JP2005314528A - インクジェット記録用水性インクのための水性顔料分散体及びインクジェット記録用水性インク - Google Patents

インクジェット記録用水性インクのための水性顔料分散体及びインクジェット記録用水性インク Download PDF

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【解決課題】 普通紙上の高い着色画像濃度と写真用専用紙上の高い光沢を兼備するインクジェット記録用水性インクのための水性顔料分散体及びインクジェット記録用水性インクを得る。
【解決手段】 顔料(A)と、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸とその他のモノエチレン性不飽和単量体とを重合せしめたスチレン−アクリル系共重合体(B)と、塩基性物質(C)とを水性媒体中に含有するインクジェット記録用水性インクのための水性顔料分散体において、前記スチレン−アクリル系共重合体(B)として、tert−ブチルスチレンの重合単位を全重合単位の25〜90モル%含み、かつ、酸価80〜150であるスチレン−アクリル系共重合体を用いることを特徴とする水性顔料分散体及び当該水性顔料分散体を含有するインクジェット記録用水性インク。
【選択図】 なし

Description

本発明は、インクジェット記録用水性インクのための水性顔料分散体及びインクジェット記録用水性インクに関する。
顔料を水性媒体に分散させるためのスチレン系共重合体やアクリル系共重合体については、例えば、共重合体を構成する単量体組成、グラフト構造やブロック構造の様な立体構造、マイクロカプセルの様な多層化構造等について盛んに研究されている。インクジェット記録用水性インクの様な水性顔料記録液を調製する際に用いられる水性顔料分散体は、特に盛んに研究されている。
従来から、この分野では、インクジェットノズルのオリフィス面に対するインク濡れ性(ヘッドからのインクの吐出持続性)等を向上させる手段として、顔料の分散剤に、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン等のスチレン系単量体、或いは(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸フェニル系単量体、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸ベンジル系単量体、(メタ)アクリル酸フェニルエチル、(メタ)アクリル酸フェニルプロピル等の(メタ)アクリル酸フェニルアルキル系単量体等の様な、分子の末端にベンゼン環を有するモノエチレン性不飽和単量体を必須成分として重合せしめた重合体を用いることが積極的に提案されている。
この様なインクジェット記録用水性インクの調製に用いる重合体としては、具体的には、(tert−ブチルスチレン)−b−(メタクリル酸)120の様なブロック共重合体(bはブロックを意味し、下付数字は重合度を表す)が知られている(特許文献1参照)。しかしながら、この特許文献1に記載されている様な共重合体を用いて調製したインクジェット記録用水性インクでは、全単量体に占めるtert−ブチルスチレンの重合単位の含有量が小さい上、共重合体の酸価が著しく高いため、普通紙上における優れた着色画像濃度は得られない。
前記特許文献1とは別に、インクジェット記録用水性インクの調製に用いる重合体として、例えば、tert−ブチルスチレン/スチレン/メタクリル酸=27/18/55(重量%)〔モル%換算17/18/65〕で重合せしめたランダム共重合体、tert−ブチルスチレン/メタクリル酸メチル//エトキシトリエチレングリコールメタクリレート/メタクリル酸=33.5/22.0//6.7/37.8(重量%)〔モル%換算23.2/24.5/0.3/48.9〕で重合せしめたブロック共重合体、tert−ブチルスチレン/スチレン/メタクリル酸=27/18/55(重量%)〔モル%換算17/18/65〕で重合せしめたブロック共重合体等が知られている(特許文献2、3及び4参照)。しかしながら、これらの特許文献2〜4に記載されている様な共重合体を用いて調製したインクジェット記録用水性インクでは、全単量体に占めるtert−ブチルスチレンの重合単位の含有量が小さい上、共重合体の酸価が高いため、やはり普通紙上における優れた着色画像濃度は得られない。
また前記特許文献5には、インクジェット記録用水性インクの調製に用いる重合体として、例えば、炭素原子数14〜20のアルキル基を有するモノアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルと(メタ)アクリル酸ベンジル系単量体とを必須成分として、必要に応じてスチレン系単量体及び/又は(メタ)アクリル酸フェニル系単量体とを共重合せしめて得たアクリル系共重合体が知られている。この特許文献5は、優れた着色画像濃度を示すインクジェット記録用水性インクの提供を目的とするものであり、スチレン系単量体を必要に応じて用いる単量体としている。そこには、スチレン系単量体の一つとしてtert−ブチルスチレンが例示されており、全単量体に対するスチレン系単量体及び(メタ)アクリル酸ベンジル系単量体の合計の含有割合は、15重量%以上、好ましくは30〜70重量%のアクリル系共重合体が好適であることが記載されている。
より具体的には、例えば、スチレン/メタクリル酸/ステアリルメタクリレート=41.7/38.3/20.0(重量%)〔モル%換算44/49/7〕となる様に共重合せしめたランダム共重合体、スチレン/メタクリル酸/ステアリルメタクリレート=64.7/15.3/20.0(重量%)〔モル%換算38/47/15〕となる様に共重合せしめたランダム共重合体、スチレン/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/ステアリルメタクリレート=15/49.7/15.3/20(重量%)〔モル%換算22/43/27/9〕となる様に共重合せしめたランダム共重合体等の様な共重合体を含むインクジェット記録用水性インクが記載されている。
しかしながら、特許文献5に記載されている様なスチレン系単量体としてスチレンの重合単位を含有する共重合体を用いてインクジェット記録用水性インクを調製したのでは、やはり、普通紙上における優れた着色画像濃度は得られない。
インクジェット記録用水性インクには、被記録媒体としてどんなものを用いても高品質の記録画像が得られることが要求されている。被記録媒体としては、写真用専用紙や普通紙がよく使用されており、普通紙上では着色画像濃度が、写真用専用紙上では画像の光沢が重要になる。しかしながら、普通紙上における高い着色画像濃度と写真用専用紙上における高い光沢を兼備するインクジェット記録用水性インクは、未だ充分に検討されていないのが現状である。
特開平10−007955号公報(第1頁請求項3) 特開平11−269418号公報(第9頁段落番号0067〜第15頁段落番号0098) 特開2001−354891公報(第10頁段落番号0065〜第11頁段落番号0071) 特開2003−201428公報(第8頁段落番号0069〜第12頁段落番号0074) 特開2002−088285公報(第4頁段落番号0025、同0031、第5頁段落番号0042、第6頁段落番号0047及び同0050)
本発明は、普通紙上における高い着色画像濃度と写真用専用紙上における高い光沢とを兼備するインクジェット記録用水性インクのための水性顔料分散体及びインクジェット記録用水性インクを得ることを課題とする。
