以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施態様について詳細に説明する。
図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる光記録媒体10の構造を概略的に示す断面図である。
図1に示されるように、本実施態様にかかる光記録媒体10は、基体11と、中間層12と、光透過層13と、中間層12と光透過層13との間に設けられたL0層20と、基体11と中間層12との間に設けられたL1層30とを備える。L0層20は、光入射面13aから近い側の情報記録層を構成し、第1の誘電体膜21、L0記録膜22及び第2の誘電体膜23によって構成される。また、L1層30は、光入射面13aから遠い側の情報記録層を構成し、第3の誘電体膜31、L1記録膜32、第4の誘電体膜33及び反射膜34によって構成される。このように、本実施態様にかかる光記録媒体10は、2層の情報記録層(L0層20及びL1層30)を有している。
基体11は、光記録媒体10の機械的強度を確保する役割を果たし、その表面にはグルーブ11a及びランド11bが設けられている。これらグルーブ11a及び/又はランド11bは、L1層30に対してデータの記録/再生を行う場合におけるレーザビームのガイドトラックとしての役割を果たす。特に限定されるものではないが、グルーブ11aの深さとしては10〜40nmに設定することが好ましく、グルーブ11aのピッチとしては0.2〜0.4μmに設定することが好ましい。基体11の厚みは約1.1mmに設定され、その材料としては、特に限定されるものではないがポリカーボネートを用いることが好ましい。但し、基体11は光入射面13aとは反対側の面を構成することから、特に光透過性を備える必要はない。
中間層12は、L0層20とL1層30とを十分な距離をもって離間させる役割を果たし、その表面にはグルーブ12a及びランド12bが設けられている。これらグルーブ12a及び/又はランド12bは、L0層20に対してデータの記録/再生を行う場合におけるレーザビームのガイドトラックとしての役割を果たす。グルーブ12aの深さやピッチは、基体11に設けられたグルーブ11aの深さやピッチと同程度に設定すればよい。中間層12の厚みとしては、約10〜50μmに設定することが好ましい。また、中間層12の材料としては、特に限定されるものではないが、紫外線硬化性アクリル樹脂を用いることが好ましい。中間層12は、L1層30に対してデータの記録/再生を行う場合にレーザビームの光路となることから、十分に高い光透過性を有している必要がある。
光透過層13は、レーザビームの光路となるとともに光入射面13aを構成し、その厚みとしては、約30〜200μmに設定することが好ましい。光透過層13の材料としては、特に限定されるものではないが、中間層12と同様、紫外線硬化性アクリル樹脂を用いることが好ましい。上述のとおり、光透過層13はレーザビームの光路となることから、十分に高い光透過性を有している必要がある。
L0記録膜22及びL1記録膜32は、いずれも相変化材料によって構成され、結晶状態である場合の反射率とアモルファス状態である場合の反射率とが異なることを利用してデータの記録が行われる。L0記録膜22及びL1記録膜32の具体的な材料としては、特に限定されるものではないがSbTe系材料を用いることが好ましい。SbTe系材料としてはSbTeのみでもよいし、添加物としてIn、Te、Ge、Ag等を加えたInSbTeGeやAgInSbTe、AgSbTeGe、AgInSbTeGe等を用いることができる。
ここで、L0記録膜22は、L1層30に対してデータの記録/再生を行う場合にレーザビームの光路となることから、十分な光透過性を有している必要があり、このためL0記録膜22の膜厚は、L1記録膜32の膜厚と比べて十分に薄く設定される。具体的には、L1記録膜32の膜厚としては、約3〜20nmに設定することが好ましく、L0記録膜22の膜厚は、L1記録膜32の膜厚に対して0.3〜0.8倍に設定することが好ましい。
L0記録膜22を挟むように設けられた第1の誘電体膜21及び第2の誘電体膜23は、L0記録膜22に対する保護膜として機能し、L1記録膜32を挟むように設けられた第3の誘電体膜31及び第4の誘電体膜33は、L1記録膜32に対する保護膜として機能する。第1の誘電体膜21の厚みとしては2〜200nmに設定することが好ましく、第2の誘電体膜23の厚みとしては2〜200nmに設定することが好ましく、第3の誘電体膜31の厚みとしては2〜200nmに設定することが好ましく、第4の誘電体膜33の厚みとしては2〜200nmに設定することが好ましい。
また、これら第1の誘電体膜21〜第4の誘電体膜33は、1層の誘電体膜からなる単層構造であってもよいし、2層以上の誘電体膜からなる積層構造であってもよい。これら第1の誘電体膜21〜第4の誘電体膜33の材料としては特に限定されないが、SiO2、Si3O4、Al2O3、AlN、TaO、ZnS、CeO2等、Si、Al、Ta、Znの酸化物、窒化物、硫化物、炭化物あるいはそれらの混合物を用いることが好ましい。
