JP2005278965A - 心機能評価装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 非侵襲にて、簡便に、しかも精度良く心臓の機能を評価することができる心機能評価装置を提供する。
【解決手段】 上腕において圧脈波を検出する圧脈波検出装置と、その圧脈波検出装置により検出された圧脈波から大動脈圧波形を推定する大動脈圧波形推定手段58と、その大動脈圧波形推定手段58により推定された大動脈圧波形から左室−動脈カップリングを算出する心機械効率算出手段62とを備えた装置において、さらに、大動脈を含む区間の脈波速度PWVを算出する脈波速度算出手段64を備え、左室−動脈カップリングと脈波速度PWVを同時に表示器46に表示する。脈波速度PWVから大動脈血管の硬化の程度が判断できることから、左室−動脈カップリングが小さい場合に、その原因が、心筋の収縮力低下によるものなのか、大動脈の硬化によるものなのかを判断することができる。
【選択図】 図2
【解決手段】 上腕において圧脈波を検出する圧脈波検出装置と、その圧脈波検出装置により検出された圧脈波から大動脈圧波形を推定する大動脈圧波形推定手段58と、その大動脈圧波形推定手段58により推定された大動脈圧波形から左室−動脈カップリングを算出する心機械効率算出手段62とを備えた装置において、さらに、大動脈を含む区間の脈波速度PWVを算出する脈波速度算出手段64を備え、左室−動脈カップリングと脈波速度PWVを同時に表示器46に表示する。脈波速度PWVから大動脈血管の硬化の程度が判断できることから、左室−動脈カップリングが小さい場合に、その原因が、心筋の収縮力低下によるものなのか、大動脈の硬化によるものなのかを判断することができる。
【選択図】 図2
Description
本発明は、非侵襲にて心臓の機能を評価することができる心機能評価装置に関するものである。
非侵襲にて心機能を評価するための方法として、心機図を測定することが行われている。心機図は、心臓および大血管の機械的興奮過程をグラフ上に記録したものであり、一般に、心臓の心尖部(通常は左室心尖部)の拍動を図示した心尖拍動図,頸動脈の拍動をグラフにした頸動脈波、頸静脈の拍動を図示した頸静脈波からなる。それらの波形から、弁の閉鎖不全や狭窄、あるいは心尖の動きの拘束などが判断される。
また、非侵襲にて心機能を評価する別の方法として心エコー法がある。心エコー法は、超音波を用いて心臓内各部あるいは大血管の運動を観測する方法であり、超音波のもつ、直進性、および、音響インピーダンスの異なる二つの媒質の境界面で反射される、という二つの特性を利用して、心壁や弁の動きや、1心拍ごとの弁部での流れのパターンを観察し、また、心壁境界の動きを観察して左室内容量の変化を決定し、その左室内容量の変化から駆出率(1回拍出量を拡張終末期容積で除したもの)を算出し、その駆出率から左室機能を評価している。
また、非侵襲にて心機能を評価する別の方法として、心機械効率を表すパラメータを算出する方法が知られている(たとえば、特許文献1)。特許文献1では、心機械効率として、左室−動脈カップリングを算出している。この左室−動脈カップリングは、左心室の収縮末期における弾性係数を表す左室エラスタンスEesを、大動脈の実効的弾性腔としての特性すなわち弾性係数を表す大動脈(実効)エラスタンスEaで割ったものとして定義され、その定義からも明らかなように、左心室の駆出機能と大動脈の負荷との整合状態(バランス)を表しており、左心室の拡張期末期容量を固定した場合には、一回駆出量と収縮期末期圧との関係(この関係は、最大収縮時の左心室の血液量と内圧との関係に相当する)を示している。
特開2000−33910
しかし、上記従来の技術には、以下のような問題点がある。まず、心機図に基づいて心血管機能を評価しようとする場合、測定された波形から心機能を評価するので、類型的にまとめられた頸動脈や心尖脈波の波形パターンに習熟した専門家でなければ心機能の評価が困難であった。
心エコー法に基づく評価の場合には、測定機器の操作に訓練が必要であるため、簡便な測定法とは言えない。また、肋間から心臓を観察するため、常に適切な位置から心臓を観察することが困難であることから、常に同一な状態での観察が困難であり、そのために、駆出率を連続して算出する場合、良い算出精度を維持することが困難であった。また、直接的に測定されるのは心壁などの画像であるため、そこから左室内容量を算出するなどして駆出率を算出するまでに要する時間が比較的長くなってしまうという問題もある。
