JP2005287494A - 休眠状態のクリプトバイオティックな微生物の存在を検出する方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】休眠状態のクリプトバイオティックな微生物の検出方法を提供する。
【解決手段】610nm〜680nmの領域の電磁エネルギーにより励起したとき、内因性のピリジンジカルボン酸アルカリ土類金属塩から発する710nm〜860nmの領域の電磁放射を検出することにより、休眠状態のクリプトバイオティックな微生物を検出する方法。内因性のピリジンジカルボン酸カルシウム塩からの新規な、より低エネルギーの発光を利用することにより、試料に何らかの試薬を添加したり、試料を処理したり、試料と接触したりせずに、細菌胞子や菌類胞子、卵母細胞を素早く検出できる。
【選択図】図1
【解決手段】610nm〜680nmの領域の電磁エネルギーにより励起したとき、内因性のピリジンジカルボン酸アルカリ土類金属塩から発する710nm〜860nmの領域の電磁放射を検出することにより、休眠状態のクリプトバイオティックな微生物を検出する方法。内因性のピリジンジカルボン酸カルシウム塩からの新規な、より低エネルギーの発光を利用することにより、試料に何らかの試薬を添加したり、試料を処理したり、試料と接触したりせずに、細菌胞子や菌類胞子、卵母細胞を素早く検出できる。
【選択図】図1
Description
本発明は、様々な表面の上の、空気中の或いは液体中の胞子の存在を検知するための方法及び装置に関する。
ピリジン−2,6−ジカルボン酸(ジピコリン酸)の存在を検出することにより細菌の内生胞子の存在を測定することは、かなり前から当業者に利用されている。この化合物は生存性を有する胞子の大部分を占めるが、これを別とすれば自然では稀にしか存在しない(R.ルンディン(Lundin)とL.サックス(Sacks)「微生物胞子の高分解能固体状態13C核磁気共鳴:ジピコリン酸のアルファ炭素信号の同定(High-resolution solid-state 13C nuclear magnetic resonance of bacterial spores: Identification of the alpha-carbon signal of dipicolinic acid)」Appl.Environ.Microbiol.、54巻、4号、923〜928頁、1988(非特許文献1))。ジピコリン酸を検出して胞子の存在を示すため、各種分析方法が用いられている。例えば、微分分光(derivative spectroscopy)(A.ウォース(Warth)「微分分光による微生物胞子内のジピコリン酸の測定(Determination of dipicolinic acid in bacterial spores by derivative spectroscopy)」Anal.Biochem.、130巻、2号、502〜505頁、1983(非特許文献2));内因性蛍光(A.アリモバ(Alimova)、A.カッツ(Katz)、H.E.サベージ(Savage)、M.シャー(Shah)、G.ミンコ(Minko)、D.V.ウィル(Will)、R.B.ローゼン(Rosen)、S.A.マッコーミック(McCormick)、R.R.アルファノ(Alfano)「飢餓状態にした枯草菌と黄色ブドウ球菌の自然蛍光及び励起スペクトルの変化(Native fluorescence and excitation spectroscopic changes in Bacillus subtilis and Staphylococcus aureus bacteria subjected to conditions of starvation)」Appl.Opt.、42巻、19号、4080〜4087頁、2003(非特許文献3));ランタナイド塩の添加後の発光(D.L.ローゼン(Rosen)、C.シャープレス(Sharpless)、L.B.マックゴーン(McGown)「ジピコリン酸テルビウムのフォトルミネッセンスを用いた細菌胞子の検出及び決定(Bacterial spore detection and determination by use of terbium dipicolinate photoluminescence)」Anal.Chem.、69巻、1082〜1085頁、1997(非特許文献4));質量分析(M.B.ビバリー(Beverly)、K.J.