JP2005304212A - ハイドロゲルアクチュエータ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電圧を印加することにより、刺激を誘発する導電性微粒子11と、連続気孔を有する多孔質有機高分子12とからなる複合電極15と、前記刺激により、体積が変化する刺激応答性ハイドロゲル14とを有しているハイドロゲルアクチュエータ10を提供する。
【選択図】図1
Description
一方、低速回転で高トルクが得られる超音波モーターは減速器が不要であるが、これも金属材料で構成されるため、重量が大きいため、上述したような問題を有している。
また、前記導電性高分子アクチュエータは変位が小さく、前記高分子圧電素子は、駆動するために非常に大きな電圧を加える必要があるという実用上の欠点を有している。
ハイドロゲルアクチュエータ、特に水膨張高分子ゲルを用いる高分子ハイドロゲルアクチュエータは、高分子ハイドロゲルが周囲の温度、イオン強度、pH等の環境変化に応答して体積が変化することを利用するものであり、その変位量は30〜50%と大きく、発生力も0.2〜0.4Mpaであり、生体骨格筋に匹敵する性能を発揮する。
高分子ゲルの膨潤/収縮速度は高分子鎖の拡散律速であるため、ゲルのサイズの二乗に反比例する(T.Tanaka et al.,J.Chem.Phys., 70,1214 (1979))ことが報告されており、全体の小型化等を含め、構造上の検討が必要となってきている。
また、刺激応答性ハイドロゲルの膨張によって、複合電極が引き伸ばされる場合、複合電極がポアゾン変形するため、引き伸ばされる方向においては導電性微粒子の密度が減少するが、その垂直の方向においては導電性微粒子の密度が増大するため、膨張時及び収縮時において導電率がほとんど変化せず、安定した導電率が確保された。
また、膨張時、収縮時においても電極の体積が変化しないため、電極の導電率の減少を効果的に回避でき、安定した導通を確保することができた。
図1、図2に本発明のハイドロゲルアクチュエータ10の一例の概略構成図を示す。
なお、図1は刺激応答性ハイドロゲルの収縮時、図2は膨張時の状態を示すものとする。
ハイドロゲルアクチュエータ10は、複合電極15と、刺激応答性ハイドロゲル14により構成されているものとし、複合電極15と、これと対になる電極(図示せず)間に電圧を印加することにより、温度の変化、pHの変化、イオン強度の変化のうちのいずれかの刺激を誘発せしめ、刺激応答性ハイドロゲル14の膨潤度や体積を変化させるようにするものである。
複合電極15は、導電性微粒子11と、連続的な気孔を有する多孔質有機高分子12とからなるものとする。
導電性微粒子11は、電極間に電圧を印加することにより、温度変化、pH変化、イオン強度変化等の所定の刺激を誘発する材料よりなるものとする。
なお、上記刺激のうち温度変化は、加熱冷却装置や、ポンプ、タンク等を用いて制御できるが、これは周囲の環境に影響されやすいため精密な動作が求められる高機能小型ロボットの動力源となるアクチュエータには不向きである。
pH変化を利用した刺激応答性ハイドロゲルを適用する場合、導電性微粒子11の材料は、電気化学的に水素の吸蔵及び放出が可能な材料をいずれも適用できるが、例えば、パラジウム、あるいはパラジウムを含む合金や、これらの混合物が好適な例として挙げられる。
また、他の電気的にpHを変化させる手法としては、例えば、電気二重層を利用する方法が挙げられる。この場合、正電荷を加えた導電性微粒子11の表面近傍でpHが上昇し、負電荷を加えた導電性微粒子11の表面近傍ではpHが降下するようになる。
この多孔質有機高分子12は、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、スルホン基等の親水基を有している高分子材料、あるいはその混合物であることが好ましい。
上記のうち特に、官能基がホルマール化されてなるポリビニルアルコールについては、ホルマール化度は10〜70%とすることが好ましい。ホルマール化度が10%未満であると、多孔質有機高分子12が後述する刺激応答性ハイドロゲル14から放出された水分により溶解してしまう。一方、ホルマール化度が70%を超えると、架橋構造のため刺激応答性ハイドロゲル14から放出された水分を充分に吸収しなくなり、また内部負荷が大きくなりすぎ、刺激応答性ハイドロゲル14の膨張/収縮の妨げになる。