また、前記特許文献1のように、左室−動脈カップリングに基づいて心機能を評価する場合、評価精度が良くないという問題があった。すなわち、左室−動脈カップリングが左室エラスタンスEesと大動脈エラスタンスEaとの比であることから、左室−動脈カップリングが低下した場合にも、それが、心機能の低下によるものなのか、大動脈エラスタンスEaの増加すなわち大動脈血管の硬化によるものなのかが判断できないのである。
本発明は以上のような事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、非侵襲にて、簡便に、しかも精度良く心臓の機能を評価することができる心機能評価装置を提供することにある。
上記目的を達成するための第1発明は、非侵襲にて心臓の機能を評価する心機能評価装置であって、所定の部位における脈波を非侵襲的に検出する脈波検出装置と、心音を検出する心音センサと、前記脈波検出装置により検出された脈波から大動脈圧波形の所定の特徴点における圧力と時相を推定する特徴点推定手段と、その特徴点推定手段により推定された特徴点の圧力と時相、および前記心音センサにより検出された心音に基づいて心機械効率を算出する心機械効率算出手段と、大動脈を含む所定の動脈区間における脈波の速度に関連する脈波速度情報を非侵襲にて算出する脈波速度情報算出手段とを含むことを特徴とする。
また、第2発明は、第1発明の心機能評価装置において、前記心機械効率算出手段により算出された心機械効率および前記脈波速度情報算出手段により算出された脈波速度情報を同時に出力する出力装置を含むことを特徴とする。
また、第3発明は、第1発明または第2発明の心機能評価装置において、前記心機械効率算出手段により算出された心機械効率が所定の判断基準値よりも小さい場合に、前記脈波速度情報算出手段により算出された脈波速度情報を予め設定された脈波速度情報の基準値と比較することで、心機械効率に与える大動脈血管の硬化の影響の程度を示す指標値を算出する指標値算出手段をさらに含むことを特徴とする。
また、第4発明は、第1発明乃至第3発明のいずれか心機能評価装置において、大動脈圧波形の進行波成分に対する反射波成分の増加の程度を示す増加指数を、非侵襲にて算出する増加指数算出手段をさらに含むことを特徴とする。
また、第5発明は、第1発明乃至第4発明のいずれか心機能評価装置において、前記心音センサにより検出された心音に基づいて心臓の弁に異常があるかどうかを判定する弁異常判定手段とをさらに含み、前記心機械効率算出手段は、その弁異常判定手段により心臓の弁に異常があると判定された場合には前記心機械効率を算出しないことを特徴とする。
また、第6発明は、第2発明の心機能評価装置において、前記心機械効率算出手段により算出された心機械効率、および前記脈波速度情報算出手段により算出された脈波速度情報を、患者毎に経時的に記憶する記憶装置と、その記憶装置に患者毎に経時的に記憶された心機械効率および脈波速度情報を前記出力装置に出力する経時変化出力手段をさらに備えていることを特徴とする。
第1発明によれば、心機械効率が非侵襲にて算出されることに加えて、大動脈を含む区間の脈波速度情報が算出され、その脈波速度情報から大動脈血管の硬化の程度が判断できることから、心機械効率が小さい場合に、その原因が、心筋の収縮力低下によるものなのか、大動脈の硬化によるものなのかを判断することができる。また、脈波検出装置による脈波の検出や、脈波速度情報の測定は簡便であることから、簡便に心機能の評価が行える。
第2発明によれば、出力装置に同時に出力された心機械効率および脈波速度情報を見ることにより、医師等が心血管機能を評価することができる。
第3発明によれば、指標値算出手段により、心機械効率に与える大動脈血管の硬化の影響の程度を示す指標値が算出されることから、その指標値から、心機械効率が低い原因が、心筋の収縮力低下によるものなのか、大動脈の硬化によるものなのかを、容易に判断することができる。
第1乃至第3発明により、大動脈血管の硬化が心機械効率の低下の要因として大きいと判断される場合、そのように硬い大動脈血管に心臓から血液を送り出すことは心臓にとって大きな負荷となる。そこで、その心臓の負荷がどの程度であるかを評価することが望まれる。第4発明によれば、大動脈圧波の進行波成分に対する反射波成分の増加の程度を表す増加指数が算出され、その反射波成分は心臓に戻る成分の大きさに関連していることから、増加指数は心臓の負荷を表している。従って、第4発明によれば、心臓に実際にどの程度負荷が加わっているかを評価することができる。
第5発明によれば、心臓の弁に異常があるために精度の高い心機械効率が算出できないと判断される場合には、その心機械効率が算出されないので、精度の低い心機械効率に基づいて誤った診断がなされることが防止される。
