JP2005292595A - 電解質およびそれを用いた電気化学表示素子、並びに電気化学表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 低温環境下においても画像表示することができる電気化学表示装置を提供する。
【解決手段】 電解質中にチアゾリジン構造を有する化合物、ジアルキルチオ尿素およびトリチオカーボネート類のうちの少なくとも1種の軟らかいドナー性を有する第1の添加剤が含まれている。具体的には、3−メチルベンゾチアゾール−2−チオン(化1)、N,N’−ジメチルチオ尿素(化2)、エチレントリチオカーボネート(化3)およびジメチルトリチオカーボネート(化4)などが挙げられる。これにより、軟らかいアクセプター性を有する金属イオンの析出反応が促進され、黒の書き込み濃度の温度依存性を小さくすることができる。
【選択図】 図20
【解決手段】 電解質中にチアゾリジン構造を有する化合物、ジアルキルチオ尿素およびトリチオカーボネート類のうちの少なくとも1種の軟らかいドナー性を有する第1の添加剤が含まれている。具体的には、3−メチルベンゾチアゾール−2−チオン(化1)、N,N’−ジメチルチオ尿素(化2)、エチレントリチオカーボネート(化3)およびジメチルトリチオカーボネート(化4)などが挙げられる。これにより、軟らかいアクセプター性を有する金属イオンの析出反応が促進され、黒の書き込み濃度の温度依存性を小さくすることができる。
【選択図】 図20
Description
本発明は、電気化学的な酸化、還元を利用して表示を行う電気化学表示素子および電気化学表示装置、並びにそれらに用いる電解質に関する。
近年、ネットワークの普及につれ、従来印刷物として配布されていた文書類が、いわゆる電子書類で配信されるようになってきた。更に、書籍や雑誌などもいわゆる電子出版の形で提供される場合が多くなりつつある。これらの情報を閲覧するために、従来より、コンピュータのCRT(Cathode-Ray Tube;ブラウン管)または液晶ディスプレイが用いられている。
しかし、これら発光型のディスプレイでは、人間工学的理由から疲労が著しく、長時間の読書には耐えられないことが指摘されている。また、読む場所がコンピュータなどの設置場所に限られるという難点もある。
最近では、ノート型コンピュータの普及により、携帯型のディスプレイとして使えるものもあるが、それらは主にバックライトによる発光型であることに加えて消費電力との関係で、これも数時間以上の読書に用いることが難しい。また、反射型液晶ディスプレイも開発され、これによれば低消費電力で駆動することができるが、液晶の無表示(白色表示)における反射率は30%であり、紙への印刷物に比べ著しく視認性が悪く、疲労が生じやすく、これも長時間の読書に耐えるものではない。
そこで、金属イオンを含む白く着色した電解質を間にして一対の電極を対向配置し、表示側の電極に金属を析出させることにより画像の書き込みを行い、その析出させた金属を電解質に溶解させることにより画像の消去を行う電気化学表示装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。これによれば、使用する場所にとらわれることなく、且つ視認性が良好な画像表示をすることができる。
特開2002−258327号公報
この電気化学表示装置では、画素に高電圧を印加するアクティブマトリックス駆動を用いたときには、比較的低温であっても画像表示を行うことができる。しかしながら、画素に比較的低い電圧を印加するパッシブマトリックス駆動の場合には、例えば、10℃以下の低温で動作させると、応答速度の低下はもとより、画像表示すら行うことができないという問題があった。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、低温であってもパッシブマトリックス駆動により画像表示(書き込み)をすることができる電気化学表示素子および電気化学表示装置、並びにそれらに用いる電解質を提供することにある。
本発明の電解質は、チアゾリジン構造を有する化合物、ジアルキルチオ尿素およびトリチオカーボネート類のうちの少なくとも1種からなる第1の添加剤を含むものである。
本発明の電気化学表示素子および電気化学表示装置は、第1電極と第2電極との間の電解質に上記本発明の電解質を用いたものである。
本発明による電解質では、チアゾリジン構造を有する化合物、ジアルキルチオ尿素およびトリチオカーボネート類のうちの少なくとも1種からなる第1の添加剤を含んでいるので、この電解質を用いた電気化学表示素子およびこの電気化学表示素子を備えた電気化学表示装置によれば、10℃以下の低温環境下においても、画像表示を担う金属の還元反応(析出)が促進される。
本発明による電解質では、チアゾリジン構造を有する化合物、ジアルキルチオ尿素およびトリチオカーボネート類のうちの少なくとも1種からなる第1の添加剤を含むようにしたので、この電解質を用いた電気化学表示素子およびこの電気化学表示素子を備えた電気化学表示装置において、表示動作の温度依存性を小さくすることができる。すなわち、低温環境下においても画像表示(書き込み)が可能になる。
具体的な第1の添加剤として、3−メチルベンゾチアゾール−2−チオン、N,N’−ジメチルチオ尿素、エチレントリチオカーボネートおよびジメチルトリチオカーボネートのうち少なくとも1種を含むようにすれば、低温環境下においても画像表示(書き込み)をすることができる。
特に、電解質として、電解液に対して2質量%以上10質量%以下の第1の添加剤を添加した後、固化したものを用いることにより、更に良好な画像表示をすることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る電気化学表示装置の概略構成を表すものである。この電気化学表示装置は、マトリックス状に配置された複数の電気化学表示素子10からなる表示部と、この電気化学表示素子10を駆動させるための周辺回路部20とを備えている。
図2は、図1に示した電気化学表示素子10の概略構成を表すものである。電気化学表示素子10は、第1基板11と第2基板12とが電解質層13を間にして対向配置された構造を有している。第1基板11の第2基板12と対向する側の面には、第1電極(透明電極)14がストライプ状に延在し、第2基板12の第1基板11と対向する側の面には、第2電極(対向電極)15がストライプ状に延在し、第1電極14と第2電極15とが互いに交差するように対向配置されている。また、第1基板11と第2基板12との間は、第2基板12側から順に第1電解質層13A、セパレータ(多孔質性隔膜)16および第2電解質層13Bを含む積層構造となっている。なお、第1電極14の下面を含む第1基板11および第2電極15の上面を含む第2基板12とセパレータ16との間には間隙形成材17が散布されており、第1電解質層13Aおよび第2電解質層13Bには同一組成の電解質が充填されている。更に、第1基板11および第2基板12の側面は図示しない封止樹脂により封止されている。
