本発明は、車両用電動操舵アクチュエータおよびその装置に関するものでり、モータの回転運動を双方向の直線運動に変換する機構は、主として車両用と適用しているが、一般的なリニアアクチュエータにも適用可能である。
自動車には「走る」、「曲がる」、「止まる」の3つの基本性能がある。これらのうち、「曲がる」機能をつかさどるのが、操舵装置(以下、ステアリングと称す)である。ステアリングは自動車とドライバとの接点であるため、ドライバの負荷を緩和するためのステアリング操舵力の軽減は重要な課題である。このため、ステアリングのパワーアシストの研究は1900年代の初頭から脈々と続けられ、現在では、パワーステアリングは車にとって必要不可欠な装置になっている。
パワーステアリングの方式としては、エンジンによってオイルポンプを回し、発生したオイルの圧力を利用する油圧式が最も早く実用化された。欧米では1920年代には重量トラックやバスに取り付けられ、1950年代には乗用車へ普及し始めた。また、日本においては1960年代に乗用車へ普及し始め、現在に至っている。
一方、モータによって操舵する電動パワーステアリング(以下、EPSと称す)が1980年代後半に商品化され、近年急速に普及しつつある。EPSには、EPSには、(1)電動モータを用いてオンデマンドでパワーアシストを行うので燃費が向上する、(2)油圧配管系を必要とせず、電源カプラーオンで搭載可能なためカーメーカでの組み立てコストを大幅に低減できる、(3)環境に有意な作動油を使わないドライシステム、(4)SBWへの発展性、などのメリットがある。
EPSには電動モータのパワーアシスト力をハンドルコラムに伝えるコラムアシスト型、ステアリングギヤのピニオンに伝えるピニオンアシスト型、高強度のアシスト専用のピニオン、あるいはボールねじを介して直接ラックに伝えるラックアシスト型がある。大型車への搭載を考えるとコラムアシスト、ピニオンアシスト型では軸強度、ピニオンギヤの歯面強度を確保することが困難である。このため、大型車両についてはラックアシスト型が好適である。
また、非特許文献1にて述べられているように今後電子技術が進展し、ステアリングコラム、ピニオンなどの機械的結合を無くして、ドライバの操舵操作をセンサで検出し、その情報に基づいて操舵アクチュエータにてステアリングラックを駆動するような、いわゆるステアバイワイヤ(Steer By Wire)も導入されてくる。
ラックアシスト型のEPSは、ステアバイワイヤ用の操舵アクチュエータとしても対応可能である。
ラックアシスト型のEPSとしては、操舵入力を受け入れるピニオン軸と、これのピニオン部と係合するラック部を有し操向車輪と連動するラック軸と、このラック軸のラック部とは別の部分に形成されたボールスクリューのウォームと、このウォームとボールを介して係合する回転自在に軸受け支持されたボールナットと、前記ラック軸と同軸に配置されこのボールナットに出力を伝達する電動機と、制御信号によりこの電動機を制御する制御手段とを有する電機式動力操舵装置が特許文献1に開示されている。
また、電動アシスト用サーボモータは、ブラシの摩耗の問題もあって、モータ自体が故障しやすく、パワーアシストの方向が指示されるまでは停止させておく必要があるため、立ち上がりが遅くなるという問題もあった。そこで、特許文献2では、そもそもサーボモータを用いることをやめ、一方向にしか回転しないモータと、2種類のギヤ機構とを利用し、これらギヤ機構とモータとを電磁クラッチにて係脱切り換える構成の装置も提案されている。この構成であれば、モータを常時起動状態にしておくこともできるので、起動遅れはなくなり、サーボモータ特有の故障の問題も解消する。
さらに特許文献3では、電動モータと、ラック軸側に設けられ、前記電動モータに対してクラッチ機構を介して係合されたとき、ステアリングシャフトの回動に応じたアシスト力をラック軸自体に与えるアシスト機構とを備える電動式パワーステアリング装置において、前記電動モータとして、一方向へだけ回転するモータを用い、前記クラッチ機構を、該電動モータの回転力を左操舵のアシスト力として前記アシスト機構を機能させる第1の係合状態と、該電動モータの回転力を右操舵のアシスト力として前記アシスト機構を機能させる第2の係合状態とをとり得る機構として構成し、前記ステアリングシャフトの回動運動を直線運動に変換すると共に、該直線運動を前記クラッチ機構に伝達し、該クラッチ機構を前記第1の係合状態、第2の係合状態及び離脱状態の間で切り換えるメカニカル切換機構を備えたことを特徴とする。
特開昭60-25854号公報
実公昭43−19859号公報
特開平6−144246号号公報
ステアバイワイヤにおける操舵制御に関する研究 自動車技術会論文集VOL.31、No.2 Page.53-58 2000
一方、回転−直動変換機構にボールねじ機構を使う場合、ボールネジのピッチによりモータ一回転あたりの直動量が決定される。ピッチを小さくするとモータ一回転あたりの直動量が小さくなり、同一容量のモータでも大きな推力(アシスト力)を得ることができる。ところが、ボールねじをステアリングラックとして使う場合を考えると、10000(N)以上の推力を発生する必要があり、この荷重を受けるためにはボール径がある程度以上必要となる。もちろんピッチはボール径以上必要となり、結果としてピッチの縮小には限界がある。大型車両への対応を考えた場合、モータとボールねじナットの間に減速機構を入れる必要がある。
一方、パワーアシスト力を発生する車載用の低コスト電動モータは直流モータである場合が多い。一般に直流モータの速度特性としては、ロック時に最高トルクを発生し、最高回転数でトルクゼロとなる。したがって高効率の回転数が最高回転数のほぼ半分近辺にあるのに対して、高トルクの回転数がロック近辺にあるという状況になる。このため直流モータを使用したパワーステアリングにおいては、たとえばモータの回転を歯車減速機構で大きく減速したのちにボールネジなどを介してラック軸に伝達する必要がある。特許文献1のようにモータをラックと同軸におく場合、大減速比を得るためには、減速機構が複雑となるとともに、モータの回転が減速機構にて消費される伝達ロスが大きく、大容量のモータが必要となる。さらに多数の歯車減速機を使うと騒音が発生するとともに、バックラッシュが発生し、リニアな操舵アシストができなくなる。さらに減速比が大きくなると、モータによるアシストをオフにしてステアリングを戻すときに、回転慣性による応答遅れが違和感となり、フィーリングの悪化につながる。
また、特許文献2、3に開示されているような、ひとつのモータを常に一方向に回転させておく方法では、起動遅れはなくなり、サーボモータ特有の故障の問題も解消する。しかしながら2つのねじナットを有し、左右の操舵に応じて、クラッチの断続を行う方法では、摩擦部分を有するが故、耐久性が課題となると同時に、スムーズなトルクアシストを実現することは困難である。
また、立体駐車場などで階を移るときに良く行なうケースとして、舵角一定で、アシスト力がコンスタントに必要なときには、ねじナットが停止する必要がある。この状態では、ねじナットにクラッチで係合されたモータも、もちろん停止しているが、モータが停止した状態で大トルクを発生すると、特定の相の巻線、インバータ内の特定の相のパワートランジスタに大電流が流れ続けることとなり、発熱の問題が発生する。
以上をまとめると、本発明が解決しようとする課題は、複雑な歯車機構なくモータ一回転に対するラックの直動量を小さくとれる操舵アクチュエータを提供すること、および一定舵角であってもモータが停止せず、スムーズなトルクアシストが可能な操舵アクチュエータを提供する。
また上記に加え、ラックアシスト型EPS用のアクチュエータのみならずステアバイワイヤ用としても対応可能な操舵アクチュエータを提供することである。
本発明が解決しようとする課題は、複雑な歯車機構なくモータ一回転に対するラックの直動量を小さくとれる操舵アクチュエータおよびその制御装置を提供することにある。およびスムーズなトルクアシストが可能な操舵アクチュエータを提供することにある。
本発明は、ケーシングと、該ケーシング内に配設されたモータと、該モータによって回転駆動され、表面部にねじが形成され、回転と直動の両方が自在とされて前記ケーシングに軸受支持されたラックと、前記ねじに係合し、回転自在とされて前記ケーシングに軸受されたねじナットと、前記ラックが前記ねじと前記ねじナットの係合状態で回転するとき、前記ねじの回転速度と前記ねじナットの回転速度との相対速度を調速する調速装置とを備え、前記ラックは、調速された相対速度で回転して軸方向に直動し、直動運動を操舵力伝達部を介して被駆動体に伝達する操舵アクチュエータを提供する。