第6発明によれば、心機械効率および脈波速度情報の患者毎の経時変化が出力装置に出力されることから、治療の効果の判断を容易に行うことができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明が適用された心機能評価装置10の構成を説明するブロック線図である。
図1において、カフ12は、図示しない生体の上腕部に装着されるものであり、ゴム製袋を布製帯状袋内に有している。カフ12には、圧力センサ16、調圧弁18が配管20を介してそれぞれ接続されている。また、調圧弁18には、配管22を介して空気ポンプ24が接続されている。調圧弁18は、空気ポンプ24により発生させられた圧力の高い空気を調圧してカフ12内へ供給し、あるいは、カフ12内の空気を排気することにより、カフ12内の圧力を調圧する。
圧力センサ16は、カフ12内の圧力を検出してその圧力を表す圧力信号SPをローパスフィルタ26およびバンドパスフィルタ28にそれぞれ供給する。ローパスフィルタ26は、圧力信号SPに含まれる定常的な圧力すなわちカフ12の圧迫圧力(すなわちカフ圧PC)を表すカフ圧信号SCを弁別してそのカフ圧信号SCを図示しないA/D変換器を介して電子制御装置30へ供給する。一方、バンドパスフィルタ28はたとえば1乃至30Hz程度の信号通過帯域を有しており、圧力信号SPの振動成分である第1カフ脈波信号SM1を弁別してその第1カフ脈波信号SM1を図示しないA/D変換器を介して電子制御装置30へ供給する。
脈波検出装置として機能する圧脈波検出装置32は、圧脈波センサ34、空気ポンプ36、および調圧弁38を備えて構成されている。圧脈波センサ34は、所謂トノメトリセンサであり、カフ12が装着されていない側の上腕に装着され、空気ポンプ36から供給される圧が調圧弁38にて調圧されて供給されることにより体表面上から上腕を押圧する。そして、上腕動脈から体表面へ伝達される圧脈波を検出し、その圧脈波を表す第2脈波信号SM2を電子制御装置30へ出力する。
心音センサ40は、胸部上の体表面など、心臓の近傍の体表面上に装着されて心臓から体表面に伝達される心音を検出し、その心音を電気信号SHに変換してフィルタ42へ供給する。フィルタ42は、心音の高音成分をよく記録するためにエネルギーの大きい低音成分を弱める図示しない4種類のフィルタによって構成されており、心音センサ40から供給される心音信号SHを増幅し且つろ波した後に、図示しないA/D変換器を介して電子制御装置30へ出力する。
心電計44は、所定の体表面上に装着される図示しない複数の電極を備え、その体表面に誘導される心電誘導波形すなわちECG波形を検出し、その心電誘導波形を表す心電信号SEを電子制御装置30へ出力する。
電子制御装置30は、CPU、ROM、RAM、およびI/Oポート等を備えた所謂マイクロコンピュータであり、空気ポンプ24、36、および調圧弁18、38を制御するとともに、図2に示す機能を実行することにより、心機械効率などを算出し、算出した心機械効率などを出力装置として機能する表示器46に表示させる。
入力装置47は、たとえばキーボードであり、患者を識別するため患者識別情報(ID番号など)が入力され、その入力された患者識別情報を電子制御装置30へ出力する。
記憶装置48は、たとえば、フラッシュEPROM、ハードディスク、EEPROMなどであり、電子制御装置30において算出された心機械効率などを患者毎に記憶する。
図2は、上記電子制御装置30の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図において、カフ圧制御手段50は、カフ圧信号SCに基づいてカフ圧PCを逐次決定しつつ調圧弁18および空気ポンプ24を制御することにより、カフ圧PCを上腕部における最高血圧値BPSYSよりも高い値に予め設定された昇圧目標圧力値PCM(たとえば180mmHg)まで急速に昇圧し、続いて、後述する血圧値決定手段52による血圧値BPの決定が終了するまで、カフ圧PCを2〜5mmHg/secに設定された徐速降圧速度で徐速降圧させる。そして、血圧値BPの決定が終了した後にカフ圧PCを大気圧まで排圧する。