第1基板11は、透明性を有する材料、具体的には、石英ガラスなどにより構成されている。また、この他にも、例えば、合成樹脂、具体的には、ポリエチレンナフタレート,ポリエチレンテレフタレートあるいはポリカーボネートなどのエステル、または、酢酸セルロースなどのセルロースエステル、または、ポリフッ化ビニリデンあるいはポリテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体などのフッ素ポリマー、または、ポリオキシメチレンなどのポリエーテル、または、ポリアセタール,ポリスチレン,ポリエチレン,ポリプロピレンあるいはメチルペンテンポリマーなどのポリオレフィン、または、ポリアミドイミドあるいはポリエーテルイミドなどのポリイミド、または、ポリアミドにより構成してもよい。これら合成樹脂は、容易に曲がらないような剛性基板状であってもよく、また、可撓性を有するフィルム状の構造体であってもよい。
第2基板12は、透明であっても、透明でなくてもよく、例えば、石英ガラス、白板ガラス、セラミックス、紙あるいは木材により構成することができる。また、この他にも、第1基板11で説明した合成樹脂により構成するようにしてもよい。
電解質層13は、例えば、酸化還元反応により析出および溶解する析出溶解材料と、析出溶解材料の析出を促進させる第1の添加剤と、溶媒とを含んでいる。
析出溶解材料は、析出した状態と溶解した状態とで色が変化することを利用して画素の表示を可能にするためのものである。析出溶解材料としては、還元により金属として析出する金属イオンが挙げられる。金属イオンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ビスマスイオン、銅イオン、銀イオン、ナトリウムイオン、リチウムイオン、鉄イオン、クロムイオン、ニッケルイオンあるいはカドミウムイオンが挙げられる。その中でも特に好ましい金属イオンはビスマスイオンあるいは銀イオンであり、更に好ましいのは銀イオンである。この理由は、ビスマスイオンおよび銀イオンは、可逆的な反応を容易に進めることができると共に、析出時の変色度が高く、特に、銀イオンはイオン価数が通常1であるので、イオン価数が通常3であるビスマスイオンに比べて、1原子を還元させて金属にするのに必要な電荷量が3分の1となるからである。金属イオンは、例えば、金属塩として溶媒に添加されている。金属塩としては、銀塩であれば、例えば、硝酸銀、ホウフッ化銀、ヨウ化銀(AgI)などのハロゲン化銀、過塩素酸銀、シアン化銀あるいはチオシアン化銀が挙げられ、リチウム塩であれば、例えばハロゲン化リチウムが挙げられる。金属塩には、いずれか1種を用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
第1の添加剤は、軟らかいドナー性(軟性のルイス塩基性)を有する含硫黄化合物からなり、特に、軟らかいアクセプター性(軟性のルイス酸性)を有するイオンあるいは分子と強く反応する性質を有している。これにより、軟らかいアクセプター性を有するイオンあるいは分子の析出(還元反応)を促進させて、表示動作の温度依存性を小さくすることができるようになっている。なお、ルイス酸・塩基における硬軟性の分類については一般に以下のように分類されている。
まず、ルイス酸の硬軟性については、ルイス酸の形状が大きく、負電荷が高く、ルイス酸としての電子対供与原子が原子価殻に孤立電子対を有しているようなイオンや分子を軟らかいルイス酸(軟酸)とし、この軟酸と反対の性質を有するものを硬いルイス酸(硬酸)として分類されている。このように分類した中で、軟酸としてCH3Hg+(メチル水銀イオン)を、また、硬酸として水素イオン(H+)を軟酸および硬酸の基準とし、メチル水銀イオンと結合性の強いものを軟ルイス塩基(軟塩基)、水素イオンと結合性の強いものを硬ルイス塩基(硬塩基)として分類されている。
このような軟らかいドナー性を有する第1の添加剤としては、チアゾリジン構造を有する化合物、ジアルキルチオ尿素およびトリチオカーボネート類などが挙げられ、これらののうちの少なくとも1種が電解質層13に含まれている。
チアゾリジン構造を有する化合物としては、化1に示した3−メチルベンゾチアゾール−2−チオンが好ましい。
ジアルキルチオ尿素としては、化2に示したN,N’−ジメチルチオ尿素が好ましい。
トリチオカーボネート類としては、化3に示したエチレントリチオカーボネートあるいは化4に示したジメチルトリチオカーボネートが好ましい。
また、電解液における第1の添加剤の含有量は2質量%以上10質量%以下であることがが好ましい。この濃度範囲において、特に10℃以下の低温環境下で軟らかいアクセプター性を有する析出溶解材料の析出(還元反応)が促進され、表示動作の温度依存性をより小さくすることができるからである。
溶媒は、ジメチルスルホキシドとγ−ブチロラクトンとを含んでいることが好ましい。この場合、ジメチルスルホキシドとγ−ブチロラクトンとの割合は、ジメチルスルホキシド:γ−ブチロラクトン=7:3〜3:7の体積比であることが好ましく、ジメチルスルホキシド:γ−ブチロラクトン=6:4〜3:7の体積比であればより好ましい。この範囲内において、最も多く使用される環境である10℃〜30℃の温度領域において応答速度を速くし、かつ、低温において急速な応答速度の低下を防止することができるからである。
他の溶媒としては、例えば、水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、γ−バレロラクトンあるいはこれらの混合物などの親水性を有するもの、または、プロピレンカーボネート,ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、アセトニトリル、スルホラン、ジメトキシエタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンあるいはこれらの混合物などの疎水性を有するものが挙げられる。
電解質層13は、また、必要に応じて支持電解質塩や着色剤、更には上記第1の添加剤とは別の作用をもたらす第2の添加剤を含んでいてもよい。
支持電解質塩は、電解質層13のイオン伝導性を高めることにより、析出溶解材料の析出溶解反応がより効果的に、且つ安定して行なわれるようにするためのものである。支持電解質塩としては、例えば、LiCl,LiBr,LiI,LiBF4 ,LiClO4 ,LiPF6 あるいはLiCF3 SO3 などのリチウム塩、または、KCl,KIあるいはKBrなどのカリウム塩、または、NaCl,NaIあるいはNaBrなどのナトリウム塩、または、ホウフッ化テトラエチルアンモニウム塩,過塩素酸テトラエチルアンモニウム塩,ホウフッ化テトラブチルアンモニウム塩,過塩素酸テトラブチルアンモニウム塩あるいはテトラブチルアンモニウムハライド塩などのテトラアルキル四級アンモニウム塩が挙げられる。支持電解質塩にはいずれか1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
