図1は本映像通信システムを使用した遠隔教育システムのシステム概要図である。学校1の所定の教室が本遠隔教育システムを使用する教室2として予め割り当てられている。病院4内の所定の部屋が本遠隔教育システムを使用する院内学級6として割り当てられている。
本遠隔教育システムを使用する各教室2内に、本遠隔教育システムを利用する生徒用のリモート通信設備3が上記各生徒に対して設けられている。院内学級6内に、上記各生徒に対してリモート操作通信設備7が設けられている。教室2内の各リモート通信設備3は、各生徒用のリモート操作通信設備7に1対1に対応している。
学校1と病院4には通信ユニット9が設けられている。本実施形態において通信ユニット9は赤外線による赤外線通信ユニットとなっている。各通信ユニット9は、学校1内及び病院4内に構築されているLAN回線網11,12に接続されている。通信ユニット9はLAN回線網11,12のゲートウェイとなっている。
学校1内及び病院4内共に各所に教室2内のリモート通信設備3又は生徒用のリモート操作通信設備7をLAN回線網11又は12に接続する接続デバイス13が設けられている。教室2内の各リモート通信設備3と、各リモート通信設備3に対応する各生徒側のリモート操作通信設備7とは、LAN回線網11又は12及び赤外線回線からなる通信回線8を介してデータ通信可能に接続されている。
本実施形態において、接続デバイス13によるリモート通信設備3とLAN回線網11との接続、及びリモート操作通信設備7とLAN回線網12との接続は、光無線によりワイヤレスで行われる。接続デバイス13は光無線によるワイヤレスLANのアクセスポイントとなり、1つの接続デバイス13で複数のリモート通信設備3又はリモート操作通信設備7をLAN回線網11又は12に接続することができる。
図2(a)に示されるように、教室2内のリモート通信設備3は、ムービーカメラ14,マイクロフォン16,モニタ17,発声装置であるスピーカ18とが一体的に取り付けられた視撮ユニット19と、コントローラ21と、報知器であるパトライト22と、操作用PC(パーソナルコンピュータ)23と、チェックモニタ24がスタンド26に搭載された構成となっている。
操作用PC23は、LAN回線網11に接続される。ムービカメラ14は、ズームイン/アウト機能と上下揺動及び左右旋回機能が備えられたタイプのものとなっている。ムービカメラ14は、視撮ユニット19側に上下揺動及び左右旋回自在に取り付けられている。
ムービカメラ14の視撮ユニット19に対する上下揺動及び左右旋回とズームイン及びズームアウトは、ムービカメラ14側のデバイス(図示しない)によって電気的にコントロールされる。
スタンド26はキャスタ27を備え、移動が容易である。スタンド26には接続デバイス13との通信インターフェース28と前記パトライト22が一体的に取り付けられている。コントローラ21,操作用PC23,チェックモニタ24はスタンド26内に収容されている。視撮ユニット19は、360度回転して教室内の映像を取り込むことができるように、スタンド26の上に旋回台29を介して旋回可能に取り付けられている。
図3に示されるように、ムービーカメラ14,マイクロフォン16,モニタ17,スピーカ18,チェックモニタ24は上記コントローラ21に接続されている。該コントローラ21は、対応する生徒側のリモート操作通信設備7側との通信を行う通信部31と、ムービカメラ14及びマイクロフォン16からのデータをデジタル化するA/D変換部32と、モニタ17及びスピーカ18へのデータをアナログ化するD/A変換部33と、旋回台29とパトライト22とムービカメラ14の上下揺動の制御用信号変換を行う制御信号変換部34と、データの分離や合成等の処理を行う信号制御部36等から構成されている。
チェックモニタ24は、上記A/D変換部32からのデータに基づき、リモート通信設備3のムービカメラ14によって撮影されている教室2内の映像表示を行うことが可能となっている。チェックモニタ24によって教室2内において、教室2内の撮影映像のモニタを行うことができる。
生徒側のリモート操作通信設備7は、図2(b)に示されるように、ムービーカメラ37と、モニタ38と、コントローラ39と、チェックモニタ60がスタンド42に搭載されて構成されている。コントローラ39側には、マイクロフォン43と発声装置であるヘッドフォン44とが一体化したヘッドセット46と、操作ユニット47とが接続されている。スタンド42はキャスタ45を備え、移動が容易となっている。スタンド42には接続デバイス13との通信インターフェース48が一体的に取り付けられている。
