しかしながら、前述した従来の製造方法により磁気ヘッドを製造すると、ラッピング後のバー内の各磁気抵抗効果素子のMRハイトのばらつきを十分に抑えることが困難であり、その結果、歩留りが低下するという問題が生じていた。この問題は、大容量小型化及び高記録密度化に伴いMRハイトを小さくするほど、顕著になってしまう。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ラッピング後のMRハイトのばらつきを抑えることができ、これにより歩留りを向上させることができる、磁気抵抗効果素子の製造方法及び磁気ヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、このような製造方法などに用いることができるレジストパターン形成方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、歩留り良く製造された磁気ヘッドを用いることで、安価なヘッドサスペンションアセンブリ及び磁気ディスク装置を提供することを目的とする。
本発明者の研究の結果、前述した従来の製造方法では、前記パターニング工程における前記レジストパターン形成工程でのレジスト露光方法に起因して、ラッピング後のバー内の各磁気抵抗効果素子のMRハイトのばらつきを十分に抑えることが困難となっていることが、判明した。この点について、以下に説明する。
前述したMR−ELGオフセットの値(例えば、0.5μm)が、ラッピングを行う際のバー内でばらついてしまうと、ラッピングの基準となるMR−ELGオフセットの値が変わってしまうため、バー内の各磁気抵抗効果素子のMRハイトばらつきを抑えることが困難となる。
前述したように、初期ELGハイトは初期MRハイトに比べて非常に大きく(例えば、桁違いに大きく)設定されている。例えば、初期MRハイトは0.5μm、ELGハイトは20μmに設定される。したがって、前記レジストパターン形成工程で形成される第1のレジストパターン(初期MRハイトを規定するレジストパターン)及び第2のレジストパターン(初期ELGハイトを規定するレジストパターン)の素子高さ方向のパターン幅の寸法は、一桁以上異なる。
前記レジストパターン形成段階では、1回の露光で前記第1及び第2のレジストパターンを形成するので、第1のレジストパターンに対応する露光パターン(露光領域)と第2のレジストパターンに対応する露光パターン(露光領域)とが同時に露光され、両露光パターンの素子高さ方向のパターン幅の寸法は、一桁以上異なる。
一般に、フォトリソグラフィでは、露光条件を設定することにより1種類の寸法をデザイン値に対して精度良く露光することは可能であるが、いかに露光条件を設定しても、このように一桁以上違う寸法の各露光パターンをそれぞれデザイン値に対して同時に精度良く露光することは困難である。
したがって、初期MRハイトの値及び初期ELGハイトの値がそれぞれ比較的大きくばらつかざるを得ない。初期MRハイトの値及び初期ELGハイトの値がそれぞれ比較的大きくばらつくということは、初期MRハイトの端部の位置及び初期ELGハイトの端部の位置がそれぞれ比較的大きくばらつくことを意味し、ひいては、MR−ELGオフセットが比較的大きくばらつくことを意味する。
このため、前述した従来の製造方法では、前記パターニング工程における前記レジストパターン形成工程でのレジスト露光方法に起因して、ラッピング後のバー内の各磁気抵抗効果素子のMRハイトのばらつきを十分に抑えることが困難であったのである。
以上の説明では、前記レジストパターン形成工程で露光源として光を用いるフォトリソグラフィを採用する例を挙げたが、露光源としてX線を用いるリソグラフィや、露光源として電子ビームを用いたマスク方式によるリソグラフィなどの、他の種々のリソグラフィを採用する場合も同様である。
本発明者は、前述したような原因究明の結果、前記パターニング工程における前記レジストパターン形成工程でのレジスト露光方法を、以下に述べるような複数回露光に改変することで、MR−ELGオフセットのばらつきを低減することができ、ひいてはラッピング後のMRハイトのばらつきを抑えることができることを見出した。
本発明は、このような本発明者による新たな知見に基づいてなされたものである。すなわち、前記課題を解決するため、本発明の第1の態様による磁気抵抗効果素子の製造方法は、ラッピング前の前記磁気抵抗効果素子の素子高さである第1の初期素子高さ及びラッピング前のELG素子の素子高さである第2の初期素子高さを決定するように、基体上に形成された磁気抵抗効果膜の少なくとも一部の層及び前記ELG素子のセンサ膜をパターニングするパターニング工程を備えたものである。そして、前記第2の初期素子高さは、前記第1の初期素子高さより大きい。前記パターニング工程は、前記第1の初期素子高さを規定する第1のレジストパターン、及び、前記第2の初期素子高さを規定する第2のレジストパターンを形成するレジストパターン形成段階を含む。前記レジストパターン形成段階は、ネガレジスト又は画像反転レジストを塗布する段階と、前記レジストを複数回露光する露光段階と、前記露光段階おいて各回で露光された領域の論理和領域(少なくとも1回露光された領域の全体の領域)の前記レジストを残して他の領域の前記レジストを除去することで、前記第1及び第2のレジストパターンを形成する段階と、を含む。前記露光段階において所定の回の露光は、1つ以上の孤立した領域に対して一括して行われる。前記1つ以上の孤立した領域のうちの1つの領域が、前記第2のレジストパターンの領域の一部をなす第1の部分領域である。前記第1の部分領域は、素子高さ方向のラッピング面側とは反対側の前記センサ膜の端縁を規定するが素子高さ方向のラッピング面側の前記センサ膜の端縁を規定しない領域である。