血圧値決定手段52は、カフ圧制御手段50によりカフ圧PCが徐速降圧させられる過程で、バンドパスフィルタ28から逐次供給される第1カフ脈波信号SM1に基づいてカフ脈波の振幅を一拍毎に決定し、その振幅の変化に基づいて、良く知られたオシロメトリックアルゴリズムを用いて最高血圧値BPSYS、最低血圧値BPDIA、および平均血圧値BPMEANを決定する。上記オシロメトリックアルゴリズムでは、逐次得られるカフ脈波の振幅が急激に大きくなるときのカフ圧PC、すなわち、振幅の立ち上がり点におけるカフ圧PCを最高血圧値BPSYSに決定する。また、平均血圧値BPMEANは、たとえば、逐次得られる振幅から振幅列を作成し、その振幅列において各振幅の頂点を結んで得られる包絡線のピーク点におけるカフ圧PCとし、最低血圧値BPDIAは、その包絡線を微分した微分曲線の変曲点(包絡線の立ち下がり点)におけるカフ圧PCとする。さらに、血圧値決定手段52は、決定した最高血圧値BPSYS、最低血圧値BPDIA、および平均血圧値BPMEANを、表示器46に表示するとともに記憶装置48に患者別に記憶する。
押圧力制御手段54は、空気ポンプ36および調圧弁38を制御することにより、まず、圧脈波センサ34の押圧力を緩やかに上昇させていき、その押圧力の上昇過程で圧脈波センサ34から逐次供給される第2圧脈波信号SM2に基づいて上腕脈波の振幅の大きさを逐次判定し、上腕脈波の振幅が最も大きくなる圧力を最適押圧力として決定する。そして、圧脈波センサ34の押圧力をその最適押圧力に維持する。
関係決定手段56は、圧脈波センサ34により検出される所定の一拍分の圧脈波(好ましくは前記徐速降圧過程で検出された圧脈波)における最低値および最高値を、血圧値決定手段52において決定された最低血圧値BPDIAおよび最高血圧値BPSYSとそれぞれ対応させることにより、圧脈波センサ34にから逐次供給される第2圧脈波信号SM2の大きさと圧力との関係を決定する。
特徴点推定手段として機能する大動脈圧波形推定手段58は、圧脈波センサ34から逐次供給される圧脈波信号SM2の大きさを、所定区間分、前記関係決定手段56により決定された関係に基づいて圧力値に変換し、変換した脈波を推定大動脈圧波形として決定する。ここで、上記所定区間は、後述する心機械効率算出手段62において用いる特徴点(すなわち本実施例では立ち上がり点およびノッチ)を少なくとも一組含む区間である。このようにして決定した推定大動脈圧波形は、圧脈波センサ34により検出された上腕脈波の圧力(振幅)を補正したのみであるので、推定大動脈圧波形における時相情報は、圧脈波センサ34により検出された上腕脈波と同じである。なお、時相情報をも補正する予め求められた伝達関数や血管モデルを用いて、上記上腕脈波から推定大動脈圧波形を決定してもよい。
弁異常判定手段60は、心音センサ40から供給される心音信号SHから、心雑音成分の周波数帯域として予め定められた周波数帯域を抽出するデジタルフィルタ機能を有しており、抽出した周波数帯域の信号強度に基づいて(たとえば、抽出した信号の平均強度が所定の判断基準値以上であるか否かに基づいて)、心臓の弁に狭窄や閉鎖不全などの異常があるかどうかを判定する。
心機械効率算出手段62は、大動脈圧波形推定手段58において決定した推定大動脈圧波形、心音センサ40から逐次供給される心音信号SH、および心電計44から逐次供給される心電信号SEに基づいて、心機械効率として左室−動脈カップリング(以下、単にカップリングという)を算出する。このカップリングは、左室エラスタンスEesを大動脈エラスタンスEaで割った値Ees/Eaであるが、これは、前記特許文献1にも示されるように、式1の右辺から求めることができる。
(式1)
Ees/Ea=[Ped+Ped・k・ET/PEP−Pes]/Pes
式1において、Pedは拡張末期大動脈圧、Pesは収縮末期大動脈圧、ETは駆出時間、PEPは前駆出時間、kは予め実験に基づいて設定される定数である。
(式1)
Ees/Ea=[Ped+Ped・k・ET/PEP−Pes]/Pes
式1において、Pedは拡張末期大動脈圧、Pesは収縮末期大動脈圧、ETは駆出時間、PEPは前駆出時間、kは予め実験に基づいて設定される定数である。
図3は、この心機械効率算出手段62の制御作動の要部を説明するフローチャートである。図3において、ステップS1(以下、ステップを省略する)では、弁異常判定手段60により心臓の弁に異常があると判定されたか否かを判断する。この判断が否定された場合には、S2以下を実行するが、この判断が肯定された場合には、カップリングを算出せずに本ルーチンは直ちに終了する。このように、心臓に弁の異常があると判定された場合にカップリングを算出しないのは、本実施例においては、カップリングの算出に心音のII音を必要とするので、信頼性のあるカップリングを算出するには、心音に雑音成分が含まれていないか、含まれていてもその大きさが小さい必要があり、雑音成分が大きいために、信頼性の低いカップリングが算出され、その信頼性の低いカップリングに基づいて診断が為されると、誤った診断が為される可能性がある。従って、前記弁異常判定手段60により心臓の弁に異常があると判定された場合には、カップリングを算出しないのである。