反射膜34は、光入射面13aから入射されるレーザビームを反射し、再び光入射面13aから出射させる役割を果たし、その厚さとしては20〜200nmに設定することが好ましい。反射膜34の材料としては特に限定されないが、AgやAlを主成分とする合金を用いることが好ましく、AuやPt等を用いることもできる。また、反射膜34の腐食を防止するために、反射膜34と基体11との間に防湿膜を設けてもよい。かかる防湿膜としては、第1の誘電体膜21〜第4の誘電体膜33と同様の材料を用いることができる。さらに、L0層20は反射膜を備えていないが、3〜15nm程度の薄い反射膜をL0層20に設けても構わない。この場合、かかる反射膜の材料としては、反射膜34と同じ材料を用いることができる。
このような構造を有する光記録媒体10に記録されたデータを再生する場合、光入射面13aから200〜450nmの波長を持つレーザビームが照射され、その反射光量が検出される。上述のとおり、L0記録膜22及びL1記録膜32は相変化材料によって構成され、結晶状態である場合とアモルファス状態である場合とで光反射率が異なっていることから、レーザビームを光入射面13aから照射してL0記録膜22及びL1記録膜32の一方にフォーカスを合わせ、その反射光量を検出することにより、レーザビームが照射された部分におけるL0記録膜22またはL1記録膜32が結晶状態であるかアモルファス状態であるかを判別することができる。
光記録媒体10に対してデータの記録を行う場合も、光入射面13aから200〜450nmの波長を持つレーザビームが照射され、L0記録膜22またはL1記録膜32にフォーカスが合わせられ、記録すべきデータにしたがい、L0記録膜22またはL1記録膜32の所定の部分を融点以上の温度に加熱した後、急冷すれば、当該部分の状態がアモルファス状態となり、L0記録膜22またはL1記録膜32の所定の部分を結晶化温度以上の温度に加熱した後、徐冷すれば、当該部分の状態が結晶状態となる。アモルファス状態となった部分は「記録マーク」と呼ばれ、記録データは、記録マークの始点から終点までの長さ及び終点から次の記録マークの始点までの長さに形成される。各記録マークの長さ及び記録マーク間の長さ(エッジ間)は、特に限定されるものではないが、(1,7)RLLの変調方式が採用される場合、2T〜8T(Tは、クロックの周期)に対応する長さのいずれかに設定される。尚、L0記録膜22に対してデータの記録を行う場合の記録ストラテジ及びL1記録膜32に対してデータの記録を行う場合の記録ストラテジについては後述する。
L1層30に対してデータの記録/再生を行う場合、レーザビームはL0層20を介してL1記録膜32に照射されることになる。このため、L0層20は十分な光透過性を有している必要があり、上述のとおりL1記録膜32の膜厚と比べて、L0記録膜22の膜厚はかなり薄く設定されている。
次に、本実施態様にかかる光記録媒体10の製造方法について説明する。
図2〜図5は、光記録媒体10の製造方法を示す工程図である。
まず、図2に示されるように、スタンパ40を用いて、グルーブ11a及びランド11bを有する基体11を射出成形する。次に、図3に示されるように、基体11のうちグルーブ11a及びランド11bが形成されている面のほぼ全面に、スパッタリング法によって、反射膜34、第4の誘電体膜33、L1記録膜32及び第3の誘電体膜31を順次形成する。これにより、L1層30が完成する。尚、スパッタリング直後におけるL1記録膜32の状態は通常アモルファス状態である。
次に、図4に示されるように、L1層30上に、紫外線硬化性樹脂をスピンコートし、その表面にスタンパ41を被せた状態でスタンパ41を介して紫外線を照射することにより、グルーブ12a及びランド12bを有する中間層12を形成する。次に、図5に示されるように、グルーブ12a及びランド12bが形成された中間層12のほぼ全面に、スパッタリング法によって、第2の誘電体膜23、L0記録膜22及び第1の誘電体膜21を順次形成する。これにより、L0層20が完成する。尚、スパッタリング直後におけるL0記録膜22の状態は通常アモルファス状態である。
そして、図1に示されるように、L0層20上に、紫外線硬化性樹脂をスピンコートし、紫外線を照射することによって光透過層13を形成する。以上により、全ての成膜工程が完了する。本明細書においては、成膜工程が完了した状態の光記録媒体を「光記録媒体前駆体」と呼ぶことがある。
次に、光記録媒体前駆体をレーザ照射装置の回転テーブル(図示せず)に載置し、回転させながらトラックに沿った方向における長さが短く、且つ、トラックに垂直な方向における長さが長い矩形状のレーザビームを連続的に照射し、光記録媒体前駆体が1回転するごとに照射位置をトラックに対して垂直な方向にずらすことによって、矩形状のレーザビームをL0記録膜22及びL1記録膜32のほぼ全面に照射する。これにより、L0記録膜22及びL1記録膜32を構成する相変化材料は結晶化温度以上の温度に加熱され、その後徐冷されることから、L0記録膜22及びL1記録膜32の実質的に全面が結晶状態、すなわち、未記録状態となる。このような工程は、一般に「初期化工程」と呼ばれる。
かかる初期化工程が完了すると、光記録媒体10が完成する。
このようにして製造された光記録媒体10に対しては、上述の通り、レーザビームのフォーカスをL0記録膜22及びL1記録膜32のいずれかに合わせて記録マークを形成することにより、所望のデジタルデータを記録することができる。また、光記録媒体10のL0記録膜22及び/又はL1記録膜32にデータを記録した後は、上述の通り、レーザビームのフォーカスをL0記録膜22及びL1記録膜32のいずれかに合わせてその反射光量を検出することにより、記録されたデジタルデータを再生することができる。
