JP2005280641A - 移動体の雪舞上り抑制構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 車両1がA方向に走行した場合、車両1を基準とすると相対的に車両1の先頭側から後尾側に向かって車体底面4と積雪面S1との間にB方向に空気が流れる。雪が濡れた状態である場合には、積雪層S2内の圧力勾配が大きくなると積雪層S2内に圧力差が形成され、高圧側である積雪層S2内部から低圧側である積雪面S1に向かって積雪層S2の表層が引っ張り及びせん断破壊によって持ち上げられて塊状に剥離する。その結果、列車風によって剥離した雪が飛散して、雪の舞上りが発生する。車体側面5に沿って流れる空気の剥離を側板部7aが抑制するため、車体3の下方の圧力変動が小さくなる。その結果、積雪面S1側の圧力変動が大きくなるのを側板部7aが抑制し、積雪層S2内の圧力勾配が緩和され雪の舞上りが抑制される。
【選択図】 図1
Description
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、移動体(1)が移動するときにこの移動体の下方からの雪の舞上りを抑制する雪舞上り抑制部(7)を備える移動体の雪舞上り抑制構造であって、前記雪舞上り抑制部は、前記移動体の走行装置(2)の側方に設置されていることを特徴とする移動体の雪舞上り抑制構造である。
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係る移動体の雪舞上り抑制構造を備える車両の側面図である。図2は、この発明の第1実施形態に係る移動体の雪舞上り抑制構造の外観図であり、図2(A)は側面図であり、図2(B)は底面図である。図3は、この発明の第1実施形態に係る移動体の雪舞上り抑制構造における縦断面図である。
図1に示すように、車両1がA方向に走行した場合に、車両1を基準とすると相対的に車両1の先頭側から後尾側に向かって車体側面5に沿ってB方向に空気が流れる。図1〜図3に示す側板部7aが存在しない場合には、車両1を基準として相対的に車体側面5に沿ってB方向に流れる空気が底面凹部6で車体側面5から剥離する。このため、剥離した空気が台車2及びこの台車2の後側の傾斜面6bに当たると、車体3の下方に大きな圧力変動が引き起こされ積雪層S2内の圧力勾配が大きくなる。特に、雪が濡れた状態である場合には、雪の粒子の付着力が強いため列車風によって舞上ることが少なく、雪の舞上りに圧力勾配が大きく影響する。このため、積雪層S2内の圧力勾配が大きくなると積雪層S2内に圧力差が形成され、高圧側である積雪層S2内部から低圧側である積雪面S1に向かって積雪層S2の表層が引っ張り及びせん断破壊によって持ち上げられて塊状に剥離する。その結果、列車風によって剥離した雪が飛散して、雪の舞上りが発生する。
(1) この第1実施形態では、車両1が走行するときにこの車両1の下方からの雪の舞上りを抑制する雪舞上り抑制部7が台車2の側方に設置されている。その結果、従来の鉄道車両の着雪防止装置のような部分的な着雪の防止とは異なり雪の舞上り自体を抑えることができるため、車両1の連結部や間隙部などへの着雪を低減することができる。
図4は、この発明の第2実施形態に係る移動体の雪舞上り抑制構造の外観図であり、図4(A)は側面図であり、図4(B)は底面図である。図5は、この発明の第2実施形態に係る移動体の雪舞上り抑制構造における縦断面図である。以下では、図1〜図3に示す部分と同一の部分については、同一の番号を付して詳細な説明を省略する。
図4及び図5に示す雪舞上り抑制部7は、車両1を基準とすると相対的に車体底面4と積雪面S1との間をB方向に流れる気流が台車2及び底面凹部6付近で乱れるのを防ぎ、車両1の下方の圧力変動を抑えて積雪層S2内に発生する圧力勾配を低減させ、雪の舞上りを抑制する。雪舞上り抑制部7は、台車2(底面凹部6)の前方及び後方に設置されており、図1〜図3に示す側板部7aを省略し傾斜部7bを備えている。
(1) この第2実施形態では、車両1が走行するときにこの車両1の下方からの雪の舞上りを抑制する雪舞上り抑制部7が台車2の前方及び後方に設置されているため、事後的な着雪の防止ではなく雪の舞上り自体を抑制することができる。
図6は、この発明の第3実施形態に係る移動体の雪舞上り抑制構造の外観図であり、図6(A)は側面図であり、図6(B)は底面図である。図7は、この発明の第3実施形態に係る移動体の雪舞上り抑制構造における縦断面図である。
