JP2005315317A - ポリウレタン製ベルト - Google Patents
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Abstract
【課題】 水系の接着剤を用いながら、従来の有機溶剤系の接着剤を用いたポリウレタン製ベルトに匹敵する心線の接着力を有するポリウレタン製ベルトを提供することを目的とする。
【解決手段】 ポリウレタンからなるベルト本体内にスチール製の心線が埋設されたポリウレタン製ベルトにおいて、前記スチール製の心線が、芳香族イソシアネートを含む水性ポリウレタンエマルジョンからなる接着剤によって処理されたことを特徴とするポリウレタン製ベルトである。
【選択図】 図1
【解決手段】 ポリウレタンからなるベルト本体内にスチール製の心線が埋設されたポリウレタン製ベルトにおいて、前記スチール製の心線が、芳香族イソシアネートを含む水性ポリウレタンエマルジョンからなる接着剤によって処理されたことを特徴とするポリウレタン製ベルトである。
【選択図】 図1
Description
本発明は、スチール製心線を埋設したポリウレタン製ベルトに関し、詳しくは、スチール製心線の接着力を改善したポリウレタン製ベルトに関する。
ポリウレタン製ベルトは、ベルト長さを自由に設定したり、ベルト背面に各種形状の突起を加工できる設計の自由度を有し、さらにゴム粉の飛散のないクリーンな伝動・搬送を実現できる特徴があり、食品搬送用、OA機器をはじめとして幅広い領域で用いられている。
このようなポリウレタン製ベルトは、一般に抗張体として心線を埋設しており、心線とベルト本体との間の接着力はベルトの走行性能や寿命に大きな影響を与える。従来、ポリウレタン製ベルト本体とスチール製心線との接着には、ポリビニルアルコールを主成分とする接着剤が用いられていた。しかし、ポリビニルアルコールを主成分とする接着剤は、有害なトリクロロエチレンを溶剤として必要とする問題があった。
特許文献1には、トリクロロエチレンを必要とするポリビニルアルコール樹脂に代わり、トルエン等の有機溶剤系のエポキシ樹脂系あるいはフェノール樹脂系の接着剤を用いて十分な心線接着力が付与されたポリウレタン製ベルトが開示されている。
しかし、地球温暖化、大気汚染、オゾンホール、水質汚染など地球環境汚染問題がますます深刻化し、地球規模でVOC規制や特定化学物質値を規制したHAPs規制などの有機溶剤排出規制が現実化している現状に鑑み、一定水準以上の接着強度を確保しながら、あらゆる有機溶剤の使用を排除する接着剤、すなわち水系接着剤の使用が求められるようになってきている。しかし、水系接着剤は一般に有機溶剤系に比較して接着力に劣る問題がある。
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、水系の接着剤を用いながら、従来の有機溶剤系の接着剤を用いたポリウレタン製ベルトに匹敵する心線の接着力を有するポリウレタン製ベルトを提供することを目的とする。
すなわち本願請求項1記載の発明は、ポリウレタンからなるベルト本体内にスチール製の心線が埋設されたポリウレタン製ベルトにおいて、前記スチール製の心線が、芳香族イソシアネートを含む水性ポリウレタンエマルジョンからなる接着剤によって処理されたことを特徴とするポリウレタン製ベルトである。
請求項2記載の発明は、前記接着剤の固形分濃度が5wt%〜15wt%である請求項1記載のポリウレタン製ベルトである。
請求項3記載の発明は、前記ポリウレタンが熱可塑性ポリウレタンである請求項1記載のポリウレタン製ベルトである。
請求項1記載の発明によれば、水系の接着剤を用いながら、従来の有機溶剤系の接着剤を用いたポリウレタン製ベルトに匹敵する心線の接着力を有するポリウレタン製ベルトを提供することができる。
請求項2記載の発明によれば、水系の接着剤を用いながら、従来の有機溶剤系の接着剤を用いたポリウレタン製ベルトに匹敵する心線の接着力を有するポリウレタン製ベルトを提供することができ、その接着力をさらに向上させることができる。
請求項3記載の発明によれば、水系の接着剤を用いながら、従来の有機溶剤系の接着剤を用いた熱可塑性ポリウレタン製ベルトに匹敵する心線の接着力を有する熱可塑性ポリウレタン製ベルトを提供することができる。
以下、本発明のポリウレタン製ベルトについて詳細に説明する。ポリウレタン製ベルトとしては、主として歯付ベルト、Vベルト、及びVリブドベルトがあり、ここでは歯付ベルトについて説明する。図1にその断面斜視図を示すポリウレタン製歯付ベルトAは、長手方向に沿って所定間隔で配置された複数の歯部3、歯部3と連続する背部2、及び背部2に埋設された心線1から構成される。このようなポリウレタン製歯付ベルトは、加熱溶融した熱可塑性ポリウレタンをキャビティに注入して冷却硬化させて得られる熱可塑性ポリウレタンベルト、あるいは液状の熱硬化性ポリウレタンをキャビティに注型し、加熱硬化させて得られる熱硬化性ポリウレタンベルトのいずれかであり、いずれのベルトも公知の方法で製造される。以下、熱可塑性ポリウレタン製歯付ベルトについて説明する。
心線1を構成するコードとしては、スチール繊維を撚り合わせてなる直径0.5mm〜1mmのスチールコードが用いられる。このスチールコードに、芳香族イソシアネートを含む水性ポリウレタンエマルジョンからなる接着剤によって接着処理が施される。
芳香族イソシアネートを含む水性ポリウレタンエマルジョンからなる接着剤は、(1)ポリオール化合物、(2)芳香族イソシアネート、及び(3)分子内に活性水素を1個以上有する官能基を含有しかつ酸基を含有する官能性化合物を反応させて得られるポリウレタン樹脂を水に分散させてエマルジョン化することによって得られるものである。
