JP5896637B2 - 複合樹脂成形品の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、温度や湿度の環境変化に対して寸法変化の小さい複合樹脂材料の製造方法、さらにそれを成形して得られる複合樹脂成形品の製造方法に関するものである。
有機樹脂成形体は金属やガラス等の無機材料成形体と比べて軽量であり、また比較的成形に高温を必要としないことから生産性に優れている。これらの利点から、有機樹脂成形体は買物袋や梱包材、シート、食器類のような日用消耗品から雨水用配管・継手や配線基板、電気機器類の外装部品、自動車等の車両内外装部品に至るまで、多岐に渡る用途がある。また、樹脂の種類に依ってはガラス相当の高い透明性を確保できるため、画像表示部材や高速通信デバイス用光ファイバー、液晶ディスプレイ用フィルム、情報記録媒体用ピックアップレンズ、デジタルスキャナー・複写機用レンズアレイシート、カメラ用光学素子等に利用されている。
その一方で、有機樹脂成形体は温度による形状・物性の変化が無機材料成形体と比較して大きく、高い精度が要求される光学系用の材料としては利用しにくい欠点が存在する。そこで、有機樹脂に対して高濃度の酸化珪素微粒子を添加することで、線膨張率を低下させた有機樹脂−無機微粒子複合樹脂材料が開発されてきた。(特許文献1)
特に高精度を要求する機器用内外装部品、あるいは光学素子としての用途を考える上では湿度による形状・物性の変化も小さいことが要求され、樹脂材料の母材となる有機樹脂自体にも低吸湿性が求められる。このような条件を満たす樹脂としては環状オレフィン樹脂や環状オレフィンとα−オレフィンの共重合体が挙げられ、近年、これら樹脂に酸化珪素微粒子を添加した複合樹脂材料が開示されている。(特許文献2)
また、この複合樹脂材料の製造において酸化珪素微粒子を分散させる方法として、微粒子分散溶液を樹脂溶液と混合する溶液混合法が開示されている。(特許文献3)
特開2004−323634号公報 特開2006−188677号公報 特開2006−273991号公報
しかしながら、微粒子分散溶液を樹脂溶液と混合する製造方法では、使用する溶媒の量が微粒子のみを分散させるのに必要な量と樹脂のみを溶解するのに必要な量の総和となるために有機溶媒の使用量が多い。そのため、この製造手法単独では溶融条件下で混練を行う製造方法に比べると、生産性や環境負荷の観点から改善の余地が存在している。
本発明は上記課題に鑑み、温度や湿度の環境変化に対して寸法変化の小さい有機樹脂−金属酸化物微粒子複合樹脂材料の作成において溶液を混合媒体とする際に、樹脂と微粒子を混合する過程で溶媒使用量を低減する製造方法を提供することを目的としている。さらにその複合樹脂材料を用いて成形される複合樹脂成形品の製造方法を提供することを目的としている。
本発明の複合樹脂成形品の製造方法は、環状オレフィン樹脂又は環状オレフィンとα−オレフィンの共重合体に金属酸化物微粒子を含有する複合樹脂成形品の製造方法であって、前記環状オレフィン樹脂又は前記環状オレフィンとα−オレフィンの共重合体を有機溶媒に溶解させた溶液に表面処理が施された前記金属酸化物微粒子を加えてそれらの混合物を得る工程と、前記混合物中に含まれる揮発成分を除去し、無機成分量を10重量パーセント以上で60重量パーセント以下の複合樹脂材料を得る工程と、
前記複合樹脂材料を、30Pa以上8000Pa以下の雰囲気下で、80℃以上300℃以下の温度で、60MPa以上400MPa以下の圧力で圧縮成形して前記複合樹脂成形品を得る工程と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、樹脂溶液に表面処理の施された金属酸化物微粒子を直接加えることで、樹脂溶液と無機微粒子溶液を混合する場合に比べて有機溶媒の使用量を低減しつつ、寸法安定性の高い複合樹脂材料を製造することができる。さらにその複合樹脂材料を減圧下で成形することにより、寸法安定性の高い複合樹脂成形品を製造方法することができる。
本発明における圧縮成形装置を示す概略図である。
(第1の実施の形態)
本実施の形態は熱可塑性樹脂の有機溶液に金属酸化物微粒子を直接混合することで混合を行い、その後に減圧条件下で加熱して揮発成分を除去し、複合樹脂材料を製造するものである。本発明は前記構成により本発明の課題を達成することができるが、具体的には以下のような形態によることができる。
(熱可塑性樹脂)
まず始めに、本発明を実施するための最良の形態として用いる熱可塑性樹脂の構成について説明する。本発明で用いる熱可塑性樹脂は環状オレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリチオエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂のいずれか、又はこれらのうちのいずれかの共重合体、あるいはこれらのうちの複数種を混合したものである。特に、低吸湿性である環状オレフィン樹脂を原料として用いることにより、周囲湿度に対してより高い寸法安定性を持つ樹脂材料を製造することができる。