本発明者等は、インクジェット記録用水性インクを調製するための共重合体として、スチレン系単量体の種類、その重合単位の含有量及び共重合体の酸価を振った各種共重合体を合成しそれらを用いて検討した結果、重合単位量一定での対比で、ベンゼン環に嵩高い置換基を有するtert−ブチルスチレンの重合単位を特定量含有しかつ特定範囲の酸価とした共重合体においては、ベンゼン環に置換基のないスチレンの重合単位を特定量含有しかつ特定範囲の酸価とした従来の共重合体では不満足であった、普通紙上における高い着色画像濃度と写真用専用紙上における高い光沢とを両立させることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、顔料(A)と、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸とその他のモノエチレン性不飽和単量体を重合せしめたスチレン−アクリル系共重合体(B)と、塩基性物質(C)とを水性媒体中に含有するインクジェット記録用水性インクのための水性顔料分散体において、前記スチレン−アクリル系共重合体(B)として、tert−ブチルスチレンの重合単位を全重合単位の25〜90モル%含み、かつ、酸価80〜150であるスチレン−アクリル系共重合体を用いることを特徴とするインクジェット記録用水性インクのための水性顔料分散体を提供する。
また、本発明は前記記載の水性顔料分散体を、質量換算で顔料分1〜10%となる様に調製したインクジェット記録用水性インクを提供する。
本発明の水性顔料分散体は、スチレン系単量体としてtert−ブチルスチレンの重合単位を特定量含有しかつ特定範囲の酸価であるスチレン−アクリル系共重合体を含有しているので、インクジェット記録用水性インクを調製した際、普通紙上における高い着色画像濃度と、写真用専用紙における高い光沢と両立させることが出来る。
本発明において(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸とメタクリル酸との両方を包含する技術用語である。同様に本発明におけるスチレン−アクリル系共重合体とは、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸とその他のモノエチレン性不飽和単量体を必須成分として重合せしめた共重合体を意味する技術用語である。tert−ブチルスチレンは、スチレン系単量体の一つであり、スチレンのベンゼン環上の一つの水素原子が第3級ブチル基に置換されたものを言う。水性媒体とは、水のみ又は水と水溶性有機溶剤との混合物で質量換算で60%以上の水を含有するものを言う。酸価とは、共重合体1gを中和するために必要な水酸化カリウムのmg数を意味し、単位はmgKOH/gである。また当業界においては、被記録媒体上の着色画像濃度が高いことを発色性に優れると言う場合がある。
本発明の水性顔料分散体とは、顔料(A)と、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸とその他のモノエチレン性不飽和単量体とを重合せしめたスチレン−アクリル系共重合体と、塩基性物質(C)とを水性媒体中に含有するインクジェット記録用水性インクのための水性顔料分散体において、前記スチレン−アクリル系共重合体として、tert−ブチルスチレンの重合単位を全重合単位の25〜90モル%含み、かつ、酸価80〜150であるスチレン−アクリル系共重合体を用いることを特徴とするインクジェット記録用水性インクのための水性顔料分散体である。
本発明の水性顔料分散体は、顔料(A)と前記スチレン−アクリル系共重合体とを水性媒体中に含有するが、これらは水性媒体中に分散した状態である。一方、塩基性物質(C)は水性媒体中に溶解した状態である。本発明の水性顔料分散体において、その水性媒体に分散している粒子(以下、分散粒子と言う。)は、顔料(A)粒子と前記スチレン−アクリル系共重合体粒子であっても良いが、顔料(A)が前記スチレン−アクリル系共重合体により被覆された複合粒子の形態であっても良い。そして水性顔料分散体には、前記分散粒子が、平均分散粒径(メディアン径)が50〜200nmとなる様に分散している。
本発明の水性顔料分散体の調製に用いる顔料(A)は、有機顔料及び/又は無機顔料であり、公知慣用のものがいずれも使用出来る。
本発明における前記スチレン−アクリル系共重合体は、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸とその他のモノエチレン性不飽和単量体を共重合せしめたものである。この様なスチレン−アクリル系共重合体は、前記各単量体を共重合することにより容易に得ることが出来る。こうすることで、前記各単量体を重合単位として含有するスチレン−アクリル系共重合体が得られる。
本発明では、スチレン系単量体としてのtert−ブチルスチレンと、(メタ)アクリル酸とその他のモノエチレン性不飽和単量体とをtert−ブチルスチレンの重合単位が全重合単位の25〜90モル%含む様に、かつ、酸価80〜150となる様に共重合せしめたスチレン−アクリル系共重合体が用いられる。以下、このスチレン−アクリル系共重合体を、共重合体(B)と略記する。
本発明においては、普通紙上における高い着色画像濃度と写真用専用紙上における高い光沢を兼備するという課題を解決するためには、従来多用されているスチレンに代えて、tert−ブチルスチレンが用いられる。共重合体(B)におけるtert−ブチルスチレンとしては、例えば、o−tert−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等が挙げられるが、p−tert−ブチルスチレンが好ましい。
また本発明における共重合体(B)は、(メタ)アクリル酸の重合単位を必須として含有するスチレン−アクリル系共重合体である。この重合単位は共重合体を水性媒体中へ分散させるために不可欠な重合単位であり、この重合単位により共重合体の水への親和性を高めることが出来、水性媒体への共重合体の分散性や水性顔料分散体とした際の分散粒子の分散安定性をより良好とすることが出来る。
(メタ)アクリル酸としては、アクリル酸又はメタクリル酸が挙げられる。(メタ)アクリル酸は、電気的中性状態とアニオン状態の共存範囲を広く制御出来、入手のしやすさ、価格等の点で好ましい。
本発明における共重合体(B)は、tert−ブチルスチレンの重合単位を全重合単位の20〜90モル%含有していれば良いが、tert−ブチルスチレンと、(メタ)アクリル酸以外のその他のモノエチレン性不飽和系単量体との合計が30〜90モル%、好適には40〜80モル%のスチレン−アクリル系共重合体である。
スチレン系単量体の重合単位を含まず、(メタ)アクリル酸以外のその他のモノエチレン性不飽和単量体の重合単位を多く含有する共重合体は、着色画像の被記録媒体上への接着性を高めることを出来、単純接触による着色画像の表面擦過痕の発生防止には有効な場合もあるが、酸価が一定の場合、普通紙上における着色画像濃度を思った程は大きく改善することが出来ない。
一方、スチレン系単量体の重合単位を多く含有する共重合体は、着色画像のひび割れや、加重接触による着色画像自体の被記録媒体からの剥離が起こりやすいことから、通常、後記するその他のモノエチレン性不飽和単量体等と併用して用いられる。また、スチレン系単量体の重合単位を多く含有する共重合体は、プリンター等のインク吐出ノズル界面との相互作用により、吐出応答性が不充分となって、着色画像にかすれが生じたり、ノズル目詰まりを引き起こしたりすることがある。
本発明における共重合体(B)は、共重合し得るその他のモノエチレン性不飽和単量体を更に併用しており、前記した単量体の重合単位以外の重合単位を含有する共重合体(B)である。