着色剤は、表示のコントラストを向上させるためのものである。着色剤としては、例えば、無機顔料あるいは有機顔料が挙げられ、これらを単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。例えば、銀のように金属の発色が黒色の場合には、白色の隠蔽性の高い材料が好ましい。このような材料として、例えば、二酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウムあるいは酸化アルミニウムなどの無機粒子を使用することができる。また、色素を用いることもできる。色素としては、油溶性染料を用いることが好ましい。
第2の添加剤としては、例えば、常温における電気化学的な反応、特に金属の析出溶解反応を可逆的、かつ効率的に行うために、成長阻害剤、応力抑制剤、光沢剤、錯化剤、酸化剤あるいは還元剤のいずれか1種または2種以上を混合して含んでいることが好ましい。このような第2の添加剤としては、例えば、チオ尿素、1−アリル−2−チオ尿素、メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、クマリン、フタル酸、コハク酸、サリチル酸、グリコール酸、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、酒石酸、シュウ酸あるいはD−グルコノ−1,5−ラクトンが挙げられる。
また、アニオン種に起因した副反応に伴い、所望の発色以外の発色が生じる虞があるので、アニオン種に起因した副反応を抑制するための還元剤または酸化剤のいずれか1種または2種以上を混合して含んでいることが好ましい。
このような還元剤としては、例えば、アスコルビン酸化合物あるいはトリアルキルアルコールアミンなどが好ましい。中でも、トリアルキルアルコールアミン種であり、トリエタノールアミンは、長期保存性および高温保存性においても優れた効果を得ることができるので好ましい。
なお、この電解質層13は、これら溶媒,析出溶解材料および第1の添加剤などを含む電解液の状態で用いてもよいが、マクロモノマーあるいは高分子化合物などを加えてゲル状の電解質としてもよい。ゲル状の電解質とする場合は、電解液に、例えば、マクロモノマーと過酸化物などからなる架橋剤とを加えて加熱することにより架橋化反応させてゲル状としてもよく、また、高分子化合物を含めて減圧乾燥することによりゲル状としてもよい。また、ゲル状の電解質とする場合には、単層により構成してもよいが、複数層により構成してもよい。複数層にする場合には、着色剤は全ての層に含有させる必要はなく、少なくとも1層に含有させるようにすればよい。
架橋剤としては、イソブチリルパーオキサイド、α,α′−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネートおよびt−ブチルパーオキシネオデカノエート等が挙げられ、単独または2種以上を混合して用いてもよい。
高分子化合物としては、主骨格単位、側鎖単位、またはその両方に、アルキレンオキサイド、アルキレンイミン、アルキレンスルフィドの繰り返し単位を有するもの、または、これらの異なる単位を複数含む共重合物、または、ポリメチルメタクリレート誘導体、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリルあるいはポリカーボネート誘導体が挙げられる。高分子化合物には、いずれか1種を用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
第1電極14は、画素として表示する後述の金属を析出させる析出基板として機能するものであり、例えば、透明導電性膜により構成されている。具体的には、酸化インジウム(In2 O3 )、酸化錫(SnO2 )あるいは、錫(Sn)とインジウム(In)との酸化物であるITO(Indium Tin Oxide)、または、これらに錫あるいはアンチモン(Sb)などをドーピングしたものにより構成されることが好ましい。また、酸化マグネシウム(MgO)あるいは酸化亜鉛(ZnO)などにより構成してもよい。
第2電極15は、電気化学的に安定な金属により構成されていることが好ましく、例えば、金(Au),白金(Pt),クロム(Cr),アルミニウム(Al),コバルト(Co),パラジウム(Pd),ビスマス(Bi)または銀(Ag)などを用いることができ、あるいはこれらの合金により形成するようにしてもよい。また、析出させる金属と同じ金属により構成するようにすれば、電気化学的により安定な電極反応を実現することができるのでより好ましい。この他にも、主反応に用いる金属を予めあるいは随時十分に補うことができれば、カーボンにより構成するようにしてもよい。カーボンを使用することで、第2電極15の低価格化を図ることができるからである。
セパレータ16は、書き込みおよび消去の繰り返し動作によって発生し更に成長するデンドライトが第1電極と第2電極とを短絡させることを防ぐためのものであり、これにより電気化学表示素子10の表示寿命を長くすることができる。このセパレータ16の材料としては、例えば、ポリプロピレン,ポリエチレンなどの材料からなり、多軸または単軸の延伸により形成された微小な多孔質を有し、厚みは30μm以上60μm以下程度の薄膜状のものが好ましい。このセパレータ16の孔を第1電解質層13Aおよび第2電解質層13B中のイオンが通過することにより電極間の導通がとれ、電極反応により表示動作が行なわれるようになっている。なお、ゲル状の電解質などと共に使用する場合には、濡れ性を向上させるために、セパレータ16の両面を紫外線オゾン処理あるいはプラズマ処理などを施したものを用いてもよい。
間隙形成材17は、上述したように第1電極14および第2電極15とセパレータ16との間に介在し、電極間距離を一定に保持するためのものである。この電極間距離は、20μm〜200μmであることが好ましく、30μm〜120μmであればより好ましく、30μm〜50μmであれば更に好ましい。この理由は、電極間距離が薄い方が電極間の抵抗が小さくなり、発色・消色時間の低減や消費電力の低下を図ることができるが、薄すぎると着色剤の含有量が少なくなるため、白色性(光学濃度)が十分でなく、特に、20μm以下であると、表示装置自体の機械的強度が低下してしまうからである。この電極間距離を実現するために、間隙形成材17としては、例えば、絶縁性のプラスチックもしくはシリカ等のビーズからなる、外形が5μm以上100μm以下程度のものが好ましい。
封止樹脂は、例えば、アイオノマー、接着性ポリエチレンなどを用いることができる。
この電気化学表示素子10は、例えば、次のようにして製造することができる。