なお、前記レジストパターン形成段階では、露光源として光(紫外線等を含む)を用いるフォトリソグラフィの他、露光源としてX線を用いるリソグラフィや、露光源として電子ビームを用いたマスク方式によるリソグラフィなどの、他の種々のリソグラフィを採用することができる。この点は、後述する各態様についても同様である。
前記第1の態様によれば、ネガレジスト又は画像反転レジストが用いられ、前記露光段階として複数回露光が採用され、所定の回の露光が、1つ以上の孤立領域(すなわち、1つ以上の露光パターン)に対して一括して行われる。そして、この1つ以上の孤立領域のうちの1つの孤立領域(1つの露光パターン)が前記第1の部分領域である。
したがって、前記所定の回の露光が前記第1の部分領域のみに対してのみ行われる場合には、前記第1の部分領域の素子高さ方向の寸法に合わせて露光条件を設定することで、前記第1の部分領域の素子高さ方向の寸法をデザイン値に対して精度良く露光することができ、これにより、MR−ELGオフセットのばらつきを低減することができる。
また、前記所定の回の露光が、前記第1の部分領域のみならず、例えば、後述する第2の態様のように前記第1のレジストパターンの領域の全体又は一部をなす領域に対して同時に行われる場合であっても、同時に露光される各露光領域の素子高さ方向の寸法差を小さくすることができる。したがって、この場合には、前記第1の部分領域の素子高さ方向の幅のばらつき及び前記第1のレジストパターンの領域の全体又は一部をなす領域の素子高さ方向の幅のばらつきを低減することができ、これにより、MR−ELGオフセットのばらつきを低減することができる。
このように、前記第1の態様によれば、MR−ELGオフセットのばらつきを低減することができるので、ラッピング後のMRハイトのばらつきを抑えることができ、これにより歩留りを向上させることができる。
本発明の第2の態様による磁気抵抗効果素子の製造方法は、前記第1の態様において、前記1つ以上の孤立した領域のうちの他の1つの領域が、前記第1のレジストパターンの領域の全体又は一部をなすとともに素子高さ方向のラッピング面とは反対側の前記磁気抵抗効果素子の端縁を規定する領域であるものである。
この第2の態様によれば、既に説明したように、前記第1の部分領域の素子高さ方向の幅のばらつき及び前記第1のレジストパターンの領域の全体又は一部をなす領域の素子高さ方向の幅のばらつきを低減することができ、これにより、MR−ELGオフセットのばらつきを低減することができる。また、前記第1の部分領域と、前記第1のレジストパターンの領域の全体又は一部をなす領域とが、同時に露光されるので、露光マスクの交換等に伴うMR−ELGオフセットのばらつきも低減することができる。
本発明の第3の態様による磁気抵抗効果素子の製造方法は、前記第1又は第2の態様において、前記第1の部分領域における素子高さ方向のラッピング面側とは反対側の前記センサ膜の端縁を規定する部分の、素子高さ方向の幅は、前記第2の初期素子高さの半分以下の寸法を有するものである。この第3の態様によれば、MR−ELGオフセットのばらつきをより低減することができる。
本発明の第4の態様による磁気抵抗効果素子の製造方法は、前記第1乃至第3のいずれかの態様において、前記第1の部分領域における素子高さ方向のラッピング面側とは反対側の前記センサ膜の端縁を規定する部分の、素子高さ方向の幅は、前記第1の初期素子高さと略同じ寸法を有するものである。この第4の態様によれば、MR−ELGオフセットのばらつきをより一層低減することができる。
本発明の第5の態様による磁気抵抗効果素子の製造方法は、前記第1乃至第4のいずれかの態様において、前記1つ以上の孤立した領域のうちの他の1つの領域が、前記第2のレジストパターンの領域の一部をなす第2の部分領域であり、前記第2の部分領域は、素子高さ方向のラッピング面側の前記センサ膜の端縁を規定するが素子高さ方向のラッピング面側とは反対側の前記センサ膜の端縁を規定しない領域であるものである。
この第5の態様によれば、素子高さ方向のラッピング面側のセンサ膜の端縁の位置のばらつきを低減することができ、ひいてはラッピング前のELG素子の初期抵抗値のばらつきを低減することができる。
本発明の第6の態様による磁気抵抗効果素子の製造方法は、前記第1乃至第5のいずれかの態様において、前記第2の部分領域における素子高さ方向のラッピング面側の前記センサ膜の端縁を規定する部分の、素子高さ方向の幅は、前記第1の初期素子高さと略同じ寸法を有するものである。
この第6の態様によれば、素子高さ方向のラッピング面側のセンサ膜の端縁の位置のばらつきをより低減することができ、ひいてはラッピング前のELG素子の初期抵抗値のばらつきをより低減することができる。
本発明の第7の態様による磁気抵抗効果素子の製造方法は、前記第1乃至第6のいずれかの態様において、前記センサ膜は、前記磁気抵抗効果膜の少なくとも一部の層を含むものである。
この第7の態様は、ELG素子のセンサ膜として、磁気抵抗効果素子の磁気抵抗効果膜と同様の構造の磁気抵抗効果膜が用いる例を挙げたものである。もっとも、前記第1乃至第6の態様では、例えば前記特許文献1と同様に、ELG素子のセンサ膜として例えば、他の構成の抵抗膜を用いてもよい。
