JP2005272962A - アルミニウム溶湯用濾材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】アルミニウム溶湯を濾過するときの濾過効率に優れ、さらに耐久性にも優れたアルミニウム溶湯用濾材を提供する。
【解決手段】骨材粒子が結合材によって細孔4を形成した状態で結合された構成を有するとともに、細孔4を経由して流体を透過させることが可能な機能を有する基材2を備えてなるアルミニウム溶湯用濾材1であって、基材2の表面上に、結晶状のシリカ含有組成物を含有する透過促進層が、細孔4を塞ぐことなく配設されてなるアルミニウム溶湯用濾材1。
【選択図】図1
【解決手段】骨材粒子が結合材によって細孔4を形成した状態で結合された構成を有するとともに、細孔4を経由して流体を透過させることが可能な機能を有する基材2を備えてなるアルミニウム溶湯用濾材1であって、基材2の表面上に、結晶状のシリカ含有組成物を含有する透過促進層が、細孔4を塞ぐことなく配設されてなるアルミニウム溶湯用濾材1。
【選択図】図1
Description
本発明は、アルミニウム溶湯用濾材に関する。さらに詳しくは、アルミニウム溶湯を濾過するときの濾過効率に優れ、さらに耐久性にも優れたアルミニウム溶湯用濾材に関する。
アルミニウムの薄板や箔はアルミニウム溶湯をインゴットに鋳造し、これを圧延して製造される。ところが、アルミニウム溶湯に含まれる金属酸化物や耐火物の微小破片等の固形不純物がそのままインゴット中に混入すると、これを圧延して薄板や箔等を製造する過程でピンホールや表面欠陥が発生することがある。これを防ぐには、溶湯中から固形不純物を除去する必要があり、そのため従来から、アルミニウム溶湯用濾材を使用し、アルミニウム溶湯を濾過して固形不純物を除去する方法が提案されている。
例えば、骨材粒子を無機結合材等で結合し、焼成して形成されるアルミニウム溶湯用濾材であって、無機結合材にシリカ及び三酸化二硼素を含有するアルミニウム溶湯用濾材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このアルミニウム溶湯用濾材は、無機結合材としてシリカが使用されているため、長期間の使用においてアルミニウム溶湯とシリカが反応し、無機結合材が浸食されることにより、アルミニウム溶湯用濾材の強度が低下するという問題があった。
また、骨材粒子を無機質結合材により結合させた金属溶湯用濾材であって、無機質結合材の原料組成を、三酸化二硼素、アルミナ及び酸化マグネシウムが所定の割合で含有されるものとし、無機質結合材にシリカが含有されない金属溶湯用濾材が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この金属溶湯用濾材は、無機質結合材としてシリカを含有しないため、アルミニウム溶湯を濾過した場合に、アルミニウム溶湯により無機質結合材が浸食されないという優れた特徴を有するが、一方で、アルミニウムと金属溶湯用濾材との濡れ性が良好ではなく、濾過効率が劣るという問題があった。すなわち、優れた耐食性と優れた濾過効率とを両立させることができないという問題があった。
特公昭52−22327号公報
特許第2523707号公報
本発明は、上述の問題に鑑みなされたものであり、アルミニウム溶湯を濾過するときの濾過効率に優れ、さらに耐久性にも優れたアルミニウム溶湯用濾材を提供することを特徴とする。
上記目的を達成するため、本発明によって以下のアルミニウム溶湯用濾材及びその製造方法が提供される。
[1]骨材粒子が、結合材によって細孔を形成した状態で結合された構成を有するとともに、前記細孔を経由して流体を透過させることが可能な機能を有する基材を備えてなるアルミニウム溶湯用濾材であって、前記基材の表面上に、焼成により生成した結晶状のシリカ含有組成物を含有する透過促進層が、前記細孔を塞ぐことなく配設されてなるアルミニウム溶湯用濾材。
[2]前記透過促進層が、少なくとも前記流体の流入側の前記基材表面上に配設されてなる[1]に記載のアルミニウム溶湯用濾材。
[3]前記透過促進層が、シリカを0.1〜50質量%、アルカリ成分を15質量%以下そして溶媒を35〜99.9質量%含有するコート材が、焼成されることにより形成されてなる[1]又は[2]に記載のアルミニウム溶湯用濾材。
[4]前記溶媒が、水、アルコール、又はこれらの混合物である[3]に記載のアルミニウム溶湯用濾材。
[5]前記アルカリ成分がナトリウム、カリウム、カルシウム又はこれらを含有する化合物である[3]又は[4]に記載のアルミニウム溶湯用濾材。
[6]前記透過促進層が、結晶状の結合材をさらに含有してなる[1]〜[5]のいずれかに記載のアルミニウム溶湯用濾材。
[7]前記透過促進層に含有される前記結晶状の結合材が、結合材が焼成されて形成されてなる[6]に記載のアルミニウム溶湯用濾材。
[8]前記透過促進層の厚さが、0.1〜300μmである[1]〜[7]のいずれかに記載のアルミニウム溶湯用濾材。
[9]前記結合材が、シリカを5質量%以下含有してなる[1]〜[8]のいずれかに記載のアルミニウム溶湯用濾材。
[10]前記結合材が、三酸化二硼素を15〜80質量%、アルミナを2〜60質量%そして酸化マグネシウムを5〜50質量%、含有してなる[1]〜[9]のいずれかに記載のアルミニウム溶湯用濾材。
[11]前記骨材粒子の原料が焼結アルミナ、電融アルミナ、炭化珪素又は窒化珪素である[1]〜[10]のいずれかに記載のアルミニウム溶湯用濾材。
[12]骨材粒子と結合材とを含有する基材原料を成形して乾燥前基材を形成し、前記乾燥前基材を乾燥させて乾燥基材を形成し、シリカ含有組成物からなるコート材を前記乾燥基材の表面に付着させて焼成前濾材を形成し、前記焼成前濾材を焼成して、前記骨材粒子が前記結合材によって細孔を形成した状態で結合されてなる基材の表面上に、前記コート材が焼成されて形成された透過促進層を配設してなるアルミニウム溶湯用濾材を得るアルミニウム溶湯用濾材の製造方法。
