JP2005271485A - インクジェット記録用媒体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 インク吸収性能の高いインクジェット記録用媒体を提供する。
【解決手段】 支持体上に、少なくとも気相法シリカと水溶性樹脂とを含むインク受容層を有するインクジェット記録用媒体であって、前記気相法シリカのシラノール基密度が1.0〜2.3〔個SiOH/nm2〕であることを特徴とするインクジェット記録用媒体である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、水性インク、油性インク等の液状インクや、常温では固体であり、溶融液状化させて印画に供する固体状インク等を用いたインクジェット記録に適した被記録用媒体に関し、詳しくは、インク受容性能に優れたインクジェット記録用媒体に関する。
近年、情報産業の急速な発展に伴い、種々の情報処理システムが開発され、その情報システムに適した記録方法および装置も開発され、各々実用化されている。
上記記録方法の中で、インクジェット記録方法は、多種の記録材料に記録可能なこと、ハード(装置)が比較的安価であること、コンパクトであること、静粛性に優れること等の点から、オフィスは勿論、いわゆるホームユースにおいても広く用いられてきている。
また、近年のインクジェットプリンタの高解像度化に伴い、いわゆる写真ライクな高画質記録物を得ることも可能になっている。更に、ハード(装置)の発展に伴って、インクジェット記録用の記録媒体も各種開発されてきている。
上記インクジェット記録用の記録媒体に要求される特性としては、一般的に、(1)速乾性があること(インクの吸収速度が大きいこと)、(2)インクドットの径が適正で均一であること(ニジミのないこと)、(3)粒状性が良好であること、(4)ドットの真円性が高いこと、(5)色濃度が高いこと、(6)彩度が高いこと(くすみのないこと)、(7)印画部の耐光性、耐ガス性、耐水性が良好なこと、(8)記録媒体の白色度が高いこと、(9)記録媒体の保存性が良好なこと(長期保存で黄変着色を起こさないこと、長期保存で画像がにじまないこと)、(10)変形しにくく、寸法安定性が良好であること(カールが十分小さいこと)、(11)ハード走行性が良好であること等が挙げられる。更に、いわゆる写真ライクな高画質記録物を得る目的で用いられるフォト光沢紙の用途としては、上記特性に加えて、光沢性、表面平滑性、銀塩写真に類似した印画紙状の風合い等も要求される。
上述の要求を満たすインクジェット記録用媒体としては、支持体上に少なくとも、気相法シリカを含有するインク受容層を有するインクジェット記録用媒体が知られている(例えば、特許文献1〜2参照。)。
このように、気相法シリカを含有するインク受容層を有するインクジェット記録用材料は、光沢が高いこと、インク吸収性が良好なことから広く用いられている。
一方、写真画質の画像を再現するため、近年ではインクジェット記録媒体に、写真画質用インクジェットプリンターのインク(吐出量約20ml/m2)を十分に吸収できる程度のインク吸収能が求められている。このため、従来ではインク受容層の塗布層厚みを30〜40μmとすることで所望のインク吸収能を確保していた。しかし、インク受容層の塗布厚みを厚くするとその結果として、インクジェット記録用媒体のカールの悪化や、ひび割れ等の欠陥が発生しやすい等の課題が発生してしまう。
上述の課題のうちカールについては、支持体として用いられる樹脂被膜紙(RCペーパー)の表裏に設けられるポリエチレン層の厚みの最適化や、原紙の含水分の調整、または、原紙抄紙時の叩解度調節によって解決が図られている。また、上述の課題のうち、ひび割れに関しては、ポリビニルアルコールの可塑剤を添加したり、低Tgエマルションを添加したりすることで解決が図られている。
しかし、従来と同等のシリカ使用量でインク吸収容量を増加させることができれば、従来と同程度のインク受容能を有するインク受容層を、より薄い塗布層厚みで実現することが可能となり、インクジェット用記録媒体のカールやひび割れ等の欠陥の発生を防ぐことが可能になる。一方、シリカの単位使用量当たりのインク吸収容量が大きいことは、インクジェット記録用媒体の更なるインク吸収性の向上、ビーディングの減少およびブロンジングの減少を実現できることから好ましく、更なるインク吸収性能の向上が求められている。
特開2001−96897号公報 特開2002−127593号公報
上述の諸問題を解決すべく、本発明は、インク吸収性能の高いインクジェット記録用媒体を提供することを目的とする。
本発明者は、気相法シリカの有するシラノール基の数を制御し、インク受容層の空隙率を高くすることで、インク吸収性が向上することを見いだし、本発明に至った。上記課題は下記の手段によって解決される。
<1> 支持体上に、少なくとも気相法シリカと水溶性樹脂とを含むインク受容層を有するインクジェット記録用媒体であって、前記気相法シリカのシラノール基密度が1.0〜2.3〔個SiOH/nm2〕であることを特徴とするインクジェット記録用媒体である。
<2> 前記気相法シリカは、アルキルシラン処理を施されたものであることを特徴とする上記<1に記載のインクジェット記録用媒体である。
<3> 前記水溶性樹脂は、ポリビニルアルコールであることを特徴とする上記<1>または<2>のインクジェット記録用媒体である。
<4> 前記インク受容層は、さらに硬膜剤とカチオン性樹脂とを含むことを特徴とする上記<1>〜<3>のインクジェット記録用媒体である。
<5> 前記硬膜剤は、ホウ素化合物であることを特徴とする上記<4>のインクジェット記録用媒体である。
<6> 前記インク受容層は、さらに水溶性金属化合物を含むことを特徴とする上記<1>〜<5>のインクジェット記録用媒体である。
<7> 前記水溶性金属化合物は、アルミニウム塩およびジルコニウム塩から選択される化合物の少なくとも1種であることを特徴とする上記<6>のインクジェット記録用媒体である。
<8> 前記アルミニウム塩は、ポリ塩化アルミニウムであることを特徴とする上記<7>のインクジェット記録用媒体である。
<9> 前記インク受容層は、さらに水溶性イオウ化合物を含むことを特徴とする上記<1>〜<8>のインクジェット記録用媒体である。
<10> 前記水溶性イオウ化合物は、下記一般式(1)および下記一般式(2)の少なくともいずれかで表わされることを特徴とする上記<9>のインクジェット記録用媒体である。
X−Y−S−CH2−CH2−S−Y−X 一般式(1)
X−Y−S−S−Y−X 一般式(2)
〔式中、Xはそれぞれ独立にヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸塩基、アシル基、アミノ基、チオカルバモイル基、スルファモイル基またはスルホアミノ基を表わす。Yは、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキレン基を表わす。〕
<11>
前記気相法シリカのBET比表面積は、180m2/g以上であることを特徴とする上記<1>〜<10>のインクジェット記録用媒体である。
本発明によれば、インク吸収能の高いインクジェット記録用媒体を提供することができる。
以下、本発明のインクジェット記録用媒体について詳細に説明する。
本発明のインクジェット記録用媒体は、支持体上に、少なくとも気相法シリカと水溶性樹脂とを含むインク受容層を有し、上記気相法シリカのシラノール基密度が1.0〜2.3〔個SiOH/nm2〕であることを特徴とする。
本発明のインクジェット記録用媒体は、インク受容層にシラノール基密度が1.0〜2.3〔個SiOH/nm2〕である気相法シリカ(以下、「本発明における気相法シリカ」という場合がある。)を含むことで、インク吸収速度やインク吸収容量等のインク吸収能を向上させることができる。また、本発明のインクジェット記録用媒体は係るインク吸収能の向上に伴って、ビーディングおよびブロンズ光沢の発生を抑制することができ、更に、形成画像の色濃度および耐オゾン性を向上させることができる。
<インク受容層>
本発明におけるインク受容層は、少なくとも、シラノール基密度が1.0〜2.3〔個SiOH/nm2〕である気相法シリカと、水溶性樹脂とを含有し、必要に応じて上記気相法シリカ以外のその他の無機微粒子、硬膜剤、カチオン性樹脂、水溶性金属化合物、水溶性イオウ化合物、媒染剤、界面活性剤等を含有していてもよい。
−気相法シリカ−
通常、シリカ微粒子は、その製造法により湿式法粒子と乾式法(気相法)粒子とに大別される。上記湿式法では、ケイ酸塩の酸分解により活性シリカを生成し、これを適度に重合させ凝集沈降させて含水シリカを得る方法が主流である。一方、気相法は、ハロゲン化珪素の高温気相加水分解による方法(火炎加水分解法)、ケイ砂とコークスとを電気炉中でアークによって加熱還元気化し、これを空気で酸化する方法(アーク法)によって無水シリカを得る方法が主流である。本発明における「気相法シリカ」とは当該気相法によって得られた無水シリカ微粒子を意味する。
また、上記気相法シリカは、上記含水シリカと表面のシラノール基の密度、空孔の有無等に相違があり、異なった性質を示すため、空隙率が高い三次元構造を形成するのに適している。この理由は明らかではないが、含水シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が5〜8〔個SiOH/nm2〕と多く、シリカ微粒子が密に凝集(アグリゲート)し易いのに対し、従来のインク受容層に用いられていた気相法シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が2.5〜3〔個SiOH/nm2〕程度であるため疎な軟凝集(フロキュレート)となり、その結果、空隙率が高い構造になるものと推定される。尚、本発明においては、シラノール基密度が1.0〜2.3〔個SiOH/nm2〕と更に小さくかさ高い気相法シリカを用いるため、空隙率の高い三次元構造が形成され、従来の気相法シリカ(シラノール基の密度が2.5〜3〔個SiOH/nm2〕程度の気相法シリカ)を用いた場合と比較してインク吸収能が高いインク受容層を形成することができる。