本発明は、更にケーシングと、該ケーシング内に配設されたモータと、該モータによって回転駆動され、表面部にねじが形成され、回転と直動の両方が自在とされて前記ケーシングに軸受支持されたラックと、前記ねじに係合し、回転自在とされて前記ケーシングに軸受されたねじナットと、前記ラックが前記ねじと前記ねじナットの係合状態で回転するとき、前記ねじの回転速度と前記ねじナットの回転速度との相対速度を可変調速する調速装置とを備え、前記ラックは、調速された相対速度で回転して軸方向に直動し、直動運動を操舵力伝達部を介して被駆動体に伝達する操舵アクチュエータを提供する。
本操舵アクチュエータは、ラックアシスト型EPS用のアクチュエータとして対応可能であると同時に、インターフェースとステアリングアクチュエータを信号線・電力線(ワイヤ)で結んだ、いわゆるステア・バイ・ワイヤシステムにも対応可能である。
本発明によれば、ケーシングの内部において、複雑な機構無く、ボールねじ自体の物理的ピッチに関わらずモータ一回転に対するラックの直動量を小さくとれるため、モータの小型化、高効率化を図れるとともに、安価な操舵アクチュエータが提供できる。
また、簡単な歯車のバックラッシュ吸収機構を有するため、パワーステアリングとして本操舵アクチュエータを採用する場合、ロストモーションが発生せず、リニアなステアフィールが得られる。
駆動騒音を低減できるため、車両に搭載した場合、質感の高い車が実現できる。
モータをオフにしてラックがもとの位置にもどる場合、ねじナットが回転することにより必ずしもモータおよびラックが回転しないため、パワーステアリングとして本操舵アクチュエータを採用する場合、回転慣性による応答遅れに起因する違和感が小さくフィーリングの良いステアフィールが得られる。
また、モータの反転を無くし、モータ回転と独立して、ラックの変位を調整できるため、モータの効率が高い回転数領域で使用可能であり、低消費電力化が可能である。また、調速機構を電気信号でオフとしている場合は、ボールねじ、ボールスプラインの転がり摩擦(微小)以外にはモータには負荷トルクが加わらないので、極低トルク・高回転領域で、電力をほとんど消費せず、アイドリング運転が可能となる。さらに操舵力指令に応じて左右ねじナットの減速トルクをオン・オフすることにより、従来の油圧パワーステアリングシステムと同様な、操舵スタンバイ制御が可能となる。また、左右ねじナットの減速トルクを滑らかに調整することにより操舵フィールの調整が可能となる。また、操舵アシスト力が不要となったとき(ステアリングを戻すとき)は、モータの回転に無関係でねじナットのみの回転でステアリングが戻ることができる。さらに、高速に戻すときは、それまで印加していたねじナットと逆のねじナットに減速トルクを加えることにより、さらにすばやいステアリングの戻りが可能となる。
本実施例が解決しようとする課題は、
1.複雑な歯車機構なくモータ一回転に対するラックの直動量を小さくとれる操舵アクチュエータを提供する。
2.駆動騒音を低減できる操舵アクチュエータを提供する。
3.簡単な歯車のバックラッシュ吸収機構を有する操舵アクチュエータを提供する。
4.回転慣性による違和感が小さくフィーリングの良い操舵アクチュエータを提供する。
5.モータが一方向に回転、待機が可能で耐久性が高く、一定舵角であってもモータが停止せず、スムーズなトルクアシストが可能な操舵アクチュエータを提供する。
また上記に加え、ラックアシスト型EPS用のアクチュエータのみならずステアバイワイヤ用としても対応可能な操舵アクチュエータを提供することである。
上記1の課題を解決するために、モータにより回転駆動され、回転と直動の両方が自在となるようにケーシングに軸受け支持されたねじと、前記ねじに係合し、 回転自在となるようにケーシングに軸受け支持されたねじナットと、前記ねじの回転と前記ナットの回転を調速する機構を有し、前記ねじのケーシングに対する軸方向の推力を操舵力とする。
また、前記ねじが軸方向にスプライン溝を有し、前記ねじに通され、ねじに対して回転せず、ねじの軸方向に、移動可能なスプラインナットを有し、前記モータはスプラインナットを回転駆動し、前記ナット回転を前記スプラインナットの回転と調速する。
また、前記ねじとねじナットとのあいだにボールを介在させたボールねじ機構が構成され、前記ねじとスプラインナットとのあいだにボールを介在させたボールスプラインが構成されている。
さらに前記ねじナットは、前記スプラインナットよりも低い回転に調速される。
そして前記調速機構が、前記スプラインナットと、ねじナットのそれぞれに取り付けられた歯車と、これらに係合する歯車で形成される歯車列である。
上記2の課題をよくよく解決するために、歯車列の一部あるいは全部が樹脂製の歯車とする。
上記3の課題を解決するために、歯車列の一部あるいは全部に、前記ねじと直角の方向に力を与える、バックラッシュ低減機構を有する。
上記4の課題を解決するために、前記調速機構がケーシングと相対速度を持たない静止部材から前記ねじナットに減速方向のトルクを与える。あるいは前記調速機構がスプラインナットの回転と調速された回転部材から、前記ねじナットに減速方向のトルクを与える。さらに前記調速機構が電気信号により減速方向のトルクを調整可能とする。そして前記調速機構が電磁ヒステリシスブレーキとする。
上記5の課題を解決するために、モータにより回転駆動され、回転と直動の両方が自在となるようにケーシングに軸受け支持された、右ねじ部分と左ねじ部分を有する複合ねじと、前記右ねじ部分に係合し、 回転自在となるようにケーシングに軸受け支持された右ねじナットと、前記左ねじ部分に係合し、 回転自在となるようにケーシングに軸受け支持された左ねじナットと、前記右ねじナットの回転を前記複合ねじの回転と調速する機構と、前記左ねじナットの回転を前記複合ねじの回転と調速する機構とを有し、前記複合ねじのケーシングに対する軸方向の推力を操舵力とする。
また、前記複合ねじが軸方向にスプライン溝を有し、前記複合ねじに通され、複合ねじに対して回転せず、複合ねじの軸方向に、移動可能なスプラインナットを有し、前記モータはスプラインナットを回転駆動し、前記右ねじナットの回転をスプラインナットの回転と調速し、前記左ねじナットの回転をスプラインナットの回転と調速する。
また、前記複合ねじの右ねじ部分と右ねじナットとのあいだと、前記複合ねじの左ねじ部分と左ねじナットとのあいだにボールを介在させたボールねじ機構が構成され、前記複合ねじとスプラインナットとのあいだにボールを介在させたボールスプラインが構成されている。
さらに、前記右ねじナット、あるいは左ねじナットの一方、あるいは両方が、前記スプラインナットと等速あるいはより低い回転に調速される。
さらに、前記右ねじ用、および左ねじ用の調速機構がケーシングと相対速度を持たない静止部材から、前記右、および左ねじナットに減速方向のトルクを与える手段である。
あるいは、前記調速機構がスプラインナットの回転と調速された回転部材から、前記ねじナットに減速方向のトルクを与える手段である。
そして、前記、右ねじナット用、および左ねじナット用の調速機構が電気信号により減速方向のトルクを調整可能である。
また、全記右ねじナット用の調速機構と全記左ねじナット用の調速機構に、それぞれ異なるタイミングで電気信号が入力する。
そして、前記調速機構が電磁ヒステリシスブレーキである。
さらに、上述の構成として、前記モータを反転せず、同方向に回す。また、そのモータは設定した任意の回転速度との偏差が小さくなるように制御する。
本実施例は、表面部に、ねじを構成するねじ溝および軸方向にスプライン溝を有するラックと、前記ねじ溝およびスプライン溝にそれぞれ配設されるねじボールおよびスプラインボールと、前記ラックの回転方向周囲に配設され、前記ねじボールおよびスプラインボールにそれぞれ係合するように形成され、前記ねじ溝およびスプライン溝と一体となって前記ねじボールおよびスプラインボールをそれぞれ収納する他方のねじ溝および他方のスプライン溝がそれぞれ形成されたねじナットと、回転駆動力を前記ラックに伝達するモータと、前記ねじの回転速度とねじナットの回転速度の比を1:r(r<1)に調速する調速装置とを備え、前記ラックは、調速された回転速度の比で回転して軸方向に直動し、直動運動を操舵力伝達部を介して被駆動体に伝達する操舵アクチュエータを構成する。
本実施例は、更に表面部に、ねじを構成するねじ溝および軸方向にスプライン溝を有するラックと、前記ねじ溝およびスプライン溝にそれぞれ配設されるねじボールおよびスプラインボールと、前記ラックの回転方向周囲に配設され、前記ねじボールおよびスプラインボールにそれぞれ係合するように形成され、前記ねじ溝およびスプライン溝と一体となって前記ねじボールおよびスプラインボールをそれぞれ収納する他方のねじ溝および他方のスプライン溝がそれぞれ形成されたねじナットおよびスプラインナットと、回転駆動力を前記ラックに伝達するモータと、前記ねじナットと前記スプラインナットとを接続し前記ねじの回転速度とねじナットの回転速度の比を1:r(r<1)に調速する調速装置とを備え、前記ラックは、調速された回転速度の比で回転して軸方向に直動し、直動運動を操舵力伝達部を介して被駆動体に伝達する操舵アクチュエータを構成する。