ヴーリー(Voorhees)、T.L.ハドフィールド(Hadfield)「バチルス属胞子の直接質量分析(Direct mass spectrometric analysis of Bacillus spores)」Rapid Commun.Mass Spectrom.、13巻、23号、2320〜2326頁、1999(非特許文献5));フーリエ変換赤外分光(H.Y.チョウン(Cheung)、J.ツゥ(Cui)、S.スン(Sun)「発芽時の減衰全反射フーリエ変換赤外分光による枯草菌内生胞子成分のリアルタイムモニタリング(Real-time monitoring of Bacillus subtilis endospore components by attenuated total reflection Fourier-transform infrared spectroscopy during germination)」Microbiology、145巻、1043〜1048頁、1999(非特許文献6));ラマン分光(米国特許第6,040,191号、及びH.シバタ(Shibata)、S.ヤマシタ(Yamashita)、M.オーエ(Ohe)、I.タニ(Tani)「凍結乾燥した細菌胞子のレーザラマン分光(Laser Raman spectroscopy of lyophilized bacterial spores)」Microbiol.Immunol.、30巻、4号、307〜313頁、1986(非特許文献7));ガスクロマトグラフィーと組み合わせたプラズマクロマトグラフィ(米国特許第6,672,133B1号(特許文献1))等がある。
Appl.Environ.Microbiol.、54巻、4号、923〜928頁、1988 Anal.Biochem.、130巻、2号、502〜505頁、1983 Appl.Opt.、42巻、19号、4080〜4087頁、2003 Anal.Chem.、69巻、1082〜1085頁、1997 Rapid Commun.Mass Spectrom.、13巻、23号、2320〜2326頁、1999 Microbiology、145巻、1043〜1048頁、1999 Microbiol.Immunol.、30巻、4号、307〜313頁、1986 米国特許第6,672,133B1号
Appl.Environ.Microbiol.、54巻、4号、923〜928頁、1988 Anal.Biochem.、130巻、2号、502〜505頁、1983 Appl.Opt.、42巻、19号、4080〜4087頁、2003 Anal.Chem.、69巻、1082〜1085頁、1997 Rapid Commun.Mass Spectrom.、13巻、23号、2320〜2326頁、1999 Microbiology、145巻、1043〜1048頁、1999 Microbiol.Immunol.、30巻、4号、307〜313頁、1986
ジピコリン酸カルシウムの存在による内生胞子の検出は、数々の米国特許で用いられており、その場合、ジピコリン酸カルシウムの存在は、カルシウム及び/又はジピコリン酸を検出することにより確認している。米国特許第6,498,041B1号(特許文献2)には、スポアコート成分の分子認識に基づき胞子を捕捉し、カルシウムと結合可能で蛍光を発する染色物質を添加し、可視領域の光で励起することによりCa2+を検出することが記載されている。米国特許第6,599,715号(特許文献3)及び米国特許出願第10,355,462号(特許文献4)には、紫外光で励起した際のジピコリン酸テルビウムからの発光によりジピコリン酸を検出することが記載されている。
米国特許第6,498,041B1号
米国特許第6,599,715号
米国特許出願第10,355,462号
