JP2005307348A - 粉末冶金用鉄基粉末混合物 - Google Patents

粉末冶金用鉄基粉末混合物 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、粉体としての流動性が良く、圧粉体として成形用金型からの抜き出しが従来より容易に行え、得られた圧粉体の密度も従来より安定、かつ向上する、粉末冶金用鉄基粉末混合物を提案することを目的としている。
【解決手段】鉄基粉末に遊離潤滑剤を加え混合した新規な粉末冶金用鉄基粉末混合物を開発した。それは、前記遊離潤滑剤の粒径が200μm以下、平均粒径に相当する粒子の圧壊強度が0.2〜2MPaであり、且つ該遊離潤滑剤を前記鉄基粉末100質量部対して0.1〜1質量部含有させてなる粉末冶金用鉄基粉末混合物である。その際、該遊離潤滑剤として、溶融噴射で造粒したものを用いるのが好ましい。
【選択図】 図1

Description

本発明は、粉末冶金用鉄基粉末混合物に関するものである。本発明の鉄基粉末混合物は、とくに金型潤滑を行わなくても、常温で成形するのに有効である。
まず、鉄基粉末とは、鉄粉、鋼粉、還元鉄粉、合金鉄粉等の主原料鉄粉に、銅粉、黒鉛粉、燐化鉄粉等の合金用粉末、必要に応じてMnS等の切削性改善用粉末、及びステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム等の結合剤を混合したものを言う。そして、通常、「粉末冶金用鉄基粉末混合物」(以下、単に鉄基粉末混合物という)は、かかる鉄基粉末に、さらに遊離潤滑剤を混合して製造される。
ここで、前記鉄基粉末に結合剤を用いる理由は、下記の通りである。
鉄基粉末混合物は、前記したように、粒径、形状及び密度の異なる多種の粉末を混合したものである。ところが、鉄基粉末混合物の製造から、それを庄粉体成形用金型(以下、単に金型という)に充填、加圧して成形体にするまでの間に、多種の工程が介在する。例えば、該鉄基粉末混合物の輸送、ホッパヘの装入及びホッパからの排出、さらには金型への充填等の工程がある。そのため、鉄基粉末混合物内で各種粉末が均一に分布しなくなり、組成及び粒径についての偏析が発生し易い。
このような偏析が生じた鉄基粉末混合物を、加圧(圧縮)成形して成形体(以下、圧粉体という)とし、該圧粉体を焼結して最終製品にすると、製品毎に組成がばらつくこととなる。そして、その結果、寸法及び強度も大きくばらつくので、不良品が多発する。特に、前記主原料鉄粉に混合する銅粉、黒鉛粉、燐化鉄粉等の合金用粉末は、いずれも該主原料鉄粉より粒径が小さい微粉であるため、かような合金用粉末を混合した場合には、上記ばらつきの程度が一層大きくなる。
このような鉄基粉末混合物内の偏析を防止する技術として、主原料鉄粉の表面に、結合剤を用いて合金用粉末等を予め付着させる技術が提案されているのである(例えば、特許文献1,特許文献2,特許文献3参照)。なお、この結合剤を用いる技術を、以下では「偏析防止処理」と言う。
次に、前記鉄基粉末に混合し、鉄基粉末混合物を形成するに必要な遊離潤滑剤について説明する。
この遊離潤滑剤は、鉄基粉末混合物内で他の粒子と接触はしているが、付着せず単に分散している粉末潤滑剤である。そして、該遊離潤滑剤は、一般に、該鉄基粉末混合物を成形し圧粉体とした際に、その圧粉体の密度の向上、該圧粉体を金型から取り出す際の抜出し力の低減、及び金型の傷発生を防止する等の性能を発揮させる目的で鉄基粉末に添加される。
特に、前記「偏析防止処理」を施した鉄基粉末は、一般に流動性が悪いため、該流動性の低下を補うために、この遊離潤滑剤を添加することが必要であった。しかしながら、所望する程度の流動性の確保と前記したような他の潤滑性能とを両立させることが困難であるという問題があった。
そのため、前記流動性の確保及び前記抜出し力の低減を図る遊離潤滑剤として、ステアリン酸、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、ステアリン酸アミドとエチレンビスステアリン酸アミド(EBS:Ethylen Bis Stearic Acid Amideの略)との溶融混合物、EBSから選ばれた1種以上の遊離粉末と、ステアリン酸亜鉛の遊離粉末と、あるいはさらにステアリン酸リチウムの遊離粉末との混合物を用いる技術が提案されている(例えば、特許文献4及び特許文献5参照)。
しかしながら、その従来技術では、かかる遊離潤滑剤を混合した鉄基粉末混合物で成形した圧粉体の密度が十分に高くならなかった。
そこで、この課題を解決するために、遊離潤滑剤の利用ではなく成形技術で対応する技術も提案されており、例えば、金型潤滑剤(金型の内面に塗布、静電付着して使用する)を併用する方法や、温間成形、加圧焼結、2回成形等の特殊な成形法で圧粉体の密度を高める方法が知られている。ところが、かかる成形技術での対応は、成形コストの上昇を招くので、このような工夫をせずとも好結果が得られる粉末冶金用鉄基粉末混合物の出現が望まれている。
