JP2005279963A - 樹脂成形品 - Google Patents

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Takehiko Sugimoto
岳彦 杉本
Ra Ki
薇 季
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Abstract

【課題】
本発明は、耐燃料透過性が低く燃料バリア性に優れると共に耐衝撃性に優れ、且つ成形性に優れた樹脂成形品を得ることを課題とする。
【解決手段】
本発明の樹脂成形品は、球晶よりも小さい結晶のみからなる結晶性高分子構造を有した、単一成分の芳香族ポリエステル樹脂を主成分とすることを特徴とする。また、本発明の前記樹脂成形品として、各結晶構造の代表長さが1μm以下であることが好ましい。更に、本発明の前記単一成分の芳香族ポリエステル樹脂は、PBN(ポリブチレンナフタレート)或いはPEN(ポリエチレンナフタレート)であることが好ましい。また本発明の前記樹脂成形品は、熱溶融させた樹脂を150℃/min以上の初期冷却速度で常温まで一律に冷却固化してなることが好ましい。

【選択図】 図1

Description

本発明は、燃料遮断用の樹脂成形品に関するものである。
燃料を搬送、収容する際に用いられる燃料遮断材として、古くから使用されてきた金属に代わり、近年、軽量性に優れると共に錆の発生しない樹脂製材が使用されてきている。
例えば、比較的強度の大きい合成樹脂製品として、ガラス繊維を配合したポリアミド12を用いて成形された合成樹脂成形品が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
しかし、ポリアミド12による樹脂製材は金属よりも耐燃料透過性に劣るという欠点があった。
また近年、液体化合物の廃棄規制及び液体燃料の排出規制(エバポ規制)が強化され、これに伴ってガソリン透過規制が強化される一方で、アルコールを添加剤とするアルコール混合燃料が用いられつつある。しかし、樹脂成形品は一般に、アルコールの含有によって耐燃料透過性が低下することが知られている。このため、アルコール混合燃料等の液体燃料遮断用樹脂製品には、より優れた耐燃料透過性(燃料バリア性)が求められている。
このような耐燃料透過性を向上させる樹脂成形品として、例えば、PPS(ポリフェニレンスルフィド)を所定条件下でインジェクション成形した樹脂コネクタが存在する(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、PPSはPE(ポリエチレン)、PA(可塑化ナイロン)等と比較すれば有利な耐燃料透過性を示すものの、今だ十分な燃料遮断機能材とはいえない。また、対衝撃性に劣るため、配管、タンク等の燃料遮断機構を組み立てる際や、使用中に衝撃を受けた際に割れが生じたり、破損したりする恐れがある。このため、高度な安全性が求められる燃料遮断用の樹脂成形品として、十分に優れたものとはいえなかった。
また、比較的耐衝撃性に優れた高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂を外層の主成分とし、フッ素系樹脂やEVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)など耐燃料透過性(燃料バリア性)に優れる樹脂を中間層に配置した多層成形品が存在する。
しかしながら、これらは複数成分を複合させた比較的複雑な構造からなるため、製品形状の設計自由度が低く、成形性に優れたものとはいえなかった。
特開平8−233181号公報 特開2002−188782号公報
そこで、本発明は、耐燃料透過性が低く燃料バリア性に優れると共に耐衝撃性に優れ、且つ成形性に優れた樹脂成形品を得ることを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明においては、以下(1)ないし(4)の手段を採用するものとしている。