更に、他のクリプトバイオティックな微生物についても、ジピコリン酸(或いは化学的構造が近いピリジンジカルボン酸類似体)が存在することが報告されている。(クリプトバイオティックとは、休眠状態になり得る微生物をいう。)具体的には、ジピコリンを利用して、クロストリジウム(Clostridium)胞子の検出(M.W.テイバー(Tabor)、J.マックギー(MacGee)、J.W.ホランド(Holland)「ガス−液体クロマトグラフィによる、クロストリジウム(Clostridium)種の胞子中のジピコリン酸の迅速な決定(Rapid determination of dipicolinic acid in the spores of Clostridium species by gas-liquid chromatography)」Appl.Environ.Microbiol.、31巻、1号、25〜28頁、1976(非特許文献8));スポロサルチナ(Sporosarcina)胞子の検出(C.A.ローション(Loshon)、P.セットロー(Setlow)「スポロサルチナ種の休眠状態の胞子における小分子のレベル及びバチルス種とクロストリジウム種の胞子におけるレベルの比較(Levels of small molecules in dormant spores of sporosarcina species and comparison with levels in spores of Bacillus and Clostridium species)」Can.J.Microbiol.、39巻、2号、259〜262頁、1993(非特許文献9));サルチナ(Sarcina)胞子の検出(R.S.トンプソン(Thompson)、E.R.レッドベター(Leadbetter)「サルチナ・ウレアエ(Sarcina ureae)の内生胞子からのジピコリン酸の分離に関して(On the isolation of dipicolinic acid from endospores of Sarcina ureae)」Arch.Mikrobiol.、45巻、27〜32頁、1963(非特許文献10));(Metabacterium)胞子の検出(S.スタンケル(Stunkel)、J.アルブス(Alves)、I.クンスティル(Kunstyr)「ゲッ歯動物の内臓から得た2種類のMetabacterium sp.の特徴付け。ヘテロキセニックな培養と、M.polyspora中のジピコリン酸の証明(Characterization of two 'Metabacterium' sp. from the gut of rodents. Heteroxenic cultivation and proof of dipicolinic acid in 'M. polyspora')」Folia Microbiol.(Praha)、38巻、3号、171〜175頁、1993(非特許文献11))が行われている。各種ピリジンジカルボン酸化合物が、これらの及び他の種々のクリプトバイオティックな(胞子を形成している)微生物において見出されている。
Appl.Environ.Microbiol.、31巻、1号、25〜28頁、1976 Can.J.Microbiol.、39巻、2号、259〜262頁、1993 Arch.Mikrobiol.、45巻、27〜32頁、1963 Folia Microbiol.(Praha)、38巻、3号、171〜175頁、1993
Appl.Environ.Microbiol.、31巻、1号、25〜28頁、1976 Can.J.Microbiol.、39巻、2号、259〜262頁、1993 Arch.Mikrobiol.、45巻、27〜32頁、1963 Folia Microbiol.(Praha)、38巻、3号、171〜175頁、1993
2002年1月22日出願の米国特許出願第10/054,419号を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。この出願では、各種代謝産物、コファクター、細胞成分、胞子成分からの蛍光を励起することができる複数の特定のエネルギーの電磁放射に各種試料を曝露する、非生体表面及び非生体試料の微生物の検出のための方法及び装置が開示されている。これにより、試料に含まれ、サンプリングされる各種微生物細胞や胞子(より具体的には、そこに含まれる励起された代謝産物、コファクター及び他の細胞成分、ウィルス成分、及び/又は胞子成分)は、測定可能な蛍光を発する。集めた蛍光信号(細胞/ウィルス/胞子成分から発せられる信号に関連する)は(1)バックグラウンドや反射/散乱励起信号の除去、及び(2)代謝産物、コファクター、胞子成分の相対蛍光信号値と既知の生理学的範囲との比較、が可能な方法で分析される。具体的には、米国特許出願第10/054,419号の記載においては、ジピコリン酸カルシウムを270nm〜290nm及び310nm〜330nmの(一方で或いは同時に)紫外電磁放射(光)により励起し、それぞれ460nm〜480nm及び400〜430nmの領域の蛍光エネルギーを検出することにより胞子を検出する。