JP3131180B2 - ピロール系高分子フィルムまたは繊維の高感度電気変形方法 - Google Patents

ピロール系高分子フィルムまたは繊維の高感度電気変形方法

Info

Publication number
JP3131180B2
JP3131180B2 JP09340848A JP34084897A JP3131180B2 JP 3131180 B2 JP3131180 B2 JP 3131180B2 JP 09340848 A JP09340848 A JP 09340848A JP 34084897 A JP34084897 A JP 34084897A JP 3131180 B2 JP3131180 B2 JP 3131180B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fiber
film
pyrrole
polymer film
based polymer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP09340848A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH11159443A (ja
Inventor
利夫 功刀
秀典 奥崎
Original Assignee
利夫 功刀
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 利夫 功刀 filed Critical 利夫 功刀
Priority to JP09340848A priority Critical patent/JP3131180B2/ja
Publication of JPH11159443A publication Critical patent/JPH11159443A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3131180B2 publication Critical patent/JP3131180B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Manufacture Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、気体中で、フィル
ムまたは繊維への水分子の吸脱着を電気的に制御するこ
とで、ピロール系高分子フィルムまたは繊維に伸長、収
縮、屈曲等の変形を引き起こさせるピロール系高分子フ
ィルムまたは繊維の高感度電気変形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来検討されてきた代表的な刺激応答性
高分子として、高分子ゲル、導電性高分子等がある。
【0003】高分子ゲルは、温度、pH、イオン、溶
媒、電場、光等の刺激に応じて収縮、膨潤することが知
られている。これを利用して化学エネルギーを力学エネ
ルギーに変換し、機械や筋肉のように仕事をさせる系を
「ケモメカニカルシステム」あるいは「ケモメカニカル
反応」という(Y. Osada, " Progress in Polymer Scie
nce, Stimuli−Responsive Polymer Gels and Their Ap
plication to Chemomechanical System", Pergamon Pre
ss(1992)) 。
【0004】Katchalskyらは、架橋したコラーゲンゲル
繊維を用い、濃度の異なる塩水溶液中における結晶化−
融解の相転移を駆動源とした「ロータリー式メカノケミ
カルエンジン」を試作している(I.Z. Steinberg, A. O
platka and A. Katchalsky,Nature, 210, 568(196
6))。この装置で、コラーゲン繊維(長さ270cm、
質量350g)は60%収縮し、約30mWの出力を示
すことがわかっている。
【0005】Kuhnらは、ポリビニルアルコールとポリア
クリル酸の薄膜を交互に積層し熱で接着した複合ゲル薄
膜を作製している(W. Kuhn, B. Hargitay, A. Katchal