ここで、「シラノール基密度」とは、シリカ微粒子表面における1nm2当たりのシラノール基の個数を意味する。本発明における気相法シリカのシラノール基密度は1.0〜2.3〔個SiOH/nm2〕である。気相法シリカのシラノール基密度が1.0未満であると、水系溶媒での分散が困難となり、凝集が生じやすくなるため、インク受容層の光沢が低下してしまい、写真紙ライクな画像を得ることができなくなる。また、上記シラノール基密度が2.3を越えると、インク吸収能が低下するのに伴い、ビーディングやブロンズ光沢の発生が顕著になり、形成画像の色濃度や耐オゾン性が低下してしてしまう。
本発明における気相法シリカのシラノール基密度としては、分散性、光沢およびインク吸収能の観点から、1.5〜2.3〔個SiOH/nm2〕が好ましく、1.5〜1.9〔個SiOH/nm2〕が更に好ましい。また、気相法シリカのシラノール基密度は、例えば、「TECHNICAL BULLETIN AEROSIL NO.17「AEROSILの基本性能」P.41、日本アエロジル(株)」に記載のリチウムアルミニウムハイドライド法によって測定することができる。
また、上記気相法シリカは、比表面積が特に大きいので、インクの吸収性、保持の効率が高く、また、屈折率が低いので、適切な粒子径まで分散をおこなえばインク受容層に透明性を付与でき、高い色濃度と良好な発色性を得ることができる。インク受容層が透明であることは、OHP等透明性が必要とされる用途のみならず、フォト光沢紙等の記録用シートに適用する場合でも、高い色濃度と良好な発色性および光沢とを得る観点から好ましい。
上記気相法シリカの平均一次粒子径としては20nm以下であることが好ましく、10nm以下であることが更に好ましく、3〜10nmであることが最も好ましい。上記気相法シリカは、シラノール基による水素結合によって粒子同士が付着しやすいため、平均一次粒子径が20nm以下の場合に空隙率の大きい構造を形成することができる。
また、本発明における気相法シリカのBET比表面積は、180m2/g以上であることが好ましく、さらに好ましくは200m2/g以上であり、特に250m2/g以上であることが好ましい。本発明における気相法シリカのBET比表面積が180m2/g以上であると、インク受容層の透明性を向上させることができ、例えばレジンコート紙等の白色支持体を用いた場合に印画濃度を向上させることができる。
なお、本発明において「BET比表面積」とは、自動BET比表面積測定装置(商品名:Soptpmatic series 1800、CARLO−ERBA社製)を用い、サンプルに対して単分子層で吸着する窒素ガス吸着量Vm[ml/g]を求め、下記の式(A)で求められた値を意味する。
BET比表面積=4.35×Vm[ml/g]
シラノール基密度が1.0〜2.3〔個SiOH/nm2〕である本発明における気相法シリカは、例えば、特開平9−71411号公報、特開2000−19131号公報、特開2000−264621号公報、特開2002−256170号公報等に記載の方法を適宜選定することにより形成することができる。本発明においては、特に、表面処理を施していない通常の気相法シリカにアルキルシラン処理を施して、本発明における気相法シリカを形成することが好ましい。ここで、「アルキルシラン処理」とは、本発明における気相法シリカを得ることを目的として、シリカ微粒子に対して施すアルキルシランを用いた処理を意味する。
上記アルキルシラン処理を施して本発明における気相法シリカを形成する代表的な方法について説明する。但し、本発明における気相法シリカの形成方法はこれに限定されるものではない。かかる方法は、表面処理を施していない通常の気相法シリカにアルキルシランの蒸気を接触させる方法であり、アルキルシランの蒸気を窒素等の不活性ガスによって希釈することで、シリカ微粒子の表面におけるシラノール基の個数を制御することができる。上記アルキルシランとしては公知のアルキルシランを適宜選定して用いることができる。上記アルキルシランとしては、例えば、モノメチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、およびこれらの混合物等を挙げることができ、モノメチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、またはこれらの混合物が好ましい。
また、上記アルキルシランを用いる方法における反応温度としては、300〜650℃程度が好ましい。具体的には、上記アルキルシランとして、モノメチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、または、モノメチルトリクロロシランとジメチルジクロロシランとの混合物を用いる場合には、400〜500℃の範囲が好ましい。また、本発明においてアルキルシランの蒸気中におけるアルキルシランと不活性ガスとの含有比(mol)は、シラン微粒子表面1nm2当たりのシラノール基数を1.0〜2.3個の範囲内に制御する観点から、適宜実験的に決定することができる。
また、上記アルキルシラン処理としては、上述のアルキルシランの蒸気を用いる方法(気相方法)に加えて、ヘキサン等の溶媒中で表面処理を施していない通常の気相法シリカと上記アルキルシランとを反応させる方法(液相方法)も用いることができる。
−他の無機微粒子−
本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲で本発明における気相法シリカと、他の無機微粒子とを併用してもよい。該他の無機微粒子の具体例としては、表面処理を施していない通常の気相法シリカ、含水シリカ微粒子、コロイダルシリカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ベーマイト、擬ベーマイト等が挙げられる。
上記他の無機微粒子を本発明における気相法シリカと併用する場合、本発明における気相法シリカおよび他の無機微粒子の総量に対する本発明における気相法シリカの含有量は、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。
本発明において、上記インク受容層における本発明における気相法シリカの含有量としては、インク吸収能、ビーディング、ブロンジングの観点から、40〜85質量%が好ましく、50〜75質量%が更に好ましい。
−水溶性樹脂−
本発明に用いられる水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアセタール、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等〕、キチン類、キトサン類、デンプン;エーテル結合を有する樹脂であるポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE);アミド基またはアミド結合を有する樹脂であるポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、並びに、解離性基としてカルボキシル基を有する、ポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でもポリビニルアルコールが好ましく、該ポリビニルアルコールと他の水溶性樹脂とを併用する場合、全水溶性樹脂中、ポリビニルアルコールの含有量は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることが更に好ましい。
上記ポリビニルアルコールとしては、ポリビニルアルコール(PVA)に加えて、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコールおよびその他ポリビニルアルコールの誘導体も含まれる。上記ポリビニルアルコールは1種単独でもよいし、2種以上を併用してもよい。尚、上記ポリビニルアルコールを2種以上併用する場合、重合度1000以下のポリビニルアルコールと重合度2000以上のポリビニルアルコールとを併用することも好ましい。このように、重合度1000以下のポリビニルアルコールと重合度2000以上のポリビニルアルコールとを併用することで、無機微粒子の凝集(ポバールショック)を低減することができる。
上記ポリビニルアルコールは、その構造単位に水酸基を有するが、この水酸基と本発明における気相法シリカ表面のシラノール基とが水素結合を形成して、本発明における気相法シリカの二次粒子を鎖単位とする三次元網目構造を形成しやすくする。これは上記三次元網目構造の形成によって、空隙率の高い多孔質構造のインク受容層を形成しうると考えられる。更に、本発明の気相法シリカの疎水性部とポリビニルアルコールのアセチル基が疎水結合を形成し、より一層空隙率の高い多孔質構造を形成しうるものとも推測される。
インクジェット記録において、上述のようにして得た多孔質のインク受容層は、毛細管現象によって急速にインクを吸収し、インクニジミのない真円性の良好なドットを形成することができる。
上記ポリビニルアルコール(水溶性樹脂)の含有量としては、該含有量の過少による、膜強度の低下や、乾燥時のひび割れを防止し、更に、該含有量の過多によって、該空隙が樹脂によってふさがれやすくなり、空隙率が減少することでインク吸収性が低下するのを防止する観点から、インク受容層の全固形分質量に対して、9〜40質量%が好ましく、12〜33質量%が更に好ましい。
上記ポリビニルアルコールは、ひび割れ防止の観点から数平均重合度が1800以上であることが好ましく、2000以上が更に好ましい。また、透明性やインク受容層用塗布液の粘度の観点から、鹸化度88%以上のポリビニルアルコールが更に好ましい。
本発明における気相法シリカ(他の無機微粒子を併用する場合には本発明における気相法シリカと他の無機微粒子との総量;i)とポリビニルアルコール(他の水溶性樹脂と併用する場合には全水溶性樹脂;p)との含有比〔PB比(i:p)〕は、インク受容層の膜構造にも大きな影響を与える。即ち、PB比が大きくなると、空隙率、細孔容積、表面積(単位質量当り)が大きくなる。