また、この出願によると、610nm〜670nmの電磁放射(光)により励起し、730〜800nmの領域の光エネルギーを検出することにより胞子を検出する。この新規な発光は、この出願の図3Fに示されているように、細菌胞子の水性試料からの発光スペクトルと、生存不能なバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)細胞試料の発光スペクトルとに観察された。胞子の検出のためにこれらの新規な低エネルギー励起・発光領域を用いると、(1)他の微生物蛍光団との干渉及び/又は重複が殆どない、(2)生物由来の有機的な表面からのバックグラウンド干渉が非常に少ない、(3)励起光が試料のより深くまで透過することが期待できるため有利である。この明細書によると、この有利な低エネルギーの励起・発光信号はジピコリン酸カルシウムから生じたものであり、胞子を検出するためにこれらの励起源を用いることが有利であることがわかる。
当業者には周知のことであるが、蛍光は、発光の一種である[蛍光及びりん光は光ルミネセンス分光の種類として定義されている(J.D.イングル(Ingle).Jr.、S.R.クラウチ(Crouch)、Spectrochemical Analysis、438頁、1988、プレンティスホール(Prentice-Hall)社)]。蛍光とりん光の主な違いは、その発光寿命にある(I.ティノコ(Tinoco).Jr.、K.サワー(Sauer)、J.C.ワン(Wang)、Physical Chemistry:Principles and Applications in Biological Sciences、577頁、1995、プレンティスホール(Prentice-Hall)社)。(蛍光は発光寿命がマイクロ秒以下のものをいい、りん光は発光寿命が通常ミリ秒以上のものをいう。)従って、発光寿命に関するデータがなければ、従来の発光分光を用いて蛍光とりん光とを実験的に区別することはできない。この場合、内因性色素団(励起エネルギーを吸収し低エネルギーの放射を発する化学成分)から生じる「見かけの蛍光」は、りん光又は蛍光から生じるものであろう。内因性微生物成分からの見かけの蛍光を検出することにより、(1)試料と物理的に接触せず、(2)非常に素早く、且つ(3)試薬を添加せずに休眠状態のクリプトバイオティックな微生物を検出することができる。
容易に考えられることではあるが、休眠状態の(クリプトバイオティックな及び/又は胞子を形成している)微生物は、除去するのに非常に手間がかかるため、これら微生物の存在を、病院や食品調製エリア、浄水場、建築物、戦場で検出できることは非常に有用であろう。本発明の一目的として、この方法及び装置は、食品製造施設等において低廉に且つ迅速に操作される。
本発明の思想は、試料を610nm〜680nmの領域の電磁放射に曝露して730nm〜860nmの領域の発光により検出する、クリプトバイオティックな(休眠状態の、胞子を形成している)微生物を検出するための方法及び装置にある。試料とする胞子(より詳細には、胞子に含まれるジピコリン酸カルシウム)は、測定可能な電磁エネルギーを発する。ピリジンジカルボン酸カルシウム塩から発せられた発光信号を集め、全てのバックグラウンド、反射励起エネルギー及び/又は散乱光を除去できる方法で分析する。即ち、本発明の方法及び装置は、試料をスキャンすることにより、該試料と接触せずに微生物による汚染の存在を検出し定量する、低廉且つ迅速な方法を提供するものである。非接触下で微生物による試料の汚染を評価できるので、汚染物が混入する危険性が低くなる。
本発明の一目的は、食品におけるクリプトバイオティックな微生物による汚染を検出するのに使用するための方法及び装置を提供することである。この方法及び装置においては、610nm〜680nmの領域の電磁放射で励起したとき、ピリジンジカルボン酸カルシウム化合物からの発光信号を730nm〜860nmの領域で検出する。このため、食品に触れることなく、休眠状態の微生物による食品の汚染を定量的に測定することができる。
本発明の別の目的は、非生物表面上、液体中及び空気中のクリプトバイオティックな微生物による汚染を検出するのに使用できる方法及び装置を提供することである。本発明の具体的な目的としては、この方法及び装置は、ヘルスケア設備、研究所、水処置試験施設、建築物、戦場等で低廉且つ迅速にクリプトバイオティックな微生物や微生物による汚染を見つけるために使用できる。