本発明において用いる熱可塑性樹脂は、有機溶媒に溶解するものであれば特に限定されるものではない。ここで有機溶媒とは、エタノールやイソプロピルエーテル等のアルコール類、アセトンやメチルイソブチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテルやテトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル等のエステル類、クロロホルム等の含ハロゲン炭化水素類、ノルマルヘキサン等の脂肪族炭化水素類、トルエンやキシレン、テトラリン等の芳香族炭化水素類のいずれか、又はこれらのうちの複数種を混合したものを指す。本発明において用いる熱可塑性樹脂は、この有機溶媒に対して1重量パーセント以上10重量パーセント以下の濃度で溶解することが好ましく、5重量パーセント以上10重量パーセント以下の濃度で溶解することがより好ましい。用いる熱可塑性樹脂が1重量パーセント未満の濃度条件でないと溶解しない場合、金属酸化物微粒子との混合過程において溶液の使用量が肥大化するおそれがある。また、熱可塑性樹脂が10重量パーセントよりも多いと、溶液粘度の上昇により後述の金属微粒子と均一な混合を行うことができなくなる。
本発明において用いる熱可塑性樹脂の分子量は特に限定されるものではなく、有機溶媒に対する溶解性に応じ任意の分子量とすることができるが、成形加工性と成形加工品の強度等を考慮すると、数平均分子量が10,000以上1,000,000以下であることが好ましい。数平均分子量が10,000未満の場合成形加工品の強度が不足するおそれがあり、1,000,000よりも大きいと溶融粘度の上昇により成形加工性が悪くなるおそれがある。
本発明において用いる熱可塑性樹脂で複数種の共重合体を用いる場合、それを形成する高分子の構成単位の繰り返しに特に制限はない。交互構造、ランダム構造、ブロック構造等が単独で高分子の周期構造を形成していてもよいし、それらの組み合わせで高分子鎖が形成されていてもよい。また有機溶媒に対する溶解性を示すものであれば、高分子内に架橋構造を持つものであってもよい。
本発明で用いる熱可塑性樹脂は、ガラス転移点が80℃以上300℃以下であることが好ましく、100℃以上200℃以下であることがより好ましい。ガラス転移点が80℃以下であると成形体に十分な耐熱性が得られないおそれがあり、またガラス転移点が300℃を超えると、成形加工時に高温が必要となり加工が困難となるばかりでなく、樹脂成形品が着色する等の問題が生じるおそれがある。
本発明において用いる熱可塑性樹脂は、密度が1.5g/cm以下が好ましく、1.4g/cm3以下がより好ましい。密度が1.5g/cmを超えると、得られる樹脂材料の密度が2.5g/cmを超え、これを用いて成形される機器用内外装部品及び光学素子の重量が増大するおそれがある。
本発明で用いる熱可塑性樹脂は、線膨張係数が100ppm/℃以下かつ吸水率が0.1%以下であるものが好ましく、線膨張係数が80ppm/℃以下かつ吸水率が0.01%以下であるものがより好ましい。この理由は、線膨張係数の小さい熱可塑性樹脂を原料として用いることによって、製造される有機−無機複合樹脂成形品の線膨張係数をより小さくすることが期待できるからである。また低吸水である熱可塑性樹脂を原料として用いることで、製造される有機−無機複合樹脂成形品を成形した際に、成形品が耐湿度寸法安定性を得ることが期待できるからである。
本発明で用いる熱可塑性樹脂は、上述の有機溶媒への溶解性、ガラス転移温度、比重、密度、低吸水率を同時に満たすのが好ましい。具体的には、環状オレフィン樹脂や環状オレフィンとα−オレフィンの共重合体(日本ゼオン製:ZEONEX[製品名]、三井化学製:APEL[製品名]、JSR製:ARTON[製品名]、Topas Advanced Polymers GmbH製:TOPAS[製品名])が好適に用いられる。また、これらの樹脂に、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリチオエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂のいずれか、又はこれらのうちのいずれかの共重合体、あるいはこれらのうちの複数種を添加して用いてもよい。ただし、樹脂を添加して用いる場合は、得られる有機−無機複合樹脂材料を成形した際の耐湿度寸法安定性の観点から、その平均の吸水率を0.1%以下にするのが好ましい。
本発明で用いる熱可塑性樹脂には、添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、リン系加工熱安定剤、ヒドロキシルアミン類の加工熱安定剤、ヒンダートフェノール類等の酸化防止剤、ヒンダートアミン類等の光安定剤、ベンゾトリアゾール類やトリアジン類・ベンゾフェノン類・ベンゾエート類等の紫外線吸収剤、リン酸エステル類やフタル酸エステル類・クエン酸エステル類・ポリエステル類等の可塑剤、シリコーン類等の離型剤、リン酸エステル類やメラミン類等の難燃剤、脂肪酸エステル系界面活性剤類の帯電防止剤、有機色素着色剤、耐衝撃性改良剤等の物質が挙げられる。添加剤は、これらの添加剤を単独で用いてもよいし、組み合わせて使用してもよい。添加剤の添加量は、その総量が製造する樹脂材料の10重量パーセント以下の濃度となるよう、添加量を調整するのが好ましい。添加剤の添加量が10重量パーセントを超える場合、添加後の樹脂材料の物性が使用する熱可塑樹脂が本来有する物性から大きく変化し、線膨張係数や低吸水性等の所望の特性が得られないおそれがある。
(金属酸化物微粒子)