具体的には、上記PB比(i:p)としては、該PB比が大きすぎることに起因する、膜強度の低下や、乾燥時のひび割れを防止し、更に、該PB比が小さすぎることによって、該空隙が樹脂によってふさがれやすくなり、空隙率が減少することでインク吸収性が低下するのを防止する観点から、1.5:1〜10:1が好ましい。
インクジェットプリンターの搬送系を通過する場合、インクジェット記録用媒体に応力が加わることがあるので、インク受容層には十分な膜強度を有していることが必要である。更にシート状に裁断加工する場合、インク受容層の割れ、剥がれ等を防止する上でもインク受容層には十分な膜強度を有していることが必要である。
この場合、上記PB比としては7:1以下が好ましく、インクジェットプリンターで高速インク吸収性をも確保する観点からは、2:1以上であることが好ましい。
例えば、本発明における気相法シリカと水溶性樹脂とをPB比2:1〜7:1で水溶液中に完全に分散した塗布液を支持体上に塗布し、該塗布層を乾燥した場合、本発明における気相法シリカの二次粒子を鎖単位とする三次元網目構造が形成され、平均細孔径が30nm以下、空隙率が50%〜80%、細孔比容積0.5ml/g以上、比表面積が100m2/g以上の、透光性の多孔質膜を容易に形成することができる。
−硬膜剤−
本発明のインクジェット記録用媒体のインク受容層は、水溶性樹脂を硬化しうる硬膜剤を含有してもよい。該硬膜剤によって上記水溶性樹脂を架橋し塗布層を硬化して、インク受容層を形成する。
上記水溶性樹脂、特にポリビニルアルコールの架橋には、ホウ素化合物が好ましい。上記ホウ素化合物としては、例えば、硼砂、硼酸、硼酸塩(例えば、オルト硼酸塩、InBO3、ScBO3、YBO3、LaBO3、Mg3(BO3)2、Co3(BO3)2、二硼酸塩(例えば、Mg225、Co225)、メタ硼酸塩(例えば、LiBO2、Ca(BO2)2、NaBO2、KBO2)、四硼酸塩(例えば、Na247・10H2O)、五硼酸塩(例えば、KB58・4H2O、Ca2611・7H2O、CsB55)等を挙げることができる。中でも、速やかに架橋反応を起こすことができる点で、硼砂、硼酸、硼酸塩が好ましく、特に硼酸が好ましい。
水溶性樹脂の硬膜剤として、上記ホウ素化合物以外の化合物を使用することもできる。具体例としては、例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、ジアルデヒドスターチ、植物ガムのジアルデヒド誘導体等のアルデヒド系化合物;ジアセチル、1,2−シクロペンタンジオン、3−ヘキセン−2,5−ジオン等のケトン系化合物;ビス(2−クロロエチル)尿素、ビス(2−クロロエチル)スルホン、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物;ジビニルスルホン、1,3−ビス(ビニルスルホニル)−2−プロパノール、N,N’−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、ジビニルケトン、1,3−ビス(アクリロイル)尿素、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン等の活性ビニル化合物;ジメチロ−ル尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物;トリメチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン、メラミン、ベンゾグアナミン、メラミン樹脂等のメラミン化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、スピログリコールジグリシジルエーテル、フェノール樹脂のポリグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシナネート等のイソシアネート系化合物;米国特許明細書第3017280号、同第2983611号等に記載のアジリジン系化合物;米国特許明細書第3100704号等に記載のカルボジイミド系化合物;1,6−ヘキサメチレン−N,N’−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物;ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物;2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物;乳酸チタン、硫酸アルミ、ポリ塩化アルミニウム、クロム明ばん、カリ明ばん、酢酸ジルコニル、酢酸クロム等の金属含有化合物;テトラエチレンペンタミン等のポリアミン化合物;アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物;オキサゾリン基を2個以上含有する低分子またはポリマー等:米国特許明細書第2725294号、米国特許明細書第2725295号、米国特許明細書第2726162号、米国特許明細書第3834902号等に記載の多価酸の無水物、酸クロリド、ビススルホナート化合物;米国特許明細書第3542558号、米国特許明細書第3251972号等に記載の活性エステル化合物等が挙げられる。
上記硬膜剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組合わせて用いることもできる。
本発明においては、上述の架橋硬化は、少なくとも、本発明における気相法シリカと水溶性樹脂とを含有する塗布液(以下、「第1の塗布液」ということがある。)および/または下記塩基性溶液に硬膜剤を添加し、且つ(1)上記塗布液を塗布して塗布層を形成すると同時、または(2)上記塗布液を塗布して形成される塗布層の乾燥途中であって上記塗布層が減率乾燥を示す前、の何れかのときに、pHが7.1以上の塩基性溶液(以下、「第2の塗布液」ということがある。)を上記塗布層に付与することにより行うことが好ましい。
pHが7.1以上の上記塩基性溶液(「第2の塗布液」)中には、塩基として、後述の1級〜3級アミノ基を有する有機カチオン性樹脂の他に、塩基性を示す有機化合物、無機化合物(金属錯体または有機酸の塩を含む)、或いは塩基プレカーサー等を用いることができる。この様な化合物としては、例えば、アンモニアとの塩を形成しているアンモニウム塩系化合物、1級〜3級アミノ基を有する低分子〜オリゴマー化合物、4級アンモニウム塩の水酸化物、含窒素へテロ環系化合物、アルカリ金属やアルカリ土類金属類の水酸化物や酸の塩等が挙げられる。
具体的には、アンモニア水、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、トルエンスルホン酸アンモニウム、酸性基を有するポリマー、ラテックスのアンモニウム塩、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、ジアリルアミン、ピペリジン、2−メチルピペリジン、ジメチルピペリジン、イミダゾール、水酸化テトラメチルアンモニウム、酢酸ナトリウム、グアニジン、等が挙げられる。
これらの中でも、塩基としては、インクジェット記録用媒体の紙面pHの調整の点で、少なくとも一種がアンモニウム塩系化合物であることが好ましい。
上記硬膜剤の付与は、ホウ素化合物を例にとると、下記の様に行われることが好ましい。即ち、インク受容層が、本発明における気相法シリカやポリビニルアルコール等を含有する塗布液(第1の塗布液)を塗布した塗布層を架橋硬化させた層である場合、上記架橋硬化は、(1)上記塗布液を塗布して塗布層を形成すると同時、または(2)上記塗布液を塗布して形成される塗布層の乾燥塗中であって上記塗布層が減率乾燥を示す前、の何れかの時に、pHが7.1以上の塩基性溶液(第2の塗布液)を上記塗布層に付与することにより行われる。硬膜剤たるホウ素化合物は、第1の塗布液、または第2の塗布液のいずれかに含有すればよく、第1の塗布液および第2の塗布液の両方に含有させておいてもよい。
本発明におけるインク受容層における上記硬膜剤の使用量は、水溶性樹脂に対して1〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましい。
上記第2の塗布液には、金属化合物が含有されていてもよい。上記金属化合物はpH7.1以上の塩基性下で安定なものであれば、特に制限なく用いることができ、該金属化合物は、金属塩でも金属錯体化合物でも、また、無機オリゴマー、無機ポリマーでもよい。上記金属化合物としては、後述の無機媒染剤として挙げるものが好ましく用いられる。中でもジルコニウム化合物や亜鉛化合物が好ましく、特に3価以上の金属化合物(例えばジルコニウム化合物)が好ましい。例えば炭酸ジルコニウムアンモニウム、酢酸亜鉛アンモニウム、亜鉛アンモニウムカーボネート、硝酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムカリウム、クエン酸ジルコニウムアンモニウム等が挙げられる。
−カチオン性樹脂−
本発明における気相法シリカおよび必要に応じて用いられる他の無機微粒子は、カチオン性樹脂で分散して用いることが好ましい。
