特許文献1に記載された形式のプロジェクタにおいては、従来、量子効率(=出射量子数/入射電子数)が低い、すなわち、電気−電磁波変換効率が低い一方、電熱変換比率が高い(発熱量が多い)アークランプが投写光源であるように光源部が構成されるのが通常であった。そのため、このような従来のプロジェクタには、小型化が困難であるという問題や発熱の問題があった。
具体的には、まず、アークランプの低量子効率に起因し、光源部による消費電力の増加という問題があり、さらに、その問題に伴い、このプロジェクタの電池駆動化が困難であるという問題や、高比率で電圧変換を行う部品が必要であるために、このプロジェクタの小型化が困難であるという問題もあった。
次に、アークランプの高電熱変換比率に起因し、このプロジェクタのうち高温に曝される部品を耐熱構造化したり、そのような部品に対して積極的な冷却を行うことが必要であった。
具体的には、アークランプを耐熱構造のランプハウジングユニットに保持させることが必要であり、その耐熱構造を達成するため、ランプハウジングユニットを、耐熱ガラスや耐熱セラミクス、耐熱プラスチック、耐熱マグネシウム合金といった高価な材料で構成することが必要であった。さらに、アークランプから出射した光をこのプロジェクタの出射口まで誘導する導光路を形成するための各部品であるダイクロイックミラー、液晶ライトバルブ、色合成プリズムおよび投写レンズも耐熱構造を有することが必要であった。
さらに、上述のランプハウジングユニット、および上述の導光路を形成するための各種部品は高温に曝される部品であるため、それらを積極的に冷却する冷却ファンを追加することが必要であった。このような冷却ファンを追加すると、このプロジェクタの部品点数の増加に加え、消費電力の増加、騒音の発生等の問題を招来する可能性があった。
以上説明した事情を背景とし、本発明は、電気を電磁波に変換して出射する放射源部を用いて画像を表示する技術において、放射源部の出力特性を改善することを課題としてなされたものである。
本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項には番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本発明が採用し得る技術的特徴の一部およびそれの組合せの理解を容易にするためであり、本発明が採用し得る技術的特徴およびそれの組合せが以下の態様に限定されると解釈すべきではない。すなわち、下記の態様には記載されていないが本明細書には記載されている技術的特徴を本発明の技術的特徴として適宜抽出して採用することは妨げられないと解釈すべきなのである。
さらに、各項を他の項の番号を引用する形式で記載することが必ずしも、各項に記載の技術的特徴を他の項に記載の技術的特徴から分離させて独立させることを妨げることを意味するわけではなく、各項に記載の技術的特徴をその性質に応じて適宜独立させることが可能であると解釈すべきである。
(1) 画像を表示する画像表示装置であって、
電気を電磁波に変換し、その変換された電磁波を出射する放射源部と、
その放射源部に関連付けて設けられ、その放射源部から出射した電磁波が入射する周期構造を有する板状のリアクティブ素子と
を含む画像表示装置。
この画像表示装置においては、放射源部に関連付けてリアクティブ素子が設けられる。このリアクティブ素子は、放射源部から出射した電磁波が入射する周期構造を有する。一方、電磁波が周期構造に入射した場合に、その入射電磁波がその周期構造によって影響を受ける結果、その周期構造から出射する出射電磁波の特性(電磁波の伝搬方向およびその強度を表すポインティングベクトルを含む。)を入射電磁波とは異なるものに変化させ得ることが知られている。
周期構造は、少なくともそれの一縦断面において、凸部と凹部とが並ぶように構成される。少なくとも1次元的に凸部と凹部とが並ぶように構成されるのであるが、通常は、2次元的または3次元的に並ぶように構成される。凸部も凹部も、例えば、線状に延びる形態や、点状を成す形態などを取り得る。2次元的に並ぶように構成された周期構造の一例は、後述のように、複数個の凸部が縦横に並ぶように基材に形成されたものであり、3次元的に並ぶように構成された周期構造の一例は、支持体内に複数個の屈折率段差部(例えば、エアホール)が3次元的に並ぶように構成された導波路(例えば、屈折型導波路)である。
具体的には、周期構造は、例えば、複数本のワイヤまたはランドと複数本のグルーブまたはスリットとが同心円状を成して交互に並んで構成される場合や、複数個の突起(例えば、ピット)が縦横に並ぶように基材に形成される場合、複数個の穴が縦横に並ぶように基材に形成される場合がある。それらは、凸部と凹部とが2次元的に並ぶ周期構造の具体例である。
周期構造を、例えば、その周期構造に入射する入射電磁波の波長より短い周期(サブ波長)を有して複数個の凸部が並ぶように構成すると、その周期構造は、入射電磁波にとっていわば見えない存在となるため、周期構造を形成する面に対して入射角度が垂直である場合には、その入射電磁波から高次の回折波は発生せず、0次の透過波または反射波のみが発生する。これが、サブ周期構造の不可視性によるものである。
この周期構造を、さらに、凸部が少なくともそれの一縦断面においてテーパ状を成すように構成すると、この周期構造においては、凸部の高さ方向に屈折率が徐々に変化するため、その入射電磁波から反射波すら発生しない。これが、周期構造のアンチリフレクション機能によるものである。
このように、入射電磁波に与えたい影響は、周期構造の特性に依存するため、その周期構造の特性次第で、出射電磁波の特性を所望のものとして実現することが可能である。
したがって、本項に係る画像表示装置によれば、リアクティブ素子の周期構造を放射源部に対する要求との関係において適正化することにより、放射源部の特性を改善することが容易である。
さらに、この画像表示装置によれば、放射源部の出力特性を改善するために設けられるリアクティブ素子が板状を成しているため、この画像表示装置にリアクティブ素子が追加されるにしても、この画像表示装置のサイズおよび重量の増加を抑制することが容易である。
本項における「リアクティブ素子」は、受動的にまたは能動的に電磁波の状態量に反応してその電磁波に一定の影響を与える素子であることを意味する。受動型のリアクティブ素子としては、例えば、反射素子、透過素子、回折素子、偏向素子、散乱素子、光回収素子、波長変換素子、導波路等がある。一方、能動型のリアクティブ素子としては、例えば、光スイッチ、変調素子、透過率制御素子、偏向制御素子、散乱制御素子、エネルギー回復素子、波長変調制御素子等がある。
本項における「周期構造」は、それの全体において、周期(すなわち、前述のグルーブまたはスリットの間隔であり、格子間隔ともいう。)が一様に分布する場合もあれば、一様ではないように分布する場合もある。
本項における「放射源部に関連付けて設けられる」という表現は、例えば、放射源部に対して本項における「リアクティブ素子」を別部品として追加することを意味する場合と、放射源部のうちの少なくとも一部を本項における「リアクティブ素子」として機能するように加工することを意味する場合とがある。
(2) 前記リアクティブ素子は、前記放射源部と協働することにより、その放射源部の電気−電磁波変換効率を増加させる効率増加機能を有する(1)項に記載の画像表示装置。
この画像表示装置においては、リアクティブ素子が放射源部と協働することにより、その放射源部の電気−電磁波変換効率が、リアクティブ素子を使用しない場合より、増加させられる。
リアクティブ素子が放射源部と協働する態様としては、例えば、リアクティブ素子のアンチリフレクション機能(後に詳述する。)により、放射源部から出射した電磁波にその放射源部の出射面において反射による放射源部内部でのロスが発生することを抑制する態様がある。さらに、リアクティブ素子の偏向機能(後に詳述する。)により、放射源部から出射した電磁波のうち目標の進路から斜めに外れようとするものを適当な角度で偏向して目標の進路に戻すことにより、放射源部における出射電磁波の、次段部とのカップリングロスを抑制する態様がある。いずれの態様にしても、放射源部の電気−電磁波変換効率が、リアクティブ素子を使用しない場合より、増加させられる。
リアクティブ素子が放射源部と協働する態様としては、さらに、リアクティブ素子の電磁波閉込め機能(後に詳述する。)により、放射源部から出射した電磁波を、その伝送経路の屈曲の有無を問わず、より漏れなく、次の光学素子に伝送することにより、放射源部から出射した直後の電磁波の伝送中の損失を抑制する態様がある。さらに、リアクティブ素子の屈折機能(例えば、後述のグレーティング素子の波長選択的偏向機能)により、発散する電磁波を平行化する態様がある。さらに、リアクティブ素子の波長選択的透過機能(例えば、後述のPBG素子の偏光弁別フィルタ作用)により、電磁波のうち特定の直線偏光成分のみを取り出す態様がある。
(3) 前記リアクティブ素子は、それに入射した電磁波の反射を防止するアンチリフレクション機能を有する(1)または(2)項に記載の画像表示装置。
この画像表示装置においては、リアクティブ素子が、放射源部から入射した電磁波の反射を防止するアンチリフレクション機能を有する。したがって、この画像表示装置によれば、そのようなアンチリクレクション機能を有しない前述の従来のプロジェクタに比較し、放射源部からの出射電磁波の反射によるロス(例えば、出射面における反射によるロス)が低減され、放射源部とリアクティブ素子とを含む系全体としての電気−電磁波変換比率(以下、単に「放射源部の電気−電磁波変換比率」という。)が向上する。
この画像表示装置の実施によって放射源部の電気−電磁波変換比率が向上すれば、同じ電気エネルギーによって発生させ得る電磁波エネルギーが増加するため、同じ電磁波エネルギーを発生させるために消費しなければならない電気エネルギーが節減可能となり、結局、放射源部の節電が可能となる。
さらに、この画像表示装置の実施によって放射源部の電気−電磁波変換比率が向上すれば、同じ電気エネルギーに対し、電磁波エネルギーに付随して発生する熱量が減少するため、この画像表示装置に対して熱対策を講じることを完全に省略可能となるか、または講じることが必要であるとしてもそれは軽度なもので済む。
(4) 前記リアクティブ素子は、それに入射した電磁波を偏向する機能は有するが、偏光を弁別する機能は有しない(1)ないし(3)項のいずれかに記載の画像表示装置。
この画像表示装置においては、リアクティブ素子が、それに入射した電磁波を偏向する機能を有する。したがって、この画像表示装置によれば、例えば、放射源部から電磁波が発散的に出射するのに対してリアクティブ素子が局所的に配置される場合に、放射源部から出射した電磁波のうち、リアクティブ素子に実質的に垂直に入射するもののみならず、入射開口角以内において斜めに入射するものも、リアクティブ素子の偏向機能により、画像の形成に利用することが可能となる。
したがって、この画像表示装置によれば、放射源部の電気−電磁波変換比率が向上する。
(5) 前記放射源部は、前記電磁波を出射する部分を挟んで互いに対向する複数の反射面を含み、
前記リアクティブ素子は、それら反射面のうちの少なくとも一方に、反射機能と透過機能とのうち少なくとも反射機能を有するように配置され、前記複数の反射面間における前記電磁波の共振現象を利用することにより、前記電気−電磁波変換効率を増加させる(1)ないし(4)項のいずれかに記載の画像表示装置。
この画像表示装置においては、放射源部が、電磁波を出射する部分を挟んで互いに対向する複数の反射面を含み、それら反射面のうちの少なくとも一方にリアクティブ素子が反射機能と透過機能とのうちの少なくとも反射機能を有するように配置される。
したがって、この画像表示装置においては、放射源部から出射した電磁波が、同一経路を往復進行し、それにより、電磁波の共振(増幅)が行われる。このような現象は、対象電磁波が光であればレーザ、マイクロ波(電波)であればメーザとそれぞれ称される。
よって、この画像表示装置によれば、リアクティブ素子が放射源部と協働することにより、その放射源部の電気−電磁波変換効率が、リアクティブ素子を使用しない場合より、増加させられる。
(6) 前記リアクティブ素子は、前記電磁波が入射する入射面および出射する出射面を含み、さらに、前記入射面から前記出射面に延びる導波構造を前記周期構造として含む(1)ないし(5)項のいずれかに記載の画像表示装置。
この画像表示装置においては、前記(1)ないし(5)項のいずれかにおけるリアクティブ素子が導波構造、特に導波路構造を周期構造として有するため、そのリアクティブ素子の入射面に入射した電磁波がロスなく出射面に誘導される。したがって、この画像表示装置によれば、放射源部から出射した電磁波がリアクティブ素子内を伝送し、所定の方向へ出射する際のロスがなくなり、それにより、リアクティブ素子のトータルの伝達効率が向上し、このことは、放射源部の電気−電磁波変換効率が向上することを意味する。
(7) 前記周期構造は、それに入射すべき電磁波の波長より短い周期を有するサブ波長周期構造を含む(1)ないし(6)項のいずれかに記載の画像表示装置。
