さ35mmとなるように成形した。
次に、得られた各成形体を大気中で1150℃、1160℃、1170℃の温度でそれぞれ焼結し、その後、カーボンポテンシャル0.8%のもとで、900℃×60分の浸炭処理に続いて油中に焼入れ、さらに180℃×60分の焼戻し処理を施した。
なお、図1は、このようにして得られた焼結合金の表層部組織を示す模式図であって、これら実施例に係わる焼結合金の表面には、マトリックス中に鉄−ホウ素化合物Cが網目状に分散していると共に、残部マトリックスが焼入れ焼き戻しマルテンサイトMから成る組織を形成していることが確認された。
なお、図1は、このようにして得られた焼結合金の表層部組織を示す模式図であって、これら実施例に係わる焼結合金の表面には、マトリックス中に鉄−ホウ素化合物Cが網目状に分散していると共に、残部マトリックスが焼入れ焼き戻しマルテンサイトMから成る組織を形成していることが確認された。
(比較例1〜12)
上記実施例と同じ材料粉末を使用し、同様に混合した粉末を用いて、同様の成形及び焼結を行い、熱処理を行うことなく焼結体を得た。
上記実施例と同じ材料粉末を使用し、同様に混合した粉末を用いて、同様の成形及び焼結を行い、熱処理を行うことなく焼結体を得た。
(比較例13〜15)
上記実施例と同じ材料粉末に予め黒鉛粉末を添加して混合し、炭素含有量を0.6%とした粉末を用いて、同様の成形及び焼結を行い、熱処理を行うことなく焼結体を得た。
上記実施例と同じ材料粉末に予め黒鉛粉末を添加して混合し、炭素含有量を0.6%とした粉末を用いて、同様の成形及び焼結を行い、熱処理を行うことなく焼結体を得た。
そして、上記実施例及び比較例で作製したそれぞれの焼結体について、密度、抗折力及び表面硬度を測定した。その結果を表1に併せて示す。また、抗折力の測定結果をホウ素添加量で整理した結果を図2に示す。
上記の結果から明らかなように、比較例1〜12においては、ホウ素添加量が多く、焼結温度が高いほど、密度及び抗折力の各特性が向上しており、これらの中では、特にホウ素添加量:1.5%、焼結温度:1170℃の比較例9の特性が著しく向上していることが判明した。
これは、ホウ素の添加量が増加するにつれて、鉄とホウ素の共晶液相が存在し、焼結中における鉄原子の移動がし易くなるために、焼結が促進されることによると考えられる。また、焼結温度の上昇と共に、上記液相の発生が増加するためと考えられる。
これは、ホウ素の添加量が増加するにつれて、鉄とホウ素の共晶液相が存在し、焼結中における鉄原子の移動がし易くなるために、焼結が促進されることによると考えられる。また、焼結温度の上昇と共に、上記液相の発生が増加するためと考えられる。
一方、実施例1〜9においては、焼結後に浸炭焼入れ焼戻しの熱処理が行われていることから、密度は焼結のままの場合とほとんど同等でありながら、表層部に存在する焼入れ焼戻しマルテンサイト組織が有効に作用し、上記比較例の焼結合金に較べて抗折力と表面硬度の上昇が認められた。
また、比較例13〜15に場合には、鉄−炭素−ホウ素3元共晶の発生によって焼結が促進され、焼結工程後に炭素を添加しなかったものに較べて高硬度の材料が得られるが、切削性が著しく劣るという欠点が確認された。
すなわち、図3は、焼結温度が1170℃である実施例9(浸炭焼入れ焼戻し)、比較例12(黒鉛添加なし、熱処理なし)及び比較例15(黒鉛添加、熱処理なし)の切削性について、30mmφの円管テストピースを用いて、超硬バイトで0.05mm/revで送り込んだ際の工具の摩耗量で比較調査した結果を示すものであって、比較例15に係わる焼結合金の切削性が他と較べて大幅に劣ることが判る。なお、実施例9の場合、浸炭焼入れ焼戻し後の仕上げ加工は不要であるが、難切削性の鉄−ホウ素化合物の分散割合が上記比較例15の焼結合金に較べて少なく、工具摩耗量が少ない結果となった。
すなわち、図3は、焼結温度が1170℃である実施例9(浸炭焼入れ焼戻し)、比較例12(黒鉛添加なし、熱処理なし)及び比較例15(黒鉛添加、熱処理なし)の切削性について、30mmφの円管テストピースを用いて、超硬バイトで0.05mm/revで送り込んだ際の工具の摩耗量で比較調査した結果を示すものであって、比較例15に係わる焼結合金の切削性が他と較べて大幅に劣ることが判る。なお、実施例9の場合、浸炭焼入れ焼戻し後の仕上げ加工は不要であるが、難切削性の鉄−ホウ素化合物の分散割合が上記比較例15の焼結合金に較べて少なく、工具摩耗量が少ない結果となった。
本発明によれば、焼結処理後に切削加工を行えば、浸炭焼入れ焼戻しを施しても、収縮による寸法変化を少なく抑えることが可能なため、仕上げ加工を要することなく、寸法精度が高く、高強度かつ表面硬度の優れた焼結合金部材を得ることができる。
また、焼結条件は、従来の量産条件から逸脱するものではなく、同等のコストでありながら、ホウ素添加量の増減により、硬質相を任意の割合で分散させ、浸炭処理を施すことによって表面硬度を確保した材料を提供することができる。
また、焼結条件は、従来の量産条件から逸脱するものではなく、同等のコストでありながら、ホウ素添加量の増減により、硬質相を任意の割合で分散させ、浸炭処理を施すことによって表面硬度を確保した材料を提供することができる。
V 空孔
C 鉄−ホウ素化合物
M マルテンサイト
C 鉄−ホウ素化合物
M マルテンサイト
Claims (8)
- 純鉄又は鉄系合金から成る粉末に黒鉛粉末を添加することなく少なくともホウ素を質量比で0.1〜2.0%分散させる原料粉末混合工程と、該混合工程で得られた混合粉末を所定の形状に成形する成形工程と、該成形工程で得られた成形体を焼結する焼結工程と、該焼結工程で得られた焼結体に浸炭焼入れ焼戻し処理を施す熱処理工程を含むことを特徴とするホウ素添加鉄系焼結合金の製造方法。
- 上記原料粉末混合工程において、ホウ素がフェロボロン粉末又はホウ素単独の状態で混合されることを特徴とする請求項1に記載のホウ素添加鉄系焼結合金の製造方法。
- 原料粉末に含まれる炭素量が0.1質量%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のホウ素添加鉄系焼結合金の製造方法。
- 上記焼結工程における焼結温度が1100〜1200℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載のホウ素添加鉄系焼結合金の製造方法。
- 上記熱処理工程における炉内カーボンポテンシャルが0.2〜1.0%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載のホウ素添加鉄系焼結合金の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の方法により製造されたことを特徴とするホウ素添加鉄系焼結合金。
- 網目状をなす鉄−ホウ素化合物が30%以下の体積比で存在すると共に、当該化合物以外の部位が浸炭による影響の程度に応じてマルテンサイト組織とフェライト及び/又はパーライト組織となっていることを特徴とする請求項6に記載のホウ素添加鉄系焼結合金。
- 請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の方法により製造されたホウ素添加鉄系焼結合金から成る焼結部材を製造するに際し、上記熱処理工程において浸炭焼入れ焼戻し処理を施す前に、焼結工程で得られた焼結体に機械加工を施すことを特徴とするホウ素添加鉄系焼結部材の製造方法。
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