[13]前記焼成前濾材を焼成するときの焼成条件を、前記焼成前濾材を1200〜1400℃まで加熱して前記結合材を溶融させ、その後800℃までを30〜70℃/時間の冷却速度で冷却した後、自然冷却する条件とする[12]に記載のアルミニウム溶湯用濾材の製造方法。
[14]前記透過促進層が、結晶状に形成されてなる[12]又は[13]に記載のアルミニウム溶湯用濾材の製造方法。
[15]前記コート材の成分として、シリカを0.1〜50質量%、アルカリ成分を15質量%以下そして溶媒を35〜99.9質量%含有させ、前記コート材を前記乾燥基材の表面に付着させた状態で焼成して前記透過促進層を形成する[12]〜[14]のいずれかに記載のアルミニウム溶湯用濾材の製造方法。
[16]前記溶媒を、水、アルコール、又はこれらの混合物とする[15]に記載のアルミニウム溶湯用濾材の製造方法。
[17]前記アルカリ成分をナトリウム、カリウム、カルシウム又はこれらを含有する化合物とする[15]又は[16]に記載のアルミニウム溶湯用濾材の製造方法。
[18]前記透過促進層の厚さを、0.1〜300μmとする[12〜[17]のいずれかに記載のアルミニウム溶湯用濾材の製造方法。
[19]前記結合材のシリカ含有率を5質量%以下とする[12]〜[18]のいずれかに記載のアルミニウム溶湯用濾材の製造方法。
[20]前記結合材の成分として、三酸化二硼素を15〜80質量%、アルミナを2〜60質量%そして酸化マグネシウムを5〜50質量%、含有させる[12]〜[19]のいずれかに記載のアルミニウム溶湯用濾材の製造方法。
[21]前記骨材粒子の原料を、焼結アルミナ、電融アルミナ、炭化珪素又は窒化珪素とする[12]〜[20]のいずれかに記載のアルミニウム溶湯用濾材の製造方法。
本発明のアルミニウム溶湯用濾材によれば、骨材粒子が結合材で結合され、さらに、基材表面上に細孔を塞ぐことなく透過促進層を備えたため、アルミニウム溶湯をアルミニウム溶湯用濾材で濾過するとき、透過促進層がまず濡れ、その濡れた状態が細孔内に広がることによりアルミニウム溶湯とアルミニウム溶湯用濾材との濡れ性が向上し、濾過効率が向上する。すなわち、本発明のアルミニウム溶湯用濾材によれば、優れた濾過効率を実現することができる。さらに、本発明のアルミニウム溶湯用濾材によれば、透過促進層が焼成により生成した結晶状に形成されたシリカ含有組成物から構成されたため、透過促進層と基材との結合性が向上し、透過促進層が基材から剥離することを抑制できる。これにより、基材から剥離した透過促進層が基材の細孔を塞ぐことにより基材を目詰まりさせることが抑制され、アルミニウム溶湯用濾材の耐久性(使用時における寿命)が向上する。また、透過促進層を焼成により生成した結晶状に形成したため、透過促進層を構成するシリカとアルミニウム溶湯に含有されるマグネシウムとの反応性が低下し、その反応物(酸化マグネシウム:MgO)の生成を抑えることができる。透過促進層が剥離したときに、基材の細孔を塞ぐ要因の一つとして、透過促進層中に含有する上記反応により生成したMgOが、アルミニウム溶湯中に固形物として浮遊することが挙げられるが、MgOの生成を抑制することにより、基材の細孔の目詰まりをさらに抑制することができる。
また、本発明のアルミニウム溶湯用濾材の製造方法によれば、シリカ含有組成物からなるコート材を乾燥基材の表面に付着させて焼成前濾材を形成し、焼成前濾材を焼成してアルミニウム溶湯用濾材を作製したため、結晶状の透過促進層が基材の骨材粒子表面(以下、「基材の表面」ということがある)に形成される。そして、焼成により基材表面も結晶化されるため、透過促進層と基材との界面において双方が結晶化されることになり、透過促進層と基材との結合状態が強固なものとなる。これにより、基材から透過促進層が剥離し難くなり、基材から剥離した透過促進層が基材の細孔を塞ぐことにより基材を目詰まりさせることが抑制され、アルミニウム溶湯用濾材の耐久性(使用時における寿命)が向上する。また、透過促進層を結晶状に形成したため、上述のようにMgOの生成が抑制され、基材の細孔の目詰まりを抑制することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施の形態」ということがある)を図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
図1は、本発明のアルミニウム溶湯用濾材の一の実施の形態の一部を切り出して拡大し、模式的に示した斜視図である。
図1に示すように、本実施の形態におけるアルミニウム溶湯用濾材1は、基材2の、流体の流入側表面上(図1において、符号Fは流入する流体(アルミニウム溶湯)を示す)に、透過促進層3を備えて形成されている。基材2は、骨材粒子が結合材によって骨材粒子相互間に細孔4を形成した状態で結合された構成を有するとともに、流入した流体Fを細孔4を経由して透過させることが可能な機能を有する。透過促進層3は、焼成により生成した結晶状のシリカ含有組成物から構成され、基材2の表面上に配設された針状結晶とともに細孔4を塞ぐことなく配設されることにより、細孔4への流体(アルミニウム溶湯)Fの透過を促進するものである。