図7(A)に示したように、例えば、石英ガラス製の第1基板11上に、ITO膜を公知の方法によりストライプ状に成膜して第1電極14を形成する。また、図7(B)に示したように、第2電極15は、例えば、第1基板11と同様の材料からなる第2基板12上に、銀を公知の方法によりストライプ状に成膜して形成する。また、第1電極14と第1電極駆動回路22とを接続するための接続部14Aを第2基板12の裏面に形成する。
その後、上述した材料よりなり第1電極14と第2電極15との電極間距離が所期の値になるような間隙形成材17を、第1基板11および第2基板12上面に散布する。
次に、図示しないが、間隙形成材17を間にして第2基板12の上にセパレータ16を配設させる。これにより間隙形成材17の大きさの分だけ第2基板12とセパレータ16との間に空間領域(以下,第1注入領域という)が形成される。
その後、図7(C)に示したように、第2基板12と、間隙形成材17が散布された第1基板11とを貼り合わせると、同じく第1基板11とセパレータ16との間に空間領域(以下,第2注入領域という)が形成される。更にこの後、貼り合わされたパネル周縁を封止樹脂で封止するが、このとき電解液を注入するための注入口予定部には封止樹脂は塗布しない。これにより図示しない注入口が同時に形成される。
なお、第1注入領域および第2注入領域に注入される電解液との濡れ性を向上させるために予めセパレータ16の両面を紫外線オゾン処理あるいはプラズマ処理などを施しておいてもよい。
次に、電解液を、例えば、ジメチルスルホキシドとγ−ブチロラクトンとの混合溶媒にヨウ化銀(AgI)などの析出溶解材料とクマリンなどの第2の添加剤と二酸化チタン(TiO2 )などの着色剤とを加え、更に、上述のマクロモノマーと架橋剤とを加えて後の工程でゲル化できるものに調製する。
続いて、公知の真空注入法と同様な製造技術を用いて、上述の電解液を注入口から第1注入領域および第2注入領域に注入し、電解質層13を形成する。
最後に、注入口に封止材などを塗布して電解質層13を密封することにより電気化学表示素子10が完成する。なお、必要に応じてこの完成した電気化学表示素子10に熱を与えるか、あるいは紫外線を照射して電解液を架橋反応させて電解質層13をゲル状にしてもよい。
次に、周辺回路部20について説明する。
周辺回路部20は、図1に示したように、信号制御部21と、第1電極駆動回路(透明電極駆動回路)22と、第2電極駆動回路(対向電極駆動回路)23とを有している。信号制御部21は、信号線24,25を介して、透明電極駆動回路22および対向電極駆動回路23とそれぞれ接続されている。透明電極駆動回路22および対向電極駆動回路23は、信号制御部21からの信号により、電気化学表示素子10の各画素を選択的に表示させるものである。
図4は、図3に示すような三角波電圧を第2電極15の電圧を基準として第1電極14と第2電極15との間に印加した場合の電流−電圧過渡応答特性を示す。なお、図4は、対向電極に銀電極を用い、高分子電解質に銀イオンとヨウ素イオンとを含む場合の特性例である。
この図4に示した原理について説明する。上記第1電極14と第2電極15との間に第2電極15の電圧を基準としてゼロからマイナス側に電圧を印加していくと、しばらくは銀が析出せず、書き込みしきい電圧Vthを越えたところで第2電極15に対向する第1電極14の面に銀の析出が始まる。そして、書き込みしきい電圧Vthを越えたところで析出に伴う電流が流れ始める。銀の析出は、三角波電圧の頂点に相当する書き込み電圧を越え、次第に電圧が下がっても続き、先の書き込みしきい電圧Vthを下回っても続く。銀の析出が終わるのは、印加電圧が保持電圧Vkeまで下がった時である。すなわち、一度書き込みしきい電圧Vthを越えて銀の析出核が第1電極14側の表面上に形成されれば、書き込みしきい電圧Vth未満の電圧でも、銀の析出が起こる。一方、逆極性(プラス)の電圧を第1電極14と第2電極15との間に印加すると、上記の第1電極14に析出した銀の溶解が始まり、消去しきい電圧Vithに到達した時点で析出していた銀は消失する。これ以上の高い電圧を印加すると、ヨウ素が遊離して電極に付着し、黄色く着色されてしまう。
上記のような電流−電圧過渡応答特性を示す表示装置の駆動を考えた場合、最も単純には、書き込みしきい電圧Vthを越える電圧を印加して金属を析出させ、画素の書き込みを行い、消去しきい電圧Vithを越えない電圧を印加して金属を溶解させ、画素の消去を行うことが考えられる。本実施の形態では、2回の書き込み電圧を印加して画素の書き込みを行い、2回の消去電圧を印加して画素の消去を行うという複雑な動作を有する。
次に、以上のような構成による電気化学表示素子10および電気化学表示装置20の動作を説明する。なお、説明の簡略化のため、図1に示す3×3画素によるモノクロ表示を例にとり、説明する。
図5は、電気化学表示素子10における書き込み時の駆動電圧波形の一例を示すものである。図5においては、各透明電極C1,C2,C3に印加される電圧、各対向電極R1,R2,R3に印加される電圧、及び画素(C3,R3)の印加電圧、すなわち、透明電極C3と対向電極R3との間の印加電圧を示している。
表示に際しては、最初に、透明電極駆動回路22は、各透明電極(C1,C2,C3)にそれぞれ信号電圧(0, 0, Vwc)を同時に印加する。ここで、信号電圧Vwcは、書き込みしきい電圧Vthより小さい電圧である。そして、対向電極駆動回路23は、各対向電極R1,R2,R3に選択電圧Vwrを順次印加する。ここで、選択電圧Vwrは、書き込みしきい電圧Vthより小さい電圧である。なお、信号電圧Vwcは、選択電圧Vwrの出力と同期して出力される。
具体的には、画素(C3,R3)では、透明電極C3の信号電圧Vwcと、対向電極R3の選択電圧Vwrとが重なり、その結果、これらの電位差により書き込みしきい電圧以上の第1の書き込み電圧Va(=Vwc−Vwr)が、透明電極C3と対向電極R3との間に生じ、透明電極C3上に金属の析出核が形成される。一方、画素(C2,R1)では、透明電極C2の信号電圧Vwcと対向電極R1の選択電圧Vwrとが重なる期間が無く、書き込みしきい電圧Vthを下回る信号電圧Vwc、あるいは選択電圧Vwrのうちのいずれか一方が、透明電極C3と対向電極R3との間に生じるのみである。したがって、金属の析出は起こらない。
その後、各透明電極C1,C2,C3を接地し、対向電極駆動回路23により、各対向電極R1,R2,R3に書き込みしきい電圧Vthより小さい選択電圧Vwrを同時に印加する。その結果、これらの電位差により書き込みしきい電圧より小さい第2の書き込み電圧Vw(=−Vwr)が、透明電極C1,C2,C3と対向電極R1,R2,R3との間に生じ、先の書き込み電圧Vaで透明電極C3に析出した金属の析出核の周りに金属が追加析出され、画像の表示(書き込み)が行われる。ここで、上記の「同時」とは、必ずしも厳密に時間的に同時であることを意味するものではなく、画像が画面全体で同時に表示されたとユーザが感じる程度に時間的に同時であることを意味する。なお、金属の析出核のない画素においても第2の書き込み電圧Vw(=−Vwr)が印加されているが、上記で詳述した図4の電流−電圧過渡応答特性より、書き込みしきい電圧より小さい第2の書き込み電圧が印加されても金属の析出は起こらない。
