JP2005282611A - パーキングブレーキ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】電力消費を伴わない簡単な構造で自動パーキングブレーキ状態を得ることができるようにする。
【解決手段】パーキング用制御液圧をパーキングピストン44に作用させることでパーキングピストン44を前進作動せしめることによりディスクブレーキ2Aのパーキングブレーキ状態を得ることが可能となり、またパーキングピストン44の前進位置がロック機構31で機械的にロックされるので、パーキングブレーキ状態を自動的に得ることができる。しかもケーシング23をブレーキキャリパ75に締結する複数の締結部材25が、シリンダ孔76の軸線に直交する平面内で該シリンダ孔76の軸線まわりの1箇所でのみ締結可能な位置に配置される。
【選択図】 図2
【解決手段】パーキング用制御液圧をパーキングピストン44に作用させることでパーキングピストン44を前進作動せしめることによりディスクブレーキ2Aのパーキングブレーキ状態を得ることが可能となり、またパーキングピストン44の前進位置がロック機構31で機械的にロックされるので、パーキングブレーキ状態を自動的に得ることができる。しかもケーシング23をブレーキキャリパ75に締結する複数の締結部材25が、シリンダ孔76の軸線に直交する平面内で該シリンダ孔76の軸線まわりの1箇所でのみ締結可能な位置に配置される。
【選択図】 図2
Description
本発明は、ディスクブレーキをそのブレーキ作動状態でロックすることにより、パーキングブレーキ状態を得るようにしたパーキングブレーキ装置に関する。
このようなパーキングブレーキ装置は、たとえば特許文献1および特許文献2等で既に知られている。
特表平10−512947号公報
特表2000−504811号公報
ところで、上記特許文献1では、ブレーキピストンが、前部および後部ブレーキピストンに分割されるとともに、後部ブレーキピストンの前端に当接する伝達部材と、前部ブレーキピストンに固定される閉塞板との間にばねが縮設され、前部ブレーキピストンの後方でブレーキキャリパの内面に刻設される内歯に噛合し得るラッチが、前記伝達部材が後部ブレーキピストンの前端に当接した状態では内歯に係合するものの伝達部材が後部ブレーキピストンの前端から前方に相対移動移動したときにはばね付勢力で内歯との係合を解除するようにしてブレーキキャリパ内に収納され、前記後部ブレーキピストンには、伝達部材を後部ブレーキピストンに対して軸方向に相対移動させ得る補助ピストンが摺動自在に嵌合されている。しかるにブレーキキャリパの内面に内歯を刻設せねばならず、またブレーキピストンを前部および後部ブレーキピストンに分割しつつラッチをブレーキキャリパ内に収納するようにしているので、ブレーキキャリパ内の構造が複雑となる。
また上記特許文献2では、ブレーキピストンに前端部が固定的に連結される調整ボルトに調整ナットが螺合され、この調整ナットをケーシングに摩擦係合させる電磁力を発揮する電磁石が前記調整ナットの後方でブレーキキャリパ内に配設されており、パーキングブレーキ状態を得るときには、ブレーキ液圧をブレーキピストンに作用せしめた状態で前記電磁石により調整ナットをケーシングに摩擦係合させることにより、ブレーキピストンの後退を阻止するようにしている。しかるに電磁石をブレーキキャリパ内に収納させる必要があり、構造が複雑となるだけでなく、パーキングブレーキ状態では電磁石の巻線への通電状態を維持する必要があるので、消費電力量が多くなる。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、電力消費を伴わない簡単な構造でディスクブレーキのパーキングブレーキ状態を得ることができるようにしたパーキングブレーキ装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、ブレーキピストンを摺動可能に嵌合せしめるシリンダ孔が設けられるブレーキキャリパを有するディスクブレーキと、前記シリンダ孔と同軸の摺動孔を有して前記ブレーキキャリパとは別体に形成されるとともに前記ブレーキキャリパに締結されるケーシングと、パーキング用制御液圧の作用に応じて前進作動して前記ディスクブレーキのパーキングブレーキ状態を得ることを可能としつつ前記摺動孔に摺動可能に嵌合されるパーキングピストンと、該パーキングピストンの前進作動状態を機械的にロックすべく前記パーキングピストンの前進作動に応じて自動的にロック作動するとともにパーキング解除用制御液圧の作用に応じてロック解除作動するようにして前記パーキングピストンよりも後方でケーシング内に設けられるロック機構と、液圧発生源と、該液圧発生源の発生液圧を制御して前記パーキング用制御液圧および前記パーキング解除用制御液圧を得ることを可能とした液圧制御手段とを備え、前記ケーシングを前記ブレーキキャリパに締結する複数の締結部材が、前記シリンダ孔の軸線に直交する平面内で該シリンダ孔の軸線まわりの1箇所でのみ締結可能な位置に配置されることを特徴とする。
本発明によれば、液圧発生源の発生液圧を液圧制御手段で制御することによってパーキング用制御液圧をパーキングピストンに作用させることでパーキングピストンを前進作動せしめることによりディスクブレーキのパーキングブレーキ状態を得ることが可能となり、またパーキングピストンの前進位置がロック機構で機械的にロックされるので、パーキングブレーキ状態を自動的に得ることができ、またパーキングブレーキ状態を解除するときにはパーキング解除用制御液圧をロック機構に作用せしめればよく、パーキングブレーキ状態では電力消費を伴わない簡単な構造でパーキングブレーキ状態を自動的に得ることができる。
しかもケーシングをブレーキキャリパに締結する複数の締結部材が、シリンダ孔の軸線に直交する平面内で該シリンダ孔の軸線まわりの1箇所でのみ締結可能な位置に配置されるので、シリンダ孔の軸線まわりの相対位置を常に一定としてケーシングがブレーキキャリパに締結されることになる。
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の一実施例に基づいて説明する。