次に、L0記録膜22に対してデータの記録を行う場合の記録ストラテジ及びL1記録膜32に対してデータの記録を行う場合の記録ストラテジについて詳述する。
図6は、L0記録膜22及びL1記録膜32に対してデータの記録を行う場合の記録ストラテジを示す図であり、(a)は2T信号を形成する場合の記録ストラテジであり、(b)は3T信号を形成する場合の記録ストラテジであり、(c)は4T信号を形成する場合の記録ストラテジであり、(d)は5T信号〜8T信号を形成する場合の記録ストラテジである。
図6(a)〜(d)に示すように、本実施態様では、L0記録膜22及びL1記録膜32に対してデータの記録を行う場合、レーザビームの強度は、記録パワー(Pw)、消去パワー(Pe)及び基底パワー(Pb)からなる3つの強度(3値)に変調される。記録パワー(Pw)の強度としては、照射によってL0記録膜22またはL1記録膜32が溶融するような高いレベルに設定され、L0記録膜22に対する記録においてはPw0に設定され、L1記録膜32に対する記録においてはPw1に設定される。また、消去パワー(Pe)の強度としては、照射によってL0記録膜22またはL1記録膜32が結晶化温度以上の温度に達するようなレベルに設定され、L0記録膜22に対する記録においてはPe0に設定され、L1記録膜32に対する記録においてはPe1に設定される。さらに、基底パワー(Pb)の強度としては、照射されても、溶融しているL0記録膜22またはL1記録膜32が冷却されるような低いレベルに設定され、L0記録膜22に対する記録においてはPb0に設定され、L1記録膜32に対する記録においてはPb1に設定される。
これら記録パワー(Pw0、Pw1)、消去パワー(Pe0、Pe1)及び基底パワー(Pb0、Pb1)の詳細については後述するものとし、単に記録パワー(Pw)、消去パワー(Pe)及び基底パワー(Pb)というときには、L0記録膜22に対する記録にあってはそれぞれ記録パワー(Pw0)、消去パワー(Pe0)及び基底パワー(Pb0)を指し、L1記録膜32に対する記録にあってはそれぞれ記録パワー(Pw1)、消去パワー(Pe1)及び基底パワー(Pb1)を指す。
まず、図6(a)に示すように、L0記録膜22及びL1記録膜32に対して2T信号を形成する場合、レーザビームのパルス数は「1」に設定され、その後、冷却期間Tclが挿入される。レーザビームのパルス数とは、レーザビームの強度が記録パワー(Pw)まで高められた回数によって定義される。また、本明細書においては、レーザビームのパルスのうち、先頭パルスをトップパルス、最終パルスをラストパルス、トップパルスとラストパルスの間に存在するパルスをマルチパルスと定義する。但し、図6(a)に示すように、パルス数が「1」である場合には、当該パルスはトップパルスである。
また、冷却期間Tclにおいては、レーザビームの強度が基底パワー(Pb)に設定される。このように、本明細書においては、レーザビームの強度が基底パワー(Pb)に設定される最後の期間を冷却期間と定義する。したがって、2T信号を形成する場合、レーザビームの強度は、タイミングt11以前においては消去パワー(Pe)に設定され、タイミングt11からタイミングt12までの期間(Ttop)においては記録パワー(Pw)に設定され、タイミングt12からタイミングt13までの期間(Tcl)においては基底パワー(Pb)に設定され、タイミングt13以降においては消去パワー(Pe)に設定される。
また、図6(b)に示すように、L0記録膜22及びL1記録膜32に対して3T信号を形成する場合、レーザビームのパルス数は「2」に設定され、その後、冷却期間Tclが挿入される。したがって、3T信号を形成する場合、レーザビームの強度は、タイミングt21以前においては消去パワー(Pe)に設定され、タイミングt21からタイミングt22までの期間(Ttop)及びタイミングt23からタイミングt24までの期間(Tlp)においては記録パワー(Pw)に設定され、タイミングt22からタイミングt23までの期間(Toff)及びタイミングt24からタイミングt25までの期間(Tcl)においては基底パワー(Pb)に設定され、タイミングt25以降においては消去パワー(Pe)に設定される。
さらに、図6(c)に示すように、L0記録膜22及びL1記録膜32に対して4T信号を形成する場合、レーザビームのパルス数は「3」に設定され、その後、冷却期間Tclが挿入される。したがって、4T信号を形成する場合、レーザビームの強度は、タイミングt31以前においては消去パワー(Pe)に設定され、タイミングt31からタイミングt32までの期間(Ttop)、タイミングt33からタイミングt34までの期間(Tmp)及びタイミングt35からタイミングt36までの期間(Tlp)においては記録パワー(Pw)に設定され、タイミングt32からタイミングt33までの期間(Toff)、タイミングt34からタイミングt35までの期間(Toff)及びタイミングt36からタイミングt37までの期間(Tcl)においては基底パワー(Pb)に設定され、タイミングt37以降においては消去パワー(Pe)に設定される。