次に、本発明を実施するための最良の形態として、用いる金属酸化物微粒子の構成について説明する。本発明で用いる金属酸化物微粒子としては、例えば、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化亜鉛、これら酸化物の組み合わせにより構成されるケイ酸ジルコニウム等の複合酸化物、リン酸ジルコニウム等のリン酸塩等を挙げることができる。特に酸化珪素は金属酸化物の中でも比較的軽量(比重約2.0)であり、使用に適している。本実施の形態では、これらに限定されるものではない。また、複数種の金属酸化物を混合して用いることもできる。
本発明で用いる金属酸化物微粒子は、微粒子表面が表面処理されており、有機溶媒に添加して混合したとき、有機溶媒に対して1重量パーセント以上で10重量パーセント以下の濃度で分散して沈殿現象を示さない微粒子であることが好ましい。さらには、5重量パーセント以上で10重量パーセント以下の濃度で分散して沈殿現象を示さない微粒子であることがより好ましい。用いる金属酸化物微粒子が1重量パーセント未満の場合、結果として得られる有機−無機樹脂複合材料の線膨張係数が樹脂単体のものに近くなり、十分な寸法安定性の向上が見込めない。また、金属酸化物微粒子が10重量パーセントよりも多いと、前述の熱可塑性樹脂と均一な混合を行うことができなくなる。
ここで有機溶媒とは、エタノールやイソプロピルエーテル等のアルコール類、アセトンやメチルイソブチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテルやテトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル等のエステル類、クロロホルム等の含ハロゲン炭化水素類、ノルマルヘキサン等の脂肪族炭化水素類、トルエンやキシレン、テトラリン等の芳香族炭化水素類のいずれか、又はこれらのうちの複数種を混合したものを指す。本発明で用いる金属酸化物微粒子がこれら有機溶媒に対して1重量パーセント以下の濃度でないと分散しない場合、樹脂溶液との混合過程において用いる樹脂溶液の濃度が希薄である必要が生じ、溶媒の使用量が肥大化するおそれがある。
ここで、表面処理とは金属微粒子表面と有機基が共有結合あるいは静電的相互作用等により結びつけられた状態へと化学処理することであり、金属酸化物微粒子をアルキルシラザンやアルコキシシラン類等のシランカップリング剤、チタンやジルコニウム等の有機金属化合物カップリング剤、変性シリコーン等のシロキサン化合物、脂肪酸塩類やリン酸エステル類等の界面活性剤等の表面処理剤と反応させることを指す。
表面処理に用いる表面処理剤の構造に特に制限はなく、有機溶媒や樹脂と混合した際の分散性に応じて任意の構造とすることができる。また、これら表面処理剤の複数種を組み合わせて用いてもよい。
シランカップリング剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザンやヘキサデシルシラザン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
チタンやジルコニウム等の有機金属カップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
変性シリコーンとしては、例えば、メトキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、メタクリレート変性シリコーン等が挙げられる。
界面活性剤としては、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤、あるいは非イオン系界面活性剤が好適に用いられる。陽イオン界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、アルキルリン酸エステルナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼン等が挙げられる。陰イオン界面活性剤としては、例えば、塩化アルキルメチルアンモニウム、塩化アルキルジメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム等が挙げられる。両性イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルアミノカルボン酸塩、リン酸エステル等が挙げられる。非イオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラノリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。
本発明で用いる金属酸化物微粒子の平均1次粒径は、1nm以上で100nm以下であることが好ましい。ここでいう平均1次粒径は粒子と同体積の球に換算した時の直径を指す。1次粒径が1nm未満だと粒子の凝集が発生しやすく経時変化で安定した性能が得られないおそれがあり、また1次粒径が100nmを超えると溶媒と微粒子の比重差による沈降が進行しやすく混合物中での分散自体が困難となり、均一な混合が行えないおそれがある。
本発明で用いる微粒子は、その金属酸化物の密度が3.5g/cm3以下であることが好ましく、密度が3.0g/cm3以下であることがより好ましい。密度が3.5g/cm3を超えると、得られる樹脂材料の密度が2.5g/cm3を超え、得られる樹脂材料を用いて成形される機器用内外装部品及び光学素子の重量が増大するおそれがある。この条件を満たす金属酸化物微粒子としては、酸化珪素微粒子が代表例として挙げられる。