図1〜図7は本発明の一実施例を示すもので、図1は車両用ブレーキ装置の液圧回路図、図2は非パーキングブレーキ時の左前輪用ディスクブレーキの縦断面図、図3は図2の3矢視図、図4は図2の要部拡大図、図5はパーキングブレーキ状態での図2に対応した縦断面図、図6は図5の一部を拡大して示す断面図、図7は工具をロックピストンに連結した状態を示す断面図である。
先ず図1において、タンデム型のマスタシリンダMは、車両運転者がブレーキペダル4に加える踏力に応じたブレーキ液圧を発生する第1および第2出力ポート1A,1Bを備えており、第1出力ポート1Aは第1出力液圧路3Aに接続され、第2出力ポート1Bは第2出力液圧路3Bに接続される。
第1出力液圧路3Aは、常開型電磁弁であるカット弁17Aを介して第1液圧路20Aに接続され、第2出力液圧路3Bは、常開型電磁弁であるカット弁17Bを介して第2液圧路20Bに接続される。
第1液圧路20Aは、常開型電磁弁である入口弁6Aを介してパーキングブレーキ機構付きである左前輪用ディスクブレーキ2Aに接続されるとともに、常開型電磁弁である入口弁6Bを介して右後輪用ディスクブレーキ2Bに接続される。また第2液圧路20Bは、常開型電磁弁である入口弁6Cを介してパーキングブレーキ機構付きである右前輪用ディスクブレーキ2Cに接続されるとともに、常開型電磁弁である入口弁6Dを介して左後輪用車ディスクブレーキ2Dに接続される。さらに各入口弁6A〜6Dにはチェック弁7A〜7Dがそれぞれ並列に接続される。
第1液圧路20Aに対応した第1リザーバ8Aと左前輪用ディスクブレーキ2Aおよび右後輪用ディスクブレーキ2Bとの間には常閉型電磁弁である出口弁9A,9Bがそれぞれ設けられ、第2液圧路20Bに対応した第2リザーバ8Bと右前輪用ディスクブレーキ2Cおよび左後輪用ディスクブレーキ2Dとの間には常閉型電磁弁である出口弁9C,9Dがそれぞれ設けられる。
第1および第2リザーバ8A,8Bは、共通な電動モータ11で駆動される第1および第2ポンプ10A,10Bの吸入側にそれらのポンプ10A,10B側へのブレーキ液の流通を許容する一方向弁19A,19Bを介して接続される。また前記第1および第2出力液圧路3A,3Bは、常閉型電磁弁であるサクション弁18A,18Bを介して第1および第2ポンプ10A,10Bおよび前記一方向弁19A,19B間に接続され、第1および第2液圧路20A,20Bは第1および第2ダンパ13A,13Bを介して第1および第2ポンプ10A,10Bの吐出側に接続される。
各車輪がロックを生じる可能性のない通常ブレーキ時には、各入口弁6A〜6Dが消磁、開弁状態とされるとともに各出口弁9A〜9Dが消磁、閉弁状態とされ、マスタシリンダMの第1出力ポート1Aから出力されるブレーキ液圧は入口弁6A,6Bを介して左前輪および右後輪用ディスクブレーキ2A,2Bに作用する。またマスタシリンダMの第2出力ポート1Bから出力されるブレーキ液圧は、入口弁6C,6Dを介して右前輪用および左後輪用ディスクブレーキ2C,2Dに作用する。
上記ブレーキ中に車輪がロック状態に入りそうになったときには入口弁6A〜6Dのうちロック状態に入りそうになった車輪に対応する入口弁が励磁、閉弁されるとともに、出口弁9A〜9Dのうち上記車輪に対応する出口弁が励磁、開弁される。これにより、ロック状態に入りそうになった車輪のブレーキ液圧の一部が第1リザーバ8Aまたは第2リザーバ8Bに吸収され、ロック状態に入りそうになった車輪のブレーキ液圧が減圧されることになる。
またブレーキ液圧を一定に保持する際には、入口弁6A〜6Dが励磁、閉弁されるとともに出口弁9A〜9Dが消磁、閉弁されることになり、さらにブレーキ液圧を増圧する際には、入口弁6A〜6Dが消磁、開弁状態とされるともに、出口弁9A〜9Dが消磁、閉弁状態とされればよい。
このように各入口弁6A〜6Dおよび各出口弁9A〜9Dの消磁・励磁を制御することにより、車輪をロックさせることなく、効率良く制動することができる。
ところで、上述のようなアンチロックブレーキ制御中に、電動モータ11は回転作動し、この電動モータ11の作動に伴って第1および第2ポンプ10A,10Bが駆動されるので、第1および第2リザーバ8A,8Bに吸収されたブレーキ液は、第1および第2ポンプ10A,10Bに吸入され、次いで第1および第2ダンパ13A,13Bを経て第1および第2出力液圧路3A,3Bに還流される。このようなブレーキ液の還流によって、第1および第2リザーバ8A,8Bのブレーキ液の吸収によるブレーキペダル4の踏み込み量の増加を防ぐことができる。しかも第1および第2ポンプ10A,10Bの吐出圧の脈動は第1および第2ダンパ13A,13Bの働きにより抑制され、上記還流によってブレーキペダル4の操作フィーリングが阻害されることはない。
而してサクション弁18A,18Bを励磁、開弁するとともにカット弁17A,17Bを励磁、閉弁した状態で電動モータ11を作動せしめることにより、第1および第2ポンプ10A,10Bが、マスタシリンダM側からブレーキ液を吸入して加圧したブレーキ液を前記第1および第2液圧路20A,20Bに吐出することになる。
また左前輪および右前輪用ディスクブレーキ2A,2Cには、ブレーキ液圧を検出するための圧力センサ15A,15Bが接続される。
図2において、パーキングブレーキ機構付きである左前輪用ディスクブレーキ2Aでは、車輪とともに回転するブレーキディスク71の両側に第1摩擦パッド72および第2摩擦パッド73が対向して配置される。これらの第1および第2摩擦パッド72,73は、ブレーキディスク71に当接可能なライニング72a,73aと、ライニング72a,73aの背面に固定された裏板72b,73bとで構成されるものであり、車体に固定されたブラケット74に、前記裏板72b,73bがブレーキピストン78の軸線方向に移動自在に支持される。またブラケット74には、第1および第2摩擦パッド72,73を跨ぐブレーキキャリパ75が前記ブレーキピストン78の軸線方向に移動自在に支持される。