sky,and H. Eisenberg, Nature, 165, 514(1950) )。
これを、pHの異なる水溶液に浸漬することにより繰り
返し膨潤、収縮し、30〜50g/mm2 の収縮応力を
発生することがわかっている(W. Kuhn et al., Elemen
tary MechanochemicalProcesses, edited by A. Wasser
man, p.1, Pergamon Press, Oxford(1960) )。
【0006】本発明者らは、ポリ(2−アクリルアミド
−2−メチルプロパンスルホン酸)ゲルが、界面活性剤
水溶液中で、収縮する現象を見い出し、この原理を利用
し、毎分約25cmの速度で歩く「人工尺取り虫」の作
製に成功している(Y. Osada, H. Okuzaki and H. Hor
i, Nature, 355, 242(1992))。ここで、ゲル変形の駆
動力は界面活性剤とゲルが分子集合体を形成するときの
自由エネルギー変化であり、電気刺激は界面活性剤の泳
動方向と分子集合反応の平衡の両方を制御しており、動
電現象で説明できることがわかっている。
【0007】導電性高分子は、電気化学的なドープ、脱
ドープにより膨潤、収縮することから、アクチュエータ
ーヘの応用が検討されている。例えば、Pei らは、金蒸
着したポリエチレンフィルム上にピロールを電解重合
し、電気化学的なドープ・脱ドープによるフィルムの変
形挙動を観察している(Q. Pei and O. Inganas. Synth
etic Metals, 55-57, 3718(1993))。ドーパントとして
ドデシルベンゼンスルホン酸イオンを用いたとき、ポリ
ピロールフィルムの変形速度は最大0.5mm/sであ
った。また、Schlenoff らは、代表的な導電性高分子の
一つであるポリアニリンのキャストフィルムを作製し、
プロトン化・脱プロトン化によるフィルムの伸縮挙動を
観察している(T. E. Herod and J. B. Schlenoff, Che
m. Mater.,5, 951 (1993))。膜厚50〜200μmの
フィルムを1N塩酸水溶液に浸漬することにより、20
分で約7%伸長することがわかっている。
【0008】これら従来公知の技術においては、高分子
ゲルおよび導電性高分子は、その全てが溶液中または膨
潤状態でのみ使用可能なものであった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記し
た従来の技術は、以下に示すいくつかの本質的な問題点
が未だ十分には解決されていない。
【0010】(1)湿式であるため応用が限定される。 (2)変位または伸長・収縮速度が小さい。 (3)エネルギー変換効率が低い。 (4)低感度である。 (5)使用する材料が軟らかく脆弱である。 (6)動作の再現性、信頼性が低い。
【0011】本発明は、このような従来の刺激応答性高
分子のもつ本質的な問題点を解決する目的でなされたも
のである。すなわち、本発明の一つの目的は、従来の刺
激応答性高分子とは異なる原理に基づき、すなわち、電
気刺激によって、空気中などの気体中(乾式)で、素早
くしかも大きく、繰り返し伸長、収縮、屈曲変形するこ
とができるピロール系高分子フィルムまたは繊維の高感
度電気変形方法を提供することにある。
【0012】本発明の他の目的は、空気中で作動するア
クチュエータ素子を作製することができるピロール系高
分子フィルムまたは繊維の高感度電気変形方法を提供す
ることにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前述の課
題について鋭意研究をしていたところ、従来の刺激応答
性高分子とは異なる原理で、すなわち、微小な電気刺激
による水分子の吸脱着によって、空気中などの気体中
(乾式)で、ピロール系高分子フィルムまたは繊維が素
早くしかも大きく、繰り返し伸長、収縮、屈曲するな
ど、従来にない極めて特異な現象を見出した。そして、
本発明者らは、さらに、この発見に基づき研究を重ねた
結果、本発明に到達したものである。
【0014】すなわち、本発明の構成は、以下に示すと
おりである。 (1) 少なくとも50モル%のピロール単位を有する