このように、本実施の形態のアルミニウム溶湯用濾材は、骨材粒子が結合材によって細孔4を形成した状態で結合された構成を有するとともに、基材2の表面上に細孔を塞ぐことなくシリカ含有組成物から構成された透過促進層を備えたため、アルミニウム溶湯をアルミニウム溶湯用濾材で濾過するとき、透過促進層がまず濡れ、その濡れた状態が細孔内に広がることによりアルミニウム溶湯とアルミニウム溶湯用濾材との濡れ性が向上し、濾過効率が向上する。すなわち、本実施の形態のアルミニウム溶湯用濾材によれば、優れた濾過効率を実現することができる。透過促進層は、1回目のアルミニウム溶湯の濾過のときに備えられていればよく、本実施の形態のアルミニウム溶湯用濾材を使用するにしたがって透過促進層が薄くなり、さらには無くなってしまっても、一度透過促進層を経由してアルミニウム溶湯が透過した本発明のアルミニウム溶湯用濾材は、その後は、アルミニウム溶湯との濡れ性は良好な状態が維持され(基材自体の濡れ性がよくなる)、アルミニウム溶湯の濾過性も良好に維持される。また、本実施の形態のアルミニウム溶湯用濾材は、アルミニウム溶湯だけでなく、アルミニウム合金溶湯等のアルミニウムが含有される金属溶湯から固体不純物を除去する場合に好適に使用することができる。
さらに、本実施の形態のアルミニウム溶湯用濾材は、透過促進層が焼成により生成した結晶状に形成されている。そして、この結晶が基材の表面(骨材の表面)に強固に結合しているため、透過促進層が基材から剥離し難く、耐久性が高い。また、透過促進層が結晶状に形成されているため、透過促進層を構成するシリカとアルミニウム溶湯に含有されるマグネシウムとの反応性が低下し、その反応物(酸化マグネシウム(MgO))の生成を抑えることができる。
アルミニウム合金溶湯はマグネシウムを含有しているものもあるため、アルミニウム溶湯用濾材に透過促進層の構成要素としてシリカが配設されていると、マグネシウムとシリカとが反応して酸化マグネシウム(MgO)となる。そして、アルミニウム溶湯を濾過することによりアルミニウム溶湯用濾材が目詰まりし始めたときに、その詰まりを解消するために、アルミニウム溶湯用濾材に不活性ガス等を、アルミニウム溶湯の透過方向と逆方向に透過させる(逆洗する)ことがあるが、このときに、不活性ガスの勢いで、基材の表面に配設されていた透過促進層が剥離・除去されることがある。そして、このときに剥離した透過促進層の一部又は全部が、上述のように酸化マグネシウム(MgO)に変成されていると、酸化マグネシウムは濾過時のアルミニウム溶湯中では固形物であるため、再度アルミニウム溶湯をアルミニウム溶湯用濾材で濾過するときに、固体状の酸化マグネシウム(MgO)が、アルミニウム溶湯用濾材の細孔を塞ぐことになり、アルミニウム溶湯用濾材が目詰まりしやすくなるという問題があった。そして、アルミニウム溶湯用濾材は、アルミニウム溶湯の濾過と不活性ガスによる上記逆洗を繰り返しながら使用していくと、徐々に詰まりが解消されなくなり、最後には濾過に使用できない程度まで詰まるが、本実施の形態のアルミニウム溶湯用濾材は、酸化マグネシウム(MgO)による詰まりが抑制されるため、そのような状態になるまでの寿命が長くなる(耐久性が向上する)。
従って、上述のように透過促進層を結晶状として酸化マグネシウム(MgO)の生成を抑えることにより、アルミニウム溶湯用濾材が目詰まりし難くなり、耐久性を向上させることができる。
本実施の形態のアルミニウム溶湯用濾材は、基材が針状結晶状であるため、基材と透過促進層との界面の形状が、表面積の大きな複雑な構造を有するものとなるため、より透過促進層と基材との結合が強固なものとなる。基材は、針状結晶状である必要はなく、その他の結晶系であってもよいし、非晶質であってもよい。
図1において、透過促進層3は、結晶状のシリカ含有組成物から構成され、シリカ含有組成物としては、シリカ、又はシリカとアルカリ成分との混合物が好ましい。結晶状のシリカ含有組成物は、結晶化されていないシリカ含有組成物を焼成することにより結晶状に形成されたものである。アルカリ成分としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム又はこれらを含有する化合物等を挙げることができる。上記化合物としては、ナトリウム、カリウム又はカルシウムの酸化物を挙げることができ、酸化ナトリウム(Na2O)を使用することが好ましい。透過促進層3は、シリカを0.1〜50質量%、アルカリ成分を15質量%以下そして溶媒を35〜99.9質量%含有するコート材が、焼成されることにより形成されることが好ましい。また、焼成されるコート材は、基材2の少なくとも流体(アルミニウム溶湯)の流入側表面上に配設されることが好ましい。これにより、簡易に、シリカ、又はシリカとアルカリ成分との混合物、からなる透過促進層3を形成することができる。また、上記溶媒としては、水、アルコール又はこれらの混合物等を使用することができる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコールやヘキサノール、オクタノール等の高級アルコールを使用することができる。
図1において、透過促進層3は、基材2の表面上に、細孔4を塞ぐことなく配設されているが、少なくとも基材2の流体の流入側(図1において、符号Fは流入する流体(アルミニウム溶湯)を示す)の表面上に配設されていることが好ましい。透過促進層3は、少なくとも基材2の流体(アルミニウム溶湯)の流入側の表面上に備えられることが好ましいが、さらに基材2の流体(アルミニウム溶湯)の流出側の表面上等の、他の面にも備えられていてもよい。図1においては、透過促進層3は、細孔4を塞がないように透過孔5が形成された膜状であるが、膜状である必要はなく、基材2の表面上に、細孔4を塞がないように不連続に点在していてもよい。ここで、細孔4が塞がれないとは、アルミニウム溶湯用濾材1でアルミニウム溶湯を濾過するときに、濾過効率が低下するほど塞がれていないことをいう。従って、微細な細孔径の細孔4が塞がれていたり、細孔4が部分的に覆われていたり、細孔4の内部に若干流入していたり、極一部の細孔4が塞がれていてもよい。このような場合は、アルミニウム溶湯の濾過効率に影響しないからである。