本発明の第8の態様による磁気ヘッドの製造方法は、磁気抵抗効果膜を含む磁気抵抗効果素子を備えた磁気ヘッドの製造方法であって、ラッピング前の前記磁気抵抗効果素子の素子高さである第1の初期素子高さ及びラッピング前のELG素子の素子高さである第2の初期素子高さを決定するように、ウエハ上に形成された磁気抵抗効果膜の少なくとも一部の層及び前記ELG素子のセンサ膜をパターニングするパターニング工程と、前記パターニング工程を経た前記ウエハから、前記磁気抵抗効果素子及び前記ELG素子を含むバー状構造体を切り出す工程と、前記磁気抵抗効果素子の素子高さが所望の寸法となるように、前記ELG素子の抵抗値をモニタしながら前記バー状構造体の所定の面をラッピングするラッピング工程と、を備えたものである。そして、前記第2の初期素子高さは、前記第1の初期素子高さより大きい。前記パターニング工程は、前記第1の初期素子高さを規定する第1のレジストパターン、及び、前記第2の初期素子高さを規定する第2のレジストパターンを形成するレジストパターン形成段階を含む。前記レジストパターン形成段階は、ネガレジスト又は画像反転レジストを塗布する段階と、前記レジストを複数回露光する露光段階と、前記露光段階おいて各回で露光された領域の論理和領域の前記レジストを残して他の領域の前記レジストを除去することで、前記第1及び第2のレジストパターンを形成する段階と、を含む。前記露光段階において所定の回の露光は、1つ以上の孤立した領域に対して一括して行わる。前記1つ以上の孤立した領域のうちの1つの領域が、前記第2のレジストパターンの領域の一部をなす第1の部分領域である。前記第1の部分領域は、素子高さ方向のラッピング面側とは反対側の前記センサ膜の端縁を規定するが素子高さ方向のラッピング面側の前記センサ膜の端縁を規定しない領域である。
本発明の第9の態様による磁気ヘッドの製造方法は、前記第8の態様において、前記1つ以上の孤立した領域のうちの他の1つの領域が、前記第1のレジストパターンの領域の全体又は一部をなすとともに素子高さ方向のラッピング面とは反対側の前記磁気抵抗効果素子の端縁を規定する領域であるものである。
本発明の第10の態様による磁気ヘッドの製造方法は、前記第8又は第9の態様において、前記第1の部分領域における素子高さ方向のラッピング面側とは反対側の前記センサ膜の端縁を規定する部分の、素子高さ方向の幅は、前記第2の初期素子高さの半分以下の寸法を有するものである。
本発明の第11の態様による磁気ヘッドの製造方法は、前記第8乃至第10のいずれかの態様において、前記第1の部分領域における素子高さ方向のラッピング面側とは反対側の前記センサ膜の端縁を規定する部分の、素子高さ方向の幅は、前記第1の初期素子高さと略同じ寸法を有するものである。
本発明の第12の態様による磁気ヘッドの製造方法は、前記第8乃至第11のいずれかの態様において、前記1つ以上の孤立した領域のうちの他の1つの領域が、前記第2のレジストパターンの領域の一部をなす第2の部分領域であり、前記第2の部分領域は、素子高さ方向のラッピング面側の前記センサ膜の端縁を規定するが素子高さ方向のラッピング面側とは反対側の前記センサ膜の端縁を規定しない領域であるものである。
本発明の第13の態様による磁気ヘッドの製造方法は、前記第8乃至第12の態様において、前記第2の部分領域における素子高さ方向のラッピング面側の前記センサ膜の端縁を規定する部分の、素子高さ方向の幅は、前記第1の初期素子高さと略同じ寸法を有するものである。
本発明の第14の態様による磁気ヘッドの製造方法は、前記第8乃至第13のいずれかの態様において、前記センサ膜は、前記磁気抵抗効果膜の少なくとも一部の層を含むものである。
前記第8乃至第14の態様は、前記第1乃至第7の態様をそれぞれ磁気ヘッドの製造方法に適用した例を挙げたものである。
本発明の第15の態様によるヘッドサスペンションアセンブリは、前記第8乃至第14のいずれかの態様による製造方法により製造された磁気ヘッドと、該磁気ヘッドが先端部付近に搭載され前記磁気ヘッドを支持するサスペンションと、を備えたものである。
この第15の態様によれば、前記第8乃至第14のいずれかの態様による製造方法により歩留り良く製造された磁気ヘッドが用いられているので、安価なヘッドサスペンションアセンブリを提供することができる。
本発明の第16の態様による磁気ディスク装置は、前記第15の態様によるヘッドサスペンションアセンブリと、該アセンブリを支持するアーム部と、該アーム部を移動させて磁気ヘッドの位置決めを行うアクチュエータと、を備えたものである。
この第16の態様によれば、前記第8乃至第14のいずれかの態様による製造方法により歩留り良く製造された磁気ヘッドが用いられているので、安価な磁気ディスク装置を提供することができる。
本発明の第17の態様によるレジストパターン形成方法は、第1のレジストパターンの周縁の所定部分付近における前記第1のレジストパターンのパターン幅が、第2のレジストパターンの周縁の所定部分付近における前記第2のレジストパターンのパターン幅より狭い、前記第1及び第2のレジストパターンを形成するレジストパターン形成方法であって、ネガレジスト又は画像反転レジストを塗布する段階と、前記レジストを複数回露光する露光段階と、前記露光段階おいて各回で露光された領域の論理和領域の前記レジストを残して他の領域の前記レジストを除去することで、前記第1及び第2のレジストパターンを形成する段階と、を備えたものである。そして、前記露光段階において所定の回の露光は、2つ以上の孤立した領域に対して一括して行われる。前記2つ以上の孤立した領域のうちの1つの領域が、前記第1のレジストパターンの領域の全体又は一部をなすとともに前記第1のレジストパターンの周縁の前記所定部分を規定する領域である。前記2つ以上の孤立した領域のうちの他の1つの領域が、前記第2のレジストパターンの領域の一部をなすとともに前記第2のレジストパターンの周縁の前記所定部分を規定する領域である。
この第17の態様によるレジストパターン形成方法は、前記第2の態様による磁気抵抗効果素子の製造方法で採用されているレジストパターン形成方法に相当する。もっとも、第17の態様によるレジストパターン形成方法は、他の種々の用途で採用することができる。
本発明によれば、ラッピング後のMRハイトのばらつきを抑えることができ、これにより歩留りを向上させることができる、磁気抵抗効果素子の製造方法及び磁気ヘッドの製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、このような製造方法などに用いることができるレジストパターン形成方法を提供することができる。