本発明の更に別の目的は、微生物による非生物表面上、液体試料中或いは空気試料中の汚染の検出に使用するための方法及び装置であって、ピリジンジカルボン酸カルシウム化合物の発光が、610nm〜680nmの領域の電磁放射により励起されて730nm〜860nmの領域において検出され、試料に接触せずに微生物による試料の汚染を検出できる方法及び装置を提供することである。
本発明の本形態においては、多くの場合、約630nmの波長の電磁放射を発する一又は複数の光源を使用することが好ましい。本発明のこのような形態においては、光源からの光は、ジピコリン酸カルシウムを特異的に励起するものであるか、あるいは、フィルタに通すことによってジピコリン酸カルシウムを特異的に励起するエネルギーを有する電磁放射としうるものである。
本発明の他の形態においては、約580nmの波長の電磁放射を試料に照射することができ、また、場合によってはそのようにすることが好ましい。580nmの波長の光は微生物中のフラビンやヘム化合物を励起する。それらの発光の一部は試料に自己吸収され、続いて610nm〜680nmの領域の発光でジピコリン酸カルシウムを励起する。試料が発する見かけの蛍光を上述の通りに集め分析する。
本発明の他の形態においては、ジピコリン酸カルシウムを励起できるエネルギーであると共に胞子と相互作用しないエネルギーを有する電磁放射を照射することができ、また、場合によってはそのようにすることが好ましい。即ち、本発明のこのような形態においては、試料が発する蛍光信号(各種微生物成分が発したもの及び試料から単に反射/散乱したもの両方)を測定することができ、微生物が発した信号間の比と試料からの反射/散乱信号間の比とを比較することによって微生物の存在を決定することができる。
本発明の実施にあたっては、センサを用いて内因性色素団による発光だけでなく、バックグラウンド、反射あるいは散乱した電磁放射も検出する。これにより、信号を標準化し、スキャンされる試料と検出器の距離の変動により生じる変動や、試料や表面が異なることによって生じる変動を補償する。
試料に照射する電磁放射を、60ヘルツと異なる(different than 60 Herz)周波数で急速に変化させることにより、周囲の光(特に蛍光)の影響を実質的に最小化することができることが判明した。また、励起エネルギーの調整により、微生物量の測定精度に実質的影響を与えることなく、センサを動かして電磁放射を試料の種々の部分に照射することができる。
本明細書に記載の微生物の検出方法及び装置は、試薬を必要とせず、試料と物理的に接触せずに、クリプトバイオティックな微生物の存在及び生理学的状態を測定できると共に、低コストで実施でき、リアルタイムの結果を提供する。本発明のこれらの及び他の目的、特徴、利点は、以下に記載する実施形態の詳細な説明や添付の請求項によって明確になるであろう。
本発明の一実施形態を実施するのに使用できる装置の基本的な要素を図1のブロック図に示す。この装置は、光源、励起フィルタ、フォーカス光学部、集光光学部、エミッション・フィルタ及び検出器から構成される。電磁放射は光源から試料に向かい、必要に応じ励起フィルタやフォーカス光学部を通って試料中の内因性色素団を励起させる。散乱、反射された励起放射は発せられた放射と共に、集光光学部で集められて検出器に向かう。エミッション・フィルタを用いると、所望のエネルギーだけを確実に測定できる。
本発明の実施形態としては、様々な形状を含む或いは様々な構成要素を利用した各種実施形態が可能である。本微生物検出法の基本的な構成要素は、(1)ピリジンジカルボン酸カルシウム塩を610nm〜680nmの領域で励起すること、(2)710nm〜860nmで発せられた電磁放射、バックグラウンド(周囲)光、反射励起光、及び散乱光エネルギーを集めて検出すること、及び(3)バックグラウンド干渉を補正できる方法で検出した信号を分析すること、を許容するものである。本法を利用する装置に用いる形状や構成要素は、応用上の様々な要求及び予想される干渉に対応したものでなければならない。
広域イルミネーションを提供する光源を用いることができ、また、そのような光源の使用が時には好ましい。用いられる光源の種類は、所望の内因性微生物成分を励起させるのに必要な波長の電磁放射を生成する能力によって決まる。オフサイクルの間に、環境バックグラウンドを測定することのできるパルス光源の利用が望まれることもある。用いられる光源としては、各種電球(水銀、タングステン、重水素、キセノン等)を有するランプ、発光ダイオード(LED)、及び要求される励起エネルギーに特異的なダイオードレーザが挙げられる。用いる光源の種類は、必要とされる励起放射の強度や要求検出限界に依存する。