上記カチオン性樹脂は、特に限定されないが、水溶性、または、水性エマルションタイプなどを好適に使用できる。該カチオン性樹脂としては、例えば、ジシアンジアミド−ホルマリン重縮合物に代表されるジシアン系カチオン性樹脂、ジシアンアミド−ジエチレントリアミン重縮合物に代表されるポリアミン系カチオン性樹脂、エピクロルヒドリン−ジメチルアミン付加重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド−SO2共重合物、ジアリルアミン塩−SO2共重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、アリルアミン塩の重合物、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩重合物、アクリルアミド−ジアリルアミン塩共重合体等のポリカチオン系カチオン性樹脂などが挙げられ、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、モノメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物およびポリアミジンが好ましく、耐水性の点からジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、およびモノメチルアンモニウムクロライド重合物が特に好ましい。上記カチオン性樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、カチオン性樹脂として、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩とスチレンの共重合体も好ましく用いられる。上記カチオン性樹脂の重量平均分子量は無機微粒子(本発明における気相法シリカ)の分散性、第1の塗布液の粘度、インク受容層の耐水性、および、光沢の観点から、1000〜100,000が好ましく、3000〜70,000が更に好ましく、4000〜50,000が特に好ましい。
上記カチオン性樹脂のインク受容層中の添加量としては、本発明における気相法シリカおよび他の無機微粒子の総量100質量部に対して、1〜30質量部が好ましく、更に好ましくは3〜20質量部の範囲で調節される。また、カチオン性樹脂と本発明における気相法シリカとの添加方法は特に限定はなく、例えば、(1)カチオン性樹脂を含む水溶液に気相法シリカ粉体若しくは気相法シリカスラリーを添加する方法や、(2)気相法シリカスラリー水溶液にカチオン性樹脂を添加する方法を用いることができる。また、上記(1)の方法においてカチオン性樹脂は、本発明における気相法シリカ等を粉砕分散前に少量添加し、所望の粒径になるまで粉砕分散した後、更に添加してもよい。
−水溶性金属化合物−
本発明のインクジェット記録用媒体は、形成画像の耐水性および耐にじみ性の改善を図るために、インク受容層に、水溶性金属化合物を含有することが好ましい。上記水溶性金属化合物をインク受容層中に存在させることにより、アニオン性染料を色材として有する液状インクとの間で相互作用が働き、色材を安定化し、さらなる耐水性や耐にじみ性を向上させることができる。
水溶性金属化合物としては、水溶性の2価以上の金属塩を挙げることができる。例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、ジルコニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、ビスマス等の典型金属元素のハロゲン化物、ヘキサフルオロシリル化物、硫酸塩、チオ硫酸塩、リン酸塩、塩素酸類塩、硝酸類塩等の無機金属塩が挙げられる。また、有機酸の金属塩も水溶性であれば用いることができる。
具体的には、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化アルミニウム、塩化スズ、塩化鉛、塩化ストロンチウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、塩素酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、硝酸アルミニウム、水酸化ストロンチウム、乳酸アルミニウム、ジルコニウムアセチルアセトネート、酢酸ジルコニル、硫酸ジルコニル、炭酸ジルコニウムアンモニウム、ステアリン酸ジルコニル、オクチル酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム等が挙げられる。
上述の中でも上記水溶性金属化合物としては、アルミニウム塩およびジルコニウム塩から選択される化合物の少なくとも1種が用いられることが好ましい。アルミニウム塩およびジルコニウム塩から選択される化合物の少なくとも1種を用いることにより、インクに対して優れた耐にじみ性効果が得られる。
上記アルミニウム塩としては、ポリ塩化アルミニウムを用いることができる。ポリ塩化アルミニウムを用いることにより、耐水性や耐候性および耐にじみ性の改善およびひび割れを防止することができる。
上記ポリ塩化アルミニウムの重量平均分子量は、500以上が好ましく、特に1000〜100000程度が好ましい。
また、ポリ塩化アルミニウムの使用量は、本発明における気相法シリカおよび必要に応じて用いられる他の無機微粒子の総量に対しては、1〜100質量%が好ましく、3〜50質量%がより好ましい。
また、水溶性金属化合物のうち、酸性で安定なものについては、第1の塗布液に添加することが好ましく、アルカリ性で安定なもの(例えば酢酸亜鉛アンモニウム、亜鉛アンモニウムカーボネート、炭酸ジルコニウムアンモニウム、硝酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムカリウム、クエン酸ジルコニウムアンモニウム、)は第2の塗布液に添加することが望ましい。
上記水溶性金属化合物(特にポリ塩化アルミニウム)を密閉混合容器中(インライン)で添加する場合の、インライン添加用の溶液は、上記水溶性金属化合物の濃度が2〜20質量%程度になるように、水を主体とする溶媒に溶解若しくは分散して調製されるのが好ましい。この濃度に応じて、流量を設定し、所定量の水溶性金属化合物が、流量計で制御された所定量の塗布液中に添加される。
尚、上記水を主体とする溶媒としては、水、有機溶媒、またはこれらの混合溶媒を用いることができる。この場合に用いることができる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メチロールプロパン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、3,6−ジチオン−1,8−オクタンジオール、メトキシプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ピロリドン等の水との相溶性の良いものが好ましい。
本発明において、上記インラインで添加される上記水溶性金属化合物は、用いる全水溶性金属化合物の一部であってもよく、または全量であってもよい。このインライン添加する割合は、本発明における気相法シリカおよび必要に応じて用いられる他の無機微粒子の種類や、塗布液中における含有量、水溶性金属化合物(特にポリ塩化アルミニウム)の種類や添加量等によって変わってくる。従って、一概に決めることはできないが、本発明における気相法シリカおよび必要に応じて用いられる他の無機微粒子を含む塗布液の経時による凝集を防止するという観点から、実験的に求めることができる。
上記水溶性金属化合物(特にポリ塩化アルミニウム)が含む硫酸イオン濃度は、0.5質量%以下が好ましく、さらに好ましくは0.3質量%以下、特に0.1質量%以下が好ましい。本発明における気相法シリカおよび必要に応じて用いられる他の無機微粒子を含む分散液を含むインク受容層用塗布液の調製において、本発明における気相法シリカおよび必要に応じて用いられる他の無機微粒子の凝集を防ぎ塗布液の増粘を回避する為には、上記水溶性金属化合物が含む硫酸イオン濃度を、0.5質量%以下に制御することが好ましい。
上記硫酸イオンは、上記水溶性金属化合物(特にポリ塩化アルミウニム)を製造する際に、原材料または安定剤として含まれていることに起因するもので、これが上記水溶性金属化合物内に残存している。従って、上記水溶性金属化合物は、硫酸イオンが出来るだけ存在しない状態で製造したものが好ましい。
ここで、本明細書においては、上記硫酸イオン濃度の測定は、上記水溶性金属化合物の溶液試料の質量を測定し、温度100℃で水分を除去した後、温度1450℃で該試料を燃焼させて、SO4の赤外吸収スペクトルより定量して求めたもので、その測定装置としては、堀場製作所(株)製のイオウ分析計(商品名:EMIA−120型)を使用したものである。
上記水溶性金属化合物を含む分散液を調製するには、本発明における気相法シリカおよび必要に応じて用いられる他の無機微粒子と上記水溶性金属化合物とを溶媒に添加して(好ましくは、水中の気相法シリカの含量は10〜20質量%)、例えば(株)シンマルエンタープライゼス製の分散機(商品名:KDL−PILOT)等を用いて、分散させる方法等が挙げられる。
その際に、前述の有機カチオン性樹脂として例示の化合物を、本発明における気相法シリカおよび必要に応じて用いられる他の無機微粒子の分散剤として使用してもよい。上記分散剤としては、I/O値が3.0以下の有機カチオン性樹脂が好ましく、2.7以下が更に好ましく、特に2.5以下の有機カチオン性樹脂を使用することが、印画後の耐にじみ性の向上をはかる観点から好ましい。ここで、I/O値とは、化合物或いは置換基の親水性/親油性の尺度を表すパラメーターであり、甲田善生著「有機概念図」(三共出版、1984年)にその詳細な解説がある。Iは無機性をOは有機性を表し、I/O値が大きいほど無機性が大きい(極性が高く親水性が大きい)ことを示す。また、I/O値が異なる有機カチオン性樹脂を併用して用いてもよい。
また、本発明における気相法シリカおよび必要に応じて用いられる他の無機微粒子と水溶性金属化合物とからなる分散液の調製は、本発明における気相法シリカおよび必要に応じて用いられる他の無機微粒子を含む分散液を予め調製した後、分散液を上記水溶性金属化合物の溶液に添加してもよいし、上記水溶性金属化合物溶液を本発明における気相法シリカおよび必要に応じて用いられる他の無機微粒子を含む分散液に添加してよいし、同時に混合してもよい。また、本発明における気相法シリカおよび必要に応じて用いられる他の無機微粒子を、分散液ではなく粉体のまま用いて上述のごとく上記水溶性金属化合物溶液に添加してもよい。
本発明における気相法シリカおよび必要に応じて用いられる他の無機微粒子およびカチオン性樹脂と上記水溶性金属化合物とを混合した後、混合液を更に分散機を用いて細粒化することで、本発明における気相法シリカおよび必要に応じて用いられる他の無機微粒子と上記水溶性金属化合物との微細化分散液を得ることができる。