さらに、上記の第1の書き込み電圧Vaの印加時間Tasを第2の書き込み電圧Vwの印加時間Twよりも短くすることにより、その印加時間の短縮分に走査線の数(対向電極の数)をかけた時間だけ金属の析出核の形成に要する時間Taを短縮している。このような短縮が可能な理由は、第1の書き込み電圧Vaは、透明電極側に金属の析出核を形成するだけでよいので、不必要に長時間電圧を印加する必要が無いからである。なお、第2の書き込み電圧Vwを全ての書き込み対象画素について同時に印加するので、各書き込み対象画素に電圧を印加する場合に比べて、印加時間は非常に短時間で済む。
ここで、仮に一回の書き込み電圧Vaのみで金属の析出を完了しようとすると、画素毎に析出に長時間を要し、特に画素数が増えれば増えるほど表示に時間がかかる。また、上記の電気化学表示素子10において、各画素は、金属の析出以前には主にキャパシタとしての特性が強く、析出に伴って抵抗値が小さくなるという特性を持っている。そのため、画素に十分な金属の析出があると、金属の析出により低抵抗となった画素に不要な電流が流れてクロストークが発生したり、コントラストが低下する等の問題が生ずる。
また、仮に一回の書き込み電圧Vaのみで金属の析出を完了しようとすると、走査線(対向電極)を順次走査するに従い順次表示が行われる。そのため、ユーザは画像が表示される様子を視覚的に不自然に感じるだけでなく、表示が完了したと感ずるまでに長い時間がかかることになる。
しかし、本実施の形態では、最初に書き込みしきい電圧Vth以上の第1の書き込み電圧Vaを印加したのち、書き込みしきい電圧Vthより小さい第2の書き込み電圧Vwを印加しているので、最初の第1の書き込み電圧Vaの印加において金属の析出核を不必要に大きくする必要がない。その結果、金属を析出させた画素に不要な電流が流れてクロストークが発生したり、コントラストが低下することが無い。
また、最初に各画素に書き込みしきい電圧Vth以上の第1の書き込み電圧Vaを順次印加したのち、全ての書き込み対象画素に対して書き込みしきい電圧Vthより小さい第2の書き込み電圧Vwを同時に印加しているので、例え2回に分けて書き込み電圧を印加したとしても、画像を表示するのに要する時間は非常に短い。その結果、画素数が増えたとしても画像を書き込む時間が非常に短いだけでなく、よりクロストークの無い正確な析出表示が可能となる。なお、この「同時」は、上記の定義と同義である。
また、全ての書き込み対象画素について同時に第2の書き込み電圧Vwを印加することにより、画像を画面全体で同時に表示している。なお、この「同時」は、上記の定義と同義である。その結果、ユーザは画像が書き込まれる様子を自然に感じることができる。
図6は、画像消去時の駆動電圧波形の一例を示すものである。図6においては、各透明電極C1,C2,C3に加えられる電圧、各対向電極R1,R2,R3に加えられる電圧、及び画素(C3,R3)の印加電圧、すなわち、透明電極C3と対向電極R3との間の印加電圧を示している。
消去に際しては、最初に、各透明電極C1,C2,C3を接地し、対向電極駆動回路23により、各対向電極R1,R2,R3に書き込み時とは逆極性で、消去しきい値電圧Vithより小さい選択電圧Veを同時に印加する。その結果、これらの電位差により消去しきい電圧Vithより小さい第1の消去電圧Ve(=−Ver)が、透明電極C1,C2,C3と対向電極R1,R2,R3との間に加わり、先の書き込み駆動電圧波形の印加で透明電極C3上に析出した金属がほとんど溶解される。この時、ユーザにとって画像が消去されたように見える。ここで、上記の「同時」とは、必ずしも厳密に時間的に同時であることを意味するものではなく、画像が画面全体で同時に消去されたとユーザが感じる程度に時間的に同時であることを意味する。なお、金属の析出核のない画素においても第1の消去電圧Ve(=−Ver)が印加されているが、上記で詳述した図4の電流−電圧過渡応答特性より、消去しきい電圧より小さい第1の消去電圧が印加されても陰イオンの酸化は生じない。
その後、透明電極駆動回路22は、各透明電極(C1,C2,C3)にそれぞれ信号電圧(0, 0, Vec)を同時に印加する。ここで、信号電圧Vecは、消去しきい電圧Vithより小さい電圧である。そして、対向電極駆動回路23は、各対向電極R1,R2,R3に選択電圧Verを順次印加する。ここで、選択電圧Verは、消去しきい電圧Vithより小さい電圧である。なお、信号電圧Vecは、選択電圧Verの出力と同期して出力される。
具体的には、画素(C3,R3)では、透明電極C3の信号電圧Vecと、対向電極R3の第4の選択電圧Verとが重なり、その結果、これらの電位差により消去しきい電圧Vith以上の第2の消去電圧Vs(=Vec−Ver)が加わり、透明電極C3上にわずかに残存している金属の析出核が完全に溶解され、画像の消去が完了する。一方、画素(C2,R1)では、透明電極C2の信号電圧Vecと対向電極R1の選択電圧Verとが重なる期間が無く、消去しきい電圧Vithを下回る信号電圧Vec、あるいは選択電圧Verのうちのいずれか一方が加わるのみである。したがって、消去対象画素以外の画素には消去しきい電圧Vithを下回る電圧しか印加されないこととなり、消去対象画素以外の画素では陰イオンの酸化は起こらない。
上述のような書き込み・消去動作がなされる本実施の形態の電気化学表示装置では、電解質層13中にトリチオカーボネート類、ジアルキルチオ尿素およびチアゾリジン構造を有する化合物のうちの少なくとも1種の軟らかいドナー性を有する第1の添加剤を含むようにしたので、軟らかいアクセプター性を有する銀イオンの析出(還元反応)を促進させることにより表示動作の温度依存性を小さくすることができ、特に10℃以下の低温環境下においても画像表示が可能になる。
特に、以下に示した実施例の結果から、電解質として、電解液に対して2質量%以上10質量%以下の第1の添加剤を添加した後、固化したものを用いることにより、更に良好な画像表示をすることができる。
更に、本発明の具体的な実施例について図1を参照し、同一の符号を用いて詳細に説明する。
(実施例1−1〜1−6)
本発明の実施例1−1〜1−6では、電解質層13を形成する際に用いる電解液を調製した。
本発明の実施例1−1〜1−6では、電解質層13を形成する際に用いる電解液を調製した。