このように、ホルマール化度を10〜70%の範囲に制御することにより、吸水性がよく(最大含水率は800〜1000wt%)、また、湿潤時においては弾性変形があり、低ヤング率で、破断歪が大きく、耐薬品性も良好であるという特性を発揮することができる。
このため、複合電極15と刺激応答性ハイドロゲル14の体積の総和が、膨潤/収縮によってほとんど変化しない。
例えば、導電性微粒子11として、電圧印加によりpHが変化する材料を用いた場合、刺激応答性ハイドロゲル14は、pH応答性ハイドロゲルを適用する。
pH応答性ハイドロゲルとしては、分子内にカルボン酸、スルホン酸等の酸性官能基、或いは1級アミン、2級アミン、3級アミン等の塩基性官能基を有するハイドロゲルが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、これらを含む混合物、あるいは共重合体でもあってもよい。
この刺激応答性ハイドロゲルの一例として、アクリル酸系ハイドロゲルが挙げられる。 アクリル酸系ハイドロゲルの有効拡散係数は、10-4〜10-8cm2/secである。この有効拡散係数のハイドロゲルが、生態骨格筋同等の10Hzの応答速度で動作するためには、このハイドロゲルのサイズを、膜状の場合は膜厚10μm、棒状の場合は直径10μm以下、更には5μm以下とすることが望ましい。
高分子ハイドロゲルの膨潤速度は、一般的に、サイズの二乗に反比例することが知られている。すなわち膜状としたり、微細な径の棒状としたりすることにより、高速応答化が図られる。
また、高分子ハイドロゲル中に所定の有機高分子を含有させることにより、ハイドロゲルの補強化が図られ、任意の有機物や無機物を混合することにより、膨潤/収縮速度を高速化することができる。
本発明のハイドロゲルアクチュエータ10は、図中の複合電極15と、これと対になる電極(図示せず)とに電圧を印加し、図1の収縮状態と図2の膨張状態とを制御するようにする。
この場合、図1から図2に移行する刺激応答性ハイドロゲル14の膨張時には、図1及び図2中間隔aに示すように、刺激応答性ハイドロゲル14と接している導電性微粒子11の間隔が拡大する。
しかし、導電性微粒子11の間を三次元的に繋いでいる多孔質有機高分子12が、刺激応答性ハイドロゲル14と導電性微粒子11の界面に対して法線方向の導電性微粒子11を引き寄せることによって、図1及び図2中間隔bに示すように、その方向の導電性微粒子11の間隔は減少する。このため、刺激応答性ハイドロゲル14の膨張時においても導電率を維持することができるという利点を有している。
また、膨張/収縮の際には、溶媒を多孔質有機高分子12の気孔13中に蓄えたり、刺激応答性ハイドロゲル14中に吸収されたりして、溶媒のやりとりが行われる。このため、複合電極15と刺激応答性ハイドロゲル14の体積の総和は、膨張/収縮の前後で、ほとんど変化がない。
図3に示す積層型アクチュエータ50は、少なくとも導電性微粒子11と多孔質有機高分子12とよりなる複合電極16、17、18と、少なくとも上述した刺激応答性ハイドロゲル14からなるハイドロゲル層19とが積層した構成を有している。
なお、ハイドロゲル層19は、酸性官能基を有する酸性ハイドロゲル層20と塩基性官能基を有する塩基性ハイドロゲル層21とが積層された構造を有している。なお、酸性ハイドロゲル層20と塩基性ハイドロゲル層21の位置関係は、図3に示す順番と逆であってもよい。但し、この場合の膨潤/収縮挙動は、位置によって逆の動作を示すものとなる。
複合電極16及び18付近の低pH領域においては、塩基性ハイドロゲル層21があるため膨張し、複合電極17付近の高pH領域においては、酸性ハイドロゲル層20があるため膨張する。よってアクチュエータ50全体として膨張する。
一方、複合電極16、18に負電荷、複合電極17に正電荷を印加した場合、アクチュエータは収縮する。
しかしながら、ハイドロゲルの膨張時に、複合電極16、17、18の膜厚は減少し、ゲルの収縮時に複合電極16、17、18の膜厚は増大するため、アクチュエータは面方向へ著しく膨張/収縮をする。
〔実施例1〕
導電性微粒子11としてパラジウム微粒子(直径100nm)を用い、多孔質有機高分子12としてホルマール化したポリビニルアルコールを用い、刺激応答性ハイドロゲル14として架橋剤を混合して作製したポリアクリル酸ゲルを用いて、ハイドロゲルアクチュエータを作製した。
ホルマール化後、蒸留水中で1時間浸漬することにより、パラジウム微粒子が分散したホルマール化ポリビニルアルコール(PDPVH)が作製された。これをガラス板から剥離させた。