ムービカメラ37は、ズームイン/アウト機能と上下揺動及び左右旋回機能が備えられたタイプのものとなっている。ムービカメラ37の上下揺動及び左右旋回とズームイン及びズームアウトは、ムービカメラ37側のデバイス(図示しない)によって電気的にコントロールされる。
リモート操作通信設備7のコントローラ39は、図3に示されるように、対応する教室2内のリモート通信設備3側との通信を行う通信部49と、ムービカメラ37及びマイクロフォン43からのデータをデジタル化するA/D変換部51と、モニタ38及びヘッドフォン44へのデータをアナログ化するD/A変換部52と、操作ユニット47により発生するデータや前述の操作用PC23側からのデータの制御を行うコントロールプロセッサ61と、データの分離や合成等の処理を行う信号制御部53等から構成される。
チェックモニタ60は、上記A/D変換部51からのデータに基づき、リモート操作通信設備7のムービカメラ37によって撮影されている生徒側(院内学級6内)の映像表示を行うことが可能となっている。チェックモニタ60によって院内学級6内において、院内学級6内の撮影映像のモニタを行うことができる。
操作ユニット47は、コントロールプロセッサ61に接続されている。図2(b)に示されるように、上下左右方向を指示することができるクロススイッチ54と押しボタンスイッチ50,55,56とが設けられている。
クロススイッチ54を左右に押すことによって、教室2内の対応するリモート通信設備3におけるムービカメラ14自体を左右旋回させるデータをコントロールプロセッサ61から出力させる。クロススイッチ54を上下に押すことによって、上記ムービカメラ14自体を上下揺動させるデータをコントロールプロセッサ61から出力させる。
押しボタンスイッチ55を押すことによって上記ムービカメラ14のズーム(ズームイン/アウト)をコントロールするデータをコントロールプロセッサ61から出力させる。押しボタンスイッチ50を押すことによって教室2内の上記リモート通信設備3の旋回台29を左右方向に旋回させるデータをコントロールプロセッサ61から出力させる。押しボタンスイッチ56を押すことによって上記リモート通信設備3のパトライト22を点灯駆動又は消灯させるデータをコントロールプロセッサ61から出力させる。
教室2内のリモート通信設備3及び生徒側のリモート操作通信設備7は以上のように構成されており、互いに対応する両通信設備3,7は、ムービカメラ14,37で撮影した映像とマイクロフォン16,43によって取り込んだ音声をA/D変換部31,51を介してデジタル化し、信号制御部36,53を介して通信部31,49に送り、情報通信回線8によって生徒側のリモート操作通信設備7又は教室2内のリモート通信設備3に送信する。
教室2内のリモート通信設備3は、対応する生徒側のリモート操作通信設備7のムービカメラ37によって撮影された映像がモニタ17に表示されると共に、上記生徒側のリモート操作通信設備7のマイクロフォン43によって取り込まれた音がスピーカ18から鳴らされて音声表示される。
生徒側のリモート操作通信設備7は、対応する教室2内のリモート通信設備3のムービカメラ14によって撮影された映像がモニタ38に表示されると共に、上記教室2内のリモート通信設備3のマイクロフォン16によって取り込まれた音がヘッドフォン44から鳴らされて音声表示される。音声の再生にヘッドフォン44が採用されていることによって、病院内での他の患者や患者の安静を妨げることはない。
これにより院内学級6内の生徒は遠隔地の学校1の教室2内の状態をモニタ38で見ながら学習を行うことができる。教室2内の講師は院内学級6内の生徒の状態をモニタ17で見ながら授業を進めることができる。
一方前述のような生徒用のリモート操作通信設備7の操作ユニット47の操作によって、対応するリモート通信設備3の旋回台29を左右方向に旋回させるデータやムービカメラ14を上下揺動又は左右旋回させるデータ、パトライト22を点灯・消灯させるデータ、ムービカメラ14のズームを制御するデータがコントロールプロセッサ61から出力されると、コントロールプロセッサ61からのデータは通信部49に送られ、情報通信回線8によって教室2内の対応するリモート通信設備3の通信部31に入力される。