透過促進層3の厚さは、0.1〜300μmであることが好ましく、1〜30μmであることがさらに好ましく、1〜10μmであることが特に好ましい。0.1μmより薄いと、透過促進効果が低下することがあり、300μmより厚いと、細孔4が塞がれやすくなる。また、透過促進層3の厚さを、1〜10μmと薄くすると、上述のようにアルミニウム溶湯用濾材1を不活性ガス等で逆洗することにより透過促進層3が剥離しても、剥離した小片が薄いため、目詰まりの原因となり難い。さらに、透過促進層3は、基材2の表面上に僅かでも配設されていれば効果を発揮するが、できるだけ、基材2の流入側の表面上に均等に広がって(点在していてもよいし、膜状でもよい)配設されていることが好ましい。
基材2を構成する結合材は、骨材粒子を骨材粒子相互間に細孔4を形成した状態で結合し、その細孔4を経由して流体(アルミニウム溶湯)Fを透過させることを可能にしている。結合材にはシリカが5質量%以下含有されることが好ましい。5質量%より大きいと、アルミニウム溶湯とシリカが反応することにより、基材2が浸食されるため、アルミニウム溶湯用濾材1の耐食性が悪化することがある。すなわち、結合材中シリカの含有量を5質量%以下にすることにより、アルミニウム溶湯によるアルミニウム溶湯用濾材1の侵食を少なくすることができるため、優れた耐食性と優れた濾過効率とを両立させることができる。結合材は、三酸化二硼素を15〜80質量%、アルミナを2〜60質量%そして酸化マグネシウムを5〜50質量%、含有してなることが好ましい。酸化カルシウムを30質量%以下の割合で含有させてもよい。結合材がアルミニウム溶湯に浸食され難くなり、アルミニウム溶湯用濾材1が耐食性に優れたものとなるからである。
また、結合材は、その一部が透過促進層3に含有されるように形成されてもよい。すなわち、結合材が、シリカ含有組成物とともに、基材2の表面で焼成により結晶化し、透過促進層を形成してもよい。
基材2に形成される細孔4の最大細孔径は、200〜600μmが好ましい。200μmより小さいと、アルミニウム溶湯の濾過効率が悪くなることがある。600μmより大きいと、アルミニウム溶湯中に含まれる固形不純物がアルミニウム溶湯用濾材1を通過する可能性がある。最大細孔径は、以下の方法で測定されたものである。
(最大細孔径の測定方法)
円筒状(肉厚20mm)のアルミニウム溶湯用濾材を水槽に入れ(円筒の中心軸が略水平になるように設置する)、アルミニウム溶湯用濾材の上端部分から水面までが70mmとなるように水を加える。その後、アルミニウム溶湯用濾材の円筒の内部を空気により加圧していき、円筒の外周側から最初の気泡が発生したときの円筒内部の空気圧P(mmAq)及び気泡が発生した位置の水深h(mm)を測定する。そして、以下の計算式(1)により最大細孔径(μ)を求める。
最大細孔径(μ)=(2.97×100000)/(P−h) …(1)
円筒状(肉厚20mm)のアルミニウム溶湯用濾材を水槽に入れ(円筒の中心軸が略水平になるように設置する)、アルミニウム溶湯用濾材の上端部分から水面までが70mmとなるように水を加える。その後、アルミニウム溶湯用濾材の円筒の内部を空気により加圧していき、円筒の外周側から最初の気泡が発生したときの円筒内部の空気圧P(mmAq)及び気泡が発生した位置の水深h(mm)を測定する。そして、以下の計算式(1)により最大細孔径(μ)を求める。
最大細孔径(μ)=(2.97×100000)/(P−h) …(1)
基材2を構成する骨材粒子の原料としては、焼結アルミナ、電融アルミナ、炭化珪素、窒化珪素等を使用することができる。骨材粒子は平均粒径が900〜1400μmであることが好ましい。900μmより小さいと、基材2の細孔径4が小さくなることがある。1400μmより大きいと、基材2の細孔径4が大きくなることがある。平均粒径は、以下の方法で測定されたものである。
(平均粒径の測定方法)
JIS規格のふるいを使用して粒度分布を測定する。そして、測定した粒子の質量を粒径の小さい側から積算して、積算値が粒子全体の質量の50%に到達するときの、その50%の位置に相当する粒子の粒径を平均粒径とする。ここで、ふるいにより区分された各粒度範囲内(例えば、目開き1000μmオン且つ目開き1180μmアンダーの粒子群内)における粒子の粒度分布は均一であるとして粒子の質量を積算する。使用するふるいの目開きは、1400μm、1180μm、1000μm、850μm及び710μmである。
JIS規格のふるいを使用して粒度分布を測定する。そして、測定した粒子の質量を粒径の小さい側から積算して、積算値が粒子全体の質量の50%に到達するときの、その50%の位置に相当する粒子の粒径を平均粒径とする。ここで、ふるいにより区分された各粒度範囲内(例えば、目開き1000μmオン且つ目開き1180μmアンダーの粒子群内)における粒子の粒度分布は均一であるとして粒子の質量を積算する。使用するふるいの目開きは、1400μm、1180μm、1000μm、850μm及び710μmである。
次に本実施の形態のアルミニウム溶湯用濾材の製造方法を以下に示す。
本発明のアルミニウム溶湯用濾材の製造方法は、骨材粒子と結合材とを含有する基材原料を成形して乾燥前基材を形成し、乾燥前基材を乾燥させて乾燥基材を形成し、シリカ含有組成物からなるコート材を乾燥基材の表面に付着させて焼成前濾材を形成し、焼成前濾材を焼成することによって、骨材粒子が結合材によって細孔を形成した状態で結合されてなる基材の表面上に、コート材が焼成されて形成された透過促進層を配設してなるアルミニウム溶湯用濾材を得るものである。
このように、シリカ含有組成物からなるコート材を乾燥基材の表面に付着させて焼成前濾材を形成し、焼成前濾材を焼成してアルミニウム溶湯用濾材を作製したため、結晶状の透過促進層が基材の表面に形成される。そして、焼成により基材表面も結晶化されるため、透過促進層と基材との界面において双方が結晶化されることになり、透過促進層と基材との結合状態が強固なものとなる。これにより、基材から透過促進層が剥離し難くなり、基材から剥離した透過促進層が基材の細孔を塞ぐことにより基材を目詰まりさせることが抑制され、アルミニウム溶湯濾材の耐久性(使用時における濾過性の寿命)が向上する。また、透過促進層を結晶状に形成したため、マグネシウムとシリカとの反応生成物である酸化マグネシウム(MgO)の生成が抑制され、基材の細孔の目詰まりを抑制することができる。