ブレーキキャリパ75は、第1摩擦パッド72の裏板72bに対向する第1挟み腕75aと、第2摩擦パッド73の裏板73bに対向する第2挟み腕75bとを備えており、第1および第2挟み腕75a,75bはブレーキディスク71の外周部を通る架橋部75cにより一体に連結される。第1挟み腕75aにはシリンダ孔76が設けられており、このシリンダ孔76にカップ状のブレーキピストン78がシール部材77を介して摺動自在に嵌合される。第1摩擦パッド72の裏板72bに当接可能に対向するブレーキピストン78の先端部はベローズ状のダストカバー79によってシリンダ孔76の開口端に接続され、またブレーキピストン78の背面を臨ませるブレーキ液圧室80が第1挟み腕75a内に形成され、このブレーキ液圧室80は、第1挟み腕75aに設けられるポート81を介して入口弁6Aに接続される。
前記ブレーキキャリパ75の第1挟み腕75a内には、アジャスト機構82が設けられるものであり、このアジャスト機構82は、ブレーキピストン78に相対回転不能に連結されて前記ブレーキ液圧室80に収納される調整ナット83と、該調整ナット83に前端部が螺合される調整ボルト84と、前記ブレーキ液圧室80の後部に配置されるとともに軸線まわりの回転を不能としつつ軸線方向の移動を可能としてブレーキキャリパ75に液密にかつ摺動自在に嵌合される中継ピストン85と、前記調整ボルト84の後部に一体にかつ同軸に連設されて前記中継ピストン85に液密にかつ摺動自在に嵌合されるとともに前記中継ピストン85に摩擦係合する方向に弾発付勢される小ピストン86とを備える。
ブレーキキャリパ75の第1挟み腕75aにおいてブレーキディスク71とは反対側の端部にはシリンダ孔76よりも小径の中継シリンダ孔87が同軸に設けられており、段付きの中継ピストン85の後部が、その前部をシリンダ孔76の後部に挿入しつつシール部材88を介して中継シリンダ孔87に摺動自在に嵌合される。しかもブレーキキャリパ75および中継ピストン85には、シリンダ孔76および中継シリンダ孔87と平行な軸線を有してシリンダ孔76の軸線からオフセットした位置に配置される規制ピン89の両端部が嵌合される。これにより中継ピストン85は、シリンダ孔76および中継シリンダ孔87と同軸の軸線まわりに回転することが阻止されるとともに前記軸線に沿う方向への移動を可能としてブレーキキャリパ75に支承されることになる。
中継ピストン85には、テーパ状のクラッチ面90を前端開口部に備える小シリンダ孔91が同軸に設けられる。一方、調整ボルト84の後部には、前記クラッチ面90に摩擦係合し得る可動クラッチ体92と、前記小シリンダ孔91に液密にかつ摺動自在に嵌合する小ピストン86とが同軸にかつ一体に連設される。
シリンダ孔76の内面に装着されたクリップ94に係合支持されるリテーナ95には、可動クラッチ体92を中継ピストン85のクラッチ面90に摩擦係合させるばね力を発揮するクラッチばね93の一端が当接され、該クラッチばね93の他端は、ボールベアリング96を介して可動クラッチ体92に当接する。
調整ナット83および調整ボルト84は、ピッチの粗い複数条のねじ山およびねじ溝を有する早ねじ97により噛み合っている。調整ナット83をブレーキピストン78側に付勢するばね力を発揮するオーバーアジャスト防止ばね98の一端が調整ナット83に当接され、ブレーキピストン78の内面に装着されたクリップ99に係合支持されるリテーナ100に前記オーバーアジャスト防止ばね98の他端が当接、支持される。
調整ナット83およびブレーキピストン78は、それらの当接部の凹凸係合により相対回転不能であり、かつ第1摩擦パッド72の裏板72bおよびブレーキピストン78は、それらの凹凸係合により相対回転不能である。
このようなアジャスト機構82では、通常ブレーキ時にブレーキ液圧室80に液圧が供給されると、その液圧を受けたブレーキピストン78がシール部材77を弾性変形させながらシリンダ孔76内を図2の左側に移動し、第1摩擦パッド72をブレーキディスク71の一側面に押し付けると、その反作用でブレーキキャリパ75がブレーキピストン78の移動方向と逆方向の右側に移動し、第2挟み腕75bが第2摩擦パッド73をブレーキディスク71の他側面に押し付ける。その結果、第1および第2摩擦パッド72,73がブレーキディスク71の両面に均等な面圧で当接し、車輪を制動するブレーキ力が発生する。
上記ブレーキ中に、ブレーキ液圧室80に供給された液圧は、調整ナット83には軸線方向の荷重を発生させることはないが、調整ナット83に噛み合う調整ボルト84と一体の可動クラッチ体92には、小ピストン86の断面積に前記液圧を乗算した大きさの右向きの荷重を発生させ、その荷重に応じた摩擦係合力が可動クラッチ体92および中継ピストン85のクラッチ面90間に作用する。
ところで、通常ブレーキ時にはブレーキ液圧室80に作用する液圧は比較的低いため、可動クラッチ体92および中継ピストン85間に作用する摩擦係合力も比較的小さい。このため第1および第2摩擦パッド72,73のライニング72a,73aの摩耗の進行に伴ってブレーキピストン78が前進すると、調整ナット83はオーバーアジャスト防止ばね98の弾発力によりブレーキピストン78と共に前進し、調整ナット83に噛み合う調整ボルト84と一体の可動クラッチ体92が、ブレーキ液圧室80に作用する液圧およびクラッチばね93の弾発力に抗して中継ピストン85のクラッチ面90から引き離される。
可動クラッチ体92が中継ピストン85のクラッチ面90から離れると、可動クラッチ体92に作用する液圧およびクラッチばね93の弾発力で右向きに付勢された調整ボルト84は、回転不能な調整ナット83に対して早ねじ97において相対回転しながら右向きに移動し、可動クラッチ体92が中継ピストン85のクラッチ面90に再び係合する。このとき、クラッチばね93との間に配置したボールベアリング96の作用で可動クラッチ体92のスムーズな回転が可能になる。
このようにして、第1および第2摩擦パッド72,73におけるライニング72a,73aの摩耗が進行するに伴い、その摩耗量を補償するように調整ボルト84に対して調整ナット83が左側に相対移動するため、非制動時における第1および第2摩擦パッド72,73のライニング72a,73aとブレーキディスク71とのクリアランスを自動的に一定に保つことができる。