この画像表示装置においては、周期構造の周期、すなわち、周期構造の少なくとも一縦断面における凸部間の間隔すなわち凹部間の間隔が、その周期構造に入射すべき入射電磁波の波長より短い間隔を有する。したがって、この画像表示装置によれば、周期構造の周期が入射電磁波の波長以上である場合に比較し、その周期構造による前述のいくつかの機能のうち、例えば、前述のアンチリフレクション機能を効果的に達成することが可能である。
(8) 前記リアクティブ素子は、それの法線方向に概して平行な方向に電磁波を出射する(1)ないし(7)項のいずれかに記載の画像表示装置。
(9) 前記リアクティブ素子は、CGH(コンピュータ・ジュネレーテッド・ホログラム)素子と、グレーティング素子と、PBG(フォトニック・バンド・ギャップ)素子と、フォトニック結晶素子とのうちの少なくとも一つを含む(1)ないし(8)項のいずれかに記載の画像表示装置。
(10) 前記放射源部は、フィールドエミッション素子と、プラズマ発光素子と、レーザ素子と、無機LED素子と、有機LED素子と、アークランプと、フィラメントランプと、放射線源とのうちの少なくとも一つを含む(1)ないし(9)項のいずれかに記載の画像表示装置。
例えば、放射源部がアークランプを使用する場合には、放射源部のサイズの割に多量の光を発生させることが容易であり、サイズの割に明るい光源を実現することが容易である。
また、放射源部がフィラメントランプを使用する場合には、放射源部の装置コストの割に多量の光を発生させることが容易であり、装置コストの割に明るい光源を実現することが容易である。
また、放射源部が無機LED素子または有機LED素子を使用する場合には、インコヒーレントな電磁波を高効率で発生させることができるため、小型の放射源部でありながら輝度を向上させることが容易である。特に有機LEDを使用する場合には、それの膜厚を100nm程度に薄くすることが可能であるため、非常に小型で薄い放射源部が実現できる。
(11) 前記放射源部は、可視光を前記電磁波として出射する(1)ないし(10)項のいずれかに記載の画像表示装置。
(12) 前記リアクティブ素子は、それに入射した電磁波をそれとは異なる波長を有する電磁波に変換する波長シフト機能を有する(1)ないし(10)項のいずれかに記載の画像表示装置。
この画像表示装置によれば、画像を表示するために最終的に必要な電磁波と同じ波長を有する電磁波を出射するように放射源部を設計することが不可欠ではなくなり、その結果、放射源部の種類を選択する際の自由度が向上する。
本項に係る画像表示装置は、例えば、前記放射源部が非可視光を前記電磁波として出射し、前記リアクティブ素子が、前記波長シフト機能により、そのリアクティブ素子に入射した非可視光を可視光に変換する態様で実施することが可能である。この態様によれば、可視光によって画像が表示されるにもかかわらず、非可視光を出射する放射源部を選択することが可能となる。
(13) 前記放射源部は、波長が異なる複数の電磁波をそれぞれ成分波として出射する複数の放射源素子を含み、
前記リアクティブ素子は、前記各放射源素子から入射した各成分波をそれの波長に応じた方向に偏向することにより、前記複数の成分波を合成する合波機能を有する(1)ないし(12)項のいずれかに記載の画像表示装置。
この画像表示装置においては、板状のリアクティブ素子の周期構造による偏向機能が発揮されることにより、複数の放射源素子から入射した各成分波がそれの波長に応じた方向に偏向され、それにより、複数の成分波が合成される。したがって、この画像表示装置によれば、画像表示のための合波機能を、板状のリアクティブ素子により、この画像表示装置の大型化を回避しつつ、発揮することが可能である。
なお付言するに、本項および下記の各項において「複数の成分波を合成する」という表現は、合成されるべき複数の成分波が各瞬間において一緒に存在することを必ずしも要求しない。人間が眼で色を知覚するのに時間が必要であるという事実を踏まえれば、複数の成分波が互いに時間的にオーバーラップすることなく存在する場合であっても、それら複数の成分波の存在場所が共通する限り、それら複数の成分波が合成波として人間に認識されることになるからである。したがって、「複数の成分波を合成する」という表現は、例えば、複数の成分波の進行方向を一致させることを意味すると考えることが可能である。
(14) 前記リアクティブ素子は、前記周期構造によって前記合波機能を互いに共同して実現するために前記各成分波をそれの波長に応じた方向に偏向する複数の層状素子が互いに積層されて構成されている(13)項に記載の画像表示装置。
この画像表示装置によれば、画像表示のための合波機能が、リアクティブ素子の積層構造により、各層における波長選択機能を利用して、必要波長帯全域にわたり所定の機能を付与することが可能である。さらに、この画像表示装置の大型化を回避しつつ、実現することが可能である。
(15) 前記放射源部は、
波長が異なる複数の電磁波をそれぞれ成分波として出射する複数の放射源素子と、
それら複数の放射源素子からそれぞれ入射した複数の成分波を合成する合波部と
を含む(1)ないし(12)項のいずれかに記載の画像表示装置。
(16) 前記複数の放射源素子は、前記複数の成分波としての3つの成分波をそれぞれ出射する3個の放射源素子を含み、
前記合波部は、一中心点から互いにある角度を有して発散的に配置される4本の経路のうちの3本の経路に沿って前記3個の放射源素子からそれぞれ前記中心点に近づく向きに入射した3つの成分波を、周波数選択的な反射および屈折により、1つの合成波に合成し、その合成された合成波を残りの1本の経路に沿って、前記中心点から遠ざかる向きに出射する(15)項に記載の画像表示装置。
本項における「合波部」の一例は、複数個のプリズムがそれの少なくとも一面同士において互いに接合されて成るクロスプリズムである。このクロスプリズムにおいては、その接合面(反射面および透過面)にダイクロイックミラーが形成される。「合波部」をそのクロスプリズムとして構成する場合には、「合波部」の小型化が容易になる。
また、「合波部」は、クロスプリズムの如く、合波ミラーが直交しないくさび型プリズムの組合せによって構成したり、平面ダイクロイックミラーの組合せによって構成してもよい。
また、本項における「4本の経路」は、一平面上に配置したり、3次元的に配置することが可能である。
(17) 前記リアクティブ素子は、前記各放射源素子と前記合波部との間に配置される(15)または(16)項に記載の画像表示装置。
本項における「リアクティブ素子」は、例えば、各放射源素子のうち、合波部に対向する各面と、合波部のうち、各放射源素子に対向する面とのうちの少なくとも一方に特定の周期構造を直接に形成することによって構成したり、それら放射源素子および合波部から物理的に独立した要素として構成することが可能である。
(18) 前記リアクティブ素子は、前記合波部のうち、前記合成波が出射する部分に配置される(15)ないし(17)項のいずれかに記載の画像表示装置。
本項における「リアクティブ素子」は、前記(17)項におけると同様に、例えば、合波部のうち、合成波が出射する部分(例えば、出射面)に特定の周期構造を直接に形成することによって構成したり、その合波部から物理的に独立した要素として構成することが可能である。
(19) 前記合波部は、低光弾性定数の材料を支持体として構成されている(15)ないし(18)項のいずれかに記載の画像表示装置。
この画像表示装置によれば、合成部の支持体がいわゆる低光弾性定数の材料によって構成されるため、その低光弾性定数の材料より光弾性定数が高い材料によって合成部の支持体が構成される場合より、合成部の昇温等に起因する応力状態の如何にかかわらず、合成部の合波機能が画像全体について一様である状態が確保される。したがって、この画像表示装置によれば、合成部の昇温等、合成部の応力状態を変化させる要因が発生しても、画像のコントラストがそれほど低下せずに済む。
本項および下記の各項における「低光弾性定数の材料」は、熱的または機械的に外力が付加された場合に材料に生ずる複屈折の程度すなわち光弾性定数が通常の光学ガラス材料(例えば、最も一般的な光学ガラス(ショット社の「BK7」、オハラ社の「S−BSL7」、β=2.79×10−12Pa)より小さい材料を意味する。
(20) さらに、前記リアクティブ素子から出射した電磁波を画素ごとに変調する変調部を含み、それらリアクティブ素子と変調部とは、光透過性を有する接着剤によって互いに一体化されている(1)ないし(19)項のいずれかに記載の画像表示装置。
この画像表示装置によれば、リアクティブ素子と変調部とを互いに接着する接着剤が接着機能のみならず電磁波伝送機能をも有するため、それらリアクティブ素子と変調部とを空間的に詰めて一体化することが容易となり、その結果、この画像表示装置の小型化が容易となる。
(21) さらに、前記リアクティブ素子から出射した電磁波を画素ごとに変調する板状の空間変調部を含み、それらリアクティブ素子と空間変調部とは、互いに積層されている(1)ないし(20)項のいずれかに記載の画像表示装置。
この画像表示装置によれば、リアクティブ素子と変調部とが、共に板状とされて互いに積層されるため、それらリアクティブ素子と変調部との組合せを小型化し、ひいては、この画像表示装置全体を小型化することが容易となる。
(22) 前記空間変調部は、
入射した電磁波をS波とP波とに分離する偏光ビームスプリッタと、
その偏光ビームスプリッタから出射したS波とP波とをそれぞれ、画素ごとに偏光面の回転が制御される状態で反射する2つの反射型液晶パネルと
を含み、
前記偏光ビームスプリッタは、それら2つの反射型液晶パネルにおいてそれぞれ反射して前記偏光ビームスプリッタに入射した2つの電磁波を合成して出射する(21)項に記載の画像表示装置。
前記(21)項における「空間変調部」は、(a)入射した電磁波をS波とP波とに分離する偏光ビームスプリッタと、(b)その偏光ビームスプリッタから出射したS波とP波とのうちのいずれかのみを、画素ごとに偏光面の回転が制御される状態で反射する1つの反射型液晶パネルとを含み、かつ、前記偏光ビームスプリッタは、その1つの反射型液晶パネルにおいて反射してその偏光ビームスプリッタに再入射した電磁波のうち、偏光面が回転した成分のみを外部に出射する態様で実施することが可能である。
しかし、この態様を採用する場合には、偏光ビームスプリッタから出射したS波とP波とのうちのいずれかしか、画像表示に利用することができない。
これに対し、本項に係る画像表示装置においては、偏光ビームスプリッタから出射したS波とP波とをそれぞれ、画素ごとに偏光面の回転が制御される状態で反射する2つの反射型液晶パネルが用いられ、偏光ビームスプリッタは、それら2つの反射型液晶パネルにおいてそれぞれ反射してその偏光ビームスプリッタに再入射した2つの電磁波を、各電磁波のうち、偏光面が回転した成分のみに関して、合成して外部に出射する。
したがって、この画像表示装置によれば、偏光ビームスプリッタから出射したS波とP波とのうちのいずれかしか利用しない場合より無駄なく、偏光ビームスプリッタに入射した電磁波を画像表示に利用することが可能となる。その結果、同じ画像輝度を実現するために放射源部が出射しなければならない電磁波の量を節減することが可能となり、ひいては、放射源部の節電および小型化が容易になる。
本項における「反射型液晶パネル」の一例は、リキッド・クリスタル・オン・シリコンLCOSである。また、本項に記載の特徴は、前記(21)項に記載の特徴から独立して実施することが可能である。
(23) 前記偏光ビームスプリッタは、低光弾性定数の材料を支持体として構成されている(22)項に記載の画像表示装置。
この画像表示装置によれば、前記(19)項に係る画像表示装置と同様に、偏光ビームスプリッタの昇温や機械的ストレス等、偏光ビームスプリッタの応力状態を変化させる要因が発生しても、画像のコントラストが大幅に低下せずに済む。
(24) さらに、前記リアクティブ素子から出射した電磁波を画素ごとに変調する板状の空間変調部を含み、その空間変調部は、入射した電磁波を、画素ごとに外部に出力される伝達効率が制御される状態で反射して出射する反射型空間変調器を含む(1)ないし(21)項のいずれかに記載の画像表示装置。
(25) 前記空間変調器は、デフォーマブル・ミラー・デバイスを含む(24)項に記載の画像表示装置。
本項における「デフォーマブル・ミラー・デバイス」は、DMDと略称され、また、その製造元によってデジタル・マイクロミラー・デバイスと称呼される場合もある。いずれにしても、このデフォーマブル・ミラー・デバイスにおいては、画素ごとにマイクロミラーがデフォーマブルな状態すなわち入射電磁波に対する角度や変位が可変である状態で設置され、それにより、画素ごとに、入射電磁波を次の光学素子に向けて反射等により伝達する積算伝達時間(反射時間の時間積分値が輝度に対応する。)がデューティ制御される。
(26) 前記空間変調部は、入射した電磁波を、画素ごとに透過率が制御される状態で透過して出射する透過型空間変調器を含む(21)項に記載の画像表示装置。
(27) 前記リアクティブ素子は、前記放射源部のうち、前記電磁波が出射する出射面に配置されている(1)ないし(26)項のいずれかに記載の画像表示装置。
本項における「リアクティブ素子」は、前記(17)項におけると同様に、例えば、放射源部のうち、電磁波が出射する出射面に特定の周期構造を直接に形成することによって構成したり、その放射源部から物理的に独立した要素として構成することが可能である。後者の場合には、「リアクティブ素子」は、例えば、その出射面に密着するように固定されるか、またはその出射面に対して隙間を隔てて対向するように固定される。