そして、図6(d)に示すように、L0記録膜22及びL1記録膜32に対して5T信号〜8T信号を形成する場合、レーザビームのパルス数はそれぞれ「4」〜「7」に設定され、その後、冷却期間Tclが挿入される。したがって、マルチパルスの数は、5T信号〜8T信号を形成する場合それぞれ「2」〜「5」に設定される。この場合も、Ttop(タイミングt41からタイミングt42までの期間)、Tmp(タイミングt43からタイミングt44までの期間、タイミングt45からタイミングt46までの期間等)及びTlpの期間(タイミングt47からタイミングt48までの期間)においては記録パワー(Pw)に設定され、オフ期間Toff(タイミングt42からタイミングt43までの期間、タイミングt46からタイミングt47までの期間等)及び冷却期間Tcl(タイミングt48からタイミングt49までの期間)においては基底パワー(Pb)に設定され、その他の期間においては消去パワー(Pe)に設定される。
以上により、記録信号(2T信号〜8T信号)を形成すべき領域においては、記録パワー(Pw)をもつレーザビームの照射によって溶融したL0記録膜22またはL1記録膜32が冷却期間Tclにおいて急冷され、アモルファス状態となる。一方、その他の領域においては、消去パワー(Pe)をもつレーザビームの照射によってL0記録膜22またはL1記録膜32が結晶化温度以上の温度に加熱され、その後レーザビームが遠ざかるにことによって徐冷され、結晶状態となる。
ここで、L0記録膜22に対する記録の場合、トップパルスのパルス幅Ttop、マルチパルスのパルス幅Tmp、ラストパルスのパルス幅Tlp及び冷却期間Tclは、いずれの記録信号(2T〜8T)を形成する場合においてもそれぞれ一定に設定される。以下、L0記録膜22への記録を行う場合のトップパルスのパルス幅、マルチパルスのパルス幅、ラストパルスのパルス幅及び冷却期間をそれぞれTtop0、Tmp0、Tlp0及びTcl0と呼ぶ。同様に、L1記録膜32に対する記録の場合も、トップパルスのパルス幅Ttop、マルチパルスのパルス幅Tmp、ラストパルスのパルス幅Tlp及び冷却期間Tclは、いずれの記録信号(2T〜8T)を形成する場合においてもそれぞれ一定に設定され、以下、L1記録膜32への記録を行う場合のトップパルスのパルス幅、マルチパルスのパルス幅、ラストパルスのパルス幅及び冷却期間をそれぞれTtop1、Tmp1、Tlp1及びTcl1と呼ぶ。但し、単にTtop、Tmp、Tlp及びTclというときには、L0記録膜22に対する記録にあってはそれぞれTtop0、Tmp0、Tlp0及びTcl0を指し、L1記録膜32に対する記録にあってはそれぞれTtop1、Tmp1、Tlp1及びTcl1を指す。
上述のとおり、L0層20には反射膜が設けられないか、設けられる場合であってもその膜厚が非常に薄く(3〜15nm程度)設定される一方、L1層30には厚さが20〜200nmの反射膜34が設けられることから、L0層20はL1層に比べて放熱性が低く、再結晶化現象が起きやすい。
この点を考慮して、本実施態様においては、L0層20における再結晶化現象を防止すべく、L0記録膜22に対して記録を行う場合の記録パワー(Pw0)と消去パワー(Pe0)の比(Pe0/Pw0)を、L1記録膜32に対して記録を行う場合の記録パワー(Pw1)と消去パワー(Pe1)の比(Pe1/Pw1)よりも小さく設定することによって、冷却効果の低いL0層20における熱干渉を緩和し、再結晶化現象を抑制している。この場合、Pe1/Pw1に対してPe0/Pw0を小さく設定しすぎると、L0記録膜22における消去率が低下してしまう一方で、Pe0/Pw0をPe1/Pw1に近い値に設定すると、熱干渉が十分に緩和されず、再結晶化現象が発生してしまう。これらを考慮すれば、Pe0/Pw0を、Pe1/Pw1に対して0.38〜0.66倍程度に設定することが好ましく、0.44〜0.55倍程度に設定することがより好ましく、0.50倍程度に設定することが特に好ましい。Pe0/Pw0とPe1/Pw1との関係をかかる範囲に設定すれば、消去率を実用上問題のないレベルとすることができるとともに、熱干渉を効果的に緩和することが可能となる。
但し、L1記録膜32に対して記録を行う場合、レーザビームはL0層20を介してL1記録膜32に照射されることから、L1記録膜32に到達するレーザビームはかなり減衰してしまう。したがって、L1記録膜32を十分に溶融させるためには、記録パワー(Pw1)のレベルとして、L0記録膜22に対して記録を行う場合に用いる記録パワー(Pw0)よりも高く設定する必要がある(Pw0<Pw1)。
また、本実施態様においては、L0層20における再結晶化現象を防止すべく、L0記録膜22に対して記録を行う場合のトップパルスのパルス幅Ttop0を、L1記録膜32に対して記録を行う場合のトップパルスのパルス幅Ttop1よりも短く設定することによって、冷却効果の低いL0層20における熱干渉をさらに緩和し、再結晶化現象をより効果的に抑制している。この場合、Ttop1に比べてTtop0を短く設定しすぎると、L0記録膜22が融点に達しないおそれがある一方で、Ttop0をTtop1に近い長さに設定すると、熱干渉が十分に緩和されず、再結晶化現象が発生してしまう。これらを考慮すれば、Ttop0を、Ttop1に対して0.40〜0.75倍程度に設定することが好ましく、0.49〜0.55倍程度に設定することがより好ましく、0.55倍程度に設定することが特に好ましい。Ttop0とTtop1との関係をかかる範囲に設定すれば、L0記録膜22を融点以上の温度に十分加熱することができるとともに、熱干渉を効果的に緩和することが可能となる。尚、Tlp0及びTlp1については、それぞれTtop0及びTtop1と同じ長さに設定すればよい。