本実施例は、更に表面部に、ねじを構成するねじ溝および軸方向にスプライン溝を有するラックと、前記ねじ溝およびスプライン溝にそれぞれ配設されるねじボールおよびスプラインボールと、前記回転ラックの回転方向周囲に配設され、前記ねじボールおよびスプラインボールにそれぞれ係合するように形成され、前記ねじ溝およびスプライン溝と一体となって前記ねじボールおよびスプラインボールをそれぞれ収納する他方のねじ溝および他方のスプライン溝が形成されたねじナットと、回転駆動力を前記ラックに伝達するモータと、前記ねじナットにヒスカップを設けて該ヒスカップに磁気ヒステリシス材を取り付け、コア、ヨークおよびコイルから構成される回転体の該コアとヨークとの間の空隙に前記磁気ヒステリシス材を配設することによってブレーキ装置を構成して前記ラックの回転に対してブレーキトルクを付与するようになし、かつ前記ねじの回転速度とねじナットの回転速度の比を1:rに可変調速する調速装置とを備えた操舵アクチュエータを構成する。
本実施例は、更にケーシングと、該ケーシング内に配設されたモータと、表面部に、ねじを構成する右ねじ溝と左ねじ溝を有する複合ねじ溝および軸方向にスプライン溝を有して、前記モータによって回転駆動されるラックと、前記複合ねじ溝およびスプライン溝にそれぞれ配設されるねじボールおよびスプラインボールと、前記回転ラックの回転方向周囲に配設され、前記ねじボールおよびスプラインボールにそれぞれ係合するように形成され、前記複合ねじ溝および複合スプライン溝と一体となって前記ねじボールおよびスプラインボールをそれぞれ収納する他方の複合ねじ溝および他方の複合スプライン溝がそれぞれ形成された複合ねじナットと、前記複合ねじの回転速度と複合ねじナットのそれぞれの回転速度の比を1:r(r<1)に調速する調速装置とを備え、前記回転ラックは軸方向の推力を操舵力伝達部を介して被駆動体に伝達する操舵アクチュエータを構成する。
前記調速装置は、前記ラックに対してブレーキトルクを付与するそれぞれ複合ブレーキ装置を備えて構成され得る。
前記ブレーキ装置のブレーキトルクをオフする信号を生成する演算処理部を有する制御装置によって制御され得る。
本実施例は、更にケーシングと、該ケーシング内に配設されたモータと、表面部に、ねじを構成する右ねじ溝と左ねじ溝を有する複合ねじ溝および軸方向にスプライン溝を有して、前記モータによって回転駆動されるラックと、前記複合ねじ溝およびスプライン溝にそれぞれ配設されるねじボールおよびスプラインボールと、前記回転ラックの回転方向周囲に配設され、前記ねじボールおよびスプラインボールにそれぞれ係合するように形成され、前記複合ねじ溝およびスプライン溝と一体となって前記ねじボールおよびスプラインボールをそれぞれ収納する右ねじ溝と左ねじ溝を有する複合他方のねじ溝および他方のスプライン溝がそれぞれ形成された複合ねじナットと、前記複合ねじナットにそれぞれヒスカップを設けて該ヒスカップに磁気ヒステリシス材を取り付け、コア、ヨークおよびコイルから構成される回転体の該コアとヨークとの間の空隙に前記磁気ヒステリシス材を配設することによって複合ブレーキ装置を構成して前記複合スプラインナットの回転に対してブレーキトルクを付与するようになし、かつ前記複合ねじの回転速度と複合ねじナットの回転速度のそれぞれの比を1:rに可変調速する複合調速装置とを備えた操舵アクチュエータを構成する。
前記モータとしては、一方向にのみ回転駆動するモータをしようするのがよい。
前記モータとしては、いずれか一方向のみに回転駆動されるモータが使用され、該モータが作動している状態で、前記制御装置は、前記複合ブレーキ装置の双方が同時に作動する同時作動信号を生成するように構成される。
本発明は、通常のパワーステアリングへの操舵アクチュエータの適用である第1群の実施形態と、ステアバイワイヤへの操舵アクチュエータの適用である第2群の実施形態で構成されている。
以下、各実施形態の複数の実施例について、図面を用いて開示していく。
第1図は本発明の第1群の全体構成を示す図である。車両0にはパワーステアリング装置100が搭載されており、車両0中のステアリング1からコラム2を通じジョイント3を経由し、ラック11とかみ合うピニオン5により、ラックアンドピニオン機構で機械的に結合されている。運転者のステアリング1の回転動作は、ラック11の直動運動に変換され、アーム7を経由し、ジョイント8を通じて車輪側のアップライト(図示せず)に伝えられ、タイヤ30が操舵される。ラック11にはねじ溝とスプライン溝が切られており(図1では省略)、図2以降に示す操舵アクチュエータ10により、並進方向の推力(アシスト力)が加えられる。コントローラ20は、操舵センサ4で検出される操舵トルク、舵角などに基づいて操舵アクチュエータ10に操舵力制御指令(信号および電力)を出力する。図1では省略しているが、操舵アクチュエータには、電機モータ(モータ)120が組み込まれている。コントローラ20からの指令に基づいて図示しない電源入力によりモータ120が回転し、操舵アクチュエータ10内の回転-直動変換機構によりラック(回転ラック)11の直動に変換される。
以下、図2、5、6、10を用いて、操舵アクチュエータ10についての4つの実施例を示すが、第1群の実施形態における操舵アクチュエータ自体の働きは上述のとおりである。
図2は、操舵アクチュエータ機構の第一の実施例である操舵アクチュエータ10の回転−直動変換機構を示す図である(この機構が図1の10部分の構造である)。
図2において、ケーシング15と、ケーシング15の内部に配設されたモータ120と、モータ120によって回転駆動され、表面部にねじが形成され、回転と直動の両方が自在とされてケーシング15に軸受支持されたラック110と、ねじに係合し、回転自在とされてケーシング15に軸受されたねじナットと、ラック110がねじとねじナットの係合状態で回転するとき、ねじの回転速度とねじナット130の回転速度との相対速度を調速する調速装置とを備えた構成が図示される。更に具体的には、表面部に、ねじを構成するねじ溝112および軸方向にスプライン溝113を有するラック110と、ねじ溝112およびスプライン溝113にそれぞれ配設されるねじボール131およびスプラインボール141と、前記ラックの回転方向周囲に配設され、ねじボール131およびスプラインボール141にそれぞれ係合するように形成され、ねじ溝112およびスプライン溝113と一体となってねじボール131およびスプラインボール141をそれぞれ収納する他方のねじ溝および他方のスプライン溝がそれぞれ形成されたねじナット130と、回転駆動力をラック110に伝達するモータと、ねじの回転速度とねじナット130の回転速度の比を1:r(r<1)に調速する調速装置とを備えた構成が図示される。
操舵アクチュエータ10は主として、ねじを構成するねじ溝112、スプライン溝113が加工された回転ラック110、回転ラック110が中央を貫通する中空モータ120、回転ラック110と係合するねじナット130とスプラインナット140、そしてそれらを支持するベアリング群で構成されている。
以下では、まず本構成中の要素を抽出し、それぞれの機能を示す。つぎに各要素を組み合わせることによって可能となる操舵アクチュエータとしての原理(仕組み)を示す。その後、詳細な構成について述べる。
図3に示すように回転ラック110にはスプライン溝113が設けられており、スプラインナットボール141を介してスプラインナット140が係合されている。従って、スプラインナット140と回転ラック110には以下の管径がある。
(a)スプラインナッと140は回転ラック110の直動(x)方向には、スプラインナットボール141により支持されており非常になめらかに相対変位をもつことができる(図3(a))。
(b)スプラインナッと140は回転ラック110の回転(ω)方向には固定されている。したがって、回転ラック110の回転速度ωrackとスプラインナット140の回転速度ωsplineは同じとなる(図3(b))。
以上の(a)、(b)によりスプラインナット140のω方向の回転速度ωsplineを制御することにより、回転ラック110の直動に影響を与えることなく回転速度ωrackを制御することができる。
一方、回転ラック110には図4に示すようにピッチL(mm)の1条のねじ溝112が設けられており、ねじナットボール131を介してねじナット130が係合されている。ここで、ねじナット130の回転速度をωnut、回転ラック110の回転速度をωrackとすると、ねじナット130の1回転に対する回転ラック110の直動量Δx(mm/rev)との間には以下の関係がある。
・ωrack = 0(回転ラック110が回転を固定されている場合)