さらに、本発明によれば、歩留り良く製造された磁気ヘッドを用いることで、安価なヘッドサスペンションアセンブリ及び磁気ディスク装置を提供することができる。
以下、本発明による磁気抵抗効果素子の製造方法、磁気ヘッドの製造方法、ヘッドサスペンションアセンブリ、磁気ディスク装置、及びレジストパターン形成方法について、図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態による磁気ヘッド製造方法により製造される磁気ヘッドの一例を模式的に示す概略斜視図である。図2は、図1に示す磁気ヘッドのGMR素子2及び誘導型磁気変換素子3の部分を模式的に示す拡大断面図である。図3は、図2中のA−A’矢視概略図である。図4は、図2中のGMR素子2付近を更に拡大した拡大図である。図5は、図3中のGMR素子2付近を更に拡大した拡大図である。理解を容易にするため、図1乃至図5に示すように、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸を定義する(後述する図についても同様である。)。また、Z軸方向のうち矢印の向きを+Z方向又は+Z側、その反対の向きを−Z方向又は−Z側と呼び、X軸方向及びY軸方向についても同様とする。X軸方向が磁気記録媒体の移動方向と一致している。Z軸方向がGMR素子2のトラック幅方向と一致している。
図1乃至図5に示す磁気ヘッドは、図1に示すように、基体としてのスライダ1と、再生用磁気ヘッド素子として用いられる磁気抵抗効果素子としてのGMR素子2と、記録用磁気ヘッド素子としての誘導型磁気変換素子3と、DLC膜等からなる保護膜4とを備え、複合型磁気ヘッドとして構成されている。本例では、素子2,3はそれぞれ1個ずつ設けられているが、その数は何ら限定されるものではない。
スライダ1は磁気記録媒体対向面側にレール部11,12を有し、レール部11、12の表面がABS(エアベアリング面)を構成している。図1に示す例では、レール部11、12の数は2本であるが、これに限らない。例えば、1〜3本のレール部を有してもよいし、ABSはレール部を持たない平面であってもよい。また、浮上特性改善等のために、ABSに種々の幾何学的形状が付されることもある。本発明による磁気ヘッドは、いずれのタイプのスライダを有していてもよい。
本例では、保護膜4はレール部11,12の表面にのみ設けられ、保護膜4の表面がABSを構成している。もっとも、保護膜4は、スライダ1の磁気記録媒体対向面の全面に設けてもよい。また、保護膜4を設けることが好ましいが、必ずしも保護膜4を設ける必要はない。
GMR素子2及び誘導型磁気変換素子3は、図1に示すように、レール部11、12の空気流出端部TRの側に設けられている。記録媒体移動方向は、図中のX軸方向と一致しており、磁気記録媒体が高速移動した時に動く空気の流出方向と一致する。空気は流入端部LEから入り、流出端部TRから流出する。スライダ1の空気流出端部TRの端面には、GMR素子2に接続されたボンディングパッド5a,5b及び誘導型磁気変換素子3に接続されたボンディングパッド5c,5dが設けられている。デザインに応じて、ボンディングパッドの配置は、これと異なる順に並んでいても良い。
GMR素子2及び誘導型磁気変換素子3は、図2及び図3に示すように、スライダ1を構成するセラミック基体15の上に設けられた下地層16の上に、積層されている。セラミック基体15は、通常、アルチック(Al2O3−TiC)又はSiC等で構成される。下地層16は、例えばAl2O3で構成される。下地層16は、場合によっては設けなくてもよい。
図2及び図3に示すように、下地層16上に形成された下部磁気シールド層21と上側(基体15と反対側)に形成された上部磁気シールド層31との間に、下部シールドギャップ層22及び上部シールドギャップ層29が形成されている。磁気シールド層21,31は、NiFe等の磁性材料で構成される。シールドギャップ層22,29は、例えば、Al2O3又はSiO2などの材料で構成される。
GMR素子2は、図4及び図5に示すように、下部シールドギャップ層22と上部シールドギャップ層29との間に、下部シールドギャップ層22側から順に積層された、ピン層24、ピンド層25、非磁性金属層26、フリー層27、保護膜となる上部金属層(キャップ層)28を、有している。これらの層24〜28が磁気抵抗効果膜23を構成している。なお、ピンド層25、非磁性層82及びフリー層27がスピンバルブ膜を構成している。実際のGMR素子2は、図示されたような層数の膜構造ではなく、より多層の膜構造を有するのが一般的であるが、図に示す磁気ヘッドでは、説明の簡略化のため、GMR素子2の基本動作に必要な最少膜構造を示してある。
ピン層24は、反強磁性層で構成され、例えば、PtMn、IrMnなどのMn系合金で形成することが好ましい。ピンド層25及びフリー層27は、それぞれNiFe等の強磁性層で構成される。ピンド層25は、ピン層24との間の交換結合バイアス磁界によってその磁化方向が所定方向に固定されている。一方、フリー層27は、基本的に磁気情報である外部磁場に応答して自由に磁化の向きが変わるようになっている。ピンド層25及びフリー層27としては、単層に限定されるものではなく、例えば、反強磁性型磁気結合をしている一対の磁性層と、その間に挟まれた非磁性金属層との組み合わせからなる積層体を用いてもよい。このような積層体として、例えば、CoFe/Ru/CoFeの3層積層体からなる強磁性層が挙げられる。なお、この例では、下部磁気シールド層21側からピン層24、ピンド層25、非磁性金属26、フリー層27の順に配置されているが、下部磁気シールド層21側からフリー層27、非磁性金属層26、ピンド層25、ピン層24の順に配置してもよい。非磁性金属26は、例えば、Cuで形成される。