(1)すなわち、本発明の樹脂成形品は、球晶よりも小さい結晶のみからなる結晶性高分子構造を有した、単一成分の芳香族ポリエステル樹脂を主成分とすることを特徴とする。
ここで本発明の球晶とは、結晶核を中心として、径約10μm以上の球状に発達したラメラ構造が認められる結晶集合体を言う。
このようなものであれば、球晶よりも小さい結晶のみという特殊な結晶形態によって、燃料バリア性に優れると共に耐衝撃性に優れたものとなる。
また単一成分の芳香族ポリエステル樹脂を主成分とするため、成形性に優れたものとなる。
(2)また、本発明の前記樹脂成形品として、各結晶構造の代表長さが1μm以下であることが好ましい。
このようなものであれば、結晶構造同士の距離と分子間力の相乗的作用によって、燃料バリア性と耐衝撃性とが共に、より優れたものとなる。
(3)更に、本発明の前記単一成分の芳香族ポリエステル樹脂は、PBN(ポリブチレンナフタレート)或いはPEN(ポリエチレンナフタレート)であることが好ましい。
PBN或いはPENは、他の樹脂に比して耐燃料透過性が圧倒的に優れているため、前記構造と相俟って燃料バリア性及び耐衝撃性をより高性能として共有するものとなる。
(4)また本発明の前記樹脂成形品は、熱溶融させた樹脂を150℃/min以上の初期冷却速度で常温まで一律に冷却固化してなることが好ましい。
これは、常温放置よりも速い冷却速度で、「一律に」すなわち途中で温度上昇させることなく冷却固化するものである。このように冷却速度を制御しながら固化することで、均一な結晶性高分子構造を簡易且つ確実に得ることができる。よって、樹脂構造内で偏りが無く、安定した燃料バリア性及び耐衝撃性の樹脂成形品を、安価に得ることができる。
本発明は、上述のような構成としたことで、容易に製造でき安価であると共に、燃料透過性が低く燃料バリア性に優れ、且つ耐衝撃性に優れた樹脂成形品を得ることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、本発明の第一、第二実施例、及び比較例と共に説明する。以下のいずれの実施例においても、本発明の樹脂成形品は、球晶よりも小さい結晶のみからなる結晶性高分子構造を有した、単一成分の芳香族ポリエステル樹脂を主成分とすることを特徴とする。
本発明の結晶性高分子構造とは、光学顕微鏡観察にて、球晶よりも小さい代表長さの微細な結晶相の存在(更には略均一な並び)を確認できる、有結晶構造である。これは液晶、微細な結晶、球晶という結晶化生長プロセスにおける各形態のうち、液晶のみからなるいわゆる非晶構造を除いた構造を意味する。
このような有結晶構造は、広角X線(WAXD)解析にて、少なくともひとつ以上のブラッグピーク値を有することによって判定できる。すなわち広角X線(WAXD)解析にていずれの位相角度においてもブラッグピークを有さない構造は、有結晶構造では無い。
また本発明の結晶性高分子構造の各結晶相は、いずれも球晶よりも小さい代表長さの微細な結晶であり、溶融状態から結晶が生成してこれが球状に発達するまでの中間的生長期にあるものを言う。これは有結晶構造のうち、径1μmm以上の球晶を有する構造を除いたものを意味する。
このような球晶未満の微細な結晶構造は、光学顕微鏡観察にて、結晶核が球状にまで発達していない微結晶の存在を確認することで判定できる。すなわち光学顕微鏡観察にて複数箇所のいずれかにおいて、径1μmm以上の球晶を視認出来た場合は、球晶よりも小さい結晶のみからなるものでは無い。
球晶を除く微細な結晶構造は或いは、直交偏光板を介した偏光顕微鏡観察にて、図10で示すような光散乱が確認できないことを意味する。つまり、本発明の球晶を除く微細な結晶構造とは、有結晶構造のうち、図10で示すような光散乱状態となる構造を除いた構造をいう。なお、図10はPBN樹脂を280℃から180℃に熱結晶化させて得たシート状の球晶構造サンプルを、50倍の偏光顕微鏡で撮影した偏光顕微鏡観察写真であり、全面に亘って多くの光散乱が確認される。
