JP2005291304A - 密封板付き偏心転がり軸受 - Google Patents

Abstract

【課題】 密封板での応力集中を防止して、密封板の長寿命化を図ること。
【解決手段】 密封板１８は、環状で平板状の密封本体２０を備え、この密封本体２０の外周端縁には、略円弧状に折曲した折曲部２１が形成してある。この折曲部２１は、外輪１５の内径側の側部の凹部２３に嵌合・固定するようになっている。密封板１８が金属板であるが、切欠き部を廃止し、折曲部２１の外周端縁は、断続することなく連続して形成してある。
【選択図】 図１

Description

本発明は、内輪の外径面が外輪の内径面に同心に形成してある一方、内輪の内径面が内輪の外径面に対して偏心してあり、プランジャ等の往復駆動装置に好適であって、長寿命化を図ることができる密封板付き偏心転がり軸受に関する。

従来、ＡＢＳポンプ用モータに於いて、そのプランジャ部を往復駆動するる際、モータ軸に対して、内輪の内径が偏心した偏心転がり軸受を用いている。即ち、偏心転がり軸受では、内輪の外径面は、外輪の内径面に同心に形成してある一方、内輪の内径面は、内輪の外径面に対して偏心してある。

例えば、特許文献１では、ＡＢＳの作動時には、車輪の制動状態をロック状態と非ロック状態とに細かく切り換える、所謂ポンピングブレーキを自動的に行なっている。この際、油圧配管を細かく切り換える必要があるが、トラックやトレーラ等の大型車用のＡＢＳには、図４及び図５に示す様な機構を組み込んで、油圧配管の切り換えを行なう様にしている。

図４は、ＡＢＳポンプ用モータのプランジャ等往復駆動装置の縦断面図である。図５（ａ）は、図４に示した偏心転がり軸受の断面図であり、（ｂ）は、この偏心転がり軸受の側面図である。

図４に示すように、電動モータ３は、ロータ８と、このロータ８に通電する為のブラシ９と、ロータ８の周囲に設けられたステータ１０とを有し、上記ブラシ９によりロータ８に通電する事で、このロータ８をその外周面に固定した駆動軸２を回転駆動する様にしている。

駆動軸２は、その一端部（図４の右端部）と中間部との２個所を、それぞれ転がり軸受１、１により回転自在に支承している。そして、この駆動軸２の他端部（図４の左端部）に、図５（ａ）（ｂ）に詳示する様な偏心転がり軸受１１を構成する、内輪１２を外嵌固定している。

偏心転がり軸受では、その内輪１２の内周面１２ａは、外径面の内輪軌道面１３に対して、δだけ偏心して形成してある。

内輪１２の周囲には、内径面に外輪軌道面１４を形成した外輪１５を設けている。この外輪１５の外径面１５ａと、外輪軌道面１４と、内輪軌道面１３とは、互いに同心である。

これら外輪軌道面１４と内輪軌道面１３との間に、転動体である複数の玉１６、１６を設けて、内輪１２と外輪１５との相対的回転を自在としている。

尚、図５（ａ）に於いて、符号１７は、各玉１６、１６を転動自在に保持する為の保持器、符号１８、１８は、各玉１６、１６部分に存在するグリースが外部に漏洩するのを防止すると共に、この部分への塵芥等の進入防止を図る為のシール環（密封板）である。

更に、外輪１５の外径面１５ａには、プランジャ７の一端を当接させている。このプランジャ７は、図示しないガイド部に、軸方向（図４の上下方向）に亙る変位のみを自在に支承されており、やはり図示しないばねの弾力により、外輪１５の外径面１５ａに向け、弾性的に押圧されている。外輪１５は、プランジャ７の一端との摩擦に基づいて、回転防止を図られる。

上述の様に構成される本考案のプランジャ等の往復駆動装置により、プランジャ７を往復移動させる場合、ブラシ９を通じて電動モータ３のロータ８に通電し、このロータ８及び駆動軸２を回転させる。

駆動軸２の回転に伴ない、この駆動軸２に外嵌固定された内輪１２が回転し、駆動軸２に対して偏心している内輪軌道面１３が、この駆動軸２の周囲で回転する。この結果、複数の玉１６、１６を介してこの内輪軌道１３の周囲に回転自在に支承された外輪１５が、この駆動軸２の周囲を振れ回る。そして、この外輪１５の外径面１５ａに一端を突き当てたプランジャ７が、軸方向に往復移動する。

プランジャ等の往復駆動装置は、内輪軌道面１３を内輪１２の内径面１２ａに対し偏心させる事で、上記プランジャ７を往復移動させる様に構成している為、部品加工が容易で、従来構造に比べて製作費の低廉化を図れる。