前記した単量体と共重合し得る、その他のモノエチレン性不飽和単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン等のtert−ブチルスチレン以外のスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェニルエチル、(メタ)アクリル酸フェニルプロピル、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル等の不飽和脂肪酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和脂肪酸アミド類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エーテル類;エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−オクテン、ビニルシクロヘキサン、4−ビニルシクロヘキセン、等の不飽和炭化水素類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、3−クロロプロピレン、等の不飽和ハロゲン化炭化水素類;4−ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン、等のビニル置換複素環化合物類;前記例示単量体中のカルボキシル基、水酸基、アミノ基等の活性水素を含有する置換基を含有する単量体とエチレンオキシド、プロピレンオキシド、シクロヘキセンオキシド等、エポキシド類との反応生成物;前記例示単量体中の水酸基、アミノ基等を含有する置換基を含有する単量体と酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、デカン酸、ドデカン酸等のカルボン酸類との反応生成物等を挙げることが出来る。
本発明の共重合体(B)としては、その他のモノエチレン性不飽和単量体として、(メタ)アクリル酸ベンジルを用いた、その他のモノエチレン性不飽和単量体の重合単位として、(メタ)アクリル酸ベンジルの重合単位を含有する共重合体が、特に、普通紙上におけるより高い着色画像濃度と写真用専用紙上におけるより高い光沢とを兼備する上で好ましい。
(メタ)アクリル酸ベンジルとしては、例えば、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジルが挙げられるが、中でもメタクリル酸ベンジルは本発明の技術的効果への寄与がより優れる点、容易に入手でき安価である点で好ましい。
共重合体(B)は、tert−ブチルスチレンと(メタ)アクリル酸ベンジルとの合計が30〜90モル%であり、tert−ブチルスチレンと(メタ)アクリル酸ベンジルとの合計モル数に対するtert−ブチルスチレンのモル数が40〜90%であり、かつ、酸価85〜135のスチレン−アクリル系共重合体であることが好ましい。
前記した共重合体(B)のなかでも、tert−ブチルスチレンとメタクリル酸ベンジルとの合計モル数に対するtert−ブチルスチレンのモル数が50〜90%のスチレン−アクリル系共重合体であることが最も好ましい。
共重合体(B)中のtert−ブチルスチレンと(メタ)アクリル酸ベンジルとの合計の含有割合と、tert−ブチルスチレンと(メタ)アクリル酸ベンジルとの合計に占めるtert−ブチルスチレンの含有割合とを、各々前記した範囲することで、普通紙上における着色画像濃度をより高められる点で好ましい。尚、被記録媒体上の着色画像は、着色樹脂皮膜からなるものである。
共重合体(B)におけるtert−ブチルスチレンと(メタ)アクリル酸ベンジルとの合計モル数、この合計モル数に対するスチレン系単量体のモル%、併用したその他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体の種類や量及び共重合体の分子量等が一定の条件のもとでの対比では、共重合体(B)の酸価が小さすぎると分散粒子の分散安定性が低下する傾向にあり、逆に、共重合体(B)の酸価が大きすぎると着色画像の耐水性や着色画像濃度も低下する傾向があり、いずれも好ましくない。
この様な観点から共重合体(B)の酸価は、前記した通り、80〜150の範囲から選択される。この酸価は、85〜135、なかでも酸価85〜110の範囲で、被記録媒体として普通紙を対象とした場合に、特に高い着色画像濃度が得られる点で、特に好ましい。共重合体(B)をこの様な酸価とするには、全重合単位中の(メタ)アクリル酸の重合単位の含有割合を、15〜30モル%とすれば良い。
本発明における共重合体(B)が前記酸価にあることが、後記塩基性物質(C)にて中和した共重合体の水性媒体への分散性が良好で、水性顔料分散体とした際の分散粒子の分散安定性への寄与が顕著である。より具体的には、この水性顔料分散体は、インクジェット記録用水性インクの調製に適用した場合に、分散粒子の分散安定性が良好となるので好ましい。
共重合体(B)の全重合単位中の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体の重合単位の含有割合は特に制限されないが、通常3〜20%、好適には5〜15%である。尚、ここでの%は質量基準である。水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、モル基準では3〜15モル%とすれば良い。
共重合体(B)は、tert−ブチルスチレンと、(メタ)アクリル酸と、その他のモノエチレン性不飽和単量体とを共重合せしめた共重合体であれば良いが、その他のモノエチレン性不飽和単量体として、前記した以外の、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体を前記したモノエチレン性不飽和単量体に更に併用しても良い。
水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラメチレンエーテルグルコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドのランダムポリマーグリコール又は同ブロックポリマーグリコールのモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド−ポリテトラメチレンエーテルのランダムポリマーグリコール又は同ブロックポリマーグリコールのモノ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられるが、中でもヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは共重合体のガラス転移温度の調整や共重合体の低粘度化が容易であり、容易に入手でき安価である点で好ましい。以下、ガラス転移温度はTgと言う。
本発明における共重合体(B)は、Tgが、5〜90℃の範囲にあることが、前記分散性や分散安定性が良好で、またインクジェット記録用水性インクの調製に使用した場合の印字安定性が良く、着色画像の耐水性も良好な上、耐摩擦性、耐棒積み性等の画像保存性も良好となるので好ましい。ここで、共重合体(B)のTgは、各単量体のホモポリマーのTgから算術的に求められる計算値である。
本発明における共重合体(B)としては、前記した各単量体の各重合単位の他に、炭素原子数14未満のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体の重合単位を含有する共重合体が好ましい。
前記炭素原子数14未満のアルキル基を含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体を共重合せしめた共重合体(B)は、炭素原子数14以上のアルキル基を含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体を共重合せしめた同様の共重合体(B)に比べて、Tgをより高く設計することができ、着色画像皮膜の剛性をより高めることが出来、単純接触による着色画像の表面擦過痕の発生防止には有効である点で好ましい。
本発明における共重合体(B)の重量平均分子量は、特に制限されるものではないが、水性顔料分散体の粘度が低く、分散安定性も良好で、インクジェット記録用水性インクの調製に使用した場合に長期間安定した印字を行わせることが容易な点で、5,000〜100,000の範囲とすることが好ましく、10,000〜70,000の範囲とすることが特に好ましい。