(28) さらに、前記リアクティブ素子から出射した電磁波を画素ごとに変調する透過型の変調部を含む(1)ないし(27)項のいずれかに記載の画像表示装置。
(29) さらに、
前記リアクティブ素子から出射した電磁波を画素ごとに変調する変調部と、
その変調部に接触してその変調部を放熱する放熱部と
を含む(1)ないし(28)項のいずれかに記載の画像表示装置。
この画像表示装置によれば、変調部の昇温が抑制されるため、変調部の昇温に起因した画質の低下(例えば、変調部の機能低下による画像コントラストの低下)が抑制される。また、変調部への入射光束がその変調部に略垂直に入射しない成分を有する場合には、透過率補償用の複屈折板を変調部の上流または下流に設定してもよく、また、この複屈折板を特定の周期構造を有するリアクティブ素子で実現してもよい。
(30) 前記放射源部は、金属サブストレートに絶縁体を塗布して成る基板上に配置されている(1)ないし(29)項のいずれかに記載の画像表示装置。
この画像表示装置によれば、放射源部の基板のうちのサブストレートが放熱性が高い金属によって構成されるため、そのサブストレートが放熱性がそれほど高くはない材料によって構成される場合より、放射源部の昇温が抑制される。
したがって、この画像表示装置によれば、放射源部がその出力時に発熱を伴う場合に、その発熱という問題が、放射源部の出力(例えば、放射束量であるパワーや光束量)を向上させる際の大きな障害にならずに済み、その結果、放射源部を選択する際の自由度が向上する。
また、放射源部に同一の素子を使用しても、電子−量子変換部位における量子効率を、昇温抑制効果により、高く維持することが可能であり、よって、高い放射輝度を持つ放射源部を実現することが可能である。
(31) 前記放射源部は、金属を含有するペーストによって前記基板に固定されている(30)項に記載の画像表示装置。
この画像表示装置によれば、放射源部を基板に固定するためにそれらに塗布されるペーストが放熱性が高い金属によって構成されるため、そのペーストが放熱性がそれほど高くはない材料によって構成される場合より、放射源部の昇温が抑制される。
したがって、この画像表示装置によれば、前記(30)項に係る画像表示装置と同様に、放射源部がその出力時に発熱を伴う場合に、その発熱という問題が、放射源部の出力(例えば、放射束量であるパワーや光束量)を向上させる際の大きな障害にならずに済み、その結果、放射源部を選択する際の自由度が向上する。
また、前記(30)項に係る画像表示装置と同様に、放射源部に同一の素子を使用しても、電子−量子変換部位における量子効率を、昇温抑制効果により、高く維持することが可能であり、よって、高い放射輝度を持つ放射源部を実現することが可能である。
(32) さらに、前記電磁波を投影対象に向けて投影して結像する投影部を含む(1)ないし(31)項のいずれかに記載の画像表示装置。
本項における「投影対象」としては、例えば、専用または代用のスクリーン、感光媒体、壁面、人体等がある。
(33) 前記投影部は、一列に並んだ複数のレンズを含み、かつ、それらレンズのうち少なくとも一部は、合成樹脂によって形成されている(32)項に記載の画像表示装置。
例えば、画像表示装置の投影部がレンズを使用する場合、その投影部の昇温量が低下すれば、レンズを構成する材料に高い耐熱性を要求せずに済み、例えば、ガラスより安価で軽量な材料である合成樹脂によってレンズを構成することが可能となる。
このような知見に基づき、本項に係る画像表示装置においては、投影部において一列に並んだ複数のレンズのうち少なくとも一部が合成樹脂によって形成されている。
(34) さらに、当該画像表示装置を任意の対象物に着脱可能に固定する固定具を含む(1)ないし(33)項のいずれかに記載の画像表示装置。
画像表示装置が小型で軽量なものになれば、画像表示装置を、従来のように、テーブル上に載置することはもちろん、任意の対象物に着脱可能に固定することも可能となり、画像表示装置の設置位置や画像の表示方向を選択する際の自由度が向上する。通常の固定方法においては、画像表示装置は、それが画像を表示する方向が、その画像表示装置がフラット・パネル・ディスプレイや画像投影装置である場合には、僅かに仰ぎ見る方向となるように、傾斜状態で配置される。
このような知見に基づき、本項に係る画像表示装置は、当該画像表示装置を任意の対象物に着脱可能に固定する固定具と共に実施される。
(35) 前記対象物は、当該画像表示装置が画像を表示するために必要な画像信号と、当該画像表示装置の作動に必要な電気エネルギーとのうちの少なくとも一方を出力する出力ポートを備えた可搬型情報機器であり、当該画像表示装置は、さらに、前記出力ポートに接続される接続部を含む(34)項に記載の画像表示装置。
この画像表示装置は、それの接続部において可搬型情報機器の出力ポートに接続された状態で使用される。したがって、この画像表示装置によれば、その画像表示装置に必要な信号およびエネルギーを供給するために必要な外部装置との接続作業が簡易化され、さらに、その接続のための配線がかさ張らずに済む。
本項における「可搬型情報機器」としては、例えば、モバイル・コンピュータ(スタンド・アローン型でもネットワーク接続型でも可)、移動電話機(携帯電話機とPHSとを含む。)、携帯情報端末PDA等がある。
(36) 前記出力ポートは、ビデオ出力ポートと、電源端子を有するシリアル通信ポートとのうちの少なくとも一方を含む(35)項に記載の画像表示装置。
前記可搬型情報機器の出力ポートが、電源端子を有するシリアル通信ポートを少なくとも含む場合には、本項に係る画像表示装置は、例えば、そのシリアル通信ポートのバスパワーを用いるため、可搬型情報機器のバッテリを共用することが可能である。この種のシリアル通信ポートには、RS−232C、USB、IEEE1394、バスパワーイーサネット、デジタルRGB端子、SDフラッシュカードインターフェース、PCMCIAカードインターフェース等がある。
ただし、この画像表示装置は、電源ケーブルを別途用いてコンセントから給電を受けるようにしてもよい。
(37) 前記出力ポートは、前記ビデオ出力ポートを含み、そのビデオ出力ポートは、アナログVGAポートである(36)項に記載の画像表示装置。
この画像表示装置は、アナログビデオ信号を用いることにより、複数種の可搬型情報機器に対して汎用的に接続することが可能である。
(38) 電磁波を出射する放射源装置であって、
電気を電磁波に変換し、その変換された電磁波を出射する放射源部と、
その放射源部に関連付けて設けられ、その放射源部から出射した電磁波が入射する周期構造を有するリアクティブ素子であって、前記周期構造は、その周期構造に入射する電磁波の波長より短い周期を有するサブ波長周期構造であるものと
を含み、
前記放射源部は、
波長が異なる複数の電磁波をそれぞれ成分波として出射する複数の放射源素子と、
それら複数の放射源素子からそれぞれ入射した複数の成分波を1つの合成波に合成する合波部と
を含み、
前記リアクティブ素子は、
前記複数の放射源素子と前記合波部との間にそれぞれ配置される複数の成分波用素子と、
前記合波部のうち、前記合成波が出射する部分に配置される合成波用素子と
を含む放射源装置。
この放射源装置によれば、波長が異なる複数の成分波を1つの合成波に合成して出射するプロセスが、サブ波長周期構造を有するリアクティブ素子を用いて行われるため、前述の画像表示装置のうち、サブ波長周期構造を有するリアクティブ素子に関する前述の作用効果と同様な作用効果が得られる。
本項における「リアクティブ素子」は、板状(厚さ寸法が幅寸法より短い形状)としたり、ブロック状(厚さ寸法と幅寸法とが同等である形状)とすることが可能である。
本項に係る「放射源装置」は、前述の画像表示装置における放射源部に関連して使用される複数の特徴のうち適宜選択されたものと組み合わせて実施することが可能である。さらに、本項に係る「放射源装置」は、画像表示以外の用途に使用することが可能である。
(39) 前記複数の成分波用素子と前記合成波用素子とは、前記合波部のうち、互いに異なる複数の面にそれぞれ配置されている(38)項に記載の放射源装置。
(40) 前記複数の成分波用素子および前記合成波用素子と前記合波部とは、電磁波透過性を有する接着剤によって互いに一体化されている(39)項に記載の放射源装置。
この放射源装置によれば、複数の成分波用素子および合成波用素子と合波部とをそれぞれ互いに接着する接着剤が接着機能のみならず電磁波伝送機能をも有するため、それら成分波用素子および合成波用素子と合波部とを空間的に詰めて一体化することが容易となり、その結果、この放射源装置の小型化が容易となる。また、この放射源装置によれば、振動等の外力に対するロバストネスを向上させて耐破損性を向上させることが容易となる。
以下、本発明のさらに具体的な実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
図1には、本発明の第1実施形態に従う画像投影装置10が斜視図で示されている。この画像投影装置10は、本発明に係る画像表示装置の一例である。
図1に示すように、この画像投影装置10は、扁平な箱状の装置ハウジング12を備えており、その装置ハウジング12には、投影部としての投影レンズユニット14が、それの先端部において部分的に装置ハウジング12から突出する状態で装着されている。
図1においては、この画像投影装置10が、可搬型情報機器としてのモバイル・コンピュータ16に固定されて使用される状態で示されている。この画像投影装置10をモバイル・コンピュータ16のうちの任意の板状部分、例えば、ディスプレイ・パネルの上縁部または側縁部に固定したり、机や机上の機械要素等に固定するために、この画像投影装置10には固定具としての固定クリップ20が着脱可能に取り付けられている。
固定クリップ20は、この画像投影装置10を任意の機械要素に固定する固定具の一例であり、例えば、吸盤、両面テーブ、締結具、ひも等として構成することが可能である。この画像投影装置10を任意の機械要素に固定することが可能でありさえすれば、固定具としての機能は果たされる。
図1に示すように、固定クリップ20は、任意の板状部分を両側から把持するクリップ部22と、そのクリップ部22と画像投影装置10とを、相対回転によって任意の相対角度で固定可能に互いに連結するチルト・ジョイント24とを備えている。
図1に示すように、モバイル・コンピュータ16は、それぞれ出力ポートとしてUSBポート28とアナログVGAポート30とを備えており、それらポートは接続ケーブル32により、この画像投影装置10のコネクタ34(図8参照)に接続されている。
USBポート28は、電源端子を有するシリアル通信ポートであり、このUSBポート28からこの画像投影装置10のコネクタ34に、その画像投影装置10の作動に必要な電気エネルギーが供給される。この画像投影装置10は、電源を外部に依存する形式としたり、電源(例えば、電池)を内蔵する形式としたり、両者を併用する形式とすることが可能である。
これに対し、アナログVGAポート30は、ビデオ信号(画像信号)を出力するビデオ出力ポートである。このアナログVGAポート30からこの画像投影装置10のコネクタ34に画像信号が供給され、その供給された画像信号にもとづいてこの画像投影装置10が画像を投影対象に投影する。
図2には、この画像投影装置10の光学的構成が平面図で示されている。図2に示すように、この画像投影装置10は、放射源部として光源部40と、変調部としての空間変調部42と、投影部としての前述の投影レンズユニット14とを備えている。
光源部40は、RGB方式によって任意の色を生成するものであり、波長が互いに異なる3つの成分光(単色光)をそれぞれ発光する3個の光源50R,50G,50Bと、合波部としてのクロスプリズム56とを備えている。
それら3個の光源50R,50G,50Bはそれぞれ、複数個の放射源素子として3個の無機LED60R,60G,60Bを備えている。LED60Rは、Al、In、GaおよびPの4元素から成るダブルヘテロ構造の無機LEDであり、赤色ビームを放射状に(発散的に)出射する。LED60Gは、In,GaおよびNの3元素から成るダブルヘテロ構造の無機LEDであり、緑色ビームを放射状に(発散的に)出射する。LED60Bは、In,GaおよびNの3元素から成るダブルヘテロ構造の無機LEDであり、青色ビームを放射状に(発散的に)出射する。
各光源50R,50G,50Bにおいては、対応するLED60R,60G,60Bが、対応する基板64に、高放熱性の銀ペースト(金属を含有する導電性ペーストの一例)66によって接着されている。基板64は、高放熱性のアルミニウム製のサブストレート(金属サブストレートの一例)に絶縁樹脂を塗布し、さらに銅を無電解メッキすることにより、PCB(プリント回路基板)として構成されている。
各光源50R,50G,50Bにおいては、さらに、対応する基板64にCGH(コンピュータ・ジェネレーテッド・ホログラム)板70R,70G,70Bがブリッジ72によって支持されている。各CGH板70R,70G,70Bは、隙間を隔てて、対応する基板64に正対している。各光源50R,50G,50BにおけるCGH板70R,70G,70Bはそれぞれ、赤色ビーム用、緑色ビーム用および青色ビーム用である。