ブレーキ状態を解除すべくブレーキ液圧室80に作用する液圧を減圧すると、シール部材77の変形復元力でブレーキピストン78は後退するが、その後退力が調整ナット83および調整ボルト84を介して可動クラッチ体92を中継ピストン85のクラッチ面90に係合させるため、調整ナット83に対する調整ボルト84の相対回転が規制される。したがってブレーキピストン78は調整ナット83および調整ボルト84間のバックラッシュ分のストロークしか後退することができず、第1および第2摩擦パッド72,73と、ブレーキディスク71との間には前記バックラッシュ分の適正なクリアランスが与えられる。
また強力な制動が行われた場合には、ブレーキ液圧室80の液圧がブレーキキャリパ75を変形させるような所定値に上昇するまで上記自動調整が行われ、その液圧が前記所定値を超えると、可動クラッチ体92が中継ピストン85のクラッチ面90に液圧で強く押し付けられるため、可動クラッチ体92および中継ピストン85が相対回転不能に結合される。その結果、調整ボルト84が回転不能に拘束され、もともと回転不能な調整ナット83は調整ボルト84上に留まるため、液圧によるブレーキキャリパ75の弾性変形に伴ってブレーキピストン78が更に前進すると、オーバーアジャスト防止ばね98を圧縮しつつ、調整ナット83を残してブレーキピストン78だけが前進する。このようにして、強力な制動が行われた場合の調整ナット83および調整ボルト84間のオーバーアジャストが防止される。
図3を併せて参照して、ブレーキキャリパ75の第1挟み腕75aには、左前輪用ディスクブレーキ2Aとは反対側の後端部に端壁24aを有した有底円筒状のケーシング主体24と、該ケーシング主体24内に嵌入、固定される円筒状のスリーブ36とから成るケーシング23が、複数個たとえば4個の締結部材としてのボルト25…と、それらのボルト25…にそれぞれ螺合するナット26…とによって締結される。すなわち第1挟み腕75aに一体に設けられるフランジ27と、前記ケーシング主体24の前端部に一体に設けられるフランジ28とが、前記ボルト25…およびナット26…によって締結される。
しかも前記4個のボルト25…は、前記シリンダ孔76の軸線に直交する平面内で該シリンダ孔76の軸線まわりの1箇所でのみ締結可能な位置に配置されており、この実施例では、前記ボルト25…のうち1個を除く3個のボルト25…は、前記シリンダ孔76の軸線に直交する平面内で該シリンダ孔76の軸線を中心とする仮想円C上に配置されるのに対し、残余の1個のボルト25は、前記仮想円Cからずれた位置に配置される。このようなボルト25…の配置によって、前記シリンダ孔76の軸線まわりの相対位置を一定としてケーシング23がブレーキキャリパ75の第1挟み腕75aに締結されることになる。
前記ケーシング23内には、パーキング用制御液圧の作用に応じて左前輪用ディスクブレーキ2Aのパーキングブレーキ状態を得ることを可能としたパーキング作動機構30と、該パーキング作動機構30のパーキング作動状態を機械的にロックするとともにパーキング解除用制御液圧の作用に応じてロック解除作動するようにしてパーキング作動機構30よりも後方に配置されるロック機構31とが設けられる。
図4を併せて参照して、ケーシング主体24内には、中継シリンダ孔87の後端を前端に同軸に臨ませるようにして中継シリンダ孔87よりも大径に形成される第1摺動孔32と、第1摺動孔32よりも小径にして第1摺動孔32の後端に同軸に連なるねじ孔33と、該ねじ孔33よりも小径にしてねじ孔33の後端に同軸に連なるとともにケーシング24の端壁24aで後端が閉じられる取付け孔34とが設けられており、第1摺動孔32およびねじ孔33間には前方側に臨む環状の段部35が形成される。
前記取付け孔34には円筒状のスリーブ36が嵌入されるものであり、該スリーブ36の前端外周部に設けられる雄ねじ部37が、スリーブ36の後端を前記端壁24aに当接させるまで前記ねじ孔33に螺合され、これによりスリーブ36は、その前端が前記段部35よりも後方に配置されるようにしてケーシング主体24内に固定される。
このスリーブ36には、前記第1摺動孔32よりも小径にして第1摺動孔32の後端に同軸に連なる第2摺動孔38と、第2摺動孔38よりも小径にして第2摺動孔38の後端に同軸に連なるガイド孔39と、ガイド孔39よりも大径にしてガイド孔39の後端に同軸に連なる第3摺動孔40と、第3摺動孔40よりも大径にして第3摺動孔40の後端に同軸に連なる第4摺動孔41とが設けられ、第2摺動孔38およびガイド孔39間には前方に臨む規制段部42が形成され、第3および第4摺動孔40,41間には後方に臨む環状の段部43が形成される。
パーキング作動機構30は、第1摺動孔32に摺動可能に嵌合されるパーキングピストン44と、前記パーキングピストン44の前方で第1摺動孔32に軸方向スライド可能に収容される押圧ピストン45と、パーキングピストン44および押圧ピストン45間に介装される複数枚の皿ばね46…とで構成される。
パーキングピストン44の後端には第2摺動孔38に摺動可能に嵌合される小径部44aが同軸かつ一体に設けられ、ケーシング23におけるケーシング主体24の段部35およびパーキングピストン44の後端間には、パーキングピストン44にその背面側からパーキング用制御液圧を作用せしめるための環状のパーキング用制御液圧室47が形成され、該パーキング用制御液圧室47を軸方向両側からシールするための環状のシール部材48,49が、パーキングピストン44の外周およびパーキングピストン44における小径部44aの外周に装着される。押圧ピストン45の前端には、中継シリンダ孔87に挿入される押圧突部45aが、前記中継ピストン85の後端に当接するようにして一体に突設される。
またパーキングピストン44の前端中央部には凹部44bが設けられ、その凹部44bに挿入される挿入筒部45bが押圧ピストン45の後端中央部に同軸にかつ一体に設けられる。しかも挿入筒部45bの外径は、パーキングピストン44に対する押圧ピストン45の半径方向への相対変位を許容するようにして凹部44bの内径よりも小さく設定されており、押圧ピストン45の外径も、前記凹部44b内での挿入筒部45bの半径方向相対変位が生じても第1摺動孔32の内面に接触することがないようにして第1摺動孔32の内径よりも小さく設定される。