上部金属層28は、例えば、Ta、Rh、Ru、Os、W、Pd、Pt、Cu、Cr、Ni、Ti、W又はAuの単体、又は、これらのいずれか2種以上の組み合わせからなる合金、を用いた、単層膜又は複層膜で形成される。
図3及び図5に示すように、磁気抵抗効果膜23のZ軸方向の両側には、フリー層27に磁区制御のためのバイアス磁界を付与する縦バイアス層(磁区制御層)32が形成されている。縦バイアス層32は、例えば、Cr/CoPtなどの硬磁性材料で形成される。あるいは、縦バイアス層32は、例えば、軟磁性層と反強磁性層を積層し交換結合を使った層でもよい。
本例では、両側の縦バイアス層32は、磁気抵抗効果膜23にその膜面と略平行にセンス電流を流すリード層としてそれぞれ兼用され、図面には示していないが、前述したボンディングパッド5a,5bにそれぞれ電気的に接続されている。なお、縦バイアス層32とは別に、リード層を設けてもよい。
また、図2乃至図4に示すように、磁気抵抗効果膜23及び縦バイアス層32が形成されていない領域には、下部シールドギャップ層22と上部シールドギャップ層29との間において、Al2O3などからなる絶縁層30が形成されている。
誘導型磁気変換素子3は、図2及び図3に示すように、当該素子3に対する下部磁性層としても兼用される前記上部磁気シールド層31、上部磁性層36、コイル層37、アルミナ等からなるライトギャップ層38、熱硬化性のフォトレジスト(例えば、ノボラック樹脂等の有機樹脂)で構成された絶縁層39及びアルミナ等からなる保護層40などを有している。上部磁性層36の材質としては、例えば、NiFe又はFeNなどが用いられる。下部磁性層としても兼用された上部磁気シールド層31及び上部磁性層36の先端部は、微小厚みのアルミナなどのライトギャップ層38を隔てて対向する下部ポール部31a及び上部ポール部36aとなっており、下部ポール部31a及び上部ポール部36aにおいて磁気記録媒体に対して情報の書き込みを行なう。下部磁性層としても兼用された上部磁気シールド層31及び上部磁性層36は、そのヨーク部が下部ポール部31a及び上部ポール部36aとは反対側にある結合部41において、磁気回路を完成するように互いに結合されている。絶縁層39の内部には、ヨーク部の結合部41のまわりを渦巻状にまわるように、コイル層37が形成されている。コイル層37の両端は、前述したボンディングパッド5c,5dに電気的に接続されている。コイル層37の巻数及び層数は任意である。また、誘導型磁気変換素子3の構造も任意でよい。上部磁気シールド層31は、誘導型磁気変換素子3の下部磁性層とGMR素子2の上部電極の役割を分けるために、Al2O3、SiO2などの絶縁層を挟んで2層に分けても良い。
次に、本発明の第1の実施の形態による磁気ヘッド製造方法として、前述した図1乃至図5に示す磁気ヘッドを製造する方法の一例について、説明する。
まず、ウエハ工程を行う。すなわち、基体15となるべきAl2O3−TiC又はSiC等のウエハ101を用意し、薄膜形成技術等を用いて、ウエハ101上のマトリクス状の多数の磁気ヘッドの形成領域にそれぞれ、前述した各層を前述した構造となるように形成する。また、ウエハ101上の磁気ヘッドの各素子中に、複数のELG素子50を形成する。例えば、Z軸方向に延びる各素子列において、GMR素子2とELG素子50(図16(a)を参照)とがZ軸方向に交互に並ぶように形成する。本実施の形態では、ELG素子50の構造としてGMR素子2と同じ構造が採用され、ELG素子50では、所定部分の寸法のみがGMR素子2とは異なるように構成される。したがって、このELG素子50では、磁気抵抗効果膜23がセンサ膜となっている。もっとも、本発明では、ELG素子50のセンサ膜として、例えば前記特許文献1に開示されているように、磁気抵抗効果膜23以外の構成を有する抵抗膜を採用してもよい。
このウエハ工程の概要について、図6乃至図19を参照して説明する。図6乃至図19はウエハ工程を構成する各工程を模式的に示す図である。図6乃至図11の(a)、図12及び図13、図14乃至図19の(a)は、互いにZ軸方向に並んだ1つの磁気ヘッド形成領域C及び1つのELG素子形成領域Dを示す概略平面図である。図6乃至図11、図14乃至図19の(b)は、それぞれ同じ図の(a)中のE−E’線に沿った概略断面図である。なお、図9(b)において、TWはGMR素子2が規定するトラック幅を示している。
ウエハ工程では、まず、ウエハ101上に、下地層16、下部磁気シールド層21、下部シールドギャップ層22、磁気抵抗効果膜23を、順次積層する(図6)。このとき、下部磁気シールド層21は例えばめっき法により形成し、他の層は例えばスパッタ法で形成する。
次に、GMR素子2のトラック幅TW及びELG素子50のトラック幅方向の幅を決定するように、磁気抵抗効果膜23及びELG素子50のセンサ膜(ここでは、磁気抵抗効果膜23)をパターニングする第1のパターニング工程を行う。
この第1のパターニング工程では、まず、この状態の基板上にフォトレジスト60を塗布した後、フォトレジスト60をフォトリソグラフィによりパターニングして、GMR素子2のトラック幅に応じたZ軸方向の間隔を持つ開口60a,60b、及び、ELG素子50のセンサ膜のZ軸方向の幅に応じたZ軸方向の間隔を持つ開口60c,60dをフォトレジスト60に形成する(図7)。本実施の形態では、フォトレジスト60として2層レジストが用いられているが、これに限定されるものではなく、例えば、同様の断面形状をなす単層レジスト等を用いてもよい。この点は、後述するフォトレジスト61についても同様である。
その後、フォトレジスト60をマスクとしてイオンミリング等により開口60a〜60dの領域の磁気抵抗効果膜23を除去する(図8)。これにより、第1のパターニング工程が完了する。