上述のようにして作製したPDPVH膜は、長さ50mm、幅45mm、膜厚40μmであった。
具体的には、酸性の官能基を有する高分子モノマーとして、アクリル酸ナトリウム、架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド、開始剤として過硫酸アンモニウムを用い、mol比でモノマー:架橋剤:開始剤=100:3:1として水溶混合してゲル前駆体溶液を作製した。このゲル前駆体溶液を、膜厚6μmのポリエチレンテレフタレートフィルムをスペーサーとしたガラス板間に注入したセルを2枚作製し、50℃のオーブン中で4時間保持した。
このとき、作製されるゲル膜が、上述のようにして作製したPDPVH膜よりも小さくなるように長さ45mm、幅45mmに調整した。これは、ハイドロゲルに被覆されていない部分を有するPDPVH膜があるようにするためである。
その後、一方のガラス板を取り除いて2つのセルの間に上記PDPVH膜を挟んで、さらに50℃のオーブン中で6時間ゲル化を行った。
ゲル化後、室温で蒸留水中に浸漬することで、酸性ハイドロゲル/PDPVH膜の複合体をガラス基板から剥離させた。
そして、ハイドロゲル/PDPVH膜の複合体の、ハイドロゲルに被覆されていないPDPVH部分に、膜厚200μmの金を圧着し、電極端子を形成した。
このアクチュエータにおいて、酸性ハイドロゲル/PDPVH膜の複合体の電極端子を陽極にして、充分に離れた場所に設置した陰極との間に3Vの電圧を印加したところ、ハイドロゲル/電極複合体は収縮した。電圧印加後の長さ(L2)は無負荷の状態で29mmであった。
このとき、{1−(L2)/(L1)}で表されるこのアクチュエータの変位は0.47であった。
また、この変化に要した時間は25秒であった。
さらに、乾燥状態のハイドロゲル/PDPVH膜の複合体の両端を10wt%のポリビニルアルコール(PVA)水溶液中に15分間含侵させ、乾燥させた後に、90℃のホットプレート上で、ハイドロゲル/PDPVH膜の両端を60分間熱処理した。
この熱処理を施した両端部分をクリップで挟み、発生力の測定を行った。
その結果、変位0のときの最大発生力は0.4MPaであった。
刺激を誘発する導電性微粒子11として、パラジウム微粒子(直径100nm)を用い、連続多孔質有機高分子12として、ホルマール化したポリビニルアルコールを用い、刺激応答性ハイドロゲル14として架橋剤を混合して作製したポリアクリル酸ゲル及びジメチルアミノエチルメタクリレートゲルを用いて、ハイドロゲルアクチュエータを作製した。
このゲル前駆体溶液を用い、上記実施例1において作製された酸性ハイドロゲル/PDPVH膜の複合体と同様の方法によって塩基性ハイドロゲル/PDPVH膜の複合体(塩基性の官能基を有する高分子を含有したハイドロゲル/PDPVH膜の複合体)を作製した。
この塩基性ハイドロゲル/PDPVH膜の複合体をpH2に調整した溶液中に浸漬して膨潤させた。
次に、上記実施例1に記載した酸性ハイドロゲル/PDPVH膜の複合体を陽極として、一旦、2Vの電圧を印加して膨張させた後に、前記膨張状態の塩基性ハイドロゲル/PDPVH膜の複合体を積層した。
そして、各ハイドロゲル/PDPVH膜の複合体のハイドロゲルに被覆されていないPDPVH膜部分に、膜厚200μmの金を圧着して電極端子を形成した。このとき、長さ(L1)は、無負荷の状態で55mmであった。
上述したようにして作製したハイドロゲルアクチュエータにおいて、酸性ハイドロゲル/PDPVH膜の複合体の電極端子を陰極にして、塩基性ハイドロゲル/PDPVH膜の複合体の電極端子を陽極として、これらの電極の間に−3Vの電圧を印加したところ、ハイドロゲル/電極複合体が収縮し、このときの長さ(L2)は無負荷の状態で29mmであった。
{1−(L2) /(L1)}で表されるこのアクチュエータの変位は0.47である。
また、この変化に要した時間は25秒であった。
さらに、乾燥状態の酸性・塩基性ハイドロゲル/PDPVH膜の複合体の両端を10wt%のPVA水溶液中に15分間含侵させ、乾燥させた後に、90℃のホットプレート上でハイドロゲル/PDPVH膜の複合体の両端を60分間熱処理した。この熱処理を施した両端部分をクリップで挟み、発生力の測定を行った。その結果、変位0のときの最大発生力は0.4MPaであった。
ゲル/電極複合体を構成する前記高分子ハイドロゲルは、モノマー、架橋剤及び開始剤を水溶混合し、ラジカル重合することによって作製した。