一方、皿ばね46…の自由長は、前記パーキング用制御液圧室47の容積を最小限とするようにしてパーキングピストン44が後退限にあるときにはばね荷重を発揮し得ない値に設定されており、その状態で凹部44b内に前記挿入筒部45bの少なくとも一部が挿入される。
このようにして複数枚の皿ばね46…を挟むパーキングピストン44および押圧ピストン45は、半径方向への相対変位を許容しつつ軸方向に連接された状態となり、パーキング作動機構30をケーシング23内に組付ける作業が容易となる。
ケーシング23におけるケーシング主体24の前部内にはパーキングピストン44の前端を臨ませる空気室50が形成されており、前記押圧ピストン45および皿ばね46…が該空気室50に収容される。また中継ピストン85と、該中継ピストン85に液密にかつ摺動自在に嵌合される小ピストン86との間には小空気室51が形成されており、中継ピストン85および小ピストン86の軸方向相対移動に伴う前記小空気室51の加・減圧を回避するために、中継ピストン85には、小空気室51に前端を通じさせるとともに後端を中継ピストン85の後端に開口する空気通路52が設けられる。一方、中継ピストン85の後端に当接するようにして押圧ピストン45の前端に一体に設けられる押圧突部45aの前端面には、前記空気通路52を空気室50に通じさせるための溝53が設けられる。
ところでブレーキキャリパ75の第1腕部75aと、ケーシング23のケーシング主体24とは複数のボルト25…およびナット26…により締結されるのであるが、第1腕部75aおよびケーシング主体24の結合面間には、前記空気室50を外部から遮断するための弾性材料から成るOリング54が介装される。
しかもOリング54は、第1腕部75aおよびケーシング主体24の少なくとも一方、たとえばケーシング主体24に設けられる環状溝55に装着されるものであり、この環状溝55は、空気室50の容積がパーキングピストン44の軸方向移動に応じて変化するのに伴って前記Oリング54が拡縮するのを許容するように形成されており、Oリング54は空気室50の容積変化を吸収することになる。
ロック機構31は、パーキングピストン44の前進作動時には前方に向けての付勢力が作用するようにしてパーキングピストン44よりも後方側でスリーブ36の第3および第4摺動孔40,41に摺動可能に嵌合されるとともにパーキング解除用制御液圧を後方に向けて作用せしめることを可能としたロックピストン56と、前記パーキングピストン44がその後部に一体に備える小径部44aに一体かつ同軸に連設された円筒状の保持筒57と、該保持筒57の周方向複数箇所に保持筒57の半径方向に沿う方向への移動を可能として保持される複数の球体58,58…と、前記各球体58,58…に保持筒57の内方側から接触して各球体58,58…をスリーブ36の内面との間に挟むべく保持筒57に軸方向相対移動可能に挿入されるようにしてロックピストン56の前端に一体に連設される挿入軸59とを備える。
ロックピストン56は、第3摺動孔40に摺動可能に嵌合される小径部56aと、前方に臨む環状の段部56cを小径部56aの後部との間に形成して小径部56aの後部に同軸に連なるとともに第4摺動孔41に摺動可能に嵌合される大径部56bとを一体に備える。
ロックピストン56における段部56cおよびケーシング23におけるスリーブ36の段部43間でロックピストン56およびスリーブ36間にはロックピストン56の前面側を臨ませる環状のパーキング解除用制御液圧室60が形成され、またケーシング23におけるケーシング主体24の端壁24aおよびロックピストン56間にはばね室61が形成される。
ロックピストン56における小径部56aおよび大径部56bの外周には、パーキング解除用制御液圧室60を軸方向両側からシールして第3および第4摺動孔39,40に摺接する環状のシール部材62,63が装着される。
前記パーキング解除用制御液圧室60に対応する部分で、ケーシング23におけるスリーブ36の外周およびケーシング主体24間には環状室66が形成されており、スリーブ36には、該環状室66を前記パーキング解除用制御液圧室60に通じさせる複数の連通孔67…が設けられ、前記環状室66を相互間に挟む一対の環状のシール部材68,69が、ケーシング主体24における取付け孔34の内面に弾発的に接触するようにしてスリーブ36の外周に装着される。
ケーシング主体24の端壁24aおよびロックピストン56間にはばね64が縮設されており、ロックピストン56は前記ばね64のばね力により前方側に向けて弾発付勢されることになる。しかもばね64のばね荷重は、アジャスト機構82におけるクラッチばね93のばね荷重よりも小さく設定される。
保持筒57は、スリーブ36におけるガイド孔39に挿入可能な外径を有するように形成されており、この保持筒57の周方向に間隔をあけた複数箇所に保持孔65…が設けられており、各球体58…はそれらの保持孔65…に挿入、保持される。
また挿入軸59は、パーキングピストン44が後退限にある状態では前記各球体58…を半径方向内方側に配置せしめる前方側の小径軸部59aと、パーキングピストン44が後退限から前進するのに応じてロックピストン56が前進位置に前進したときには前記各球体58…を半径方向外方側に配置せしめる大径軸部59bとが、ロックピストン56の前進移動に応じて各球体58…の接触位置を前記小径軸部59aから前記大径軸部59bに変化させるテーパー部59cを介して同軸かつ一体に連設されて成る。
ところで、パーキングピストン44が後退限にあり、ロックピストン56も後退限にあるときには、パーキングピストン44と一体の保持筒57はガイド孔39内に挿入された状態にあり、挿入軸59は、その小径軸部59aを前記保持筒57に対応させた位置にある。したがって保持筒57で保持された球体58…は半径方向内方位置にあり、ガイド孔39および小径軸部59a間に挟まれた状態にある。