さらに、本実施態様においては、L0層20における再結晶化現象を防止すべく、L0記録膜22に対して記録を行う場合のマルチパルスのパルス幅Tmp0を、L1記録膜32に対して記録を行う場合のマルチパルスのパルス幅Tmp1よりも短く設定することによって、冷却効果の低いL0層20における熱干渉をさらに緩和し、再結晶化現象をより効果的に抑制している。この場合、Tmp1に比べてTmp0を短く設定しすぎると、L0記録膜22が融点に達しないおそれがある一方で、Tmp0をTmp1に近い長さに設定すると、熱干渉が十分に緩和されず、再結晶化現象が発生してしまう。これらを考慮すれば、Tmp0を、Tmp1に対して0.48〜0.58倍程度に設定することが好ましく、0.50〜0.53倍程度に設定することがより好ましく、0.50倍程度に設定することが特に好ましい。Tmp0とTmp1との関係をかかる範囲に設定すれば、L0記録膜22を融点以上の温度に十分加熱することができるとともに、熱干渉を効果的に緩和することが可能となる。
さらに、本実施態様においては、L0層20における再結晶化現象を防止すべく、L0記録膜22に対して記録を行う場合の冷却期間Tcl0を、L1記録膜32に対して記録を行う場合の冷却期間Tcl1よりも長く設定することによって、冷却効果の低いL0層20における熱干渉をさらに緩和し、再結晶化現象をより効果的に抑制している。この場合、Tcl1に比べてTcl0を長く設定しすぎると、L0記録膜22における消去率が低下してしまう一方で、Tcl0をTcl1に近い長さに設定すると、熱干渉が十分に緩和されず、再結晶化現象が発生してしまう。これらを考慮すれば、Tcl0をTcl1に対して1.25〜2.00倍程度に設定することが好ましく、1.25〜1.50倍程度に設定することがより好ましく、1.25倍程度に設定することが特に好ましい。Tcl0とTcl1との関係をかかる範囲に設定すれば、消去率を実用上問題のないレベルとすることができるとともに、熱干渉を効果的に緩和することが可能となる。
以上説明したL0層20及びL1層30にそれぞれ対応する記録ストラテジを特定するための情報は、「記録条件設定情報」として当該光記録媒体10内に保存しておくことが好ましい。このような記録条件設定情報を光記録媒体10内に保存しておけば、ユーザが実際にデータの記録を行う際に、情報記録装置によりかかる記録条件設定情報が読み出され、これに基づいて記録ストラテジを決定することが可能となる。したがって、例えば、ユーザがL0層20に対するデータの記録を指示した場合には、情報記録装置は記録パワー、消去パワー及び基底パワーをそれぞれPw0、Pe0及びPb0に設定するとともにトップパルスのパルス幅、マルチパルスのパルス幅、ラストパルスのパルス幅及び冷却期間をそれぞれTtop0、Tmp0、Tlp0及びTcl0に設定してデータの記録を行い、ユーザがL1層30に対するデータの記録を指示した場合には、情報記録装置は記録パワー、消去パワー及び基底パワーをそれぞれPw1、Pe1及びPb1に設定するとともにトップパルスのパルス幅、マルチパルスのパルス幅、ラストパルスのパルス幅及び冷却期間をそれぞれTtop1、Tmp1、Tlp1及びTcl1に設定してデータの記録を行う。
記録条件設定情報としては、L0層20及びL1層30にそれぞれ対応する記録ストラテジのみならず、光記録媒体10に対してデータの記録を行う場合に必要な各種条件(記録線速度等)を特定するために必要な情報を含んでいることがより好ましい。記録条件設定情報は、ウォブルやプレピットとして記録されたものでもよく、L0記録膜22及び/又はL1記録膜32にデータとして記録されたものでもよい。また、データの記録に必要な各条件を直接的に示すもののみならず、情報記録装置内にあらかじめ格納されている各種条件のいずれかを指定することにより記録ストラテジの特定を間接的に行うものであっても構わない。
図7は、光記録媒体10に対してデータの記録を行うための情報記録装置50の主要部を概略的に示す図である。
情報記録装置50は、図7に示すように光記録媒体10を回転させるためのスピンドルモータ52と、光記録媒体10にレーザビームを照射するとともにその反射光を受光するヘッド53と、スピンドルモータ52及びヘッド53の動作を制御するコントローラ54と、ヘッド53にレーザ駆動信号を供給するレーザ駆動回路55と、ヘッド53にレンズ駆動信号を供給するレンズ駆動回路56とを備えている。
さらに、図7に示すように、コントローラ54にはフォーカスサーボ追従回路57、トラッキングサーボ追従回路58及びレーザコントロール回路59が含まれている。フォーカスサーボ追従回路57が活性化すると、回転している光記録媒体10の記録面にフォーカスがかかった状態となり、トラッキングサーボ追従回路58が活性化すると、光記録媒体10の偏芯している信号トラックに対して、レーザビームのスポットが自動追従状態となる。フォーカスサーボ追従回路57及びトラッキングサーボ追従回路58には、フォーカスゲインを自動調整するためのオートゲインコントロール機能及びトラッキングゲインを自動調整するためのオートゲインコントロール機能がそれぞれ備えられている。また、レーザコントロール回路59は、レーザ駆動回路55により供給されるレーザ駆動信号を生成する回路であり、光記録媒体10に記録されている記録条件設定情報に基づいて、適切なレーザ駆動信号の生成を行う。