上記S1の判断が否定された場合には、続くS2において拡張末期大動脈圧Pedを決定する。この拡張末期大動脈圧Pedは、大動脈圧波形では立ち上がり点が対応するので、前記大動脈圧波形推定手段58において決定された推定大動脈圧波形の立ち上がり点における圧力を拡張末期大動脈圧Pedに決定する。
続くS3では、収縮末期大動脈圧Pesを決定する。収縮末期大動脈圧Pesは、大動脈圧波形ではノッチが対応するので、前記大動脈圧波形推定手段58において決定された推定大動脈圧波形のノッチにおける圧力を収縮末期大動脈圧Pesに決定する。
続くS4では駆出時間ETを算出する。駆出時間ETは心臓の左心室から血液が駆出されている時間であり、たとえば、心電図、心音図および大動脈圧波形を模式的に示す図4にも示すように、大動脈圧波形の立ち上がり点からノッチまでの時間から求めることができるので、前記大動脈圧波形推定手段58において決定された推定大動脈圧波形の立ち上がり点からノッチまでの時間差を駆出時間ETとして算出する。
続くS5乃至S7において、前駆出時間PEPを算出する。まず、S5において、左心室の心筋の収縮開始時点を示すものとして心電図のQ波が発生した時点を決定する。続いて、S6において、左心室からの血液の駆出終了時点を示す心音のII音の開始点を決定する。そして、続くS7において、Q波の発生時点からII音の開始点までのQ-II期間から、前記S4で算出した駆出時間ETを引くことにより、左心室の心筋の収縮開始から、実際にその左心室から血液が駆出されるまでの時間である前駆出時間PEPを算出する。なお、図3ではQ波を用いて前駆出時間PEPを算出しているが、Q波は心音のI音の代用であり、Q波に代えて心音のI音の開始点を用いることもできる。この場合には、カップリングの算出に心電信号SEを使用しないので、心電計44は不要となる。このように、心音のI音をQ波で代用しているのは、I音の開始点の検出が困難な場合が多いからである。
上記S7において前駆出時間PEPを算出したら、続くS8において、前記S2乃至S7において算出した各種の数値を前記式1に代入することによりカップリングを算出し、その算出したカップリングを表示器46に表示する。なお、表示器46に表示するカップリングは、1拍分の推定大動脈圧波形に基づいて算出したものであってもよいが、所定拍分(たとえば10拍分)を平均したものであってもよい。そして、続くS9では、上記S8で表示したカップリングを、患者別に記憶装置48に記憶する。
図2に戻って、脈波速度情報算出手段として機能する脈波速度算出手段64は、圧脈波センサ34により検出される圧脈波に含まれる進行波成分の所定部位が発生した時点およびその圧脈波の反射波成分において前記進行波成分の所定部位に対応する部位が発生した時点をそれぞれ決定し、両者の時間差に基づいて、脈波速度情報として脈波速度PWVを算出する。すなわち、脈波速度算出手段64は、まず、圧脈波センサ34により検出される圧脈波の立ち上がり点の発生時点を、進行波成分の立ち上がり点の発生時点として決定するとともに、その圧脈波のピーク以前に現れる極小点を反射波成分の立ち上がり点の発生時点として決定し、両者の時間差Δt(図4参照)を算出する。
上記進行波成分は心臓から、直接、脈波検出部位(すなわち、本実施例では上腕)に到達した脈波成分であるのに対して、反射波成分は、心臓から出た後、一旦、所定の分岐点にて進行波成分から分岐した成分が、所定の反射点にて反射されて上記分岐点に戻った後に、上記脈波検出部位に到達した脈波成分であるので、上記時間差Δtは、上記分岐点と反射点との往復距離を脈波が伝播する時間を表している。ここで、上記分岐点および反射点は、脈波検出部位が本実施例のように上腕である場合には、それぞれ、大動脈弓の分岐部、腎動脈の分岐部である。従って、大動脈弓の分岐部から腎動脈の分岐部までの距離Lが分かれば、その距離Lと上記時間差Δtから、脈波速度PWVが算出できる。すなわち、脈波速度算出手段64は、前記時間差Δtの算出に次いで、式2から、脈波速度PWVを算出する。そして、算出した脈波速度PWVを、表示器46に表示するとともに記憶装置48に患者別に記憶する。
(式2) PWV=2L/Δt