また、基材を焼成した後にコート材を配設する等により、コート材を焼成せずにアルミニウム溶湯用濾材を作製した場合には、基材の凹凸に合わせてコート材の厚さが大きく変化し(例えば、コート材の外表面(外から見える部分)は平らでも、基材表面の窪んでいるところはコート材によりその窪みが埋められることになるため、その部分は厚くなる)、厚くなっている部分がMgOに変化すると、基材から透過促進層が剥離したときに、その部分が大きな固形物となりアルミニウム溶湯用濾材の細孔に詰まりやすくなる。これに対し、本実施の形態は、基材表面にコート材を配設した後に焼成しているため、焼成時にシリカ含有組成物が溶融することにより、基材表面(骨材表面)の凹凸に沿ってほぼ一定の厚さの層になる。そのため、仮に透過促進層がMgOに変化した後に基材から剥離したとしても、その厚さは薄く小さなものとなり、アルミニウム溶湯用濾材の細孔には詰まりにくいものとなる。
乾燥前基材の作製方法は以下の通りである。まず、骨材粒子100質量部に対して、結合材8〜20質量部、水5〜7質量部を配合し、混合・混練して基材原料を作製した後、所定形状の成形体(乾燥前基材)を作製する。この乾燥前基材を乾燥させて、乾燥基材を形成する。結合材としては、三酸化二硼素を15〜80質量%、アルミナを2〜60質量%そして酸化マグネシウムを5〜50質量%、含有するものであることが好ましい。酸化カルシウムを30質量%以下の割合で含有させてもよい。結合材がアルミニウム溶湯に浸食され難くなり、アルミニウム溶湯用濾材が耐食性に優れたものとなるからである。また、三酸化二硼素、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化カルシウムを上記組成とすることにより、焼成時に、結合材が1200〜1400℃の温度で溶融可能となり、その後の結晶化が適切に行われるため好ましい。また、骨材粒子100質量部に対し結合材を8〜20質量部を配合したのは、8質量部より少ないと、結合材が少ないため、熱膨張等により基材にクラックが生じることがあり、20質量部より多いと、結合材により細孔が塞がれ、濾過効率が悪くなることがあるからである。
基材表面に透過促進層を形成するためのコート材は、溶媒にシリカを添加してスラリー状にするか、又は溶媒にシリカ及びアルカリ成分を添加してスラリー状にする(コロイダルシリカとする)ことにより作製することができる。各成分の組成としては、シリカが0.1〜50質量%、アルカリ成分が15質量%以下そして溶媒が35〜99.9質量%であることが好ましい。シリカが0.1質量%より少ないと、シリカの量が少ないため透過促進層が充分に形成されないことがあり、50質量%より多いと、スラリー中の固形分が多くなるため、基材表面に均一に塗布(コート)し難くなることがある。アルカリ成分が15質量%より多いと、アルミニウム溶湯を濾過したときに、アルミニウム溶湯中に多くのアルカリ成分が溶出し、アルミニウムの特性を低下させることがある。シリカとしては、コロイダルシリカ等のシリコン化合物や、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸カルシウム等の珪酸塩等を使用することができる。溶媒としては水を使用することができる。また、熱により分解される、アルコール等の有機溶媒を使用することができる。アルカリ成分としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム又はこれらを含有する化合物等を使用することができる。
上記方法により作製された乾燥基材の表面上に、上記方法により作製されたコート材を塗布して付着させて焼成前濾材を形成し、焼成前濾材を以下の条件で焼成することにより、本実施の形態のアルミニウム溶湯用濾材を製造することができる。コート材は、少なくとも乾燥基材の、アルミニウム溶湯用濾材になったときの流入側に相当する部分の、表面上に塗布することが好ましい。また、基材にコート材を塗布する方法としては、スプレー法、ディッピング法、はけ塗り法等がある。スプレー法は、スプレーによりコート材を吹き付けて塗布するものである。ディッピング法は、基材をコート材に浸すことにより塗布するものである。はけ塗り法は、はけにコート材を付けて、そのコート材をはけで基材表面に塗布するものである。コート材を塗布し、その後に焼成を行ったときに、透過促進層の厚さが0.1〜300μmになるようにするのが好ましく、1〜30μmになるようにするのがさらに好ましく、1〜10μmになるようにするのが特に好ましい。また、透過促進層は、基材表面上に点在させてもよいし、膜状に形成してもよい。
焼成前濾材を焼成する条件としては、焼成前濾材を1200〜1400℃まで加熱して結合材を溶融させ、その後、800℃までを1時間あたり30〜70℃の冷却速度にて冷却することにより結合材を結晶化させることが好ましい。このときに、基材表面に配設されたコート材に含有されるシリカも同時に結晶化させる。これにより、骨材粒子が結合材により骨材粒子相互間に細孔を形成した状態で結合された基材が形成されると同時に、結晶化されたシリカが基材表面に強固に結合して透過促進層が形成される。800℃まで冷却した後は、自然冷却し、アルミニウム溶湯用濾材を得る。
本発明のアルミニウム溶湯用濾材は、上述のように、乾燥基材にコート材を付着させてから焼成することが好ましいが、乾燥基材を焼成してからコート材を付着させ、その後、さらに全体を焼成してもよい。