尚、これらフォーカスサーボ追従回路57、トラッキングサーボ追従回路58及びレーザコントロール回路59については、コントローラ54内に組み込まれた回路である必要はなく、コントローラ54と別個の部品であっても構わない。さらに、これらは物理的な回路である必要はなく、コントローラ54内で実行されるソフトウェアであっても構わない。
このような構成からなる情報記録装置50を用いて本実施態様にかかる光記録媒体10に対するデータの記録を行う場合、上述のとおり、光記録媒体10に記録されている記録条件設定情報が読み出され、これに基づいて記録ストラテジが決定される。したがって、情報記録装置50は、L0層20に対してデータの記録を行う場合、読み出された記録条件設定情報に基づき、記録パワー、消去パワー及び基底パワーをそれぞれPw0、Pe0及びPb0に設定するとともにトップパルスのパルス幅、マルチパルスのパルス幅、ラストパルスのパルス幅及び冷却期間をそれぞれTtop0、Tmp0、Tlp0及びTcl0に設定してデータの記録を行い、L1層30に対してデータの記録を行う場合、読み出された記録条件設定情報に基づき、記録パワー、消去パワー及び基底パワーをそれぞれPw1、Pe1及びPb1に設定するとともにトップパルスのパルス幅、マルチパルスのパルス幅、ラストパルスのパルス幅及び冷却期間をそれぞれTtop1、Tmp1、Tlp1及びTcl1に設定してデータの記録を行う。
以上説明したように、本実施態様においては、光入射面13aに近いL0層20に対してデータの記録を行う場合、レーザビームの記録パワーと消去パワーとの比(Pe0/Pw0)を光入射面13aから遠いL1層30に対してデータの記録を行う場合の当該比(Pe1/Pw1)よりも小さく設定していることから、冷却効果の低いL0層20における熱干渉を緩和し、再結晶化現象を抑制することが可能となる。
また、本実施態様においては、光入射面13aに近いL0層20に対してデータの記録を行う場合、トップパルスのパルス幅Ttop0、マルチパルスのパルス幅Tmp0及びラストパルスのパルス幅Tlp0を、光入射面13aから遠いL1層30に対してデータの記録を行う場合のこれら幅Ttop1、Tmp1及びTlp1よりも短く設定するとともに、L0層20に対してデータの記録を行う場合の冷却期間Tcl0をL1層30に対してデータの記録を行う場合の冷却期間Tcl1よりも長く設定していることから、冷却効果の低いL0層20における熱干渉を緩和し、再結晶化現象を抑制することが可能となる。
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。
光記録媒体10の作製
まず、図2に示したスタンパ40を用いたポリカーボネートの射出成形を行い、これによって、グルーブ11aの深さ及びピッチがそれぞれ34nm及び0.32μmであり、厚さが1.1mmである基体11を作成した。
次に、基体11をスパッタリング装置(図示せず)内に搬入し、基体11のうちグルーブ11a及びランド11bが形成されている面のほぼ全面にAg合金、ZnS−SiO2(80:20)、AgSbTeGe及びZnS−SiO2(80:20)をこの順でスパッタリングすることによって、それぞれ厚さが100nm、15nm、12nm及び80nmである反射膜34、第4の誘電体膜33、L1記録膜32及び第3の誘電体膜31(L1層30)を成膜した。
次に、L1層30が形成された基体11をスパッタリング装置から搬出した後、第3の誘電体膜31上に紫外線硬化性アクリル樹脂をスピンコートした。そして、スピンコートした紫外線硬化性アクリル樹脂の表面に、図4に示したスタンパ41を被せた状態でスタンパ41を介して紫外線を照射した。これにより、グルーブ12aの深さ及びピッチがそれぞれ34nm及び0.32μmであり、厚さが20μmである中間層12を形成した。
次に、L1層30及び中間層12が形成された基体11をスパッタリング装置内に搬入し、グルーブ12a及びランド12bが形成されている中間層12のほぼ全面にAl2O3、SbTe及びZnS−SiO2(80:20)をこの順でスパッタリングすることによって、それぞれ厚さが70nm、8nm及び60nmである第2の誘電体膜23、L0記録膜22及び第1の誘電体膜21(L0層20)を成膜した。
次に、L1層30、中間層12及びL0層20が形成された基体11をスパッタリング装置から搬出した後、第1の誘電体膜21上に紫外線硬化性アクリル樹脂をスピンコートし、紫外線を照射することによって、厚さが100μmである光透過層13を形成した。これにより光記録媒体前駆体が完成した。
そして、かかる光記録媒体前駆体をレーザ照射装置の回転テーブル(図示せず)に載置し、回転させながらトラックに沿った方向における長さが短く、且つ、トラックに垂直な方向における長さが長い矩形状のレーザビームを連続的に照射し、光記録媒体前駆体が1回転するごとに照射位置をトラックに対して垂直な方向にずらすことによって、L0記録膜22及びL1記録膜32の実質的に全面を結晶状態に初期化した。これにより本実施例で用いる光記録媒体10が完成した。
レーザパワーの設定