図4及び図5に示す雪舞上り抑制部7は、車体底面4と積雪面S1との間を車両1を基準として相対的にB方向に流れる気流が台車2及び底面凹部6付近で乱れるのを防ぐとともに、車両1を基準として相対的に車体側面5に沿ってB方向に流れる気流が底面凹部6付近で乱れるのを防ぐ。雪舞上り抑制部7は、図6及び図7に示すように、側板部7aと傾斜部7bとを備えている。このため、この第3実施形態では、第1実施形態及び第2実施形態に比べてより一層雪の舞上りを抑制することができる。
図8は、この発明の第4実施形態に係る移動体の雪舞上り抑制構造の外観図であり、図8(A)は側面図であり、図8(B)は底面図である。図9は、この発明の第4実施形態に係る移動体の雪舞上り抑制構造における縦断面図である。
図8及び図9に示す雪舞上り抑制部7は、台車2の側面を覆う側板部7aを備えている。着雪抑制部8は、車両1の下方から舞上った雪の付着を抑制する部分であり、底面凹部6の前方及び後方に台車2に向かって突出する突出部8aを備えている。突出部8aは、傾斜面6bの下端に設置されており断面が三角形状に形成されている。突出部8aは、舞上った雪の付着と付着後の雪の成長を妨げるために、着雪が予測される部分に設置されている。この第4実施形態では、側板部7aによって雪の舞上りを抑制することができるとともに、第1実施形態〜第3実施形態とは異なり突出部8aによって着雪を抑制することもできる。
図10は、この発明の第5実施形態に係る移動体の雪舞上り抑制構造の外観図であり、図10(A)は側面図であり、図10(B)は底面図である。図11は、この発明の第5実施形態に係る移動体の雪舞上り抑制構造における縦断面図である。
図10及び図11に示す雪舞上り抑制部7は、車体底面4と積雪面S1との間を車両1を基準として相対的にB方向に流れる気流が台車2及び底面凹部6付近で乱れるのを防ぐとともに、車両1を基準として相対的に車体側面5に沿ってB方向に流れる気流が底面凹部6付近で乱れるのを防ぐ。雪舞上り抑制部7は、台車2(底面凹部6)の下方に設置されており、側板部7aと底板部7cを備えている。
図12は、この発明の第6実施形態に係る移動体の雪舞上り抑制構造を備える車両の側面図である。
図12に示す車両1は、例えば、寒冷地などの在来線を高速で走行する車両である。車両1は、車体底面4に設置された床下機器4a,4bを備えており、床下平滑化構造等の鉄道車両とは異なり車体底面4から床下機器4a,4bが突出し露出している。雪舞上り抑制部7は、車体底面4と積雪面S1との間を車両1を基準として相対的にB方向に流れる気流が床下機器4a,4b付近で乱れるのを防ぎ、車両1の下方の圧力変動を抑え積雪層S2内に発生する圧力勾配を低減させる。雪舞上り抑制部7は、床下機器4a,4bの前方及び後方に設置されており、図4〜図7に示す傾斜部7bと同様の傾斜部7eを備えている。傾斜部7eは、車体底面4から床下機器4a,4bに向かって下方に傾斜する部分(角度θ2)であり、車体底面4を流れる空気が床下機器4a,4bから剥離するのを抑制する。この第6実施形態では、在来線の高速車両などが積雪面S1上を走行したときに発生する雪の舞上りを抑制することができる。
図13は、雪の舞上り試験装置の構成図である。
図13に示す雪の舞上り試験装置10は、新幹線車両などの高速車両が積雪S上を通過するときに発生する雪の舞上り現象を模擬する試験装置である。雪の舞上り試験装置10は、回転軸回りに回転する回転円盤10aと、積雪Sを収容する収容部10bと、収容部10b内の積雪Sを支持する透水性の支持部10cと、積雪S内の圧力を測定する圧力センサ10dと、収容部10bを開閉する開閉蓋10eと、圧力センサ10dから所定距離だけ離して収容部10b外に設置された圧力センサ10fなどを備えている。雪の舞上り試験装置10は、収容部10bと対向する側の回転円盤10aの下面に試験体20を装着可能である。試験体20は、実際の鉄道車両の車体下部を模擬(縮小)した模型であり、実際の鉄道車両の縮尺1/5で製作されている。
図15(A)〜(G)に示す縦軸は、積雪内部の最大圧力勾配(kPa/m)であり、横軸は速度(km/h)である。図16に示す縦軸は、75km/h及び150km/hのときの積雪内部の最大圧力勾配(kPa/m)であり、横軸は従来例、比較例1,2及び実施例1〜4である。その結果、比較例1,2は、従来例に比べて高速時における積雪内部の最大圧力勾配が高く雪の舞上り抑制効果が低いことが実験的手法によって検証された。一方、実施例1〜4は、従来例及び比較例1,2に比べて高速時における積雪内部の最大圧力勾配を大幅に低減可能であり、雪の舞上り抑制効果が高いことが実験的手法によって検証された。