ピロール系高分子フィルムまたは繊維を用い、電気刺激
による水分子の吸脱着によって、気体中で、上記フィル
ムまたは繊維を伸縮または屈曲せしめることを特徴とす
るピロール系高分子フィルムまたは繊維の高感度電気変
形方法。
【0015】(2) ピロール系高分子フィルムまたは
繊維が、平状、リング状、ベルト状、チューブラー状お
よび円柱状からなる群から選ばれる少なくとも一種であ
ることを特徴とする前記第1項記載のピロール系高分子
フィルムまたは繊維の高感度電気変形方法。
【0016】(3) ピロール系高分子フィルムまたは
繊維が、厚さまたは直径1〜1000μmの範囲である
ことを特徴とする前記第1項または前記第2項記載のピ
ロール系高分子フィルムまたは繊維の高感度電気変形方
法。
【0017】(4) ピロール系高分子フィルムまたは
繊維が、厚さまたは直径10〜100μmの範囲である
ことを特徴とする前記第3項記載のピロール系高分子フ
ィルムまたは繊維の高感度電気変形方法。
【0018】(5) ピロール系高分子フィルムまたは
繊維が、少なくとも一種のイオンを包含することを特徴
とする前記第1項または前記第2項記載のピロール系高
分子フィルムまたは繊維の高感度電気変形方法。
【0019】(6) ピロール系高分子フィルムまたは
繊維が、一軸延伸または二軸延伸されたフィルムまたは
繊維であることを特徴とする前記第1項または前記第2
項記載のピロール系高分子フィルムまたは繊維の高感度
電気変形方法。
【0020】(7) 印加電圧が、直流波、交流波、三
角波および矩形波から選ばれる少なくとも一種から供給
されることを特徴とする、前記第1項または前記第2項
記載のピロール系フィルムまたは繊維の高感度電気変形
方法。
【0021】以下に本発明を構成する各要件について説
明する。本発明で変形とは、高分子フィルムが元の状態
から伸縮したり屈曲したりして形を変えることをいう。
【0022】また、本発明で気体中とは、従来のゲルや
導電性高分子フィルムが溶液中または膨潤状態で作動す
るのに対するものであり、本発明では、従来不可能であ
った乾式(気体中)で高分子フィルムまたは繊維の伸
縮、屈曲などの変形が行われる。本発明では、特に好ま
しいのは空気中である。
【0023】本発明に使用しうる高分子フィルムまたは
繊維は、少なくともピロール単位を分子鎖中に50モル
%有するピロール系高分子フィルムまたは繊維である。
すなわち、本発明のピロール系高分子は、モノマーとし
て、ピロールの他、3−メチルピロール、3−エチルピ
ロール、3−ドデシルピロール等の3−アルキルピロー
ル、3,4−ジメチルピロール、3−メチル−4−ドデ
シルピロール等の3,4−ジアルキルピロール、N−メ
チルピロール、N−ドデシルピロール等のN−アルキル
ピロール、N−メチル−3−メチルピロール、N−エチ
ル−3−ドデシルピロール等のN−アルキル−3−アル
キルピロール、3−カルボキシピロールを重合して作製
されたピロール系高分子、あるいは、これらのモノマー
と他のモノマーとを重合して作製された共重合体であっ
て、しかも、これらの共重合体中、少なくとも50モル
%がピロール単位を有するピロール系高分子が用いられ
る。
【0024】これらのピロール系高分子の重合方法とし
ては、ヨウ素あるいは鉄イオン等の金属イオンを触媒と
する化学的酸化重合、あるいは定電圧または定電流を印
加する電解重合のどちらの方法も用いることが可能であ
る。好ましくは電解重合による方法である。また、本発
明のピロール系高分子フィルムまたは繊維は、重合と同
時に作製することもできる。
【0025】電解重合においては、塩化物イオン、臭化
物イオン等のハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、テ
トラフルオロ硼酸イオン、六フッ化ヒ酸イオン、硫酸イ
オン、硝酸イオン、チオシアン酸イオン、六フッ化ケイ
酸イオン、燐酸イオン、フェニル燐酸イオン、六フッ化
燐酸イオン等の燐酸系イオン、トリフルオロ酢酸イオ
ン、トシレートイオン、エチルベンゼンスルホン酸イオ
ン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン等のアルキルベ