このようにして算出した脈波速度PWVは、大動脈弓の分岐部と腎動脈の分岐部との間の脈波速度であることから、大動脈を含む区間の脈波速度である。そして、この脈波速度PWVは、大動脈の動脈硬化に関連していることから、大動脈エラスタンスEaと関連する。なお、上記距離Lは、身長、腕の長さなどの身体の一部の長さと距離Lとの予め設定された関係から、実際に測定した患者の身体の一部の長さに基づいて決定される。
(式2) PWV=2L/Δt
このようにして算出した脈波速度PWVは、大動脈弓の分岐部と腎動脈の分岐部との間の脈波速度であることから、大動脈を含む区間の脈波速度である。そして、この脈波速度PWVは、大動脈の動脈硬化に関連していることから、大動脈エラスタンスEaと関連する。なお、上記距離Lは、身長、腕の長さなどの身体の一部の長さと距離Lとの予め設定された関係から、実際に測定した患者の身体の一部の長さに基づいて決定される。
指標値算出手段66は、心機械効率算出手段62により算出されたカップリングが予め設定された所定の判断基準値(たとえば1)よりも小さい場合に、脈波速度算出手段64により算出された脈波速度PWVとその脈波速度PWVの基準値と比較した指標値を算出し、その指標値を、表示器46に表示するとともに記憶装置48に患者別に記憶する。本実施例では、上記基準値として、予め実験に基づいて求められた脈波速度PWVの正常範囲の上限値を用い、指標値は、脈波速度算出手段64により算出された脈波速度PWVを、上記正常範囲の上限値で割ることによって算出する。このようにして指標値が算出される場合、その指標値が1よりも大きい場合には大動脈血管に硬化があり、また、その値が大きいほど大動脈血管の硬化の程度が大きいこと、すなわち、大動脈エラスタンスEaが大きいことを示していることから、カップリングに与える大動脈血管の硬化の影響の程度を示す指標となり、指標値が1よりも大きくなるほど、カップリングの値が小さい原因が大動脈血管側にあることが分かる。
増加指数算出手段68は、大動脈圧波形推定手段58により決定された推定大動脈圧波形に基づいて増加指数AIを算出する。この増加指数AIは、オーギュメンテーションインデックス(Augmentation Index)とも称されるものであり、推定大動脈圧波形のピークの大きさから、そのピーク以前に現れる極大点(進行波成分のピークに相当する)の大きさを引いたピーク差A(図4参照)を算出するとともに、圧脈波の脈圧B(図4参照)を決定し、それらピーク差Aおよび脈圧Bを式3に代入して増加指数AIを算出する。
(式3) AI=(A/B)×100 (%)
そして、算出した増加指数AIを、表示器46に表示するとともに記憶装置48に患者別に記憶する。この増加指数AIは、式3からも分かるように、進行波成分に対する反射波成分の相対的大きさを示しており、反射波成分が大きいほど増加指数AIは大きくなり、また、反射波成分が大きいほど心臓に対する負荷が大きいことから、増加指数AIは、心臓に対する負荷を表している。
(式3) AI=(A/B)×100 (%)
そして、算出した増加指数AIを、表示器46に表示するとともに記憶装置48に患者別に記憶する。この増加指数AIは、式3からも分かるように、進行波成分に対する反射波成分の相対的大きさを示しており、反射波成分が大きいほど増加指数AIは大きくなり、また、反射波成分が大きいほど心臓に対する負荷が大きいことから、増加指数AIは、心臓に対する負荷を表している。
図5は、このようにして決定または算出されたカップリング、血圧値BP、脈波速度PWV、増加指数AI、および指標値が表示器46に同時に表示される態様の一例を示しており、図5に示す表の右欄にそれらの値が表示される。
経時変化出力手段として機能する経時変化表示手段70は、入力装置47から供給される患者識別信号に基づいて現在測定されている患者を識別し、その患者について記憶装置48に経時的に記憶されているカップリング、脈波速度PWV、増加指数AI、指標値、および血圧値BPを、表示器46に表示された時間軸を有するグラフ上に表示する。
上述の実施例によれば、カップリングが非侵襲にて算出され、且つ、表示器46に表示されることに加えて、大動脈を含む区間の脈波速度PWVが非侵襲にて算出され、且つ、表示器46に表示され、その脈波速度PWVから大動脈血管の硬化の程度が判断できることから、カップリングが小さい場合に、その原因が、心筋の収縮力低下によるものなのか、大動脈の硬化によるものなのかを判断することができる。また、圧脈波検出装置32による圧脈波の検出は簡便であり、その圧脈波から、カップリングが算出できるとともに、脈波速度PWVを算出することもできるので、簡便に心機能の評価が行える。