その場合の乾燥基材の焼成条件及び乾燥基材にコート材を付着させたものの焼成条件は、いずれも上記焼成前濾材の焼成条件とすることが好ましい。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜4)
骨材粒子100質量部に対して、結合材15質量部、水6質量部を配合し、混練機により混練した後、縦打ち成形機により成形することにより、円筒状の乾燥前基材を作製した。そして、この乾燥前基材を80℃で乾燥させて乾燥基材を作製した。結合材は、三酸化二硼素を45質量%、アルミナを30質量%そして酸化マグネシウムを25質量%、含有するものとした。骨材粒子としては、平均粒径1200μmの焼結アルミナを使用した。
骨材粒子100質量部に対して、結合材15質量部、水6質量部を配合し、混練機により混練した後、縦打ち成形機により成形することにより、円筒状の乾燥前基材を作製した。そして、この乾燥前基材を80℃で乾燥させて乾燥基材を作製した。結合材は、三酸化二硼素を45質量%、アルミナを30質量%そして酸化マグネシウムを25質量%、含有するものとした。骨材粒子としては、平均粒径1200μmの焼結アルミナを使用した。
透過促進層を形成するためのコート材としては、コロイダルシリカを使用した。コロイダルシリカの組成は、シリカ(SiO2)20質量%、アルカリ成分(Na2O)0.04質量%とし、残りは水とした。
上記コート材を、上記円筒状の乾燥基材の外周面に、スプレーすることにより塗布し、80℃で乾燥させて、焼成前濾材を形成した。
上記焼成前濾材を焼成してアルミニウム溶湯用濾材を作製した。焼成条件としては、上記焼成前濾材を1350℃まで加熱して、コート材及び結合材を溶融させ、その後、30〜70℃/時間の冷却速度で800℃まで冷却することにより、コート材及び結合材を結晶化させた。そして、その後、常温まで自然冷却させた。
上述の方法で、透過促進層の厚さが、3μm、10μm、100μm及び300μmとなる、4種類のアルミニウム溶湯用濾材を作製した(実施例1〜4)。透過促進層の厚さはコート材のスプレー量により調節した。
このようにして、骨材粒子が結合材により骨材粒子相互間に細孔を形成した状態で結合され、透過促進層が結晶状に形成された、図2に示すような円筒状の、アルミニウム溶湯用濾材1を作製した。図2に示すように、作製したアルミニウム溶湯用濾材1は、円筒状の基材2の外周面6に透過促進層3が配設された形状とした。円筒状の基材2の中心軸方向における長さを870mm、中心軸方向に垂直な平面で切断した断面(リング状)の外周の直径を100mm、内周の直径を60mmとした。
ここで、図2に示す符号Fは、流入する流体を示し、符号fは、流出する流体を示す。すなわち、本実施例のアルミニウム溶湯用濾材1によれば、円筒状の基材の外周面(流入側表面)6から、流体Fがアルミニウム溶湯用濾材内に流入し、円筒状の基材の内周面(流出側表面)7から円筒の内部側9に流体fとして流出し、アルミニウム溶湯用濾材で濾過された流体fが円筒状の基材2の開口部8から円筒の外部に排出される。
透過促進層3の厚さの測定は以下のように行った。円筒状の基材の、開口部8付近、長手方向中央部付近及び閉口部10付近の3箇所から輪切りサンプル11(図3参照)を切り出し、図3に示すように、各輪切りサンプル11から、等間隔に4箇所のサンプリング片12を採取した。そして、各サンプリング片12の透過促進層3について3箇所ずつ、透過促進層3の厚さを電子顕微鏡で観察することにより測定し、得られた測定値を平均して透過促進層3の厚さとした。
(比較例1〜4)
実施例1と同様の方法で、円筒状の乾燥基材を作製し、コート材を塗布せずに乾燥基材を実施例1と同様の方法で焼成した。得られた、乾燥基材を焼成したものの外周面に実施例1と同様のコート材をスプレーすることにより塗布し、80℃で乾燥して、透過促進層を形成することにより、円筒状のアルミニウム溶湯用濾材を作製した。
実施例1と同様の方法で、円筒状の乾燥基材を作製し、コート材を塗布せずに乾燥基材を実施例1と同様の方法で焼成した。得られた、乾燥基材を焼成したものの外周面に実施例1と同様のコート材をスプレーすることにより塗布し、80℃で乾燥して、透過促進層を形成することにより、円筒状のアルミニウム溶湯用濾材を作製した。
上述の方法で、透過促進層の厚さが、3μm、10μm、100μm及び300μmとなる、4種類のアルミニウム溶湯用濾材を作製した(比較例1〜4)。透過促進層の厚さはコート材のスプレー量により調節した。
(比較例5)
実施例1と同様の方法で、円筒状の乾燥基材を作製し、コート材を塗布せずに乾燥基材を実施例1と同様の方法で焼成してアルミニウム溶湯用濾材を作製した(比較例5)。
実施例1と同様の方法で、円筒状の乾燥基材を作製し、コート材を塗布せずに乾燥基材を実施例1と同様の方法で焼成してアルミニウム溶湯用濾材を作製した(比較例5)。
(含浸率及び反応度合の測定)
上記方法により得られたアルミニウム溶湯用濾材(実施例1〜4、比較例1〜5)を、800℃で溶融させたアルミニウム合金(JIS5056)中で24時間保持し、以下の方法で、含浸率、反応度合を測定した。結果を表1に示す。
上記方法により得られたアルミニウム溶湯用濾材(実施例1〜4、比較例1〜5)を、800℃で溶融させたアルミニウム合金(JIS5056)中で24時間保持し、以下の方法で、含浸率、反応度合を測定した。結果を表1に示す。
(含浸率の測定)
含浸率(体積%):含浸率(体積%)とは、アルミニウム溶湯用濾材にアルミニウム溶湯(アルミニウム合金溶湯)を流したとき(細孔内にアルミニウム溶湯が流入したとき)、アルミニウム溶湯用濾材の所定の部分において、アルミニウム溶湯を流す前の細孔の体積(気孔率)に対する、アルミニウム溶湯により細孔が満たされている(埋められている)部分の細孔の体積(気孔率)の比率(体積%)をいう。ここで、アルミニウム溶湯用濾材の所定の部分とは、円筒状の基材の中心軸方向における中央部の40mmの範囲をいう。