ンゼンスルホン酸イオン、メチルスルホン酸イオン、エ
チルスルホン酸イオン等のアルキルスルホン酸イオン、
ポリアクリル酸イオン、ポリビニルスルホン酸イオン、
ポリスチレンスルホン酸イオン、ポリ(2−アクリルア
ミド−2−メチルプロパンスルホン酸)イオン等の高分
子イオンのうち、少なくとも一種のイオンがドーパント
として使用される。
【0026】本発明に使用するピロール系高分子フィル
ムまたは繊維(以下、原フィルムまたは原繊維とよぶこ
とがある。)は、柔軟性と適当な力学強度を損わない限
り、原フィルムまたは原繊維の長さ、幅、厚さまたは直
径については特に制限はなく、大面績の原フィルムまた
は原繊維も用いることも可能であるが、本発明の効果を
有効に発揮するためには、原フィルムまたは原繊維が繰
り返し伸縮可能であること、すなわち柔軟であることが
好適である。このため、原フィルムの厚さまたは原繊維
の直径は、一般には1〜1000μmの範囲、好ましく
は10〜100μmの範囲のものが用いられる。
【0027】また、原フィルムまたは原繊維は、公知の
延伸方法によって一軸延伸または二軸延伸されたフィル
ムまたは繊維であることが好ましい。このような公知の
延伸方法としては、熱延伸法、ゾーン延伸法、膨潤延伸
法等の延伸方法がいずれも採用できる。原フィルムまた
は原繊維は、このような延伸による高分子鎖の配向、緊
張化により、ヤング率、切断強度等の力学的性質、熱安
定性、電導度等の性能を向上させることができる。
【0028】また、原フィルムまたは原繊維は、平状、
リング状、ベルト状、チューブラー状、または円柱状の
形状で用いることができる。また、これらの形状を組み
合わせて用いることができる。
【0029】原フィルムまたは原繊維への水分子の吸脱
着を制御することにより、原フィルムまたは原繊維を伸
縮させることのできる電気刺激として、直流波、交流
波、三角波、矩形波などが利用可能である。本発明で
は、特に好ましいのは直流波である。
【0030】本発明の電気刺激は、好ましくは100V
以下の電気刺激、最も好ましくは10V以下の電気刺激
である。本発明における原フィルムまたは原繊維のこの
ような電気変形挙動のメカニズムは、ファン・デル・ワ
ールス力程度の弱い物理吸着により結合している水分子
が、電気刺激により脱着することに基づいている。すな
わち、水分子が吸着すると原フィルムまたは原繊維は膨
張する。これに電気刺激を加えると、吸着していた水分
子を吐き出しながら原フィルムまたは原繊維が収縮す
る。
【0031】また、本発明では、電気刺激を加える領域
や数についても、必ずしも限定されるものではない。こ
のように、本発明においては、ピロール系高分子フィル
ムまたは繊維の形状、大きさ、厚み、直径等、電気刺激
の種類、領域の大きさ、数等を、適宣選択することがで
きる。
【0032】
【発明の実施の形態】本発明における電気刺激による原
フィルムまたは原繊維の変形は、図1に示した極めて簡
単な実験装置で実施することができる。
【0033】図1中において、原フィルムまたは原繊維
は、長さ40mm、幅5mm、厚さまたは直径約30μ
mで、上端2.5mmがてこの一端に、下端2.5mm
が装置に固定されている。したがって、フィルムまたは
繊維の駆動部分は、その固定箇所を差し引いた部分であ
る。その質量は約5mgである。図1では、てこの原理
で原フィルムまたは原繊維の伸縮を拡大して、レーザー
変位計で測定できるようになっている。また、原フィル
ムまたは原繊維の両末端に導線を連結することで電気刺
激を加えることができるようになっている。
【0034】図lに示す装置では原フィルムまたは原繊
維をそのまま使用しているが、これを電気的に不活性な
支持体と張り合わせることにより、原フィルムまたは原
繊維の変形を屈曲として取り出すことも可能である。
【0035】支持体としては、例えば、ポリエチレン、
ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリエチレンテ
レフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエス
テル類、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド
類、ポリイミド類の他、ポリカーボネート、ポリテトラ
フルオロエチレン、ポリエーテルエーテルケトン等の汎
用高分子が使用可能である。
【0036】本発明は、また、原フィルムまたは原繊維
を直列および/または並列に配置することにより、より
大きな伸びや応力を取り出すことも可能である。本発明
は、高い感度と動作の再現性を要求する分野、フィルム
または繊維の可逆的な伸縮、屈曲を利用して気体や液体
についてその流量や方向を制御する人工弁、ケミカルバ
ルブ、スイッチ等の電子工学素子、直接フィルムまたは
繊維の伸縮を利用して仕事をさせる化学−力学エネルギ
ー変換材料(ケモメカニカル材料)やアクチュエーター
等幅広く産業上の分野で利用できる。
【0037】
【実施例】以下に、実施例によって本発明をさらに具体
的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら
限定されるものではない。
【0038】なお、各実施例で用いたピロール系高分子
フィルムまたは繊維は、以下の(l)に示す方法によっ
て得られたものである。また、実施例中、伸縮挙動の測
定結果等の各測定結果は、以下の(2)〜(5)に示す
方法によって得られたものである。
【0039】(1)ピロール系高分子フィルムまたは繊
維の作製 ピロール0.4gおよび過塩素酸テトラエチルアンモニ
ウム1.15gを、lvol%の水を含む炭酸ブロピレ
ンに溶かして100m1とした。正極に白金板(長さ5
0mm、幅20mm、厚さ0.1mm)、負極にアルミ
箔(長さ200mm、幅50mm、厚さ0.01mm)
を用いた図2に示すような電解重合セルに、上記溶液を
入れた。なお、図2中で、7はポテンショスタット、8
は低温恒温槽、9は温度制御装置、10は電解重合セ
ル、11はアルミ箔、12は白金板、13は投げ込みク
ーラー、および14は冷媒(エタノール)を示す。
【0040】電解重合セルを低温恒温槽中に30分放置
後、ポテンショスタットから一定電流1.25mA(電
流密度0.125mA/cm2 )を12時間印加し、電
解重合を行った。重合温度は−20℃であった。
【0041】得られた深緑色のポリピロールフィルムを
白金板上から剥がし、炭酸プロピレン中で約1時間洗浄
した。さらに、フィルムをl日真空乾燥し、これを試料
(原フィルム)として用いた。乾燥後のポリピロールフ
ィルムの寸法は、長さ50mm、幅20mm、厚さ約3
0μmで、このフィルムは電導度102S/cm、ヤン
グ率0.61GPa、切断強度33.7MPaおよび切
断伸度25.9%の物性を有していた。
【0042】(2)伸縮挙動の測定 厚さまたは直径約30μmのポリピロールフィルムまた
は繊維を長さ40mm、幅5mmに切り出す。図1中に
示すように、フィルムまたは繊維の上端2.5mmをて
この一端に固定し、下端を装置に固定した。てこの他端
の位置変化を分解能8μmのレーザー変位計(LB−0
80、株式会社キーエンス)で測定する。測定データを
アンプユニット(LB一1100、株式会社キーエン
ス)で増幅し、パーソナルコンピュータに読み込む。な
お、図1中で、1はフィルムまたは繊維、2はてこ、3
は支点、4はレーザー変位計、5は放射温度計、6は湿
度計、7はポテンショスタットを示す。
【0043】(3)温度および相対湿度の測定 フィルムまたは繊維近傍の相対湿度の変化をデジタル温
湿計(MC−P、日本パナメトリクス株式会社)で測定
し、データをパーソナルコンピユータに読み込む。フィ
ルムまたは繊維表面の温度は放射温度計(CT−30、
COS株式会社)を用いて測定した。
【0044】(4)電圧印加と電流測定 フィルムまたは繊維への電圧印加はポテンショスタット
(HA−301、北斗電工株式会社)を用いて行い、電
流値をパーソナルコンピユータにより読込んだ。
【0045】(5)熱収縮挙動の測定 フィルムまたは繊維の熱収縮挙動は、熱機械分析装置
(TAS−200、理学電器株式会社)を用い、5g/
mm2 の一定張力下で、25℃から100℃まで1℃/
minの昇温速度で測定を行った。
【0046】
【実施例1】原フィルムまたは原繊維として、前述の
「(1)ピロール系高分子フィルムまたは繊維の作製」