図5で示すように、パーキングピストン44が後退限から前進し、それに応じてロックピストン56がばね64のばね力で前進すると、挿入軸59の小径軸部59aからテーパ部59cを経て大径軸部59bに球体58…が接触することになり、この際、保持筒57は各球体58…をガイド孔39よりも大径である第2摺動孔38の内面に接触させる位置まで前進することになり、大径軸部59bで押し上げられた各球体58…は第2摺動孔38およびガイド孔39間の規制段部42に当接することで後方への移動が規制されることになる。すなわち各球体58…を保持している保持筒57すなわちパーキングピストン44の後退が規制されることになる。
図6において、球体58…を小径軸部59aに接触する半径方向内方位置から大径軸部59bに接触する半径方向外方位置へと押し上げる機能を果たす前記テーパー部59cが、挿入軸59の軸線に対してなす角度αは、20〜60度に設定される。
しかもロック状態で各球体58…に後方から当接する規制段部42は、ケーシング23の軸線を含む平面での断面形状が、球体58…の半径以上の半径Rで凹んだ曲面状、この実施例では前記断面では形成段部43のほぼ全面に球体58…が接触するようにした曲面状に形成されており、規制段部42で後方側への移動が規制された状態で各球体58…および規制段部42の接触面積は比較的大きくなる。
パーキング用制御液圧室47に作用せしめるパーキング用制御液圧ならびにパーキング解除用制御液圧室60に作用せしめるパーキング解除用制御液圧は、電動モータ11で駆動されることで液圧発生源として機能する第1ポンプ10Aから吐出される液圧を液圧制御手段105Aで制御することにより得られるものであり、この液圧制御手段105Aは、パーキング用制御液圧室47に通じてケーシング主体24に設けられる液圧路108および入口弁6A間に介設される第1常閉型電磁弁106と、パーキング解除用制御液圧室60に通じる環状室66に連なるようにしてケーシング主体24に設けられる液圧路109および前記入口弁6A間に介設される第2常閉型電磁弁107とを備え、この液圧制御手段105Aは、ケーシング23におけるケーシング主体24に一体に設けられてケーシング主体24から側方に膨出した膨出部24b内に収容される。
またケーシング23のケーシング主体24には、パーキング制御液圧室47に通じるブリーダ管101と、パーキング解除用制御液圧室60に連なる環状室66に通じるブリーダ管102とが、図3で示すように、前記膨出部24cと反対側で斜め上方に延びるようにして一体に設けられ、それらのブリーダ管101,102の先端部は、キャップ103,104でそれぞれ開閉可能にして閉じられる。
パーキングブレーキ状態を得るときには、電動モータ11により第1ポンプ10Aを駆動し、カット弁17Aを励磁、閉弁するとともにサクション弁18Aを励磁、開弁し、さらに液圧制御手段105Aの第1常閉型電磁弁106を励磁、開弁する。これによりブレーキ液圧室80にブレーキ液圧を作用させるとともにパーキング用制御液圧室47にパーキング用制御液圧を作用させ、さらに第2常閉型電磁弁107を励磁、開弁することによってパーキング解除用制御液圧室60に液圧を作用させることで、ロックピストン56の前進作動を抑えつつ、ブレーキピストン78およびパーキングピストン44を前進せしめる。次いで、第1電磁常閉型電磁弁106を消磁、閉弁するとともに、電動モータ11による第1ポンプ10Aの駆動を停止し、カット弁17Aを消磁、開弁するとともにサクション弁18Aを消磁、閉弁すると、パーキング解除用制御液圧室60の液圧が解放され、ロックピストン56がばね64のばね力で前進作動し、パーキングピストン44およびロックピストン56の前進に応じてロック機構31がロック作動する。但しロックピストン56の前進が完了した時点で、第1常閉型電磁弁106を一時的に励磁、開弁してパーキング制御用液圧室47の残圧を抜く。
このようにパーキングピストン44がその前進作動によってロックされると、皿ばね46…を介して押圧ピストン45が前進方向に押され、該押圧ピストン45が前端に備える押圧突部45aで中継ピストン85が前進せしめられることになり、中継ピストン85の移動が可動クラッチ体92、調整ボルト84および調整ナット83を介してブレーキピストン78を前進せしめ、通常ブレーキ時と同様に、第1、第2摩擦パッド72,73のライニング72a,73aをブレーキディスク71の両面に押し付けて制動力を発生させることによりパーキングブレーキ状態を得ることができる。
このパーキングブレーキ状態を得る過程で中継ピストン85および可動クラッチ体92はパーキングピストン44による押圧力で相対回転不能に摩擦係合するため、調整ボルト84および調整ナット83の相対回転が規制される。したがって左前輪用ディスクブレーキ2Aがパーキングブレーキとして機能するときには、アジャスト機構82による上記自動調整は行われない。
また通常ブレーキ操作中にパーキングブレーキ状態を得るときには、圧力センサ15Aの検出値が充分に高いときには、マスタシリンダMを液圧発生源として用い、電動モータ11による第1ポンプ10Aの駆動を行なわず、しかもカット弁17Aを消磁、開弁するとともにサクション弁18Aを消磁、閉弁した状態で液圧制御手段105Aを作動せしめればよく、また圧力センサ15Aの検出値が低いときには、電動モータ11による第1ポンプ10Aの駆動を実行しつつカット弁17Aを励磁、閉弁するとともにサクション弁18Aを励磁、開弁し、液圧制御手段105Aを作動せしめればよく、さらに圧力センサ15Aの検出値にかかわらず、電動モータ11による第1ポンプ10Aの駆動を実行しつつカット弁17Aを励磁、閉弁するとともにサクション弁18Aを励磁、開弁し、液圧制御手段105Aを作動せしめるようにしてもよい。
パーキングブレーキ状態を解除するときには、電動モータ11により第1ポンプ10Aを駆動するとともに、カット弁17Aを励磁、閉弁するとともにサクション弁18Aを励磁、開弁し、液圧制御手段105Aの第1および第2常閉型電磁弁106,107を励磁、開弁する。そうすると、ブレーキ液圧室80、パーキング用制御液圧室47およびパーキング解除用制御液圧室60の液圧が同時に上昇するが、その増圧過程で、先ずばね64のばね力よりも大きな液圧力がロックピストン56に作用することでロックピストン56が後退し、次いで、パーキング用制御液圧室47の液圧によってパーキングピストン44に作用している前進方向の押圧力よりも、小ピストン86に作用する後退方向の液圧力およびクラッチばね93の合力が大きくなってパーキングピストン44が後退する。それによりロック機構31がロック解除作動してパーキングブレーキ状態が解除されることになる。
