JP2005280134A - 成形品製造方法およびそれに用いる転写シート - Google Patents

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【課題】油性インクジェット方式で記録可能な転写シートを使用して、真空成形により意匠性、耐水性に優れた成形品を製造する方法およびそれに用いる転写シートを提供する。
【解決手段】基材シート上に少なくとも受像接着層が剥離可能に設けられた転写シートの受像接着層表面に、油性インクジェット方式で画像情報に応じてインクを吐出して画像を形成する工程と、前記画像形成された転写シートを加熱して受像接着層を樹脂板に転写して化粧材を作成する工程と、さらに前記化粧材を真空成形する工程とからなることを特徴とする成形品製造方法。
【選択図】 図3

Description

本発明は、油性インクジェット方式で記録可能な転写シートを使用して、真空成形により成形品を製造する方法およびそれに使用される転写シートに関する。
意匠性に優れた樹脂成形品を得る方法として、あらかじめ印刷が施された樹脂板を真空成形する方法が知られている。(例えば特許文献1参照)それらの印刷層を形成する方法としては通常のグラビヤ印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷等公知の印刷技術が使用可能であり、中でもインクジェット印刷は出力方式の簡便さ、印字品質の良さ、小ロットで印刷する場合は低コストである等の特徴がある。
しかし、真空成形前の樹脂板に直接インクジェットで印刷する場合、樹脂板表面にインクジェット受像層を塗工する必要がありコスト面で好ましいものではなかった。また、この方法では最終的に得られる成形品の表面が印刷面となるため表面耐久性が劣り、さらに、印刷方式が水性インクを使用したインクジェット方式の場合、得られた成形品表面は耐水性に劣るものであった。
また、基材シートに水性インクジェット方式で記録可能な受像層が設けられ、記録した受像層表面が粘着性を有するインクジェット記録用粘着シートも提案されており、前記粘着シートを樹脂板にラミネートした化粧材を真空成形すれば最終的に得られる成形品の印刷部分は基材シートに保護される形となり堅牢性に優れた成形品が得られる。(例えば特許文献2参照)
しかしこの方法で作成した化粧材はインクジェットインキに含有される揮発性溶媒が通気性のない樹脂板と基材シート間に挟まれた構成となるため、真空成形時の加熱により受像層中に残留したインクジェットインクに含有される溶媒、つまり有機溶剤または水が樹脂板と基材シート界面で発泡する不具合を生じることがあった。さらに、水性インクを使用したインクジェット方式を用いた場合では、最終成形物の樹脂板と粘着シート界面のエッジ部分から水分が浸透することでシートが剥がれ落ちる場合があり、耐水性が十分ではなかった。
特公昭56−24568号公報 特開2002−241714号公報
上記の問題を解決するため、本発明の目的は、油性インクジェット方式で記録可能な転写シートを使用して真空成形により意匠性、耐水性に優れた成形品を製造する方法およびそれに使用される転写シートを提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明は、基材シート上に少なくとも受像接着層が剥離可能に設けられた転写シートの受像接着層表面に、油性インクジェット方式で画像情報に応じてインクを吐出して画像を形成する工程と、前記画像形成された転写シートを加熱して受像接着層を樹脂板に転写して化粧材を作成する工程と、さらに前記化粧材を真空成形する工程とからなることを特徴とする成形品製造方法とした。
また、本発明は前記成形品製造方法に用いる転写シートであって、基材シート上に少なくとも受像接着層が剥離可能に設けられ、前記受像接着層は油性インクジェット方式で印刷可能でありかつ樹脂板に対して熱接着可能であることを特徴とする転写シートとした。また、さらに前記受像接着層が塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を主成分とする構成としても良い。
本発明の製造方法および転写シートを使用すれば小ロット生産対応が可能で印画品質に優れ、耐水性、耐久性に優れた成形品が得られる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明で使用される基材シートは、受像接着層を剥離可能に保持し、かつ樹脂板に受像接着層を転写した後には剥離される樹脂シートのことである。
基材シートには各種樹脂シートが使用可能であり、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレンプロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、アクリル、塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアミド等が使用可能である。特に好ましくはポリエチレンテレフタレートを主成分とする基材シートであって、シート物性改善の目的で添加剤を含有してもよい。
また、基材シートの厚みは、加工性やインクジェット印刷適性面で20μm以上が望ましく、受像接着層を転写した後は剥離除去される廃材であることから、200μm以下が望ましいがこれに限定されるものではない。また、基材シートには必要に応じ適宜公知の離型処理や帯電防止処理等を施しても良い。
受像接着層は基材シート上に剥離可能に設けられ、油性インクジェット方式で印刷可能でありかつ樹脂板に対し熱接着性を有することを特徴とする。ここで、受像接着層の成分としては塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を20〜100重量%含有することが望ましい。受像接着層が塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を主成分とすることでABS、アクリル等各種熱可塑性樹脂材料に対し良好な接着性を得ることができ、さらに、油性インクを用いたインクジェット方式で印刷可能であることから、印字品質が良く、小ロットで印刷する場合は低コストである等の特徴を生かした転写シートを作成することが出来る。