図3には、3枚のCGH板70R,70G,70Bを代表する1枚のCGH板70が縦断面図で示されている。このCGH板70は、ブロードバンドAR板76とサブ波長構造屈折板78とが光軸方向において互いに積層されて構成されている。ブロードバンドAR板76は、ブロードバンドすなわちすべての波長帯域においてアンチリフレクション(AR)機能を発揮する。このブロードバンドAR板76は、図3に光路図で示すように、入射した光を屈折させて透過させる機能も発揮する。図3には、前述の3個の光源50R,50G,50Bがそれぞれ点光源として近似できること、それら3個の点光源は後述のフィールドシーケンシャル方式に従って順次駆動されること、および1個の点光源は光を発散的に出射することを踏まえて、それら3個の光源50R,50G,50Bが1個の点光源として表現されている。
図4には、ブロードバンドAR板76の一部が拡大されて断面図で示されている。このブロードバンドAR板76は、基材80上にテーパ状の複数個の凸部(点状の凸部)82が最密格子配列によって縦横に2次元的に配置されることにより、構成されている。それら複数個の凸部82により、ブロードバンドAR層84が形成されている。
このブロードバンドAR層84においては、それら複数個の凸部82により、サブ波長の周期を有する周期構造(以下、単に「サブ波長構造」という。)が構成されている。このブロードバンドAR層84の表面はモスアイ面とも称される。凸部82間の間隔は、ブロードバンドAR層84に入射する光束の波長(図4においては、LED60R,60G,60Bから出射する光束の波長)より小さい。したがって、このブロードバンドAR層84は、ある屈折率を有する媒質と等価である。このブロードバンドAR層84に実質的に垂直に光束が入射する場合には、このブロードバンドAR層84から高次の回折光は発生せず、発生する光はせいぜい、0次の透過光または反射光である。
さらに、本実施形態においては、各凸部82がテーパ状を成しているため、各凸部82の高さ方向に屈折率が徐々に変化する。したがって、ブロードバンドAR層84から反射光は発生せず、発生する光は0次の透過光のみとなる。
このブロードバンドAR板76は、ホウ珪酸ガラス(またはシリカガラス)を基材80として構成されている。基材80に対して電子線でパターニングを行い、その基材80に対して高速電子線で加工を行うことにより、例えば、周期が150nmで、高さが350nmである周期構造を構成することが可能である。また、このブロードバンドAR板76は、高精度の研削によって構成することも可能である。シリカガラス製の基材80のフレネル反射は片面で約3.5%であるが、今回の周期構造により、可視域において入射角度が、入射面の法線方向に対して±40度以上である範囲で、0.1%の反射率が実現できる。したがって、このようなサブ波長構造を任意の光源の表面に形成すれば、光源からの光束の取り出し効率を高めることが可能である。すなわち、光源内において多重反射して最終的に熱として消費されてしまう光子の数を最小限に抑えることが可能なのである。
これに対し、サブ波長構造屈折板78は、図5に示すように、基材86上に複数個の凸部88が入射波長より短い間隔で2次元的に並ぶように配置されることにより、構成されている。本実施形態においては、各凸部88は、線状に延びている。
このサブ波長構造屈折板78に点光源(各サブ波長構造屈折板78に対応する1個の光源)からの単色光が参照光として投入されると、透過光が物体光として再生され、それにより、このサブ波長構造屈折板78は、点光源からの発散光を略平行化する正パワー素子の働きをなす。同じ点光源から発散的に出射した複数の光線の向きを略一方向に揃える集光機能を果たすのである。このサブ波長構造屈折板78の屈折層90(図3参照)により、このサブ波長構造屈折板78に入射した光束を任意の方向に屈折させることが可能である。
それらブロードバンドAR板76もサブ波長構造屈折板78も、CGH(コンピュータ・ジェネレーテッド・ホログラム)素子である。ところで、ホログラフィは、一般に、3次元像の再生が可能である。ホログラフィの記録には、参照光と物体光とが干渉するとその結果として干渉縞が生じるという現象が利用されるが、これに対し、CGHは、記録に光をまったく用いることなくコンピュータを用いて回折パターンを生成する方法である。
CGHの利用範囲は広範であり、グレーティング素子、シリンドリカルレンズ、球面レンズ、非球面レンズ、特殊レンズ、光結合器、パターン発生器などを作製するために利用できる。CGHには、バイナリCGHと、グレイレベルCGHと、位相レベルCGHとがあるが、一般的には、位相レベル2値CGHが用いられることが多い。図5は、表面レリーフホログラムの一例を示しており、高さがサブ波長のサイズに形成された凸部88は、透過光の位相をシフトする働きをなす。
一般に、CGHにおいては、まず、2次元パターンがコンピュータにより、ホログラム面上のすべての点において物体光と参照光との生成位相分布として計算される。次に、その計算された2次元パターンがクロムマスク等のマスクに、例えば電子ビームを用いて描画される。続いて、そのマスクがフォトレジストに投影される。これにより、フォトレジストがパターニングされ、その後、現像、リンス、ドライエッチング等の手法により、基材上に凹凸が形成される。基材上に2次元パターンを描画するプロセスは、基材に対して直接、電子線リソグラフィを実施する方法によって行うことも可能である。また、そのプロセスは、高精度の研削刃を用いて直接基材を研削する方法によって行うことも可能である。
図2に示すように、3個の光源50R,50G,50Bは、同一平面上において3方向からクロスプリズム56の中心に向かって各光束を出射するように配置されている。それら3個の光源50R,50G,50Bは、クロスプリズム56を、それの4側面のうちの3側面において包囲している。クロスプリズム56は、3個の光源50R,50G,50Bからそれぞれ出射した3つの成分光を、後述する各反射面に設置されたダイクロイックミラーの働きにより、1つの合成光に合成する光合成器である。
図6に示すように、クロスプリズム56は、45度直角プリズム94,96,98,100が4個、それらの側面同士において互いに接着接合されることにより、構成されている。各プリズム94,96,98,100は、低光弾性定数のガラス(例えば、オハラ社製「PBH56」低光弾性定数β=0.09×10−12Pa))を支持体として形成されている。
図6に示すように、4個のプリズム94,96,98,100のうち、LED70Rに対向するプリズム94には、LED70Rから赤色ビーム(図6において「R光」で表す。)が、そのプリズム94の底面を入射面として、その入射面に略垂直に入射する。同様に、LED70Gに対向するプリズム96には、LED70Gから緑色ビーム(図6において「G光」で表す。)が、そのプリズム96の底面を入射面として、その入射面に略垂直に入射する。同様にして、LED70Bに対向するプリズム98には、LED70Bから青色ビーム(図6において「B光」で表す。)が、そのプリズム98の底面を入射面として、その入射面に略垂直に入射する。残りのプリズム100からは、それの底面を出射面として、その出射面から垂直に合成光(図6において「RGB光」で表す。)が出射する。
プリズム94の一対の斜面のうちプリズム96と接合するものと、プリズム100の一対の斜面のうちプリズム98と接合するものとにはそれぞれ、赤色ビームは反射し、緑色および青色のビームは透過するダイクロイックミラー102,104が形成されている。さらに、プリズム96の一対の斜面のうちプリズム98と接合するものと、プリズム100の一対の斜面のうちプリズム94と接合するものとにはそれぞれ、青色ビームは反射し、赤色および緑色のビームは透過するダイクロイックミラー106,108が形成されている。
したがって、プリズム94に入射した赤色ビームは実質的に2面のダイクロイックミラー102,104によって反射してプリズム100から出射する。また、プリズム96に入射した緑色ビームは4個のダイクロイックミラー102,104,106,108をいずれも透過してプリズム100から出射する。また、プリズム98に入射した青色ビームは2個のダイクロイックミラー106,108によって反射してプリズム100から出射する。それらダイクロイックミラー102,104,106,108の波長選択的な反射および透過により、3方向から入射した3色のビームが合成され、その合成光がプリズム100から出射する。
図2に示すように、各光源50R,50G,50Bとクロスプリズム56とは、各CGH板70R,70G,70Bの両面のうちビームが出射する出射面と、各プリズム94,96,98の入射面とが接着剤114によって互いに接着されることにより、互いに固定されている。その接着剤114は、UV照射によって硬化する光透過性の接着剤である。各光源50R,50G,50Bとクロスプリズム56とは、図2の紙面に平行な面内における相対位置が精度よく調整された状態で、接着剤114によって互いに固定されている。
図2に示すように、クロスプリズム56の出射側に前述の空間変調部42が設置されている。この空間変調部42は、偏光ビームスプリッタ120を備え、さらに、反射型液晶パネルとしてのLCOS(リキッド・クリスタル・オン・シリコン)を2個備えている。それら2個のLCOSをそれぞれ、LCOS1およびLCOS2と称する。
図7には、それら偏光ビームスプリッタ120とLCOS1およびLCOS2とが拡大して平面図で示されている。偏光ビームスプリッタ120は、45度直角プリズム122,124が2個、それらの斜面同士において互いに接合されることにより、構成されている。その接合面にブロードバンド偏光ビームスプリッタ面126が形成されている。各プリズム122,124の外周は、他のプリズム124,122との接合面でもある斜面と、互いに直角な2つの側面とによって構成されている。各プリズム122,124は、低光弾性定数のガラス(例えば、前述のオハラ社製「PBH56」)を支持体として形成されている。
それらプリズム122,124のうち光源部40に近いプリズム122に、その光源部40から出射した合成光(図7において「RGB光」で表す。)が入射する。このプリズム122のうちの2つの側面は、光源部40に正対する側面と、正対しない側面とから成り、正対する側面が、合成光がこの偏光ビームスプリッタ120に入射する際の入射面である。図2に示すように、その入射面とクロスプリズム56の出射面とは、UV照射によって硬化する光透過性の接着剤130によって互いに接着されている。それら偏光ビームスプリッタ120とクロスプリズム56とは、図2の紙面に平行な面内における相対位置が精度よく調整された状態で、接着剤130によって互いに固定されている。
図7に示すように、偏光ビームスプリッタ120を構成する2個のプリズム122,124のうち光源部40から遠いプリズム124も、それの外周が、別のプリズム122との接合面である底面と、互いに直角な2つの側面とによって構成されており、それら2つの側面は、光源部40に正対する側面と、正対しない側面とから成っている。
図7に示すように、偏光ビームスプリッタ120に入射した合成光すなわち入射光(光源部40から出射した照明光)は、ブロードバンド偏光ビームスプリッタ面126によって反射する入射S波(S偏光)と、そのブロードバンド偏光ビームスプリッタ面126を透過する入射P波(P偏光)とに分割される。偏光ビームスプリッタ120は、照明光(RGB光)の全波長帯域において、すなわち、ブロードバンドで、その偏光特性が実質的に同一であるように設計されている。
2個のプリズム122,124のうち光源部40から遠いプリズム124にはLCOS1、近いプリズム122にはLCOS2がそれぞれ対向させられている。LCOS1には入射P波、LCOS2には入射S波がそれぞれ入射する。それらLCOS1とLCOS2とは、入・出射方向に関して互いに直交するように配置されている。
LCOS1およびLCOS2はいずれも、例えば特開平11−95212号公報に開示されているように、図示しないが、アルミニウム反射ミラーを内蔵してスイッチング素子をマトリクス状に複数個配列して成る反射型アクティブマトリクス基板と、液晶層と、その液晶層の厚さを規制するカバーガラスとが積層されることにより、構成される。LCOS1およびLCOS2はそれぞれ、外部から供給される画像信号に基づき、その画像信号により表される画像光が各LCOSから出射するように、それぞれに入射した照明光の偏光方向を変調する。
各LCOSにおいては、輝度を有する画素(例えば、明表示の画素)については、この画素を電界的に放置することにより、偏光ビームスプリッタ120から入射した照明光を、その入射光に直交する偏光方向に変調して反射する。その後、その反射光は投影レンズユニット14に向かう。これに対し、輝度を有しない画素(例えば、暗表示の画素)については、この画素において液晶に電界を印加することによって液晶分子を正立させ、入射した照明光をそれと同一の偏光方向で反射する。その後、その反射光は、光源部40に逆戻りし、その光源部40においてその反射光のパワーが消費されて消滅する。