ところでロックピストン56と、ケーシング主体24の端壁24aとの間でスリーブ36内に形成されるばね室61の容積は、ロックピストン56の軸方向移動に応じて変化するものであり、このばね室61がその容積変化に伴って加・減圧されることを回避するために、ロックピストン56の大径部56aおよび挿入軸59にはばね室61に通じる連通路110が同軸に設けられ、パーキングピストン44には、前記連通路110を空気室50に通じさせる連通路111が同軸に設けられており、前記ばね室61が空気室50に通じることによってばね室61の加・減圧が回避される。
またロックピストン56の背面を臨ませる部分でケーシング23におけるケーシング主体24の端壁24aには開口部であるねじ孔112が同軸に設けられており、このねじ孔112は、蓋部材であるボルト113をねじ込むことにより着脱可能に閉じられる。
一方、ロックピストン56には前記連通路110の後部内面にめねじ114を刻設して構成される工具連結部115が設けられており、図7で示すように、ボルト113を緩めて取り外すことで開口したねじ孔112から挿入した工具116を前記工具連結部115に着脱可能に連結することができる。
右前輪用ディスクブレーキ2Cは、上述の左前輪用ディスクブレーキ2Aと同様に構成されており、右前輪用ディスクブレーキ2Cのパーキングブレーキ状態を得るときには、サクション弁18Bを励磁、開弁するとともにカット弁17Bを励磁、閉弁した状態で電動モータ11を作動せしめることにより、第2ポンプ10Bを液圧発生源として機能せしめ、液圧制御手段105Bの作動を制御するようにすればよい。
次にこの実施例の作用について説明すると、マスタシリンダMもしくは第1および第2ポンプ10A,10Bの発生液圧を液圧制御手段105A,105Bで制御することによって、パーキング作動機構30が有するパーキングピストン44の背面側が臨むパーキング用制御液圧室47にパーキング用制御液圧を作用させると、パーキングピストン44の前進作動によって左前輪および右前輪用ディスクブレーキ2A,2Cのパーキングブレーキ状態を得ることが可能となり、またパーキング作動機構30のパーキング作動状態がロック機構31で機械的にロックされるので、パーキングブレーキ状態を自動的に得ることができ、またパーキングブレーキ状態を解除するときにはパーキング解除用制御液圧をロック機構31に作用せしめればよく、パーキングブレーキ状態では電力消費を伴わない簡単な構造でパーキングブレーキ状態を自動的に得ることができる。
しかもパーキング作動機構30は、パーキング用制御液圧室47に背面側を臨ませてケーシング23の第1摺動孔32に摺動可能に嵌合されるパーキングピストン44と、左前輪および右前輪用ディスクブレーキ2A,2Cにおける中継ピストン85に連接される押圧ピストン45との間に複数の皿ばね46…が介装されて成るものであり、皿ばね46…の働きにより、左前輪および右前輪用ディスクブレーキ2A,2C側に作用するパーキング力のパーキングピストン44の前進、後退に伴う変化を緩やかにすることができる。
また皿ばね46…の自由長が、パーキングピストン44の後退限ではばね荷重を発揮し得ない値に設定されるので、パーキングブレーキ解除状態では、皿ばね46…によるばね荷重が左前輪および右前輪用ディスクブレーキ2A,2C側に作用することを防止することができる。
またパーキング作動機構30における押圧ピストン45が前端に備える押圧突部45aは、ブレーキキャリパ75における第1挟み腕部75aに設けられている中継シリンダ孔87に挿入され、中継シリンダ孔87に摺動可能に嵌合されている中継ピストン85の後端に当接するのであるが、皿ばね46…を挟むパーキングピストン44および押圧ピストン45は、半径方向への相対変位を許容しつつ軸方向に連接されているので、ブレーキキャリパ75およびケーシング23の締結状態で中継シリンダ孔87および第1摺動孔32の軸心ずれが生じていたとしても、その軸心ずれを吸収して前記押圧突部45aを中継シリンダ孔87に確実に挿入して中継ピストン85に当接させることができる。
ところでパーキングピストン44の前面を臨ませる空気室50がケーシング23内に形成されており、パーキングピストン44の軸方向移動に伴う空気室50の容積変化はOリング54の拡縮によって吸収されるので、空気室50の加・減圧を回避してパーキングピストン44の円滑な作動、すなわち円滑なパーキングブレーキ作動および円滑なパーキングブレーキ解除作動を達成することができる。
しかもOリング54は、相互に締結されるブレーキキャリパ75およびケーシング23間に介装されて前記空気室50を外部から遮断する機能を果たすものであり、空気室50の呼吸のための専用の配管等を不要とし、部品点数の低減を図りつつ空気室50の容積変化を吸収することができる。
またブレーキキャリパ75の第1挟み腕75aに一体に設けられるフランジ27と、ケーシング23におけるケーシング主体24の前端部に一体に設けられるフランジ28とが複数のボルト25…およびナット26…によって締結されるのであるが、それらのボルト25…のうち1個がブレーキキャリパ75におけるシリンダ孔76の軸線に直交する平面内で該シリンダ孔76の軸線を中心とする仮想円Cからずれた位置に配置されるのに対し、残余のボルト25…は仮想円C上に配置されるので、前記シリンダ孔76の軸線まわりの相対位置を一定としてケーシング23がブレーキキャリパ75の第1挟み腕75aに締結されることになる。
これにより、ケーシング23のケーシング主体24に設けられる膨出部24bや、ブリーダ管101,102のブレーキキャリパ75に対する相対位置を間違うことがないようにして、ブレーキキャリパ75にケーシング23を締結することができる。