このようにして作製された光記録媒体10のL0記録膜22及びL1記録膜32に対し、記録パワー(Pw)及び消去パワー(Pe)を種々に変えて記録を行い、形成された記録マークのジッタを測定した。ジッタは、タイムインターバルアナライザによりクロックジッタを測定し、その再生信号の「ゆらぎ(σ)」を求め、ウィンドウ幅をTwとして、
σ/Tw(%)
により算出した。記録においては、クロック周波数を65.7MHzに設定し(T=15.2nsec)、記録線速度を5.7m/secに設定して、(1,7)RLLの変調方式により混合信号の形成を行った。記録に用いたレーザビームの波長は405nmであり、レーザビームを集束するための対物レンズの開口数は0.85である。
また、L0記録膜22への記録においては、Ttop0、Tmp0、Tlp0及びTcl0をそれぞれ0.2T、0.2T、0.2T及び1.0Tに設定し、L1記録膜32への記録においては、Ttop1、Tmp1、Tlp1及びTcl1をそれぞれ0.4T、0.4T、0.5T及び0.8Tに設定した。
L0記録膜22についての測定結果を表1に示す。
表1に示すように、L0記録膜22への記録においては、記録パワー(Pw0)が4.5mW〜5.0mWであり、消去パワー(Pe0)が1.3mW〜1.5mWである場合に良好なジッタが得られている。尚、記録パワー(Pw0)及び消去パワー(Pe0)の値は、レーザビームを照射した際の盤面における値である(以下に示す基底パワー(Pb0)の値も同様)。これにより、L0記録膜22への記録においては、記録パワー(Pw0)と消去パワー(Pe0)との比(Pe0/Pw0)が0.26〜0.33程度である場合に良好なジッタが得られることが分かった。
図8は、記録パワー(Pw0)と消去パワー(Pe0)との比(Pe0/Pw0)とジッタとの関係を示すグラフである。図8からは、記録パワー(Pw0)と消去パワー(Pe0)との比(Pe0/Pw0)が0.26〜0.33程度である場合に良好なジッタが得られていることがより明確に確認できる。また、図8を参照すれば、Pe0/Pw0が0.30程度である場合に、非常に良好なジッタが得られていることが確認できる。
L1記録膜32についての測定結果を表2に示す。
表2に示すように、L1記録膜32への記録においては、記録パワー(Pw1)が9.5mW〜10.0mWであり、消去パワー(Pe1)が5.0mW〜6.5mWである場合に良好なジッタが得られている。尚、記録パワー(Pw1)及び消去パワー(Pe1)の値は、レーザビームを照射した際の盤面における値である(以下に示す基底パワー(Pb1)の値も同様)。これにより、L1記録膜32への記録においては、記録パワー(Pw1)と消去パワー(Pe1)との比(Pe1/Pw1)が0.50〜0.68程度である場合に良好なジッタが得られることが分かった。
図9は、記録パワー(Pw1)と消去パワー(Pe1)との比(Pe1/Pw1)とジッタとの関係を示すグラフである。図9からは、記録パワー(Pw1)と消去パワー(Pe1)との比(Pe1/Pw1)が0.50〜0.68程度である場合に良好なジッタが得られていることがより明確に確認できる。また、図9を参照すれば、Pe1/Pw1が0.60程度である場合に、非常に良好なジッタが得られていることが確認できる。
以上より、Pe0/Pw0を、Pe1/Pw1に対して0.38〜0.66倍程度に設定することが好ましく、0.44〜0.55倍程度に設定することがより好ましく、0.50倍程度に設定することが特に好ましいことが分かった。
パルス幅の設定
次に、上述のようにして作製された光記録媒体10のL0記録膜22及びL1記録膜32に対し、トップパルスのパルス幅Ttop、マルチパルスのパルス幅Tmp、ラストパルスのパルス幅Tlp及び冷却期間Tclを種々に変えて記録を行い、形成された記録マークのジッタを測定した。但し、本実施例では、トップパルスのパルス幅Ttopとラストパルスのパルス幅Tlpとを同じ長さに設定していることから、以下の記載において、トップパルスのパルス幅Ttopとは、ラストパルスのパルス幅Tlpをも指す。記録においては、上述したレーザパワーの設定時と同様、クロック周波数を65.7MHzに設定し(T=15.2nsec)、記録線速度を5.7m/secに設定して、(1,7)RLLの変調方式により混合信号の形成を行った。記録に用いたレーザビームの波長は405nmであり、レーザビームを集束するための対物レンズの開口数は0.85である。
また、L0記録膜22への記録においては記録パワー(Pw0)、消去パワー(Pe0)及び基底パワー(Pb0)をそれぞれ5.0mW、1.5mW及び0.1mWに固定し、L1記録膜32への記録においては記録パワー(Pw1)、消去パワー(Pe1)及び基底パワー(Pb1)をそれぞれ10.0mW、6.0mW及び0.1mWに固定した。
測定においては、まず、トップパルスのパルス幅Ttop及びマルチパルスのパルス幅Tmpを同じ長さに設定してこれを種々の長さに変化させる一方で、冷却期間Tclの長さを固定して記録を行い、形成された記録マークのジッタを測定した。
L0記録膜22についての測定結果を表3に、L1記録膜32についての測定結果を表4に示す。
表3に示すように、L0記録膜22への記録においては、トップパルスのパルス幅Ttop0及びマルチパルスのパルス幅Tmp0が0.20Tである場合に最も良好なジッタが得られている。また、表4に示すように、L1記録膜32への記録においては、トップパルスのパルス幅Ttop1及びマルチパルスのパルス幅Tmp1が0.40Tである場合に最も良好なジッタが得られている。