具体的には、LCOS1においてP波からS波への変調が行われた画素については、LCOS1からの反射光がS波であるため、ブロードバンド偏光ビームスプリッタ面126において反射し、その後、その反射光は、プリズム124の2つの側面のうち光源部40と正対しない側面を出射面として、その出射面から出射する。この出射光は、S波の画像信号光である。一方、LCOS1においてP波からS波への変調が行われなかった画素については、LCOS1からの反射光がP波であるため、ブロードバンド偏光ビームスプリッタ面126を透過し、その後、その透過光は、偏光ビームスプリッタ120の入射面から出射して、この画像投影装置10内のいずれかの場所において消費消失する。すなわちこの出射光は、P波の消失光なのである。
これに対し、LCOS2においてS波からP波への変調が行われなかった画素については、LCOS2からの反射光がS波であるため、ブロードバンド偏光ビームスプリッタ面126において反射し、その後、その反射光は、偏光ビームスプリッタ120の入射面から出射して、この画像投影装置10内のいずれかの場所において消費消失する。すなわち、この出射光は、S波の消失光なのである。一方、LCOS2においてS波からP波への変調が行われた画素については、LCOS2からの反射光がP波であるため、ブロードバンド偏光ビームスプリッタ面126を透過し、その後、その透過光は、偏光ビームスプリッタ120の入射面から出射する。この出射光は、P波の画像信号光である。
偏光ビームスプリッタ120の同じ出射面から、P波の画像信号光とS波の画像信号光とが出射する結果、それら2種類の画像信号光が合成され、それが、空間変調部42からの最終的な出射光となる。この際に肝要なことは、2つの空間変調器であるLCOS1およびLCOS2からそれぞれ出射した2種類の画像信号光が完全に重なるように、それらLCOS1およびLCOS2が、それら間の相対位置が精度よく調整された状態で、偏光ビームスプリッタ120に固定されることである。
そのため、図2に示すように、プリズム124の表面とLCOS1の表面とは、UV照射によって硬化する光透過性の接着剤132によって互いに接着されている。同様に、プリズム122の表面とLCOS2の表面とは、UV照射によって硬化する光透過性の接着剤134によって互いに接着されている。各LCOSと偏光ビームスプリッタ120とは、図2の紙面に平行な面内における相対位置が精度よく調整された状態で、接着剤132,134によって互いに固定されている。
図2に示すように、LCOS1の両面のうち、偏光ビームスプリッタ120とは反対側に、放熱部としての放熱フィン138が、LCOS1と接触する状態で装着されている。同様に、LCOS2の両面のうち、偏光ビームスプリッタ120とは反対側に、放熱部としての放熱フィン140が、LCOS2と接触する状態で装着されている。これにより、液晶の昇温による画像信号光のコントラスト低下を低減させることができる。一般に、液晶分子は、摂氏60℃を超えると、それのねじれネマテッゥ構造を正しく維持することができなくなってしまい、その結果、画像信号光のコントラストを低下させてしまう。
図2に示すように、空間変調部42の出射側に前述の投影レンズユニット14が配置されている。この投影レンズユニット14は、テレセントリック性を有するように直列に並んだ複数個のレンズ150,152,154,156と、それらレンズ150,152,154,156を保持するレンズバレル158とを備えている。それら複数個のレンズ150,152,154,156のうちの一部は、プラスチックレンズで、残りは、ガラスレンズである。本実施形態においては、4個のレンズ150,152,154,156のうち、装置ハウジング12の内側にある2個のレンズ150,152は、光学ガラスBK7によるガラスレンズ、外側にある2個のレンズ154,156は、光学プラスチックPMMAによるプラスチックレンズとされている。
レンズバレル158は、フォーカス調整ねじ160を介して装置ハウジング12に軸方向に移動可能に装着されている。フォーカス調整ねじ160により、この画像投影装置10の位置から、この画像投影装置10による投影像までの投影距離すなわちフォーカスが調節される。
以上、この画像投影装置10の光学的構成を説明したが、次に、その電気的構成を説明する。
図8には、この画像投影装置10の電気的な構成がブロック図で概念的に表されている。図8に示すように、この画像投影装置10は、マイクロプロセッサユニット(以下、「MPU」と略称する。)170を主体として構成されている。
この画像投影装置10は、画像投影の開始を指令するためにユーザによって操作される操作部として投影スイッチ172を備えている。その投影スイッチ172が操作されたか否かを監視するために、投影スイッチ172とMPU170とがキースキャン部174を介して互いに接続されている。
図8に示すように、MPU170には、電源インターフェース部(図8においては「電源if部」で表す。)176と、アナログRGB信号によって代表されるビデオ信号(画像信号)をサンプリングするビデオサンプリング部178が接続されている。それら電源インターフェース部176とビデオサンプリング部178とは、前述の接続ケーブル32を介してモバイル・コンピュータ16に接続されている。
MPU170には、電源インターフェース部176を介して、モバイル・コンピュータ16から電力(電気エネルギー)が供給され、さらに、それと並行して、ビデオサンプリング部178を介して、モバイル・コンピュータ16から画像信号(ビデオ信号)が供給される。電源インターフェース部176は、モバイル・コンピュータ16から供給されるバスパワー電圧(5Vまたは12V)を、この画像投影装置10による要求電圧(+15V,+3.3V,+1.5V,−7.5V)に変換するDC−DCコンバータ機能を有する。
MPU170には、さらに、記憶部としてのVRAM(ビデオRAM)180も接続されている。このVRAM180には、外部から取り込まれた画像信号が保存され、さらに、画像投影に必要な画像信号がVRAM180から読み出されてMPU170に取り込まれる。VRAM180としては、例えば、高速RAMであるSDRAMやDDRRAMが用いられる。
図8に示すように、MPU170は、LCDドライバ182を介して前述のLCOS1およびLCOS2に接続されている。MPU170は、それらLCOS1およびLCOS2を制御するために、LCDドライバ182にLCOS信号(図8および図9においては単に「LCOS」で表す。)を供給する。LCOS信号は、前述の、画素ごとの変調制御、すなわち、画素ごとに液晶に印加される電界の制御を行うためにLCOS1およびLCOS2に供給される。
この画像投影装置10においては、3個の光源50R,50G,50B、すなわち、赤色ビームを発光する光源(図8においては「R光源」で表す。)50Rと、緑色ビームを発光する光源(図8においては「G光源」で表す。)50Gと、青色ビームを発光する光源(図8においては「B光源」で表す。)50Bとが、フィールドシーケンシャル方式に従い、順次、点滅制御される。図9にタイムチャートで表すように、投影画像の1フレームごとに、R光源50RとG光源50GとB光源50Bとがそれらの順に順次駆動される。1フレームにおいては、R光源50Rが駆動されるフィールドと、G光源50Gが駆動されるフィールドと、B光源50Bが駆動されるフィールドとが時間的に互いにオーバーラップしないようになっている。1フレームの時間幅、すなわち、フレーム周期は例えば、1/60秒である。
このフィールドシーケンシャル方式での画像信号処理を行うために、図8に示すように、MPU170は、タイミングジェネレータ186とフィールドシーケンシャルドライバ188とをそれらの順に経て3個の光源50R,50G,50Bに接続されている。タイミングジェネレータ186は、MPU170から供給される垂直同期信号(図8および図9においては「VSYNC」で表す。)に応じ、図9に示すように、ブランキング信号(図8および図9においては「BLANKING」で表す。)と、各光源50R,50G,50Bを駆動する光源制御信号(図8および図9においてはそれぞれ、「R」、「G」および「B」で表す。)とを発生させる。
発生させられたブランキング信号は、上述のLCDドライバ182に供給される。LCDドライバ182は、図9にタイムチャートで表すように、供給されたブランキング信号に関連して、LCOS信号をLCOS1およびLCOS2に供給する。
これに対し、発生させられた各光源制御信号は、フィールドシケンシャルドライバ188に供給される。フィールドシケンシャルドライバ188は、図9にタイムチャートで表すように、供給された各光源制御信号に関連して、R光源50RとG光源50GとB光源50Bとをそれぞれ駆動するのに必要な駆動電圧(図9においてはそれぞれ、「R」、「G」および「B」で表す。)を、該当する光源に印加して発光させる。
前述のように、図1には、この画像投影装置10の一使用例が示されており、この使用例においては、この画像投影装置10がモバイル・コンピュータ16に取り付けて使用されるが、この画像投影装置10は、他の用途に使用することが可能である。
別の使用例においては、図10に示すように、この画像投影装置10が、可搬型情報機器としての携帯電話機200と接続ケーブル32によって接続され、それにより、少なくとも画像信号がこの画像投影装置10に送信される状態で、任意のフロア上に設置された専用のスクリーン202上に画像が投影されるように使用される。
この使用例においては、この画像投影装置10が、テーブル等の固定物上に載置されることにより、位置決めされる。さらに、この使用例においては、この画像投影装置10が、携帯電話機200以外の機器から電力を取り込むことが可能である。この画像投影装置10にあおり角調整機能を付与すればそれの利便性が向上することはいうまでもなく、前述のチルト・ジョイント24に代えて、簡単なねじの嵌合を利用した公知のチルト調整機構を用いてもよい。
さらに別の使用例においては、図11に示すように、この画像投影装置10が、可搬型情報機器としての携帯情報端末PDAの一部分に、装着具としての回転ジョイント212によって機械的に、また、接続ケーブル32(図1参照)によって電気的に接続され、それにより、少なくとも画像信号がこの画像投影装置10に送信される状態で、任意の壁面214上に画像が投影されるように使用される。
この使用例においては、PDA210がテーブル等の固定物上に載置される一方、この画像投影装置10がそのPDA210に支持されており、それにより、この画像投影装置10が位置決めされる。この画像投影装置10は、回転ジョイント212により、PDA210に固定の水平軸線まわりに、または、これと交差する別の回転軸線まわりにも、回転位置が少なくとも一軸以上の自由度で調節可能となっており、この画像投影装置10が画像光を出射する角度を垂直面内において容易に調節可能となっている。さらに、この使用例においては、この画像投影装置10が、PDA210以外の機器から電力を取り込むことが可能である。
次に、本発明の第2実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態と共通する要素が多いため、異なる要素についてのみ詳細に説明し、共通する要素については、同一の符号または名称を使用して引用することにより、詳細な説明を省略する。
図12には、本実施形態に従う画像投影装置230の光学的構成が平面図で示されている。この画像投影装置230においては、装置ハウジング232に、光源部240と、空間変調部242と、投影レンズユニット14とが、互いに直列に並ぶように搭載されている。この画像投影装置230の電気的構成は、第1実施形態に従う画像投影装置10と基本的に共通するため、その説明を省略する。
図12に示すように、本実施形態に従う画像投影装置230においては、光源部240が、クロスプリズム56と、そのクロスプリズム56をそれの4側面のうちの3側面において包囲する3個の光源250R,250G,250Bとを含むように構成されており、基本的な構成は、第1実施形態に従う画像投影装置10の光源部10と共通する。ただし、各光源250R,250G,250Bの詳細構成は、第1実施形態とは異なる。
具体的には、本実施形態においては、各光源250R,250G,250Bが、ホウ珪酸ガラス製の基板254を有しており、さらに、各光源250R,250G,250Bが、100nm程度の薄膜LEDである有機LED260R,260G,260Bを主体として構成されている。有機LEDは、有機ELと称されることがある。各光源250R,250G,250Bにおいては、有機LED260R,260G,260Bが基板254上に直接形成されている。さらに、各光源250R,250G,250Bにおいては、各グレーティング板270R,270G,270Bが、ブリッジ274を介して基板254に装着されている。ここに、「グレーティング」とは、回折機能を有する素子を意味し、例えば、多段階エッチングやCGHの原理、研削等の機械加工によって作製される。
図13には、グレーティング板270R,270G,270Bを代表するグレーテング板270が側面図と平面図とでそれぞれ示されている。グレーティング板270R,270G,270Bは、グレーティング成形品(材料:PMMA)280と、サブ波長構造成形品(材料:PMMA)282とが互いに積層されて構成されている。サブ波長構造成形品282の表面には、サブ波長構造AR層284が形成されている。このサブ波長構造AR層284においては、複数本の溝が複数の同心円に沿って並んでいる。グレーティング成形品280も、それの格子ピッチがサブ波長サイズであることが可能であり、これは、広義のサブ波長素子といえる。