Δx=L (ねじ溝112の物理的ピッチと同じ)。
・ωrack = ωnut(回転ラック110とねじナット130が一体となって回転している場合)
Δx=0 (回転ラック110は進まない)。
・ωrack = 0.5ωnut(回転ラック110がねじナット130の半分の速度で回転している場合)
Δx=0.5L (ねじ溝112の物理的ピッチの半分となる)。
結局、Δx=L(1-ωrack/ωnut)
となり、ねじナット130の1回転に対する回転ラック110の直動量Δx(mm/rev)は、回転ラック110の回転速度ωrackと、ねじナット130の回転速度ωnutの比率により操作することができる。
上述した機構を用い、ケーシング15の内部空間を利用して複雑な機構無く、ボールねじ自体の物理的ピッチに関わらずモータ一回転に対するラックの直動量を小さくとり、モータの小型化、高効率化を図るとともに、安価な操舵アクチュエータを提供するために、本実施例以降では以下に示す構成となっている。
1.モータはねじナットを直接、回転駆動する(ωmot=ωnut)。
2.回転ラック速度(ωrack)は、スプラインナットの回転速度(ωspline)と常に同一なので、ねじナットとスプラインナットの回転数の間を調整する調速機構を設ける。
以上により、ねじナット(モータ)に対する、スプラインナットの回転速度を近い値(例えば速度比1:0.9)にすれば実質上のモータ1回転に対するラックの直動量Δx(mm/rev)を小さく(物理形状の1/10)調整することができる。以上が本発明の操舵アクチュエータとしての原理である。
以下、本発明の詳細な構成について、再び図2に立ち返り説明する。
ねじナット130は、マグネット121、コイル122などで構成された中空モータ120にジョイント230で係合されている。中空モータ120は、DCブラシ付モータでもDCブラシレスでもよく、また車載のバッテリ電圧を直接、あるいは昇圧された電圧で駆動されてもよい。また、ジョイント230にはモータに過負荷が加わった場合のトルクリミッタの機能を持たせても良い。これらの機構によりねじナット130と、中空モータ120は一体となって回転する。ねじナット130と、中空モータ120は、アンギュラ玉軸受け231により支持されている。これによりねじナットボール131を通じて、ねじナット130に加わる回転ラック110の両方向のスラスト力を支持することができる。
ねじナッと130の隣には、スラストベアリング345を介して、スプラインナット140が配置されている。スラストベアリング345はねじナット130とスプラインナット140の回転差を吸収し、両者の相対運動時の摩擦をころがり支持に変えることで損失を低減している。
ねじナット130とスプラインナット140の外周には、ねじナット外歯132と、スプラインナット外歯142が設けられている。また、これらを取り囲むように2段内歯ホルダ340がホルダベアリング343に支持されて配置されている。2段内歯ホルダ340のねじナット外歯132と、スプラインナット外歯142に対向する面にはねじナット内歯341とスプラインナット内歯342が取り付けられている。それぞれの内歯径は、外歯径よりも大きく、それぞれをかみ合わせる場合には図2に示すように片側が浮いた状態で駆動することになる。
以下回転および直線運動の発生の様子を述べる。中空モータ120はねじナット130を駆動する。回転ラック110にねじナットボール130を介して、ねじの斜面の作用により、回転運動を直動推進力へと変換しようとすると同時に、ねじナットボールの回転方向の摩擦力により、回転ラック110を回転させようとする。
この回転力は、スプラインナット140に伝えられ、スプラインナット外歯142からスプラインナット内歯342を経由して再び2段内歯ホルダ340に伝えられる。
ここで、中空モータ120、ねじナット130の回転速度とスプラインナット140、回転ラック110の回転速度の比が、1:r(r<1)となるように、ねじナット外歯132、ねじナット内歯341、スプラインナット内歯342、スプラインナット外歯142の径、歯数を設定することにより、中空モータ120が一回転したときの回転ラックの直動量を物理的ピッチLの(1−r)倍とすることができる。ねじナット外歯132の歯数をN1、ねじナット内歯341の歯数をN2、スプラインナット外歯142の歯数をN3、スプラインナット内歯の歯数をN4とすれば、N2/N1<N4/N3の関係とする歯車伝達機構を構成する。例えばr=0.9とすれば、物理的ピッチの1/10とすることができる。本実施例では、上述した本発明の操舵アクチュエータ原理の調速機構が、各ナットの外歯と2段内歯の歯車列で構成されていることになる。
また、このような構成にするとねじナット130から回転ラック110に与えた駆動トルクの一部が、調速機構を介してねじナット130に戻ってくるので同じ回転ラックの直動の軸力に対してねじナットを駆動する正味のトルクが少なくて済む。
さて、以上のような構成で回転ラック110はモータ回転数のr倍で回転しながらも、モータ回転数に応じて物理的ピッチの(1−r)倍で直動することになる。回転ラック110の両端(図では片側)はアンギュラ玉軸受け115により、回転止めのスプライン溝114を有し、回転を阻止された非回転直動ラック111に係合されている。これにより、回転ラック110がω方向に回転しながらx方向に直動したときにも、回転ラック110の回転のみが遮断され、非回転直動ラック111には回転ラック110の直動x方向の変位、速度、力が加えられる。非回転直動ラック111は図1のアーム7に取り付けられ、ジョイント8を通じて車輪側のアップライト(図示せず)に伝えられ、タイヤ30が操舵される。また逆にタイヤ30から入力される反力は、非回転直動ラック111を通じて、回転ラック110の回転運動を妨げることなく回転ラック110に伝えられる。これにより本機構では、ラックは回転しているが、その途中で回転は遮断されて直線運動のみとなり、アーム7を経由し、ジョイント8を通じて車輪側のアップライト(図示せず)に伝えられ、タイヤ30が操舵される、通常のパワーステアリングと同等な機能を実現できる。
以上に本実施例のおおまかな原理・機構・構成を述べた。以下では、本実施例のその他の構成に関しての付随発明について開示する。
上述の調速機構について補足すると、それぞれの歯車にはスラスト方向の力は加わらないので一般の平歯車あるいははす歯車でよい。また、これらの歯車列で実現する速度比は、ほとんど1に近いので、大減速をする場合に比べて機械効率の低下を小さくすることが可能である。
また、強度向上のためには歯幅を伸ばすことが必要となるが、本構成では比較的自由度が高い軸方向のスペースを利用することにより対応可能である。このため、それぞれの歯車を樹脂(エンジニアリングプラスチック)化することも可能となる。これにより軽量、低コスト、低騒音の機構とすることができる。
図2に示すように、2段内歯ホルダ340がホルダベアリング343に支持されているが、ホルダベアリング343の歯車噛み合い部側(紙面では上方)にはバックラッシュアジャスタ346が、反対側(紙面では下方)にはブッシュ347を介してケーシング15に取り付けられている。バックラッシュアジャスタ346は簡単な弾性体であり、噛み合い部の径方向に力を与え、各内歯、外歯間のバックラッシュを縮小する働きがある。これによりパワーステアリングとして本操舵アクチュエータを採用する場合、ロストモーションが発生せず、リニアなステアフィールが得られる。
つぎに図5を用いて本発明群の第2実施例について示す。本実施例は、基本的には図2の第1実施例と同じであるが、モータを同軸ではなく、ラックの外側に配置したものである。第1実施例と同一の構成については同一の参照番号を付してあり、実施例1の説明を援用する。ねじナットとスプラインナットはスラストベアリングを介して、軸方向に並べられており、スラスト方向の力は2つのナットを挟み込むように配置されたアンギュラ玉軸受け2310で受ける構成となっている。第1実施例が内歯車を用いていたのに対し、本実施例では通常の歯車を使うことが可能となる。モータ1200のトルクはロータ軸1230を通じてねじナットギヤ3410に伝えられる。ねじナットギヤ3410はねじナットに取り付けられたねじナット外歯1320と噛み合い、ねじナット130を駆動する。回転ラック110にねじナットボール131を介して、ねじの斜面の作用により、回転運動を直動推進力へと変換しようとすると同時に、ねじナットボールの回転方向の摩擦力により、回転ラック110を回転させようとする。
この回転力は、スプラインナット140に伝えられ、スプラインナット外歯1420からスプラインナットギヤ3420を経由して再びロータ軸1230に伝えられる。