一方、遊離潤滑剤の改良により、前記流動性の確保及び低抜出し力の低減及び成形体の高密度化を両立させる方法として、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ヒドロキシステアリン酸リチウム等の金属石鹸及びその誘導体、あるいはオレイン酸、パルチミン酸等の脂肪酸、あるいは、ステアリン酸ビスアミド、セバシン酸ビスアミド等のエチレンジアミンと脂肪酸との共重合生成物、あるいはポリオレフィン等の熱可塑性樹脂粉末から選ばれる1種又は2種以上を遊離潤滑剤として添加するに際し、これら遊離潤滑剤の本来の粒子(一次粒子といい、粉砕が加えられている場合には、粉砕後の個々の粒子である)を、予め混合機等で転動して凝集させ、単に物理的に絡み合わせて見かけ上の粒径を大きくした(二次粒子とか、擬似粒子という)所謂「造粒型の潤滑剤」を用いる技術が提案されている(特許文献6参照)。
この一次粒子を転動させて擬似粒化した遊離潤滑剤は、金型への充填時には粒径が比較的大きな粒子であるため、それを混合した鉄基粉末混合物の流動性が確保される。また、成形時には、金型と鉄基粉末混合物粒子との間を効率的に潤滑するのみならず、二次粒子の一部が崩壊して微細な一次粒子に戻るため、各粒子同士の間の隙間にも容易に入り込み、低抜出し力と高い圧粉体密度が達成されるとしている。実際に、かかる擬似粒化した遊離潤滑剤を混合した鉄基粉末混合物は、圧粉体への成形時に、該遊離潤滑剤が金型の内面側に濃化して、成形した圧粉体の抜き出しを以前より容易にした。一般に、細かい遊離潤滑剤を混合した鉄基粉末混合物は、遊離潤滑剤の粒子が他の粉末粒子の凹部に入り込み、潤滑作用を発揮しなくなるので、流動性が悪くなる欠点があるが、前記した擬似粒化した遊離潤滑剤を用いた鉄基粉末混合物では、遊離潤滑剤の粒子径が大きいため、このような問題は生じない。すなわち、該鉄基粉末混合物は、その流動性を良好に維持するばかりでなく、成形した圧粉体を金型から抜出す力をも低減する。
特開平1−219101号公報 特開平2−217403号公報 特開平3−162502号公報 特開平5−148505号公報 特開平9−263802号公報 欧州特許出願公報:EP1364731号(A2)
しかしながら、本発明者らが調査した結果、前記特許文献6に記載されるような転動造粒によって擬似粒化した遊離潤滑剤を混合した鉄基粉末混合物でも、成形時に圧粉体の密度が十分に高まっているとは言えず、さらなる改善の余地があることがわかった。
また、この遊離潤滑剤は、鉄基粉末と混合する際に二次粒子を崩壊しないよう注意が必要である。そのため、均一に混合するには必要以上に時間がかかり、該鉄基粉末混合物の生産性が低下するばかりでなく、流動化の改善効果が若干不安定でもあった。
本発明は、かかる事情に鑑み、粉体としての流動性が良く、圧粉体として成形用金型からの抜出しが容易に行え、得られた圧粉体の密度も従来より安定、かつ向上する粉末冶金用鉄基粉末混合物を提案することを目的としている。
発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ね、その成果を本発明に具現化した。
すなわち、本発明は、主原料鉄粉に合金用粉末及び結合剤を混合してなる鉄基粉末の100質量部に対して、0.1〜1質量部の遊離潤滑剤を混合した粉末冶金用鉄基粉末混合物であって、前記游離潤滑剤が、粒径が200μm以下で、かつ、平均粒径に相当する粒子の圧壊強度が0.2〜2MPaであることを特徴とする粉末冶金用鉄基粉末混合物である。この場合、前記遊離潤滑剤が、その素材を150〜250℃で融解した後、高圧力で噴射して造粒したものであるのが好ましい。また、前記鉄基粉末に、必要に応じて、さらに、切削性改善用粉末を混合するのが良い。
さらに、本発明では、前記遊離潤滑剤の素材が、脂肪酸モノアミド、脂肪酸ビスアミド、ポリアミドもしくはアミドオリゴマー、金属石鹸、ポリエステル、ポリオール、糖類から成る群から選ばれる1種又は2種以上であったり、あるいは脂肪酸モノアミドとエチレンビスステアリン酸アミドとの溶融混合物であるのが好ましい。ここで、前記脂肪族モノアミドが、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドから成る群から選ばれる1種又は2種以上であるのが良い。加えて、前記遊離潤滑剤には、別途、ステアリン酸亜鉛をさらに混合しても良い。
本発明によれば、粉体としての流動性が良く、かつ成形した時に圧粉体の抜出し力を低減できるばかりでなく、密度が従来より高く、焼結体の強度を安定、かつ向上させる粉末冶金用鉄基粉末混合物が得られる。
以下、発明をなすに至った経緯をまじえ、本発明の最良の実施形態を説明する。
発明者らは、まず、従来技術の問題点を以下のように整理した。