(1)ポリオール化合物としては、分子内に2個以上の水酸基を有する化合物が用いられる。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオール類、アジピン酸、セバシン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フマル酸、琥珀酸、蓚酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸等のジカルボン酸類とエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、トリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等のポリオール化合物とを反応させて得られるポリエステルポリオール類、ポリカプロラクトンポリオール、ポリ−β−メチル−δ−バレロラクトン等のポリラクトン系ポリエステルポリオール類等が挙げられる。
(2)芳香族イソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5’−ナフテンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ジフェニルメチルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
(3)分子内に活性水素を1個以上有する官能基を含有しかつ酸基を含有する官能性化合物としては、分子内に水酸基や1級アミノ基もしくは2級アミノ基等のイソシアネート基と反応し得る活性水素を1個以上有する官能基を含有し、かつ、カルボン酸基やスルホン酸基等の酸基を含有する官能性化合物が好適に用いられる。具体的には、3,4−ジアミノブタンスルホン酸、3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸、2,6−ジアミノベンゼンスルホン酸、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルスルホン酸等のスルホン酸基含有化合物、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール吉草酸等のカルボン酸基含有化合物等が挙げられる。
前記(1)ポリオール化合物、(2)芳香族イソシアネート、及び(3)分子内に活性水素を1個以上有する官能基を含有しかつ酸基を含有する官能性化合物を溶剤中で混合し、50℃〜150℃の温度で撹拌することによってポリウレタンポリマーが合成される。ここで用いる溶剤は、イソシアネート基に対して不活性であり、水との混和性が高く、かつ沸点が100℃以下の溶剤が好ましい。100℃を超える沸点を有する溶剤は、水分散後の工程において、得られた分散物から溶剤のみを除去することが困難になるため好ましくない。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル等が好適に用いられる。
続いて、得られたウレタンポリマーを水に分散することによって、水性ポリウレタンエ
マルジョンが得られる。ここで分散方法としては、上記混合物に機械的せん断力を作用させながらに徐々に水を加える方法、せん断力が作用している水中に上記混合物を徐々に加える方法、ローター・ステーター方式、ラインミル方式、スタティックミキサー方式、振動方式等の各種連続的乳化分散機に水及び上記混合物を定量的に供給して分散する方法等が用いられる。
マルジョンが得られる。ここで分散方法としては、上記混合物に機械的せん断力を作用させながらに徐々に水を加える方法、せん断力が作用している水中に上記混合物を徐々に加える方法、ローター・ステーター方式、ラインミル方式、スタティックミキサー方式、振動方式等の各種連続的乳化分散機に水及び上記混合物を定量的に供給して分散する方法等が用いられる。
ウレタンポリマーの水への分散によって得られる水性ポリウレタンエマルジョンは、分子内に導入された酸基によって界面活性すなわち自己乳化性が付与されているものであって、別途乳化剤等を必要とすることなく水中で安定に存在する。
市販の水性ポリウレタンエマルジョンとしては、第一工業製薬(株)製「スーパーフレックス」シリーズ、住友バイエルウレタン(株)製「ディスパコール」シリーズ、大日本インキ化学工業(株)製「ハイドラン」シリーズ、三洋化成工業(株)製「サンプレン」シリーズ等が挙げられる。
水性ポリウレタンエマルジョンは、市水あるいは工業用水によって希釈して用いられる。ここで希釈比は、固形分濃度が5wt%〜15wt%になるように設定される。固形分濃度が5wt%未満であると、十分な接着力が得られず、15wt%を超えると、スチールコードへの過剰な付着によって同じく十分な接着力が得られなくなるため好ましくない。
市水あるいは工業用水によって適切に希釈した水性ポリウレタンエマルジョンを容器に入れ、それにスチールコードを通過させることによって水性ポリウレタンエマルジョンを均一に付着させた後、室温で乾燥する。
熱可塑性ポリウレタンベルト本体を構成する材料としては、ポリオール化合物、イソシアネート、鎖延長剤が用いられる。