ここで、モータ1200、ねじナット130の回転速度とスプラインナット140、回転ラック110の回転速度の比が、たとえば1:r(r<1かつr≒1)となるように、ねじナット外歯1320、ねじナットギヤ3410、スプラインナット外歯1420、スプラインナットギヤ3420の径、歯数を設定することにより、モータ1200が一回転したときの回転ラックの直動量を物理的ピッチLの(1−r)倍とすることができる。例えばr=0.9とすれば、物理的ピッチの1/10とすることができる。本実施例では上述した本発明の操舵アクチュエータ原理のうち調速機構を各ナットの外歯とモータのロータ軸に取り付けられた2つの歯車列で構成していることになる。また、このような構成にするとねじナット130から回転ラック110に与えた駆動トルクの一部が、調速機構を介してねじナット130に戻ってくるので同じ回転ラックの直動の軸力に対してねじナットを駆動する正味のトルクが少なくて済む。
その他の構成は図2に示した第1実施例と同等であり、ここでは省略する。
それぞれの歯車にはスラスト方向の力は加わらないので一般の平歯車あるいははす歯車でよい。また、これらの歯車列で実現する速度比は、ほとんど1に近いので、大減速をする場合に比べて機械効率の低下を小さくすることが可能である。
また、強度向上のためには歯幅を伸ばすことが必要となるが、本構成では比較的自由度が高い軸方向のスペースを利用することにより対応可能である。このため、それぞれの歯車を樹脂(エンジニアリングプラスチック)化することも可能となる。これにより軽量、低コスト、低騒音の機構とすることができる。
図2に示すように、2段内歯ホルダ340がホルダベアリング343に支持されているが、ホルダベアリング343の歯車噛み合い部側(紙面では上方)にはバックラッシュアジャスタ346が、反対側(紙面では下方)にはブッシュ347を介してケーシング15に取り付けられている。バックラッシュアジャスタ346は簡単な弾性体であり、噛み合い部の径方向に力を与え、各内歯、外歯間のバックラッシュを縮小する働きがある。これによりパワーステアリングとして本操舵アクチュエータを採用する場合、ロストモーションが発生せず、リニアなステアフィールが得られる。
尚、左右への操舵力を発生させるためにはモータを左右反転操作を行う。
バックラッシュアジャスタ3430は、ロータ軸1230を支えるベアリング1241に対して各々の噛み合いを向上させる方向(紙面では下向き)の力を加える。これによりパワーステアリングとして本操舵アクチュエータを採用する場合、ロストモーションが発生せず、リニアなステアフィールが得られる。
次に本発明の第3実施例について述べる。これまでの第1、第2実施例は、スプラインナットとねじナットが歯車列によって機械的に結合されていた。しかしながら、スプラインナットとねじナットは、本来は回転方向には全く独立して運動することが可能である。したがって例えばスプラインナットをモータで駆動している状態で、ねじナットに機構直結以外の手段でブレーキトルクを加え、スプラインナットの速度より若干減速した値に調速することにより、第1、第2の実施例と同等に、実質上のモータ1回転に対するラックの直動量Δx(mm/rev)を小さく調整することができる。
図7は本発明の第3実施例の構成を示す図である。操舵アクチュエータ1000では、図2の本発明の第1実施例と同様に、中空モータによりスプラインナットを駆動する。ここでは、モータ120の回転ロータの内側にスプライン溝113を設けて、モータ120とスプラインナットが一体となった例(スプラインナットモータ1200)として示している。回転ラック110にはスプラインナットボール171を介して、モータの回転力が伝えられスプラインナットモータ1200と一体になり回転する。
図7には、表面部に、ねじを構成するねじ溝112および軸方向にスプライン溝113を有するラック110と、ねじ溝112およびスプライン溝113にそれぞれ配設されるねじボール131およびスプラインボール41と、回転ラック130の回転方向周囲に配設され、ねじボール131およびスプラインボール141にそれぞれ係合するように形成され、ねじ溝112およびスプライン溝113と一体となってねじボール131およびスプラインボール141をそれぞれ収納する他方のねじ溝および他方のスプライン溝が形成されたねじナット130と、回転駆動力をラック110に伝達するモータ120と、ねじナット130にヒスカップ151を設けてヒスカップ151に磁気ヒステリシス材152を取り付け、コア154、ヨークB156およびコイルから構成される回転体のコアとヨークB156との間の空隙に磁気ヒステリシス材152を配設することによってブレーキ装置を構成してラック110の回転に対してブレーキトルクを付与するようになし、かつねじの回転速度とねじナット130の回転速度の比を1:rに可変調速する調速装置とを備えた構成が表示される。
この回転ラック110の回転力は、ねじナットボールを通じ、ねじナット157にも伝えられ、ねじの斜面の作用により、回転運動を直動推進力へと変換しようとする。また、これと同時に回転方向の摩擦力およびねじの斜面の作用により、ねじナット157には反力トルクが加わる。ねじナット157は、第1、第2実施例のように、スプラインナット(モータ)との歯車列等による機械的な結合はない。しかしながら固定部から減速トルクを与えることができるように、磁気ヒステリシス材を用いた、いわゆるヒステリシスブレーキ150が構成されている。スプラインナット157の外周にはカップ状の一体部材(ヒスカップ151と磁気ヒステリシス材152)が取り付けられている。ねじナット157とヒスカップ151、磁気ヒステリシス材152は一体となり、回転ラックの周りを回転することができる。
一方、コア154、ヨークA155、ヨークB156とコイル153で構成された磁気回路はケーシング1001に固定されている。コア154とヨークB156との空隙(ギャップ)に磁気ヒステリシス材152を挟み込むような構成となっている。コア154とヨークB156には、図で示すような歯型部分を有し、コイルに通電した場合にヨークB156がS極、コア154がN極となる。これにより発生する磁界は、ヒステリシス材152をよぎることになる。ここで、ヒステリシス材およびヒステリシスブレーキについて簡単に述べる。ヒステリシス材はFe−Cr−Coなどの合金であり、磁界の変動を加えた場合には、磁界Hに対する磁束Bの応答(BH曲線)のヒステリシスループで囲まれる面積分がエネルギロスとなり、熱に変換される(通常の金属よりヒステリシスループで囲まれる面積が大きい)。図6に示すような歯形極形状を持っていると、コア154とヨークB156との空隙には矢印でしめすような方向に磁界が生じる。この磁界は径方向に分布を持つため、この中でヒステリシス材が径方向に回転運動した場合には、ヒステリシス材内に磁束変化が生じ、エネルギロスが発生する。このような状態で回転運動が発生すると、あたかも摩擦力のようにロスが発生するので、回転に対するブレーキトルクが発生する。
図8にヒステリシスブレーキの回転数-トルク特性を示し、その特徴を述べる。
・相対回転数の影響を受けない定トルク特性
・励磁電流制御による高いトルク反復性
・機械的に非接触構造による高い信頼性
・少ない構成部品点数による高い生産性
・滑らかな回転(原理上トルク リップル無し)
本実施例においては、上述のような特徴をもつヒステリシスブレーキをねじナット157に取り付けることにより、モータ、スプラインナット回転ラックの回転速度とねじナットの回転速度の比が、たとえば1:r(r<1かつr≒1)となるように、外部からブレーキトルクを与えるような構成となっている。
これにより中空モータが一回転したときの回転ラックの直動量を物理的ピッチLの(1−r)倍とすることができる。例えばr=0.9とすれば、物理的ピッチの1/10とすることができる。本実施例では上述した本発明の操舵アクチュエータ原理のうち調速機構がヒステリシスブレーキで構成されていることになる。
このときには、第1、第2実施例とは異なり厳密にはスプラインナット(モータ側)に駆動トルクが戻ってこないので直動方向の力の若干の低下もありうる。しかしながら、本構成には以下に示すメリットが考えられる。
1.コイル153の電流を制御することによりスプラインナット、回転ラックの回転速度と、ねじナット回転速度の比を可変制御できる。これによりアシスト力の制御の自由度が格段に向上する。
2.ヒステリシスブレーキもオフにすると、スプラインナットと回転ラック、ねじナットは完全に独立した運動が可能となる。たとえばモータをオフにしてステアを戻すときに、同時にヒステリシスブレーキもオフにすると、回転慣性が大きなモータ、スプラインナットが回転しなくても、ねじナットのみが回転するだけでステアリングを戻すことができる。図9にこの状態を示す。実線部分がステアリングを戻すときに回転が必要な部材である。機械結合が無い第3実施例(a)では、機械結合のある第1、第2実施例(b)に比べはるかに少ない部材を回転させるだけでステアリングを戻すことができ、操舵フィーリングを格段に向上することができる。
