JP2005303326A - MnSi1.7系熱電材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】 偏析が少なく、結晶粒が微細であり、且つ、不純物の混入していない時効熱処理工程を経ることによって混合組織となるMnSi1.7相の単相組織からなるMnSi1.7系熱電材料を提供する。
【解決手段】 原材料を溶融する溶融工程に続いて該溶融工程によって溶融された原材料を滴下して滴下中の原材料に噴霧媒体を吹き付けて時効熱処理工程を経ることなく急冷却すると共に粉末化する冷却・粉末化工程を経てなり、時効熱処理工程を経ることによって混合組織となるMnSi1.7相の単相組織からなる又は該MnSi1.7相を主相とするMnSi1.7系熱電材料。
【選択図】 図1
【解決手段】 原材料を溶融する溶融工程に続いて該溶融工程によって溶融された原材料を滴下して滴下中の原材料に噴霧媒体を吹き付けて時効熱処理工程を経ることなく急冷却すると共に粉末化する冷却・粉末化工程を経てなり、時効熱処理工程を経ることによって混合組織となるMnSi1.7相の単相組織からなる又は該MnSi1.7相を主相とするMnSi1.7系熱電材料。
【選択図】 図1
Description
本発明は、MnSi1.7 系熱電材料に関するものである。
周知の通り、熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換することができる熱電材料が注目されており、当該熱電材料の中でもMnSi1.7 系熱電材料は、原料が比較的安価・豊富で毒素元素を含まず、しかも、高温域で使用できる熱電材料として、特に注目されている。
ここで、MnSi1.7 系熱電材料とは、モル比がMn:Si=1:x(1.6 ≦x≦1.8 )の間の組成を有する金属間化合物相であるMnSi1.7 相の単相組織からなる熱電材料又は該MnSi1.7 相を主相とする熱電材料のことをいう。
従来、前記MnSi1.7 系熱電材料の製造方法としては、所望の組成になるように配合した原材料を溶解炉中で溶解して鋳造型に注入し、冷却した後、時効熱処理を施して塊状の熱電材料を得る溶解法(以下、「第一従来法」という。)、前記時効熱処理を施す前の塊状の熱電材料を一旦粉砕して焼結法により固化成形した後、時効熱処理を施して塊状の熱電材料を得る方法(以下、「第二従来法」という。)、前記原材料を処理容器に入れてボールミル等の粉砕機で機械的に混合及び粉砕を繰り返しながら合金化させて粉末状の熱電材料を得るメカニカルアロイング法(以下、「第三従来法」という。)及び前記原材料を10-5mmHg前後にまで減圧した真空容器内で融解蒸発させて被着物に付着させて薄膜状の熱電材料を得る真空蒸着や10-3mmHg程度にまで減圧した真空容器内において電圧を1000V以上にして真空放電を行って陰極に配置した前記原材料を陽極に配置した被着物に付着させて薄膜状の熱電材料を得るスパッタリング等を含む乾式めっき法(以下、「第四従来法」という。)が用いられている。
特公昭42−8128号公報 第2,4頁
特開2000−349354号公報 第2,3頁
しかし、前記第一従来法では、MnSi1.7 系熱電材料は組成幅を殆ど持たない金属間化合物相であるため、MnとSiを所望の組成となるように配合した原材料を溶解して冷却固化するだけでは、MnSi1.7 相を多く含むものの該MnSi1.7 相以外の相も多く析出して複数相の混合組織となるという問題点があった。また、組織の偏析が大きくなるため、該組織を均質化させるためには数日間以上の時効熱処理が必要となり、該時効熱処理によって組織を均質化できたとしても、MnSi1.7 系熱電材料はSiを多く含んだ金属間化合物であるため、硬くて脆く、切削や塑性変形などの加工成形が非常に困難であるという問題点があった。さらに、熱電材料の熱電性能は、結晶粒が微細なほど向上するが、前記時効熱処理によって結晶粒が粗大化するため、熱電性能が低下するという問題点があった。
前記第二従来法によれば、前記第一従来法によって得られた塊状の熱電材料を一旦粉砕して焼結法によって成形するため、所望形状に成形し易く、粉砕することによって偏析が減少し、組織を均質化させるために必要とされる時効熱処理の時間を前記第一従来法に比べて数十時間に短縮できるという利点があるが、粉砕時に粉末酸化や不純物混入を避けることができず、また、鋳造、粉砕、粉末成形、焼結、時効熱処理と5段階の工程を必要とするため、多工程となりコスト高になると共に、品質管理が面倒になるという問題点があった。さらに、前記第一従来法と同様に時効熱処理を必要とするため、熱電性能が低下するという問題点があった。