上記水分散液を得るために用いる混合分散機としては、高速回転分散機、媒体撹拌型分散機(ボールミル、サンドミルなど)、超音波分散機、コロイドミル分散機、高圧分散機等の従来より公知の各種分散機を使用することができるが、形成されるダマ状微粒子の分散を効率的に行うという観点から、媒体撹拌型分散機、コロイドミル分散機または高圧分散機が好ましい。
本発明でインク受容層に含まれる上記水溶性金属化合物の総量は、0.5g/m2〜10g/m2が好ましく、0.7g/m2〜4g/m2がより好ましい。
−水溶性イオウ化合物−
本発明のインクジェット記録用媒体は、インク受容層に、水溶性イオウ化合物を含有することが好ましい。水溶性イオウ化合物をインク受容層中に存在させることにより、形成画像のオゾンガスに対する退色を抑制(耐オゾン性を向上)することができる。
水溶性イオウ化合物としては、下記一般式(1)および下記一般式(2)の少なくともいずれかで表わされることが好ましい。本発明におけるインク受容層に下記一般式(1)および(2)で表される化合物のすくなくとも1種を含有させることにより、経時ニジミの発生を抑制し、さらに耐オゾン性を向上させることができる。
X−Y−S−CH2−CH2−S−Y−X 一般式(1)
X−Y−S−S−Y−X 一般式(2)
式中、Xはそれぞれ独立にヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸塩、アシル基、アミノ基、チオカルバモイル基、スルファモイル基またはスルホアミノ基を表わす。Yは、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキレン基を表わす。
上記カルボン酸塩としては、ナトリウム、カリウム、アンモニウム塩等が挙げられ、ナトリウム、アンモニウム塩が好ましい。
上記アシル基は、「R−CO−」で表わされる基であり、該Rとしては、炭素数1〜7のアルキル基、水素原子が挙げられ、炭素数1〜3のアルキル基、水素原子が好ましい。上記アシル基の具体例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基が挙げられる。
上記式中Xとしては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸塩、アミノ基が好ましく、ヒドロキシル基、カルボキシル基が特に好ましい。
上記一般式(1)および(2)において、Yは、置換基を有していてもよいアルキレン基を表わす。該アルキレン基の炭素数としては、1〜10が好ましく、1〜5がさらに好ましい。
上記置換基としては、アルキル基;フルオロ基、クロロ基、ブロモ基またはヨード基等のハロゲン;ヒドロキシル基;メトキシ基またはエトキシ基等のアルコキシル基;カルボキシル基およびその塩;アシル基;アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ヒドロキシアミノ基、アセトアミド基、カルバモイル基、オキサモイル基またはシアノ基等の窒素を含む基;チオシアナト基、チオホルミル基、チオアセチル基、メチルチオ基、メチルスルホニル基またはメチルスルフィニル基等の硫黄を含む基;チオカルバモイル基;スルファモイル基;スルホアミノ基等が挙げられる。上記置換基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルボン酸塩、アミノ基が好ましい。
本発明に用いられる水溶性イオウ化合物における「水溶性」とは、水に1質量%以上溶解することをいう。水溶性イオウ化合物として水に1質量%未満しか溶解されない化合物を用いると、インク受容層用の塗布液等に溶解させるのが困難であるため、乳化物として添加することとなり記録媒体の光沢性を低下させる場合がある。このため、水溶性イオウ化合物が水溶性の化合物であると塗布液に容易に溶解することができ、記録媒体の光沢性を向上させることができる。
また、一般式(1)および(2)で表わされる化合物の分子量は、180以上が好ましく、具体的には200〜500がさらに好ましく、200〜350が特に好ましい。本発明のインクジェット記録用媒体は、分子量が180以上の上記化合物を含むことで経時ニジミの発生を十分に抑制することができる。
本発明のインクジェット記録用媒体は、一般式(1)および(2)で表される化合物の少なくとも1種をインク受容層に含んでいればよい。従って、一般式(1)または(2)で表される化合物を単独または2種以上含んでいてもよいし、一般式(1)および(2)で表される化合物で表される化合物を併用してもよい。一般式(1)で表される化合物〔x〕および一般式(2)で表される化合物〔y〕を併用する場合、その混合比(質量比;x:y)については特に限定はないが、好ましくは1:10〜10:1であり、更に好ましくは1:5〜5:1である。また、インク受容層中に含まれる一般式(1)および(2)で表される化合物の総含有量としては、0.1〜10g/m2が好ましく、0.5〜5g/m2が更に好ましい。上記総含有量が0.1〜10g/m2の範囲内にあると、耐オゾン性を十分に付与することができ、且つ、低温環境下で保存(例えば5℃下で1週間)した場合にインクジェット記録用媒体の表面に水溶性イオウ化合物が析出したり、画像印画濃度が低下したりするのを抑制することができる。
以下に上記水溶性イオウ化合物の具体例(化合物A〜化合物F)を示すが、本発明における化合物はこれに限定されるものではない。
Figure 2005271485
−界面活性剤−
本発明において、インク受容層は、さらに、界面活性剤を含有することが好ましい。上記界面活性剤としては、ノニオン系、両性系、アニオン系、カチオン系、フッ素系、シリコン系界面活性剤等のいずれも使用可能である。
上記ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルおよびポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類(例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等)、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート等)、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類(例えば、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等)、グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、グリセロールモノオレート等)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類(モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン、モノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリン等)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノオレート等)、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アセチレングリコール類(例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、および該ジオールのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物等)等が挙げられ、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類が好ましい。上記ノニオン系界面活性剤は、第1の塗布液および第2の塗布液において使用することができる。また、上記ノニオン系界面活性剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。上記ノニオン系界面活性剤のHLB値としては、9〜20が好ましく、10〜18が更に好ましい。
上記両性界面活性剤としては、アミノ酸型、カルボキシアンモニウムベタイン型、スルホンアンモニウムベタイン型、アンモニウム硫酸エステルベタイン型、イミダゾリウムベタイン型等が挙げられ、例えば、米国特許第3,843,368号、特開昭59−49535号、同63−236546号、特開平5−303205号、同8−262742号、同10−282619号、特許第2514194号、特許2759795号、特開2000-351269号の各公報等に記載されているものを好適に使用できる。上記両性界面活性剤の中でも、アミノ酸型、カルボキシアンモニウムベタイン型、スルホンアンモニウムベタイン型が好ましい。上記両性界面活性剤は1種で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩(例えば、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム)、アルキル硫酸エステル塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン)、スルホン酸塩(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、アルキルスルホコハク酸塩(例えば、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩等が好適に挙げられる。
上記カチオン系界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられる。
上記フッ素系界面活性剤としては、電解フッ素化、テロメリゼーション、オリゴメリゼーション等の方法を用いて、パーフルオロアルキル基を持つ中間体をへて誘導される化合物が挙げられる。
例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルトリアルキルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル基含有オリゴマー、パーフルオロアルキルリン酸エステル等が挙げられる。