本発明における共重合体(B)は、前記各単量体を前記各重合単位の含有割合となる様に、反応容器に仕込んで反応させることにより製造することが出来る。本発明においては、前記した各単量体の反応率等は略同一と考えて、各単量体の仕込割合を、各単量体の重合単位のモル換算の含有割合と見なすものとする。本発明における共重合体(B)は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の従来より公知の種々の反応方法によって合成することが出来る。この際には、公知慣用の重合開始剤や連鎖移動剤を併用することも出来る。
本発明における共重合体(B)は、(メタ)アクリル酸を共重合せしめた(メタ)アクリル酸の重合単位を含有する共重合体であるが、本発明の水性顔料分散体の調製に当たっては、そのカルボキシル基の少なくとも一部を後記塩基性物質(C)によってイオン化された形態とすることで、共重合体(B)の水性媒体中への分散性や分散粒子の分散安定性を発現させる。イオン化されたカルボキシル基の最適割合は、通常30〜100%、特に70〜100%の範囲に設定されることが好ましい。このイオン化されたカルボキシル基の含有割合は、カルボキシル基と塩基性物質(C)のモル比を意味しているのではなく、解離平衡を考慮に入れたものである。カルボキシル基は、化学量論的に当量の強塩基性物質を用いても解離平衡によりイオン化された基(カルボキシラート基)の含有割合は100%未満であって、カルボキシラート基とカルボキシル基の混在状態である。
共重合体(B)におけるtert−ブチルスチレンと、(メタ)アクリル酸以外のその他のモノエチレン性不飽和単量体との合計モル数、この合計モル数に対するtert−ブチルスチレンのモル%、前記その他のモノエチレン性不飽和単量体の種類や量、共重合体の分子量及び酸価等が一定の条件のもとでの対比では、共重合体(B)中のカルボキシル基をイオン化させるための塩基性物質(C)の使用量が少ない程、着色画像の耐水性や着色画像濃度は向上する傾向にあるが、一方で、分散粒子の分散安定性が低下する傾向にある。従って、塩基性物質(C)の使用量は、用いる共重合体(B)の酸価と合わせて、これら特性がバランスする様に使用量を選択することが好ましい。
この様に、共重合体(B)のカルボキシル基の少なくとも一部をイオン化するために用いられる塩基性物質(C)としては、公知慣用のものがいずれも使用出来る。この様な塩基性化合物(C)としては、例えば、アンモニア、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン等の有機アミン、アルカリ金属水酸化物からなる群から選ばれる化合物が挙げられる。尚、本発明において、塩基性含窒素複素環化合物は、第三級アミンとする。
塩基性物質(C)で共重合体(B)のカルボキシル基の少なくとも一部をイオン化することにより、カルボキシラート基の対イオンは、アンモニウムイオン又はアルカリ金属イオンからなる群から選ばれるカチオンとなる。尚、本発明において塩基性化合物(C)として塩基性含窒素複素環化合物を用いた場合には、前記複素環化合物は、塩基性含窒素複素環化合物のプロトン化カチオンとなる。
塩基性物質(C)として、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの様なアルカリ金属水酸化物を用いた場合には、アンモニアや前記有機アミンを用いた場合に比べて、水性顔料分散体中の分散粒子の分散安定性が良好となるので好ましい。
アンモニアや前記有機アミンを用いた場合は、低温においてそれらが揮発性に優れるため、水性顔料分散体及びインクジェット記録用水性インクの被記録媒体上の着色画像の乾燥性や、インクジェット記録用水性インクの調製直後の吐出安定性に優れる。
しかしながら、一方でアンモニアや前記有機アミンは、長時間放置及び/又は高温雰囲気下で揮散するため、水性顔料分散体及びインクジェット記録用水性インク中の分散粒子の分散安定性が徐々に損なわれていき、分散粒子の沈降が観察される場合がある。この様な水性顔料分散体からそのままインクジェット記録用水性インクを調製した場合には、インク中の沈降した粒子がプリンターのノズルからのインク液滴の吐出不良を引き起こす原因となるので好ましくない。
本発明において最適な共重合体(B)は、塩基性物質(C)によりカルボキシル基の一部が中和された、カルボキシル基及びカルボキシラート基の両方を含有するスチレン−アクリル共重合体である。
本発明における共重合体(B)は、重合可能なエチレン性不飽和二重結合を一つしか有さない、モノエチレン性不飽和単量体のみを重合して得られた線状の(リニアー)スチレン−アクリル系共重合体であることが、水性媒体への良好な分散性及び低粘度の水性顔料分散体を得る上では好ましい。しかしながら、前記特性を損なわない範囲において、共重合体(B)は必要ならば架橋部分を含有していても良い。共重合体(B)に架橋部分を含有させるには、前記その他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体として、例えば、(メタ)アクリル酸2,3−エポキシプロピルの様なエポキシ基を含有するモノエチレン性不飽和単量体や、ジビニルベンゼンの様な2以上のエチレン性不飽和二重結合を含有する単量体を、前記必須の単量体に極少量併用する様にして重合する。
エポキシ基を含有するモノエチレン性不飽和単量体の重合単位を含有する共重合体(B)の場合は、このエポキシ基を開環反応させて架橋を行う。エポキシ基の架橋に必要ならば硬化触媒を併用しても良い。
本発明の水性顔料分散体は、例えば、後記する様な1)〜4)の方法で製造することが出来る。
1)共重合体(B)と塩基性物質(C)とを含有する水性エマルジョンに顔料(A)を機械的に強制分散する水性顔料分散体の製造方法。
2)顔料(A)の存在下の水中で分散剤と塩基性物質(C)とを用いて前記した各単量体を重合させ共重合体(B)とし必要に応じて会合させる水性顔料分散体の製造方法。
3)顔料(A)と共重合体(B)と有機溶剤の混合物を、水と塩基性物質(C)を用いて徐徐に油相から水相に転相させてから脱溶剤する水性顔料分散体の製造方法。
4)顔料(A)と共重合体(B)と塩基性物質(C)と有機溶剤と水との均一混合物から脱溶剤を行い、酸性物質を加えて酸析し析出物を洗浄後、この析出物を塩基性物質(C)と共に水性媒体に分散させる水性顔料分散体の製造方法。
前記した通り、本発明の水性顔料分散体において、分散粒子は、顔料(A)と共重合体(B)との相互作用が強く働いているものの方が分散安定性等の点で好ましく、前記方法3)及び4)により製造される水性顔料分散体は、前記方法1)及び2)により製造される水性顔料分散体に比べ、分散粒子の分散安定性が高いだけでなく、水性顔料分散体の粘度もより低くなるので好ましい。インクジェット記録方式では、ノズルからインク液滴を飛ばすためにはそれが低粘度であることが望まれることから、それを調製するための水性顔料分散体自体の粘度も低いことが好まれる。
本発明では、前記いずれの製造方法をとるにせよ、顔料(A)、共重合体(B)、塩基性物質(C)及び水性媒体からなる混合物を分散する工程を必須として含ませることが好ましい。この混合物には水溶性有機溶剤を含有させるのが好ましい。より具体的には、少なくとも顔料(A)、共重合体(B)、塩基性物質(C)、水溶性有機溶剤及び水からなる混合物を分散する工程(分散工程)を含ませることが好ましい。水に水溶性有機溶剤を併用することにより分散工程における液粘度を低下させることが出来る場合がある。