以上、1、2の効果を図10に示す。トルクセンサ指令に基づいて、モータ電流は制御される。モータ電流に呼応しモータ回転も上昇または低下するが、回転慣性があるため電流に対して回転の応答は遅れを生じる。ヒステリシスブレーキのコイルへの励磁電流を調整することにより、モータの回転に対するアシスト力のゲインを変更することができる。たとえば立ち上がり時に励磁電流の立ち上がりをなまらせれば、なめらかなアシスト力の立ち上がりを実現することができる。また、立下り時に急激に励磁電流を低下させれば、モータの回転が止まっていなくても、アシスト力をなくすことができ、応答性、フィーリングを大幅に向上することができる。
さらに、ねじナットとスプラインナットに機械的結合をもたない本実施例においては、
歯車などの機械的手段を使っていないため、バックラッシュによるロストモーションが発生しない。またギヤノイズも発生しない。
以上により、複雑な機構無く、ボールねじ自体の物理的ピッチに関わらずモータ一回転に対するラックの直動量を小さくとれるため、モータの小型化、高効率化を図れるとともに、安価な操舵アクチュエータが提供できる。
また、パワーステアリングとして本操舵アクチュエータを採用する場合、ロストモーションが発生せず、リニアなステアフィールが得られる。さらに駆動騒音を低減できるため、車両に搭載した場合、質感の高い車が実現できる。さらに、モータをオフにしてラックがもとの位置にもどる場合、ねじナットが回転することによりモータが必ずしも回転する必要が無いため、パワーステアリングとして本操舵アクチュエータを採用する場合、イナーシャ感が小さくフィーリングの良いステアフィールが得られる。
次に図11を用いて本発明の第4実施例を示す。本実施例では、第3実施例と同様にスプラインナットとねじナットに機械的結合をもたない。ヒステリシスブレーキを使って、ねじナットに減速トルクを加えることも第三の実施例と同じである。しかしながら、第3実施例でケーシングに固定されていたヒステリシスブレーキのヨーク、コア、コイルが、図2の第1実施例と同等な歯車列で減速されたブレーキマウント1400に取り付けられていることが、相違点である。中空モータ、スプラインナットの回転速度とブレーキマウント1400の回転速度の比が、1:r(r<1かつr≒1)となるように、スプラインナット外歯、スプラインナット内歯、ブレーキマウント内歯、ブレーキマウント1400の径、歯数を設定し、ねじナットとブレーキマウント1400が一体となって回転するようにヒステリシスブレーキをかければ中空モータが一回転したときの回転ラックの直動量を物理的ピッチLの(1−r)倍とすることができる。ヒステリシスブレーキでは相対回転数ゼロでもトルクが発生するため(図8)このような制御が可能となる。もちろん、ブレーキトルクの調整により、第3実施例と同様なメリットが得られる。
また、このような構成にするとねじナットから回転ラックに与えた駆動トルクの一部が、調速機構を介してねじナットに戻ってくるので同じ回転ラックの直動の軸力に対してねじナットを駆動する正味のトルクが、第3実施例に比べれば、少なくて済む。
また第3実施例、第4実施例においては、ヒステリシスブレーキを採用した例を示したが、静止系、あるいはねじナットと調速された回転系からでもブレーキトルクを与える手段であれば、上述のような効果が期待できる。摩擦型ブレーキとしては摩擦板を電磁力によりスプラインナットに圧着しトルク伝達をしたり、空隙非接触型では渦電流損失を利用した渦電流ブレーキあるいは磁性粉体を用いたパウダーブレーキ、粘性を利用するのであれば油圧ポンプのポンピングロスで減速するなど複数の方法がある。
以上までは、本実施例のうち、ねじナットをひとつのみ設けた実施例について述べた。これらの実施例では左右への操舵力を発生するためにはモータを左右反転させる必要がある。以下では、一本のラックに右ねじと左ねじ加工を施したものを用いて、それぞれのねじに係合する2つのねじナットを用いた実施例について述べる。これならば、モータが一定方向に回転している状態で、右ねじと右ねじナットを機能させると右方向へラックは進行し、左ねじと左ねじナットを機能させると左方向へ進行し、両ナットを機能させないときは、どちらにも進まない(操舵力を発生させない)機構を構築することができる。
モータが回転していてもどちらにも動かない状態を作り出せるということは、アイドリング、スタンバイ制御が可能であるということを示している。
つぎに、本発明の第5実施例を図12、図13、図14を用いて詳細に述べる。基本的な構造としては、図7の本発明の第3実施例を右ねじ溝112と左ねじ溝114を持つ回転ラック1100に適用し、回転ラック自体は一つのモータ1200で駆動していると考えればわかりやすい。また、操舵アクチュエータ10はこれまでの実施例と同様に図13に示すような構成となっており、ステアリング1、コラム2、操舵センサ4を経由してピニオン5を経由してラック11の非回転部に設けられたラック歯経由で伝えられたラック推力と、操舵アクチュエータ10が発生する推力の合力がラック11を押し、操舵を行う。
前述したとおり、回転ラック1100にはこれまでのスプライン溝113に加え、右ねじ溝112と左ねじ溝114が切られている。それぞれのねじに対面する部分には右ねじナット157、左ねじナット167が設けられている。それぞれのねじナットには第3、および第4実施例と同様に、ヒステリシスブレーキ150、160が取り付けられている。また各ねじナットは、アンギュラ玉軸受けにより支持され、ラックに入力した直動方向(X方向)のスラスト力を受け持つ。本実施例では構成が良く分かるように、モータの両サイドに左右それぞれのねじナットを配置したが、右ねじ、左ねじをクロスした形で同じ部分に設けることも可能であり、このような場合はねじナットをスプラインナットの片側に集めてコンパクトに配置してもよい。このような配置のときはアンギュラ玉軸受けで両方のナットを一括して挟み込み、各ナット間にはスラスト軸受けを配置するような構成でよい。
本実施例においてはモータ1200は、図中のω方向(時計回り)に、ωmで回転するように、図示しないコントローラ20により速度制御が実施されている。このωmは、消費電力が最低となる回転数が選ばれており、銅損を少なくするためには、低回転よりも高回転が望ましい。また、操舵負荷状態、車速、バッテリの充電状態などによって、この目標値ωmを変更してもよい。しかし、通常はωmとなるように速度制御が実施されている。
図14を用いて、運転者が右、左と続けてステアリング操作を行なった状態における本実施例の操舵アシスト力発生の動作を示す。
まず、右にも左にもステアリングが操舵されていない状態では、前述したように、モータの回転速度はωm0に制御されており、このときのモータ電流はIm0となっている。もちろんスプラインナット170、スプラインボール171を通じて駆動される回転ラック110もωm0で回転している。ラックの両端は、アーム、ジョイントを通じてタイヤに取り付けられている。このため、左右からの路面反力によりラックは直動方向(x方向)には力のつりあいが成立している。この力はラックを止めておこうとする。一方回転ラックは回転するが、本実施例では、ねじナットがボールを具備したボールナットであるため、回転方向の摩擦力は極めて小さい。また、ねじナット自体もアンギュラ玉軸受けにより回転支持されているため、回転方向の摩擦力はきわめて小さい。結局、ラックは直動方向には停止した状態となり、ねじナットはねじの斜面によるくさび効果で反力トルクが加わって、回転を始め、回転ラックと等しい速度で回転することになる。この状態ではモータが回転しているにも関わらす、ラック推力、直動方向の変位も発生せず、いわゆるアイドリング状態となっている。前述したように回転系全体の摩擦はころがり摩擦であり、非常に小さい。このため、モータはわずかなトルクを出すのみで、ωm0で回転を維持することが可能となる。従ってモータが発生する機械的出力(回転数×トルク)は小さく、消費電力が小さい状態(モータ印加電圧×Im0)でアイドリング、スタンバイ制御が可能となる。
次に運転者の操作が入力し、舵角が発生した場合のラックアシスト力の発生する状況を示す。
運転者の操作と路面反力の関係により操舵センサ4は舵角とコラムに加わるトルクを計測し、コントローラ20に対して出力する。コントローラ20では、まず右方向のトルク指令に基づいて右側ねじナット157側のヒステリシスブレーキのコイル153に通電する。右側ねじナット157は、ヒステリシスブレーキの固定系から減速トルクを加えられることになり、急激に回転速度が低下する。これにより、回転ラックとねじナットとの間に速度差が発生し、これまでの実施例と同様にねじの斜面の作用によりラックにアシスト力が発生する。その反力はねじナットを回転支持する、アンギュラ玉軸受けが受け持つ。