上記シリコン系界面活性剤としては、有機官能基で変性したシリコンオイルが好ましく、シロキサン主鎖構造の側鎖を有機基で変性したもの、両末端を変性したもの、片末端を変性したものが挙げられる。有機官能基変性としては、アミノ変性、ポリエーテル変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、アルキル変性、アラルキル変性、フェノール変性、フッ素変性等が挙げられる。
本発明において上記界面活性剤の含有量としては、インク受容層用塗布液に対して0.001〜2.0%が好ましく、0.01〜1.0%がより好ましい。また、インク受容層用塗布液として2液以上を用いて塗布を行なう場合には、それぞれの塗布液に界面活性剤を添加するのが好ましい。
本発明に用いる界面活性剤の少なくとも1種は、上記両性界面活性剤であることが好ましい。上記両性界面活性剤を用いることにより、発色濃度をより向上させることができる。
なお、上記両性界面活性剤とその他の界面活性剤を併用することもできる。
本発明においては、形成画像の耐水性、耐経時ニジミの更なる向上を図るために、インク受容層に、媒染剤を含有させることが好ましい。
媒染剤をインク受容層中に存在させることにより、アニオン性染料を色材として有する液状インクとの間で相互作用し色材を安定化し、耐水性や経時ニジミを向上させることができる。上記媒染剤としては、上述のカチオン性樹脂を好適に用いることでき、更に、下記の媒染剤も使用することができる。
上記媒染剤としては、有機媒染剤を用いることができ、例えば、カチオン性媒染剤が好ましく用いられる。該カチオン性媒染剤としては、カチオン性基として第1級〜第3級アミノ基、または、第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が好適に用いられるが、カチオン性の非ポリマー媒染剤も使用することができる。
上記ポリマー媒染剤としては、第1級〜第3級アミノ基およびその塩、または第4級アンモニウム塩基を有する単量体(媒染モノマー)の単独重合体や、該媒染モノマーと他のモノマー(以下、「非媒染ポリマー」という。)との共重合体または縮重合体として得られるものが好ましい。また、これらのポリマー媒染剤は、水溶性ポリマー、または水分散性のラテックス粒子のいずれの形態でも使用することができる。
上記単量体(媒染モノマー)としては、例えば、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−プロピル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−オクチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−(4−メチル)ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−フェニル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、
トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、N,N,N−トリエチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N,N−トリエチル−N−2−(3−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムアセテート、
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのメチルクロライド、エチルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、メチルアイオダイド若しくはエチルアイオダイドによる4級化物、またはそれらのアニオンを置換したスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、酢酸塩若しくはアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
具体的には、例えば、モノメチルジアリルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、
N,N−ジメチル−N−エチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムブロマイド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムブロマイド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムスルホネート、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムアセテート等を挙げることができる。
その他、共重合可能なモノマーとして、N―ビニルイミダゾール、N―ビニル−2−メチルイミダゾール等も挙げられる。
上記非媒染ポリマーとは、第1級〜第3級アミノ基およびその塩、または第4級アンモニウム塩基等の塩基性或いはカチオン性部分を含まず、インクジェットインク中の染料と相互作用を示さない、或いは相互作用が実質的に小さいモノマーをいう。
上記非媒染モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸ベンジル等のアラルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;酢酸アリル等のアリルエステル類;塩化ビニリデン、塩化ビニル等のハロゲン含有単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;エチレン、プロピレン等のオレフィン類、等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル部位の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
中でも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートが好ましい。
上記非媒染モノマーも、一種単独で、または二種以上組合せて使用できる。
更に、ポリマー媒染剤として、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリメタクリロイルオキシエチル−β−ヒドロキシエチルジメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミンおよびその変性体、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアミド−ポリアミン樹脂、カチオン化でんぷん、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、ジメチル−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム塩重合物、ポリアミジン、ポリビニルアミン、特開平10−86505号公報に記載のカチオン性ポリウレタン樹脂等も好ましいものとして挙げることができる。
上述のポリアリルアミンの変性体としては、アクリルニトリル、クロロメチルスチレン、TEMPO、エポキシヘキサン、ソルビン酸等をポリアリルアミンに2〜50mol%付加したものが挙げられ、好ましくは、アクリルニトリル、クロロメチルスチレン、TEMPOの5〜10mol%付加物であり、特にポリアリルアミンの5〜10mol%TEMPO付加物が、オゾン褪色性防止効果を発揮する観点から好ましい。
上記媒染剤の分子量としては、重量平均分子量で2000〜300000が好ましく、3000〜10,000が更に好ましく、4000〜50,000が特に好ましい。上記分子量が2000〜300000の範囲にあると、耐水性および耐経時ニジミ性を向上させることができる。
本発明でインク受容層に含まれる上記媒染剤量は、0.01g/m2〜5g/m2が好ましく、0.1g/m2〜3g/m2がより好ましい。
上記媒染剤は、液の安定性を考慮し、第1の塗布液または第2の塗布液へ添加する。例えば、有機カチオン媒染剤を、気相法シリカを含有する第1の塗布液に添加すると、アニオン電荷を有する気相法シリカとの間で凝集を生ずる懸念がある場合は、第2の塗布液に添加する方がよい。
−その他の成分−
本発明において、インク受容層はカール防止用に高沸点有機溶剤を含有するのが好ましい。上記高沸点有機溶剤は常圧で沸点が150℃以上の有機化合物であり、水溶性または疎水性の化合物である。これらは、室温で液体でも固体でもよく、低分子でも高分子でもよい。
具体的には、芳香族カルボン酸エステル類(例えば、フタル酸ジブチル、フタル酸ジフェニル、安息香酸フェニルなど)、脂肪族カルボン酸エステル類(例えば、アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、ステアリン酸メチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、アセチルクエン酸トリエチルなど)、リン酸エステル類(例えば、リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジルなど)、エポキシ類(例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化脂肪酸メチルなど)、アルコール類(例えば、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGMBE)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリンモノメチルエーテル、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、トリエタノールアミン、ポリエチレングリコールなど)、植物油(例えば、大豆油、ヒマワリ油など)高級脂肪族カルボン酸(例えば、リノール酸、オレイン酸など)等が挙げられ、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGMBE)が特に好ましい。