次に、フォトレジスト60を剥離する前にリード層を兼用する縦バイアス層32を積層し、更に、フォトレジスト60をその上に形成された層32と共に剥離する(図9)。このようにリフトオフすることで、磁気抵抗効果膜23を除去した領域のみに縦バイアス層32を形成する。なお、ELG素子50においては、縦バイアス層32は、単にリード層として用いられる。
その後、初期MRハイト(ラッピング前のGMR素子2の素子高さ)Mh0及びELG初期ハイト(ラッピング前のELG素子50の素子高さ)Eh0(図16(a)参照)を決定するように、磁気抵抗効果膜23及びELG素子50のセンサ膜(ここでは、磁気抵抗効果膜23)をパターニングする第2のパターニング工程を行う。
初期ELGハイトEh0は初期MRハイトMh0に比べて非常に大きく設定される。例えば、初期MRハイトMh0は0.5μm、初期ELGハイトEh0は20μmに設定される。後述するラッピング後の最終的なMRハイト(GMR素子2の素子高さ)は、例えば0.1μm程度である。図16(a)に示すように、ELG素子50のセンサ膜の後端縁E2(素子高さ方向のラッピング面側と反対側の端縁)と、GMR素子2の後端縁E1(素子高さ方向のラッピング面側と反対側の端縁)との間に、素子高さ方向(Y軸方向)に所定のオフセット(MR−ELGオフセット)dが設けられる。MR−ELGオフセットdは、例えば、0.5μmである。なお、各部の寸法は前述した寸法に限定されないことは、言うまでもない。
第2のパターニング工程では、まず、図9に示す状態の基板上にフォトレジスト61を塗布する(図10)。本実施の形態では、フォトレジスト61として、ネガレジストが用いられている。このフォトレジスト61は、以下に説明する露光段階及び現像段階を経ることで、図14に示すように、初期MRハイトMh0を規定する第1のレジストパターン61aと、初期ELGハイトEh0を規定する第2のレジストパターン61bとに、パターニングされる。第1のレジストパターン61aにおける磁気抵抗効果膜23上の部分が、初期MRハイトMh0を規定する部分となっており、第1のレジストパターン61aの他の部分は、縦バイアス層32の形状を規定する部分となっている。第2のレジストパターン61bにおける磁気抵抗効果膜23(すなわち、ELG素子50のセンサ膜)上の部分が、初期ELGハイトEh0を規定する部分となっており、第2のレジストパターン61bの他の部分は、縦バイアス層32の形状を規定する部分となっている。
図10に示すようにフォトレジスト61が塗布された後に、フォトレジスト61に複数回露光を行う。本実施の形態では、1回目の露光では、図11に示すフォトレジスト61の3つの孤立した領域R1,R2,R3を一括して露光する。2回目の露光では、図12に示すフォトレジスト61の1つの孤立した領域R4を一括して露光する。1回目の露光領域R1,R2,R3と2回目の露光領域R4との位置関係を明示するため、図13にはこれらの領域R1〜R4を併せて示している。
領域R1は、形成すべき第1のレジストパターン61aの全体領域と一致している。したがって、領域R1は、GMR素子2の後端縁E1(図16(a)参照)もその反対側の端縁も規定する領域となっている。
領域R2,R3はそれぞれ、形成すべき第2のレジストパターン61bの領域の一部の領域である。領域R2は、ELG素子50のセンサ膜(ここでは、磁気抵抗効果膜23)の後端縁E2(図16(a)参照)に相当する第2のレジストパターン61bの領域の縁に沿うことにより、後端縁E2を規定する領域となっている。また、領域R2は、ELG素子50のセンサ膜の後端縁E2とは反対側の端縁E3(図16(a)参照)に相当する第2のレジストパターン61bの領域の縁に沿っていないことにより、端縁E3を規定しない領域となっている。一方、領域R3は、ELG素子50のセンサ膜の後端縁E2に相当する第2のレジストパターン61bの領域の縁に沿わないことにより、後端縁E2を規定しない領域となっている。また、領域R3は、ELG素子50のセンサ膜の後端縁E2とは反対側の端縁E1(図16(a)参照)に相当する第2のレジストパターン61bの領域の縁に沿うことにより、端縁E1を規定する領域となっている。本実施の形態では、領域R2,R3の素子高さ方向(Y軸方向)の幅は、初期MRハイトMh0と略同じ寸法に設定されている。
領域R4は、形成すべき第2のレジストパターン61bの領域の一部の領域であるが、その領域の大部分を占めている。しかしながら、領域R4は、ELG素子50のセンサ膜の端縁E2,E3にそれぞれ相当する第2のレジストパターン61bの領域の縁に沿わないことにより、端縁E2,E3を規定しない領域となっている。領域R4は、露光の際に領域R2〜R4の端縁の位置がばらついたとしても、領域R2〜R4の論理和領域が第2のレジストパターン61bの全体領域と一致するように、領域R2,R3に対して部分的にオーバーラップしている。
なお、前述した露光順序とは逆に、1回目の露光で領域R4を露光し、2回目の露光で領域R1〜R3を露光してもよい。また、本実施の形態では、第2のレジストパターン61bの領域のうち領域R2,R3以外の領域を埋める露光を、2回目の露光(領域R4の露光)として1回の露光で行っているが、この露光を複数回に分けて行うようにしてもよい。さらに、例えば、1回目の露光で領域R1,R3を露光し、2回目の露光R2を露光し、3回目の露光で領域R4を露光してもよい。
前述した1回目及び2回目の露光が終了した後、フォトレジスト61を現像処理し、露光領域R1〜R4の論理和領域のフォトレジスト61を残して他の領域のフォトレジスト61を除去することで、第1及び第2のレジストパターン61a,61bを島状に形成する(図14)。