教室2内のリモート通信設備3においては、通信部31に入力されたデータが制御信号変換部34を介して旋回台29,パトライト22,ムービカメラ14に対して出力され、旋回台29,パトライト22,ムービカメラ14がデータに基づき操作ユニット47の操作に応じた作動を行う。
これにより院内学級6内の生徒は、操作ユニット47の操作によって、教室2内のリモート通信設備3の視撮ユニット19の旋回やパトライト22の点灯、ムービカメラ14の上下揺動や旋回やズームを操作することができる。パトライト22の点灯を予め授業中に発言を求めたり、多数決での意思表示等に使用するルールを設けておくことにより、生徒は、パトライト22によって自分の意思を教室2側に容易に示すことが可能となる。
そして院内学級6内の生徒は、視撮ユニット19の旋回や、ムービカメラ14の上下揺動、ズームの操作により、教室2内において視線を移動させるかのように、教室2内の読みたい文字や見たい場所を、あたかも教室2内にいるかのようにバリエーション豊かに自由に見ることができる。
このとき教室2内のリモート通信設備3のマイクロフォン16に指向性を持たせることによって、マイクロフォン16はモニタ17が向く方向から教室2内の音を取り込むことになる。これによりヘッドフォン44によって生徒が聞く音は、モニタ17が向く方向、すなわち視線を中心とした音となり、視線方向と音の方向性が一致し、生徒は教室2内で視線を移動したときのような環境で生徒用のリモート通信設備3により授業を受けることができる。
一方教室2内において講師は、教室2内のリモート通信設備3のモニタ17に表示される院内学級6内の生徒の状態を見て、且つ教室2内のリモート通信設備3のスピーカ18から流れる院内学級6内の音や生徒の声等を聞きながら授業を進めることができる。このとき教室用のリモート通信設備3の視撮ユニット19にはモニタ17が一体的に組みこまれているため、院内学級6の生徒が撮影場所を変更する、すなわち視線の方向を変更すると、モニタ17が旋回する。
これによって教室2内の講師は院内学級6内の生徒の視線をモニタ17の向きから容易に認識することができる。特に生徒側のリモート操作通信設備7を、ムービカメラ37が生徒の顔を撮影するように調節することで、モニタ17の向きとモニタ17に写る生徒の顔の向きとが一致し、教室2内の講師は院内学級6内の生徒の顔の向きで生徒の視線を容易に判断することができ、院内学級6の生徒があたかも教室2内にいるかのような環境となる。
またスピーカ18も視撮ユニット19に一体的に組みこまれているため、モニタ17の方向、つまり生徒の視線方向から生徒の声等が流れてくるため、院内学級6の生徒があたかも教室2内にいるかのような音響環境となる。
以上のように本遠隔教育システムによって、講師及び生徒がお互いにあたかも同一の教室2内にいるかのような仮想環境を作り出すことができ、リアルに遠隔授業を進めることができる。
なお旋回台29,パトライト22,ムービカメラ14の上下揺動と左右旋回及びズームを、操作ユニット47によって専用のプロセッサ(コントロールプロセッサ61)を介して直接コントロールするため、旋回台29,パトライト22,ムービカメラ14を、遠隔地から短時間で円滑にコントロールすることができる。
このとき教室2内のリモート通信設備3は、旋回台29の旋回やパトライト22の点灯やムービカメラ14の上下揺動,左右旋回,ズームのコントロールデータの処理と、ムービカメラ14及びマイクロフォン16から生徒側のリモート操作通信設備7に送信するデータの処理と生徒側のリモート操作通信設備7から送られる映像や音声データの処理を同時に行う場合がある。
この際旋回台29の旋回やパトライト22の点灯やムービカメラ14の上下揺動,左右旋回,ズームのコントロールデータの処理は、制御信号変換部34によって行われ、リモート操作通信設備7に送信するムービカメラ14及びマイクロフォン16からのデータの処理と生徒側のリモート操作通信設備7から送られる映像や音声データの処理は信号制御部36において行う。
一方生徒側のリモート操作通信設備7は、旋回台29の旋回やパトライト22の点灯やムービカメラ14の上下揺動,左右旋回,ズームのコントロールを行うためのデータの処理と、ムービカメラ37及びマイクロフォン43から教室2内の対応するリモート通信設備3に送信するデータの処理と、教室2内の対応するリモート通信設備3から送られる映像や音声データの処理を同時に行う場合がある。