またロック機構31の一部を構成する挿入軸59は、パーキングピストン44が後退限にある状態では各球体58…を半径方向内方側に配置せしめる前方側の小径軸部59aと、パーキングピストン44が後退限から前進するのに応じてロックピストン56が前進位置に前進したときには前記各球体58…を半径方向外方側に配置せしめる大径軸部59bとが、ロックピストン56の前進移動に応じて各球体58…の接触位置を小径軸部59aから大径軸部59bに変化させるテーパー部59cを介して同軸かつ一体に連設されて成るものである。
このような挿入軸59の構造によれば、パーキングピストン44の前進作動時にはロックピストン56が前進することにより、各球体58…が挿入軸59の小径軸部59aからテーパー部59cによって滑らかに大径軸部59b側に案内されることにより押し上げられ、各球体58…がケーシング23側の規制段部42で後方への移動を規制されるとともに大径軸部59bで半径方向内方への移動を規制された状態となり、ロック状態を維持することができる。またパーキング解除用制御液圧をロックピストン56に作用せしめて該ロックピストン56を後退させることにより、パーキングブレーキ状態を解除することができる。
またケーシング23におけるスリーブ36に設けられる規制段部42は、ケーシング23の軸線を含む平面での断面形状が球体58…の半径以上の半径Rで凹んだ曲面状に形成されており、規制段部42で後方側への移動が規制された状態で各球体58…および規制段部42の接触面積は比較的大きくなり、球体58…およびスリーブ36に作用する応力を緩和することができる。
しかも挿入軸59の軸線に対してテーパー部59cがなす角度αが20〜60度に設定されるので、挿入軸59のストロークが無闇に大きくなることを回避しつつロックピストン56すなわち挿入軸59の前進時に各球体58…を円滑に押し上げることが可能となる。すなわち前記角度αが20度未満のときには各球体58…の押し上げを円滑に行うことが可能となるものの挿入軸59のストロークが大きくなり過ぎるものであり、また前記角度αが60度を超えると、ロックピストン56の前進に応じて各球体58…を押し上げる分力が不足し、各球体58…を円滑に押し上げることが困難となるものである。
またロック機構31におけるロックピストン56の背面を臨ませる部分でケーシング23におけるケーシング主体24の端壁24aには、ボルト113で閉じられるねじ孔112が設けられ、ロックピストン56の後部には、ねじ孔112から挿入される工具116を着脱可能に連結し得る工具連結部115が設けられるので、工具連結部115に連結した工具116を、ばね64のばね力に抗して引っ張ることによりロックピストン56を強制的に後退させることにより、パーキングブレーキ状態をマニュアル操作で強制的に解除することが可能であり、保守、点検時に便利である。
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
2A,2C・・・ディスクブレーキ
10A,10B・・・液圧発生源としてのポンプ
23・・・ケーシング
25・・・締結部材としてのボルト
31・・・ロック機構
32・・・摺動孔
44・・・パーキングピストン
75・・・ブレーキキャリパ
76・・・シリンダ孔
78・・・ブレーキピストン
105A.105B・・・液圧制御手段
M・・・液圧発生源としてのマスタシリンダ
10A,10B・・・液圧発生源としてのポンプ
23・・・ケーシング
25・・・締結部材としてのボルト
31・・・ロック機構
32・・・摺動孔
44・・・パーキングピストン
75・・・ブレーキキャリパ
76・・・シリンダ孔
78・・・ブレーキピストン
105A.105B・・・液圧制御手段
M・・・液圧発生源としてのマスタシリンダ
Claims (1)
- ブレーキピストン(78)を摺動可能に嵌合せしめるシリンダ孔(76)が設けられるブレーキキャリパ(75)を有するディスクブレーキ(2A,2C)と、前記シリンダ孔(76)と同軸の摺動孔(32)を有して前記ブレーキキャリパ(75)とは別体に形成されるとともに前記ブレーキキャリパ(75)に締結されるケーシング(23)と、パーキング用制御液圧の作用に応じて前進作動して前記ディスクブレーキ(2A,2C)のパーキングブレーキ状態を得ることを可能としつつ前記摺動孔(32)に摺動可能に嵌合されるパーキングピストン(44)と、該パーキングピストン(44)の前進作動状態を機械的にロックすべく前記パーキングピストン(44)の前進作動に応じて自動的にロック作動するとともにパーキング解除用制御液圧の作用に応じてロック解除作動するようにして前記パーキングピストン(44)よりも後方でケーシング(23)内に設けられるロック機構(31)と、液圧発生源(10A,10B,M)と、該液圧発生源(10A,10B,M)の発生液圧を制御して前記パーキング用制御液圧および前記パーキング解除用制御液圧を得ることを可能とした液圧制御手段(105A,105B)とを備え、前記ケーシング(23)を前記ブレーキキャリパ(75)に締結する複数の締結部材(25)が、前記シリンダ孔(76)の軸線に直交する平面内で該シリンダ孔(76)の軸線まわりの1箇所でのみ締結可能な位置に配置されることを特徴とするパーキングブレーキ装置。
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JP2006089026A (ja) * | 2004-08-27 | 2006-04-06 | Advics:Kk | 車両用駐車ブレーキ装置 |
-
2004
- 2004-03-26 JP JP2004093563A patent/JP2005282611A/ja active Pending
Cited By (2)
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JP4501816B2 (ja) * | 2004-08-27 | 2010-07-14 | 株式会社アドヴィックス | 車両用駐車ブレーキ装置 |
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