また、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を20〜100重量%含有する受像接着層は熱成形性が良好であり、受像接着層を樹脂板表面に転写して得られる化粧材を真空成形した場合は、受像接着層に亀裂、割れが生じることがなく優れた成形性を示すものである。また、受像接着層は室温環境下では実質的に接着性を発現しないものとする必要がある。インクジェット印刷工程で転写シートを取扱う際、室温環境下で転写シート表面に粘着性があると転写シート表面と接触する搬送ロール等に粘着することで搬送不良等の不具合を引き起こすからである。
受像接着層に使用する塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体は、受像接着層表面が室温環境下では実質的に粘着性を発現しない状態となるよう、ガラス転移点いわゆるTgが40℃以上のものを使用することが望ましいがこれに限定されるものではない。
受像接着層に使用する塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の塩化ビニル−酢酸ビニルのポリマー組成比率は塩化ビニル:酢酸ビニルが50:50〜96:4の範囲であることが望ましい。上記比率よりも塩化ビニルの組成比率が高いと接着性が劣り、上記比率よりも塩化ビニルの組成比率が低いと、油性インクを用いたインクジェット方式での記録適性が劣るからである。
前記受像接着層には前記塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体以外に各種樹脂材料、微粒子、紫外線防止剤、帯電防止剤、滑剤等を添加することが可能である。添加可能な樹脂としては具体的には、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が使用可能であるがこれに限定されるものではない。
添加可能な添加剤としては例えばシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、雲母、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド、アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、イミダゾロン顔料、ジオキサジン顔料、金粉、銀粉、銅粉、アルミニウム粉、魚鱗粉、パール顔料、蛍光顔料、夜光顔料、またはこれらから選ばれる2種以上の混合物等を使用することができる。
受像接着層の厚みは特に限定はないが、樹脂板との接着性を確保するため2μm以上とすることが望ましく、生産性を考慮し100μm以下とすることが望ましい。また、本発明の製造方法により得られる成形物は絵柄が受像接着層に被覆保護される形となることから、受像接着層の厚みは2μm以上としたほうが最終製品の耐久性を確保する上でも望ましい。
本発明に使用される樹脂板は、真空成形法において成形可能な熱可塑性樹脂からなる樹脂板が使用可能であり、前記基材シートの材料で挙げたような各種樹脂材料からなる樹脂板が使用可能である。樹脂板の厚みは50〜5000μm程度が使用できるが特に限定されるものではない。また、樹脂板も基材シートと同様、公知の易接着処理や帯電防止処理等を行ってもよい。
基材シートと受像接着層の間にはグラビア印刷、活版印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写印刷、手描き法等公知の印刷方法により全面ないし所望の部分に印刷層を形成しても良い。印刷で形成する柄は木目、石目、布目、砂目、文字、記号等特に限定されるものではない。
なお、印刷層のインキはバインダー等からなるビヒクル、着色剤、添加剤を主成分とし、バインダー樹脂にはエチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリプロピレン、エポキシ樹脂、セルロース、ウレタン樹脂等が使用可能である。
また、着色剤には公知の顔料、染料が使用可能であり、例えばカーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド、アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、イミダゾロン顔料、ジオキサジン顔料、金粉、銀粉、銅粉、アルミニウム粉、魚鱗粉、パール顔料、蛍光顔料、夜光顔料、またはこれらから選ばれる2種以上の混合物を使用することができる。
図1は、本発明の転写シートの形態を示す模式断面図であり、転写シート1は、基材シート2の上に受像接着層3を剥離可能に設けたものである。
図2は、本発明の化粧材の形態を示す模式断面図であり、化粧材5は画像形成された受像接着層3を樹脂板4に転写したものである。
図3は、本発明の化粧材5を真空成形装置にセットした状態を示す模式断面図であり、固定枠8により化粧材5を固定した後、真空成形装置の金型9表面に対向するようにセットしたものである。化粧材5の上部にはヒーター6が設置されている。
図4は、図3において、真空成形装置によって化粧材5を真空成形した状態を示す模式断面図であり、ヒーター6で化粧材5を加熱軟化させた後、真空吸気孔7により減圧し、化粧材5を金型9の表面に沿って成形したものである。
以下、実施例及び比較例により本発明を更に記述する。
厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートからなる基材シートに、ユニオンカーバイド社製の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(商品名、VAGH)20重量部をメチルエチルケトン80重量部に溶解した塗液を、メイヤーバーコーターにて乾燥時で10μmとなるように塗布、乾燥することで受像接着層を積層して転写シートを作成した。次いで得られた転写シートの受像接着層表面に油性インクを用いたインクジェット方式で絵柄を形成し、絵柄が形成された転写シートを作成した。さらに、得られた転写シートの受像接着層表面をポリメチルメタクリレート製で厚さ4mmの樹脂板表面に対向させ、130℃に加熱された2本のゴムロールを用いて受像接着層を転写して化粧材を作成した。
実施例1において、樹脂板として厚さ1mmのABS樹脂板を使用した以外は、実施例1と同様の方法で受像接着層が転写された化粧材を作成した。
実施例1において受像接着層として、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体20重量部とポリメタクリルメタクリレート樹脂80重量部をメチルエチルケトン400重量部に溶解した塗液を使用した以外は実施例1と同様に化粧材を作成した。
実施例1において受像接着層として、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体60重量部をメチルエチルケトン300重量部に溶解した樹脂溶液に酸化チタン40重量部を分散した塗液を使用した以外は実施例1と同様に化粧材を作成した。
実施例1において受像接着層と基材シートの間に塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体60重量部と酸化チタン40重量部からなる隠蔽層を30μmの厚みで設けた以外は実施例1と同様に絵柄が形成された化粧材を作成した。
実施例1から5で得られた化粧材を真空成形装置で真空成形したところ、転写された受像接着層および絵柄にクラックや割れの発生もなく、かつ得られた成形物は耐水性に優れるものであった。また、実施例1から4で得られた化粧シートを真空成形装置で真空成形して作成した成形物は基材シート側から見た場合でも透明性が高く、印刷が鮮明であり意匠性が特に優れていた。
[比較例1]厚さ75μmのアクリル樹脂製基材シートに、アクリル酸エステル樹脂50重量部を水400重量部に溶解させた塗液をメイヤーバーコーターにて乾燥時で10μmとなるように塗布、乾燥することで転写シートを作成した。次いで得られた転写シート表面に水性インクジェット方式で絵柄を形成したのち、得られた化粧シートの受像表面をポリメチルメタクリレート製で厚さ4mmの樹脂板表面に対向させ、2本のゴムロールを用いて化粧シートをラミネートして化粧材を作成した。
[比較例2]厚さ75μmのアクリル樹脂製基材シートに、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体20重量部をメチルエチルケトン80重量部に溶解した塗液をメイヤーバーコーターにて乾燥時で10μmとなるように塗布、乾燥することで受像接着層を積層した化粧シートを作成した。次いで得られた化粧シート表面に油性インクジェット方式で絵柄を形成したのち、得られた化粧シートの受像表面をポリメチルメタクリレート製で厚さ4mmの樹脂板表面に対向させ、2本のゴムロールを用いて化粧シートをラミネートして化粧材を作成した。
(評価方法)
(インクジェット記録適性)油性インクジェットプリンター(商品名:JV−3/ミマキエンジニアリング(株)製)で受像接着層表面に印画した時の記録適性を評価した。ただし、比較例1は水性インクジェットプリンター(商品名:PX−7000/セイコーエプソン(株)製)で印画した時の記録適性を評価した。
○:鮮明で高画質であった。
△:若干インクが滲むが実用上問題ない画質が得られた。
×:鮮明な画質が得られなかった。
(真空成形性)真空成形機にて成形した時の成形適性を評価した。
○:問題なく真空成形可能。
△:成形時の加熱により気泡が発生する場合がある。
×:気泡が多数発生し、実用性がない。
(耐水性)成形物を水中に24時間浸した後、絵柄の劣化を評価した。
○:画質は変化無し
×:完全に絵柄が剥離した。
以上の評価結果は下記表1の通りである。
Figure 2005280134
本発明の転写シートの形態を示す模式断面図である。 本発明の化粧材の形態を示す模式断面図である。 本発明の化粧材を固定枠8により固定した後、真空成形装置の金型表面に対向するようにセットした状態を示す模式断面図である。 図3においてヒーター6で化粧材5を加熱軟化させた後、真空吸気孔7により減圧し、化粧材5を金型9の表面に沿って真空成形した状態を示す模式断面図である。
符号の説明
1・・・転写シート
2・・・基材シート
3・・・受像接着層
4・・・樹脂板
5・・・化粧材
6・・・ヒーター
7・・・真空吸気孔
8・・・固定枠
9・・・金型

Claims (3)

  1. 基材シート上に少なくとも受像接着層が剥離可能に設けられた転写シートの受像接着層表面に、油性インクジェット方式で画像情報に応じてインクを吐出して画像を形成する工程と、前記画像形成された転写シートを加熱して受像接着層を樹脂板に転写して化粧材を作成する工程と、さらに前記化粧材を真空成形する工程とからなることを特徴とする成形品製造方法。
  2. 請求項1記載の成形品製造方法に用いる転写シートであって、基材シート上に少なくとも受像接着層が剥離可能に設けられ、前記受像接着層は油性インクジェット方式で印刷可能でありかつ樹脂板に対して熱接着可能であることを特徴とする転写シート。
  3. 前記受像接着層が塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を主成分とすることを特徴とする請求項2記載の転写シート。
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