また、本発明のインクジェット記録用媒体は、インク受容層にチオウレア、または、チオシアン酸塩等のオゾン褪色防止剤を含有することで、オゾン褪色を防止することができる。
上記チオシアン酸塩としては、例えば、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸亜鉛、チオシアン酸カルシウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸マグネシウム、チオシアン酸アルミニウム、チオシアン酸リチウム、チオシアン酸銀、チオシアン酸クロロメチル、チオシアン酸コバルト、チオシアン酸銅、チオシアン酸鉛、チオシアン酸バリウム、チオシアン酸ベンジル等が挙げられる。上記チオウレアおよびチオシアン酸塩は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明において上記チオウレア、または、チオオシアン酸塩は第1の塗布液および第2の塗布液のいずれに添加してもよいが、液安定性の点から第2の塗布液液に添加してインク受容層に付与するのが好ましい。上記チオウレア、または、チオシアン酸塩のインク受容層中の含有量としては、1〜20質量%が好ましく、特に好ましくは2〜10質量%である。該含有量が1〜20質量%の範囲内にあると、オゾン褪色防止効果をより十分に発揮することができ、且つ、ひび割れの発生を更に十分に抑制することができる。
本発明において、インク受容層は色材の劣化を抑制する目的で各種の紫外線吸収剤、酸化防止剤、一重項酸素クエンチャー等の褪色防止剤を含んでいてもよい。
上記紫外線吸収剤としては、桂皮酸誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾトリアゾリルフェノール誘導体等が挙げられる。例えば、α−シアノ−フェニル桂皮酸ブチル、o−ベンゾトリアゾールフェノール、o−ベンゾトリアゾール−p−クロロフェノール、o−ベンゾトリアゾール−2,4−ジ−t−ブチルフェノール、o−ベンゾトリアゾール−2,4−ジ−t−オクチルフェノール等が挙げられる。ヒンダートフェノール化合物も紫外線吸収剤として使用でき、具体的には少なくとも2位または6位のうち1ヵ所以上が分岐アルキル基で置換されたフェノール誘導体が好ましい。
また、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキザリックアシッドアニリド系紫外線吸収剤等も使用できる。例えば、特開昭47−10537号公報、同58−111942号公報、同58−212844号公報、同59−19945号公報、同59−46646号公報、同59−109055号公報、同63−53544号公報、特公昭36−10466号公報、同42−26187号公報、同48−30492号公報、同48−31255号公報、同48−41572号公報、同48−54965号公報、同50−10726号公報、米国特許第2,719,086号明細書、同3,707,375号明細書、同3,754,919号明細書、同4,220,711号明細書等に記載されている。
蛍光増白剤も紫外線吸収剤として使用でき、例えば、クマリン系蛍光増白剤等が挙げられる。具体的には、特公昭45−4699号公報、同54−5324号公報等に記載されている。
上記酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許第223739号公報、同309401号公報、同309402号公報、同310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同60−107384号公報、同60−107383号公報、同60−125470号公報、同60−125471号公報、同60−125472号公報、同60−287485号公報、同60−287486号公報、同60−287487号公報、同60−287488号公報、同61−160287号公報、同61−185483号公報、同61−211079号公報、同62−146678号公報、同62−146680号公報、同62−146679号公報、同62−282885号公報、同62−262047号公報、同63−051174号公報、同63−89877号公報、同63−88380号公報、同66−88381号公報、同63−113536号公報、
同63−163351号公報、同63−203372号公報、同63−224989号公報、同63−251282号公報、同63−267594号公報、同63−182484号公報、特開平1−239282号公報、特開平2−262654号公報、同2−71262号公報、同3−121449号公報、同4−291685号公報、同4−291684号公報、同5−61166号公報、同5−119449号公報、同5−188687号公報、同5−188686号公報、同5−110490号公報、同5−1108437号公報、同5−170361号公報、特公昭48−43295号公報、同48−33212号公報、米国特許第4814262号、同第4980275号公報等に記載のものが挙げられる。
具体的には、6−エトキシ−1−フェニル−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−1−オクチル−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−1−フェニル−2,2,4−トリメチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、6−エトキシ−1−オクチル−2,2,4−トリメチル−1,2,3,4,−テトラヒドロキノリン、シクロヘキサン酸ニッケル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2−メチル−4−メトキシ−ジフェニルアミン、1−メチル−2−フェニルインドール等が挙げられる。
上記褪色性防止剤は、単独でも2種以上を併用してもよい。この上記褪色性防止剤は、水溶性化、分散、エマルション化してもよく、マイクロカプセル中に含ませることもできる。
上記褪色性防止剤の添加量としては、第1の塗布液の0.01〜10質量%が好ましい。
また、インク受容層は、本発明における気相法シリカおよび必要に応じて用いられる他の無機微粒子の分散性を高める目的で各種無機塩類を含んでいてもよく、また、インク受容層の膜面pHを調節する目的でpH調整剤として酸やアルカリ等を含んでいてもよい。上記膜面pHは2〜7が好ましく、3〜5が更に好ましい。
更に、表面の摩擦帯電や剥離帯電を抑制する目的で、電子導電性を持つ金属酸化物微粒子を、表面の摩擦特性を低減する目的で各種のマット剤を含んでいてもよい。
<インク受容層の形成方法>
次に、インク受容層の形成方法について説明する。
本発明のインクジェット記録用媒体におけるインク受容層は、少なくとも本発明における気相法シリカおよび水溶性樹脂を含有する第1の塗布液を塗布した塗布層を架橋硬化させた層であることが好ましい。上記架橋硬化は、(1)上記塗布液を塗布すると同時、(2)上記塗布液を塗布して形成される塗布層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥を示す前、または(3)上記塗布液を塗布して形成される塗布層を乾燥して塗膜を形成した後、のいずれかのときに、金属化合物を含有するpH7.1以上の溶液(第2の塗布液)を上記塗布層または塗膜に付与することにより行うことが好ましい。
本発明において、例えば、本発明における気相法シリカと、カチオン性樹脂と、ホウ酸と、ポリビニルアルコールと、ノニオン若しくは両性界面活性剤と、高沸点有機溶剤とを含む塗布液(インク受容層用塗布液)は、以下のようにして調製できる。
即ち、本発明における気相法シリカを水中に添加して、更にカチオン性樹脂を添加して、高圧ホモジナイザー、サンドミル等で分散した後、ホウ酸を加え、ポリビニルアルコール水溶液(例えば、気相法シリカの1/3程度の質量のポリビニルアルコールとなるように)を加え、更にノニオン若しくは両性界面活性剤と、高沸点有機溶剤とを添加し、攪拌することで調製することができる。得られた塗布液は均一ゾルであり、これを下記塗布方法で支持体上に塗布形成することによって、三次元網目構造を有する多孔質性のインク受容層を形成することができる。
また、上記のように、ホウ酸をうすめた後にポリビニルアルコールを加えることによって、ポリビニルアルコールの部分的なゲル化を防止することができる。
本発明において、第1の塗布液は酸性溶液であることが好ましく、該塗布液のpHは5.0以下であることが好ましく、4.5以下であることがより好ましく、4.0以下であることが更に好ましい。塗布液のpHは、上記カチオン性樹脂の種類や添加量を適宜選定することで調整することができる。また、有機または無機の酸を添加して調整してもよい。塗布液のpHが5.0以下であることにより、塗布液中におけるホウ素化合物による水溶性樹脂の架橋反応をより十分に抑制することができる。
第1の塗布液の塗布は、例えば、エクストルージョンダイコータ、エアードクターコータ、ブレッドコータ、ロッドコータ、ナイフコータ、スクイズコータ、リバースロールコータ、バーコータ等の公知の塗布方法によりおこなうことができる。
第1の塗布液の塗布量としては、50〜300g/m2であることが一般的であり、100〜250g/m2であることが好ましい。
第2の塗布液は、pHが7.1以上であることが好ましく、7.5以上であることがより好ましく、8.0以上であることが更に好ましい。塩基性溶液のpHが7.1未満であるとインク受容層のひび割れが発生する。なお、このpH調整は、塩基性金属化合物や塩基性媒染剤(例えば、炭酸ジルコニウムアンモニウムなど)で行ってもよく、または他の塩基性物質(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム、エタノールアミン、エチレンジアミン、およびこれらの塩等)によってもよく、更に、この両者を用いることも可能である。更に、アルカリ性を示すコロイダルシリカ、例えば、日産化学工業(株)製の「スノーテックス20、30、40、C、N、S、20L、XS、SS、XL、YL、ZL、UP、QAS−40、LSS−35」等を用いてpH調節をしてもよい。