本発明の各実施形態に用いられる励起及びエミッション・フィルタ類としては、各種干渉フィルタ、含浸ガラス、一連のカットオフフィルタ、ゼラチンフィルタ、モノクロメータ、回折格子、ルゲートフィルタ等が挙げられる。用いられる各種エミッション・フィルタの光カットオフ特性は、散乱・反射された励起放射の信号がどれだけその分析方法で許容されるか、或いは、要求検出限界がどれ位かによる。所望のエネルギーのみを照射する光源を用いる場合は励起フィルタを必要としないであろう。一方、光源が(レーザ光のように)平行である場合は、フォーカス光学部は不要であろう。(フォーカス光学部を使用する目的は、励起放射を2次元的あるいは3次元的サンプリング領域に向けることである。)マルチフォトン励起では、目的の色素団の励起エネルギーよりも小さいエネルギーの光源を用いることができるという点が重要である。
集光光学部の目的は、励起された微生物色素団から生じる光や試料から散乱・反射された光を検出器に運ぶことである。干渉フィルタを用いて異なる発光エネルギーを分別する場合には、このフィルタが最適に作動するよう、集めた光を平行にしなければならない。光ファイバ・ケーブルも、試料に対して励起のための照射を行う際に、また、発せられた放射を集め検出器に向ける際に用いることができる。多くの光学的成分は紫外領域や可視領域で蛍光を示すので、研磨金属反射する、サファイア、融合シリカ、石英、MgF2、及び/又はCaF2からなる光学的成分を用いることができ、また、時にはそれらの使用が望まれる。
発せられる電磁放射は、検出器により測定可能な電気信号に変換することができる。本発明の各種実施形態においては、光増幅管(PMT)、電子なだれフォトダイオード(APD)、ピンダイオード、CCD等の、異なる感度を有する多数の検出器を用いることができる。検出器の選択は、測定対象の放射光のエネルギー、発光信号の強度、及び装置の要求検出限界に基づいてなされる。集めた発光エネルギー(増幅電気信号に変換したもの)を、すべてのバックグラウンド発光や反射励起光及び/又は散乱励起信号の寄与分を除去できる方法で分析する。
図2は、ジピコリン酸(ピリジン−2,6−ジカルボン酸)とケリダム酸(4−ヒドロキシピリジン−2,6−ジカルボン酸)の化学構造を示す。図3は、(630nmで励起された)ジピコリン酸カルシウムと(670nmで励起された)ケリダム酸カルシウムの発光スペクトルである。610〜680nmの領域の電磁エネルギーで励起された際に710〜860nmの発光エネルギーが得られることは、ピリジンジカルボン酸アルカリ土類金属塩の特徴であり、このことから、休眠状態のクリプトバイオティックな微生物を検出するためにジピコリン酸カルシウム(或いは、別の生合成経路やそれに続くジピコリン酸塩に固有の反応によって生じる、化学的構造が近い他の内因性ピリジンジカルボン酸類似体)からの発光を利用できることがわかる。
図4は、630nmの放射によって励起したジピコリン酸カルシウムの固体試料の発光スペクトルと飽和溶液の発光スペクトルである。実線は固体試料の発光スペクトルを示し、破線は飽和溶液の発光スペクトルを示す。固体のジピコリン酸カルシウムも水性のジピコリン酸カルシウムも約780nmの発光を示す。但し、固体試料のスペクトルの方が溶液のスペクトルに比べて低くなっている。(固体のジピコリン酸カルシウムの発光が低減しているのは濃度の影響かもしれない。)図5は、水性ジピコリン酸カルシウムを315nm(----)と630nm(−)とで励起したときの発光スペクトルであり、既知のジピコリン酸カルシウムの蛍光発光(R.ヌーデルマン(Nudelman)、N.フィー(Feay)、M.ヒルシュ(Hirsch)、S.エフリマ(Efrima)及びB.ブロンク(Bronk)「観察された細菌胞子UV発光スペクトルの可能な成分としてのジピコリン酸の蛍光(Fluorescence of Dipicolinic Acid as a Possible Component of the Observed UV Emission Spectra of Bacterial Spores)」SPIE、3533巻、190〜195頁、1998)に対して新規な低エネルギーの発光信号の相対信号強度が示されている。