ポリオール化合物としては、水性ポリウレタンエマルジョンに用いられたポリオールから選ばれるポリオールが用いられる。イソシアネートとしては、前記水性ポリウレタンエマルジョンに用いられた芳香族イソシアネートに加えて、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メチルシクロヘキシル−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキシル−2,6−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネート)メチルシクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。鎖延長剤としては、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。
あらかじめ水性ポリウレタンエマルジョンからなる接着剤が塗布されたスチールコードは、軸を平行に配置した二個のベルト成形用ドラムにまたがるように所定間隔でらせん状に巻き付けられる。ベルト歯型に対応する凹凸が連続して設けられたベルト成形用ドラムの外周部近傍には、加圧手段と冷却手段を有する無端ベルト状プレス板が配置される。ベルト成形用ドラム外周に無端ベルト状プレス板を押し付けて、両者の間にキャビティを形成する。このキャビティに熱可塑性ポリウレタン材料を注型しながらベルト成形用ドラム及び無端ベルト状プレス板を回転させ、無端ベルト状プレス板によって加圧しながらキャビティ内の熱可塑性ポリウレタン材料を冷却し、順次歯部を形成する。全周にわたって歯部が形成された成形体を所定幅に輪切りすることによって熱可塑性ポリウレタン製歯付ベルトが得られる。
表1に示す第一工業製薬社製スーパーフレックス840(芳香族イソシアネートであるトリレンジイソシアネートを含む水性ポリウレタンエマルジョンからなる接着剤)をエマルジョン:水の比、1:1あるいは1:2に希釈して水系接着剤を用意し、直径0.6mmのスチールコードを浸漬して室温で乾燥し、接着剤処理スチールコードを用意した。
ポリオールとしてポリブチレンアジペート、イソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、鎖延長剤として1,4−ブタンジオールからなる原料を用いて、前記接着剤処理スチールコードが心線として埋設された熱可塑性ポリレタン製歯付ベルト(FTWH−25−T10)を作製した。
得られた各ベルトの1本の心線に対してその引抜き力を測定したところ、実施例1、2において実用的に十分な600N以上の十分な引抜き力が測定され、ベルト本体に対する心線の十分な接着力が確認された。さらに実施例1においては、ロード・ファー・イーストコーポレーション社製ケムロック218(エポキシ樹脂及びトルエンからなる有機溶剤系接着剤)を用いた参考例1を上回る引抜き力が得られた。
(比較例1〜6)
表1に示す第一工業製薬社製スーパーフレックス150、420、420NS、650(脂肪族イソシアネートを含む水性ポリウレタンエマルジョンからなる接着剤)を用いて、実施例1と同じベルトを作製し、心線引抜き力を測定した。比較例1〜6においては、引抜き力は600Nに満たない不十分な値にとどまった。
表1に示す第一工業製薬社製スーパーフレックス150、420、420NS、650(脂肪族イソシアネートを含む水性ポリウレタンエマルジョンからなる接着剤)を用いて、実施例1と同じベルトを作製し、心線引抜き力を測定した。比較例1〜6においては、引抜き力は600Nに満たない不十分な値にとどまった。
有機溶剤系接着剤を用いることなく心線の接着力が改善されたポリウレタン製ベルトであり、ベルトの製造・使用にあたって各種有機溶剤排出規制への適合が要求される用途に好適に用いられる。
1 心線
2 背部
3 歯部
2 背部
3 歯部
Claims (3)
- ポリウレタンからなるベルト本体内にスチール製の心線が埋設されたポリウレタン製ベルトにおいて、前記スチール製の心線が、芳香族イソシアネートを含む水性ポリウレタンエマルジョンからなる接着剤によって処理されたことを特徴とするポリウレタン製ベルト。
- 前記接着剤の固形分濃度が5wt%〜15wt%である請求項1記載のポリウレタン製ベルト。
- 前記ポリウレタンが熱可塑性ポリウレタンである請求項1記載のポリウレタン製ベルト。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2004132622A JP2005315317A (ja) | 2004-04-28 | 2004-04-28 | ポリウレタン製ベルト |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010185487A (ja) * | 2009-02-10 | 2010-08-26 | Nok Corp | 歯付ベルト |
JP2016211734A (ja) * | 2015-04-28 | 2016-12-15 | 三ツ星ベルト株式会社 | ベルト及びその製造方法 |
JP2020023170A (ja) * | 2018-07-25 | 2020-02-13 | 日東電工株式会社 | 易接着フィルムおよびその製造方法、偏光板、ならびに画像表示装置 |
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2004
- 2004-04-28 JP JP2004132622A patent/JP2005315317A/ja active Pending
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