遊離潤滑剤粒子の圧壊強度が必要以上に高くなると、金型内で鉄基粉末混合物の充填密度ばかりでなく、それを圧下して得た圧粉体の密度が上がらず、その後に、該圧粉体を焼結しても、焼結体の強度が向上しない。また、遊離潤滑剤の粒子径が必要以上に大きくなると、焼結体中に欠陥を生じ、焼結体の強度低下を起こす。他方、遊離潤滑剤の粒子径が必要以上に細かい場合には、鉄基粉末混合物の流動性の低下をもたらす。
そこで、本発明者らは、前記した問題点を改善するため、遊離潤滑剤の強度及び粒径が圧粉体の密度や焼結体の強度に及ぼす影響についての研究を行った。そして、前記鉄基粉末と遊離状態で混合する遊離潤滑剤の粒度分布を適切に調整し、かつ、該遊離潤滑剤の強度を所定の範囲に調整すれば、所期した目的が達成されるとの知見を得た。
具体的には、主原料鉄粉に銅粉、グラファイト粉末等の副原料粉を加え、これに結合剤を加えて主原料鉄粉と副原料粉とを結合させて得た鉄基粉末に、さらに該鉄基粉末とは付着しない遊離潤滑剤を加えて鉄基粉末混合物とする。なお、この場合、遊離潤滑剤とは別に、他の潤滑剤粉末を副原料粉と共に鉄基粉末に結合剤で付着させても良い。
すなわち、本発明に係る鉄基粉末混合物は、従来のものと同様、主原料鉄粉に結合剤で付着している副原料粉の粒子からなる鉄基粉末と、該鉄基粉末内に付着せず、分散している遊離潤滑剤の粒子とからなるが、従来のものと異なり、該遊離潤滑剤の粒子に、下記のような一定の制限を設けるようにしたものである。
まず、本発明に係る遊離潤滑剤の素材は、ステアリン酸モノアミドやエルカ酸モノアミドのような脂肪酸モノアミド、エチレンビスステアリン酸アミドのような脂肪酸ビスアミド、ポリアミドもしくアミドオリゴマー、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸リチウムのような金属石鹸類、ポリエステル、ポリオール、糖類等である。これらの素材は、単独でも又混合物でも使用できる。ただし、2種以上の上記化合物を用いる方が所定の平均粒子の圧壊強度に調整することが容易である。特に、脂肪酸モノアミドとエチレンビスステアリン酸アミドとの組み合わせが好適であり、その中でもステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドから成る群から選ばれる少なくとも1種をエチレンビスステアリン酸アミドと組み合わせることが好適である。
次に、遊離潤滑剤の粒径は、200μm以下とする。
200μmを超えるような大径の遊離潤滑剤を含む鉄基粉末混合物を圧縮成形すると、該遊離潤滑剤が破砕されずに圧粉体内に残り、それが該圧粉体の焼結後に、大きな空隙となって焼結体の欠陥となり、該焼結体の強度を低下させる。従って、本発明では、遊離潤滑剤の粒径の上限を200μmとした。
この粒径を200μm以下とする最も簡単な方法は、遊離潤滑剤の素材を目開き200μmの篩に通すことである。なお、粒径200μmを超える粒子は、皆無であるのが好ましいが、約0.5質量%未満程度であれば、存在していても特に問題とはならない。
また、遊離潤滑剤として前記擬似粒化したものを利用する場合、その遊離潤滑剤に10μmより小さい粒子が多いと、粒子数が増え、粒子間力が大きくなって、その遊離潤滑剤を混合した鉄基粉末混合物全体の流動性が低下する。そのため、本発明では、遊離潤滑剤は、10μm以下の粒子を該遊離潤滑剤全体の30質量%未満に制限すると良い。当然ながら、遊離潤滑剤の平均粒径は、10μm以上とすることが好ましい。
このような上下限を有する遊離潤滑剤の粒子を製造するにあたっては、平均粒径が20〜100μmになるので、この範囲を本発明に係る鉄基粉末混合物の平均粒径の範囲とするのが好ましい。特に、後述する別の遊離潤滑剤の造粒方法では、平均粒径を30〜80μmとすると、格別の管理を行わずに、遊離潤滑剤を製造できる。なお、平均粒径は、レーザ回折式の粒度分布測定装置を用いて、全粒径範囲にわたり粒子の存在量を質量%で測定し、その平均値を採るものとする。
さらに、遊離潤滑剤粒子の強度に関しては、鉄基粉末混合物を製造する際の混合時に、つまり主原料鉄粉、合金粉末、結合剤等と該遊離潤滑剤とを混合する際に、遊離潤滑剤の粒子が10μm以下に崩壊しないようにする必要がある。この混合は、少量の鉄基粉末混合物を作製する場合には、特に混合装置を利用せずとも、手作業でも良い。一方、実用的な規模の量を作製するには、機械的な混合撹拌機を用いるのが一般である。その混合撹拌機としては、例えば、V型混合機、ナウタミキサー等に代表されるように、混合時に粉体にあまり大きな力のかからない装置(及び運転条件)を選定する。これに対して、ヘンシェルミキサー等は、比較的粒子に力がかかるので、このような装置を使用する場合は、通常の標準より軽い撹拌(撹拌速度を下げる等)とすることが好ましい。