まず、ジメチルスルホキシド(DMSO)とγ−ブチロラクトン(γBL)とを6:4の体積比で混合した溶媒に、析出溶解材料として0.5mol/lのヨウ化銀および支持電解質塩として0.75mol/lのヨウ化リチウムを溶解させ、更に、第2の添加剤として、クマリン、メルカプトベンゾイミダゾールおよびトリエタノールアミンをそれぞれ5g/l、5g/lおよび10g/lとなるように加えて溶液を調製した。続いて、調製した溶液とこの溶液をゲル状にするためのマクロモノマー(ELEXCEL・TA140;第一工業製薬社製)と表示背景を白くするための白色顔料である二酸化チタンとをそれぞれ重量比で、1:0.2:1.2の割合で混合し、更に、マクロモノマーを架橋化反応させるための架橋剤(過酸化物)をマクロモノマーに対して2質量%〜5質量%ほど加えることにより、後の工程でゲル化することが可能な電解液(以後、電解液1という)を調製した。
この電解液1に、更に、化1〜化6に示した第1の添加剤をそれぞれ5g/l添加することにより実施例1−1〜1−6で用いる電解液を調製した。
また、実施例1−1〜1−6に対する比較例に用いる電解液として、比較例1−1では電解液1をそのまま用い、また、比較例1−2および比較例1−3においては、第1の添加剤として化7または化8に示したものを用いたことを除き、他は実施例1−1〜1−6と同様にして調製した。
調製した実施例1−1〜1−6および比較例1−1〜1−3の電解液について、60℃の恒温下で24時間の保存試験を行ない、電解液中における第1の添加剤の安定性の評価を行った。この結果を表1に示す。
表1に示したように、実施例1−1,1−2,1−4によれば、電解液の色の変化は見受けられず、化1、化2または化4に示した第1の添加剤は電解液中で安定性を有することがわかった。また、実施例1−3では、化3に示した第1の添加剤自体が黄色の液体であることから、電解液1に添加した時点で電解液が黄色に変化したが、保存試験後の評価において、黄色の程度の変化は見られなかった。実施例1−5,1−6については、第1の添加剤を加えた直後に黄色に変色し、実施例1−6においては保存試験後、更に赤色に変化した。
一方、電解液1を用いた比較例1−1および化7に示した第1の添加剤を含む比較例1−2は、保存試験後において変色などはせず、化8に示した第1の添加剤を含む比較例1−3については、第1の添加剤を添加した時点で電解液が黄色に変化した。
(実施例2−1〜2−5)
本発明の実施例2−1〜2−5では、表2に示した第1の添加剤を含む各電解液において銀が析出する閾値電圧を調べるために、サイクリックボルタンメトリー(Cyclic Voltammetry;CV)測定を行った。その結果を表2にまとめて示すと共に、図8乃至図12にそれぞれのサイクリックボルタモグラムを示す。なお、本測定は通常の参照極を含む三極式の測定法ではなく、対極に参照極を短絡させた二極式の測定法を導入した。
本発明の実施例2−1〜2−5では、表2に示した第1の添加剤を含む各電解液において銀が析出する閾値電圧を調べるために、サイクリックボルタンメトリー(Cyclic Voltammetry;CV)測定を行った。その結果を表2にまとめて示すと共に、図8乃至図12にそれぞれのサイクリックボルタモグラムを示す。なお、本測定は通常の参照極を含む三極式の測定法ではなく、対極に参照極を短絡させた二極式の測定法を導入した。
CV測定は、−5℃、0℃、10℃、20℃、25℃、30℃および40℃のそれぞれの温度で行った。また、対極の電位を基準電位(0V)とし、基準電位(0V)→−0.75V(0℃以下のときは−0.85V)→1.0V→基準電位(0V)を1サイクルとして10サイクルの掃引を行った。このときの掃引速度を50mV/secとした。なお、対極には銀電極を使用し、作用極にはITO電極を使用した。
また、実施例2−1〜2−5に対する比較例として、比較例2−1には電解液1を用い、比較例2−2および比較例2−3についてはそれぞれ、比較例1−2または比較例1−3と同一組成の電解液を用いたことを除き、他は実施例2−1〜2−5と同様にCV測定を行った。この結果も合わせて表2に示し、また、図13乃至図15にそれぞれのサイクリックボルタモグラムを示す。
表2および図8乃至図15に示したように、実施例2−1〜2−5によれば、比較例2−1に比べて、同温条件下において、閾値電圧が小さくなった。40℃の環境下における閾値電圧は、実施例2−1〜2−3は−0.55V程度、実施例2−4は−0.4V程度、実施例2−5では閾値電圧が−0.2V程度まで小さくなった。なお、40℃の環境下において、実施例2−1〜2−3の閾値電圧は比較例2−2のものとほぼ同等であり、実施例2−4の閾値電圧は比較例2−3のものとほぼ同等であった。
(実施例3−1〜3−4)
実施例3−1〜3−4では、実施例1−1〜1−4で用いた電解液と同一組成の電解液を用いて図2に示した電気化学表示素子10を作製した。
まず、図7(A),(B)に示したように、厚さ0.7mmの石英ガラス製の第1基板11上に、ITO膜をストライプ状に成膜することにより第1電極14を形成し、第2電極15は、第1基板11と同様の材料からなる第2基板12上に銀をストライプ状に成膜することにより形成した。具体的な形状については、第1電極14および第2電極15の本数はそれぞれ40本、電極幅Lc1(Lr1)は0.3mm、電極ピッチLc2(Lr2)は0.6mmとなるようにした。また、第1電極14と第1電極駆動回路22とを接続するための接続部14Aを第2基板12の裏面に形成した。
その後、上記実施の形態で説明したように第1注入領域および第2注入領域を形成した後、電解液を注入するための注入口予定部には封止樹脂を塗布しないようにしてパネル周縁を封止樹脂で封止することにより、図示しない注入口を同時に形成した。
次に、上述したように、実施例1−1〜1−4で用いた電解液と同一組成のものを調製し、この電解液を公知の真空注入法を用いて注入口から第1注入領域および第2注入領域に注入して電解質層13を形成し、注入口を封止材で密封した。最後に、この電気化学表示素子10を70℃〜100℃で数分〜10程度加熱してマクロモノマーと過酸化物とを架橋反応させることによりゲル状の電解質層13を形成した。これにより電気化学表示素子10が完成した。
このように作製した電気化学表示素子10に対して、パッシブマトリックス駆動により図5(書き込み)に示した駆動波形(印加電圧)を入力して画像表示させる際に、第1の前提条件として「40℃以下の温度で画像表示を正常に行うことができること」、また、第2の前提条件として「駆動波形の印加電圧を動作温度に因らず一定にすること」の2つの前提条件を設けた。第1の前提条件を設けた理由としては、低温環境下のみならず、当然のことながら常温環境下においても従来の電気化学表示装素子と同等以上の表示性能を有していなければならないからである。上記実施例2−1〜2−4から得られた結果を踏まえて具体的に説明すると、例えば、40℃の環境下で25℃における閾値電圧を用いて電気化学表示素子10を駆動させた場合、40℃における閾値電圧よりも大きいため、非表示画素にまで析出核が形成されて着色してしまう。このような表示不良を発生させないようにするため、上述の第1の前提条件を設けた。また、第2の前提条件を設けた理由としては、温度に応じて印加電圧を変えることにより画像表示の温度依存性を極めて緩和することができるが、これでは温度モニタ機構およびこの機構と連動して印加電圧を制御する回路などを更に組み込まなければならず、表示装置が極めて複雑になってしまうからである。