また、熱可塑性樹脂に対する無機微粒子の割合が多ければ多いほど、樹脂成形品の線膨張係数は小さくなり、熱に対して寸法安定性の高い材料が得られる。その一方で、微粒子の体積分率が高すぎると溶融時の流動性が低下し、成形性が悪化する。このため、低い線膨張係数と成形安定性を両立する上では、有機−無機複合樹脂材料中における酸化物微粒子の濃度が10体積パーセント以上50体積パーセント以下の範囲であることが好ましい。
(有機溶媒)
次いで、本発明を実施するための最良の形態として、混合時に用いる有機溶媒の構成について説明する。本発明で用いる有機溶媒は前記熱可塑性樹脂を溶解するものであれば特に限定されない。例えば、エタノールやイソプロピルエーテル等のアルコール類、アセトンやメチルイソブチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテルやテトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル等のエステル類、クロロホルム等の含ハロゲン炭化水素類、ノルマルヘキサン等の脂肪族炭化水素類、トルエンやキシレン、テトラリン等の芳香族炭化水素類等の有機溶媒を用いることができ、またこれらのうちの複数種を混合したものを用いてもよい。
しかしながら、樹脂成形品の耐湿度寸法安定性を考慮して熱可塑性樹脂として低吸水樹脂を用いた場合、用いる有機溶媒としては疎水性の有機溶媒を選択することが好ましい。親水性の有機溶媒を用いた場合、低吸水樹脂を溶解するのに多量の有機溶媒を用いる必要が生じ、結果として有機溶媒の使用量が肥大化するおそれがある。特に、吸水率の小さい環状オレフィン樹脂や環状オレフィンとα−オレフィンの共重合体を樹脂として用いる場合、十分な疎水性を示す有機溶媒として、ノルマルヘキサン等の脂肪族炭化水素類、トルエンやキシレン、テトラリン等の芳香族炭化水素類、あるいはこれらのうちの複数種を混合したものを用いるのがより好ましい。
本発明で用いる有機溶媒は、大気圧下における沸点が50℃以上であり、200℃以下であることが好ましい。用いる有機溶媒の大気下における沸点が50℃以下であると、混合物粘性を低下させることを目的として50℃以上に加熱して揮発成分の留去をした際に突沸が発生するおそれがある。また、用いる有機溶媒の大気下における沸点が200℃以上であると、揮発成分の留去をした際に溶媒が残存し、得られる樹脂成形品の線膨張係数が増加するおそれがある。
(有機−無機複合樹脂材料の製造方法)
次いで、本実施形態における有機−無機複合樹脂材料の製造方法について説明する。本発明の有機−無機複合樹脂材料は、まず熱可塑性樹脂を有機溶媒に溶解させた溶液を作成し、その溶液に表面処理が施された金属酸化物微粒子を加えてそれらの混合物を得たのち、該混合物を混合物中に含まれる揮発成分を除去することによって製造される。
熱可塑性樹脂を有機溶媒に溶解させる方法は特に限定されないが、種々の一般的な攪拌装置(マグネチックスターラー等の攪拌機付き容器ないしは攪拌翼付き攪拌槽)に有機溶媒と熱可塑性樹脂を投入し、攪拌を行うことによって実施される。熱可塑性樹脂の速やかな溶解を促進することを目的として、溶媒の大気圧下沸点以下の加熱条件下で溶解を行うことができる。また、攪拌装置に投入する熱可塑性樹脂の粒径を100μmより小さくすることで、熱可塑性樹脂と溶媒との接触面積を増やし速やかな溶解を促進することができる。ここでいう粒径とは、粒子と同体積の球に換算した時の直径を指す。
前記熱可塑性有機樹脂の溶液が入った攪拌装置に、表面処理が施された金属酸化物微粒子を加える過程では、攪拌が行われている条件で添加を行うのが好ましい。攪拌条件下、熱可塑性有機樹脂溶液に含まれる有機溶媒100gにつき、前記微粒子が0.05g/秒以下の速度で添加されるのがより好ましい。攪拌が十分に行われていない条件で多量の前記微粒子が加えられた場合、混合物の局所的な粘度上昇が発生してその直後の攪拌が困難になるおそれがある。また、混合物の流動性を高め攪拌効率を向上することを目的として、溶媒の大気圧下沸点以下の加熱条件下で溶解を行うことが好ましい。
本発明では、熱可塑性有機樹脂及び金属酸化物微粒子が攪拌装置内に投入される際、投入される前記樹脂及び前記微粒子の量がそれぞれ、前記有機溶媒の量に対して1重量パーセント以上10重量パーセント以下の範囲内にある必要がある。添加される前記樹脂及び前記微粒子の量を前記有機溶媒の1重量パーセント以上とすることで、金属酸化物微粒子分散溶液と熱可塑性有機樹脂溶液を混合した場合と比較して使用溶媒の量を低減することが達成される。また、添加される前記樹脂及び前記微粒子の量を前記有機溶媒の10重量パーセント以下にすることで混合物の流動性を確保し、均一な混合を達成することができる。
混合物からこのまま揮発成分を除去して低線膨張樹脂材料を得ることもできるが、混合物中の微粒子分散状態のさらなる向上を目的として分散処理を行ってもよい。このような無機酸化物微粒子の分散方法としては、ローラータイプミル、ニーダーミル、ミキサー、高圧ホモジナイザー、湿式メディア粉砕機(ビーズミル、ボールミル、ディスクミル)、超音波分散機等を用いる方法がある。
本発明では、上記により得られた前記熱可塑性有機樹脂、前記有機溶媒、前記金属酸化物微粒子の混合物中に含まれる揮発成分を除去する過程では、前記揮発成分除去開始時及び終了時の温度・圧力を制御する必要がある。その制御条件は、前記有機溶媒の大気圧下での沸点T1(℃)、及び該揮発成分除去開始時の温度T2(℃)及び除去終了時の温度T3(℃)、圧力P3(Pa)が下記一般式(1)及び(2)を満たすことである。