いずれにせよ、実用的な規模の混合撹拌機を用いると、装置が比較的大きく、取り扱う粉体の量が多いので、粉体の自重による力が発生する。そのため、個々の遊離潤滑剤粒子は、これらの力に耐えうるだけの圧壊強度が必要となる。本発明者らの研究によれば、その圧壊強度は、鉄基粉末混合物が製造される温度域において、平均粒径に相当する粒子の値で0.2MPa以上であること、好ましくは0.5MPa以上であることがわかった。
一方、圧壊強度が2MPaを超えると、それを含む鉄基粉末混合物を圧縮成形しても、前記したように、該遊離潤滑剤が破砕されずに圧粉体内に残り、それが焼結後に大きな空隙となって焼結体の欠陥となり、また圧粉体の抜出し力も過大となる。したがって、本発明では、この圧壊強度の上限を2MPaとした。好ましくは1MPa以下である。
なお、本発明をなすに際しては、この微粒子である遊離潤滑剤の圧壊強度は、(株)島津製作所製の単粒子圧縮試験装置(微小粒子の圧縮試験機)によって測定した。なお、測定する粒子は、広範囲の粒径のものが混じった状態で測定すると誤差が大きいので、測定は、(平均粒径±15μm)の粒子を抽出して20個以上で行い、その平均を求めることにした。
また、粒径がこの範囲を外れる粒子については、大きさ毎に圧壊強度を測定したところ、大きいほど圧壊強度が低下する傾向があった。このため、粒径を分別せずに測定した場合には、前記したように測定値にばらつきが発生した。しかしながら、そのような場合でも、多数回の測定結果を平均して得られる値は、上記した平均値とあまり差がなかった。このことから、上記の(平均粒径±15μm)の粒子について測定した圧壊強度は、全体を代表するものであると言える。この測定を行う温度は、鉄基粉末混合物の製造にあたって鉄基粉末に遊離潤滑剤を混合する際の温度とするのが良く、特別に昇温しない限り、10〜100℃であり、好ましくは10〜50℃である。本発明では、一応の目安として25℃における測定値で評価するのが良い。
遊離潤滑剤の平均粒径に相当する粒子の圧壊強度を、前記のように0.2〜2MPa、好ましくは0.5〜1MPaの範囲に調整する方法は、本発明では特に限定しないが、以下に記す方法が利用できる。
従来、遊離潤滑剤の粉末は、潤滑剤の素材を粉砕することにより製造されていたが、この方法では、圧壊強度を2MPa以下とすることは困難である。従って、従来技術で述べたように、擬似粒化した潤滑剤とすることが好ましと考えられた。つまり、前記特許文献6に記載の粉砕方法で得た前記一次粒子をマルメラーザ等で転動し、凝集させて擬似粒子化し、所謂「二次粒子」とする。ただし、この方法では、圧壊強度を安定して0.2MPa以上、又は0.5MPa以上とすることが比較的難しい。そこで、発明者は、別の造粒方法を見出すべく鋭意検討を重ね、以下に述べるようなスプレードライ法を利用するのを開発した。
その方法は、まず、前記した遊離潤滑剤の素材を耐熱容器内に装入し、150〜250℃に加熱し溶融する。加熱温度をこのように限定したのは、150℃未満の温度では、溶融に時間がかかり過ぎ、250℃超えでは過剰加熱になるからである。そして、得られた液体の圧力を高め(例えば、4〜8MPa程度)、内径が100〜1000μm程度のノズルを介して一定容積の空間に噴射させる。噴射された液体は粒滴となって冷却され、一定粒径の粒子として回収される。
この溶融・噴射造粒した粒子の形態は、外観がほぼ球形で、外径が10〜300μm程度であり、また、内部に空洞を有していることも多い。この粒子の形態を後に、「二次粒子を識別できない」形態という。ところが、素材の種類、加熱条件、噴射条件及び冷却条件によっては、前記した転動造粒で得たもののように細粒が多数凝集した二次粒子状の形態(「二次粒子を識別できる」形態)となる場合もある。前者の形態の方が、圧壊強度は好適な範囲に安定させることが容易である。特に、前記した脂肪酸モノアミドとエチレンビスステアリン酸アミドとの溶融混合物で造粒した場合、前者の形態が得られ易い。
なお、このスプレードライ法では、脂肪酸モノアミドには、好適な分子量を有するものがあると考えられるが、特に、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド及びエルカ酸アミドから成る群から選ばれる少なくとも1種を素材として用いた場合に、良好な造粒結果が得られる。
上記組成物(ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド及びエルカ酸アミドから成る群から選ばれる少なくとも1種とエチレンビスステアリン酸アミドとの溶融混合物)の場合に、特に好適な造粒結果が出る理由は、詳しくは判っていないが、以下の理由によると考えられる。