この際旋回台29の旋回やパトライト22の点灯やムービカメラ14の上下揺動,左右旋回,ズームをコントロールするデータの処理は、コントロールプロセッサ61によって行われ、リモート通信設備3に送信するムービカメラ37及びマイクロフォン43からのデータの処理とリモート通信設備3から送られる映像や音声データの処理は信号制御部53において行う。
以上により教室2内のリモート通信設備3及び生徒側のリモート操作通信設備7はともに、映像や音声のデータは、旋回台29,パトライト22,ムービカメラ14を上記のように操作するためのデータとは別に処理されるため、旋回台29,パトライト22,ムービカメラ14の上記操作が、映像や音声の再生に悪影響を及ぼすことはなく、旋回台29やムービカメラ12の操作を行いながら、映像や音声の再生が円滑に行われる。
ただしハードウェアの性能や構成によっては、旋回台29の旋回やムービカメラ14の上下揺動と左右旋回とズーム、パトライト22の作動の制御信号の処理の全て又は一部を信号制御部53,36に任せることもできる。ハードウェアの性能等によっては映像や音声の再生に悪影響なく、旋回台29,パトライト22,ムービカメラ14の上下揺動及びズームの操作も円滑に行うことができる。
なお旋回台29の旋回操作及びパトライト22の点灯・消灯操作、ムービカメラ14の上下揺動及びズームの操作は、操作ユニット47による操作のみではなく、リモート操作通信設備7側にセンサを設け、該センサが生徒の動作を検出することによって、リモート通信設備3側に上記各部29,22,14を作動させるデータを送信することで実現することもできる。この場合は操作ユニット47の操作が容易ではない患者(生徒)であっても旋回台29,パトライト22,ムービカメラ14の操作を容易に行うことができる。
前述の操作用PC23は、所定のリモート操作通信設備7におけるムービカメラ37の上下揺動及び左右旋回及びズーム(ズームイン/ズームアウト)を操作することが可能に構成されている。また操作用PC23において、所定のリモート操作通信設備7のムービカメラ37によって撮影されている映像の表示、マイクロフォン43から入力されている音声を鳴らすこと、コントローラ39のリモート操作も可能となっている。
このため操作用PC23は、所定のリモート操作通信設備7のコントローラ39に対して、ムービカメラ37の上下揺動及び左右旋回及びズーム(ズームイン/ズームアウト)を操作するためのデータをLAN回線網11,12及び通信回線8を介して送信することが可能となっている。
操作用PC23からの上記データを通信部49が受信すると、該データは通信部49からコントロールプロセッサ61に送られ、コントロールプロセッサ61側においてデータ処理してムービカメラ37に所定の作動を行わせる。
これによって所定のリモート操作通信設備7におけるムービカメラ37の上下揺動及び左右旋回及びズーム(ズームイン/ズームアウト)を遠隔から操作することができる。なお操作用PC23における前述のような映像表示や音声吹鳴は、特定のコントローラ39における通信部49を介した信号制御部53からのデータをLAN回線網11,12及び通信回線8を介して受信することによって可能となっている。またコントローラ39のリモート操作は通信部49を介したデータ通信によって可能となっている。
ただし通常リモート操作通信設備7におけるムービカメラ37の上記操作等を遠隔から行うことはなく、非常用として操作PC23は使用される。なお各リモート操作通信設備7に生徒の手元を撮影するムービカメラを設け、該ムービカメラのリモート操作を教室2内から操作用PC23等によって行うように構成することもできる。これによりバーチャル教室感覚がよりリアルなものとなる。
一方操作用PC23によって教室2内の所定のリモート通信設備3におけるムービカメラ14によって撮影されている教室2内の映像の表示、マイクロフォン16から入力されている音声を鳴らすこと、旋回台29の旋回操作、ムービカメラ14のズーム制御や上下揺動及び左右旋回コントロール、パトライト22の点灯、コントローラ21のリモート操作等を行うことを可能とすることもできる。
