JP2005319734A - 象嵌装飾成型物およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 乾燥状態の熱可塑性樹脂(A)が表面に付着した小片状材料の上に象嵌材を配置し、これを常温で加圧成型して得られる象嵌装飾成型物。
【選択図】 図2
Description
これは彫り込み工程、埋め込み工程と少なくとも1回の工程を必要とすることから非常に作業性が悪い。その上象嵌材の形状に合った、彫り込み凹部または埋め込み凸部の形成が必要であり、厳しい加工精度も要求される。従って象嵌材の形状も限定され複雑な形状の象嵌材を使用できない等の欠点があった。
すなわち、本発明は、乾燥状態の熱可塑性樹脂(A)が表面に付着した小片状材料の上に象嵌材を配置し、これを常温で加圧成型して得られる象嵌装飾成型物に関する。
また、本発明は、1)熱可塑性樹脂(A)のエマルジョンまたはラテックスを小片状材料と混合する工程、
2)得られた混合物を乾燥する工程、
3)得られた混合物をフォーミングした後、その表面上に象嵌材を配置し、常温で加圧成型する工程を有する、象嵌装飾成型物を製造する方法に関する。
熱可塑性樹脂(A)のエマルジョンの粘度は特に制限はなく、その固形分濃度により変わるが、作業性等の観点で200000mPa・s(23℃、ブルックフィールド粘度計(BH型)、2rpm)以下が好ましい。
上記水溶性ポリマーを含有させる方法としては、熱可塑性樹脂(A)のエマルジョンと水溶性ポリマーを混合したものを用いる方法の他、ポリビニルアルコール系高分子等の水溶性ポリマーを保護コロイドとして各種単量体を乳化重合することにより得られる熱可塑性エマルジョンを用いる方法が考えられる。後者の場合、乳化重合時に水溶性ポリマーと熱可塑性樹脂(A)が一部グラフト体を形成するため象嵌装飾成型物中に確実に水溶性ポリマーが含有される。
これらの材料は必要に応じ、破断粉砕して適当な大きさにして使用することができる。好適な小片状材料は木質材料である。
木質材料を使用する場合に、その木の種類は問わないが、松、杉、ひのき等の針葉樹、ラワン、カポール、ポプラ、ヤナギ等の広葉樹由来のものが好適に使用される。
象嵌装飾成型物の吸湿変形を防止するために、パラフィンワックス等の撥水剤を添加することもできる。また必要に応じて、充填材、溶剤、顔料、染料、防腐剤、防虫剤、消泡剤等を添加することができる。
また、象嵌装飾成型物の表面に公知のコーティングを施すことができ、また所望により表面をさらに研磨することもできる。
1)熱可塑性樹脂(A)のエマルジョンまたはラテックスおよび小片状材料と混合する工程、
2)得られた混合物を乾燥する工程、
3)得られた混合物をフォーミングした後、その表面上に象嵌材を配置し、常温で加圧成型する工程を有する、象嵌装飾成型物を製造する方法を提供する。
本発明の製造方法の工程図を図1として添付する。本発明方法においては、象嵌材は位置決めしてから指圧程度で軽く埋め込むだけでよく、彫り込み凹部あるいは埋め込み凸部を形成する必要がない。
小片状材料に対するエマルジョンの塗布量は、材料の種類によって異なるが、
例えば木材チップ(含水率5−15%)100重量部に対して、エマルジョンの固形分として5−30重量部、好ましくは10−25重量部である。樹脂量が少ないと結合力が不十分となり、樹脂量が多すぎてもそれに対応する結合力の向上を得ることができない。
成型は常温において行われる。すなわち20℃から100℃の範囲で行うことができ、好ましくは20℃から70℃、より好ましくは30℃から70℃の範囲で行うことができる。
混合物の水分量が低い場合、および冬期における成型のように周囲温度の低い条件下の場合等においては、必要に応じ若干の加熱をすることが、成型時間を短くするために好ましい場合がある。また、加熱乾燥を行う際には、乾燥工程後、冷却することなくそのままの温度で加圧成型することが生産効率上好ましい。