水溶性有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、等のケトン類;メタノール、エタノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、2−メトキシエタノール、等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、等のアミド類が挙げられ、とりわけ炭素数が3〜6のケトン及び炭素数が1〜5のアルコールからなる群から選ばれる化合物を用いるのが好ましい。これらの水溶性有機溶剤は、前記共重合体(B)溶液として用いられても良く、別途独立に分散工程中において前記混合物中に含有させても良い。
本発明の水性顔料分散体は、質量換算で、顔料(A)/共重合体(B)(不揮発分換算)=100/10〜100/100とするのが好ましい。最適には、質量換算で顔料(A)100部当たり、共重合体(B)の不揮発分20〜65部かつ水性媒体835〜880部となる様に、前記した原料を用いて製造することが出来る。共重合体の顔料に対する割合が増えると後記する写真用専用紙上における着色画像の耐擦過性は良好になるが、普通紙上における着色画像濃度が低下するので好ましくない。また、共重合体の割合が少なすぎると、写真用専用紙上における光沢は低下するので、やはり好ましくない。
分散工程において用いることの出来る分散装置としては、既に公知の種々の方式による装置がいずれも使用出来、特に限定されるものではない。この様な分散装置としては、例えば、スチール、ステンレス、ジルコニア、アルミナ、窒化ケイ素、ガラス等でできた直径0.1〜10mm程度の球状分散媒体の運動エネルギーを利用する方式、機械的攪拌による剪断力を利用する方式、高速で供給された被分散物流束の圧力変化、流路変化あるいは衝突に伴って発生する力を利用する方式、等の分散方式の分散装置を挙げることが出来る。
水性顔料分散体を得るまでの任意の工程又は水性顔料分散体を得てから後記するインク調製前において超音波処理を行うことが出来る。例えば、顔料(A)と共重合体(B)と塩基性物質(C)と水性媒体とを混合分散して水性顔料分散体を得るに当たっては、超音波処理を併用することが好ましい。具体的には、前記したビーズミルの様な分散装置により、各成分を水性媒体中に分散することで水性顔料分散体を得る間及び/又はその後に、更に超音波処理することは写真用専用紙上での着色画像光沢をより高める意味で有用である。この超音波処理は、ビーズミル分散と同時、又はビーズミル分散後、更には以下に示す、有機溶剤除去工程の後、溶解状態にある共重合体(B)に顔料(A)表面を密着させる工程(酸析工程)と濾過工程を経て再分散中、再分散した後等の、いずれの工程中、工程後にも効果を得ることが出来る。
超音波処理における超音波照射の条件は、特に制限されないが、250〜3000Wの出力と15〜40kHzの周波数で行うことが好ましく、さらに好ましくは500〜2000Wの出力と15〜25kHzの周波数で行うことである。
出力については、この範囲に設定すると、キャビテーションの効率が高くなる結果、顔料分散工程が効率化でき、特に粗大粒子が破砕でき残存しにくくなること、その結果、水性顔料分散体自身から得られる着色被膜の彩度(質感)の改良効果、水性顔料分散体から水性顔料記録液として後記するインクジェット記録用水性インクを調製した際にスムーズな吐出が得られる(良好な吐出安定性)こと、粒子の沈降等による製品の品質の低下がなくなること、発振棒のエロージョン(腐食)が著しく小さくなり機器メンテナンスコストが下がること等の理由により、大変好ましい。
一方、周波数をこの範囲に設定することで、キャビテーションをうまく起こさせることが出来、最も、超音波による顔料分散を効率的に行うことが出来る様になる。その結果、例えば水性顔料分散体の粘度もより適切な範囲とすることが容易であり、かつそれからインクジェット記録用水性インクを調製したときに、粒子径などの基本物性が優れたものを調製することが出来る様になる。
超音波処理については、冷却しながら超音波照射することが、顔料(A)の結晶成長等を抑制する観点から望ましい。
超音波照射を行う時間は、実質的に顔料(A)が分散出来るのに必要に応じて十分な時間を取れば良いが、実質的に容器内で超音波が照射されている時間で、単位分散液量に対し100〜500秒(100〜500秒/gと表記する)であることが好ましい。分散平均粒子サイズを細かくし、普通紙上のより高い着色画像濃度を保ちつつ、写真用専用紙でのより高い光沢を達成し、かつ製造上のコストを考えて前記したような100〜500秒/gとすることが好ましい。超音波処理は、インクジェット記録用水性インクに行うよりも、水性顔料分散体において行った方が、より高い効果がより弱いエネルギーかつより短時間で得られるので好ましい。
こうした分散工程を実施することで、共重合体(B)を含有する液媒体中に顔料(A)が分散した状態が形成される。またこうした分散工程において塩基性物質(C)をより多くの量用いることで、液媒体中に含有する共重合体(B)を分散状態から溶解状態とすることも出来る。
分散工程に引き続き、分散工程において有機溶剤を使用した場合に、これを除去する工程、所望の固形分濃度にするため余剰の水を除去する工程(蒸留工程)を実施することが出来る。本発明の水性顔料分散体としては有機溶剤を含まないものが臭気がなく、作業環境を良好と出来る点で好ましい。
本発明の水性顔料分散体は、分散到達レベル、分散所要時間及び分散安定性の全ての面で、より優れた特性を発揮させるに当たって、顔料(A)と共重合体(B)とは、より相互作用が強く働き分散していることが好ましい。
分散粒子の相互作用を高めるため、溶解状態にある共重合体(B)に顔料(A)表面を密着させる工程を、前記分散工程の後工程として組み込むことが好ましい。
溶解状態にある共重合体(B)を顔料(A)表面に密着させる工程としては、顔料(A)と塩基性物質(C)により溶解している共重合体(B)とを含有する液媒体を酸性化することにより、共重合体(B)中のアニオン性基を中和される前の官能基に戻して、共重合体(B)を析出させる工程(酸析工程)が好ましい。
酸析工程は、前記分散工程と必要に応じて実施される蒸留工程を経て得られた水性顔料分散体に塩酸、硫酸、酢酸等の酸性物質を加えて酸性化し、塩基性物質(C)と塩を形成することによって溶解状態にある共重合体(B)を顔料(A)粒子表面に析出させる工程である。この工程により、顔料(A)と共重合体(B)との相互作用を高めることが出来る。こうして相互作用を高めて得られた析出物を濾別後、より好ましくはその析出物を洗浄してから、再度塩基性物質(C)と共に水性媒体に分散させることで、より分散安定性に優れた水性顔料分散体とすることが出来る。
濾過工程は、顔料(A)と共重合体(B)との相互作用を高めて得られた析出物を濾別する工程である。この析出物は顔料(A)と共重合体(B)とからなる固形分である。この工程は前記した酸析工程後の固形分をフィルタープレス、ヌッチェ式濾過装置、加圧濾過装置等により濾過する工程である。
洗浄工程は、前記濾過工程で濾別された析出物を洗浄濾過する工程であり、この工程を実施することにより、最終的に得られる水性顔料分散体に含有する無機塩類の低減又は除去が可能になる。市販の有機顔料は、無機塩類を多量に含有している場合があり、この様な有機顔料を用いて調製した水性顔料分散体から得られるインクジェット記録用水性インクは、それによるプリンターノズルの目詰まり、無機塩のヒーター部分での析出によるコゲーション等による吐出不良が起こり易い。しかしながら、前記洗浄工程を経た水性顔料分散体からインクジェット記録用水性インクを調製することで、この問題は解消される。
前記方法4)に従って水性顔料分散体を製造する場合には、市販の有機顔料に含有する無機塩類とその他の要因で混入してきた無機塩類とをこの洗浄工程で一括して低減又は除去出来ることから、その他の製造方法において前記同様の問題が発生した際に必要となる、有機顔料自体の事前洗浄を独立して行う必要がなく、単位操作がより簡便で済むという長所がある。
再分散工程は、前記酸析工程、濾過工程によって得られた固形分に塩基性物質(C)及び必要により水や添加物を加えて、再び水性顔料分散体とする工程である。この工程では、共重合体(B)中のイオン化したカルボキシル基の対イオンを分散工程で用いた塩基性物質(C)とは別の塩基性物質(C)に変更することが出来る。