この場合、操作用PC23によって教室2内において、教室2内の撮影映像と入力音声のモニタを行いながら旋回台29やムービカメラ14の操作を行うことや、コントローラ21の設定調整等を行うことができ、教室2内の撮影映像を見ながら、旋回台29やムービカメラ14の操作によって撮影状態を微調節すること等が可能となる。
さらにLAN回線網12に接続して操作用PC41を院内学級6側に設けることもできる。この場合操作用PC41を、所定のリモート通信設備3におけるムービカメラ14の上下揺動及び左右旋回及びズーム(ズームイン/ズームアウト)と、旋回台29の旋回操作と、パトライト22の点灯・消灯の操作を行うことを可能とする。
また操作用PC41において、所定のリモート通信設備3のムービカメラ14によって撮影されている映像の表示、マイクロフォン16から入力されている音声を鳴らすこと、コントローラ21のリモート操作も可能とする。
このため操作用PC41は、所定のリモート通信設備3のコントローラ21に対して、ムービカメラ14の上下揺動及び左右旋回及びズーム(ズームイン/ズームアウト)、又は旋回台29の旋回、又はパトライト22の点灯を操作するためのデータをLAN回線網11,12及び通信回線8を介して送信することが可能となっている。
操作用PC41からの上記データを通信部31が受信すると、該データは通信部31から制御信号変換部34に送られ、制御信号変換部34側においてデータ処理してムービカメラ14や旋回台29やパトライト22に所定の作動を行わせる。
これによって所定のリモート通信設備3におけるムービカメラ14の上下揺動及び左右旋回及びズーム(ズームイン/ズームアウト)、あるいは旋回台29の旋回、あるいはパトライト22の点灯・消灯を遠隔から操作することが可能となる。ただし通常リモート通信設備3側の上記操作を遠隔から行うことはなく、非常用として操作PC41は使用される。
なお操作用PC41における前述のような映像表示や音声吹鳴は、特定のコントローラ21における通信部31を介した信号制御部36からのデータをLAN回線網11,12及び通信回線8を介して受信することによって可能となる。またコントローラ21のリモート操作は通信部31を介したデータ通信によって可能となる。
一方操作用PC41によって生徒側の所定のリモート操作通信設備7におけるムービカメラ37によって撮影されている院内学級6内の映像の表示、マイクロフォン43から入力されている音声を鳴らすこと、コントローラ39のリモート操作等を行うことを可能とすることもできる。
この場合、操作用PC41によって院内学級6内において、院内学級6内の撮影映像と入力音声のモニタを行いながらムービカメラ37の操作を行うことや、コントローラ39の設定調整等を行うことができ、院内学級6内の撮影映像を見ながら、ムービカメラ37の操作によって撮影状態を微調節すること等が可能となる。
本実施形態においては、教室2と院内学級6との間には、リモート書込みシステムが構築されている。該リモート書込みシステムは、教室2内に設置された1つのサーバ端末70と、院内学級6内に設置されたクライアント端末71とからなる。クライアント端末71は、各生徒毎又は全生徒が共通に使用する1台が配置される。サーバ端末70及びクライアント端末71はLAN回線11又は12に接続されている。
サーバ端末70内には、リモート書込みシステムを提供するサーバアプリケーション67がインストールされている。サーバ端末70及びクライアント端末71には、上記サーバアプリケーション67に対するクライアントアプリケーション68がインストールされている。
サーバアプリケーション67はローカルホスト(127.0.0.1)上のクライアントアプリ
ケーション68や物理的又は仮想的なネットワークを介したホスト(クライアント端末71)上のクライアントアプリケーション68等と通信することができる。
各クライアントアプリケーション68に対してスキャナ57,プリンタ58,タブレット65,モニタ66が接続されている。サーバ端末70のクライアントアプリケーション68には、拡大投影装置64も接続されている。拡大投影装置64は、サーバ端末70側のモニタ66の表示を拡大して表示する。
タブレット65は、ペンをタブレット上に接触させて移動させると、移動軌跡のデータをクライアントアプリケーション68に入力する。ペンのタブレット上の移動はタブレット65に対する仮想的な記載操作となる。タブレット65により、該記載操作によってタブレット65上に記載された文字等のデータがクライアントアプリケーション68に入力される。