前記第三従来法では、所望の組成及び組織を持つ粉末を得るために数日から数カ月の連続粉砕処理が必要であり、該処理中においては、処理される粉末の表面が活性化されて処理雰囲気により酸化、窒化等の化学反応が生じ易くなるため、処理が終了するまで処理容器内を不活性ガス雰囲気に保持する必要があると共に、処理容器内壁及びボール表面の磨耗によって発生する不純物やミリング助剤に含まれる不純物が不可避的に混入するため、製造した粉末が汚染されて配合組成からずれることが多いという問題点があった。また、装置が大がかりとなり、操作ハンドリングに手間を要するため、量産性に欠けると共にコスト高になるという問題点があった。さらに、製造した粉末の粒子径は数μm〜十数μm程度になり、十分に均質化してなお50μm〜100μmの粒子径を持たせることができなかった。
前記第四従来法では、大きな偏析が生じないため、時効熱処理の時間を大幅に短縮することができるが、最大十数μmの厚さの薄膜しか製造することができず、また、該薄膜は物性が不安定であるという問題点があった。さらに、装置が大がかりとなり、量産性に欠けると共にコスト高になるという問題点があった。
そこで、本発明者は、偏析が少なく、結晶粒が微細であり、且つ、不純物の混入していないMnSi1.7 系熱電材料を短時間で安価に得ることを技術的課題として、その具現化をはかるべく研究・実験を重ねた結果、原材料を溶融し、該溶融された原材料を滴下し、該滴下中の原材料に噴霧媒体を吹き付けて急冷却すると共に粉末化すれば、内部偏析が少なく、結晶粒が微細であり、且つ、不純物が混入していないMnSi1.7 系熱電材料を得ることができるという刮目すべき知見を得、前記技術的課題を達成したものである。
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって解決できる。
即ち、本発明に係るMnSi1.7系熱電材料は、時効熱処理工程を経ることによって混合組織となるMnSi1.7相の単相組織からなるものである。
また、本発明に係るMnSi1.7系熱電材料は、時効熱処理工程を経ることによって混合組織となるMnSi1.7相を主相とするものである。
また、本発明に係るMnSi1.7系熱電材料は、時効熱処理工程を経ることによって混合組織となるMnSi1.7相の単相組織からなるMnSi1.7系熱電材料であって、原材料を溶融する溶融工程に続いて該溶融工程によって溶融された原材料を滴下して滴下中の原材料に噴霧媒体を吹き付けて時効熱処理工程を経ることなく急冷却すると共に粉末化する冷却・粉末化工程を経てなるものである。
また、本発明に係るMnSi1.7系熱電材料は、時効熱処理工程を経ることによって混合組織となるMnSi1.7相を主相とするMnSi1.7系熱電材料であって、原材料を溶融する溶融工程に続いて該溶融工程によって溶融された原材料を滴下して滴下中の原材料に噴霧媒体を吹き付けて時効熱処理工程を経ることなく急冷却すると共に粉末化する冷却・粉末化工程を経てなるものである。
また、本発明に係るMnSi1.7系熱電材料は、時効熱処理工程を経ることによって混合組織となるMnSi1.7相の単相組織からなるMnSi1.7系熱電材料であって、原材料を溶融する溶融工程に続いて該溶融工程によって溶融された原材料を回転する円盤上に滴下して飛散させて時効熱処理工程を経ることなく急冷却すると共に球状粉末化する冷却・粉末化工程を経てなるものである。
さらに、本発明に係るMnSi1.7系熱電材料は、時効熱処理工程を経ることによって混合組織となるMnSi1.7相を主相とするMnSi1.7系熱電材料であって、原材料を溶融する溶融工程に続いて該溶融工程によって溶融された原材料を回転する円盤上に滴下して飛散させて時効熱処理工程を経ることなく急冷却すると共に球状粉末化する冷却・粉末化工程を経てなるものである。
本発明によれば、偏析のない均質な粉末状のMnSi1.7 系熱電材料が得られるため、時効熱処理を行う必要がなく、結晶粒を微細な状態で保つことができるので、熱電性能の良好なMnSi1.7 系熱電材料を得ることができる。また、製造工程が少ないため、不純物混入を防止できると共に、製造時間を短縮することができ、不純物の混入していないMnSi1.7 系熱電材料を安価に製造することができる。
また、図2に示すように、本発明によって得られたMnSi1.7 系熱電材料は僅かに組成がずれていても、MnSi1.7 相の単相組織からなるMnSi1.7 系熱電材料が得られる。
従って、本発明の産業上利用性は非常に高いといえる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
実施の形態1.