酸析工程と再分散工程を必須の工程として、好ましくは濾過工程と洗浄工程をも含む製造方法で水性顔料分散体を製造すると、分散粒子として前記した様に顔料(A)と共重合体(B)との相互作用がより高まった状態を容易に形成させることができ、水性顔料分散体として、分散到達レベルや分散安定性等の物性面や耐溶剤性等の使用適性の面で、より優れた特性を発揮させることが出来る。
こうして得られた本発明の水性顔料分散体に、例えば、水性ポリウレタン、水性ポリエステル、水性アクリルからなる群から選ばれる少なくとも1種の水性樹脂を含有させることも出来る。ここで水性樹脂としては、界面活性剤等を含ませなくてもそれ自体で水性媒体中に分散しうる樹脂が好ましい。水性ポリウレタンは、ジメチロールプロピオン酸とジオールと有機ジイソシアネートと必要に応じてジアミンを組み合わせて重付加反応させカルボキシル基含有ポリウレタンとしこれを前記した様な塩基性物質(C)で中和することで製造出来るし、水性ポリエステルは、トリメリット酸、ピロメリット酸、スルホコハク酸及びこれらの誘導体とジオールとジカルボン酸とを組み合わせてエステル化或いはエステル交換反応させカルボキシル基又はスルホ基含有ポリエステルとしこれを前記した様な塩基性物質(C)で中和することで製造出来るし、水性アクリルは、(メタ)アクリル酸をその他の共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体と共重合反応させカルボキシル基含有アクリル樹脂としこれを前記した様な塩基性物質(C)で中和することで製造出来る。
この水性樹脂の分散粒子は、平均分散粒径(メディアン径)10〜100nmの範囲でベースとなる前記水性顔料分散体中の分散粒子のそれよりも相対的に小さいものであることが好ましい。本発明の水性顔料分散体へのこれら水性樹脂の添加は、写真用専用紙の様なインクジェット記録専用紙上の着色画像の指触時の耐擦過性を向上させる効果がある。これら水性樹脂の中では、水性ポリウレタンが指触時の耐擦過性を向上させる効果がより大きいので好ましい。指触時の耐擦過性とは、被記録媒体上の着色画像を印字直後から一定時間毎に指で擦った時の色の滲み方を意味する。水性ポリウレタンの添加は、印字直後から印字10分後の耐擦過性の改良に効果的である。
こうした水性ポリウレタンとしては、例えば、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエーテルエステル系ポリウレタン、ポリカーボネート系ポリウレタン等が挙げられる。これらは前記した製造方法において、ジオールとして、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール等対応する高分子ジオールを用いることにより容易に得られる。
前記した水性樹脂は、顔料(A)の質量換算100部当たり不揮発分の質量換算で5〜30部となる様に本発明の水性顔料分散体に添加することで、含有させることが出来る。この水性樹脂は本発明の水性顔料分散体に添加してからインクジェット記録用水性インクを調製する様にしても良いが、本発明の水性顔料分散体からインクジェット記録用水性インクを調製してから、そこにこの水性樹脂を前記した量となる様に添加することも出来る。
本発明のインクジェット記録用水性インクは、本発明の水性顔料分散体を含むものである。この様なインクジェット記録用水性インクは、質量換算による分散粒子含有率1〜10%となる様に水性顔料分散体を調製することが出来る。着色に関係する分散粒子は、顔料(A)自体の粒子と顔料(A)が共重合体(B)により被覆された複合粒子であり、これらの合計が顔料分であり、その含有率が1〜10%である。インクジェット記録用水性インクの調製の際には、前記した分散粒子含有率を越える、濃厚な水性顔料分散体に対して必要に応じて水や水溶性有機溶剤を加えて、前記範囲で必要な分散粒子含有率となる様に希釈したり、湿潤剤、防かび剤、pH調節剤等の水性インクの調製に必要な各種添加剤を併用することが出来る。また得られたインクジェット記録用水性インクは、必要に応じてミクロフィルターにより濾過をすることにより、ノズル目詰まり等を極めて少なくすることが出来る。
また、吐出方式に応じて組成を適宜選択し調製することにより、本発明の水性顔料分散体から、ピエゾ方式でもサーマル方式でもいずれの方式にも対応出来るインクジェット記録用水性インクを得ることが出来る。本発明のインクジェット記録用水性インクは、公知慣用の被記録媒体への記録に使用することが出来る。この様な被記録媒体としては、例えば普通紙、樹脂コート紙、混抄紙、合成樹脂フィルム等が挙げられる。中でも、本発明のインクジェット記録用水性インクは、写真用専用紙上においてより光沢の高い着色画像と、普通紙上において着色画像濃度がより高い着色画像が得られる。
以下の合成例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は、いずれも質量換算である。
[合成例1]
攪拌装置、滴下装置、温度センサー、及び上部に窒素導入装置を有する環流装置を取り付けた反応容器を有する自動重合反応装置〔重合試験機DSL−2AS型、轟産業(株)製〕の反応容器にメチルエチルケトン1,100部を仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、滴下装置よりアクリル酸ブチル187部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル75部、メタクリル酸138部、p−tert−ブチルスチレン300部、メタクリル酸ベンジル300部及び「パーブチル(登録商標)O」〔有効成分ペルオキシ2−エチルヘキサン酸tert−ブチル、日本油脂(株)製〕60部の混合液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに同温度で15時間反応を継続させて、酸価90、設計Tg44℃、樹脂分47.0%のスチレン−アクリル系共重合体(B−1)の溶液を得た〔全モノマーモル数に対するtert−ブチルスチレンとメタクリル酸ベンジルとの合計のモル%=50モル%,tert−ブチルスチレンのモル数/(tert−ブチルスチレンのモル数とメタクリル酸ベンジルのモル数の和)=52%〕。
[合成例2]
「パーブチル(登録商標)O」80部を用いる以外は合成例1と同様の操作を行い、酸価90、設計Tg44℃、樹脂分47.2%のスチレン−アクリル系共重合体(B−2)の溶液を得た〔全モノマーモル数に対するtert−ブチルスチレンとメタクリル酸ベンジルとの合計のモル%=50モル%,tert−ブチルスチレンのモル数/(tert−ブチルスチレンのモル数とメタクリル酸ベンジルのモル数の和)=52%〕。
[合成例3]
メチルエチルケトン1,100部を用い、かつメタクリル酸ブチル187部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル75部、メタクリル酸138部、スチレン300部、メタクリル酸ベンジル300部及び「パーブチル(登録商標)O」80部の混合液を用いる以外は合成例1と同様の操作を行い、酸価90、設計Tg70℃、樹脂分47.3%のスチレン−アクリル系共重合体(B−3)の溶液を得た〔全モノマーモル数に対するスチレンとメタクリル酸ベンジルとの合計のモル%=57モル%,スチレンのモル数/(スチレンのモル数とメタクリル酸ベンジルのモル数の和)=63%〕。
これら各合成例1〜3で合成された、ランダム構造で直鎖状の共重合体(B−1)〜共重合体(B−3)の単量体組成を表1に、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸ベンジル系単量体との合計モル%、スチレン系単量体のモル数/(スチレン系単量体のモル数と(メタ)アクリル酸ベンジル系単量体のモル数の和を表2に示した。