前記結晶性高分子構造の好ましい態様は、少なくとも表面から0.1ないし0.3mmまでの構造において、単位体積における散乱強度が略均一のものである。これにより、樹脂構造内で均一な燃料バリア性および耐衝撃性を得ることができ、繰り返し応力や偏応力への耐性に優れたものとなる。これは樹脂成形品の中でも特に、圧力変動が大きい衝撃環境下で用いられる、小型高圧コネクタ、バルブ、キャップ、タンク等に適用することが好ましい物性である。
但し、ここで言う略均一とは、平均密度及び散乱強度が、全て所定誤差内にあることである。具体的には、1mm毎(或いは1000μm毎)の各単位体積を一サンプルとして、同一散乱角度における散乱強度Iを樹脂成形品の各位置で一サンプル大に換算測定したときに、少なくとも内外の表面付近における二以上のサンプル相互で±5%(好ましくは±3%)以下の範囲値であることを言う。
ここで散乱強度Iは、広角X線解析(WAXD解析)或いは小角X線散乱解析によってX線が回折して検出される値のうち、各サンプルに共通の散乱角度(例えば、2θ=14.6°)における検出比較値を言う。この散乱角度は、いずれかのサンプルが結晶性のブラッグピークを有する角度である。
このとき、略均一の散乱強度によって、各物質がどれだけ結晶化しているかを示す結晶化度も略均一となる。尚、ここで言う結晶化度は、得られた全ての散乱強度に対して、結晶に起因するピーク強度の比による特定値のことである。
単一成分の芳香族ポリエステル樹脂とは、芳香族ポリエステル樹脂のうち、いずれかひとつの化学成分のみからなる単一組成樹脂である。本発明に適した代表的なものとして、例えば、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等がある。
芳香族ポリエステル樹脂は比較的冷却温度によって結晶構造が変化し易く、結晶構造制御に比較的適した化学種であることが、下記実験をはじめとする本発明者の鋭意精鋭によって判明した。従って、芳香族ポリエステル樹脂によって、微細な結晶性高分子構造を容易に製造することができ、例えば少なくとも表面から0.1ないし0.3mmまでの構造内で、極端な機能変化のない安定した機能分布構造を得ることができる。
この芳香族ポリエステル樹脂の中でも、ポリブチレンナフタレート(PBN)は機械的強度や熱による体積変化率が小さいことから、燃圧変化、温度変化の悪条件下で使用するコネクタ、継手等に用いることが好ましい。
単一成分の芳香族ポリエステル樹脂を主成分とする樹脂成形品とは、芳香族ポリエステル樹脂のいずれか一化学種のみを、主たる樹脂成分として含有する成形品を言う。この主たる樹脂成分は、樹脂成形品全体における燃料遮断機能を果たす中心的成分であることが望ましく、更には樹脂成形品全体における強度を支配する成分であることが望ましい。
従って、可塑剤、充填材、安定剤、滑剤、着色剤、難燃剤、導電剤樹脂等、他の各種配合剤を添加するものや、ガラス繊維、カーボン等の繊維・樹脂成分を含有するものであってもよい。なお、成形品の厚さは問わないが、0.5mm以下、好ましくは0.1ないし0.3mm程度の厚さ以内の成形部分を含むものであれば、成形時の温度変化斑が少なく、安定した機能分布の樹脂成形品を容易に或いは確実に得ることができる。
(急速な固化による微細な結晶構造の成形品)
実施例1の樹脂成形品は、単一成分のPBN樹脂(帝人化成株式会社製、グレードTQB−OT)を、射出ユニットE中で融点Tm超温の280℃に加熱し、金型M1中に射出したのち、常温である15℃まで一律に急速冷却固化して得たシート状の成形品である。
その結晶構造は、図1に示すように径1μm程度の略均一な微細結晶構造である。図1はこの樹脂成型品の50倍光学顕微鏡写真であり、上記微細結晶構造が略均一に並んでいることが確認できる。