の項で述べた過塩素酸イオンをドーパントとするポリピ
ロールフィルムを用いた。また、装置として、図1に示
す装置を用いた。
【0047】温度25℃、相対湿度50%の条件下でポ
テンショスタットより直流電圧を3V印可したときのフ
ィルムの伸縮、電流値、フィルム表面の温度、そしてフ
ィルム表面近傍の相対湿度を測定した。得られた結果を
図3に示す。
【0048】電圧の印加と同時に原フィルムは収縮し、
30秒間で収縮率は約l.5%に達した。印加電圧を切
ると原フィルムは素早く伸長し、これが繰り返し何度で
も起こることがわかった。このときの電流値は約70m
Aであり、フィルム表面の温度は25℃から34℃に増
加した。フィルム表面近傍の相対湿度は電圧印加により
約2%増加し、52%に達した。このことは、電圧印加
によりもともと吸着していた水分子が脱着して、空気中
に散逸していることを意味している。また、電圧を切る
と急激に相対湿度が低下するのは、水分子のフィルムヘ
の再吸着が起こるためである。すなわち、原フィルムの
電気収縮が、電気刺激により引き起こされる水分子の脱
着に基づくことを実験的に示している。
【0049】
【実施例2】温度25℃、相対湿度95%の条件下にお
いて、1V、2V、3Vの電圧を印可したときの、原フ
ィルムの伸縮挙動および電流値を測定した。得られた結
果を図4に示す。
【0050】電圧印加とともに原フィルムは収縮し、収
縮速度および収縮率は印加電圧とともに急激に増大し、
3Vの印加電圧においてそれぞれ3%、8.1%/mi
nであった。これは、水溶液中で作動する従来のポリア
ニリンフィルムと比較して数倍速い応答速度である。ま
た、空気中におけるこのようなフィルムの電気伸縮挙動
は、従来では不可能だった技術である。
【0051】また、電流値が印加電圧に比例して増加す
ることから、この実験条件下において原フィルムはオー
ムの法則に従うことを意味している。このとき、原フィ
ルムの抵抗値は2.7×10-2Ωであることがわかっ
た。
【0052】
【実施例3】図1中で、電圧印可した状態で周囲の相対
湿度を徐々に低下させていったときの原フィルムの伸縮
挙動を測定した。また、温度は一定(25℃)とし、電
圧印加していないときの、相対湿度50%における原フ
ィルムの長さを基準とした。得られた結果を図5に示
す。
【0053】電圧を印可しない場合、原フィルムは周囲
の相対湿度の増加とともに伸長し、相対湿度90%にお
いて約1%の伸びを示した。相対湿度を徐々に低下させ
ていくと、原フィルムは相対湿度とともに収縮し、その
直線部分の勾配より算出した線膨張率は3.6×10-2
であった。また、これが繰り返し何度でも再現できるこ
とが確認された。
【0054】相対湿度95%において直流電圧を印加す
ることで、原フィルムは図4に示したように収縮し、平
衡に達した後、徐々に相対湿度を減少させた。印加電圧
の増加とともに原フィルムの収縮率は大きくなり、勾
配、すなわち線膨張率は低下することがわかった。線膨
張率は1V、2V、3Vでそれぞれ3.3×10-2
1.8×10-2、0.76×10-2であった。
【0055】ここで、3V印加したときの相対湿度90
%の収縮率が、電圧を印可していないときの相対湿度1
0%の収縮率よりも大きいことがわかる。このことは、
電気刺激が原フィルムの収縮に非常に効果的であること
を示している。
【0056】この実施例の特徴は、空気中において乾式
で高分子の伸縮を制御できることにあり、従来の溶液中
または膨潤状態で作動するゲルや導電性高分子フィルム
では不可能だった技術である。
【0057】
【比較例l】本発明の電気変形挙動についてさらに検討
するため、原フィルムに、電気刺激の代わりに、熱を加
えたときの伸縮挙動を測定した。得られた結果を図6に
示す。
【0058】25℃より1℃/minの速度で昇温させ
ていくと、原フィルムは収縮した。これは、昇温するこ
とによる水分子の脱着と、ゴム弾性による熱収縮の両方
に基づくと考えられる。図3中において3Vの電圧を印
可したとき、収縮率はl.5%に達し、原フィルム表面
の温度は34℃まで上昇している。これに対し、図6中
で34℃における原フィルムの収縮率は約五分の一の
0.33%である。一方、温度だけで原フィルムを1.