一例として、ステアリン酸アミドとエチレンビスステアリン酸アミドとの2:1(質量比)溶融混合物を噴射造粒した場合の遊離潤滑剤粒子(走査型電子顕微鏡像)を図1に示すが、これらの脂肪酸モノアミドとエチレンビスステアリン酸アミドとの溶融混合物をスプレードライ法で造粒したものは、粒子同士が互いに弱く付着していることもあるが、殆ど結合力はなく、使用時には「二次粒子を識別できない」形態の造粒粒子となる。ただ、この「二次粒子を識別できない」形態の粒子の圧壊強度は、従来の粉砕法により得られた一次粒子よりかなり低く、0.2〜2MPa(本発明で限定する範囲)を達成する。この理由として、本発明者らは、この「二次粒子を識別できない造粒粒子」自体が実質的に微粒子の集合体となっているものと考えている。
すなわち、上記のスプレードライ法により得られた「二次粒子を識別できない造粒粒子」は、圧縮成形時に容易に崩壊し、集合が解かれて微小な小片を生成するものと考えられる。そして、該小片が鉄基粉末の粒子間に入り込み、潤滑作用を及ぼすものと考えられる。この小片の機能は、従来の転動造粒で擬似粒化して得た遊離潤滑剤の一次粒子の機能と類似するが、形状、寸法、軟質度等の点でより潤滑作用が適正化されており、従来よりも圧粉体の密度向上等に有効に作用するものと考えられる。上記組成においては、崩壊後は、特にエチレンビスステアリン酸アミドを多く含有する小片が有効に作用しているものと考えられる。
他方、上記「二次粒子を識別できない造粒粒子」は、従来の転動造粒で擬似粒化した遊離潤滑剤の粒子、つまり二次粒子より崩壊され難く、鉄基粉末混合物に混合されて金型へ充填されるまでの各工程を経ても、鉄基粉末混合物の流動性、低抜出し力、圧粉体の密度向上の各性能を維持するものと考えられる。なお、この二次粒子を識別できない造粒粒子は、図1から明らかなように、中空となる傾向がある。このような中空を有する形状も、上記した各性能の発揮効果に寄与している可能性があるが、詳細は不明である。
以上の知見より、本発明では、2種以上の潤滑剤素材をスプレードライ法で造粒して得られた二次粒子を識別できない造粒粒子を有する遊離潤滑剤を用いることが、潤滑剤としての圧壊強度の適正化や鉄基粉末混合物とした時の種々の性能の観点から最も好ましい。また、潤滑剤素材の少なくとも1つは、潤滑性能の特に良好な物質、例えばエチレンビスステアリン酸アミド等とすることが好ましい。
遊離潤滑剤粒子の好適な圧壊強度は、組成やスプレー条件(スプレードライ法の場合)等を調整して得ることができるが、前記のように、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド及びエルカ酸アミドから成る群から選ばれる少なくとも1種とエチレンビスステアリン酸アミドとの溶融混合物との組み合わせが好適である。なお、前記脂肪族モノアミド及びエチレンビスステアリン酸アミドの組成比としては、質量比で1.2:1〜3:1程度が好ましい。
なお、多くの実験から得られる傾向としては、ステアリン酸アミドを用いた場合は、他の素材を用いたものより、鉄基粉末混合物の流動性及びその圧粉体の金型からの抜出し力に若干優れ、特にオレイン酸アミドを用いた場合には、圧粉体の密度が若干高くなる。エルカ酸アミドは、両者の中間的な素材となる。
また、エチレンビスオレイン酸アミドは、エチレンビスステアリン酸アミド(EBS)と構造、物性、分子量等が類似し、とくに潤滑性が良い点でも類似する。従って、EBSと共に、あるいはEBSに代えて、上記の遊離潤滑剤に用いても同様の良好な結果が期待できる。
さらに、ベヘニン酸アミド及びパルチミン酸アミドは、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド及びエルカ酸アミドと構造、物性、分子量が類似する。従って、前記脂肪族モノアミドが、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド及びエルカ酸アミドからなる群から選ばれる少なくとも1種と共に、あるいはこれに代えて、ベヘニン酸アミド及び/又はパルチミン酸アミドを上記の遊離潤滑剤に用いても、同様の良好な結果が期待できる。
なお、上記した遊離潤滑剤を製造する造粒操作に、粉砕操作、篩操作等を組み合わせることは自由である。
引き続いて、本発明に係る鉄基粉末混合物は、原料となる鉄粉は、純鉄粉、還元鉄粉、鋼粉、合金鉄粉等、既知の鉄系の粉末が適用可能で、とくに限定はない。また、副原料粉は、焼結された製品の強度やその他の特性を向上させるために添加され、合金用粉末が主なものである。この合金用粉末としては、グラファイト粉末、各種金属(Cu、Mo、Ni、Cr等)を主体とする粉末がある。さらに、この合金用粉末は、その一部が部分拡散接合により純鉄粉等に結合させてあっても良い。この他、必要に応じて、切削性改善用粉末(例えば、MnS等の粉末)も副原料として添加可能である。以上に述べた以外の既知の副原料粉も、本発明では、問題無く利用可能である。
本発明では、前記したように、結合剤を用いて副原料粉を鉄源粉末に結合させるが(偏析防止処理)、結合剤は、既知のいずれもが問題無く適用可能である。なお、次に記す遊離潤滑剤が、結合剤としてとりわけ有利に適合する。