この微細結晶構造は、具体的には、断面50μm×50μm四方に1000個ないし1050個程度の数の微細結晶がある。この結晶数は、図1の光学顕微鏡50倍写真における画面上横方向の結晶数をカウントすることによって算出した値である。具体的には、50倍光学顕微鏡写真の縦方向および横方向それぞれ3回カウントし、縦横それぞれの平均結晶数を取った上で、この数を顕微鏡写真の縦横長さに基づき50μm×50μm四方の面積当たりに換算して得られる。
(製造方法例)
物性測定を行うための薄い(具体的な厚さは0.1mm)板状の成型品の場合、上記の微細結晶構造を持つ実施例1のシート状の成形品は、例えば以下方法(A)によって作成することができる。
方法(A)は、図2(a)に示すように、原料樹脂の射出ユニットE内で、樹脂融点Tmを超える280℃まで樹脂を加熱し、シート形状に彫りこみがされた高熱伝導性金属(例えばアルミ/ステンレス合金)からなる2方向合わせ式の金型M(外形約40cm四方×厚み約30cm)へ樹脂を射出する射出工程と、この射出工程によって金型M中に樹脂が充填された時点で、図2(b)に示すように金型M内部に−5℃に冷却された冷媒r(例えばエチレングリコール)を循環させ、射出された樹脂を急速に室温まで冷却する急冷却工程と、による射出成形方法である。
ここで、樹脂成形に使用する金型Mとして、図2(a)(b)に示すように、2方向合わせ式のそれぞれの内部に、金属パイプPを張り巡らせて埋め込んだものを用いた。それぞれの金属パイプPは樹脂の急冷却用に使用され、各金属パイプP内に、加温または冷却用の決まった媒体(冷媒r)を循環させることで、金型Mを合わせたまま中の樹脂の冷却速度をコントロールする。これによって、構造制御がされた樹脂成形品を、容易或いは確実に得ることができる。
なお、図2(a)(b)では成形形状たるシート形状となるように彫りこみがされているが、段差を有する燃料用コネクタ形状など、任意の成形形状となるように彫りこみがされた金型Mを用いることができる。
また別な製造方法として、例えば以下方法(B)によっても作成できる。
方法(B)は、図3(a)に示すように、原料樹脂の射出ユニットE内で、樹脂融点Tmを超える280℃まで樹脂を加熱し、80℃程度に加熱された2方向合わせ式の金型M(外形約40cm四方×厚み約30cm)へ樹脂を射出する射出工程と、この射出工程で射出された樹脂が融点以下に冷却された時点で、図3(b)に示すように金型Mを開き、成型品を5℃の冷却水が循環している冷却槽Tに投下し、冷却槽T内で室温まで極めて急速に冷却する冷却工程と、による射出成形方法である。
金型Mは、上記方法(A)と同様、成形形状たるシート形状となるように彫りこみがされているが、任意の成形形状となるように彫りこみがされた金型M1を用いることができる。
方法(B)の射出工程の際、金型Mは80℃程度に加熱されている。これは、射出工程中に金型M内で冷却されすぎることを防ぐためである。この射出工程と、方法(B)の水による冷却工程によって、熱溶融した樹脂は高温から一気に、すなわち冷却開始時に急激な熱変化と共に冷却される。
なお、射出成形に限らず押し出し成形、ブロー成形の他、公知の成形によって製造することもできる。
この結果、樹脂は初期速度150ないし350℃/minの比較的大きな冷却速度で、途中で温度上昇することなく一律に冷却されて成形される。この冷却速度は、常温放置による空冷速度より大きな値(少なくとも100℃/min以上)であり、且つ、循環水冷による水冷速度より小さい値(大きくとも960℃/min未満)であることが好ましい。
具体的には図4に実施例1として太線で示すような、極めて急激な冷却曲線を描く。図4の実施例1の冷却曲線によれば、実質的な合計冷却時間は100sec程度であり、樹脂融点Tmをわずかに(10℃程度)超えた250℃から、安定した初期冷却速度が認められる150℃までの冷却時間は22sec程度である。