一方、ねじナットが減速するとその反作用トルクおよび、ラック推力に見合う負荷トルクがモータ側に作用する。このため、モータ回転は一瞬低下するが、コントローラ20により回転速度制御されているために、モータ電流が増加して、負荷に対応する電力が投入され、再び回転数はωm0となる。
次に運転者が右側に切ったステアリングを戻す場合にはトルク指令は徐々に小さくなり、左側へと反転することになる。コントローラ20は右側ヒステリシスブレーキの電流を序所に低下させていく。これにより減速トルクが減少し、右ねじナット157は加速していく。右ねじナット157がラック回転速度と同じωm0となったときには、右方向のラック推力はゼロとなる。
一方、トルク指令が左側へ反転すると、コントローラ20は左ねじヒステリシスブレーキ160のコイル163に通電する。それ以降の動作は右側に操舵されている状況と同等であるのでここでは省略する。
以上のように、操舵されていない状態ではモータ、回転ラック、およびねじナットがωm0で回転待機し、操舵が発生するとねじナットを非接触のヒステリシスブレーキで減速し、回転ラックとねじナットに相対速度を発生させ、ラック推力を得るような構成となっている。相対速度制御にてラック推力を制御していることにより、モータの絶対回転速度と関係なく、モータよりも回転慣性の小さいねじナットのみに、外部から非接触で減速トルクを加え速度制御を行うことで推力制御可能である。このためモータの起動/停止に起因する応答遅れは無くなり、クラッチなどの摩擦接触による切り替え部分が存在せず、耐久性が高く、スムーズなトルクアシストが可能である。
さらに、上述のラック推力発生原理と操舵角との間に拘束関係は無く、操舵絶対角がモータの回転角度、速度に影響を与えることは無い。
操舵角一定で旋回している場合、通常のEPSだとモータは停止した状態でトルクを発生しつづける必要がある。本実施例では、ヒステリシスブレーキ通電量を制御することにより、モータと回転ラックをωm0で保ったままで上述の動作が可能となる。このため、停止(ロック)トルクおよび熱容量を大きくするような低トルク型の大型モータの採用が不要となり操舵アクチュエータの小型化が可能となる。また、DCブラシモータの場合は、ブラシ容量を小さくすることができ、ブラシ磨耗に対しても有利となる。また、DCブラシレスモータを採用する場合、駆動用インバータのパワートランジスタを小さくすることができ、低コスト化につながる。
さらに図14では、右側ヒスブレーキ電流の通電時間と左側ヒスブレーキの通電時間は、オーバーラップしていないが、どちらか一方が電流を減少させてステアリングを戻しているときに、逆側を若干早めに通電することにより、ステアリングの戻りを早くするような制御も可能となる。
次に図15を用いて本発明の第6実施例を示す。本実施例では、第5実施例と同様に一本のラックに右ねじと左ねじ加工を施したものを用いて、それぞれのねじに係合する2つのねじナットを用い、スプラインナットとねじナットに機械的結合をもたない。ヒステリシスブレーキを使って、ねじナットに減速トルクを加えることも第5実施例と同じである。しかしながら、第五の実施例でケーシングに固定されていたヒステリシスブレーキのヨーク、コア、コイルが、図2の第1実施例、あるいは図11の第4実施例と同等な歯車列で減速されたブレーキマウント1400に取り付けられていることが、相違点である。中空モータ、スプラインナットの回転速度とブレーキマウント1400の回転速度の比が、1:r(r<1かつr≒1)となるように、スプラインナット外歯、スプラインナット内歯、ブレーキマウント内歯、ブレーキマウント1400の径、歯数を設定し、ねじナットとブレーキマウント1400が一体となって回転するようにヒステリシスブレーキをかければ中空モータが一回転したときの回転ラックの直動量を物理的ピッチLの(1−r)倍とすることができる。ヒステリシスブレーキでは相対回転数ゼロでもトルクが発生するため(図8)このような制御が可能となる。もちろん、ブレーキトルクの調整により、第5実施例と同様なメリットが得られる。
また、このような構成にするとねじナットから回転ラックに与えた駆動トルクの一部が、調速機構を介してねじナットに戻ってくるので同じ回転ラックの直動の軸力に対してねじナットを駆動する正味のトルクが、第五の実施例に比べれば、少なくて済む。
また第5実施例、第六の実施例においては、ヒステリシスブレーキを採用した例を示したが、静止系、あるいはねじナットと調速された回転系からでもブレーキトルクを与える手段であれば、上述のような効果が期待できる。空隙非接触型で渦電流損失を利用した渦電流ブレーキあるいは磁性粉体を用いたパウダーブレーキ、粘性を利用するのであれば油圧ポンプのポンピングロスで減速するなど複数の方法がある。
また、上に述べたようなねじナットへのブレーキではなく、たとえばモータによりねじナットを加速して、回転ラックとの相対回転速度を作り出してもよい。このような構成は複雑化とコスト向上を免れないが、素早い操舵制御が必要なときは有効である。
最後に本発明の第二群の実施例を第7実施例として示す。図11は本発明の第二群の実施例を示す全体図である。第一群(図1)では運転者のステアリング1の回転動作はコラム2、ジョイント3、操舵センサ4、ピニオン5を通じてラック11に機械的に結合されていた。これに対し第二群では、ステアリング401は、ステアリングフィールを補正するトルクを発生するモータと、舵角、操舵トルクを検出するセンサを有するインターフェース402に結合されている。インターフェースとラック411間に機械的結合はない。これはインターフェースとステアリングアクチュエータを信号線・電力線(ワイヤ)で結んだ、いわゆるステア・バイ・ワイヤシステムである。このような機構を構築することにより、第一群で必要とされたコラムなどが不要となり、車室内の設計の自由度が大幅に向上する。また、運転者の操舵操作に干渉せずに、コントローラから任意の操舵修正を加えることが可能となり、運転者が誤った操作をした場合にも、安全性の確保が可能となる。第二群の実施例についても、先に述べた第1から第4実施例を適用することにより、複雑な機構無く、ボールねじ自体の物理的ピッチに関わらずモータ一回転に対するラックの直動量を小さくとれるため、モータの小型化、高効率化を図れるとともに、安価な操舵アクチュエータが提供できる。
また、第5あるいは第6実施例を適用することにより、モータの起動/停止に起因する応答遅れは無くなり、クラッチなどの摩擦接触による切り替え部分が存在せず、耐久性が高い操舵アクチュエータが実現可能である。またモータの小型化により操舵アクチュエータの小型化が可能となる。また、DCブラシモータの場合は、ブラシ容量を小さくすることができ、ブラシ磨耗に対しても有利となる。また、DCブラシレスモータを採用する場合、駆動用インバータのパワートランジスタを小さくすることができ、低コスト化につながる。
さらに右側ヒスブレーキ電流の通電時間と左側ヒスブレーキの通電時間をオーバーラップして通電することにより、ステアリングの戻りを早くするような制御も可能となり、車両運動制御の高速化、高精度化に対して特に有効である。
以上のように、一方向に見に回転駆動され得るモータが駆動減として使用され、ケーシングと、該ケーシング内に配設されたモータと、表面部に、ねじを構成する右ねじ溝と左ねじ溝を有する複合ねじ溝および軸方向にスプライン溝を有して、前記モータによって回転駆動されるラックと、前記複合ねじ溝およびスプライン溝にそれぞれ配設されるねじボールおよびスプラインボールと、前記回転ラックの回転方向周囲に配設され、前記ねじボールおよびスプラインボールにそれぞれ係合するように形成され、前記複合ねじ溝および複合スプライン溝と一体となって前記ねじボールおよびスプラインボールをそれぞれ収納する他方の複合ねじ溝および他方の複合スプライン溝がそれぞれ形成された複合ねじナットと、前記複合ねじの回転速度と複合ねじナットのそれぞれの回転速度の比を1:r(r<1)に調速する調速装置とを備え、前記回転ラックは軸方向の推力を操舵力伝達部を介して被駆動体に伝達する操舵アクチュエータ、あるいはケーシングと、該ケーシング内に配設されたモータと、表面部に、ねじを構成する右ねじ溝と左ねじ溝を有する複合ねじ溝および軸方向にスプライン溝を有して、前記モータによって回転駆動されるラックと、前記複合ねじ溝およびスプライン溝にそれぞれ配設されるねじボールおよびスプラインボールと、前記回転ラックの回転方向周囲に配設され、前記ねじボールおよびスプラインボールにそれぞれ係合するように形成され、前記複合ねじ溝およびスプライン溝と一体となって前記ねじボールおよびスプラインボールをそれぞれ収納する右ねじ溝と左ねじ溝を有する複合他方のねじ溝および他方のスプライン溝がそれぞれ形成された複合ねじナットと、前記複合ねじナットにそれぞれヒスカップを設けて該ヒスカップに磁気ヒステリシス材を取り付け、コア、ヨークおよびコイルから構成される回転体の該コアとヨークとの間の空隙に前記磁気ヒステリシス材を配設することによって複合ブレーキ装置を構成して前記複合スプラインナットの回転に対してブレーキトルクを付与するようになし、かつ前記複合ねじの回転速度と複合ねじナットの回転速度のそれぞれの比を1:rに可変調速する複合調速装置とを備えた操舵アクチュエータが構成される。