又、プランジャ７或はピストンの往復移動量を増大させる為、内輪１２の内径面１２ａに対する内輪軌道面１３の偏心量δを大きくする場合でも、特に内輪１２の外径寸法や厚さ寸法を大きくする必要がない。従って、剛性確保の為、重量増大を招く事がない。尚、回転運動を往復運動に変換する為の偏心転がり軸受１１として、図示の様な玉軸受を使用し、この玉軸受の内部隙間を調節すれば、外輪１５の外径面１５ａとプランジャ７の一端との接触状態を良好に保つ、調心性を得られる。

図６（ａ）は、従来に係る密封板付き偏芯転がり軸受の断面図であり、（ｂ）は、密封板の部分的斜視図である。

偏心転がり軸受の両側面には、夫々、軸受内に充填されているグリース等の潤滑材を保持する、又は外部からの異物が軸受内部に侵入するのを防止する目的で、密封板（シール環）１８，１８が設けてある。

密封板１８は、図６（ｂ）に示すように、環状で平板状の密封本体２０を備え、この密封本体２０の外周端縁には、略円弧状に折曲した折曲部２１が形成してある。この折曲部２１は、外輪１５の内径側の側部の凹部２３に嵌合・固定するようになっている。

密封板１８が金属板である場合、外輪１５との締結を確実に行う目的で、又は製造工程の容易化を図る目的で、密封板１８の外径部に切欠き部２２を設けるのが通常である。
実開平５−５９０２９号公報

ところで、プランジャ７が外輪１５の外径面１５ａを弾性的に加圧する事によって、外輪１５には、繰返しの弾性変形が発生する為、外輪１５に締結している密封板１８も、同様に、繰返しの弾切変形が生じる。

しかしながら、密封板１８の切欠き部２２を設けた箇所に、繰返しの応力が集中する事から、長時間の使用によって、金属疲労を起こして、切欠き部２２を起点とした亀裂が生じることがある。

その亀裂が進行した場合には、密封板１８が破断してしまい、グリース等の潤滑材の流出、或いは、外部からの異物が転がり軸受内部に侵入して、外輪１５及び内輪軌道面１３を損傷させてしまい、寿命の低下が考えられる。

更に、破断した密封板１８が外輪１５又は内輪１２の軌道面に侵入した場合には、転動体１６が噛み込んでしまい、軸受自体が回転不能の事態を起こす虞れもある。

本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであって、密封板での応力集中を防止して、密封板の長寿命化を図ることができる密封板付き偏心転がり軸受を提供することを目的とする。

上記の目的を達成するため、本発明の請求項１に係る密封板付き偏心転がり軸受は、内輪と外輪との間に、転動体が介装してあると共に、内輪の外径面が外輪の内径面に同心に形成してある一方、内輪の内径面が内輪の外径面に対して偏心してあり、軸受内部空間を密封するための密封板を備えた密封板付き偏心転がり軸受において、
前記密封板は、その外周端縁が断続することなく連続して形成してあることを特徴とする。

本発明の請求項２に係る密封板付き偏心転がり軸受は、内輪と外輪との間に、転動体が介装してあると共に、内輪の外径面が外輪の内径面に同心に形成してある一方、内輪の内径面が内輪の外径面に対して偏心してあり、軸受内部空間を密封するための密封板を備えた密封板付き偏心転がり軸受において、
前記密封板は、弾性体を介して前記外輪の内径側に結合してあることを特徴とする。

以上説明したように、本発明によれば、密封板は、その外周端縁が断続することなく連続して形成してあり、又は、密封板は、弾性体を介して外輪の内径側に結合してあることから、例えば、プランジャが外輪を弾性的に加圧する事によって、外輪に弾性変形が発生した場合、この外輪の弾性変形によって、密封板が弾性変形したとしても、密封板での応力集中を防止して、密封板の亀裂の発生を防止することが可能となり、ひいては、密封板の長寿命化を図ることができる。

以下、本発明の実施の形態に係る密封板付き偏心転がり軸受を図面を参照しつつ説明する。

（第１実施の形態）
図１（ａ）は、本発明の第１実施の形態に係る密封板付き偏芯転がり軸受の断面図であり、（ｂ）は、密封板の部分的斜視図である。

偏心転がり軸受では、その内輪１２の内径面１２ａは、外径面の内輪軌道面１３に対して、δだけ偏心して形成してある。

内輪１２の周囲には、内径面に外輪軌道面１４を形成した外輪１５を設けている。この外輪１５の外径面１５ａと、外輪軌道面１４と、内輪軌道面１３とは、互いに同心である。

これら外輪軌道面１４と内輪軌道面１３との間に、転動体である複数の玉１６、１６を設けて、内輪１２と外輪１５との相対的回転を自在としている。符号１７は、各玉１６、１６を転動自在に保持する為の保持器である。