なお、PBNは吸湿性の樹脂であるため、上記製造方法において、気泡の含有を防ぐために射出前に樹脂ペレットを120℃で4時間程度、或いは140℃で3時間程度以上乾燥させておくことが好ましい。
(極めて急速な冷却固化による比較的より微細な結晶構造の成形品)
実施例2の樹脂成形品は、実施例1と同一のPBN樹脂を、実施例1の場合よりもさらに大きな冷却速度で、極めて急速に冷却固化して得たシート状の成形品である。
その結晶構造は、図5に示すように、径1μm程度の略均一な微細結晶構造である。但し、結晶構造は、実施例1よりもわずかに小さい極めて微細なものであり、実施例1よりも更に均一な並びを有する。図5は実施例2の樹脂成型品の50倍光学顕微鏡写真であり、実施例1と同様の算出方法によれば、断面50μm×50μm四方に1100個ないし1150個程度の数の微細結晶がある。
(製造方法例)
物性測定を行うための薄い(具体的な厚みは0.1mm)板状の成型品の場合、上記の微細結晶構造を持つシートは、例えば以下方法(C)によって作成することができる。
方法(C)は、図2(a)に示すように、原料樹脂の射出ユニットE内で、樹脂融点Tmを超える280℃まで樹脂を加熱し、高熱伝導性金属(例えばアルミ/ステンレス合金)からなる2方向合わせ式の金型M(外形約40cm四方×厚み約30cm)へ樹脂を射出する射出工程と、この射出工程によって金型M1中に樹脂が充填された時点で、図2(b)に示すように、金型M内部に液体窒素ガスを循環させ、射出された樹脂を実施例1よりもさらに速い速度で室温まで冷却する超急冷却工程と、による射出成形方法である。金型Mは、成形形状たるシート形状となるように彫りこみがされており、内部に金属パイプPが張り巡らされている。この金属パイプP内に冷媒を循環させて、金型Mを合わせたまま樹脂の冷却速度をコントロールするものである。
また別な製造方法として、例えば以下方法(D)によっても作成できる。
方法(D)は、図3(a)に示すように、原料樹脂の射出ユニットE内で、樹脂融点Tmを超える280℃まで樹脂を加熱し、この加熱した樹脂を、80℃程度に加熱された2方向合わせ式の金型M(外形約40cm四方×厚み約30cm)へ射出する射出工程と、この射出工程で射出した樹脂が融点以下に冷却された時点で、図3(b)に示すように金型Mを開き、成型品をマイナス摂氏である−5℃の冷媒r(例えばエチレングリコール)が循環している冷却槽Tに投下し、冷却槽T内で室温15℃まで極めて急速に冷却する冷却工程と、による射出成形方法である。
80℃程度に加熱された金型Mへの射出工程の後、マイナス摂氏の冷媒rによる冷却槽T内で冷却されることで、樹脂は実施例1よりもさらに速い冷却速度で、しかも高温から一気に、すなわち冷却開始時に急激な熱変化と共に室温まで冷却される。
この結果樹脂は、初期速度950℃/minないし1050℃/minの極めて大きな冷却速度で、途中で温度上昇することなく一律に冷却され、シート状に成形される。
具体的には図4に実施例2として太鎖線で示すような、極めて急激な略直線状の冷却曲線を描く。図4の実施例2の冷却曲線によれば、冷却にかかる合計時間は30分以内、更に言えば実質的な固化時間は20分程度と、極めて短時間である。また、融点を10℃程度超えた250℃から、安定した初期冷却速度が認められる150℃までの冷却時間は、実施例1よりもはるかに短い1分程度である。安定した変化状態は、この150℃からさらに下がった50℃程度以下まで続いている。
他の詳細或いは代替例は、実施例1と同様である。その他、各部の具体的な構成及び製造方法に関する具体的な工程は、上述した実施例1および2に限定されるものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
比較例1
(徐冷却固化による球晶構造の成形品)