以上のように実施例1−7によれば、次に示す操舵アクチュエータが構成される。
モータにより回転駆動され、回転と直動の両方が自在となるようにケーシングに軸受け支持されたねじと、前記ねじに係合し、回転自在となるようにケーシングに軸受け支持されたねじナットと、前記ねじの回転と前記ナットの回転を調速する機構を有し、前記ねじのケーシングに対する軸方向の推力を操舵力とすることを特徴とする操舵アクチュエータ。
前項において、前記ねじが軸方向にスプライン溝を有し、前記ねじに通され、ねじに対して回転せず、ねじの軸方向に、移動可能なスプラインナットを有し、前記モータはスプラインナットを回転駆動し、前記ナット回転を前記スプラインナットの回転と調速することを特徴とする操舵アクチュエータ。
前項において、前記ねじとねじナットとのあいだにボールを介在させたボールねじ機構が構成され、前記ねじとスプラインナットとのあいだにボールを介在させたボールスプラインが構成されていることを特徴とする操舵アクチュエータ。
前項において、前記ねじナットは、前記スプラインナットよりも低い回転に調速されることを特徴とする操舵アクチュエータ。
前項において、前記調速機構が、前記スプラインナットと、ねじナットのそれぞれに取り付けられた歯車と、これらに係合する歯車で形成される歯車列であることを特徴とする操舵アクチュエータ。
前項において、歯車列の一部あるいは全部が樹脂製の歯車であることを特徴とする操舵アクチュエータ。
前項において、歯車列の一部あるいは全部に、前記ねじと直角の方向に力を与える、バックラッシュ低減機構を有することを特徴とする操舵アクチュエータ。
前項において、前記調速機構がケーシングと相対速度を持たない静止部材から前記ねじナットに減速方向のトルクを与える手段であることを特徴とする操舵アクチュエータ。
前項において、前記調速機構がスプラインナットの回転と調速された回転部材から、前記ねじナットに減速方向のトルクを与える手段であることを特徴とする操舵アクチュエータ。
前項において、前記調速機構が電気信号により減速方向のトルクを調整可能であることを特徴とする操舵アクチュエータ。
前項において、前記調速機構が電磁ヒステリシスブレーキであることを特徴とする操舵アクチュエータ。
モータにより回転駆動され、回転と直動の両方が自在となるようにケーシングに軸受け支持された、右ねじ部分と左ねじ部分を有する複合ねじと、前記右ねじ部分に係合し、 回転自在となるようにケーシングに軸受け支持された右ねじナットと、前記左ねじ部分に係合し、 回転自在となるようにケーシングに軸受け支持された左ねじナットと、前記右ねじナットの回転を前記複合ねじの回転と調速する機構と、前記左ねじナットの回転を前記複合ねじの回転と調速する機構とを有し、前記複合ねじのケーシングに対する軸方向の推力を操舵力とすることを特徴とする操舵アクチュエータ。
前項において、前記複合ねじが軸方向にスプライン溝を有し、前記複合ねじに通され、複合ねじに対して回転せず、複合ねじの軸方向に、移動可能なスプラインナットを有し、前記モータはスプラインナットを回転駆動し、前記右ねじナットの回転をスプラインナットの回転と調速し、前記左ねじナットの回転をスプラインナットの回転と調速することを特徴とする操舵アクチュエータ。
前項において、前記複合ねじの右ねじ部分と右ねじナットとの間と、前記複合ねじの左ねじ部分と左ねじナットとの間にボールを介在させたボールねじ機構が構成され、前記複合ねじとスプラインナットとの間にボールを介在させたボールスプラインが構成されていることを特徴とする操舵アクチュエータ。
前項において、前記右ねじナット、あるいは左ねじナットの一方、あるいは両方が、前記スプラインナットと等速あるいはより低い回転に調速されることを特徴とする操舵アクチュエータ。
前項において、前記右ねじ用、および左ねじ用の調速機構がケーシングと相対速度を持たない静止部材から、前記右、および左ねじナットに減速方向のトルクを与える手段であることを特徴とする操舵アクチュエータ。
前項において、前記調速機構がスプラインナットの回転と調速された回転部材から、前記ねじナットに減速方向のトルクを与える手段であることを特徴とする操舵アクチュエータ。
前項において、前記、右ねじナット用、および左ねじナット用の調速機構が電気信号により減速方向のトルクを調整可能であることを特徴とする操舵アクチュエータ。
前項において、全記右ねじナット用の調速機構と全記左ねじナット用の調速機構に、それぞれ異なるタイミングで電気信号が入力することを特徴とする操舵アクチュエータ。
前項において、前記調速機構が電磁ヒステリシスブレーキであることを特徴とする操舵アクチュエータ。
前項において、前記モータが反転せず、同方向に回ることを特徴とする操舵アクチュエータ。
前項において、前記モータは設定した任意の回転速度との偏差が小さくなるように制御されていることを特徴とする操舵アクチュエータ。
以上述べたように本発明を適用すれば、複雑な歯車機構なくモータ一回転に対するラックの直動量を小さくとれる操舵アクチュエータを提供できる。また、簡単な歯車のバックラッシュ吸収機構を有する操舵アクチュエータを提供できる。また、駆動騒音を低減できる操舵アクチュエータを提供できる。また、回転慣性による応答遅れが小さくフィーリングの良い操舵アクチュエータを提供できる。また、ねじナットを2つ有する構成においては、モータの回転慣性を、操舵制御ループの外側に追いやることが可能となり、大幅な制御性能の向上が可能となる。
なお、本操舵アクチュエータは、ラックアシスト型EPS用のアクチュエータとして対応可能であると同時に、インターフェースとステアリングアクチュエータを信号線・電力線(ワイヤ)で結んだ、いわゆるステア・バイ・ワイヤシステムにも対応可能である。
さらに、本操舵アクチュエータのモータ回転-直動変換機構は、操舵のみに限定されるものではなく、広く、汎用的な直動アクチュエータとして適用することも可能である。
本発明の第一群の実施形態の全体構成を示す模式図。
本発明の第一実施例の構成を示す模式図。
本発明の第一から第三の実施例の適用状況を示す模式図。
回転ラックとスプラインナットの相対運動を示す図。
回転ラックとねじナットの相対運動を示す図。
本発明の第二実施例の構成を示す図。
本発明の第三実施例の構成を示す図。
ヒステリシスブレーキの回転-トルク特性を示す模式図
ステアリングを戻す場合の回転慣性の比較を示す図。
本発明の第三実施例のアシスト力発生状態を示す図。
本発明の第四実施例の構成を示す図。
本発明の第五実施例の構成を示す図。
本発明の第五から第六の実施例の適用状況を示す模式図。
本発明の第五実施例のアシスト力発生状態を示す図。
本発明の第六実施例の構成を示す図。
本発明の第二群の実施形態の全体構成を示す模式図。
符号の説明
0…車両、1…ステアリング、2…コラム、3…ジョイント、4…操舵センサ、5…ピニオン、6…ブーツ、7…アーム、8…ジョイント、10…操舵アクチュエータ、11…ラック、20…コントローラ、30…タイヤ、110…回転ラック、112…ねじ溝、113…スプライン溝、130…ねじナット、140…スプラインナット、120…中空モータ、121…マグネット、112…コイル、230…ジョイント、231…アンギュラ玉軸受け、131…ねじナットボール、345…スラストベアリング、132…ねじナット外歯、142…スプラインナット外歯、340…2段内歯ホルダ、343…ホルダベアリング、341…ねじナット内歯、342…スプラインナット内歯、115…アンギュラ玉軸受け、111…非回転直動ラック、114…スプライン溝、346…バックラッシュアジャスタ、347…ブッシュ、2310…アンギュラ玉軸受け、1200…モータ、1230…ロータ軸、3410…ねじナットギヤ、1320…ねじナット外歯、1420…スプラインナット外歯、3420…スプラインナットギヤ、3430…バックラッシュアジャスタ、1000…操舵アクチュエータ、157…スプラインナット、150…ヒステリシスブレーキ、151…ヒスカップ、152、162…磁気ヒステリシス材、154…コア、155…ヨークA、156…ヨークB、153、163…コイル、1400…ブレーキマウント、401…ステアリング、400…操舵機構、402…インターフェース、403…コントローラ、411…ラック、404…操舵アクチュエータ。