以上のことから、実施例3−1〜3−4では、以下に示す条件で電気化学表示装素子10の黒表示状態の反射率を評価した。
透明電極11に印加する選択電圧Vwc、対向電極12に印加する選択電圧Vwrおよび全画素に同一の書き込み電圧Vwを表3に示したように40℃環境下における閾値電圧を基準としてそれぞれ印加した。書き込み電圧Vwについては、閾値電圧よりも小さい電圧を印加するので、印加強度を0.1V〜0.15V程度低くした。また、1つの画素に対して選択電圧Vwr,Vwc(書き込み電圧Va(=Vwc−Vwr))を印加するのに要する時間Tasを30msec、書き込み電圧Va(=Vwc−Vwr)を全ての画素に印加するのに要する時間Taを1200msec、全画素に同一の書き込み電圧Vwを印加するのに要する時間Twを800msecとした。このように駆動波形を固定して、−5℃、0℃、10℃、20℃、25℃、30℃および40℃の各温度における黒表示状態の反射率を評価した。この結果について、電気化学表示素子10の駆動時における反射率の経時変化を図16乃至図19に示し、書き込み電圧(Va,Vw)が印加されて反射率が一定に保たれているときの反射率と動作温度との関係を図20に示す。
また、実施例3−1〜3−4に対する比較例として、比較例3−1は電解液1を用い、比較例3−2および比較例3−3についてはそれぞれ、比較例1−2および比較例1−3と同一組成の電解液を用いたことを除き、他は実施例3−1〜3−4と同様に電気化学表示素子10を作製した。比較例3−1〜3−3についても実施例3−1〜3−4と同様に、黒表示状態の反射率を評価した。この結果についても、電気化学表示素子10の駆動時における反射率の経時変化を図21乃至図23に示し、また、書き込み電圧Vaが印加されて反射率が一定に保たれたときの反射率と動作温度との関係を図20に合わせて示す。
図20(図16乃至図19も合わせて参照)に示したように、化1乃至化4に示した第1の添加剤を用いた実施例3−1〜3−4によれば、比較例3−1〜3−3に比べて、−5℃以上10℃以下の温度範囲において黒の書き込み濃度が向上(黒表示状態の反射率が低下)した。このことから、化1乃至化4に示した第1の添加剤を加えた電解液を用いれば、上記の低温環境下であってもパッシブマトリックス駆動を用いて画像表示させることができることが分かった。また、実施例3−1から同様なチアゾリジン構造を有する化5および化6に示した第1の添加剤についても同様な効果が得られると思われる。なお、化7および化8に示した第1の添加剤を用いた比較例3−2,3−3においては、所期の効果は得られなかった。
(実施例4−1〜4−4)
実施例3−1〜3−4において、化1乃至化4示した第1の添加剤を用いることにより、−5℃以上10℃以下の低温環境下において表示動作を向上させることができることが明らかとなったことから、実施例4−1〜4−4は、更に、化1乃至化4に示した第1の添加剤を用いて、表4に示したように電解質中の第1の添加剤の濃度を変化させた場合における動作温度に対する黒表示状態の反射率を評価した。動作温度については、実施例3−1〜3−4と同様の各温度に設定した。また、この評価に加えて、実施例1−1〜1−4と同一の保存条件で保存試験を行い、第1の添加剤の濃度変化に伴う電解液の劣化についても評価を行った。この結果を表4および図24乃至図27に示す。
実施例3−1〜3−4において、化1乃至化4示した第1の添加剤を用いることにより、−5℃以上10℃以下の低温環境下において表示動作を向上させることができることが明らかとなったことから、実施例4−1〜4−4は、更に、化1乃至化4に示した第1の添加剤を用いて、表4に示したように電解質中の第1の添加剤の濃度を変化させた場合における動作温度に対する黒表示状態の反射率を評価した。動作温度については、実施例3−1〜3−4と同様の各温度に設定した。また、この評価に加えて、実施例1−1〜1−4と同一の保存条件で保存試験を行い、第1の添加剤の濃度変化に伴う電解液の劣化についても評価を行った。この結果を表4および図24乃至図27に示す。
また、実施例4−1〜4−4に対する比較例として、比較例3−1の結果も合わせて図24乃至図27に示す。
図24乃至図27にから明らかなように、化1乃至化4に示した第1の添加剤を添加した実施例4−1〜4−4によれば、第1の添加剤を添加しない比較例3−1に比べて、特に、25℃以下の温度範囲において黒の書き込み濃度が向上(反射率が低下)した。また、実施例4−1〜4−4において、25℃以下の温度範囲で化1〜化4に示した第1の添加剤の濃度を増加させると、黒の書き込み濃度は向上し、極大値を示したのち低下する傾向がみられた。
すなわち、化1乃至化4で表される第1の添加剤を電解液に含むようにすれば、黒の書き込み濃度を向上させることができ、電解液における第1の添加剤の含有量を2質量%以上10質量%以下とすることが好ましく、5質量%とすればより好ましいことが分かった。
なお、、保存試験については、化1および化2に示したそれぞれの第1の添加剤を20質量%添加した場合、電解液が着色劣化し、化3および化4に示した第1の添加剤については、10質量%以上添加した場合着色劣化し、更に、電解液をゲル化する際の架橋反応を阻害する傾向があることが分かった。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
例えば、上記実施例では、軟らかいアクセプター性を有する析出溶解材料として銀を用いた場合について説明したが、同様な性質を有するものであれば、他の析出溶解材料を用いてもよい。
また、上記実施例では、電解質中に第1の添加剤が1種類のみ含まれる場合について説明したが、第1の添加剤を混合して用いるようにしてもよい。
駆動波形については、上記実施の形態では、個々の書き込み対象画素について順次第1電極と第2電極との間に第1の書き込み電圧を印加したのち、全ての書き込み対象画素について同時に第2の書き込み電圧を印加し、全ての消去対象画素について同時に第1電極と第2電極との間に第1の消去電圧を印加したのち、個々の消去対象画素について順次第2の消去電圧を印加しているが、個々の画素について異なる間合い(タイミング)で書き込み・消去電圧を印加してもよい。
更に、上記実施の形態および実施例では、パッシブマトリックス駆動を用いた場合における第1の添加剤の効果について説明したが、アクティブマトリックス駆動を用いる場合においても第1の添加剤を含む本発明の電解質を用いてもよい。これにより、アクティブマトリックス駆動により動作する表示装置においても駆動電圧を小さくすることができ、消費電力を低減することができると共に、表示素子の長寿命化などの表示性能についても向上させることができるからである。