(1)金属石鹸(ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム等)
(2)金属石鹸と脂肪酸の共融混合物(ステアリン酸、オレイン酸等)
(3)脂肪酸アミド(ステアリン酸アミド、エチレンビスステアロアミド等)
(4)金属石鹸と脂肪酸アミドの共融混合物
(5)熱可塑性樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンを含むポリオレフィン、ポリアミド、ポリスチレン等)
なお、これらの結合剤は、単独で使用しても、また複合して使用しても良いのは言うまでもない。また、その添加量も、公知の技術を参考に適宜決定すれば良いが、一般には前記主原料鉄粉の100質量部に対して0.1〜1質量部程度が添加される。さらに、本発明では、全ての副原料粉を鉄粉に結合させる必要は無く、グラファイト粉末等の特に偏析を生じ易い副原料粉を優先的に結合させれば良い。加えて、前記したように、粉末状の潤滑剤を同様に鉄基粉末に結合させても良い。この結合を目的として添加される潤滑剤は、公知の技術文献に開示されているものが、問題無く使用可能である。
なお、主原料鉄粉、副原料粉及びそれらを結合させる結合剤の粒径は、いずれも平均粒径で0.1〜250μm程度の範囲内とすることが好ましい。平均粒径が0.1μm未満では、粉末混合物の取り扱いが困難であり、250μmを超えると圧粉体に欠陥が生じ易いからである。また、副原料粉末の含有量は、合計で、主原料鉄粉の100質量部に対して0.05〜10質量部程度とすることが一般的である。0.05質量部未満では、副原料を加える効果が見られず、10質量部超えではコスト高となる。
本発明では、前記遊離潤滑剤を鉄基粉末に混合するにあたっては、従来より遊離潤滑剤自体が改善されたとはいえ、崩壊のリスクがあるので、前述のように、粉子自体に相当な力のかかる装置や条件は避けることが好ましい。かような混合機としては、容器回転式、機械撹拌式、流動撹拌式及び無撹拌式等、混合粉体に与えるせん断力が小さい混合機が好適である。容器回転式混合機では、水平円筒型、傾斜円筒型、V型、二重円錐型及び連続V型が好ましく、撹拌翼が内蔵されている混合機も好適に使用できる。機械撹拌式混合機では、リボン型、スクリュー型、複軸パドル型、円錐形スクリュー型及び回転円板型が好ましい。流動撹拌式混合機では、流動床式、旋回流動式、ジェットポンプ式が好ましい。
混合における操業条件は、圧壊強度に応じて、適宜決定され、また混合容器の寸法にも左右される。例えば、工業生産用の1トン級のV型容器回転式混合機を使用する場合、容器の回転数:5〜10rpm程度で5分程度の操業が好適であるが、1.6リットル程度の小型のV型容器回転式混合機では、25rpm程度で15分程度が好適である(60分程度でも問題ない)。
なお、上記の例は目安に過ぎず、適宜混合結果を調査しながら、適正な混合時間や混合の強さ(容器又は攪拌装置の回転数等)の上限を設定すれば良い。混合条件が適正であったかどうかの調査は、得られた鉄基粉末混合物の特性が適合しているかで確認できる。また、混合後に造粒粒子が十分に維持されているかどうかを直接測定しても良い。これは、混合後の鉄基粉末混合物から磁選等の手段で他の粉末を除去した後、遊離潤滑剤の粒径分布を測定することで確認できる。
例えば、従来の圧壊強度が0.2MPa未満である転動造粒した遊離潤滑剤の場合には、上記1トン級のV型容器回転式混合機における5分間の混合で造粒した粒子をある程度維持するためには、容器の回転数を8rpm未満とする必要がある。
本発明では、遊離潤滑剤の添加量は、前記鉄基粉末100質量部に対して、0.1〜1質量部添加することにした。遊離潤滑剤の比率が0.1質量部に満たないと、十分な潤滑効果が得られず、一方、1質量部を超えると高い圧粉体密度が得られないからである。
なお、本発明では、遊離潤滑剤としては、前記した圧壊強度を0.2〜2MPaに調整した遊離潤滑剤の他に、別途さらにステアリン酸亜鉛を混合すると、流動性が一層良好となる。該圧壊強度を調整した遊離潤滑剤と該ステアリン酸亜鉛との比率(質量比)は、4:1〜2:3程度が好ましい。なお、ステアリン酸亜鉛の粒径は、特に限定しないが、1〜20μm程度が好適である。
この他に、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マンガンも類似の効果を奏する。従って、ステアリン酸亜鉛にこれらの物質を加えてなる群から選ばれる少なくとも1種を、合計で上記比率だけ混合しても良い。これらの物質の好ましい粒径範囲もステアリン酸亜鉛の場合と同様である。上記以外の物質の添加は、一般にあまり好ましくない。