サーバアプリケーション67は、クライアントアプリケーション68を介して入力されるタブレット65上に記載された文字等のデータを通信が確立しているクライアントアプリケーション68に対して出力する。
クライアントアプリケーション68は、サーバアプリケーション67から送られたデータに基づき、タブレット65上に記載された文字等を接続されているモニタ66に表示させる。以上により生徒又は講師がタブレット65上に記載(仮想的)した文字や絵等が教室2側及び生徒側のモニタ65上に表示され、教室2内の講師と院内学級6内の生徒との間でペン入力(手書き)の所謂チャットが可能となる。
このとき教室2内の拡大投影装置64は、モニタ66の表示を拡大して表示するため、生徒や講師がタブレット65を使用して記載した文字等は教室2において拡大投影装置64によって拡大表示される。このため教室2においては、モニタ66が院内学級6内の生徒用の黒板として機能し、教室2内の生徒が黒板に文字等を書くように、院内学級6内の生徒がタブレット65を使用してモニタ66に文字等を表示させることができ、講師が添削するようなことができる。
なおタブレットとして液晶モニタが一体的に組み込まれ、液晶モニタ上でペンを移動させて入力を行うタイプ(株式会社ワコム製 液晶ペンタブレット)が公知となっている。このタイプのタブレットをタブレット65及びモニタ66として使用することによって、モニタ66上にペンで記載する感覚で教室2のモニタ66に文字等を表示させることができる。
サーバアプリケーション67は、クライアントアプリケーション68に接続されているスキャナ57によってスキャンしたドキュメントを、他のクライアントアプリケーション68に接続されているプリンタ58(リモートプリンタ)に印刷させることが可能となっている。
これにより例えば教室2内の講師が、試験用紙をスキャナ57によってスキャンし、リモートプリンタに印刷することによって、院内学級6内の生徒に試験用紙を渡すことができる。また院内学級6内の生徒がプリンタ58によって印刷された試験用紙に回答を記入し、スキャナ57によってスキャンし、教室2内のプリンタ58(リモートプリンタ)に印刷することによって、試験用紙の提出ができる。
上記リモート書込みシステムによって、講師や生徒が黒板代わりの教室2内のモニタ66に記載(表示)を行ったり、生徒が筆記による試験を受ける等のように、院内学級6の生徒が筆記によって教室2内の授業に参加することができる。
なおスキャナ57及びプリンタ58を信号制御部36,53に接続するように構成することもできる。この場合はスキャナ57やプリンタ58の制御信号を信号制御部36,53において処理することになり、信号制御部36,53への負担が増加する。このため信号制御部36,53がスキャナ57やプリンタ58の制御信号を処理できる程度のハードウェア資源が必要となる。
また本実施形態において教室2内のリモート通信設備3及び院内学級6内(生徒側)のリモート操作通信設備7は、共に光無線によるワイヤレスLANのクライアントとなるため、移動に際してケーブル等の規制はなく、移動範囲は大きい。またアクセスポイント(接続デバイス13)を様々な場所に設置することによって、教室2内のリモート通信設備3及び生徒側のリモート操作通信設備7をさらに広範囲で移動させることができる。
さらに接続デバイス13による教室2側又は生徒側の通信設備3,7とLAN回線網11又は12との接続とを電波によるワイヤレスで行うこともできる。この場合電波式の無線LANはアンテナの種類により略無指向性とすることができ、通信範囲が広く、且つ光無線LANに比して障害物等の悪影響が少なくなるため、特に学校1内において使用することにより、教室用リモート通信設備3の配置の自由度が高くなる。なおアンテナの種類により指向性を持たせ、通信範囲を限定することもできる。
ただし病院4内において上記電波式の無線LANを使用する場合は、医療機器に対する電波障害を防止する対策が必要となり、生徒側のリモート操作通信設備7と接続デバイス13との距離が短いため、電波障害の問題が少ない光無線LANが有効といえる。なお電波式無線LANを使用する場合は、ホストの特定や暗号化等のセキュリティ対策が望ましい。