5%収縮率させるには、90℃以上に加熱する必要があ
る。このことは、原フィルムの収縮が熱によるものでは
なく、電気刺激による水分子の脱着によることを示して
いる。
【0059】
【発明の効果】本発明によって、ピロール系高分子フィ
ルムまたは繊維の変形を、空気中において乾式で、しか
も高感度で制御できることができるようになった。従来
の溶液中または膨潤状態で作動するゲルや導電性高分子
フィルムでは不可能だった技術である。
【0060】本発明は、高い感度と動作の再現性を要求
する分野、フィルムまたは繊維の可逆的な伸縮を利用し
て気体や液体についてその流量や方向を制御する人工
弁、ケミカルバルブ、スイッチ等の電子工学素子、直接
フィルムまたは繊維の伸縮を利用して仕事をさせる化学
−力学エネルギー変換材料(ケモメカニカル材料)やア
クチュエーター等幅広く産業上の分野で利用できる。
【0061】また、原フィルムまたは原繊維を直列およ
び/または並列に配置することにより、より大きな伸び
や応力を取り出すことも可能であり、人工筋肉等広い分
野で利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る高分子フィルムまたは繊維の伸
長、収縮の測定に用いた装置の説明図である。
【図2】本発明に係る高分子フィルムまたは繊維の作製
に用いた電解重合装置の概略図である。
【図3】図1で25℃、相対湿度50%において3Vの
直流電圧を印可したときの、原フィルムの伸縮挙動、電
流値、温度そして相対湿度を示すグラフである。
【図4】図lで25℃、相対湿度95%において直流電
圧を印可したときの、原フィルムの伸縮挙動、電流値を
示すグラフである。
【図5】図1において直流電圧下で相対湿度を変化させ
たときの、原フィルムの伸縮挙動を示すグラフである。
【図6】25℃から1℃/minの速度で昇温したとき
の、原フィルムの伸縮挙動を示すグラフである。
【符号の説明】
1 フィルムまたは繊維 2 てこ 3 支点 4 レーザー変位計 5 放射温度計 6 湿度計 7 ポテンショスタット 8 低温恒温槽 9 温度制御装置 10 電解重合セル 11 アルミ箔 12 白金板 13 投げ込みクーラー 14 冷媒
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F03G 7/00 F03G 7/06 H01B 1/12

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも50モル%のピロール単位を
    有するピロール系高分子フィルムまたは繊維を用い、電
    気刺激による分子の吸脱着によって、気体中で、上記フ
    ィルムまたは繊維を伸縮または屈曲せしめることを特徴
    とするピロール系高分子フィルムまたは繊維の高感度電
    気変形方法。
  2. 【請求項2】 ピロール系高分子フィルムまたは繊維
    が、平状、リング状、ベルト状、チューブラー状および
    円柱状からなる群から選ばれる少なくとも一種であるこ
    とを特徴とする請求項l記載のピロール系高分子フィル
    ムまたは繊維の高感度電気変形方法。
  3. 【請求項3】 ピロール系高分子フィルムまたは繊維
    が、厚さまたは直径1〜l000μmの範囲であること
    を特徴とする請求項1または請求項2記載のピロール系
    高分子フィルムまたは繊維の高感度電気変形方法。
  4. 【請求項4】 ピロール系高分子フィルムまたは繊維
    が、厚さまたは直径10〜l00μmの範囲であること
    を特徴とする請求項3記載のピロール系高分子フィルム
    または繊維の高感度電気変形方法。
  5. 【請求項5】 ピロール系高分子フィルムまたは繊維
    が、少なくとも一種のイオンを包含することを特徴とす
    る請求項1または請求項2記載のピロール系高分子フィ
    ルムまたは繊維の高感度電気変形方法。
  6. 【請求項6】 ピロール系高分子フィルムまたは繊維
    が、一軸延伸または二軸延伸されたフィルムまたは繊維
    であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の
    ピロール系高分子フィルムまたは繊維の高感度電気変形
    方法。
  7. 【請求項7】 印加電圧が、直流波、交流波、三角波お
    よび矩形波から選ばれる少なくとも一種から供給される
    ことを特徴とする、請求項1または請求項2記載のピロ
    ール系フィルムまたは繊維の高感度電気変形方法。
JP09340848A 1997-11-27 1997-11-27 ピロール系高分子フィルムまたは繊維の高感度電気変形方法 Expired - Fee Related JP3131180B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP09340848A JP3131180B2 (ja) 1997-11-27 1997-11-27 ピロール系高分子フィルムまたは繊維の高感度電気変形方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP09340848A JP3131180B2 (ja) 1997-11-27 1997-11-27 ピロール系高分子フィルムまたは繊維の高感度電気変形方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH11159443A JPH11159443A (ja) 1999-06-15
JP3131180B2 true JP3131180B2 (ja) 2001-01-31

Family

ID=18340871

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP09340848A Expired - Fee Related JP3131180B2 (ja) 1997-11-27 1997-11-27 ピロール系高分子フィルムまたは繊維の高感度電気変形方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3131180B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2006025399A1 (ja) * 2004-08-31 2006-03-09 Yamanashi University 高分子フィルム又は繊維の変形方法及び高分子アクチュエータ
JP2006334198A (ja) * 2005-06-03 2006-12-14 Yamanashi Tlo:Kk ガイドワイヤ

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2004070931A1 (ja) * 2003-02-07 2004-08-19 Eamex Corporation アクチュエータの駆動方法