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この第1実施形態〜第6実施形態では、移動体が鉄道車両である場合を例に挙げて説明したが、自動車などの他の移動体についてもこの発明を適用することができる。また、この第1実施形態〜第6実施形態では、先頭車両や後尾車両に雪舞上り抑制部7を設置する場合を例に挙げて説明したが、雪舞上り抑制部7を中間車両に設置することもできる。
2 台車
2a 車輪
3 車体
4 車体底面
4a,4b 床下機器(底面凸部)
5 車体側面
6 底面凹部
6a 底面
6b 傾斜面
7 雪舞上り抑制部
7a 側板部
7b 傾斜部
7c 底板部
7d 貫通孔
7e 傾斜部
8 着雪抑制部
8a 突出部
S 積雪
S1 積雪面
S2 積雪層
θ1,θ2 角度
Claims (13)
- 移動体が移動するときにこの移動体の下方からの雪の舞上りを抑制する雪舞上り抑制部を備える移動体の雪舞上り抑制構造であって、
前記雪舞上り抑制部は、前記移動体の走行装置の側方に設置されていること、
を特徴とする移動体の雪舞上り抑制構造。 - 請求項1に記載の移動体の雪舞上り抑制構造において、
前記走行装置は、前記移動体の底面凹部に設置されており、
前記雪舞上り抑制部は、前記走行装置の側面を覆う側板部を備えること、
を特徴とする移動体の雪舞上り抑制構造。 - 請求項1に記載の移動体の雪舞上り抑制構造において、
前記移動体の下方から舞上った雪の付着を抑制する着雪抑制部を備えること、
を特徴とする移動体の雪舞上り抑制構造。 - 請求項3に記載の移動体の雪舞上り抑制構造において、
前記走行装置は、前記移動体の底面凹部に設置されており、
前記着雪抑制部は、前記底面凹部の前方及び/又は後方に前記走行装置に向かって突出する突出部を備え、
前記雪舞上り抑制部は、前記走行装置の側面を覆う側板部を備えること、
を特徴とする移動体の雪舞上り抑制構造。 - 移動体が移動するときにこの移動体の下部からの雪の舞上りを抑制する雪舞上り抑制部を備える移動体の雪舞上り抑制構造であって、
雪舞上り抑制部は、前記移動体の走行装置の前方及び/又は後方に設置されていること、
を特徴とする移動体の雪舞上り抑制構造。 - 請求項5に記載の移動体の雪舞上り抑制構造において、
前記走行装置は、前記移動体の底面凹部に設置されており、
前記雪舞上り抑制部は、前記移動体の底面から前記底面凹部に向かって上方に傾斜する傾斜部を備えること、
を特徴とする移動体の雪舞上り抑制構造。 - 請求項6に記載の移動体の雪舞上り抑制構造において、
前記傾斜部は、前記移動体の底面に対する角度が30°以下であること、
を特徴とする移動体の雪舞上り抑制構造。 - 移動体が移動するときにこの移動体の下方からの雪の舞上りを抑制する雪舞上り抑制部を備える移動体の雪舞上り抑制構造であって、
前記雪舞上り抑制部は、前記移動体の走行装置の下方に設置されていること、
を特徴とする移動体の雪舞上り抑制構造。 - 請求項8に記載の移動体の雪舞上り抑制構造において、
前記走行装置は、前記移動体の底面凹部に設置されており、
前記雪舞上り抑制部は、前記走行装置の下面を覆う底板部を備えること、
を特徴とする移動体の雪舞上り抑制構造。 - 請求項5から請求項9までのいずれか1項に記載の移動体の雪舞上り抑制構造において、
前記雪舞上り抑制部は、前記走行装置の側面を覆う側板部を備えること、
を特徴とする移動体の雪舞上り抑制構造。 - 移動体が移動するときにこの移動体の下部からの雪の舞上りを抑制する雪舞上り抑制部を備える雪舞上り抑制構造であって、
雪舞上り抑制部は、前記移動体の底面凸部の前方及び/又は後方に設置されていること、
を特徴とする移動体の雪舞上り抑制構造。 - 請求項11に記載の移動体の雪舞上り抑制構造において、
前記底面凸部は、前記移動体の床下機器であり、
前記雪舞上り抑制部は、前記移動体の底面から前記床下機器に向かって下方に傾斜する傾斜部を備えること、
を特徴とする移動体の雪舞上り抑制構造。 - 請求項12に記載の移動体の雪舞上り抑制構造において、
前記傾斜部は、前記移動体の底面に対する角度が30°以下であること、
を特徴とする移動体の雪舞上り抑制構造。
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