上記実施形態は、通信回線8として赤外線回線を使用する例を説明したが、通信回線8は、キャリアとして電波やレーザを使用する無線通信やレーザ通信の回線や、クローズドなWANやオープンなインターネット等を使用することもできる。
ただし通信ユニット9は回線の種類に応じたタイプのものを使用する必要がある。例えばインターネットを通信回線8として使用する場合は、日本国外に生徒用のリモート操作通信設備7等を配置して上記授業に参加することができる。なおオープンな回線を使用する場合はセキュリティの管理を行うことが望ましい。ただしクローズドな通信回線8を使用することによって、セキュリティの確保は容易となる。
一方図4に示されるように、通常どおり生徒S1が学習している教室2内に、院内学級6の生徒Sが位置するスペースを設け、該スペースに教室用のリモート通信設備3を配置することによって、教室用のリモート通信設備3をロボットとして院内学級6内の生徒Sを教室2内にシミュレーションすることができる。
これにより院内学級6の生徒が教室2内にいるかのような環境がさらにリアルに再現される。例えば視撮ユニット19を旋回させ、隣接又は前後の生徒S1に向けることによって、生徒同士のコミュニケーションを成立させることもできる。また1つの教室内に、現実に存在する生徒S1と、複数の教室用のリモート通信設備3とを混在して設けることによって、教室用のリモート通信設備3を介した遠隔地の生徒同士のコミュニケーションも成立するため、他の別の院内学級の生徒同士のコミュニケーションも可能となる。
なお教室2内のリモート通信設備3は、キャスタ27による移動が容易であるため、他の教室や教室2外に移動させることによって、院内学級6の生徒が、例えば文化祭や体育祭等の学校行事に、見学のみとはなるが容易に参加することもできる。さらに休み時間などにおいて友人ないしは教師等とのコミュニケーションを図ることも容易となる。
この場合も前述のように院内学級6の生徒の視線は教室2内のリモート通信設備3のモニタ17の向きにより容易に判断することができ、また院内学級6の生徒の意思表示がパトライト22によって表示されるため、院内学級6の生徒があたかも教室2内にいるかのような環境で上記コミュニケーションを図ることが可能となる。
一方病院4内の生徒の症状によっては、医師から行動範囲の制限や安静を義務付けられている場合がある。この場合でも生徒用のリモート操作通信設備7は、キャスタ45による移動が容易であるため、生徒側のリモート操作通信設備7を病室72の生徒の病床73の近傍まで簡単に移動させ、病床73において上記のように授業等に参加することができる。
特に病床73から起き上がれない生徒用には、図5に示されるように、モニタ38をフレキシブルアーム74により支持させ、モニタ38の位置調節を容易に行うことができるように構成してもよい。これにより病床73から生徒が容易にモニタ38を見ることができるようにモニタ38の位置を簡単に調節することができる。この場合ムービカメラ37はモニタ38側に一体的に取り付け、生徒を容易に撮影できるように構成することができる。
上記実施形態は、本映像通信システムのリモート通信設備3とスキャナ57やプリンタ58等を含むサーバ端末70を教室2内に、リモート操作通信設備7とスキャナ57やプリンタ58等を含むクライアント端末71を院内学級6内に設けることによって、遠隔地の学校1(教室2)と病院4(院内学級6)との間で遠隔教育を行う遠隔教育システムについて説明したが、本映像通信システムによって、老人宅への訪問代行を行う訪問代行システムを構築することもできる。
現在在宅老人福祉担当者(行政もしくはサービス業者)は可能な限り対象となる各家庭を訪問し、事情聴取やサービス等を行っている。しかし業務効率化や、自治体の合併による担当範囲の拡大等により、在宅老人福祉担当者の物理的移動距離が伸び、容易に各家庭に訪問できなかったり、1つの家庭に費やすことができる時間が短くなる等によって、十分な意思疎通ができない状況が広がりつつある。
上記訪問代行システムによって、在宅老人福祉担当者が上記各家庭を直接訪問することなく、会話を行ったり、筆記による意思の疎通等を行い、老人宅への訪問サービスと同様のサービスを行うことが可能となる。
訪問代行システムは、前述の実施形態におけるリモート操作通信設備7及びクライアント端末71を、在宅老人福祉担当者による訪問対象となっている各家庭に配置し、前述の実施形態におけるリモート通信設備3及びサーバ端末70を在宅老人福祉担当者側に配置することによって構築される。