偏心転がり軸受の両側面には、夫々、軸受内に充填されているグリース等の潤滑材を保持する、又は外部からの異物が軸受内部に侵入するのを防止する目的で、密封板（シール環）１８，１８が設けてある。

密封板１８は、図１（ｂ）に示すように、環状で平板状の密封本体２０を備え、この密封本体２０の外周端縁には、略円弧状に折曲した折曲部２１が形成してある。この折曲部２１は、外輪１５の内径側の側部の凹部２３に嵌合・固定するようになっている。

さて、本実施の形態では、密封板１８が金属板であるが、図１（ｂ）に示すように、従来の切欠き部２２を廃止し、折曲部２１の外周端縁は、断続することなく連続して形成してある。

従って、例えば、プランジャが外輪１５を弾性的に加圧する事によって、外輪１５に弾性変形が発生した場合、この外輪１５の弾性変形によって、密封板１８が弾性変形したとしても、密封板１８での応力集中を防止して、密封板１８の亀裂の発生を防止することが可能となり、ひいては、密封板１８の長寿命化を図ることができる。

（第２実施の形態）
図２は、本発明の第２実施の形態に係る密封板付き偏芯転がり軸受の断面図である。

本実施の形態は、上述した第１実施の形態と基本的構造が略同一であり、相違する点についてのみ説明する。

本実施の形態では、密封板１８の上端部は、王冠状の弾性環３０を介して、外輪１５の内径側の凹部２３に嵌合・固定してある。

従って、本実施の形態においても、例えば、プランジャが外輪１５を弾性的に加圧する事によって、外輪１５に弾性変形が発生した場合、この外輪１５の弾性変形によって、密封板１８が弾性変形したとしても、密封板１８での応力集中を防止して、密封板１８の亀裂の発生を防止することが可能となり、ひいては、密封板１８の長寿命化を図ることができる。

（第３実施の形態）
図３は、本発明の第３実施の形態に係る密封板付き偏芯転がり軸受の断面図である。

本実施の形態は、上述した第１実施の形態と基本的構造が略同一であり、相違する点についてのみ説明する。

本実施の形態では、密封板１８は、環状の芯金３１と、この芯金３１を被覆するように設けた弾性体３２とからなり、密封板１８の上端部は、この弾性体３２を介して、外輪１５の内径側の凹部２３に嵌合・固定してある。

従って、本実施の形態においても、例えば、プランジャが外輪１５を弾性的に加圧する事によって、外輪１５に弾性変形が発生した場合、この外輪１５の弾性変形によって、密封板１８が弾性変形したとしても、密封板１８での応力集中を防止して、密封板１８の亀裂の発生を防止することが可能となり、ひいては、密封板１８の長寿命化を図ることができる。

なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されず、種々変形可能である。

（ａ）は、本発明の第１実施の形態に係る密封板付き偏芯転がり軸受の断面図であり、（ｂ）は、密封板の部分的斜視図である。 本発明の第２実施の形態に係る密封板付き偏芯転がり軸受の断面図である。 本発明の第３実施の形態に係る密封板付き偏芯転がり軸受の断面図である。 ＡＢＳポンプ用モータのプランジャ等往復駆動装置の縦断面図である。 （ａ）は、図４に示した偏心転がり軸受の断面図であり、（ｂ）は、この偏心転がり軸受の側面図である。 （ａ）は、従来に係る密封板付き偏芯転がり軸受の断面図であり、（ｂ）は、密封板の部分的斜視図である。

符号の説明

１ 転がり軸受
２ 駆動軸
３ 電動モータ
７ プランジャ
８ ロータ
９ ブラシ
１０ ステータ
１１ 転がり軸受
１２ 内輪
１２ａ 内径面
１３ 内輪軌道面
１４ 外輪軌道面
１５ 外輪
１５ａ 外径面
１６ 玉（転動体）
１７ 保持器
１８ シール環（密封板）
２０ 密封本体
２１ 折曲部
２２ 切欠き部
２３ 凹部
３０ 弾性環
３１ 芯金
３２ 弾性体

Claims (2)

1. 内輪と外輪との間に、転動体が介装してあると共に、内輪の外径面が外輪の内径面に同心に形成してある一方、内輪の内径面が内輪の外径面に対して偏心してあり、軸受内部空間を密封するための密封板を備えた密封板付き偏心転がり軸受において、
   前記密封板は、その外周端縁が断続することなく連続して形成してあることを特徴とする密封板付き偏心転がり軸受。
2. 内輪と外輪との間に、転動体が介装してあると共に、内輪の外径面が外輪の内径面に同心に形成してある一方、内輪の内径面が内輪の外径面に対して偏心してあり、軸受内部空間を密封するための密封板を備えた密封板付き偏心転がり軸受において、
   前記密封板は、弾性体を介して前記外輪の内径側に結合してあることを特徴とする密封板付き偏心転がり軸受。

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