ところで、フォトレジスト61としてネガレジストの代わりに、画像反転レジストを用いてもよい。この場合には、画像反転レジストをネガレジストと同様の現像結果が得られるように、前述した1回目及び2回目の露光が終了した後、レジストベーク処理を行い更に全面露光した後に、現像処理を行う。
その後、レジストパターン61a,61b(フォトレジスト61)をマスクとしてイオンミリング等により、レジストパターン61a,61bが形成されていない領域の、磁気抵抗効果膜23及び縦バイアス層32を除去する(図15)。これにより、第2のパターニング工程が完了する。
次に、レジストパターン61a,61bを剥離する前に絶縁層30を積層し、更に、レジストパターン61a,61bをその上に形成された絶縁層30と共に剥離する(図16)。このようにリフトオフすることで、レジストパターン61a,61bでマスクされていなかった領域のみに絶縁層30を形成する。
次いで、この状態の基板上に上部シールドギャップ層29をスパッタ法等により形成し(図17)、更に、フォトリソグラフィ及びイオンミリング等により、上部シールドギャップ層29に、リード層としての縦バイアス層32を露出させる開口29a〜29dを形成する(図18)。開口29a〜29dはそれぞれ、後述する中継電極部40a〜40bのためのコンタクトホールである。
その後、上部磁気シールド層31及び中継電極部40a〜40dをメッキ法等により同一磁性材料で一括して形成する(図19)。中継電極部40a,40bは、それぞれ図1中のボンディングパッド5a,5bに接続されるものである。中継電極部40c,40dは、それぞれELG素子50の抵抗値をモニタするための端子となるボンディングパッド(図示せず)に接続されるものである。
最後に、ギャップ層38、コイル層37、絶縁層39、上部磁性層36及び保護膜40を形成し、更にボンディングパッド5a〜5d及びELG素子50の抵抗値モニタ用のボンディングパッド等を形成する。これにより、ウエハ工程が完了する。
次に、ウエハ工程が完了したウエハに対して、前記ウエハから、基体上に複数の磁気ヘッドの部分及びELG素子50がZ軸方向に一列状に配列された各バー(バー状磁気ヘッド集合体)切り出す。
次いで、このバーに対して、MRハイトを設定するために、そのABS側の面をラッピング(研磨)する。このラッピングは、ELG素子50の抵抗値をモニタしながら行い、MRハイトが目的の所定値となるまで行う。このラッピング面はラッピングが進行するに従って+Y側から−Y側へ進行し、このラッピングにより最終的に露出する面は、ほぼ図16(a)中のE−E’線を延長した線に沿った断面である。
次に、ABS側に保護膜4を形成し、更に、エッチング等によりレール11,12を形成する。最後に、機械加工により切断してバーを個々の磁気ヘッドに分離する。これにより、図1乃至図5に示す磁気ヘッドが完成する。
ここで、本実施の形態による磁気ヘッド製造方法と比較される比較例について、図20を参照して説明する。図20は、フォトレジスト61に対する露光領域R1,R5を示す図であり、図11及び図12に対応している。図20において、図11及び図12中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
この比較例による磁気ヘッド製造方法が本実施の形態による磁気ヘッド製造方法と異なる所は、前述した第2のパターニング工程におけるフォトレジスト61に対する露光方法のみである。
すなわち、この比較例では、図10に示すように塗布されたフォトレジスト(ネガレジスト)61に対して、1回の露光で図20に示す領域R1,R5の全体を一括して同時に露光する。図20中の領域R1は、図11中の領域R1と同じく、形成すべき第1のレジストパターン61a(図14(a)参照)の全体領域と一致している。図20中の領域R5は、形成すべき第2のレジストパターン61b(図14(a)参照)の全体領域と一致している。
したがって、初期MRハイトMh0(図16(a)参照)を規定する領域R1の部分Fの素子高さ方向(Y軸方向)の幅は、初期MRハイトMh0と同一寸法に設定されている。一方、初期ELGハイトEh0(図16(a)参照)を規定する領域R5の部分Gの素子高さ方向の幅は、初期ELGハイトEh0と同一寸法に設定されている。したがって、露光領域R1の部分Fの素子高さ方向の幅と露光領域R5の部分Gの素子高さ方向の幅とは、一桁以上異なる。
既に説明したように、フォトリソグラフィでは、露光条件を設定することにより1種類の寸法をデザイン値に対して精度良く露光することは可能であるが、いかに露光条件を設定しても、このように一桁以上違う寸法の各露光パターンをそれぞれデザイン値に対して同時に精度良く露光することは困難である。
したがって、露光領域R1の部分Fの素子高さ方向の幅の値及び露光領域R5の部分Gの素子高さ方向の幅の値がそれぞれ比較的大きくばらつかざるを得ない。これらの値がそれぞれ比較的大きくばらつくということは、露光領域R1の部分Fの−Y側の端縁の位置及び露光領域R5の部分Gの+Y側及び−Y側の端縁の位置がそれぞれ比較的大きくばらつくということを意味する。このため、この比較例によれば、初期MRハイトMh0の値及び初期ELGハイトEh0の値がそれぞれ比較的大きくばらついて、GMR素子2の後端縁E1及びその反対側の端縁の位置、並びに、ELG素子50のセンサ膜の後端縁E2及びその反対側の端縁E3の位置がそれぞれ比較的大きくばらつく。したがって、GMR素子2の後端縁E1の位置及びELG素子50のセンサ膜の後端縁E2の位置がそれぞれ比較的大きくばらつくことから、ラッピングの基準となるMR−ELGオフセットd(図16(a)参照)が比較的大きくばらつく。よって、この比較例によれば、ラッピング後のバー内の各GMR素子2のMRハイトのばらつきを十分に抑えることが困難である。また、ELG素子50のセンサ膜の後端縁E2及び端縁E3の位置がそれぞれ比較的大きくばらつくことから、ELG素子50の初期抵抗値が比較的大きくばらついてしまう。