表1 各共重合体の単量体組成
Figure 2005314528
注)表1中のtBSTはp−tert−ブチルスチレン、Stはスチレン、BzMAはメタクリル酸ベンジル、BMAはメタクリル酸ブチル、BAはアクリル酸ブチル、HEMAはメタクリル酸2−ヒドロキシエチル、MAAはメタクリル酸を意味する。数字は、質量換算で全単量体を100部とした時の各単量体の部数を表している。
表2 各共重合体における特性パラメータ
Figure 2005314528
尚、表2中、St+BzMAは、合成例1及び2においては、共重合体に占めるtert−ブチルスチレンとメタクリル酸ベンジルとの合計モル%を意味し、合成例3においては、共重合体に占めるスチレンとメタクリル酸ベンジルとの合計モル%を意味する。St/St+BzMAは、合成例1及び2においては、tert−ブチルスチレンとメタクリル酸ベンジルとの合計モル数に対するtert−スチレンのモル数(%)を意味し、合成例3においては、スチレンとメタクリル酸ベンジルとの合計モル数に対するスチレンのモル数(%)を意味する。
[合成例4]
tert−ブチルスチレン335部、メタクリル酸メチル220部、エトキシトリエチレングリコールメタクリレート67部、メタクリル酸378部の混合液を用いる以外は合成例1と同様の操作を行い、酸価247のランダム構造で直鎖状のスチレン−アクリル系共重合体(B−4)の溶液を得た〔全モノマーモル数に対するtert−ブチルスチレンとメタクリル酸ベンジル系単量体との合計のモル%=23.2モル%〕。
以下、実施例にて本発明を詳細に説明するが、これらの実施例は本発明を具体的に説明するものであり、実施の態様がこれにより限定されるものではない。
冷却用ジャケットを備えた混合槽に、合成例1で得た共重合体(B−1)、25%水酸化カリウム水溶液、水及び銅フタロシアニンブルー〔C.I.Pigment Blue 15:3〕250部、メチルエチルケトン41部、水を仕込み、攪拌、混合した。ここでそれぞれの仕込量は、共重合体は顔料に対して不揮発分で30%の比率となる量、25%水酸化カリウム水溶液はスチレン−アクリル系共重合体の酸価が100%中和される量、水は混合液の不揮発分を30%とするのに必要な量である。
混合液を直径0.3mmのジルコニアビーズを充填した分散装置〔SCミル SC100/32型、三井鉱山(株)製〕に通し、循環方式により4時間分散した。分散装置の回転数は2700回転/分とし、冷却用ジャケットには冷水を通して分散液温度が40℃以下に保たれる様にした。
分散終了後、混合槽より分散原液を抜き採り、次いで水1,000部で混合槽及び分散装置流路を洗浄し、分散原液と合わせて希釈分散液を得た。希釈分散液をガラス製蒸留装置に入れ、メチルエチルケトンの全量と水の一部を常圧蒸留で除いた。
メチルエチルケトンの除かれた分散液を冷却し、その後、攪拌しながら10%塩酸を滴下してpH4.5に調整したのち、固形分をヌッチェ式濾過装置で濾過、水洗した。ケーキを容器に採り、スチレン−アクリル系共重合体の酸価が85%中和される量の20%水酸化カリウム水溶液と水を加え、分散攪拌機〔TKホモディスパ20型、特殊機化工業(株)製〕にて再度分散した。
この分散液に、純水を加えて不揮発分23%に調整した。この分散液を、遠心分離機〔50A−IV型、(株)佐久間製作所〕にて6000G、30分間かけて粗大粒子を除去したのち、純水を加えて不揮発分を調整し、不揮発分20%の水性顔料分散体を得た。この水性顔料分散体の分散粒子は、顔料が共重合体により被覆された複合粒子であった。
得られた水性顔料分散体のpHは9.86、不揮発分20.0%、平均分散粒径(メディアン径)は129.4nmであった。粘度は4.00 mPa/sであった。この分散体は、ガラス容器中60℃10日間保存しても沈降物が全くなく、分散粒子の分散安定性には優れていた。
遠心分離直前までは実施例1と同じ操作で水性顔料分散液を作成した。得られた23%の水性顔料分散体300gに、タイゴンチューブの先を付け、チューブポンプを用いて分散体を超音波分散機のベッセル中を通過させた。超音波分散機は日本精機製作所(株)製US1200TCVPを使用した。また、ベッセルに付属している冷却器には、2℃の冷却水を流して内容物を冷却させた。液をそのまま30分間、ポンプで流して分散体を十分に冷却した後、送液スピードを900g/分にして、1200Wで、超音波照射操作を27分間(サンプル単位gあたりの実照射時間200秒)、20kHzの振動数で行い、水性顔料分散体を得た。超音波照射の間、分散体温度は常に0〜30℃の範囲内にあった。
この分散液を、遠心分離機〔50A−IV型、(株)佐久間製作所〕にて6000G、30分間かけて粗大粒子を除去したのち、純水を加えて不揮発分を調整し、不揮発分20%の水性顔料分散体を得た。この水性顔料分散体の分散粒子は、顔料が共重合体により被覆された複合粒子であった。
得られた水性顔料分散体のpHは9.61、不揮発分20.0%、平均分散粒径(メディアン径)は85.8nmであった。粘度は3.06 mPa/sであった。この分散体は、ガラス容器中60℃10日間保存しても沈降物が全くなく、分散粒子の分散安定性には優れていた。
共重合体を(B−1)から(B−2)に変更した以外は実施例1と同様の操作で水性顔料分散体を得た。得られた水性顔料分散体のpHは9.80、不揮発分20.0%、平均分散粒径(メディアン径)は112.6nmであった。粘度は4.04 mPa/sであった。この分散体は、ガラス容器中60℃10日間保存しても沈降物が全くなく、分散粒子の分散安定性には優れていた。
共重合体を(B−1)から(B−2)に変更した以外は実施例2と同様の操作で水性顔料分散体を得た。得られた水性顔料分散体のpHは9.75、不揮発分20.0%、平均分散粒径(メディアン径)は91.6nmであった。粘度は2.98 mPa/sであった。この分散体は、ガラス容器中60℃10日間保存しても沈降物が全くなく、分散粒子の分散安定性には優れていた。
遠心分離直前までは実施例1と同じ操作で水性顔料分散液を作成した。ハイドラン(登録商標)AP−40F(大日本インキ化学工業(株)製水性のポリエステル系ポリウレタンの水分散体、平均分散粒径(メディアン径)8nm、不揮発分23%)を添加して、均一となる様に攪拌した。尚、このハイドラン(登録商標)AP−40Fの添加量は、水性顔料分散体中の顔料100部当たり、樹脂分にして20部に相当している。
この分散液を、遠心分離機〔50A−IV型、(株)佐久間製作所〕にて6000G、30分間かけて粗大粒子を除去したのち、純水を加えて不揮発分を調整し、不揮発分20%の水性顔料分散体を得た。この水性顔料分散体の分散粒子は、顔料が共重合体により被覆された複合粒子であった。
得られた水性顔料分散体のpHは9.48、不揮発分20.0%、平均分散粒径(メディアン径)は130.4nmであった。粘度は4.06 mPa/sであった。この分散体は、ガラス容器中60℃10日間保存しても沈降物が全くなく、分散粒子の分散安定性には優れていた。
比較例1
共重合体を(B−1)から(B−3)に変更し、共重合体(B−3)の添加量を銅フタロシアニン顔料の40%にした以外は実施例1と同様の操作で水性顔料分散体を得た。
得られた水性顔料分散体のpHは9.81、不揮発分20.0%、平均分散粒径(メディアン径)は110.4nmであった。粘度は3.06 mPa/sであった。この分散体は、ガラス容器中60℃10日間保存しても沈降物が全くなく、分散粒子の分散安定性には優れていた。
比較例2
共重合体を(B−1)から(B−4)に変更した以外は実施例1と同様の操作で水性顔料分散体を得た。
それぞれの実施例1で得られた水性顔料分散体から以下の方法でインクジェット記録用水性インクを作製し、印字評価した。
(ピエゾ方式インクジェット記録用水性インクの適性評価)