熱可塑性樹脂(B)として好適に使用される樹脂としては、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂およびポリビニルアルコールがあげられる。これらの熱可塑性樹脂(B)は単独で使用することもできるし、混合して使用することもできる。最も好ましい樹脂はポリビニルアルコールである。水または、熱可塑性樹脂(B)のエマルジョンまたは水溶液の使用量は、例えば木材チップ(含水率5−15%)100重量部に対して、15重量部以下の添加で充分である。15重量部以上添加すると水分によって成型物が変形するので好ましくない。
イソシアネート化合物の混合は、混合物を乾燥した後、水、または熱可塑性樹脂(B)のエマルジョンまたは水溶液で湿らせる工程の前または後のいずれでもよい。好ましくは水、または熱可塑性樹脂(B)のエマルジョンまたは水溶液で湿らせる工程の前に行われる。
たとえば図2から4に示すように、熱可塑性樹脂(A)が付着した小片状材料と、種々の形状の象嵌材とを一緒に加圧成型することにより、容易かつ簡便に様々な形状の象嵌材を使用した象嵌装飾成型物を得ることができる。各図において、左側が成型前の状態を示し、右側が成型後の状態を示す。
本発明は常温で加圧成型することから加熱に要するエネルギーコストを最小限に抑えられる。また常温で加圧成型するため、熱に弱い材料でも象嵌材として使用することができ、また象嵌装飾成型物の表面のやけ等の変色やそり等の変形が少ないという特徴を有する。さらには象嵌装飾成型物の形状における自由度が増大し、特に厚い象嵌装飾成型物や曲面象嵌装飾成型物の製造が容易となる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の範囲を何ら制限するものではない。
実施例1
木材チップ(15mmメッシュ通過の杉材含水率約12%)2000gを容器にとりエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョン(商品名パンフレックスOM6000、粘度2500mPa・s、固形分50%、ポリビニルアルコール含有、株式会社クラレ製)を800g添加して充分撹拌混合してからばらばらにして、35〜40℃で1日間放置乾燥させて木材チップ混合物を得た。撹拌しながら同温度でさらにイソシアネート化合物(商品名ウッドキュア300日本ポリウレタン工業株式会社製、主成分MDI、NCO含量28.5−30.5%)200gを混合し、さらに続けて水200gを混合してから、同温度で型枠(幅260mm×長さ320mm)へ投入しフォーミングした。さらに象嵌材(樺材、厚さ5mm)を位置決めしてから指圧程度で軽く埋め込み、加圧成型(30kgf/cm2)した。同温度で10分間放置後解圧して型枠から取り出し厚さ15mmの象嵌装飾成型物を得た。この成型物の表面をプレーナーで平滑にしてから時計板として使用したところ、ねじれ、狂いもみられず充分に実用に供することができた。
木材チップ(15mmメッシュ通過の杉材含水率約12%)2000gを容器にとり酢酸ビニル樹脂エマルジョン(商品名ボンドCX55、粘度25000 mPa・s、固形分55%、ポリビニルアルコール含有、コニシ株式会社製)を800g添加して充分撹拌混合してからばらばらにして、35〜40℃で1日間放置乾燥させて木材チップ混合物を得た。撹拌しながら同温度でさらにイソシアネート化合物(商品名ウッドキュア300日本ポリウレタン工業株式会社製、主成分MDI、NCO含量28.5−30.5%)200gを混合し、さらに続けて水200gを混合してから、同温度で型枠(幅260mm×長さ320mm)へ投入しフォーミングした。さらに象嵌材(樺材、厚さ5mm)を位置決めしてから指圧程度で軽く埋め込み、加圧成型(30kgf/cm2)した。同温度で10分間放置後解圧して型枠から取り出し厚さ15mmの象嵌装飾成型物を得た。この成型物の表面をプレーナーで平滑にしてから時計板として使用したところ、ねじれ、狂いもみられず充分に実用に供することができた。