また、本実施例によれば、指標値算出手段66により、カップリングに与える大動脈血管の硬化の影響の程度を示す指標値が算出されることから、その指標値から、カップリングが低い原因が、心筋の収縮力低下によるものなのか、大動脈の硬化によるものなのかを、容易に判断することができる。
また、本実施例によれば、カップリングおよび脈波速度PWVに加えて、心臓の負荷を表している増加指数AIが算出されることから、その増加指数AIから、心臓に実際にどの程度負荷が加わっているかを評価することができる。
また、本実施例によれば、心臓の弁に異常があるために精度の高いカップリングが算出できないと判断される場合には、そのカップリングが算出されないので、精度の低いカップリングに基づいて誤った診断がなされることが防止される。
また、本実施例によれば、カップリング、脈波速度PWV、指標値、および増加指数AIの患者毎の経時変化が表示器46に表示されることから、治療の効果の判断を容易に行うことができる。
以上、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
たとえば、前述の実施例では、心機械効率として左室−動脈カップリングを算出していたが、実効駆出率EFeは、式4に示されるように、カップリングと一対一に対応するので、心機械効率として実効駆出率EFeを算出してもよい。
(式4) EFe=1/(1+Ea/Ees)
(式4) EFe=1/(1+Ea/Ees)
また、前述の実施例では、圧脈波検出装置は、上腕部において脈波を検出していたが、頸部における脈波すなわち頸動脈波を検出してもよい。また、頸動脈波や上腕脈波のような比較的中枢側の脈波に代えて、伝達関数等により大動脈圧波形へ比較的精度よく変換できる場合には、橈骨動脈波などの末梢側の脈波を検出してもよい。
また、前述の実施例では、脈波伝播速度情報として脈波速度PWVを算出していたが、脈波伝播時間すなわち前述の実施例の時間差Δtを脈波伝播速度情報として用いてもよい。
また、前述の実施例では、駆出時間ETを、推定大動脈圧波形の立ち上がり点からノッチまでの時間差から算出していたが、圧脈波センサ34により検出される圧脈波(すなわち変換前の波形)やカフ12によって検出される脈波(カフ脈波)の立ち上がり点とノッチとの時間差から駆出時間ETを算出してもよい。
また、前述の実施例では、推定大動脈圧波形のノッチにおける圧力を収縮末期大動脈圧Pesに決定していたが、そのノッチの正確な圧力を決定することが困難である場合には、カフ12を用いて決定した平均血圧値BPMEANを収縮末期大動脈圧Pesの代用(すなわち推定大動脈圧波形のノッチにおける圧力の代用)として用いてもよい。また、前述の実施例では、推定大動脈圧波形の立ち上がり点における圧力を拡張末期大動脈圧Pedに決定していたが、臥位では、大動脈における最低血圧値すなわち大動脈圧波形の立ち上がり点における圧力と、上腕における最低血圧値とは略一致するので、カフ12を用いて決定した最低血圧値BPDIAを拡張末期大動脈圧Pedの代用(すなわち推定大動脈圧波形の立ち上がり点における圧力の代用)として用いてもよい。このように、カフ12を用いて決定した平均血圧値BPMEANおよび最低血圧値BPDIAを、それぞれ、推定大動脈圧波形のノッチおよび立ち上がり点の代用として用いる場合には、カフ12、圧力センサ16、バンドパスフィルタ28が脈波検出装置として機能し、血圧値決定手段52が特徴点推定手段のうち圧力情報を推定する部分として機能する。さらに、このように、カフ12等が脈波検出装置として機能する場合において、前述のように、駆出時間ETを、カフ12によって検出される脈波(カフ脈波)または圧脈波センサ34によって検出される圧脈波から算出する場合には、それら駆出時間ETを算出する機能が特徴点推定手段のうち時相情報を算出する部分となり、心機械効率の算出に推定大動脈圧波形を用いないことから、大動脈圧波形推定手段58は不要となる。
また、前述の実施例では、脈波速度PWVは、圧脈波検出装置32により検出される1つの脈波のみに基づいて算出されていたが、所定の2部位においてそれぞれ脈波を検出し、その2つの脈波において互いに対応する部位の検出時間差に基づいて脈波速度PWVを算出してもよい。
また、前述の実施例では、圧脈波検出装置32により検出された圧脈波の圧力を、カフ12を用いて測定した血圧値BPに基づいて決定した関係を用いて補正して推定大動脈圧波形としていた。すなわち、前述の実施例では、圧脈波検出装置32により検出された圧脈波の圧力をカフ12を用いて測定した血圧値BPに基づいて補正して推定大動脈圧波形としていたが、圧脈波検出装置32により検出される圧脈波の圧力は、原理的にはそのまま上腕動脈の圧力を示しているので、圧力測定の精度に問題がなければ、カフ12など、血圧値BPを測定するための装置、および関係決定手段56は不要となる。