含浸率(体積%):含浸率(体積%)とは、アルミニウム溶湯用濾材にアルミニウム溶湯(アルミニウム合金溶湯)を流したとき(細孔内にアルミニウム溶湯が流入したとき)、アルミニウム溶湯用濾材の所定の部分において、アルミニウム溶湯を流す前の細孔の体積(気孔率)に対する、アルミニウム溶湯により細孔が満たされている(埋められている)部分の細孔の体積(気孔率)の比率(体積%)をいう。ここで、アルミニウム溶湯用濾材の所定の部分とは、円筒状の基材の中心軸方向における中央部の40mmの範囲をいう。
アルミニウム溶湯用濾材の所定の部分の細孔の体積(気孔率)は、上記円筒状の基材の中心軸方向における中央部の40mmの範囲を、中心軸に垂直な平面で切り出して、測定用のサンプルとし、JIS R2205の「耐火れんがの見掛気孔率・吸水率・比重の測定方法」に準拠して測定した。そして、アルミニウム溶湯を流す前のアルミニウム溶湯用濾材の細孔の体積(気孔率)は、アルミニウム溶湯を流す前のアルミニウム溶湯用濾材について、上記JIS R2205に準拠した方法で測定した。得られたアルミニウム溶湯を流す前の気孔率からアルミニウム溶湯を流した後の気孔率を引いて、差を求め、得られた当該差をアルミニウム溶湯を流す前の気孔率で除して100倍した値を含浸率とした。
(反応度合の測定)
反応度合(%):反応度合(%)とは、試験前のアルミニウム溶湯用濾材の結晶厚から試験後のアルミニウム溶湯用濾材の結晶厚を差し引いて差を求め、その差を、試験前のアルミニウム溶湯用濾材の結晶厚で除して100倍した値である。ここで、アルミニウム溶湯用濾材において、骨材粒子はその表面に結合材がコーティングされた状態で結合されており、その結合材によるコーティングの厚さを「結晶厚」という。「結晶厚」は、上記透過促進層の厚さの測定の場合と同様にして測定することができる。そして、表1に記載の、「極少」は「0〜3%」、「少」は「3%より大きく、10%以下」、「中」は「10%より大きい」を、それぞれ示す。
反応度合(%):反応度合(%)とは、試験前のアルミニウム溶湯用濾材の結晶厚から試験後のアルミニウム溶湯用濾材の結晶厚を差し引いて差を求め、その差を、試験前のアルミニウム溶湯用濾材の結晶厚で除して100倍した値である。ここで、アルミニウム溶湯用濾材において、骨材粒子はその表面に結合材がコーティングされた状態で結合されており、その結合材によるコーティングの厚さを「結晶厚」という。「結晶厚」は、上記透過促進層の厚さの測定の場合と同様にして測定することができる。そして、表1に記載の、「極少」は「0〜3%」、「少」は「3%より大きく、10%以下」、「中」は「10%より大きい」を、それぞれ示す。
実施例1〜4及び比較例1〜4のアルミニウム溶湯用濾材(いずれもシリカ含有組成物から構成される透過促進層を備えている)は含浸率が高く、それに対し、比較例5のアルミニウム溶湯用濾材(透過促進層を備えていない)は含浸率が低い。含浸率が高いということは、基材の細孔が、流体によりよく濡れて、流体の透過性が良好であるということを示している。それゆえ、基材の表面に透過促進層を備えることにより、アルミニウム溶湯(アルミニウム合金溶湯)による基材の細孔の濡れ性がよくなり、アルミニウム溶湯の透過性が良好になるといえる。そして、実施例1〜4と比較例1〜4との比較より、シリカ含有組成物から構成される透過促進層が結晶化されているか否かは、含浸率には大きくは影響しないことがわかる。
実施例1〜4の反応度合と、比較例1〜4の反応度合とを、同じ透過促進層の厚さ同士で比較すると、実施例1〜4の反応度合のほうが少なくなっている。これにより、実施例1〜4のアルミニウム溶湯用濾材の透過促進層が、焼成により結晶化したシリカ含有組成物から構成されるため、アルミニウム溶湯に溶出しにくくなっていることがわかる。また、結晶化したシリカ含有組成物は、アルミニウム溶湯に含有されるMgとも反応しにくいことも、反応度合を少なくしている要因考えられる。また、実施例1〜4の反応度合は、比較例5の反応度合と比較しても、若干多くなっている程度で、大きくは変わらないことがわかる。
(濾過耐久性試験)
上記方法により得られたアルミニウム溶湯用濾材(実施例1〜4、比較例1〜5)に、800℃で溶融させたアルミニウム合金(JIS5056)を20kg/min・本の速度(所定速度)で流す(図2において、流体Fとして流入し、流体fとして流出する)。そして、濾過速度が低下したところで、アルミニウム溶湯用濾材の円筒の下側から上側へアルゴンガスを流して、アルミニウム溶湯用濾材の詰まり解消する。そして、さらに、アルミニウム合金を所定速度で流すという操作を繰り返し、アルゴンガスを流してもアルミニウム溶湯用濾材の詰まりが解消されなくなった(アルミニウム合金の濾過速度が所定速度にもどらない)ところで、試験終了とした。そして、アルミニウム合金を流し始めた時から試験終了までの通過トン数(トン/本)を評価尺度とした。結果を表1に示す。
上記方法により得られたアルミニウム溶湯用濾材(実施例1〜4、比較例1〜5)に、800℃で溶融させたアルミニウム合金(JIS5056)を20kg/min・本の速度(所定速度)で流す(図2において、流体Fとして流入し、流体fとして流出する)。そして、濾過速度が低下したところで、アルミニウム溶湯用濾材の円筒の下側から上側へアルゴンガスを流して、アルミニウム溶湯用濾材の詰まり解消する。そして、さらに、アルミニウム合金を所定速度で流すという操作を繰り返し、アルゴンガスを流してもアルミニウム溶湯用濾材の詰まりが解消されなくなった(アルミニウム合金の濾過速度が所定速度にもどらない)ところで、試験終了とした。そして、アルミニウム合金を流し始めた時から試験終了までの通過トン数(トン/本)を評価尺度とした。結果を表1に示す。