一般に、グレーティングにおいては、特定の次数のみについて部分的に回折効率を高めるために、図14に示す如く、のこぎり波状の断面を有し、かつ、その断面上における各溝の表面がブレーズド角を有するブレーズドグレーテングを用いることが多い。図14には、溝の深さがサブ波長サイズに設定されたブレーズドグレーティングが示されている。このようなグレーティングは、多数の次数の回折光を発生させるが、それらのうち、特に+1次の回折光のみに、パワーを集中的に振り向ける働きをなす。
このようなグレーティングに点光源からの単色光が投入されると、グレーティングは、点光源からの発散光を略平行化する正パワー素子の働きをなし、それにより、グレーティングによるサブ波長構造の屈折層により、入射した光線を屈折させる光線屈折機能を果たす。
本実施形態においては、図13に示すグレーティング成形品282に、グレーティングによるサブ波長構造の屈折層(図示しない)が形成されており、このグレーティング成形品282により、上述の光線屈折機能が果される。この光線屈折機能により、同じ点光源から発散的に出射した、種々の方向ベクトルを持つ光線群の方向が略一方向に揃えられ、その結果、同じ点光源から出射した光が集光される。
グレーティングは、基材に複数条の斜面および溝を、位置に応じて異なるパターンで形成することによって作製される。ただし、局部的に観察すれば、それら複数条の斜面および溝は周期的に並んでいる。その作製のために、まず、2次元的パターン分布がコンピュータ等によって計算され、次に、その計算されたパターンに従い、回転式のワークベンチに転写型としての金型が保持させられ、微細加工機等を用いることにより、その金型に対して直接、反転パターン形状を形成するための加工が施される。その金型を利用して射出成形または注型等の複写生産方法が実施されることにより、グレーティングが作製される。
図12に示すように、グレーティング板270R,270G,270Bは、UV照射によって硬化する光透過性の接着剤290によってクロスプリズム56に、正確に位置決めされた状態で接着されている。
図12に示すように、本実施形態においては、空間変調部242が、第1実施形態とは異なり、サブ波長構造を利用した偏光ビームスプリッタ板300と、それの出射側に配置された1個の透過型LCD(リキッドクリスタルディスプレイ)302とを含むように構成されている。透過型LCD302は、偏光ビームスプリッタ板300を隔ててクロスプリズム56と一直線上において対峙している。
図15には、偏光ビームスプリッタ板300が拡大して側面図で示されている。この偏光ビームスプリッタ板300は、サブ波長構造成形品304であり、それの表面に偏光層306が形成されている。この偏光ビームスプリッタ板300は、それに入射したRGB光のうち、ある一方向の直線偏光光(図15の例においては、P波)は透過するのに対し、それに直交する方向の直線偏光光(図15の例においては、S波)は反射する。
図15に示すように、偏光ビームスプリッタ板300に入射したRGB光のうち、その偏光ビームスプリッタ板300を透過した直線偏光光は、その後、図12に示すように、透過型LCD302に入射する。その透過型LCD302においては、その入射した直線偏光光の偏光方向が、画素ごとに、90度ねじられて透過型LCD302から出射するか、または0度のままで透過型LCD302から出射するための変調作用を受ける。その選択的な変調作用を受けた直線偏光光については、その後、透過型LCD302の出射面に設けられた偏光層により画像信号光の弁別が行われ、画素ごとに選択的に透過型LCD302から出射する。
一方、図15に示すように、偏光ビームスプリッタ板300に入射したRGB光のうち、その偏光ビームスプリッタ板300によって反射された成分は、光源部240の側に戻り、消失する。
図12に示すように、偏光ビームスプリッタ板300の入射面と、クロスプリズム56の出射面とは、UV照射によって硬化する光透過性の接着剤310により、互いに高精度に位置決めされた状態で、互いに接着されている。
図12に示すように、透過型LCD302が、偏光ビームスプリッタ板300と平行に、かつ、ブリッジ312を介してその偏光ビームスプリッタ板300に装着されている。この透過型LCD302は、板状を成し、かつ、画素ごとに画像光の透過率を変調する。この透過型LCD302には、放熱部としての放熱フィン314が密着して取り付けられている。この放熱フィン314による空冷効果と、ブリッジ312による伝熱効果とにより、透過型LCD302の昇温が抑制される。それにより、昇温に起因した画像コントラストの低下が発生せずに済む。
図12に示すように、透過型LCD302の出射側に投影レンズユニット14が配置されている。この投影レンズユニット14は、第1実施形態と共通する構成を有する。
次に、本発明の第3実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第2実施形態と共通する要素が多いため、異なる要素についてのみ詳細に説明し、共通する要素については、同一の符号または名称を使用して引用することにより、詳細な説明を省略する。
図16には、本実施形態に従う画像投影装置330の光学的構成が平面図で示されている。この画像投影装置330においては、第2実施形態と同様に、装置ハウジング232に、光源部340と、空間変調部342と、投影レンズユニット14とが、互いに直列に並ぶように搭載されている。ただし、本実施形態は、光源部340および空間変調部342の一部のみに関して第2実施形態とは異なるため、異なる要素のみについてのみ詳細に説明する。本実施形態に従う画像投影装置330の電気的構成は、第2実施形態に従う画像投影装置230と共通するため、その説明を省略する。
図16に示すように、光源部340は、第2実施形態と同様に、3個の光源350R,350G,350Bを含むように構成されている。各光源350R,350G,350Bも、第1および第2実施形態と同様に、ダブルヘテロ構造のLED360R,360G,360Bを主体として構成されている。さらに、光源350Rを例にとり、図17に拡大して側面断面図で示すように、各LED360R,360G,360Bの表面は、サブ波長構造のAR層364が一体的に形成されている。
各LED360R,360G,360Bにおいては、そのAR層364により、各LED360R,360G,360Bの出射面を通過する際の多重反射に起因する損失、すなわち、最終的に光源内部において熱消費される光子による損失が低減する。その結果、各LED360R,360G,360Bからの光の取り出し効率が、AR層364が存在しない場合より、向上する。一般的に、光半導体材料の平面反射率は30%程度であるため、これを0.1%以下に抑えることは、光源の電気−光変換効率の向上に直結する。
ここで、光源350Rを例にとり、光源350R,350G,350Bの構造を具体的に説明するが、その構造は一般的なものであるため、簡単に説明する。図17に示すように、基板254に基板電極365a,365bが形成されている。基板電極365aにはLED360Rの電極(金薄膜)366a、別の基板電極365bにはLED360Rの別の電極(金薄膜)366bがそれぞれ接続されている。電極366bは、導通体367を介して透明電極層368に接続されている。透明電極層368と電極366aとは、活性層369を隔てて互いに対向している。それら透明電極層368と電極366aと活性層369とは積層構造を成している。
本実施形態においては、空間変調部342が、第2実施形態と共通する透過型LCD302と、第2実施形態とは異なる積層CGH板370とを含むように構成されている。図18には、その積層CGH板370が拡大して側面図で示されている。この積層CGH板370は、赤色ビームの波長を弁別するR波長弁別CGH板380Rと、緑色ビームの波長を弁別するG波長弁別CGH板380Gと、青色ビームの波長を弁別するB波長弁別CGH板380Bとの積層体である。各波長弁別CGH板380R,380G,380Bは、CGHにより作製された後、互いに積層して貼り合わせられる。この場合、光源である各LED360R,360G,360Bから発散的に出射した光は、発散状態を維持したままクロスプリズム56内を、色ごとに異なる経路に沿って進行することになる。
このようにクロスプリスム56から出射するRGB光は、平行光であってもよいし、平行光ではなくてもよい。このようなRGB光は、色別のホワイトバランス調整の可能性を無視して説明すれば、白色点光源から発散的に放射された白色光と等価である。そのため、図18には、クロスプリスム56から出射するRGB光が、白色点光源から発散的に放射された白色光として示されている。
本実施形態においては、そのようなRGB光が上述の積層CGH板370に入射する。R波長弁別CGH板380Rは、サブ波長の2次元的周期構造が赤色光の波長に適合させられることにより、入射したRGB光のうちの赤色成分光(R光)のみを平行化し、かつ、設定方向に屈折させる。同様にして、G波長弁別CGH板380Gは、サブ波長の2次元的周期構造が緑色光の波長に適合させられることにより、入射したRGB光のうちの緑色成分光(G光)のみを平行化し、かつ、R光と同じ屈折方向に屈折させる。さらに、B波長弁別CGH板380Bは、サブ波長の2次元的周期構造が青色光の波長に適合させられることにより、入射したRGB光のうちの青色成分光(B光)のみを平行化し、かつ、R光と同じ屈折方向に屈折させる。
その結果、積層CGH板370から出射する光は、略同一方向に略平行光として進行するR光とG光とB光との合成光となる。
次に、本発明の第4実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第3実施形態と共通する要素があるため、異なる要素についてのみ詳細に説明し、共通する要素については、同一の符号または名称を使用して引用することにより、詳細な説明を省略する。
図19には、本実施形態に従う画像投影装置400の光学的構成が平面図で示されている。この画像投影装置400は、概略的に説明すれば、光源の種類に関して第3実施形態とは異なり、さらに、3つの成分光を合成するためにクロスプリズム56を使用しない点でも第3実施形態とは異なる。さらに、この画像投影装置400は、空間変調を行うためにデフォーマブル・ミラー・デバイス(以下、「DMD」と略称する。)402を使用する点でも、透過型LCD302を使用する第3実施形態とは異なる。
図19に示すように、本実施形態に従う画像投影装置400は、装置ハウジング404を備えており、この装置ハウジング404に光源部410が設けられている。この光源部410は、セラミクス製の光源ハウジング412を備えており、この光源ハウジング412には、3個の空洞414R,414G,414Bが横一列に、かつ、同じ向きに開口する状態で並んで形成されている。それら3個の空洞414R,414G,414Bはいずれも、略真空状態で使用される。
いずれの空洞414R,414G,414Bにも、それの底部に、カーボンナノチューブ(CNT)420が設置されている。このカーボンナノチューブ420は、炭素で構成されたナノ構造を持つ針の集合体である。これは、電子放出源の一例であり、フィールド・エミッション・デバイスの一例でもある。いずれの空洞414R,414G,414Bにも、さらに、そのカーボンナノチューブ420に近接して、対向電極であるカソード422が設置されている。
3個の空洞414R,414G,414Bには、各開口部において各空洞414R,414G,414Bを封止する状態で、3個の蛍光体430R,430G,430Bがそれぞれ固着されている。それら3個の蛍光体430R,430G,430Bは、カーボンナノチューブ420から放出された電子線をトリガとして色別に可視光を発生させために設けられており、赤色光を発光するためのR発光蛍光体430Rと、緑色光を発光するためのG発光蛍光体430Gと、青色光を発光するためのB発光蛍光体430Bとから成っている。それら3個の蛍光体430R,430G,430Bには、それらの前面において、ITO等を材料とした透明電極であるアノード436が蒸着されている。
本実施形態においては、R発光蛍光体430Rとそれに対応する空洞414Rおよびカーボンナノチューブ420とによって赤色成分光を出射するR光源440Rが構成され、G発光蛍光体430Gとそれに対応する空洞414Gおよびカーボンナノチューブ420とによって緑色成分光を出射するG光源440Gが構成され、B発光蛍光体430Bとそれに対応する空洞414Bおよびカーボンナノチューブ420とによって青色成分光を出射するB光源440Bが構成され、それら3個の光源350R,350G,350Bによって光源部410が構成されているのである。光源ハウジング412は、それら3個の光源350R,350G,350Bに共通に設けられている。
図19に示すように、それら3個の光源350R,350G,350Bは、少なくともカーボンナノチューブ420においてフィールドシーケンシャルドライバ188に電気的に接続されており、第1実施形態と同様にして、3個の光源350R,350G,350Bがフィールドシーケンシャル方式に従って順次駆動される。