本実施の形態におけるMnSi1.7 系熱電材料は、先ず、所望の組成となるようにMnとSiを配合して原材料を調製し、該原材料を耐熱性容器に入れて該耐熱性容器の周囲に設けられた高周波コイルによって該耐熱性容器を誘導加熱し、耐熱性容器内の原材料を溶融する(溶融工程)。次に、耐熱性容器に設けられた開口から溶融された原材料を滴下させた後、滴下中の原材料に非酸化性ガスを噴霧媒体として吹付けて急冷却すると共に、粉末化させることにより粉末状のMnSi1.7 系熱電材料を得る(冷却・粉末化工程)。この後、前記粉末状のMnSi1.7 系熱電材料を焼結法により固化成形することによって所望形状のMnSi1.7 系熱電材料を得る(成形工程)ものである。
なお、前記MnSi1.7 系熱電材料は、MnとSi以外の添加元素を配合した原材料を用いた場合や滴下条件、冷却条件等の各条件を変更することにより、MnSi1.7 相の単相組織からなるMnSi1.7 系熱電材料になる場合やMnSi1.7 相を主相とするMnSi1.7 系熱電材料になる場合がある。
溶融工程と冷却・粉末化工程は、原材料に不純物が混入することを防止して該原材料の耐酸化性を向上させるために非酸化性雰囲気中で行ってもよい。
ここで、非酸化性雰囲気とは、不可避的に含まれる酸素以外の酸素を含まない非酸化性ガスの雰囲気をいう。
噴霧媒体としては、非酸化性ガスの替わりに空気、水又は油を用いることができる。
非酸化性ガスとしては、アルゴンガス、ヘリウムガス又はネオンガス等の不活性ガスや窒素ガス又は窒素・水素混合ガス等を使用すればよい。
成形工程における焼結法としては、例えば、ホットプレス法、熱間静水圧加圧法、通電加圧焼結法及び金属射出成形法等を含む粉末冶金法を用いればよい。
本実施の形態においては、噴霧媒体の吹き付け条件を調節することにより、粉末状のMnSi1.7 系熱電材料の粒子径を調節することができるので、粒子径が50μm〜100μmのMnSi1.7 系熱電材料も作製することができ、成形工程において使用される各焼結法に最適な粒子径のMnSi1.7 系熱電材料を製造することができる。
実施の形態2.
本実施の形態におけるMnSi1.7 系熱電材料は、先ず、前記実施の形態1と同様にして調製した原材料を耐熱性容器に入れて溶融する(溶融工程)。次に、耐熱性容器に設けられた開口から溶融された原材料を該耐熱性容器に設けられた開口の下方に配置された回転する円盤上に滴下して該原材料を飛散させて急冷却すると共に、球状粉末化することにより粉末状のMnSi1.7 系熱電材料を得る(冷却・粉末化工程)。この後、前記実施の形態1と同様にして、粉末状のMnSi1.7 系熱電材料を固化成形することによって所望形状のMnSi1.7 系熱電材料を得る(成形工程)ものである。
なお、前記MnSi1.7 系熱電材料は、前記実施の形態1と同様に各条件を変更することにより、MnSi1.7 相の単相組織からなるMnSi1.7 系熱電材料になる場合やMnSi1.7 相を主相とするMnSi1.7 系熱電材料になる場合がある。
前記各実施の形態によれば、溶融された原材料を粉末化し、各粉子の内部まで瞬間的に冷却するため、偏析のない均質な粉末状のMnSi1.7 系熱電材料を得ることができる。
実施例1.