木材チップ(15mmメッシュ通過の杉材含水率約12%)2000gを容器にとりアクリル酸エステル共重合体樹脂エマルジョン(商品名株式会社クラレ試作品、粘度10000mPa・s、固形分50% ポリビニルアルコール含有、メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル共重合体樹脂、株式会社クラレ製)を800g添加して充分撹拌混合してからばらばらにして、35〜40℃で1日間放置乾燥させて木材チップ混合物を得た。撹拌しながら同温度でさらにイソシアネート化合物(商品名ウッドキュア300日本ポリウレタン工業株式会社製、主成分MDI、NCO含量28.5−30.5%)200gを混合し、さらに続けて水200gを混合してから、同温度で型枠(幅260mm×長さ320mm)へ投入しフォーミングした。さらに象嵌材(樺材、厚さ5mm)を位置決めしてから指圧程度で軽く埋め込み、加圧成型(30kgf/cm2)した。同温度で10分間放置後解圧して型枠から取り出し厚さ15mmの象嵌装飾成型物を得た。この成型物の表面をプレーナーで平滑にしてから時計板として使用したところ、ねじれ、狂いもみられず充分に実用に供することができた。
木材チップ(15mmメッシュ通過の杉材含水率約12%)2000gを容器にとりスチレンブタジエン共重合体ラテックス(商品名ニポ−ルLX430粘度130mPa・s、固形分49%、日本ゼオン株式会社製)を800g添加して充分撹拌混合してからばらばらにして、35〜40℃で1日間放置乾燥させて木材チップ混合物を得た。撹拌しながら同温度でさらにイソシアネート化合物(商品名ウッドキュア300日本ポリウレタン工業株式会社製、主成分MDI、NCO含量28.5−30.5%)200gを混合し、さらに続けて水200gを混合してから、同温度で型枠(幅260mm×長さ320mm)へ投入しフォーミングした。さらに象嵌材(樺材、厚さ5mm)を位置決めしてから指圧程度で軽く埋め込み、加圧成型(30kgf/cm2)した。同温度で10分間放置後解圧して型枠から取り出し厚さ15mmの象嵌装飾成型物を得た。この成型物の表面をプレーナーで平滑にしてから時計板として使用したところ、ねじれ、狂いもみられず充分に実用に供することができた。
木材チップ(10mmメッシュ通過の杉材含水率約10%)3000gを容器にとりエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョン(商品名パンフレックスOM6000、粘度2500mPa・s、固形分50%、ポリビニルアルコール含有、株式会社クラレ製)を900g添加して充分撹拌混合してからばらばらにして、55〜60℃で3時間放置乾燥させて木材チップ混合物を得た。撹拌しながら同温度でさらにイソシアネート化合物(商品名ウッドキュア300日本ポリウレタン工業株式会社製、主成分MDI、NCO含量28.5−30.5%)450gを混合し、さらに続けて10重量%ポリビニルアルコール水溶液(商品名クラレポバール117、ケン化度98モル%、重合度1700株式会社クラレ製)300gを混合してから、同温度で型枠(幅300mm×長さ300mm)へ投入しフォーミングした。さらに象嵌材(ラワン材、厚さ10mm)を位置決めしてから指圧程度で軽く埋め込み、加圧成型(30kgf/cm2)した。同温度で10分間放置後解圧して型枠から取り出し厚さ30mmの象嵌装飾成型物を得た。この成型物の表面をプレーナーで平滑にしてから象嵌装飾歩道板として屋外で使用した。3ヶ月経過後も殆ど変化がなく充分使用でき耐水性に優れている。
実施例5において、55〜60℃で3時間放置乾燥させる工程を省略する以外は実施例と同様に行ったところ、象嵌装飾歩道板は3ヶ月経過後膨潤して部分的にはく離した。
木材チップ(15mmメッシュ通過の杉材含水率約12%)2000gを容器にとり酢酸ビニル樹脂エマルジョン(商品名ボンドCX55、粘度25000 mPa・s、固形分55%、ポリビニルアルコール含有、コニシ株式会社製)を800g添加して充分撹拌混合してからばらばらにして、40〜45℃で1日間放置乾燥させて木材チップ混合物を得た。撹拌しながら同温度でさらに水200gを混合してから、同温度で型枠(幅150mm×長さ150mm)へ投入しフォーミングした。さらに象嵌材(樺材、厚さ5mm)を位置決めしてから指圧程度で軽く埋め込み、加圧成型(30kgf/cm2)した。同温度で5分間放置後解圧して型枠から取り出し厚さ50mmの象嵌装飾成型物を得た。この成型物を象嵌装飾花瓶台として使用したがねじれ、狂いもみられず充分に実用に供することができた。