これに対し、本実施の形態では、図11に示すように、GMR素子2の後端縁E1及びその反対側の端縁を規定する領域R1と、ELG素子50のセンサ膜の後端縁E2を規定する領域R2と、ELG素子50のセンサ膜の端縁E3を規定する領域R3とが1回目の露光で同時に露光され、領域R1の部分Fの素子高さ方向の幅及び領域R1,R2の素子高さ方向の幅が同じ寸法に設定されている。したがって、本実施の形態によれば、1回目の露光の露光条件をこの寸法に合わせて設定することで、これらの幅のばらつきを抑えることができる。よって、露光領域R1の部分Fの−Y側の端縁の位置、露光領域R2の−Y側の端縁の位置、及び、露光領域3の+Y側の端縁の位置のばらつきを抑えることができる。したがって、MR−ELGオフセットdのばらつきを抑えることができるとともに、ELG素子50の初期抵抗値のばらつきを抑えることができる。
本実施の形態によれば、このようにMR−ELGオフセットdのばらつきを抑えることができるので、ラッピング後のバー内の各GMR素子2のMRハイトのばらつきを抑えることができ、歩留りが向上する。
ところで、領域R2の素子高さ方向の幅は、必ずしも領域R1の部分Fの素子高さ方向の幅と同じである必要はなく、初期ELGハイトEh0より小さく設定すればよい。しかしながら、ある程度以上のMR−ELGオフセットdのばらつき低減効果を得るには、領域R2の素子高さ方向の幅(特に、その端縁におけるELG素子50のセンサ膜の後端縁E2を規定する部分の幅)を初期ELGハイトEh0の半分以下に設定することが好ましい。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態による磁気ヘッド製造方法について、図21乃至図23を参照して説明する。
図21はフォトレジスト61に対する1回目の露光で露光される領域R1,R2を示す図、図22はフォトレジスト61に対する2回目の露光で露光される領域R6を示す図、図23はこれらの領域R1,R2,R6を併せて示す図である。図21乃至図23は、図11乃至図13にそれぞれ対応している。図21乃至図23において、図11乃至図13中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
本発明による第2の実施の形態による磁気ヘッド製造方法が前記第1の実施の形態による磁気ヘッド製造方法と異なる所は、フォトレジスト61に対する1回目の露光で領域R1,R2のみが露光されて領域R3が露光されず、フォトレジスト61に対する2回目の露光で領域R4の代わりに領域R6が露光される点のみである。領域R6は、領域R4に対して領域R3の分だけ+Y側に延ばした領域となっており、ELG素子50のセンサ膜の端縁E3も規定する。
この第2の実施の形態によれば、前記第1の実施の形態に比べるとELG素子50の初期抵抗値のばらつきは大きくなるものの、前記第1の実施の形態と同様に、MR−ELGオフセットdのばらつきを低減することができる。
[第3の実施の形態]
図24は、本発明の第3の実施の形態による磁気ディスク装置の要部の構成を示す概略斜視図である。
第3の実施の形態による磁気ディスク装置は、軸70の回りに回転可能に設けられた磁気ディスク71と、磁気ディスク71に対して情報の記録及び再生を行う磁気ヘッド72と、磁気ヘッド72を磁気ディスク71のトラック上に位置決めするためのアッセンブリキャリッジ装置73と、を備えている。
アセンブリキャリッジ装置73は、軸74を中心にして回動可能なキャリッジ75と、このキャリッジ75を回動駆動する例えばボイスコイルモータ(VCM)からなるアクチュエータ76とから主として構成されている。
キャリッジ75には、軸74の方向にスタックされた複数の駆動アーム77の基部が取り付けられており、各駆動アーム77の先端部には、磁気ヘッド72を搭載したヘッドサスペンションアッセンブリ78が固着されている。各ヘッドサスペンションアセンブリ78は、その先端部に有する磁気ヘッド72が、各磁気ディスク71の表面に対して対向するように駆動アーム77の先端部に設けられている。
第3の実施の形態では、磁気ヘッド72として、前記第1の実施の形態又第2の実施の形態による製造方法により製造された磁気ヘッドが搭載されている。したがって、第3の実施の形態によれば、歩留り良く製造された磁気ヘッドが用いられているので、コストを低減することができる。
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
例えば、前記実施の形態は、CIP構造のGMRヘッドの製造方法に適用した例であったが、本発明は、TMRヘッドやCPP−GMR等の他の磁気ヘッドの製造方法にも適用することができる。
前記実施の形態では、前記第2のパターニング工程において、磁気抵抗効果膜23の全ての層を選択的に除去することで、初期MRハイトMh0を決定するようにしていた。しかしながら、例えば、TMRヘッドを製造する場合においてELG素子50のセンサ膜として磁気抵抗効果膜以外の構成の抵抗膜を用いる場合には、磁気抵抗効果膜23の一部の層を選択的に除去することで、初期MRハイトMh0を決定できる場合もある。
前記実施の形態における磁気ヘッド製造方法で採用されているレジストパターン61a,62bを形成する方法は、本発明の一実施の形態によるレジストパターン形成である。しかしながら、本発明のレジストパターン形成方法は、この用途に限定されるものではなく、他の種々の用途に用いることができる。
また、前記実施の形態では、前記第2のパターニング工程においてフォトリソグラフィが採用されていたが、フォトリソグラフィに代えて、露光源としてX線を用いるリソグラフィや、露光源として電子ビームを用いたマスク方式によるリソグラフィなどの、他の種々のリソグラフィを採用してもよい。