本実施形態においては、光源部410が、さらに合波部450を含むように構成されている。具体的には、図19に示すように、光源部410の前方に、合波部450としての積層CGH板452が、光源部410と正対する姿勢で配置されている。積層CGH板452は、第3実施形態における積層CGH板370と機能も構造も共通する。
積層CGH板452は、図20に拡大して示すように、ブロードバンドAR層454が形成された板状のサブ波長構造成形品456と、赤色光の波長を弁別して屈折させるR光屈折層460Rが形成された板状のサブ波長構造成形品470Rと、緑色光の波長を弁別して屈折させるG光屈折層460Gが形成された板状のサブ波長構造成形品470Gと、青色光の波長を弁別して屈折させるB光屈折層460Bが形成された板状のサブ波長構造成形品470Bとが互いに積層され、密着固定されることにより、構成されている。
図19に示すように、積層CGH板452の前方には、その積層CGH板452に対して、後述する所定の角度で斜めに対向する姿勢で前述のDMD402が配置されている。
ところで、積層CGH板452から出射するRGB光(合成光)は、積層CGH板452の出射面の略法線方向に沿って進行し、やがてDMD402に入射する。この際の光軸を入射光軸Sと称する。入射光軸Sは1つしか存在しないのに対し、DMD402から出射する画像光の光軸である出射光軸は2つ以上存在する。以下、このことを具体的に説明する。
DMD402においては、可撓性を有する反射ミラー(マイクロミラー)がマトリクス状に複数個配置されている。例えば、1個の画素に1個の反射ミラーが関連付けられる。ある画素を明表示の状態にするためには、その画素に関連付けられた反射ミラーを駆動するミラードライバ(図示しない)をオン状態にして、その反射ミラーを待機状態から所定の一方向に傾斜させる。この傾斜状態において反射ミラーから出射する光の光軸が、明表示時の出射光軸Tである。これに対し、ある画素を暗表示の状態にするためには、その画素に関連付けられた反射ミラーを駆動するミラードライバをオフ状態にして、その反射ミラーを、前記所定の一方向とは反対方向に傾斜させる。この状態において反射ミラーから出射する光の光軸が、暗表示時の出射光軸Lである。
図19においては、入射光軸Sと明表示時の出射光軸Tとの成す角度がθi、明表示時の出射光軸Tと暗表示時の出射光軸Lとの成す角度がθoとしてそれぞれ示されている。角度θiの一例は、10度であり、角度θoの一例は、20度である。この例においては、DMD402が、画素ごとの反射ミラーに対し、オンオフ制御により、両側に5度ずつの傾斜変調を行う。
図19に示すように、DMD402には、放熱部としての放熱フィン480が直付けされている。一方、暗表示時の出射光が装置ハウジング404に照射し続けられると、その照射部分が発熱して変形する可能性、または迷光が発生する可能性がある。そこで、本実施形態においては、暗表示時の出射光が入射してその出射光の熱を吸収して放熱するアブソーバ(例えば、カーボンブラック体)482が装置ハウジング404内に設置されている。
図19に示すように、DMD402の前方には、DMD402の表面に正対する姿勢で投影レンズユニット14が配置されている。この投影レンズユニット14は、第1実施形態における投影レンズユニット14と基本的に共通する。ただし、本実施形態においては、共にプラスチック製であるレンズ154と156との間に、プラスチック製であるレンズ484が追加的に配置されている。
なお付言するに、本実施形態における光源部410は、第1ないし第3実施形態においてそれの光源部40,240,340を置換するように用いることが可能である。
次に、本発明の第5実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第4実施形態と共通する要素があるため、異なる要素についてのみ詳細に説明し、共通する要素については、同一の符号または名称を使用して引用することにより、詳細な説明を省略する。
第4実施形態においては、光源部410がカーボンナノチューブ420を主体として構成されているが、図21に示すように、本実施形態に従う画像投影装置500おいては、光源部510がプラズマ発光素子を主体として構成されている。さらに、第4実施形態においては、合波部450が2次元的なサブ波長構造を有するように構成されているが、本実施形態においては、合波部512が、3次元的なサブ波長構造すなわち導波路構造を有するフォトニック結晶板520を含むように構成されている。
図21には、本実施形態に従う画像投影装置500のうち、光源部510とフォトニック結晶板520とが取り出されて平面図で示されている。
図21に示すように、光源部510は、第4実施形態と同様にして、セラミクス製の光源ハウジング530を備えており、この光源ハウジング530には、3個の空洞532R,532G,532Bが横一列に、かつ、同じ向きに開口する状態で並んで形成されている。それら3個の空洞532R,532G,532Bはいずれも、プラズマガスが充填された状態で使用される。
いずれの空洞532R,532G,532Bにも、それの開口部を除く部分に蛍光体540R,540G,540Bが形成されている。具体的には、空洞532Rには、赤色成分光を発光するためのR蛍光体540Rが形成され、空洞532Gには、緑色成分光を発光するためのG蛍光体540Gが形成され、空洞532Bには、青色成分光を発光するためのB蛍光体540Bが形成されている。
光源ハウジング530の底部には、3個の空洞532R,532G,532Bに共通に、背面誘電体基板546が形成されている。この背面誘電体基板546には、3個の空洞532R,532G,532Bの各底部にそれぞれ対向する位置に3個のアドレス電極550R,550G,550Bが埋設されている。その背面誘電体基板546は、光源ハウジング530とは反対側において、3個の空洞532R,532G,532Bに共通の背面ガラス556で覆われている。
これに対し、光源ハウジング530の開口部には、3個の空洞532R,532G,532Bの各開口部をそれぞれ閉塞する3個の前面透明誘電体層560R,560G,560Bが形成されている。各前面透明誘電体層560R,560G,560Bには、適数個の透明表示電極566が、少なくとも横方向に並んで埋設されている。それら前面透明誘電体層560R,560G,560Bは、光源ハウジング530とは反対側において、3個の空洞532R,532G,532Bに共通の前面ガラス568で覆われている。
本実施形態においては、R蛍光体540Rとそれに対応する空洞532R、アドレス電極550Rおよび透明表示電極566とによって赤色成分光を出射するR光源570Rが構成され、G蛍光体540Gとそれに対応する空洞532G、アドレス電極550Gおよび透明表示電極566とによって緑色成分光を出射するG光源570Gが構成され、B蛍光体540Bとそれに対応する空洞532B、アドレス電極550Bおよび透明表示電極566とによって青色成分光を出射するB光源570Bが構成され、それら3個の光源570R,570G,570Bによって光源部510が構成されているのである。光源ハウジング530は、それら3個の光源570R,570G,570Bに共通に設けられている。
それら3個の光源570R,570G,570Bは、第4実施形態と同様にして、アドレス電極550R,550G,550Bおよび透明表示電極566において、図示しないフィールドシーケンシャルドライバ188に電気的に接続されており、第4実施形態と同様にして、3個の光源570R,570G,570Bがフィールドシーケンシャル方式に従って順次駆動される。
これにより、各空洞532R,532G,532B内においてプラズマ発光が励起され、紫外線が発生する。その発生した紫外線は、各蛍光体540R,540G,540Bに照射されると、波長シフト作用によって可視光に変換され、やがて、その変換された可視光が、各光源570R,570G,570Bの前面の開口部から取り出される。
本実施形態においては、光源部510が、さらに合波部512を含むように構成されている。具体的には、図21に示すように、光源部510の前方に、合波部512としてのフォトニック結晶板520が、光源部510と正対する姿勢で配置されている。
図22には、そのフォトニック結晶板520が拡大して側断面図で示されている。図22には、3個の光源570R,570G,570Bがそれぞれ点光源であること、それら3個の光源570R,570G,570Bは順次選択されて駆動されること、および、点光源は光を発散的に出射することに着目し、光源部510が1個の点光源として簡略的に表現されている。
図22に示すように、本実施形態においては、板状のフォトニック結晶板520が、導波路型の3次元周期構造を持つフォトニック結晶580と、ブロードバンドAR層582が2次元的に形成されたAR板584とが積層されて構成されている。ブロードバンドAR層84は、第1実施形態におけると同様に、テーパ状の複数個の凸部82がサブ波長間隔で並んだサブ波長構造により、アンチリフレクション機能を発揮する。ブロードバンドAR層84は、さらに、フォトニック結晶580の入射端590へ光束をカップリングさせる偏向機能も発揮する。
フォトニック結晶580は、フォトニックバンドギャップ(PBG)素子の一例である。PBG素子は、光子操作の視点から、サブ波長周期の誘電体周期構造を有するように形成される素子である。PBG素子の基本構造は、多段積層SOI(シリコン・オン・インシュレータ)であり、その用途は、微小な受動光回路等に止まらず、光電気融合アクティブ素子に代表される新機能能素子に向けられる。すなわち、PBG素子は、光源の透過率を変調したり、偏光制御、位相制御を行うことが可能なのである。
光子を入射対象とする誘電体周期構造による変調対象は、屈折率であり、その変調のための構造がフォトニック結晶と称されるものである。フォトニックバンドギャップが形成される原理は、フォトニック結晶中において、電子と同様に禁制帯が生じ、そのエネルギーを持つ光子の存在が禁止されることにある。したがって、フォトニックバンドギャップが全方位に形成された結晶では、禁制帯内のエネルギーを有する光子はフォトニック結晶中に存在することができない。
電子を対象とする場合には、pn接合などの素子機能は不純物添加によって実現されるが、フォトニック結晶についても、その機能を実現するのは欠陥である。フォトニック結晶の場合、その欠陥は、局所的な誘電率周期の乱れである。フォトニックバンドギャップが全方位に形成されたフォトニック結晶に誘電対欠陥を導入すると、その誘電体欠陥の発生位置において特定のエネルギーを持つ光子の局在が許容される。構造上、その欠陥部における光子の局在と浸み出し(エバネッセント波)の効果とにより、一種のフィルタ作用が得られる。この事実に着目すれば、特定の直線偏光成分のみを通過させるフィルタを形成したり、無損失の導波路を形成することができる。
本実施形態においては、そのような性質を有するフォトニック結晶580を用いて導波路構造が実現されている。フォトニックバンドギャップによる光閉じ込め効果を利用すれば、3次元結晶の内部構造を導波型、特に導波路型にすることにより、図22に示すように、フォトニック結晶580への入射光がそのフォトニック結晶580の入射端590において、そのフォトニック結晶580中に形成される複数の導波路に高効率でカップリングされる。さらに、その入射光は、フォトニック結晶580の出射端592まで無損失で誘導される。
本実施形態においては、フォトニック結晶580が次のようにして形成される。まず、基材であるシリカガラスに複数個のエアホールがサブ波長間隔で規則正しく形成される。このシリカガラスを正確なアライメントで複数枚積層することにより、3次元構造のブロックが構成される。このブロックのうち、導波路を形成すべき部分について、予め形成されたエアホールが欠落させられる。この欠落部に光子が局在することが許容され、その結果、フォトニック結晶580中に導波路が形成される。
また、3次元の導波路構造は、例えば、次のようにしても形成することが可能である。まず、基材に対して、2次元のPBG構造が形成され、次に、エピタキシャル成長や、スピンコート等の物理的化学的手段より、2段目以後の基材が積層される。これを同等のPBG構造形成手法(通常は電子線リソグラフィー法)により、ワークのチャックを固定した状態のまま、順次加工・積層を繰り返すことにより、3次元構造が形成される。
なお付言するに、本実施形態における光源部510は、第1ないし第4実施形態においてそれの光源部40,240,340,410を置換するように用いることが可能である。
次に、本発明の第6実施形態を説明する。
以上説明したいくつかの実施形態に従う画像投影装置10,230,330,400,500は、複数色の成分光(単色光)を発生させ、かつ、色ごとおよび画素ごとに成分光の強度を変調することにより、画像をフルカラーで投影するタイプであるが、本実施形態に従う画像投影装置610は、白色光を発生させ、画素ごとにその白色光の各色強度を変調することにより、画像をモノクロまたはカラーで投影するタイプである。
図23には、本実施形態に従う画像投影装置610のうちの光源部620のみが側面断面図で示されている。この光源部620は、1個の点光源としてのアークランプ622と、コリメータとしてのPBG板624とを含むように構成されている。