次に、トップパルスのパルス幅Ttop及びマルチパルスのパルス幅Tmpの一方を、上述のようにして得られたパルス幅(L0記録膜22については0.20T、L1記録膜32については0.40T)に固定し、他方を変化させて記録を行い、形成された記録マークのジッタを測定した。
L0記録膜22についての測定結果を表5に、L1記録膜32についての測定結果を表6に示す。
表5に示すように、L0記録膜22への記録においては、トップパルスのパルス幅Ttop0を0.20Tに固定した場合には、マルチパルスのパルス幅Tmp0が0.20T〜0.22Tである場合に良好なジッタが得られ、0.20Tである場合に最も良好なジッタが得られている。また、マルチパルスのパルス幅Tmp0を0.20Tに固定した場合には、トップパルスのパルス幅Ttop0が0.18T〜0.30Tである場合に良好なジッタが得られ、0.22Tである場合に最も良好なジッタが得られている。また、表6に示すように、L1記録膜32への記録においては、トップパルスのパルス幅Ttop1を0.40Tに固定した場合には、マルチパルスのパルス幅Tmp1が0.38T〜0.42Tである場合に良好なジッタが得られ、0.40Tである場合に最も良好なジッタが得られている。また、マルチパルスのパルス幅Tmp1を0.40Tに固定した場合には、トップパルスのパルス幅Ttop1が0.40T〜0.45Tである場合に良好なジッタが得られ、0.40Tである場合に最も良好なジッタが得られている。
次に、トップパルスのパルス幅Ttop及びマルチパルスのパルス幅Tmpを、上述のようにして得られた最適パルス幅(L0記録膜22についてはそれぞれ0.22T及び0.20T、L1記録膜32についてはいずれも0.40T)に固定し、冷却期間Tclを変化させて記録を行い、形成された記録マークのジッタを測定した。
L0記録膜22についての測定結果を表7に、L1記録膜32についての測定結果を表8に示す。
表7に示すように、L0記録膜22への記録においては、冷却期間Tcl0が1.0T〜1.2Tである場合に良好なジッタが得られ、1.0Tである場合に最も良好なジッタが得られている。また、表8に示すように、L1記録膜32への記録においては、冷却期間Tcl1が0.6T〜0.8Tである場合に良好なジッタが得られ、0.8Tである場合に最も良好なジッタが得られている。
このように、L0記録膜22への記録においては、トップパルスのパルス幅Ttop0(=Tlp0)を0.18T〜0.30T、特に0.22Tに設定し、マルチパルスのパルス幅Tmp0を0.20T〜0.22T、特に0.20Tに設定し、冷却期間Tcl0を1.0T〜1.2T、特に1.0Tに設定することにより、良好なジッタが得られることが分かった。また、L1記録膜32への記録においては、トップパルスのパルス幅Ttop1(=Tlp1)を0.40T〜0.45T、特に0.40Tに設定し、マルチパルスのパルス幅Tmp0を0.38T〜0.42T、特に0.40Tに設定し、冷却期間Tcl0を0.6T〜0.8T、特に0.8Tに設定することにより、良好なジッタが得られることが分かった。
以上より、Ttop0(及びTlp0)をTtop1(及びTlp1)に対して0.40〜0.75倍程度に設定することが好ましく、0.49〜0.55倍程度に設定することがより好ましく、0.55倍程度に設定することが特に好ましいことが分かった。また、Tmp0をTmp1に対して0.48〜0.58倍程度に設定することが好ましく、0.50〜0.53倍程度に設定することがより好ましく、0.50倍程度に設定することが特に好ましいことが分かった。さらに、Tcl0をTcl1に対して1.25〜2.00倍程度に設定することが好ましく、1.25〜1.50倍程度に設定することがより好ましく、1.25倍程度に設定することが特に好ましいことが分かった。
本発明は、以上の実施態様に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
例えば、上記実施態様においては、光記録媒体10が2つの記録層(L0層20、L1層30)を備えている場合を例に説明したが、本発明の対象が記録層を2層のみ有する光記録媒体に限定されるものではなく、3層以上の記録層を有する光記録媒体に適用することも可能である。
この場合、レーザパワーの設定に関しては、光入射面13aから最も遠い記録層についてのPe/Pwに対して、その他の記録層のPe/Pwを小さく(0.38〜0.66倍程度)に設定すればよく、光入射面13aに近い記録層ほど、Pe/Pwが段階的に小さくなるように設定することが好ましい。また、パルス幅の設定に関しては、光入射面13aから最も遠い記録層についてのTtopに対してその他の記録層のTtop(及びTlp)を短く(0.40〜0.75倍程度)に設定し、光入射面13aから最も遠い記録層についてのTmpに対してその他の記録層のTmpを短く(0.48〜0.58倍程度)に設定し、光入射面13aから最も遠い記録層についてのTclに対してその他の記録層のTclを長く(1.25〜2.00倍程度)に設定すればよく、光入射面13aに近い記録層ほど、Ttop(及びTlp)及びTmpが段階的に短くなり、Tclが段階的に長くなるように設定することが好ましい。