また、前述の実施例の圧脈波検出装置32は、空気圧を調圧することにより押圧力を調節する型式であったが、機械式のアクチュエータ(例えばステッピングモータやマイクロゲージでのマニュアル設定など)により押圧力を調節する型式であってもよい。
また、前述の実施例では、推定大動脈圧波形を用いて大動脈圧波形の増加指数AIを算出していたが、予め実験に基づいて、上腕圧波形から求めた増加指数AIと大動脈圧波形から求めた増加指数AIとの関係、すなわち、上腕圧波形から求めた増加指数AIを大動脈圧波形から求めた増加指数AIに変換するための変換関係を決定しておき、圧脈波センサ34により検出された圧脈波から増加指数AIを算出し、その増加指数AIを、上記変換関係を用いて大動脈圧波形の増加指数AIに変換してもよい。
なお、本発明はその主旨を逸脱しない範囲においてその他種々の変更が加えられ得るものである。
10:心機能評価装置
32:圧脈波検出装置
40:心音センサ
46:表示器(出力装置)
48:記憶装置
58:大動脈圧波形推定手段(特徴点推定手段)
60:弁異常判定手段
62:心機械効率算出手段
64:脈波速度算出手段(脈波速度情報算出手段)
66:指標値算出手段
68:増加指数算出手段
70:経時変化表示手段(経時変化出力手段)
32:圧脈波検出装置
40:心音センサ
46:表示器(出力装置)
48:記憶装置
58:大動脈圧波形推定手段(特徴点推定手段)
60:弁異常判定手段
62:心機械効率算出手段
64:脈波速度算出手段(脈波速度情報算出手段)
66:指標値算出手段
68:増加指数算出手段
70:経時変化表示手段(経時変化出力手段)
Claims (6)
- 非侵襲にて心臓の機能を評価する心機能評価装置であって、
所定の部位における脈波を非侵襲的に検出する脈波検出装置と、
心音を検出する心音センサと、
前記脈波検出装置により検出された脈波から大動脈圧波形の所定の特徴点における圧力と時相を推定する特徴点推定手段と、
該特徴点推定手段により推定された特徴点の圧力と時相、および前記心音センサにより検出された心音に基づいて心機械効率を算出する心機械効率算出手段と、
大動脈を含む所定の動脈区間における脈波の速度に関連する脈波速度情報を非侵襲にて算出する脈波速度情報算出手段と
を含むことを特徴とする心機能評価装置。 - 前記心機械効率算出手段により算出された心機械効率および前記脈波速度情報算出手段により算出された脈波速度情報を同時に出力する出力装置を含むことを特徴とする請求項1の心機能評価装置。
- 前記心機械効率算出手段により算出された心機械効率が所定の判断基準値よりも小さい場合に、前記脈波速度情報算出手段により算出された脈波速度情報を予め設定された脈波速度情報の基準値と比較することで、心機械効率に与える大動脈血管の硬化の影響の程度を示す指標値を算出する指標値算出手段をさらに含むことを特徴とする請求項1または請求項2の心機能評価装置。
- 大動脈圧波形の進行波成分に対する反射波成分の増加の程度を示す増加指数を、非侵襲にて算出する増加指数算出手段をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかの心機能評価装置。
- 前記心音センサにより検出された心音に基づいて心臓の弁に異常があるかどうかを判定する弁異常判定手段とをさらに含み、
前記心機械効率算出手段は、該弁異常判定手段により心臓の弁に異常があると判定された場合には前記心機械効率を算出しないことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかの心機能評価装置。 - 前記心機械効率算出手段により算出された心機械効率、および前記脈波速度情報算出手段により算出された脈波速度情報を、患者毎に経時的に記憶する記憶装置と、
該記憶装置に患者毎に経時的に記憶された心機械効率および脈波速度情報を前記出力装置に出力する経時変化出力手段をさらに備えていることを特徴とする請求項2の心機能評価装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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2004
- 2004-03-30 JP JP2004098693A patent/JP2005278965A/ja active Pending
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