50≦T2<T1<T3≦250 ・・・ (1)
0.0001<P3100 ・・・ (2)
ここで、揮発成分とは、混合時に用いた有機溶媒と、混合時に熱可塑性樹脂及び表面処理の施された金属酸化物微粒子の表面に付着していた水分を指す。
前記揮発成分除去開始時の温度を50℃以上とすることで混合物粘性を低下させ、相分離を原因とする混合物の不均一化を抑制することができる。
また、前記有機溶媒の大気圧下での沸点以下の温度で、大気圧下のもと前記揮発成分の除去を開始し、前記揮発成分の除去の進行に従って真空度を低下させるのが好ましい。真空度を低下させる速度は有機溶媒の種類と前記熱可塑性有機樹脂及び前記金属酸化物微粒子の添加量に応じて適宜変化させる必要があるが、その低下速度は混合物が突沸をしない条件を保ちさえすれば特に制限はない。前記揮発成分除去の終了時の温度は前記有機溶媒の大気圧下での沸点以上250℃以下とし、かつ除去終了時の圧力(P3)が100Pa以下の真空度になるように揮発成分の除去処理を行う必要がある。除去終了時の圧力P3が100Paよりも大きいと用いた有機溶媒の除去が不十分であるおそれがあり、0.0001Paより小さいと用いた有機溶媒以外の添加剤が有機−無機樹脂複合材料から揮発してしまうことにより、添加剤の機能が十分に働かないおそれがある。
前記揮発成分除去の終了時の温度・圧力条件は、前記揮発成分の除去終了時10分間以上保持されることが好ましく、30分以上1時間以下の間保持されることがより好ましい。この揮発成分の除去処理時の温度・圧力制御により、得られる樹脂材料中に残存する揮発成分の量を0.1%以下にしつつ、かつ樹脂の高温劣化を少なくすることができ、その結果として線膨張係数が増加することを防ぐことができる。
また、この時の複合樹脂材料の無機成分量は、10重量パーセント以上で60重量パーセント以下とすることが必要である。無機成分量が10重量パーセント未満だと、線膨張係数の小さい材料とすることができなくなる。また60重量パーセントよりも大きいと、成形品にクラックが発生してしまう。
(有機−無機複合樹脂材料を用いた複合樹脂成形品の製造方法)
以上のようにして得られた有機−無機複合樹脂材料を成形することにより、各種成形品を得ることができる。その成形方法としては、特に限定されるものはないが、機械強度及び寸法精度等の特性に優れた成形物を得るためには、溶融成形が特に好ましい。溶融成形法としては、プレス成形や押し出し成形、射出成形等、公知の成形法を挙げることができる。
また、成形工程における成形条件は、使用目的又は成形方法により適宜選択される。溶融成形では、適度な流動性を樹脂材料に付与して成形性を確保するとともに、熱分解による成形物の黄変及び線膨張係数の増加を効果的に防止する必要がある。この観点から、80℃以上300℃以下の範囲で成形を行うことが好ましく、150℃以上250℃以下の範囲で成形を行うことがより好ましい。また、成形物の形状としては、球状、棒状、板状、ブロック状、筒状、錘状、繊維状、格子状、フィルム又はシート形状等多様な形態で成形することが可能であり、種々の機器用内外装部品及び光学素子として利用することが可能である。
以下に、本発明の実施例について説明する。
参考例1]
マグネチックスターラー攪拌機付き容器を用いて攪拌を行いながら、日本ゼオン製のポリ環状オレフィン樹脂ZEONEX E48R[製品名] 8gを60℃のキシレン80g(沸点T:140℃)に溶解した。その後、攪拌を続けたまま日本アエロジル社製の気相法疎水性酸化珪素微粒子Aerosil RX300[製品名](ヘキサメチルジシラザン表面処理、平均一次粒径 7nm) 2gを0.04g/秒の速度で添加し、混合物を作製した。ロータリーエバポレーターを用いてこの混合物を60℃(T)で大気圧から3300Pa(P2)まで減圧し、揮発成分の除去を行った。揮発成分の除去が進行し混合物が完全に固化した後、得られた固形物を真空乾燥炉で100Pa(P3)の条件のもと200℃(T)30分間乾燥し、複合樹脂材料1を得た。
次にこの複合樹脂材料1について、アズワン株式会社製小型熱プレス機AH−2003[製品名]を用いて一軸プレス成形を行った。内径15mmの円筒状金型に樹脂材料1 0.35gを投入したのち、筒内径と同径の平面金型栓で上下方向を封入し、雰囲気圧力を常圧として200℃に加熱して金型栓の上下方向から200MPaの圧力を付加して10分間保持した。続いてこの金型を保圧条件下で空冷し、90℃で圧力を開放して円盤状の複合樹脂成形品1を得た。
参考例2]
マグネチックスターラー攪拌機付き容器を用いて攪拌を行いながら、日本ゼオン製のポリ環状オレフィン樹脂ZEONEX E48R[製品名] 6gを60℃のキシレン60gに溶解した。その後、攪拌を続けたまま日本アエロジル社製の気相法疎水性酸化珪素微粒子Aerosil RX300[製品名](ヘキサメチルジシラザン表面処理、平均一次粒径 7nm) 4gを0.04g/秒の速度で添加し、混合物を作製した。ロータリーエバポレーターを用いてこの混合物を60℃で大気圧から33hPaまで減圧し、揮発成分の除去を行った。揮発成分の除去が進行し混合物が完全に固化した後、得られた固形物を真空乾燥炉で100Pa以下の条件のもと200℃30分間乾燥し、複合樹脂材料2を得た。
次にこの複合樹脂材料2について、前述の複合樹脂成形品1を成形したときの条件と同様の条件で一軸プレス成形を行い、円盤状の複合樹脂成形品2を得た。
参考例3]