図6は、ジピコリン酸カルシウムのみの溶液(----)、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)胞子からの水性抽出液(−)、サッカロマイセス・セリビジェー(Saccharomyces cerevisiae)胞子からの水性抽出液(・・・・・・)、及び(Anal.Chem.、69巻、1082〜1085頁、1997に記載の方法に従い)Tb3+を添加したクリプトスポリジウム・パーバム(Cryptosporidium parvum)の卵母細胞からの水性抽出液の発光スペクトル(励起270nm)である。図7は、ジピコリン酸カルシウムのみの溶液(----)から得られた光学濃度(optical density)スペクトルを示す。更に、図7は、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)胞子からの抽出液(−)、及び(Anal.Biochem.、130巻、2号、502〜505頁、1983に記載の方法に従い)Ca2+を添加したサッカロマイセス・セリビジェーSacchatomyces cerevisiae)胞子からの抽出液(・・・・・・)を示す。これらの図から、各種休眠状態のクリプトバイオティックな微生物、即ち酵母胞子、細菌胞子、パラメシウム卵母細胞の中に、周期律表第2族(アルカリ土類金属、Mg2+、Ca2+等)のピリジンジカルボン酸化合物が存在することがわかる。図8は、バチルス・アンスラシス(Bacillus anthracis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、枯草菌(Bacillus subtilis)及びバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)の細菌胞子の溶液の発光スペクトル(励起630nm)である。ジピコリン酸カルシウムの発光が710nm〜860nmにあるため、各種細菌胞子中にジピコリン酸カルシウムが遍在的に存在することがわかる。図9は、細菌(Baccilus spp.)胞子の溶液と、酵母(Saccharomyces spp.)胞子の溶液の発光スペクトル(励起630nm)である。この図から、細菌胞子だけでなく菌類の胞子の検出においても、710nm〜860nmの発光を利用できることがわかる。
内因性のピリジンジカルボン酸アルカリ土類金属塩からの新規な低エネルギーの発光を利用することにより、試料に何らかの試薬を添加したり、試料を処理したり、試料と接触したりせずに、休眠状態のクリプトバイオティックな微生物を素早く検出できる。本発明の上に述べた各実施形態は単なる例示であって、上述の基本思想を用いた他の各種形状、変形例及び修正例は、当業者であれば本発明の趣旨を逸脱せずに想到することができる。休眠状態のクリプトバイオティックな微生物を検出する本法の範囲には、610nm〜680nmの電磁エネルギーで励起したとき内因性ピリジンジカルボン酸アルカリ土類金属塩から発せられる710nm〜680nmの発光を利用することが含まれる。重要な実施形態では、この内因性色素団の励起に続き、バックグラウンド信号、励起信号及び反射励起信号の割合を同時に決定する方法で、検出された発光を分析する。各種変形例、修正例及び形状例は全て、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内に入るものと諒解されたい。
Claims (3)
- 休眠状態のクリプトバイオティックな微生物の検出方法であって、
a.休眠状態のクリプトバイオティックな内因性微生物色素団を、波長が610nm〜680nmの特定領域の電磁照射により励起し、これにより内因性色素団を含む前記微生物を励起して電磁線を発する段階と、
b.励起された微生物色素団から発せられた710nm〜860nmの領域の電磁放射信号を検出する段階と
を含む方法。 - 前記微生物色素団が、ピリジンジカルボン酸アルカリ土類金属塩からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
- 検出対象の前記休眠状態のクリプトバイオティックな微生物が、細菌内生胞子、菌類胞子、及び原生動物の卵母細胞を含む、請求項1に記載の方法。
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