比較例1の樹脂成型品は、実施例1と同一のPBN樹脂を、実施例1の場合よりも小さな冷却速度で、徐々に冷却固化して得たシート状の成形品である。これは、単一成分のPBN樹脂を射出ユニットE´中で融点Tm以上の280℃に加熱し、金型中に射出後一定温度まで冷却して、その後樹脂温度が80℃〜100℃程度になった時点で、金型から樹脂を取り出し空気中で常温(15℃)まで一律に冷却するものである。
その結晶構造は図6に示すように、径10μm程度の球晶構造である。なお、図13に示すように、同様の成形方法による樹脂コネクタにおいても、同様の球晶構造が確認された。
(製造方法)
物性測定を行うための薄い(具体的な厚みは0.1mm)板状の成型品として、従来の一般的な射出成形方法に従い、比較例1のシートを以下のような方法で作成した。
すなわち、図7(a)に示すように、原料樹脂の射出ユニットE´内で、樹脂融点Tmを超える280℃まで樹脂を加熱し、約15℃に冷却されたアルミ/ステンレス合金製2方向合わせ式の金型M´(外形約40cm四方×厚み約30cm)へ樹脂を射出する(射出工程)。射出した樹脂が融点以下の温度に冷却され、固化した時点で金型M´を開き成型品を取り出す(第1冷却工程)。取り出された成型品は空気中で常温である15℃まで放置冷却される(第2冷却工程)。なお、前記射出工程の際、金型M´は冷却水によって約15℃に冷却されている。
この結果樹脂は、初期速度約100℃/minの比較的小さな冷却速度で、一律な冷却速度で徐々に冷却される。
具体的には図4に比較例1として示すような、緩やかな略片対数曲線状の冷却曲線を描く。
(比較試験サンプルのまとめ)
上記実施例1、実施例2、および比較例1の各樹脂成形品について、10cm四方、厚さ0.1mmのシートサンプルを作成し、燃料透過性(燃料バリア性)および耐衝撃性の比較試験を行なった。先に述べたように、比較例1(従来の成形方法)では冷却した金型M´によって第一冷却工程を行い、80℃〜100℃程度の樹脂温度で金型を開いて製品を取り出し(図7)、後は空気中で冷却して第二冷却工程を行なって得た球晶構造(図6)のシート状成形品である。
それに対し実施例1では冷却工程において金型Mをさらに早く冷却し(方法(A)では−10℃の冷媒(図2)、(B)では5℃冷却水を使用(図3))、これによって得た微細結晶構造(図1)のシート状成形品である。
それに対し実施例2では冷却工程において取り出した樹脂を冷媒(方法(C)では液体窒素ガス(図2)、(D)では−5℃冷媒(図3))によって冷却し、これによって得た実施例1よりもやや微細な結晶構造(図2)のシート状成形品である。
比較試験1
(広角X線解析試験)
結晶構造の状態比較試験として、広角X線解析装置(株式会社リガク製「RINT2000」)を用いて、標準資料ホルダーに幅5mm、長さ30mm、厚み0.1mmのサンプルシートをセットし、広角X線解析測定を行った。なお測定結果はバックグラウンド補正をかけて、データー処理した。その結果を図8に示す。
いずれも明らかなブラッグピークを確認することができ、有結晶構造であることが確認できた。ブラッグピークを有する共通の散乱角度θ(2θ=14.6°)における、各サンプルの散乱強度はそれぞれ、実施例1が3512.6、実施例2が2907.0、比較例1が4675.3であり、それぞれ結晶構造の相違によって散乱強度が変化していることが理解できる。また図1、図5、図6の光学顕微鏡写真と比較すると、各結晶の大小差に従った順に、散乱強度の大小差の傾向が確認できる。或いは各結晶の均一性の程度差とは逆の順に、散乱強度の大小差の傾向が確認できる。
比較試験2
(耐燃料透過性(燃料バリア性)試験)
耐燃料透過性(燃料バリア性)の物性比較試験として、各サンプルの上部に測定溶媒をセットし、サンプル下部を真空ポンプで真空にすることにより、サンプル下部へ透過した測定溶媒をガスクロマトグラフィーにより捕集し、透過量を測定した。試験条件として、測定具にGTRテック株式会社製「GASOLINE」(真空透過式ガスクロマトグラフィー測定装置)を用いて、試験温度40℃、測定溶媒としてCE=10(トルエン/イソオクタン/エタノール=4.5/4.5/1混合溶液からなる擬似燃料溶媒)を使用した。測定結果を図9(a)に示す。