マグネチックスターラー攪拌機付き容器を用いて攪拌を行いながら、日本ゼオン製のポリ環状オレフィン樹脂ZEONEX E48R[製品名] 4gを60℃のキシレン60gに溶解した。その後、攪拌を続けたまま日本アエロジル社製の気相法疎水性酸化珪素微粒子Aerosil RX300[製品名](ヘキサメチルジシラザン表面処理、平均一次粒径 7nm) 6gを0.04g/秒の速度で添加し、混合物を作製した。ロータリーエバポレーターを用いてこの混合物を60 ℃で大気圧から33hPaまで減圧し、揮発成分の除去を行った。揮発成分の除去が進行し混合物が完全に固化した後、得られた固形物を真空乾燥炉で100Pa以下の条件のもと200℃30分間乾燥し、複合樹脂材料3を得た。
次にこの複合樹脂材料3について、前述の複合樹脂成形品1を成形したときの条件と同様の条件で一軸プレス成形を行い、円盤状の複合樹脂成形品3を得た。
参考例4]
マグネチックスターラー攪拌機付き容器を用いて攪拌を行いながら、日本ゼオン製のポリ環状オレフィン樹脂ZEONEX E48R[製品名] 4gを60℃のキシレン60gに溶解した。その後、攪拌を続けたまま日本アエロジル社製の気相法疎水性酸化珪素微粒子Aerosil R816[製品名](ヘキサデシルシラザン表面処理、平均一次粒径 12nm) 6gを0.04g/秒の速度で添加し、混合物を作製した。ロータリーエバポレーターを用いてこの混合物を60℃で大気圧から33hPaまで減圧し、揮発成分の除去を行った。揮発成分の除去が進行し混合物が完全に固化した後、得られた固形物を真空乾燥炉で100Pa以下の条件のもと200℃30分間乾燥し、複合樹脂材料4を得た。
次にこの複合樹脂材料4について、前述の複合樹脂成形品1を成形したときの条件と同様の条件で一軸プレス成形を行い、円盤状の複合樹脂成形品4を得た。
参考例5]
マグネチックスターラー攪拌機付き容器を用いて攪拌を行いながら、日本ゼオン製のポリ環状オレフィン樹脂ZEONEX E48R[製品名] 4gを60℃のキシレン60gに溶解した。その後、攪拌を続けたまま日本アエロジル社製の気相法酸化珪素微粒子Aerosil RA200H[製品名](ヘキサメチルジシラザンとアミノシランによる表面処理、平均一次粒径 12nm) 6gを0.04g/秒の速度で添加し、混合物を作製した。ロータリーエバポレーターを用いてこの混合物を60℃で大気圧から33hPaまで減圧し、揮発成分の除去を行った。揮発成分の除去が進行し混合物が完全に固化した後、得られた固形物を真空乾燥炉で100Pa以下の条件のもと200℃30分間乾燥し、複合樹脂材料5を得た。
次にこの複合樹脂材料5について、前述の成形体1を成形したときの条件と同様の条件で一軸プレス成形を行い、円盤状の複合樹脂成形品5を得た。
[比較例1]
日本ゼオン製のポリ環状オレフィン樹脂ZEONEX E48R[製品名] 1gを真空乾燥炉で100Pa以下の条件のもと200℃30分間乾燥し、複合樹脂材料21を得た。
次にこの複合樹脂材料21について、前述の成形体1を成形したときの条件と同様の条件で一軸プレス成形を行い、円盤状の複合樹脂成形品21を得た。
[比較例2]
マグネチックスターラー攪拌機付き容器を用いて攪拌を行いながら、日本ゼオン製のポリ環状オレフィン樹脂ZEONEX E48R[製品名] 2gを60℃のキシレン80gに溶解した。その後、攪拌を続けたまま日本アエロジル社製の気相法疎水性酸化珪素微粒子Aerosil RX300[製品名](ヘキサメチルジシラザン表面処理、平均一次粒径 7nm) 8gを0.04g/秒の速度で添加し、混合物を作製した。ロータリーエバポレーターを用いてこの混合物を60℃で大気圧から33hPaまで減圧し、揮発成分の除去を行った。揮発成分の除去が進行し混合物が完全に固化した後、得られた固形物を真空乾燥炉で100Pa以下の条件のもと200℃30分間乾燥し、複合樹脂材料22を得た。
次にこの複合樹脂材料22について、前述の成形体1を成形したときの条件と同様の条件で一軸プレス成形して成形体9を得たが、複合樹脂成形品22にはクラックが観察された。
[比較例3]
マグネチックスターラー攪拌機付き容器を用いて攪拌を行いながら、日本ゼオン製のポリ環状オレフィン樹脂ZEONEX E48R[製品名] 2gを60℃のキシレン80gに溶解した。その後、攪拌を続けたまま日本アエロジル社製の気相法酸化珪素微粒子Aerosil RA200H[製品名](ヘキサメチルジシラザンとアミノシランによる表面処理、平均一次粒径 12nm) 8gを0.04g/秒の速度で添加し、混合物を作製した。ロータリーエバポレーターを用いてこの混合物を60℃で大気圧から33hPaまで減圧し、揮発成分の除去を行った。揮発成分の除去が進行し混合物が完全に固化した後、得られた固形物を真空乾燥炉で100Pa以下の条件のもと200℃30分間乾燥し、複合樹脂材料23を得た。
次にこの複合樹脂材料23について、前述の成形体1を成形したときの条件と同様の条件で一軸プレス成形して成形体10を得たが、複合樹脂成形品23にはクラックが観察された。
[成形品の分析・評価]
作成した複合樹脂材料及び複合樹脂成形品の分析・評価方法について説明する。分析・評価項目として、含有無機成分量の定量及び線膨張係数測定が挙げられ、以下、各項目の測定方法の詳細について説明する。