アークランプ622は、よく知られているように、ランプハウジング626を含み、その内部において一対の電極630,630がギャップを隔てて互いに対向させられる。そのギャップにおいてアーク放電が行われるため、そのギャップ内の空間の一部分に、アークが発光される発光点が存在する。アークはその発光点から全方位に発散的に光を出射する。その一部は、電極630等によって遮光され、その結果、アークランプ622は、ある放射パターンを有する発光特性を持つ光源となる。
図23に示すように、アークランプ622の前方に上述のPBG機能を有するPBG板624が配置されている。このPBG板624は、第1実施形態と同様に、サブ波長構造を有する屈折層632を含んでおり、アークランプ622からその屈折層に入射した発散的な白色光を平行光に集光させる。このPBG板624は、第1実施形態と同様に、サブ波長構造によってアンチリフレクション機能を果すものとすることが可能である。
図23に示すように、アークランプ622の背後にコールドミラーリフレクタ634が配置されている。これにより、アークランプ622から全方位的に放射される光の全体が有効にPBG板624に向けられる。
光源部620をアークランプ622を主体として構成する場合には、従来、電力消費量の問題および発熱に起因する問題を解決しなければならなかった。これに対し、本実施形態によれば、PBG板624の集光機能(または集光機能およびアンチリフレクション機能)により、アークランプ622からの出射光が高効率で次段部に伝送されるため、それらアークランプ622およびPBG板624を含む光学系全体としての電気−光変換効率が従来より向上する。
したがって、本実施形態によれば、光源部620をアークランプ622を主体として構成するにしても、従来ほどには多くの発光量が必要ではなくなる。その結果、節電が容易になる上に、発熱に起因した問題が軽減され、それにより、耐熱構造化の必要性やそれに伴う大型化および重量増加の問題も軽減される。
なお付言するに、以上説明した第1ないし第5実施形態に従う画像投影装置10,230,330,400,500は、アークランプ622より発熱量が少ない光源部40,240,340,410,510を用いるのであるが、本実施形態とは異なり、次段部に向かう方向とは異なる方向に光源部40,240,340,410,510から出射した光を次段部に向かって反射する専用のリフレクタは用いておらず、それと同等の機能は、光源内部の反射や、基板の反射、銀ペーストによる反射、電極による反射によって達成される。
さらに付言するに、本実施形態における光源部620は、第1ないし第5実施形態においてそれの光源部40,240,340,410,510を置換するように用いることが可能である。
次に、本発明の第7施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第6実施形態と共通する要素があるため、異なる要素についてのみ詳細に説明し、共通する要素については、同一の符号または名称を使用して引用することにより、詳細な説明を省略する。
第6実施形態においては、光源部620がアークランプ622を主体として構成されている。これに対し、本実施形態に従う画像投影装置650においては、図24に示すように、光源部660が、よく知られたフィラメントランプ662を主体として構成されている。このフィラメントランプ662は、ランプハウジング664を備えており、それの内部において一対の電極670,670が隙間を隔てて互いに対向させられている。それら一対の電極670,670にフィラメント672の両端がそれぞれ接合されており、そのフィラメント672への通電により、そのフィラメント672が高温に達して発光する。したがって、フィラメントランプ662においては、図24において破線の円で囲まれる部分が、発光領域である。
この発光領域が例えば、直径3mm以下という程度に小さい場合には、その発光領域から十分に遠方に位置する正パワー素子から見れば、その発光領域は略点光源であるとみなすことができる。これに対し、その発光領域が略点光源であるとみなすことができない場合には、高効率の集光手段を用いることにより、その発光領域から発光した光を、次段部に伝達することが可能である。
本実施形態においては、図示しないが、第6実施形態と同様にして、フィラメントランプ662の前方に、PBG板624と共通するPBG板が集光手段として配置され、その結果、光源部660が、フィラメントランプ662とそのPBG板とを含むように構成される。そのPBG板の存在により、光源部660の電気−光変換効率が、そのPBG板が存在しない場合より、向上する。
次に、本発明の第8施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第6実施形態と共通する要素があるため、異なる要素についてのみ詳細に説明し、共通する要素については、同一の符号または名称を使用して引用することにより、詳細な説明を省略する。
第6実施形態においては、光源部620が、光の共振を利用することなく、光を出射するタイプであるのに対し、図25に示すように、本実施形態に従う画像投影装置690においては、光源部700が、レーザの如く、光の共振によるゲイン向上を利用することにより、光を出射するタイプである。
図25には、本実施形態に従う画像投影装置690のうちの光源部700のみが示されている。この光源部700は、光子発生源702と、サブ波長構造素子704と、パワー投入源706とを含むように構成されている。
光子発生源702は、例えば、電流密度に従って光子を発生させる半導体を主体として構成される。その半導体としては、例えば、(In・Ga・N),(Si・C),(Al・In・Ga・P)等がある。この光子発生源702は、光軸に沿って光が出射する出射面710と、その出射面に対して、光軸方向において対向する光源側共振ミラー面712とを備えている。光源側共振ミラー面712は、劈開面として形成されている。光子発生源702は、パワー投入源706から投入されたパワー(例えば、電気エネルギー)により、光子を発生させる。
この光子発生源702の出射面710には、アンチリフレクション機能を果たすサブ波長構造を有するAR層714が一体的に形成されている。そのサブ波長構造は、例えば、前述のように、複数個の凸部82がサブ波長間隔で2次元的に配列されたものとして構成される。このAR層により、光子発生源702から出射しようとする光が、出射面710での反射による損失を伴うことなく、その出射面710から出射することが可能となる。
図25に示すように、光子発生源702の前方に板状のサブ波長構造素子704が配置されている。サブ波長構造素子704は、光子発生源702からの出射光が入射する入射端720と、その入射光が次段部に向かって出射する出射端722とを備えている。
そのサブ波長構造素子704の入射端720に反透過共振ミラー面730が、2次元的なサブ波長構造によって一体的に形成されている。この反透過共振ミラー面730には、図26に概念的に示すように、この反透過共振ミラー面730において開口した凹部(またはサブ波長構造素子704を厚さ方向に貫通する穴でも可。)が複数個、2次元的に配列されている。それら複数個の凹部は、例えば、厚さが250nmであるシリコン薄膜に420nm間隔で格子状に規則正しく配列されたものとして構成することが可能である。
それら複数個の凹部は、フォトニックバンドギャップの光禁制効果により、複数個の微小なミラーのアレイとして作用し、この反透過共振ミラー面730への入射光の大半を光子発生源702内における光源側共振ミラー面712に向かって反射する。
図25に光路図で示すように、反透過共振ミラー面730において反射した光は、その反透過共振ミラー面730と光源側共振ミラー面712との間において反射を繰り返して往復進行させられる。この光の共振現象により、光子発生源702の量子効率すなわち電気−光変換効率が向上する。それら反透過共振ミラー面730と光源側共振ミラー面712とは、一対の対向ミラー面を構成し、それら一対の対向ミラー面による光の共振ゲインが1を超えるようにこの光源部700を設計すれば、光子発生源702の量子効率が、反透過共振ミラー面730を有するサブ波長構造素子704との協働により、そのようなサブ波長構造素子704を用いない場合(例えば、LEDが単に発光する場合)より向上する。
なお付言するに、それら反透過共振ミラー面730および光源側共振ミラー面712の如き一対の協働ミラー面は、他の種々の態様で配置することが可能である。例えば、それら一対の協働ミラー面を、いずれも光子発生源702から分離した状態で、その光子発生源702を隔てた両側にそれぞれ配置することが可能である。この配置によれば、光の共振による量子効率向上という効果に加えて、各ミラー面の角度チルトによるビーム偏向が可能になるという効果や、ミラー間隔の調整による共振波長変調が可能になるという効果が副次的に得られる。
なお付言するに、本実施形態における光源部700は、第1ないし第7実施形態においてそれの光源部40,240,340,410,510,620,660を置換するように用いることが可能である。
次に、本発明の第9施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態と共通する要素が多いため、異なる要素についてのみ詳細に説明し、共通する要素については、同一の符号または名称を使用して引用することにより、詳細な説明を省略する。
第1実施形態においては、各光源50R,50G,50Bからの出射光が可視光であるのに対し、図27に示すように、本実施形態に従う画像投影装置750においては、光源部760が、非可視光を発生させる少なくとも1個の光源と、その光源から発生させられた非可視光を可視光に変換する少なくとも1個の変換部とを含むように構成されている。
具体的には、図27に示すように、本実施形態に従う画像投影装置750は、光源部760が、3個のX線源762,762,762と、それらX線源762,762,762にそれぞれ設けられた3個の板状の波長シフタ770R,770G,770Bとを含むように構成されている。図27には、3つの成分光(R光、G光およびB光)のうちのいずれかを互いに共同して発生させる1個のX線源762と1個の波長シフタ770とが代表的に示されている。それら3個のX線源762,762,762が上述の「少なくとも1個の光源」の一例を構成し、また、それら3個の波長シフタ770R,770G,770Bが「上述の少なくとも1個の変換部」の一例を構成している。
各波長シフタ770R,770G,770Bは、サブ波長構造を利用することにより、それに入射した非可視光を可視光に変換する。この原理を説明するに、前述のように、サブ波長構造がフォトニックバンドギャップを有する場合には、光閉じ込め効果が発生し、これにより、誘電体欠陥部に光が拘束される。その拘束された光子のエネルギーにより、光電気融合アクティブ素子である半導体基材中のエネルギー準位が上昇し、その結果、その光電気融合アクティブ素子が基底状態に戻る際に、エネルギー準位差に比例した周波数を持つ光子が放出される。
この原理によれば、ある波長を持つ電磁波が、光閉じ込め効果を実現するサブ波長構造を有する光電気融合アクティブ素子に入射すると、その光電気融合アクティブ素子から、その入射した電磁波とは波長が異なる電磁波が出射する。すなわち、その光電気融合アクティブ素子が上述の波長シフタ770R,770G,770Bである。
なお付言するに、本実施形態においては、各成分光ごとにX線源762が設けられているが、複数の成分光に共通に1個のX線源を設けるようにして本発明を実施することが可能である。この場合、それら成分光にそれぞれ対応する複数個の波長シフタ770R,770G,770Bは、例えば、1個のX線源の放出軸上において互いに積層させることにより、コンパクトに一体化することが可能である。
さらに付言するに、本実施形態における光源部760は、第2ないし第8実施形態においてそれの光源部240,340,410,510,620,660,700を置換するように用いることが可能である。
さらに付言するに、本発明を実施するに際し、波長シフタ770R,770G,770Bを、可視光を非可視光に変換するように変更したうえで、その波長シフタ770R,770G,770Bと、可視光を放射する素子との組合せを用いることにより、放射線画像や赤外線画像を表示する画像表示装置を構成することが可能である。
さらに付言するに、本発明を実施するに際し、波長シフタ770R,770G,770Bを、例えば、R光とG光とB光とのうちのいずれか(例えば、R光)をR光とG光とB光とに波長シフトすることによって3原色光を実現するように変更することが可能である。このようにすれば、R光とG光とB光とについて個別に発光素子を用いて3原色光を実現する場合より、装置コストの削減が容易となる。
さらに付言するに、サブ波長構造素子自身がリアクティブ制御可能な放射源であってもよい。
以上、本発明の実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、前記[発明の開示]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。