先ず、Mnの地金(東ソー株式会社製)とSiの地金(日本電工株式会社製)をモル比Mn:Si=1:1.7 にて配合して原材料を作製し、該原材料をジルコニア製るつぼ内に入れ、Si粉末の融点である1690K よりおよそ 200K 高い温度に加熱して原材料を溶融した。次に、るつぼに設けられた内径 5.0mmの滴下用ノズルから該溶融した原材料を出湯量 20kg/min にて滴下した後、該滴下中の原材料に窒素ガスをガス圧 5kg/cm2、ガス流量 20m3/min にて吹き付けて粉末状のMnSi1.7 系熱電材料を得た。
前記粉末状のMnSi1.7 系熱電材料は、最大径 43 μm 、平均径 9.08 μm 、比表面積 3100cm2/g、酸素量 0.10%、見掛密度 1.50g/cm2、充填密度 3.03g/cm2であった。
前記粉末状のMnSi1.7 系熱電材料をX線回析したところ、図1に示すように、当該MnSi1.7 系熱電材料はMnSi1.7 相の単相組織であることが確認できた。
この後、前記粉末状のMnSi1.7 系熱電材料を、粉末冶金法を用いて固化成形し、円板状のMnSi1.7 系熱電材料を得た。
実施例2.
先ず、Mnの地金(東ソー株式会社製)とSiの地金(日本電工株式会社製)をモル比Mn:Si=1:1.7 にて配合して原材料を作製した後、前記実施例1と同様にして粉末状のMnSi1.7 系熱電材料を得た。
粉末状のMnSi1.7 系熱電材料は、最大径43μm 、平均径10.2μm 、比表面積2900cm2/g 、酸素量0.08% 、見掛密度1.60g/cm2 、充填密度3.20g/cm2 であった。
次に、前記粉末状のMnSi1.7 系熱電材料、前記粉末状のMnSi1.7 系熱電材料に800 Kで時効熱処理を施した後の粉末、前記粉末状のMnSi1.7 系熱電材料に1000Kで時効熱処理を施した後の粉末及び前記粉末状のMnSi1.7 系熱電材料に1200Kで時効熱処理を施した後の粉末をそれぞれX線回析したところ、図2に示すように、時効熱処理を施していない粉末状のMnSi1.7 系熱電材料は、MnSi1.7 相の単相組織であるのに対して、前記粉末状のMnSi1.7 系熱電材料に時効熱処理を施した後の各粉末は、MnSi1.7 相とMnSi相の混合組織であることが確認できた。
これにより、MnSi1.7 相とMnSi相の2相混合組織で平衡状態となる組成の原材料であっても、本発明によれば、MnSi1.7 相の単相組織からなるMnSi1.7 系熱電材料が得られることがわかる。
Claims (6)
- 時効熱処理工程を経ることによって混合組織となるMnSi1.7相の単相組織からなるMnSi1.7系熱電材料。
- 時効熱処理工程を経ることによって混合組織となるMnSi1.7相を主相とするMnSi1.7系熱電材料。
- 時効熱処理工程を経ることによって混合組織となるMnSi1.7相の単相組織からなるMnSi1.7系熱電材料であって、原材料を溶融する溶融工程に続いて該溶融工程によって溶融された原材料を滴下して滴下中の原材料に噴霧媒体を吹き付けて時効熱処理工程を経ることなく急冷却すると共に粉末化する冷却・粉末化工程を経てなることを特徴とするMnSi1.7系熱電材料。
- 時効熱処理工程を経ることによって混合組織となるMnSi1.7相を主相とするMnSi1.7系熱電材料であって、原材料を溶融する溶融工程に続いて該溶融工程によって溶融された原材料を滴下して滴下中の原材料に噴霧媒体を吹き付けて時効熱処理工程を経ることなく急冷却すると共に粉末化する冷却・粉末化工程を経てなることを特徴とするMnSi1.7系熱電材料。
- 時効熱処理工程を経ることによって混合組織となるMnSi1.7相の単相組織からなるMnSi1.7系熱電材料であって、原材料を溶融する溶融工程に続いて該溶融工程によって溶融された原材料を回転する円盤上に滴下して飛散させて時効熱処理工程を経ることなく急冷却すると共に球状粉末化する冷却・粉末化工程を経てなることを特徴とするMnSi1.7系熱電材料。
- 時効熱処理工程を経ることによって混合組織となるMnSi1.7相を主相とするMnSi1.7系熱電材料であって、原材料を溶融する溶融工程に続いて該溶融工程によって溶融された原材料を回転する円盤上に滴下して飛散させて時効熱処理工程を経ることなく急冷却すると共に球状粉末化する冷却・粉末化工程を経てなることを特徴とするMnSi1.7系熱電材料。
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