まず始めに、含有無機成分量の定量方法について説明する。複合樹脂材料1〜11、22、23について熱量計測定装置(TGA:Thermo Gravimetric Analyzer、ティー・エイ・インスツルメント社製:Q500[製品名])を用いて、大気圧下常温から900℃まで昇温したときの重量変化を測定した。900℃まで昇温することにより、樹脂材料の有機成分は熱分解による気化、または燃焼し無機成分のみを重量を測定することができる。900℃に昇温した時の試料重量を、大気圧下常温時の試料重量で除した値を、無機成分量とした。
次に、線膨張係数の測定方法について説明する。複合樹脂成形品1〜11、21〜23について熱機械測定装置(TMA:Thermo Mechanical Analyzer、ティー・エイ・インスツルメント社製:TMA2940[製品名])を用いて、円盤状の成形体の厚み方向について線膨張係数を測定した。まず、0℃から80℃まで5℃/分の一定速度で昇温したのちに80℃から0℃まで5℃/分の一定速度で降温させる測定を3回繰り返した。そのうち1回目をアニール処理とみなし、2回目及び3回目の昇温及び降温過程についてそれぞれ20℃と60℃における測定方向の試料厚さの差分を求めた。ここで得られた差分値の平均を測定方向の試料厚さで除した値を、成形体の20℃から60℃までにおける線膨張係数とした。
樹脂成形品1〜11、21〜23に対して、光学顕微鏡を使ってクラックの有無を計測した。1平方センチメートルの区画を計測した結果、長さ1ミリメートル以上の断裂(非平坦部)が1個以上観察された場合をクラック有りとした。
(第2の実施の形態)
本実施の形態は熱可塑性樹脂の有機溶液に金属酸化物微粒子を直接混合することで混合を行い、その後に減圧条件下で加熱して揮発成分を除去し、複合樹脂材料を製造するものである。また、複合樹脂材料を減圧下で成形することにより、寸法安定性の高い複合樹脂成形品を製造方法するものである。本発明は前記構成により本発明の課題を達成することができるが、具体的には以下のような形態によることができる。
本実施の形態において複合樹脂材料を製造する方法は、前述の第1の実施の形態と同様であり説明は省略する。複合樹脂材料を成形して複合樹脂成形品を製造する方法について説明する。
成形前の材料の形態は格別限定されず、粉体状、粒状、塊状、成形体に近いニアシェイプ形状などを用いることができる。ただし、素子の重量に対して成形前の材料の重量が異なると、余分な材料を光学有効部以外で吸収するか、後処理をする必要があるため、材料の重量は精密に調整されていることが望ましい。材料の重量を調整する方法としては、樹脂を加熱溶融した後、プランジャによる精密定量吐出で樹脂塊を作る方法や、射出成形や圧縮成形等の一般的な樹脂成形法により成形体に近いニアシェイプ形状を作る方法等が挙げられる。
次に、成形方法について図面を用いて説明する。図1は、本実施の形態において使用した圧縮成形装置の一例を示す構成図である。まず、前もって用意された成形材料9を、表面に光学面形状を備える上型6、下型7、及び上型6と下型7を摺動可能な胴型8で構成される圧縮成形型に収納する。金型の材質は格別限定されないが、鋼材やステンレスなどの金属、ガラス、樹脂等を用いることができる。
次に、材料を収納した圧縮成形型を、上板3、下板4、ベローズ5で構成される圧縮成形機のチャンバー内に設置する。次に、チャンバーに接続されたポンプ1によりチャンバー内を減圧雰囲気とする。チャンバー内には図示されない圧力検出手段が備えられており、バルブ2の開閉により減圧雰囲気を調整することができる。雰囲気圧力は格別限定されないが、0.0001Pa以上、10000Pa以下の範囲が好ましく、より好ましくは30Pa以上、8000Pa以下である。
次に、上板3及び下板4に内蔵されたヒーター及び温度制御手段により上板3及び下板4を成形温度まで上昇させ、成形材料8を溶融させる。この際、胴型8の樹脂に近い位置には図示されない温度検出手段が接続されており、成形時の温度を制御することができる。
次に、下板4を図示されない駆動手段により上方へ駆動し、圧縮成形型と上板3を接触させる。続いて、下板4をさらに上方へ駆動し、成形材料8を圧縮する。このとき成形材料8にかかる圧力は、下板4に備えられた図示されない荷重検出手段により高精度に制御される。成形圧力は、一例を上げると200MPaである。ここで、圧力のかけ方としては、直接成形圧力をかけても良いが、低圧力から段階的に成形圧力まで上げる方が望ましい。次に、成形圧力を一定時間保持した後、保圧条件下で圧縮成形型を所定の温度まで冷却する。最後にバルブ2を開放してチャンバー内の雰囲気を常圧に戻し、成形圧力を開放して、型から成形体を取り出す。
[実施例
マグネチックスターラー攪拌機付き容器を用いて攪拌を行いながら、日本ゼオン製のポリ環状オレフィン樹脂ZEONEX E48R[製品名] 6gを60℃のキシレン60g(沸点T:140℃)に溶解した。その後、攪拌を続けたまま日本アエロジル社製の気相法疎水性酸化珪素微粒子Aerosil RX300[製品名](ヘキサメチルジシラザン表面処理、平均一次粒径 7nm) 4gを0.04g/秒の速度で添加し、混合物を作製した。ロータリーエバポレーターを用いてこの混合物を60℃(T)で大気圧から3300Pa(P2)まで減圧し、揮発成分の除去を行った。揮発成分の除去が進行し混合物が完全に固化した後、得られた固形物を真空乾燥炉で100Pa(P3)の条件のもと200℃(T)30分間乾燥し、複合樹脂材料6を得た。