比較試験3
(耐衝撃性試験)
耐衝撃性の物性比較試験として、センサーがセットされた打ち抜き治具を高速で打ち下ろし、シート形状サンプルを打ち抜き、その際の衝撃強度から耐衝撃性を測定した。試験条件として、測定具に株式会社島津製作所製「ハイドロショット」(打ち抜き部:径20mmの先端半球面をした棒状の打ち抜き治具、サンプル試料押さえ部:径40mmの孔明き台)を用いた。試験温度は常温、打ち下ろし試験速度は8m/secとした。測定結果を図9(b)に示す。
比較試験結果
比較試験1、2の試験結果を、それぞれ図9(a)(b)に示す。先ず、比較試験1による燃料透過性(図9(a))については、実施例1、2のトータル燃料透過度が10.4、13.2と、共に比較例16.3の8割程度以下となっている。なお、トータル燃料透過度は、混合溶液からなる擬似燃料に対しての総合的な耐燃料透過性を示す。特に測定溶媒のうちイソオクタン、トルエンは、実施例1,2共に比較例の約半分以下の透過度になっている。
次に、比較試験2による燃料透過性(図9(b))については、実施例1、2の最大衝撃点強度がそれぞれ0.126、0.264と、共に比較例0.144の5割増し以上となっている。特により微細で結晶数の多い構造の実施例2にあっては、約83%増という画期的な強度値になっている。
このことから、実施例1、実施例2共に、燃料バリア性、耐衝撃性の双方に優れた物性を有することが実証された。
上記本願の樹脂成形品やその製造方法は、燃料搬送用のコネクタ、燃料封止用のプラグ、燃料タンクに最も好適に用いることができる。他に、フィルター、イレギュレーター、計量センダー、キャニスターやこれらを含む各種ユニット、モジュール、ケース等、燃料に接しうる全ての部品及びその一部分として用いることができる。
本発明の実施例1の樹脂成形品の微細結晶構造を示す50倍光学顕微鏡写真である。 実施例1の樹脂成形品の製造方法(A)、又は本発明の実施例2の樹脂成形品の製造方法(C)を示す概念図である。 実施例1の樹脂成形品の製造方法(B)、又は本発明の実施例2の樹脂成形品の製造方法(D)を示す概念図である。 実施例1、実施例2および比較例1の成形時の冷却曲線を示すグラフである。 本発明の実施例2の樹脂成形品の微細結晶構造を示す50倍光学顕微鏡写真である。 比較例1の樹脂成形品の球晶構造を示す50倍光学顕微鏡写真である。 比較例1の樹脂成形品の製造方法を示す概念図である。 実施例1と比較例1、実施例2と比較例1の各広角X線解析試験比較結果を示す測定グラフである。 物性比較試験の結果を示すグラフである。 従来の球晶構造樹脂の偏光顕微鏡写真である。 従来の樹脂コネクタの50倍光学顕微鏡写真である。

Claims (4)

  1. 球晶よりも小さい結晶のみからなる結晶性高分子構造を有した、単一成分の芳香族ポリエステル樹脂を主成分とすることを特徴とする樹脂成形品。
  2. 各結晶構造の代表長さが1μm以下であることを特徴とする請求項1記載の樹脂成形品。
  3. 単一成分の芳香族ポリエステル樹脂は、PBN(ポリブチレンナフタレート)或いはPEN(ポリエチレンナフタレート)であることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂成形品。
  4. 熱溶融させた樹脂を150℃/min以上の初期冷却速度で常温まで一律に除冷固化してなる請求項1、2または3記載の樹脂成形品。
JP2004093418A 2004-03-26 2004-03-26 樹脂成形品 Pending JP2005279963A (ja)

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