通信ユニット9は、リモート操作通信設備7及びクライアント端末71が設置された各家庭とリモート通信設備3及びサーバ端末70が設置された在宅老人福祉担当者側との間の通信が可能な通信回線に対応したものとする必要がある。
これにより在宅老人福祉担当者と上記各老人宅の老人とが、前述の実施形態における講師と生徒のように、モニタ17,38を見ながらあたかも在宅老人福祉担当者が老人宅にいるかのように会話等を行うことができる他、タブレット65とモニタ66を使用した筆記による意思の疎通や、スキャナ57とプリンタ58を使用した資料の配布や回収等を行うことができる。
一方本映像通信システムによって、特別養護老人ホームや老人健康施設、身体障害者施設等の施設入居者に対して仮想外出サービスを提供することもできる。一般的に特別養護老人ホームの入居者は特段の理由無しに外出することができない。また一般の老人健康施設の入居者であっても身体的理由などにより外出できない者も多い。身体障害者施設入居者はごく近くへの外出か、団体行動での外出を強いられている。
上記仮想外出サービスを提供する仮想外出サービスシステムは、前述の実施形態におけるリモート操作通信設備7及びクライアント端末71を、特別養護老人ホームや老人健康施設、身体障害者施設等の施設内に設置し、前述の実施形態におけるリモート通信設備3及びサーバ端末70を戸外の自由な場所に持ち出して設置することにより構築される。
これにより上記施設内の入居者は、施設内から持ち出されたリモート通信設備3の旋回台29やムービカメラ14等を操作することによって、操作者があたかも外出したかのように戸外にいる相手との会話等が可能となる。またタブレット65とモニタ66を使用した筆記による意思の疎通や、スキャナ57とプリンタ58を使用したお土産の注文なども可能となる。
この場合リモート通信設備3やサーバ端末70をバッテリ駆動タイプとする等のように容易に戸外に持ち出すことが可能な構成する必要がある。また通信ユニット9は、無線LANや携帯電話による通信等を使用するタイプにする必要もある。
また本映像通信システムによって、非専門医の補助を専門医が行うことができる遠隔医療補助システムを構築することもできる。
現在医師は、消化器外科・眼科・皮膚科といった専門を持ち、専門外の知識を必要とする医療行為は他院を紹介することが一般的である。しかし医師の絶対数が不足するような地方の場合、近隣に専門医がいない場合がある等の問題点もある。この場合遠隔手術システムや、テレビ電話を利用した遠隔指導(例えばリハビリテーションや妊婦指導)を利用することも可能である。
しかし遠隔手術システムは医師法に規定された「対面診療の義務」に違反するとの指摘があるため、実験レベルか、同じ室内での利用に留まらざるを得ない。遠隔手術システムによる遠隔での手術指示に関しては、送信すべき手術画像の種類が多岐にわたり、標準的な手術画像の選択ができないことや、デジタル化に関する符号化複合化処理の時間を0にすることが技術的に不可能であることなどの問題があり、普及していない。
一方患者個人に対する遠隔指導については、医師法に違反しないよう診断行為を避けた形で行われる。この場合患者がテレビ電話に対して移動したり、患者側にいるスタッフがテレビ電話のカメラを移動させたり、ズームを扱うなどの必要があり、取り扱いが容易ではないという問題点があった。
上記遠隔医療補助システムは、非専門医側に前述の実施形態におけるリモート通信設備3及びサーバ端末70を、専門医側に前述の実施形態におけるリモート操作通信設備7及びクライアント端末71を設置することによって構築される。これにより専門医は、あたかも非専門医の診察室に行ったかのうように非専門医及び患者と会話を行ったり、筆記による意思疎通や、必要な資料の受け渡しが可能となる。
これにより非専門医に対して専門医師が補助する形でより質の高い医療を提供することができる。患者のみと対面するのではなく、医師(非専門医)を補助する状態となるため、医師法には反することもない。既存のテレビ電話とは異なり、必要な品質の画面を適切な大きさで提供することができる他、専門医側から自由にムービカメラ14の角度やズームを操作できるため、非専門医もしくは当該非専門医のスタッフのカメラ調節等にかかる負担が軽減され、システムの取り扱いが容易となる。