次にこの複合樹脂材料1について、アズワン株式会社製小型熱プレス機AH−2003[製品名]を用いて一軸プレス成形を行った。内径15mmの円筒状金型に複合樹脂材料6を0.2g投入したのち、筒内径と同径の平面金型栓で上下方向を封入し、雰囲気圧力を30Paとして200℃に加熱して金型栓の上下方向から200MPaの圧力を付加して10分間保持した。続いてこの金型を保圧条件下で空冷し、90℃で圧力を開放して円盤状の複合樹脂成形品6を得た。
[実施例
実施例と同様の方法で複合樹脂材料7を作製し、成形圧力を60MPaとした以外は実施例と同様の方法で圧縮成形を行い、複合樹脂成形品7を得た。
[実施例
実施例と同様の方法で複合樹脂材料8を作製し、チャンバー内の雰囲気圧力を8000Paとした以外は参考例1と同様の方法で圧縮成形を行い、複合樹脂成形品8を得た。
[実施例
無機微粒子の使用量を2gとした以外は実施例6と同様の方法で複合樹脂材料9を作製した。複合樹脂材料9を実施例と同様の方法で圧縮成形を行い、複合樹脂成形品9を得た。
[実施例
実施例と同様の方法で複合樹脂材料10を作製し、成形圧力を400MPaとした以外は実施例と同様の方法で圧縮成形を行い、複合樹脂成形品10を得た。
参考例6
実施例と同様の方法で複合樹脂材料11を作製し、成形圧力を6MPaとした以外は実施例と同様の方法で圧縮成形を行い、複合樹脂成形品11を得た。
[評価結果]
得られた結果を下記表1乃至表3に示す。表1は有機溶媒、熱可塑性樹脂、無機微粒子の名称、使用量および、無機微粒子の表面処理剤の名称を示している。表2は、表1に示した有機溶媒に溶解した熱可塑性樹脂に、無機微粒子を加えた混合物から、有機溶媒を揮発させる際の製造条件を示している。また、有機溶媒を揮発させて製造した複合樹脂材料1〜11、21〜23の、無機成分量を示している。また、表3は、前述の複合樹脂材料1〜11、21〜23をプレス成形等により複合樹脂成形品1〜11、21〜23を成形する際の成形条件と、成形した複合樹脂成形品1〜11、21〜23の線膨張係数を示している。また複合樹脂成形品のクラックの有無も示している。
表1乃至3に記載の結果より明らかな様に、無機微粒子を含有していない樹脂成形品(比較例1)に比べて、無機微粒子を含有している樹脂成形品(実施例1〜5、参考例1〜6、比較例2、3)の線膨張係数は小さいことが分かる。また、複合樹脂材料中の無機成分量が70wt%(重量パーセント)以上の場合(比較例2、3)は、線膨張係数は非常に小さくすることが可能であるが、複合樹脂成形品のクラックが発生した。
従って、熱可塑性樹脂を有機溶媒に溶解させた溶液に表面処理が施された無機微粒子を加えてそれらの混合物を得たのち、混合物中に含まれる揮発成分を除去する過程を経る複合樹脂材料の製造方法の場合、無機成分量を10wt%以上で60w%以下とすることが必要である。
また、本発明の樹脂材料の成形体は含有微粒子種の表面処理の種類に依らず線膨張係数が小さく、機器用内外装部品及び光学素子に使用する樹脂材料として有用であることがわかる。
また、複合樹脂成形品を成形する際の成形雰囲気圧力を、減圧状態にしておき、60MPa以上、400MPa以下の圧力で圧縮成形することにより、線膨張係数がより小さい複合樹脂成形品を得ることができる。(実施例
以上より、本実施形態における樹脂材料の製造法によれば、樹脂溶液に金属酸化物微粒子を直接加えることで、樹脂溶液と無機微粒子溶液を混合する場合に比べて有機溶媒の使用量を低減しつつ、かつ低線膨張率の樹脂材料を製造することができる。
1 ポンプ
2 バルブ
3 上板
4 下板
5 ベローズ
6 上型
7 下型
8 胴型
9 成形材料

Claims (4)

  1. 環状オレフィン樹脂又は環状オレフィンとα−オレフィンの共重合体に金属酸化物微粒子を含有する複合樹脂成形品の製造方法であって
    前記環状オレフィン樹脂又は前記環状オレフィンとα−オレフィンの共重合体を有機溶媒に溶解させた溶液に表面処理が施された前記金属酸化物微粒子を加えてそれらの混合物を得る工程と、
    前記混合物中に含まれる揮発成分を除去し、無機成分量を10重量パーセント以上で60重量パーセント以下の複合樹脂材料を得る工程と、
    前記複合樹脂材料を、30Pa以上8000Pa以下の雰囲気下で、80℃以上300℃以下の温度で、60MPa以上400MPa以下の圧力で圧縮成形して前記複合樹脂成形品を得る工程と、を有することを特徴とする複合樹脂成形品の製造方法。
  2. 前記混合物中に含まれる前記環状オレフィン樹脂又は前記環状オレフィンとα−オレフィンの共重合体の含有量及び前記微粒子の含有量が、前記有機溶媒の量に対して1重量パーセント以上10重量パーセント以下の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の複合樹脂成形品の製造方法。
  3. 前記揮発成分を除去する過程について、前記有機溶媒の大気圧下での沸点T1(℃)、前記揮発成分除去開始時の温度T2(℃)及び前記揮発成分除去終了時の温度T3(℃)・圧力P(Pa)が下記一般式(1)及び(2)を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の複合樹脂成形品の製造方法。
    50≦T2<T1<T3≦250 ・・・ (1)
    0.0001<P3100 ・・・ (2)
  4. 前記金属酸化物微粒子が酸化珪素微粒子であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の複合樹脂成形品の製造方法。
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