10…電気化学表示素子、11…第1基板、12…第2基板、13…電解質層、13A…第1電解質層、13B…第2電解質層、14, C1,C2,C3…第1(透明)電極、15, R1,R2,R3…第2(対向)電極、16…セパレータ(多孔質性隔膜)、17…間隙形成材、20…周辺回路部
Claims (23)
- チアゾリジン構造を有する化合物、ジアルキルチオ尿素およびトリチオカーボネート類のうちの少なくとも1種からなる第1の添加剤を含む
ことを特徴とする電解質。 - 前記チアゾリジン構造を有する化合物は、チアゾリジン−2−チオン類を含む
ことを特徴とする請求項1記載の電解質。 - 前記チアゾリジン構造を有する化合物は、3−メチルベンゾチアゾール−2−チオンを含む
ことを特徴とする請求項1記載の電解質。 - 前記ジアルキルチオ尿素は、N,N’−ジメチルチオ尿素を含む
ことを特徴とする請求項1記載の電解質。 - 前記トリチオカーボネート類は、環状または鎖状のトリチオカーボネート類を含む
ことを特徴とする請求項1記載の電解質。 - 前記鎖状のトリチオカーボネート類は、ジメチルトリチオカーボネートを含む
ことを特徴とする請求項5記載の電解質。 - 前記環状のトリチオカーボネート類は、エチレントリチオカーボネートを含む
ことを特徴とする請求項5記載の電解質。 - 3−メチルベンゾチアゾール−2−チオン、N,N’−ジメチルチオ尿素、エチレントリチオカーボネートおよびジメチルトリチオカーボネートのうち少なくとも1種の第1の添加剤を含む
ことを特徴とする請求項1記載の電解質。 - 電解液に対して2質量%以上10質量%以下の前記第1の添加剤を添加した後、固化されたものである
ことを特徴とする請求項1記載の電解質。 - 第2の添加剤として、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、クマリン、メルカプトベンゾイミダゾールおよびトリエタノールアミンのうちの少なくとも1種を含む
ことを特徴とする請求項1記載の電解質。 - 析出溶解材料として、ヨウ化銀(AgI)およびヨウ化リチウム(LiI)のうちの少なくとも1種を含む
ことを特徴とする請求項1記載の電解質。 - 第1電極と第2電極とが電解質を間にして対向配置された構造を有する電気化学表示素子であって、
前記電解質は、チアゾリジン構造を有する化合物、ジアルキルチオ尿素およびトリチオカーボネート類のうちの少なくとも1種からなる第1の添加剤を含む
ことを特徴とする電気化学表示素子。 - 前記チアゾリジン構造を有する化合物は、チアゾリジン−2−チオン類を含む
ことを特徴とする請求項12記載の電気化学表示素子。 - 前記チアゾリジン構造を有する化合物は、3−メチルベンゾチアゾール−2−チオンを含む
ことを特徴とする請求項13記載の電気化学表示素子。 - 前記ジアルキルチオ尿素は、N,N’−ジメチルチオ尿素を含む
ことを特徴とする請求項12記載の電気化学表示素子。 - 前記トリチオカーボネート類は、環状または鎖状のトリチオカーボネート類を含む
ことを特徴とする請求項12記載の電気化学表示素子。 - 前記鎖状のトリチオカーボネート類は、ジメチルトリチオカーボネートを含む
ことを特徴とする請求項16記載の電気化学表示素子。 - 前記環状のトリチオカーボネート類は、エチレントリチオカーボネートを含む
ことを特徴とする請求項16記載の電気化学表示素子。 - 前記電解質は、3−メチルベンゾチアゾール−2−チオン、N,N’−ジメチルチオ尿素およびエチレントリチオカーボネートおよびジメチルトリチオカーボネートのうち少なくとも1種からなる第1の添加剤を含む
ことを特徴とする請求項12記載の電気化学表示素子。 - 電解液に対して2質量%以上10質量%以下の前記第1の添加剤を添加した後、固化されたものである
ことを特徴とする請求項12記載の電気化学表示素子。 - 前記電解質は、第2の添加剤として、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、クマリン、メルカプトベンゾイミダゾールおよびトリエタノールアミンのうちの少なくとも1種を含む
ことを特徴とする請求項12記載の電気化学表示素子。 - 前記電解質は、析出溶解材料として、ヨウ化銀(AgI)およびヨウ化リチウム(LiI)のうちの少なくとも1種を含む
ことを特徴とする請求項12記載の電気化学表示素子。 - 第1電極と第2電極とが電解質を間にして対向配置された構造を有する電気化学表示素子を含む表示部と、前記第1電極および前記第2電極に駆動電圧を印加する周辺回路部とを備えた電気化学表示装置であって、
前記電解質は、チアゾリジン構造を有する化合物、ジアルキルチオ尿素およびトリチオカーボネート類のうちの少なくとも1種からなる添加剤を含む
ことを特徴とする電気化学表示装置。
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| JP2004109283A JP2005292595A (ja) | 2004-04-01 | 2004-04-01 | 電解質およびそれを用いた電気化学表示素子、並びに電気化学表示装置 |
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| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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| JP2004109283A JP2005292595A (ja) | 2004-04-01 | 2004-04-01 | 電解質およびそれを用いた電気化学表示素子、並びに電気化学表示装置 |
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ID=35325561
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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| JP2004109283A Pending JP2005292595A (ja) | 2004-04-01 | 2004-04-01 | 電解質およびそれを用いた電気化学表示素子、並びに電気化学表示装置 |
Country Status (1)
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-
2004
- 2004-04-01 JP JP2004109283A patent/JP2005292595A/ja active Pending
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