JP4953556B2 (ja) * 2003-02-07 2012-06-13 イーメックス株式会社 アクチュエータの駆動方法及び水槽
WO2004074354A1 (ja) * 2003-02-19 2004-09-02 Eamex Corporation 筒状導電性高分子成形物
JP4732798B2 (ja) 2005-05-19 2011-07-27 株式会社日立製作所 アクチュエーターおよびアクチュエーターモジュール
JP4732876B2 (ja) 2005-11-30 2011-07-27 株式会社日立製作所 アクチュエータ、アクチュエータモジュールおよびアクチュエータモジュール製造方法
JP5135757B2 (ja) 2006-01-13 2013-02-06 日産自動車株式会社 導電性高分子からなる布帛を用いたセンサ、アクチュエータ
JP4894420B2 (ja) 2006-03-16 2012-03-14 日産自動車株式会社 通気量可変布帛、吸音材、車両用部品
JP5224261B2 (ja) * 2007-03-08 2013-07-03 国立大学法人東京工業大学 光駆動型アクチュエータ,及び動力伝達システム
WO2008114810A1 (ja) * 2007-03-20 2008-09-25 University Of Yamanashi 高分子フィルム又は繊維の変形方法及び高分子アクチュエータ

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2006025399A1 (ja) * 2004-08-31 2006-03-09 Yamanashi University 高分子フィルム又は繊維の変形方法及び高分子アクチュエータ
JPWO2006025399A1 (ja) * 2004-08-31 2008-05-08 国立大学法人山梨大学 高分子フィルム又は繊維の変形方法及び高分子アクチュエータ
JP2006334198A (ja) * 2005-06-03 2006-12-14 Yamanashi Tlo:Kk ガイドワイヤ

Also Published As

Publication number Publication date
JPH11159443A (ja) 1999-06-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Kaneto Research trends of soft actuators based on electroactive polymers and conducting polymers
Madden et al. Artificial muscle technology: physical principles and naval prospects
JP3131180B2 (ja) ピロール系高分子フィルムまたは繊維の高感度電気変形方法
Zhou et al. Solid state actuators based on polypyrrole and polymer-in-ionic liquid electrolytes
Hara et al. Artificial muscles based on polypyrrole actuators with large strain and stress induced electrically
Hara et al. Free-standing gel-like polypyrrole actuators doped with bis (perfluoroalkylsulfonyl) imide exhibiting extremely large strain
Zhang et al. Stimuli‐Responsive Polymers for Actuation
Okuzaki et al. Adsorption‐induced bending of polypyrrole films and its application to a chemomechanical rotor
Chakraborty et al. Conducting gels: A chronicle of technological advances
WO2003081761A2 (en) Conducting polymer activators based on microporous asymmetric membranes
CN103029355B (zh) 一种光致弯曲柔性导电基板及其制备方法
Gao et al. Monolithic polyaniline/polyvinyl alcohol nanocomposite actuators with tunable stimuli-responsive properties
JP4945756B2 (ja) 高分子フィルム又は繊維の変形方法及び高分子アクチュエータ
Cortés et al. Artificial muscles based on conducting polymers
Ismail et al. Conducting polymer/hydrogel systems as soft actuators
Okuzaki et al. Humido-sensitive conducting polymer films and applications to linear actuators
JP2006125396A (ja) アクチュエータ
Okuzaki et al. Adsorption‐induced chemomechanical behavior of polypyrrole films
JP4483390B2 (ja) ハイドロゲルアクチュエータ
Okuzaki Progress and current status of materials and properties of soft actuators
Yan et al. All‐Solid Actuator Consisting of Polyaniline Film and Solid Polymer Electrolyte
JP5167515B2 (ja) 高分子フィルム又は繊維の変形方法及び高分子アクチュエータ
JP3102773B2 (ja) ピロール系高分子フィルムまたは繊維の高感度伸縮方法
JP5388192B2 (ja) 導電性高分子アクチュエータ材料
Okuzaki et al. Electrically driven polypyrrole film actuator working in air

Legal Events

Date Code Title Description
R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees