JP2005292571A - 回折光学素子及びそれを有する光学系 - Google Patents

回折光学素子及びそれを有する光学系 Download PDF

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Abstract

【課題】 格子側面に入射光が到達するような場合であっても、格子側面で生ずる不要光が、像性能を低下させにくい回折光学素子及びそれを有する光学系を得ること。
【解決手段】 格子面と格子側面を含み、使用波長領域全域で特定次数(設計次数)に回折するブレーズ型の回折格子を、レンズ作用をするように同心円状の周期構造とした回折格子部を有する回折光学素子に於いて、該格子側面は、該回折格子の格子先端を連ねた包絡面の各格子先端位置における面法線と格子面がなす角度に対し、より鈍角となる方向に傾いており、該格子側面の傾きは、該包絡面の面法線となす傾き角度が、該回折格子部の中心領域から周辺領域で変化し、且つ隣接する回折格子間の傾き角度の変化量が連続して0でない領域を1箇所以上有すること。
【選択図】 図1

Description

本発明は、回折光学素子及びそれを有する光学系に関し、例えば複数の波長、あるいは帯域光で使用するデジタルカメラ、ビデオカメラ、フィルム用カメラ、望遠鏡、双眼鏡等の各種の光学機器に好適なものである。
従来より、分散の異なる複数の硝材の組み合わせにより光学系の色収差を減じる方法に対して、レンズ面やあるいは光学系の1部に回折作用を有する回折光学素子(以下回折格子とも言う)を設けることで、色収差を減じる方法が知られている(非特許文献1、特許文献1〜3)。これは、光学系中の屈折面と回折面とでは、ある基準波長の光線に対する色収差の出方が逆方向に発現するという物理現象を利用したものである。
さらに、このような回折光学素子は、その周期的構造の周期を変化させることで非球面レンズ的な効果をも持たせることができ収差の低減に大きな効果がある。
ここで、屈折においては、1本の光線は屈折後も1本の光線であるのに対し、回折においては1本の光線が、各次数の複数の光に分かれてしまう。そこで、レンズ系の一要素として回折光学素子を用いる場合には、使用波長領域の光束が1つの特定次数(以後設計次数とも言う)に集中するように格子構造を決定する必要がある。
そこで、一般的に図25に示すように、レンズと同様に用いられる回折光学素子(回折レンズ)1は、格子面4と、格子側面5から構成されるブレーズ構造より成っている。このような、ブレーズ構造の回折光学素子1は、特定の回折次数と、特定の波長に対して、高い効率で光を回折できる。しかしながらその一方で、格子側面5に入射した光束は、格子側面5で反射、屈折など格子面4と異なる振る舞いをするため、回折レンズとしては、不要な光となり好ましくない。
そこで、この格子側面5での不要光を抑制するようにした回折光学素子が知られている(特許文献4〜6)。
図26はUSP5801889で提案されている回折光学素子を有した光学系の要部概略図である。図26においては、光学系に回折光学素子を配置する際に、格子側面5に入射光束が当たりにくいように、格子溝を連ねた包絡面7の曲率と格子側面5の角度を最適化している。尚、図26において、40は絞り、41は像面である。図26では、特定の入射角に対して最適な側面形状を与える方法として、入射角に概平行となるように格子側面5を形成している。
また、特開平10−268115号公報や、特開平2003−294924号公報でも、同様に入射光または、射出角が格子側面で、ケラレないように配置する構成であるため、本質的に格子側面で発生する不要光を低減する考え方は同じである。
上記、従来例のように、格子側面を、入射光の方向に概平行に形成されるのは、格子側面での不要光を抑制する手段として好ましいが、様々な形状の回折格子を含む回折光学素子を考えた場合、入射角と概平行方向に格子側面を形成できない場合が発生する。以下、順をおって説明する。
回折光学素子の製法としては、型を作成し、型から複製を行なうことで回折光学素子を製造するのが、量産性、コストの観点から一般的である。このような製法を前提とした場合、型から回折光学素子を良好に形状を転写しながら離型できる形状には制約がある。今図25に示すような、同心円形状の回折格子部より成る回折光学素子を、型から離型する場合、図31(A)で示したように、成形用型8を用い、外周の1箇所を起点Sとし、反対側の外周を離型の終点Eとする。そうすると、格子形状にもよるが、回折面4と格子側面5には特定の方向に図32に示すような変形が発生し、光学性能上問題となる。図30に示す回折格子の格子形状では、回折光学素子の中心から離型終点方向の格子形状に変形が発生しやすい。そこで、格子形状の変形を発生しないためには、図31(B)で示したように、外周部全域を離型起点Sとし、中心部が離型終点Eとなるように、離型を行なっていくことが必要となってくる。このような離型方法では、微小領域では、回折光学素子が面法線方向に離型されていると見なすことができる。
このような、比較的一般に用いられている回折光学素子の製法では、図30に示すような凸面に正のパワー(焦点距離の逆数)の回折格子部3を付加したような形状で、格子側面5が光軸Oに平行な方向となるような回折光学素子1は格子形状の変形という観点から製造上かなり困難な形状である。従って、凸面に正のパワーの回折格子部を付加したような形状では、図23に示すように格子側面5は凸面の面法線6a方向に概平行となる構成となる。このような形状にすることで、図31(B)に示した離型方法で、格子変形は大幅に改善される。
図34はこのときの成形型8と回折光学素子1の成形における離型方法を示す概略図である。
SPIE Vol.1354 International Lens Design Conference(1990) 特開平4−213421号公報 特開平6−324262号公報 USP5044706号 USP5801889号 特開平10−268115号公報 特開平2003−294924号公報
図33に示す形状の回折光学素子は、図から明らかのように、回折光学素子1に、光軸Oに近い方向(図中a)から光束が入射すると、格子側面5で不要光が発生し、これを抑制することが難しい。回折光学素子の製作に問題がなく、従来の構成が適用できるのは、図33中の光軸Oに離れた側から光軸O側に進むbの方向から光が入射する場合であるが、bの方向からの光束が通常、結像に寄与することは稀である。
また、この不要光の発生は、上述した1種類の回折格子から構成される回折光学素子だけでなく、積層構造の回折光学素子にも当てはまる。積層構造の回折光学素子は、回折格子の数も増え、回折格子の格子高さも高くなる傾向にあるので、不要光の発生はより多くなってくる。
本発明は、格子側面に入射光が到達するような場合であっても、格子側面で生ずる不要光が、像性能を低下させにくい回折光学素子及びそれを有する光学系の提供を目的とする。
さらに、製造上からも型での成形など量産性の良い製造方式を使用できるような回折光学素子の提供を目的としている。
請求項1の発明の回折光学素子は、格子面と格子側面を含み、使用波長領域全域で特定次数(設計次数)に回折するブレーズ型の回折格子を、レンズ作用をするように同心円状の周期構造とした回折格子部を有する回折光学素子に於いて、該格子側面は、該回折格子の格子先端を連ねた包絡面の各格子先端位置における面法線と格子面がなす角度に対し、より鈍角となる方向に傾いており、該格子側面の傾きは、該包絡面の面法線となす傾き角度が、該回折格子部の中心領域から周辺領域で変化し、且つ隣接する回折格子間の傾き角度の変化量が連続して0でない領域を1箇所以上有することを特徴としている。
請求項2の発明の回折光学素子は、分散の異なる材料からなる回折格子を2つ以上近接させて重ね合わされた積層格子構造の回折光学部を持ち、使用波長領域で、設計波長を2つ以上有する回折光学素子に於いて、該回折格子部は、格子面と格子側面を含むブレーズ型の回折格子を、レンズ作用をするように同心円状の周期構造より成り、該回折格子部の少なくとも1つの格子側面は、回折格子の格子先端を連ねた包絡面の各格子先端位置における面法線と格子面がなす角度に対し、より鈍角となる方向に傾いており、該格子側面の傾きは、該包絡面の面法線となす傾き角度が、該回折格子部の中心領域から周辺領域で変化し、且つ隣接する回折格子間の傾き角度の変化量が連続して0でない領域を1箇所以上有することを特徴としている。
本発明によれば、格子側面に入射光が到達するような場合であっても、格子側面で生ずる不要光が、像性能を低下させにくい回折光学素子及びそれを有する光学系を達成することができる。
この他本発明によれば、製造上からも型での成形など量産性の良い製造方式を使用できるような回折光学素子を得ることができる。
以下、本発明の各実施例を各図を用いて説明する。
図1は本発明の実施例1の回折光学素子の正面図及び側面図である。回折光学素子1は平板又はレンズより成る基板2の片側又は両方の面に回折格子部3を設けて形成されている。そして、本実施例では、回折格子部3が形成されている基板2の面は、曲面(図では凸面)となっている。回折格子部3は光軸Oを中心とした同心円状の回折格子形状からなり、レンズ作用を有している。
図2は図1の回折光学素子1を図中A−A′断面で切断した断面形状の一部の拡大図である。図2は格子深さ方向にかなりデフォルメされた図となっている。また、構成を分かりやすくするために格子数も実際よりは少なく描かれている。
回折格子部3は、格子面4と格子側面5から構成されるブレーズ構造の回折格子3aからなり、光軸Oから外周部にいくに従って格子ピッチpL(L=1,2…)を徐々に変化させることで、レンズ作用(光の収斂作用や発散作用)を有するようにしている。また、ブレーズ構造にすることで、回折光学素子1に入射した入射光は、回折格子3aで回折せずに透過する0次回折方向に対し、特定の回折次数(図では1次)方向に集中して回折する。また、回折格子部3の格子先端部3bを連ねた包絡面6は曲面からなり、基板2の格子形成側の面2aの曲率半径とほぼ等しい曲率半径の曲面である。
厳密には、基板2の曲率中心と包絡面6の曲率中心が一致する曲率半径となっている。一方、格子溝部3cを連ねた包絡面7は、後述するが、中心から数えてk番目の格子高さd(k)が、回折格子3a毎に変化しているので、非球面の曲面となっている。
そして、本実施例において、格子側面5は、格子先端部3bを連ねた包絡面6と中心から数えてk番目の格子先端部3bとの交点での包絡面6の面法線6aに対して、特定の角度θkを有しており、その格子側面5の傾き角θkが、格子毎に変化している。さらに、格子側面5の傾き角θkの隣り合う回折格子3a間の差分Δθkを
Δθk=θk+1−θk (1)
としたとき、Δθkが連続して0でない領域を少なくとも1箇所以上有している。
又、格子側面は円錐面の一部から成るようにしている。
以下、図を用いて説明する。
説明をわかりやすくするために、図3に示すように、基板2の回折格子部3が形成される面を平面とする。このとき、回折格子部3の格子先端部3bを連ねた包絡面6は、光軸Oに垂直な平面となる。さらに、前述の格子先端部3bとの交点での包絡面6の面法線6aは、全て、光軸Oと平行な方向になる。
また、包絡面6の面法線6aと格子側面5がなす傾き角θkの符号は、図3で各格子側面が傾いている方向を正とする。つまり、格子面4と包絡面6の面法線6aがなす角度S1に対し、格子面4と格子側面5がなす角度S2がより鈍角となる方向を、格子側面5の傾き角θkが正とする。格子側面5の傾き角θkが正となる形状は、型から回折光学素子を離型するときに、格子変形が発生しない形状である。
次に、回折格子3aの格子高さd(k)について説明する。一番簡単な例として、図3の回折光学素子1に、包絡面6に垂直な方向、つまり光軸0と平行な方向から波長λの光束が入射する場合を考える。入射側の媒質を空気とし、回折格子部3の材料の屈折率をn1(λ)としたとき、波長λの光束が、m次回折光で最大の回折光を得るためには、以下の式を満足するように格子高さdを決定すれば良い。
{n1(λ)−1}d=mλ (2)
格子高さ以外は、既知の値であるので、格子高さは一意的に決定することができる。
図4に、実際の格子高さd(k)の決定方法を示す。図4(a)は、格子側面5の傾き角θa=0のときの格子形状を示している。この場合の格子高さdaは、(2)式で求められたdとすれば良い(da=d)。一般的に、回折格子3aの格子高さは、図2、図3で示す格子先端3bの包絡面6の法線方向6aに測った高さで定義される。図4(b)は、格子側面5の傾き角θb>0のときの格子形状を示している。
ここで、格子面4は、図4(a)で、決定された形状と同じである。同形状にすることで、格子面4を通過する光束は、最適な回折光が得られるように伝播される。格子側面5のほうは、格子先端3bを基準にして、傾き角θbだけ傾くように形成する。図4からも明らかなように、傾き角θbが正の値をとるときは、格子面4と格子側面5の溝側の交点Bは、先端3bよりにずれるため、格子高さdbは、格子高さdaに比べて小さくなる。
以上説明したように、格子側面5の傾き角θkによって、格子高さd(k)が変わるので、図2、図3の格子溝3cを連ねた包絡面7は、球面や平面にはならず、非球面形状となる。
次に、図2に示したように、包絡面6が曲面となる回折格子部3に任意の入射角αで入射した光束を考える。m次回折光で最大の回折光を得るためには、(2)式は、
{n1(λ)cosα′m−cosα}d=mλ (3)
となる。ここで、α′mは、m次回折光の回折角である。なお、このときの、入射角、回折角の角度は、格子先端3bを連ねた包絡面6の面法線6aと、入射光、回折光のなす角度である。
この場合も、前述のように、各格子面4を最適な回折光が得られるように決定し、その後、格子側面5の傾き角θkを最適化し、格子高さd(k)を決めていく手順を取ればよい。
最後に、格子側面5の傾き角θkについて説明する。図5は、実施例1における各回折格子での傾き角θkのグラフである。横軸は、輪帯番号kであり、中心(光軸O)側が第1輪帯、最外周部が第50輪帯となるようにした回折光学素子の例である(尚、輪帯の数は仕様により任意である)。縦軸は、格子側面5の傾き角θkの値である。図5で、第1輪帯から第15輪帯まで傾き角θkは、ほぼ0の値であり、第16輪帯から第40輪帯まで、徐々に増加している。そして、第41輪帯から第50輪帯で、傾き角は約14°となる。
実施例1の特徴は、第16輪帯から第40輪帯の領域のように、傾き角が急激に変化する領域を有することである。即ち傾き角の変化量が連続して0でない領域を1以上有することである。図6は、(1)式で表わした差分Δθkを、図5の傾き角θkに対して計算したグラフである。差分Δθkが0とならず、増加している領域と、減少している領域があることが、グラフから見て取れる。図6における実施例1の特徴は、差分Δθkが0でない値が複数の回折格子に連続してあることである。
従来例との、格子側面の形状との違いを明らかにするため、従来例の回折光学素子について、同様のグラフを図35、図36に示す。図35、図36は、格子側面5が、包絡面6の法線方向6aと一致する図33の回折光学素子1のグラフである。法線方向6aと一致しているため、傾き角θkは全域で0となり、差分Δθkも全域で0となる。
図27は、従来例である特開平10−268115号公報に提案されている回折光学素子1の説明図である。この回折光学素子1は、中央領域で、格子側面5が法線6a方向と一致し、周辺領域は、特定の傾き角rを有する構成である。
図28、図29は、図27の従来例に対応するグラフである。図28からわかるように、傾き角θkが離散的に変化しているので、差分Δθkは、離散的に変化している境界の1輪帯でだけ、大きな変化量を有することになる。このように、グラフの上からも、実施例1である格子側面5の傾き角θkは、従来例と異なっていることが明らかである。また、傾き角θkの最大値は、図2中の格子側面5の格子ピッチ方向(図2中のy方向)の射影長さ(格子先端部3bと溝部3cとの光軸Oの垂直方向の長さ)ΔpLが、
0<ΔpL/pL<0.05 (4)
を満足する範囲で、変化させるのが好ましい。この範囲とすることで、格子面4を通過する使用光束の回折効率を大幅に低下させることなく、格子側面5の不要光を抑制できる。
続いて、実施例1の格子側面5の形状による、不要光の発生を抑制する考え方について説明を行う。
実施例1では、格子側面5を透過する光束が、不要光として振る舞う場合を対象としている。さらに、実施例1により、不要光の発生を抑制するのに特に効果があるのは、図7に示すように、入射角ω0より透過屈折角ω1が大きくなるな関係で、格子側面5に光束が入射する場合である。ここで、入射角、透過屈折角は、格子側面5の面法線5aと、入射光、透過光のなす角ω0、ω1である。
格子面4を形成する入射側の媒質の波長λでの屈折率をn1(λ)、射出側の媒質の波長λでの屈折率をn2(λ)とすると、上記関係は入射側の媒質の屈折率が射出側に比べて高いn1(λ)>n2(λ)であるときに成立する。
このとき、入射光、透過光の関係は、スネルの法則で考えて差し障りがない。図8、図9に2つの格子形状における入射角ω0と透過屈折角ω1の関係を示す。図8は、入射側に空気以外の媒質があり、射出側が空気である構成である。図8は入射側の材料に大日本インキ化学工業(株)製の紫外線硬化樹脂RC−C001(nd=1.524、νd=50.8)を用いたときのグラフであり、実線がd線の波長における関係、点線がg線の波長における関係を表わしている。入射光が臨界角を超えて入射するまで透過光は存在し、透過屈折角ω1は0°から90°の全範囲に存在可能である。ただし、d線とg線の波長における透過屈折光の振る舞いに大きな差はない。
図9は、入射側と射出側が分散の異なる媒質(材料)の境界に格子面(回折格子)が形成されている構成である。図9は、入射側の材料の屈折率が出射側の材料の屈折率に比べて高い場合であり、入射側の材料に紫外線硬化樹脂(nd=1.636、νd=22.8)、射出側の材料に大日本インキ化学工業(株)製の紫外線硬化樹脂RC−C001(nd=1.524、νd=50.8)を用いたときのグラフであり、図8と同様に実線がd線の波長における関係、点線がg線の波長における関係を表わしている。
この場合、図8の構成に比べて格子面を構成する材料の屈折率差が小さいので、入射角ω0が0°から70°とかなり広い範囲で透過屈折光が発生する。また、d線とg線の臨界角がそれぞれ、68.74°、66.56°と約2°異なっている。従って、67°の入射角で入射した光束は、d線の波長は透過し、g線の波長は全反射するので、透過屈折光は、色づいた光束となる。
以上のように本実施例では、回折光学素子として、2種類の異なる材料の境界に回折光学素子部が形成されている構成を用いることにより、格子側面に光束が入射する場合でも、不要光が像性能を低下させるのを少なくし、又光学系に組み込んだ場合でも、フレア等を有効に抑制している。
以下、実施例1の効果を説明するのに、従来例との差が顕著となるように、図10に媒質の境界に回折格子面を有する回折格子部をもつ回折光学素子を用いた光学系を例に説明を行う。
図10は、上記回折光学素子21の概略図である。回折光学素子21は第1の回折光学素子22と第2の回折光学素子23が近接した構成よりなっている。そして、近接した境界面に回折格子部が形成されている。
図10中A−A′線で切断した断面形状の概略を図11に示す。基板24の曲面(図では凹面)24a上に形成され、正のパワーの回折レンズとして作用する第1の回折格子部26を有する第1の素子部22と、基板25の曲面(図では凸面)上に形成され、負のパワーの回折レンズとして作用する第2の回折格子部27を有する第2の素子部23が、空気層28を介して近接した構成となっている。ここでパワーとは焦点距離の逆数である。
第2の回折格子部27は、基板25の表面側に正の光学パワーの回折レンズとして作用する回折格子29と、その上に負の光学パワーの回折レンズとして作用する回折格子30が、格子面32で貼り合わされた構成であり、全体として負のパワーを有している。回折格子30の格子面32と反対の面33は回折格子が形成されていない曲面33で、基板25の回折格子を形成する側の曲面25aと実効的に等しい曲率を有している。
36、37、38、39は各々第1の回折格子部26の格子溝部、格子先端部、第2の回折格子部27の格子先端部、格子溝部を連ねた包絡面である。
上記、第2の回折格子部27が、前述の図9で示した特性を有する回折格子部である。そしてこれらの第1、第2の回折格子部26、27を合成して、一つの回折光学素子21として作用するようにしている。
上記回折光学素子21に、光束が入射したときの、各格子側面34、35での不要光の振る舞いについて説明する。
図12に回折格子部26、27を拡大した模式図を示す。微小領域の回折格子部26、27は、微少領域における包絡面36にδだけ傾いた回折格子で構成されていると考えられる。まず、図中Aで示した第1の回折格子部26の格子側面34へ入射する光束の振る舞いを調べる。
第1の回折格子部26は、材質の屈折率n1(λ)と空気により形成されている。図中左の方向から側面に到達する光束Aは、一旦格子面31を射出した後に、格子側面34に到達する。そのため、空気から媒質への透過となり、図に示したように、光軸に対して大きな角度を有して射出されるため、一般的な光学系では問題とならない。
次に、図中Bで示した第2の回折格子部27の格子側面35へ入射する光束の振る舞いを説明する。
図中Bの光束は、第1の回折格子部26を通過後、曲面33で屈折し、格子側面35へ入射する。回折格子30内を伝播する光束の光軸とのなす角度をωiとする。格子側面34へ入射する入射角ω0は、以下のようになる。
ω0(度)=90−ωi−δ−θk (5)
格子側面35を透過屈折した光Bの屈折角をω1としたとき、この光束が、光軸となす角度ωeは、
ωe(度)=90−ω1−δ−θk (6)
となる。角度ω0と角度ω1の関係は、スネルの法則により計算されるので、入射角ωiと、ωeの関係は、各格子側面で一意的に決定できる。
図13、図14に入射光ωiと透過屈折角ωeの関係を表わす。第2の回折格子部27を形成する材質は、図9と同じとし、包絡面36の傾き角を図13はδ=5°図14はδ=15°とする。また、各グラフ中実線と点線は、波長d線の光束に対して、格子側面35の傾き角θkが14°と0°を表わしている。
グラフの符号は、図12の入射光束の向きが正、透過屈折光の向きが負となる。傾き角θk=0°のグラフ(図中実線)を見ると、δ=5°の構成では、殆どの入射角で臨界角を越えた入射となるため、透過屈折光は存在していない。δ=15°では、入射角が約6°以下は、臨界角を越えた入射となるため、透過屈折光は存在していないが、入射角6〜11°付近で透過屈折角ωeが負となっていることがわかる。
それに対し傾き角θk=14°のグラフ(図中点線)は、δ=5°の構成では、入射角が約2°以下の時に、透過屈折光が存在しない領域があるものの、δ=15°では、入射角が20°までの範囲では、全入射角度で透過屈折光が存在していることがわかる。また、傾き角θk=14°では、屈折角ωeが負となる入射角ωiがθk=0°に比べ、低入射角側へシフトしていることがわかる。
続いて、実際の光学系へ、上記回折光学素子を適用した場合の不要光について説明する。
最初に、傾き角θk=0°の回折光学素子を適用した場合の、不要光について簡単に説明し、その後、本実施例の回折光学素子21についての説明を行う。
図37は回折光学素子での不要光の模式図である。図38に、回折光学素子21を用いた結像光学系の概念図を示す。図11、図12、図37、図38において、光軸Oに対して入射角ωで入射した光束は、回折光学素子21の前側に配置された屈折レンズ(図示せず)を通過し、第1の回折光学素子22の基板24および格子面31を通過後、回折格子30の格子面32と反対の曲面33で屈折し、格子側面35に角度ωiで入射する。
格子側面35で透過屈折した光束は、屈折角ωeで射出し、第2の回折光学素子23の基板25を通過後、絞り40の前後に配置された屈折レンズ(図示せず)を介して、結像面41に到達する。
図38中にm番目とn番目の2箇所の格子側面から透過屈折した不要光を示す。図からわかるように、不要光が、絞り40を通過し、結像面41に到達するのは、屈折角ωeが負となる方向である。また、外周部の回折格子ほど、負の値が大きくならないと不要光として結像面41には到達しないことが図から見て取れる。
さらに、図9で説明したように、格子側面を透過する光は波長により屈折角が異なり、短波長ほど屈折角が大きくなるので、ひとつの格子側面からの不要光は、波長毎に結像面上での到達位置が異なる。図38では、下線側が短波長となる。つまり、m番目の格子側面からの不要光は、上線の波長λm,2より、下線の波長λm,1のほうが短波長となる。
図15に、本実施例の不要光について説明する。従来例に比べて、外周部では格子側面の傾き角θkが大きくなっている。従って、図13に示したように、同じ入射角では、射出する屈折角ωeは正の方向にシフトしている。そのため、外周部の格子側面を透過屈折した光は、図示したように絞り40で斜光され、結像面には到達しない。
一方、光軸付近の格子側面は、従来例と、実施例1ともに、概0°としてある。光軸付近の不要光は、図13で説明した包絡面36の傾き角が小さな構成に対応するので、傾き角θk=0°で格子側面35を透過する光束は存在しなくなる構成である。比較として、図39に、全域の格子側面35の傾き角をθk=14°としたときの不要光の振る舞いを示す。
外周付近の格子側面を通過する不要光束は、本発明の実施例1と同じく低減されるが、逆に、光軸付近の不要光が、図13の点線で示したように、透過屈折してしまうため、従来例に比べて、悪化してしまう。
以上のことを鑑みて、本発明の実施例1では、図5に示したように、光軸付近は傾き角θkを約0°とし、外周付近は傾き角θkを約14°とし、その間の回折格子部を、傾き角θkが徐々に変化するように構成している。
これにより、光軸0付近の回折格子部は、臨界角を越えた入射角で、格子側面35に入射させることで、不要光の発生をなくし、外周部付近の回折格子部は、格子側面を屈折した光束の屈折角を調整し、結像面41へ到達しないようにしている。そして、中間の回折格子部は、急激に傾き角θkを変えることで、透過屈折角ωeが大きく負となる領域を低減させている。図6に示した傾き角の差分Δθkは、最大で0.6以上変化している。格子ピッチpLや、全輪帯数に依存するため、変化量は特定できないが、差分Δθkが0.2(Δθk>0.2)以上の領域を有することが、透過屈折角ωeが大きく負となる領域を低減させるためには好ましい。
図16に、特定の光学系へ、本発明の実施例1の回折光学素子を適用した場合の、結像面41へ不要光が到達する回折格子番号を数えた表を示す。回折格子形状は図5に示した形状で、総輪帯数は50である。格子側面を通過する光束には、一般のスネルの法則を適用し、それ以外の面には、通常屈折面、回折面に用いられる光線追跡の手法を適用した。
光学系へ一様な入射角度ωをもつ光束が入射した場合を計算し、格子側面へ入射した光束が、光学系を介して結像面へ到達した場合を到達側面と数え、全格子側面に対して計算を行なった。計算波長は、可視域の400nmから700nmの波長であり、いずれかの波長の光束が、結像面へ到達した場合を、到達側面として数えている。
例えば、実施例1の入射角ω=7.5°の光束では、第19輪帯目の格子側面から第30輪帯までの格子側面の光束が、結像面へ到達していることを表わし、到達側面の数は30−18=12より12である。本実施例において好ましくは回折格子間の傾き角度の変化量が0でない領域は10輪帯以上であるのが良い。特に全輪帯数の1/3以上が良い。図16に示す表から明らかであるが、いずれの入射角でも実施例1の回折光学素子21を用いた光学系のほうが、従来例に比べて不要光が結像面へ到達する格子側面の数は大幅に低減されていることがわかる。
上述した本発明の実施例1の回折光学素子は、格子面4へ入射する光束が、包絡面6の法線6a方向から一方向に偏っているとき、つまり格子側面5に面と平行でない方向から光束が入射する光学系で、効果が顕著となる。そのため、光学系へ回折光学素子を適用する際、最適な面を選定する必要がある。
例えば、包絡面の曲率半径が適用する光学系の焦点距離の1/2以下の曲率半径を持った面などへ回折光学素子が形成される場合に本発明の構成を適用すると効果的で好ましい。
以上の説明は、基準曲面が球面となる回折光学素子について行ったが、基準曲面が非球面や、シリンドリカル面、トーリック面など任意の面も同様に適用することができる。
以上説明したように、本実施例によれば、格子面と格子側面を含む回折格子部を、使用波長領域全域で特定次数(設計次数)に回折するブレーズ型の回折格子を、レンズ作用をするように同心円状の周期構造とし、格子側面が、回折格子の格子先端を連ねた包絡面の各格子先端位置における面法線と格子側面がなす傾き角度が、格子中心領域から周辺領域で変化し、且つ隣接する回折格子間の傾き角度の変化量が連続して0でない領域を少なくとも1箇所以上有することで、格子側面に光束が比較的大きな角度で入射するような光学系に適用しても、不要光の発生を抑制することができる。
また、基板と回折格子部を形成する材料を同一とし、基板と回折格子部を一体で作成することにより、基板外径と格子中心の位置精度や、基板がレンズの場合は、基板レンズの芯と格子中心を精度良く合せられるので、偏心による結像性能の劣化は大幅に低減することができ、性能の良い光学系が得られる。
次に本発明の実施例2について説明する。
図17は、傾き角θkの値を各格子側面で図5の実施例1の半分にした回折光学素子に対し、図16と同様の計算を行なった表である。この場合、格子側面の結像面への到達数は、図16に比べて増加しているが、従来例に比べると、約2/3と十分減少している。この回折光学素子では、最大の傾き角が半分の7°になっているので、図2におけるΔp(格子先端部と溝部との光軸と垂直方向の長さ)は、全輪帯で減少し、実施例1に比べて、使用光束における回折効率の低下が改善されることになる。以上のように、使用光の回折効率と、格子側面の不要光の抑制を考慮し、最適な傾き角を設定すればよい。ただし、不要光の抑制効果を得るためには、最大の傾き角は最低でも5°以上であることが好ましい。
次に本発明の実施例3について説明する。
実施例3は、図18、図19に示すように、実施例1とは異なり、傾き角θkを滑らかに変化させないで段階的に変化させる構成をとることも可能である。このような構成にすれば、型を加工する際に、領域に分けて格子側面の値を参照するようにすれば良く、また傾き角θkも直線近似で精度良く算出できるため、加工は比較的簡単に行なうことができる。
次に本発明の実施例4について説明する。
実施例4では、図20に示すように、基板24の曲面(図では凹面)24a上に形成され、負のパワーの回折レンズとして作用する第1の回折格子部26を有する第1の回折光学素子22と、基板25の曲面(図では凸面)25a上に形成され、正のパワーの回折レンズとして作用する第2の回折格子部27を有する第2の回折光学素子23が、空気層28を介して近接した構成となる積層構造の回折光学素子21より成っている。
この構成では、第1、第2回折格子部26、27の両方の回折格子部26、27に対して格子側面34、35を変化させることが可能である。この構成では、第1の回折格子部26と、第2の回折格子部27で、不要光が発生する入射角度の方向が異なっている。そのため、各々の回折格子部26、27で不要光が抑制できるように、独立に格子側面34、35の傾き角θkを最適化しても良いし、どちらか、一方だけに本発明を実施しても良い。
尚、第1、第2の回折格子部26、27の材料は互いに分散が異なった材料より成っている。使用波長領域で設計波長(積層格子での光学光路長差が波長の整数倍となる波長)を2倍以上有している。
次に本発明の実施例5について説明する。
前述の実施例で説明した回折光学素子は、格子側面の傾き角が、光軸付近で約0°、外周付近で、特定の角度をもち、光軸から周辺部に向けて徐々に傾き角が変化する構成である。しかしながら、本発明の回折光学素子は、このような構成に限定されるものではない。光学系へ回折光学素子を適用し、不要光の発生状況によって、図21や図22で示すように一定の傾き角(0°を含む)を有する領域と、傾き角が徐々に変化する領域を、少なくとも1つの領域有していれば良い。
次に本発明の実施例6について説明する。
本発明の回折光学素子は基板と回折格子部を形成する材料が異なっていたがこれに限定するものではなく、回折格子部を形成する材料を基板と同じ材料で構成し基板と一体で製造してもよい。このような構成にすることで、基板外径と回折格子中心の位置が精度良くあわせられる。或いは基板がレンズ形状を有する場合は、基板レンズの芯と回折格子中心を良好に合せることが可能になる。
従って、本発明の回折光学素子を他のレンズ系に組込む際の光軸合せ精度が向上し、回折光学素子が偏心することによって生じる結像性能等の収差の劣化は大幅に低減することができる。
次に本発明の実施例7について説明する。
本発明の実施例7の概略図23に示す。図23はカメラ等の撮影光学系の断面を示したものであり、同図中、101は撮影レンズで、内部に絞り40と本発明の前述した各実施例の回折光学素子21を有している。41は結像面であるフィルムまたはCCDが配置されている。
特に回折光学素子の各回折格子部に入射する光束の入射角の分布の重心(図形の重心と同じ)が包絡面の回折格子の中心での面法線に対し、回折格子部の中心よりに分布するようにしている。
本発明の回折光学素子を適用すれば、格子側面に光束が入射した場合でも、不要光の発生が大幅に改善されているので、フレアが少なく解像力も高い高性能な撮影レンズが得られる。また本発明の回折光学素子は、簡単な製法で作成できるので、撮影光学系としては量産性に優れた安価な光学系を提供できる。
図23では前玉のレンズの貼り合せ面に回折光学素子21を設けたが、これに限定するものではなく、レンズ表面に設けても良いし、撮影レンズ内に複数、回折光学素子を使用しても良い。
また、本実施例では、カメラの撮影レンズの場合を示したが、これに限定するものではなく、ビデオカメラの撮影レンズ、事務機のイメージスキャナーや、デジタル複写機のリーダーレンズなど広波長域で使用される結像光学系に使用しても同様の効果が得られる。
次に本実施例の実施例8について説明する。
本発明の実施例8を概略を図24に示す。図24は、双眼鏡等の観察光学系の断面を示したものであり、同図中21は回折光学素子である対物レンズ、104は像を正立させるための像反転手段としてのプリズム、105は接眼レンズ、106は評価面(瞳面)である。回折光学素子21は対物レンズの結像面41での色収差等を補正する目的で使用されている。
本発明の回折光学素子を適用すれば、格子側面に光束が入射した場合でも、不要光の発生が大幅に改善されているので、フレアが少なく解像力も高い高性能な対物レンズが得られる。また本発明の回折光学素子は、簡単な製法で作成できるので、観察光学系としては量産性に優れた安価な光学系を提供できる。
本実施例では、対物レンズ21に回折光学素子を形成した場合を示したが、これに限定するものではなく、プリズム表面や接眼レンズ内の位置であっても同様の効果が得られる。結像面より物体側に設けると、対物レンズのみでの色収差低減効果があるため、肉眼の観察系の場合すくなくとも対物レンズ側に設けることが望ましい。
また本実施例では、双眼鏡の場合を示したが、これに限定するものではなく地上望遠鏡や天体観測用望遠鏡などであってもよく、またレンズシャッターカメラやビデオカメラなどの光学式のファインダーであっても同様の効果が得られる。
実施例1の回折光学素子の要部概略図 図1の一部分の断面拡大図 図1の格子側面の模式図 図1の回折光学素子における格子高さの模式図 図1における格子側面の傾き角のグラフ 図1における格子側面の傾き角の差分を示すグラフ 図1における格子側面の不要光の模式図 媒質と空気の境界での入射角と屈折角の関係を示すグラフ 異なる媒質の境界での入射角と屈折角の関係を示すグラフ 実施例1における他の構成の回折光学素子の要部概略図 実施例1における他の構成の回折光学素子の要部概略図 実施例1における他の構成の回折光学素子での不要光の模式図 光軸方向に測った入射角と不要光の関係を示すグラフ 光軸方向に測った入射角と不要光の関係を示すグラフ 実施例1の回折光学素子を有する光学系における不要光の光線の概念図 実施例1の回折光学素子を有する光学系における不要光の低減の比較表 実施例2の回折光学素子を有する光学系における不要光の低減の比較表 実施例3の回折光学素子における格子側面の傾き角のグラフ 実施例3の回折光学素子における格子側面の傾き角の差分を示すグラフ 実施例4の回折光学素子の構成の要部断面図 実施例5の回折光学素子における格子側面の傾き角のグラフ 実施例5の回折光学素子における格子側面の傾き角のグラフ 実施例7の撮影光学系 実施例8の観察光学系 従来例の回折光学素子の概略図 従来例の回折光学素子の概略図 従来例の回折光学素子の概略図 図27の従来例における格子側面の傾き角のグラフ 図27の従来例における格子側面の傾き角の差分を示すグラフ 型からの回折光学素子の離型を説明する図 格子面の離型による変形の模式図 従来の回折光学素子の一部分の説明図 曲面上に形成された従来の回折光学素子の説明図 曲面上に形成された従来の回折光学素子の離型概念図 図33の従来例における格子側面の傾き角のグラフ 図33の従来例における格子側面の傾き角の差分を示すグラフ 他の従来の回折光学素子での不要光の模式図 他の従来構成の回折光学素子を用いたの光学系における不要光の光線の概念図 他の構成の回折光学素子を用いたの光学系における不要光の光線の概念図
符号の説明
1、21、回折光学素子 2、24、25、基板 3、回折格子部 4、格子面
5、34、35、格子側面 6、格子先端の包絡面 7、格子溝の包絡面
8、成形用型 22、第1の回折光学素子 23、第2の回折光学素子
26、第1の回折格子部 27、第2の回折格子部 28、空気層
29、30、回折格子 31、第1の回折格子面 32、第2の回折格子面
33、曲面 36、第1の格子溝の包絡面 37、第1の格子先端の包絡面
38、第2の格子先端の包絡面 39、第2の格子溝の包絡面
40、102、絞り 41、103、結像面 101、撮影レンズ
104、プリズム 105、接眼レンズ 106、評価面(瞳面)

Claims (17)

  1. 格子面と格子側面を含み、使用波長領域全域で特定次数に回折するブレーズ型の回折格子を同心円状の周期構造とした回折格子部を有する回折光学素子に於いて、該格子側面は、該回折格子の格子先端を連ねた包絡面の各格子先端位置における面法線と格子面がなす角度に対し、より鈍角となる方向に傾いており、該格子側面の傾きは、該包絡面の面法線となす傾き角度が、該回折格子部の中心領域から周辺領域で変化し、且つ隣接する回折格子間の傾き角度の変化量が連続して0でない領域を1箇所以上有することを特徴とする回折光学素子。
  2. 分散の異なる材料からなる回折格子を2つ以上近接させて重ね合わされた積層格子構造の回折光学部を持ち、使用波長領域で、設計波長を2つ以上有する回折光学素子に於いて、該回折格子部は、格子面と格子側面を含むブレーズ型の回折格子が同心円状の周期構造より成り、該回折格子部の少なくとも1つの格子側面は、回折格子の格子先端を連ねた包絡面の各格子先端位置における面法線と格子面がなす角度に対し、より鈍角となる方向に傾いており、該格子側面の傾きは、該包絡面の面法線となす傾き角度が、該回折格子部の中心領域から周辺領域で変化し、且つ隣接する回折格子間の傾き角度の変化量が連続して0でない領域を1箇所以上有することを特徴とする回折光学素子。
  3. 前記格子側面は、円錐面の一部を含むことを特徴とする請求項1又は2の回折光学素子。
  4. 前記回折格子の格子先端を連ねた包絡面が曲面で且つ凹面の場合、前記格子側面の傾き角を変化させる回折格子部は、包絡面の曲面成分を除いた回折格子部成分だけで、負のパワーの作用をすることを特徴とする請求項1、2又は3の回折光学素子。
  5. 前記回折格子の格子先端を連ねた包絡面が曲面で且つ凸面の場合、前記格子側面の傾き角を変化させる回折格子部は、包絡面の曲面成分を除いた回折格子部成分だけで、正のパワーの作用をすることを特徴とする請求項1、2又は3の回折光学素子。
  6. 前記格子側面の傾き角が変化している回折格子部は、2種類の異なる材料の境界に回折格子が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の回折光学素子。
  7. 前記2種類の異なる材料は、光出射側に比べ光入射側の材料の屈折率が高くなる材料であることを特徴とする請求項6項に記載の回折光学素子。
  8. 前記積層される回折格子の格子形状は回折格子の厚さの向きが異なる回折格子が一つ以上含まれることを特徴とする請求項2記載の回折光学素子。
  9. 前記格子側面の最大傾き角は、5°以上であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の回折光学素子。
  10. 前記隣接する回折格子間の傾き角度の変化量Δθkは、
    Δθk>0.2
    を満たすことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項の回折光学素子。
  11. 前記格子側面の格子ピッチ方向の射影長さをΔpL、各回折格子の格子ピッチをpLとするとき、
    0≦ΔpL/pL≦0.05
    を満たすことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項の回折光学素子。
  12. 前記隣接する回折格子間の傾き角度の変化量が連続して0でない領域は、回折格子の10輪帯以上であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項の回折光学素子。
  13. 前記隣接する回折格子間の傾き角度の変化量が連続して0でない領域は、全輪帯数の1/3以上であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項の回折光学素子。
  14. 前記回折光学部はレンズ作用を有する基板上に形成されていることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項の回折光学素子。
  15. 請求項1〜14のいずれか1項に記載の回折光学素子を用いたことを特徴とする光学系。
  16. 前記光学系に含まれる回折光学素子の各回折格子部へ入射する光束の入射角の分布の重心は、前記包絡面の回折格子の中点での面法線に対し、該回折格子部の中心よりに分布していることを特徴とする請求項15に記載の光学系。
  17. 前記回折光学素子の包絡面の曲率半径は、光学系の焦点距離の1/2以下であることを特徴とする請求項15に記載の光学系。
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