本発明に係る鉄基粉末混合物の圧粉体への成形方法については、公知のいずれの方法も適合できる。例えば、鉄基粉末混合物を室温とし、金型を50〜70℃に加熱(予熱)する方法は、粉末の取り扱いが容易で、圧粉体の密度がさらに向上するため好適である。また、該鉄基粉末混合物及び金型を共に加熱する温間成形法を用いても良いが、コスト増しとなる。また、ステアリン酸アミド等とEBS等との溶融混合物を遊離潤滑剤として用いた場合には、本発明に係る鉄基粉末混合物の加熱による流動性の劣化が懸念されるので、温間成形法に不向きである。
さらに、本発明では、金型の内面に、別途潤滑剤を塗布又は静電付着させても良い(金型潤滑という)。ただし、本発明は、このような金型への潤滑剤塗布等がなくても、十分な性能を有するので、コスト上の観点より、前記「金型潤滑」は省略するのが好ましい。
本発明に係る鉄基粉末混合物は、圧粉体に成形後の焼結及び熱処理についても、公知の方法が適用できる。また、得られた焼結体に、浸炭焼入れ等の処理を施して材質を調整することも自由である。
(発明例1)
市販品相当の純鉄粉100質量部に対して2.0質量部の銅(記号:Cu)粉と0.8質量部の黒鉛粉とを混合したものに、0.2質量部のステアリン酸アミドを有機結合剤として加え、加熱混合(偏析防止処理)して鉄基粉末(鉄基粉末A)を得た。
また、ステアリン酸アミドとエチレンビスステアリン酸アミドとを2:1の質量比で溶融した後に、スプレードライ法で粒径10μm以上となるように造粒し、遊離潤滑剤を得た。この造粒物の融点は約111℃であった。この造粒物(粒径150μm以下で、平均粒径70μmの遊離潤滑剤)を、前記鉄基粉末100質量部に0.2質量部添加し、V型混合機で25℃で混合し、本発明に係る鉄基粉末混合物を得た。V型混合機の回転速度は24rpm、混合時間は60分とした。
なお、混合した遊離潤滑剤の圧壊強度は、25℃、70μmの粒子で0.6MPaであった。また、該鉄基粉末混合物の流動度は、2.63mmφの漏斗で測定し、21sec/50gと良好な流動性を示した。
引き続き、その鉄基粉末混合物は、金型に充填され、日本粉末冶金工業会の規格(JPMAP09,JPMAP13)に準拠して、686MPaの圧力で圧縮し、直径:11.3mm、高さ:11mmの圧粉成形体にした。
そして、得られた圧粉体の密度及び成形金型からの抜き出し力について調べたところ、それぞれ7.27Mg/m3及び16MPaであった。なお、前記抜出し力が20MPa以上となると、所謂「型かじり」等が起き、圧粉体の表面にかじり疵がつくので、抜出し力が20MPa未満のものを良品の鉄基粉末混合物とした。また、686MPaの圧力で圧縮し、外径:38mmφ、内径:25mmφのリング状に成形し、その成形体の圧環強度を測定したところ、1150MPaであった。
(発明例2)
発明例1と同じ鉄基粉末100質量部に、粒径10μm以上のオレイン酸アミドとエチレンビスステアリン酸アミドとを2:1の質量比で溶融した粒径10μm以上の造粒物(粒径150μm以下で、平均粒子径70μmの遊離潤滑剤)を0.2質量部添加し、V型混合機で25℃で混合し、鉄基粉末混合物を得た。なお、この遊離潤滑剤の粒子の圧壊強度を測定したところ、25℃、70μmの粒子で0.3MPaであった。また、該鉄基粉末混合物の流動度は、2.63mmφの漏斗で測定し、25sec/50gと良好であった。
引き続き、得られた鉄基粉末混合物は、金型に充填され、日本粉末冶金工業会規格(JPMAP09,JPMAP13)に準拠して、686MPaの圧力で圧縮し、直径:11.3mm、高さ:11mmの圧粉成形体を作製した。
かくして得られた圧粉体の密度及び成形金型からの抜き出し力について調べたところ、7.29Mg/m3、抜出し力は、14MPaであった。
(発明例3)
発明例1と同じ鉄基粉末100質量部に、発明例1と同じ遊離潤滑剤を、発明例1と同じ量だけ添加し、ヘンシェルミキサーで70℃で加熱混合し(ブレード回転数:500rpm,混合時間:1分)、鉄基粉末混合物とした。この鉄基粉末混合物の流動度は、2.63mmφの漏斗で測定し、21sec/50gと良好な流動性を示した。
この鉄基粉末混合物を金型に充填し、日本粉末冶金工業会規格(JPMAP09,JPMAP13)に準拠して、686MPaの圧力で圧縮し、直径:11.3mm、高さ:11mmの圧粉成形体を作製した。得られた圧粉体の密度及び成形金型からの抜出し力について調べたところ、7.27Mg/m3、抜出し力は、16MPaであった。
以上のように、本発明に係る鉄基粉末混合物は、鉄基粉末と遊離潤滑剤との強撹拌による混合を行ったが、遊離潤滑剤が適正な粒度分布を維持しているので、良好な流動性を示した。
(比較例1)
発明例1と同じ鉄基粉末100質量部に、粒径150μm以下で、平均粒径15μmのエチレンビスステアリン酸アミド(潤滑剤)を単体で0.2質量部添加し、V型混合機で室温で混合した。
なお、その潤滑剤の粒子の圧壊強度を測定したところ、25℃、70μmの粒子で25MPaと非常に強いものであった。
得られた鉄基粉末混合物を金型に充填し、日本粉末冶金工業会規格(JPMAP09,JPMAP13)に準拠して、686MPaの圧力で圧縮し、直径:11.3mm、高さ:11mmの圧粉成形体を作製した。得られた圧粉体の密度及び成形金型からの抜出し力について調べたところ、7.20Mg/m3、抜出し力は、23MPaであった。つまり、圧粉体の密度及び成形金型からの抜出し力が満足できる数値になっていなかった。
(比較例2)
発明例1と同じ鉄基粉末に、オレイン酸アミドとエチレンビスステアリン酸アミドとを2:1の質量比で溶融してあるが、平均粒径が8μmの遊離潤滑剤を0.2質量部添加し、V型混合機て室温で混合して鉄基粉末混合物を得た。なお、当然のことながら、この遊離潤滑剤においては、粒径10m以下の粒子は50質量%より多く含有されている。該鉄基粉末混合物の流動度は、2.63mmφの漏斗では、流動が起きず測定できなかった。
かかる鉄基粉末混合物を金型に充填し、日本粉末冶金工業会規格(JPMAP09,JPMAP13)に準拠して、686MPaの圧力で圧縮し、直径113mm、高さ11mmの圧粉成形体を作製した。得られた圧粉体の密度及び成形金型からの抜出し力について調べたところ、それぞれ7.29Mg/m3、14MPaであった。
(発明例4〜20、比較例3〜7)
表1及び2に示す鉄基粉末混合物を製造し、特性を測定した結果を表3に示す。表1及び2に記載されている以外の製造条件並びに特性調査方法は、実施例1と同様である。
なお、鉄基粉末Bは、Ni粉末:2質量%及びMo粉末:1質量%を部分拡散で接合した鉄粉(部分拡散合金粉)100質量部に対して、0.6質量部の黒鉛粉を混合し、0.2質量部のステアリン酸アミドを結合剤として実施例1と同様に「偏析防止処理」を施したものである。なお、Ni及びMoの添加量は、部分拡散合金粉に対する質量基準分率である。
また、ステアリン酸亜鉛を遊離潤滑剤としてさらに添加する場合、予め溶融噴射で造粒した潤滑剤と混合してから添加する方法(発明例11〜16、18及び19)と、予め混合せずに、溶融噴射で造粒した潤滑剤と同時に、鉄基粉末に混合する方法(発明例4〜10及び17)とを適宜使い分けた。なお、遊離潤滑剤の添加量を多くすると(発明例9及び14)、抜出し力を極めて小さくできる。
比較例3〜7は、転動造粒した遊離潤滑剤の例で、粒径約1μmの一次粒子を凝集させ、二次粒子としたものである。これらの比較例では、粒径が200μmを超えると(比較例3)圧粉体の密度が充分に改善されず、粉末に加わるせん断力が比較的大きい条件で混合すると(比較例4、5)、鉄基粉末混合物の流動性が著しく低下した。また、粉末にかかる力を低減して混合した場合でも、遊離潤滑剤の素材が軟質の物質であると(比較例6)、前記流動性が充分に改善されず、他方、硬質の物質であると(比較例7)、圧粉体の密度が充分に改善されていない。
本発明に係る溶融噴射で造粒した遊離潤滑剤のうち、「二次粒子を識別できない」形態の粒子を示す走査型電子顕微鏡写真である。

Claims (7)

  1. 主原料鉄粉に合金用粉末及び結合剤を混合してなる鉄基粉末の100質量部に対して、0.1〜1質量部の遊離潤滑剤を混合した粉末冶金用鉄基粉末混合物であって、
    前記游離潤滑剤が、粒径が200μm以下で、かつ、平均粒径に相当する粒子の圧壊強度が0.2〜2MPaであることを特徴とする粉末冶金用鉄基粉末混合物。
  2. 前記遊離潤滑剤が、その素材を150〜250℃で融解した後、高圧力で噴射して造粒したものであることを特徴とする請求項1記載の粉末冶金用鉄基粉末混合物。
  3. 前記鉄基粉末に、さらに、切削性改善用粉末を混合することを特徴とする請求項1又は2記載の粉末冶金用鉄基粉末混合物。
  4. 前記遊離潤滑剤の素材が、脂肪酸モノアミド、脂肪酸ビスアミド、ポリアミドもしくはアミドオリゴマー、金属石鹸、ポリエステル、ポリオール、糖類からなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粉末冶金用鉄基粉末混合物。
  5. 前記脂肪族モノアミドが、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドからなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項4に記載の粉末冶金用鉄基粉末混合物。
  6. 前記遊離潤滑剤の素材が、前記脂肪酸モノアミドとエチレンビスステアリン酸アミドとの溶融混合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の粉末冶金用鉄基粉末混合物。
  7. 前記遊離潤滑剤に、別途、ステアリン酸亜鉛をさらに混合してなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の粉末冶金用鉄基粉末混合物。
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