特開平7−228808号公報記載の実施例1を参考にしてピエゾ方式インクジェットプリンタ用インクを調製した。インク組成を以下に示す。本インクを用いてインクジェットプリンターで被記録媒体上にベタ印字し、印字試験を行った。
水性顔料分散体 36 部
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 10 部
ジエチレングリコール 15 部
サーフィノール465(エアプロダクツ社製) 0.8部
水 38.2部
被記録媒体としては、着色画像濃度の評価には、Xerox社製Xerox4024(普通紙)を、着色画像の光沢の評価には、EPSON(株)製PM写真用紙(写真用専用紙)を使用した。また、着色画像の耐擦過性の評価には、Canon(株)製フォト光沢フィルムHG201を使用した。
(着色画像濃度)
着色画像濃度は、グレタグマクベス社製GRETAG(登録商標) D196を使用し、単一サンプルについて着色画像濃度を5点につき測定しそれらを平均した値である。この平均値を測定した結果として後記する表3に、普通紙発色として示した。この数字は、大きいほど発色性に優れている(着色画像濃度が高い)ことを意味する。尚、前記Xerox4024を用いて同一ロット製品の5枚について印字を行い、5サンプルについて単一サンプル当たり前記と同様に各々着色画像濃度を5点につき測定して平均値を求めてみたが、前記単一サンプルについて5点測定した場合とほぼ同様な結果となったため、いずれの普通紙においても単一サンプルについて着色画像濃度を5点につき測定しそれらを平均する様にした。このインクは、ガラス容器中60℃10日間保存しても沈降物が全くなく、分散粒子の分散安定性には優れていた。
(光沢)
前記PM写真用紙にベタ印字した部分を、BYKガードナー社製ヘイズグロスメーター(D−4601)を使い20°グロスを測定した。表3の光沢に示した。
(耐擦過性)
前記フォト光沢フィルムHG201にベタ印字を行い、印字から一定時間毎に指で擦って色の滲み方を観察し、耐擦過性を評価した。結果を表3に示した。次の5段階評価で実施した。A:滲み無し、B:滲み無し、指に色が付く、C:うっすらと滲む、D:滲む、E:激しく滲む
実施例1の水性顔料分散体に代えて実施例2の水性顔料分散体を用いる以外は、実施例6と同様の操作を行い、インクジェット記録用水性インクを調製し、同様に普通紙発色、写真用専用紙光沢及び耐擦過性を評価した。これらの結果を表3に示した。
実施例1の水性顔料分散体に代えて実施例3の水性顔料分散体を用いる以外は、実施例6と同様の操作を行い、インクジェット記録用水性インクを調製し、同様に普通紙発色、写真用専用紙光沢及び耐擦過性を評価した。これらの結果を表3に示した。
実施例1の水性顔料分散体に代えて実施例4の水性顔料分散体を用いる以外は、実施例6と同様の操作を行い、インクジェット記録用水性インクを調製し、同様に普通紙発色、写真用専用紙光沢及び耐擦過性を評価した。これらの結果を表3に示した。
実施例1の水性顔料分散体に代えて実施例5の水性顔料分散体を用いる以外は、実施例6と同様の操作を行い、インクジェット記録用水性インクを調製し、同様に普通紙発色、写真用専用紙光沢及び耐擦過性を評価した。これらの結果を表3に示した。
比較例3
実施例1の水性顔料分散体に代えて比較例1の水性顔料分散体を用いる以外は、実施例6と同様の操作を行い、インクジェット記録用水性インクを調製し、同様に普通紙発色、写真用専用紙光沢及び耐擦過性を評価した。これらの結果を表3に示した。
表3 印字結果
Figure 2005314528
従来、普通紙での印字品質と写真用専用紙での印字品質は、一方を高めれば一方が低くなるというトレードオフの関係にあると言われている。
比較例3は、類似化学組成で高い普通紙発色と高い写真用専用紙光沢とを両立する様にした従来最高水準のインクである。比較例3の顔料/共重合体比を実施例1と同一とすることで、普通紙発色を高めることは可能であるが、一方で写真用専用紙光沢は現在の比較例3よりも劣ったものとなる。実施例6と比較例3との対比から、tert−ブチルスチレンの重合単位を含有する共重合体を含有するインクは、高い普通紙発色と高い写真用専用紙光沢とを両立出来るが、スチレンの重合単位を含有する共重合体を含有するインクでは、写真用専用紙光沢が劣ったものとなり、先の品質の両立は出来ないことがわかる。
尚、実施例6と比較例3とは、各々合成例1と合成例3の共重合体を用いているが、これはtert−ブチルスチレンとスチレンとを同一質量%含有する同一酸価の各共重合体同士の対比に当たる(前記表1参照。)。仮に、tert−ブチルスチレンとスチレンとを同一モル%含有する同一酸価の各共重合体を合成し、これらの対比を行ったすると、現在の実施例6と比較例3における普通紙発色の差よりも大きな差となる。
実施例6と実施例10との対比から、更に水性ポリウレタンを含有させることで、それを含有させる前の普通紙発色や写真用専用紙光沢に影響を与えずに耐擦過性を向上させることが出来ることがわかる。
実施例6と実施例7又は実施例8と実施例9との対比から、tert−ブチルスチレンの重合単位を含有する共重合体を含有するインクに対して更に超音波処理を行なうことで、処理しないのに対して、普通紙発色に影響を与えずに、写真用専用紙光沢を大幅に向上させることが出来ることがわかる。また、耐擦過性を向上させることも出来る。
比較例4
実施例1の水性顔料分散体に代えて比較例2の水性顔料分散体を用いる以外は、実施例6と同様の操作を行い、インクジェット記録用水性インクを調製し、同様に普通紙発色、写真用専用紙光沢及び耐擦過性を評価した。普通紙発色は、実施例1のインクに比べて著しく劣ったものであった。

Claims (7)

  1. 顔料(A)と、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸とその他のモノエチレン性不飽和単量体とを重合せしめたスチレン−アクリル系共重合体(B)と、塩基性物質(C)とを水性媒体中に含有するインクジェット記録用水性インクのための水性顔料分散体において、前記スチレン−アクリル系共重合体(B)として、tert−ブチルスチレンの重合単位を全重合単位の25〜90モル%含み、かつ、酸価80〜150であるスチレン−アクリル系共重合体を用いることを特徴とするインクジェット記録用水性インクのための水性顔料分散体。
  2. 前記スチレン−アクリル系共重合体(B)が、tert−ブチルスチレンと(メタ)アクリル酸ベンジルとの重合単位を含み、tert−ブチルスチレンと(メタ)アクリル酸ベンジル系との合計が30〜90モル%であり、tert−ブチルスチレンと(メタ)アクリル酸ベンジルとの合計モル数に対するtert−ブチルスチレンのモル数が40〜90%であり、かつ、酸価85〜135であるスチレン−アクリル系共重合体である請求項1記載の水性顔料分散体。
  3. 前記スチレン−アクリル系共重合体(B)が、tert−ブチルスチレンと(メタ)アクリル酸ベンジルとの合計モル数に対するtert−ブチルスチレンのモル数が50〜90%のスチレン−アクリル系共重合体である請求項1または2記載の水性顔料分散体。
  4. 前記スチレン−アクリル系共重合体(B)が、酸価が85〜110のスチレン−アクリル系共重合体である請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の水性顔料分散体。
  5. 更に水性ポリウレタンを含有する請求項1〜5のうちのいずれか一項記載の水性顔料分散体。
  6. 水性顔料分散体を得るまでの任意の工程又は水性顔料分散体を得てからインク調製前において超音波処理を行って得た請求項1〜5のうちのいずれか一項記載の水性顔料分散体。
  7. 請求項1〜6のうちのいずれか一項記載の水性顔料分散体を、質量換算で分散粒子が1〜10%となる様に調製したインクジェット記録用水性インク。

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