表1より、実施例1〜4は、比較例1〜4と比較すると、いずれの透過促進層の厚さにおいても耐久時間が長いことがわかる。これは、結晶化したシリカ含有組成物は、アルミニウム溶湯に含有されるMgと反応しにくいため、実施例1〜4のアルミニウム溶湯用濾材は、MgOの生成量が少ないと考えられ(比較例1〜4はシリカ含有組成物が結晶化されていないためMgOが多いと考えられる)、これにより、実施例1〜4のアルミニウム溶湯用濾材はMgOによる詰まりが少なく、通過トン数が多くなったと考えられる。また、比較例5は、透過促進層を有していないため、濡れ性が悪く、アルミニウムを濾過するに十分な有効な濾過容積が得られず、詰りやすくなり通過トン数が少なくなったと考えられる。
アルミニウムの生産、加工工程において、アルミニウム溶湯を濾過する場合に利用することができ、アルミニウム溶湯を濾過するときの濾過効率に優れ、さらに耐久性にも優れたアルミニウム溶湯用濾材として利用することが可能である。
1…アルミニウム溶湯用濾材、2…基材、3…透過促進層、4…細孔、5…透過孔、6…円筒状の基材の外周面、7…円筒状の基材の内周面、8…開口部、9…円筒の内部側、10…閉口部、11…輪切りサンプル、12…サンプリング片、F…流体、f…流体。
Claims (21)
- 骨材粒子が、結合材によって細孔を形成した状態で結合された構成を有するとともに、前記細孔を経由して流体を透過させることが可能な機能を有する基材を備えてなるアルミニウム溶湯用濾材であって、
前記基材の表面上に、焼成により生成した結晶状のシリカ含有組成物を含有する透過促進層が、前記細孔を塞ぐことなく配設されてなるアルミニウム溶湯用濾材。 - 前記透過促進層が、少なくとも前記流体の流入側の前記基材表面上に配設されてなる請求項1に記載のアルミニウム溶湯用濾材。
- 前記透過促進層が、シリカを0.1〜50質量%、アルカリ成分を15質量%以下そして溶媒を35〜99.9質量%含有するコート材が、焼成されることにより形成されてなる請求項1又は2に記載のアルミニウム溶湯用濾材。
- 前記溶媒が、水、アルコール、又はこれらの混合物である請求項3に記載のアルミニウム溶湯用濾材。
- 前記アルカリ成分がナトリウム、カリウム、カルシウム又はこれらを含有する化合物である請求項3又は4に記載のアルミニウム溶湯用濾材。
- 前記透過促進層が、結晶状の結合材をさらに含有してなる請求項1〜5のいずれかに記載のアルミニウム溶湯用濾材。
- 前記透過促進層に含有される前記結晶状の結合材が、結合材が焼成されて形成されてなる請求項6に記載のアルミニウム溶湯用濾材。
- 前記透過促進層の厚さが、0.1〜300μmである請求項1〜7のいずれかに記載のアルミニウム溶湯用濾材。
- 前記結合材が、シリカを5質量%以下含有してなる請求項1〜8のいずれかに記載のアルミニウム溶湯用濾材。
- 前記結合材が、三酸化二硼素を15〜80質量%、アルミナを2〜60質量%そして酸化マグネシウムを5〜50質量%、含有してなる請求項1〜9のいずれかに記載のアルミニウム溶湯用濾材。
- 前記骨材粒子の原料が焼結アルミナ、電融アルミナ、炭化珪素又は窒化珪素である請求項1〜10のいずれかに記載のアルミニウム溶湯用濾材。
- 骨材粒子と結合材とを含有する基材原料を成形して乾燥前基材を形成し、前記乾燥前基材を乾燥させて乾燥基材を形成し、シリカ含有組成物からなるコート材を前記乾燥基材の表面に付着させて焼成前濾材を形成し、前記焼成前濾材を焼成して、
前記骨材粒子が前記結合材によって細孔を形成した状態で結合されてなる基材の表面上に、前記コート材が焼成されて形成された透過促進層を配設してなるアルミニウム溶湯用濾材を得るアルミニウム溶湯用濾材の製造方法。 - 前記焼成前濾材を焼成するときの焼成条件を、前記焼成前濾材を1200〜1400℃まで加熱して前記結合材を溶融させ、その後800℃までを30〜70℃/時間の冷却速度で冷却した後、自然冷却する条件とする請求項12に記載のアルミニウム溶湯用濾材の製造方法。
- 前記透過促進層が、結晶状に形成されてなる請求項12又は13に記載のアルミニウム溶湯用濾材の製造方法。
- 前記コート材の成分として、シリカを0.1〜50質量%、アルカリ成分を15質量%以下そして溶媒を35〜99.9質量%含有させ、前記コート材を前記乾燥基材の表面に付着させた状態で焼成して前記透過促進層を形成する請求項12〜14のいずれかに記載のアルミニウム溶湯用濾材の製造方法。
- 前記溶媒を、水、アルコール、又はこれらの混合物とする請求項15に記載のアルミニウム溶湯用濾材の製造方法。
- 前記アルカリ成分をナトリウム、カリウム、カルシウム又はこれらを含有する化合物とする請求項15又は16に記載のアルミニウム溶湯用濾材の製造方法。
- 前記透過促進層の厚さを、0.1〜300μmとする請求項12〜17のいずれかに記載のアルミニウム溶湯用濾材の製造方法。
- 前記結合材のシリカ含有率を5質量%以下とする請求項12〜18のいずれかに記載のアルミニウム溶湯用濾材の製造方法。
- 前記結合材の成分として、三酸化二硼素を15〜80質量%、アルミナを2〜60質量%そして酸化マグネシウムを5〜50質量%、含有させる請求項12〜19のいずれかに記載のアルミニウム溶湯用濾材の製造方法。
- 前記骨材粒子の原料を、焼結アルミナ、電融アルミナ、炭化珪素又は窒化珪素とする請求項12〜20のいずれかに記載のアルミニウム溶湯用濾材の製造方法。
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WO2011043150A1 (ja) * | 2009-10-09 | 2011-04-14 | 三井金属鉱業株式会社 | アルミニウム溶湯用ろ過フィルター |
-
2004
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