具体的には酸性の官能基を有する高分子のモノマーとしてアクリル酸ナトリウム、架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド、開始剤として過硫酸アンモニウムを用い、mol比でモノマー:架橋剤:開始剤を100:3:1として水溶混合してゲル前駆体溶液とした。
電極には直径10μmの白金線からなる直径1mmのコイルを用い、これを内径1.5mm、長さ30mmのガラス管内に挿入し、コイルの軸とガラス管の軸とが一致するように固定した。
このガラス管に、上記のゲル前駆体溶液を注入し、ガラス管両端をゴム栓にて封じて50℃に加温することにより、ゲル前駆体溶液のゲル化を行った。
ゲル化後、ガラス管の一端を加圧して他端から取り出すことにより、酸性ゲル/電極複合体(酸性の官能基を有する高分子を含有した高分子ゲルからなるゲル/電極複合体)を得た。
また、塩基性の官能基を有する高分子のモノマーとしてジメチルアミノエチルメタクリレート、架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド、開始剤として過硫酸アンモニムを用い、mol比でモノマー:架橋剤:開始剤を100:3:1として水溶混合してゲル前駆体溶液とした。
このゲル前駆体溶液を用い、上記の酸性ゲル/電極複合体と同様の方法によって塩基性ゲル/電極複合体(塩基性の官能基を有する高分子を含有した高分子ゲルからなるゲル/電極複合体)を得た。
次に、上記に得られた酸性ゲル/電極複合体、及び塩基性ゲル/電極複合体を、0.1NのNaCl水溶液に、24時間浸漬した後、酸性ゲル/電極複合体の電極端子を陽極、塩基性ゲル/電極複合体の電極端子を陰極として3Vの電圧を印加した。
このときの高分子アクチュエータの長さ(L1)は45mmであった。
その後、−3Vの電圧を印加したところ、両極のゲル/電極複合体が共に収縮した。
このときのアクチュエータの長さ(L2)は25mmであった。
{1−(L2)/(L1)}で表されるこのアクチュエータの変位は、0.44であった。
この変化に要した時間は45秒であった。
また、乾燥状態の両極のゲル/電極複合体の両端を、10wt%のPVA水溶液中に15分間含侵させ、乾燥させた後に、90℃のホットプレート上で、ゲル/電極複合体の両端を60分間熱処理した。
この熱処理を施した部分をクリップで挟み、発生力の測定を行った。
その結果、変位0のときの最大発生力は0.3MPaであった。
また、低ヤング率で破断歪の大きい多孔質有機高分子と導電性微粒子とからなる内部負荷の極めて小さな複合電極を具備するものとしたため、膨張/収縮の応答が高速で、実用上充分な変位量を有するハイドロゲルアクチュエータが得られた。
また、ハイドロゲル内部に電極材料が埋め込まれているため、内部負荷が大きくなり、膨張/収縮の応答速度が低下し、かつ変位量も低下し、さらには最大発生力についても劣化した。
Claims (8)
- 電圧を印加することにより、刺激を誘発する導電性微粒子と、連続気孔を有する多孔質有機高分子とからなる複合電極と、
前記刺激により、体積が変化する刺激応答性ハイドロゲルとを有していることを特徴とするハイドロゲルアクチュエータ。 - 前記複合電極を複数有しており、
前記複数の複合電極の間に、前記刺激応答性ハイドロゲルを具備していることを特徴とする請求項1に記載のハイドロゲルアクチュエータ。 - 前記刺激応答性ハイドロゲルが、酸性官能基、又は塩基性官能基の少なくともいずれかを有していることを特徴とする請求項1に記載のハイドロゲルアクチュエータ。
- 前記導電性微粒子が、電気化学的に水素の吸蔵及び放出が可能な材料からなるものであることを特徴とする請求項1に記載のハイドロゲルアクチュエータ。
- 前記導電性微粒子が、パラジウム、もしくはパラジウムを含有する合金、あるいは混合物であることを特徴とする請求項4に記載のハイドロゲルアクチュエータ。
- 前記多孔質有機高分子が、ホルマール化されてなるポリビニルアルコール、若しくは、この混合物であることを特徴とする請求項1に記載のハイドロゲルアクチュエータ。
- 前記ホルマール化されてなるポリビニルアルコールのホルマール化度が、10〜70%であることを特徴とする請求項6に記載のハイドロゲルアクチュエータ。
- 前記連続気孔を有する多孔質有機高分子中に、π共役導電性高分子が含まれていることを特徴とする請求項1に記載のハイドロゲルアクチュエータ。
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