実施例6において、40〜45℃で1日間放置乾燥させる工程を省略する以外は実施例と同様に行ったところ、得られた成型物は膨潤して強度が弱く実用性がなかった。
木材チップ(15mmメッシュ通過の杉材含水率約12%)2000gを容器にとり酢酸ビニル樹脂エマルジョン(商品名ボンドCX55、粘度25000 mPa・s、固形分55%、ポリビニルアルコール含有、コニシ株式会社製)800gを添加して充分撹拌混合してからばらばらにして、60〜65℃で5時間放置乾燥させて木材チップ混合物を得た。同温度で型枠(幅150mm×長さ150mm)へ投入しフォーミングした。さらに象嵌材(杉材、厚さ5mm)を位置決めしてから指圧程度で軽く埋め込み、加圧成型(30kgf/cm2)した。同温度で10分間放置後解圧して型枠から取り出し厚さ50mmの象嵌装飾成型物を得た。この成型物を象嵌装飾花瓶台として使用したがねじれ、狂いもみられず充分に実用に供することができた。
木材チップ(10mmメッシュ通過の杉材含水率約10%)2000gを容器にとりエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョン(商品名パンフレックスOM6000、粘度2500mPa・s、固形分50%、ポリビニルアルコール含有、株式会社クラレ製)を600g添加して充分撹拌混合してからばらばらにして、55〜60℃で3時間放置乾燥させて木材チップ混合物を得た。撹拌しながら同温度でさらにイソシアネート化合物(商品名ウッドキュア300日本ポリウレタン工業株式会社製、主成分MDI、NCO含量28.5−30.5%)100gを混合し、さらに続けて水200gを混合してから、同温度で型枠(幅300mm×長さ300mm)へ投入しフォーミングした。さらに象嵌材(ラワン材、厚さ10mm)を位置決めしてから指圧程度で軽く埋め込み、加圧成型(30kgf/cm2)した。同温度で10分間放置後解圧して型枠から取り出し厚さ30mmの象嵌装飾成型物を得た。この成型物を象嵌装飾花瓶台として使用したがねじれ、狂いもみられず充分に実用に供することができた。
2: 木材チップ
Claims (10)
- 乾燥状態の熱可塑性樹脂(A)が表面に付着した小片状材料の上に象嵌材を配置し、これを常温で加圧成型して得られる象嵌装飾成型物。
- 小片状材料が木質材料である、請求項1記載の象嵌装飾成型物。
- 熱可塑性樹脂(A)が酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル樹脂およびスチレン−ブタジエン共重合体からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂である、請求項1または2記載の象嵌装飾成型物。
- イソシアネート化合物をさらに含む、請求項1から3のいずれか1項記載の象嵌装飾成型物。
- ポリビニルアルコールをさらに含む、請求項1から4のいずれか1項記載の象嵌装飾成型物。
- 象嵌材が金属箔、金属板、木材、椰子殻、合成樹脂、宝石、石、動物の骨、およびセラミックスからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1から5のいずれか1項記載の象嵌装飾成型物。
- 1)熱可塑性樹脂(A)のエマルジョンまたはラテックスを小片状材料と混合する工程、
2)得られた混合物を乾燥する工程、
3)得られた混合物をフォーミングした後、その表面上に象嵌材を配置し、常温で加圧成型する工程を有する、象嵌装飾成型物を製造する方法。 - 工程2)で得られた混合物を、水または熱可塑性樹脂(B)のエマルジョンまたは水溶液で湿らせる工程をさらに含む、請求項7記載の方法。
- 工程2)で得られた混合物に水または熱可塑性樹脂(B)のエマルジョンまたは水溶液で湿らせる工程の前または後に、イソシアネート化合物を加える工程をさらに含む、請求項8記載の方法。
- 熱可塑性樹脂(B)が酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、およびポリビニルアルコールからなる群から選択される少なくとも一つの樹脂である、請求項8または9記載の製造方法。
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