また、第2の塗布液中に第1の塗布液に用いた硬膜剤をpHが7.1以上の条件のもとに添加してもよい。
第2の塗布液の塗布の時期としては、塗布後の塗布層が減率乾燥速度を示すようになる前に付与することが好ましい。
ここで、「塗布層が減率乾燥速度を示すようになる前」とは、通常、塗布液の塗布直後から数分間を指し、この間においては、塗布された塗布層中の溶剤の含有量が時間に比例して減少する現象である恒率乾燥速度を示す。該恒率乾燥速度を示す時間については、化学工学便覧(p.707〜712、丸善(株)発行、昭和55年10月25日)に記載されている。
上記の通り、第1の塗布液の塗布後、その塗布層が減率乾燥速度を示すようになるまで乾燥されるが、該乾燥は一般に40〜180℃で0.5〜10分間(好ましくは、0.5〜5分間)おこなわれる。この乾燥時間としては、当然塗布量により異なるが上記範囲が適当である。また、特開2004−1240に記載されているように、冷風で乾燥してもよい。
上記塗布層が減率乾燥速度を示すようになる前に第2の塗布液を付与する方法としては、(1)第2の塗布液を塗布層上に更に塗布する方法、(2)スプレー等の方法によって噴霧する方法、(3)第2の塗布液中に、該塗布層が形成された支持体を浸漬する方法、等が挙げられる。
上記方法(1)において、第2の塗布液を塗布する方法としては、例えば、カーテンフローコータ、エクストルージョンダイコータ、エアードクターコーター、ブレッドコータ、ロッドコータ、ナイフコータ、スクイズコータ、リバースロールコータ、バーコータ等の公知の塗布方法を利用することができる。しかし、エクストリュージョンダイコータ、カーテンフローコータ、バーコータ等のように、既に形成されている塗布層にコータが直接接触しない方法を利用することが好ましい。
第2の塗布液の塗布量としては、5〜50g/m2であることが一般的であり、7〜30g/m2であることが好ましい。
また、上記第2の塗布液は、第1の塗布液を塗布すると同時に付与してもよい。
この場合、第1の塗布液および第2の塗布液を、該第1の塗布液が支持体と接触するようにして支持体上に同時塗布(重層塗布)し、その後乾燥硬化させることによりインク受容層を形成することができる。
上記同時塗布(重層塗布)は、例えば、エクストルージョンダイコータ、カーテンフローコータを用いた塗布方法によりおこなうことができる。同時塗布の後、形成された塗布層は乾燥されるが、この場合の乾燥は、一般に塗布層を40〜150℃で0.5〜10分間加熱することによりおこなわれ、好ましくは、40〜100℃で0.5〜5分間加熱することによりおこなわれる。
例えば、ホウ素化合物を使用する場合は、60〜100℃で5〜20分間加熱することが好ましい。また、特開2004−1240に記載されているように、冷風で乾燥してもよい。
上記同時塗布(重層塗布)を、例えば、エクストルージョンダイコータによりおこなった場合、同時に吐出される二種の塗布液は、エクストルージョンダイコータの吐出口附近で、即ち、支持体上に移る前に重層形成され、その状態で支持体上に重層塗布される。塗布前に重層された二層の塗布液は、支持体に移る際、既に二液の界面で架橋反応を生じ易いことから、エクストルージョンダイコータの吐出口付近では、吐出される二液が混合して増粘し易くなり、塗布操作に支障を来す場合がある。従って、上記のように同時塗布する際は、第1の塗布液および塩基性溶液の塗布と共に、更に硬膜剤と反応しない材料からなるバリアー層液(中間層液)を上記二液間に介在させて同時三重層塗布することが好ましい。
上記バリアー層液は、ホウ素化合物と反応せず液膜を形成できるものであれば、特に制限なく選択できる。例えば、ホウ素化合物と反応しない水溶性樹脂を微量含む水溶液や、水等を挙げることができる。上記水溶性樹脂は、増粘剤等の目的で、塗布性を考慮して使用されるもので、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロ−ス、メチルセルロ−ス、ヒドロキシエチルメチルセルロ−ス、ポリビニルピロリドン、ゼラチン等のポリマーが挙げられる。
尚、バリアー層液には、上記媒染剤を含有させることもできる。
また、各工程における溶媒として水、有機溶媒、またはこれらの混合溶媒を用いることができる。この塗布に用いることができる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン等が挙げられ、エタノールが特に好ましい。
支持体上にインク受容層を形成した後、該インク受容層は、例えば、スーパーカレンダ、グロスカレンダ等を用い、加熱加圧下にロールニップ間を通してカレンダー処理を施すことにより、表面平滑性、光沢度、透明性および塗膜強度を向上させることが可能である。しかしながら、該カレンダー処理は、空隙率を低下させる要因となることがあるため(即ち、インク吸収性が低下することがあるため)、空隙率の低下が少ない条件を設定しておこなう必要がある。
カレンダー処理をおこなう場合のロール温度としては、30〜150℃が好ましく、40〜100℃がより好ましい。
また、カレンダー処理時のロール間の線圧としては、50〜400kg/cmが好ましく、100〜200kg/cmがより好ましい。
上記インク受容層の層厚としては、インクジェット記録の場合では、液滴を全て吸収するだけの吸収容量をもつ必要があるため、層中の空隙率との関連で決定する必要がある。例えば、インク量が8nL/mm2で、空隙率が60%の場合であれば、層厚が約15μm以上の膜が必要となる。
尚、本発明における気相法シリカを含むインク受容層は従来のインクジェット記録媒体と比較してインク吸収能が高いことから、従来と同等のインク受容能を確保しながらインク受容層の層厚を薄くすることができ、例えば、インク受容層の層厚を30〜35μm、好ましくは25〜29μmとすることができる。このように、一定のインク吸収能を確保しながら、インク受容層の層厚を30〜35μmの範囲内とすることで、写真画質用インクジェットプリンターのインク(吐出量約20ml/m2)を十分に吸収し、且つ、カールやひび割れ欠陥の発生のないインクジェット記録媒体を作製することができる。
また、インク受容層の細孔径は、メジアン径で0.005〜0.030μmが好ましく、0.01〜0.025μmがより好ましい。
上記空隙率および細孔メジアン径は、水銀ポロシメーター(商品名:ボアサイザー9320−PC2、(株)島津製作所製)を用いて測定することができる。
また、インク受容層は、透明性に優れていることが好ましいが、その目安としては、インク受容層を透明フイルム支持体上に形成したときのヘイズ値が、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。
上記ヘイズ値は、ヘイズメーター(HGM−2DP:スガ試験機(株))を用いて測定することができる。
<支持体>
上記支持体としては、プラスチック等の透明材料よりなる透明支持体、紙等の不透明材料からなる不透明支持体のいずれをも使用できる。インク受容層の透明性を生かす上では、透明支持体または高光沢性の不透明支持体を用いることが好ましい。
また、上記支持体は紙やプラスティックシート(若しくはフィルム)状のものに限定されず、CD−ROM、DVD−ROM等の読み出し専用光ディスク、CD−R、DVD−R等の追記型光ディスク、更には書き換え型光ディスクを支持体として用いることができ、該支持体のレーベル面側にインク受容層を付与することができる。
上記透明支持体に使用可能な材料としては、透明性で、OHPやバックライトディスプレイで使用される時の輻射熱に耐え得る性質を有する材料が好ましい。該材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類;ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等を挙げることができる。中でも、ポリエステル類が好ましく、ポリエチレンテレフタレートは特に好ましい。また、上記透明支持体は、医療用に用いるために青く着色されていてもよい。
上記透明支持体の厚みとしては、特に制限はないが、取り扱い性の点で、50〜200μmが好ましい。
高光沢性の不透明支持体としては、インク受容層の設けられる側の表面が40%以上の光沢度を有するものが好ましい。上記光沢度は、JIS P−8142(紙および板紙の75度鏡面光沢度試験方法)に記載の方法に従って求められる値である。具体的には、下記支持体が挙げられる。
例えば、アート紙、コート紙、キャストコート紙、銀塩写真用支持体等に使用されるRC紙、バライタ紙等の高光沢性の紙支持体;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類、ニトロセルロース,セルロースアセテート,セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル類、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等のプラスチックフィルムに白色顔料等を含有させて不透明にした(表面カレンダー処理が施されていてもよい。)高光沢性のフィルム;或いは、上記各種紙支持体、上記透明支持体若しくは白色顔料等を含有する高光沢性のフィルムの表面に、白色顔料を含有若しくは含有しないポリオレフィンの被覆層が設けられた支持体が挙げられる。
更に、白色顔料含有発泡ポリエステルフィルム(例えば、ポリオレフィン微粒子を含有させ、延伸により空隙を形成した発泡PET)も好適に挙げることができる。
上記不透明支持体の厚みについても特に制限はないが、取り扱い性の点で、50〜300μmが好ましい。
また、上記支持体には、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理等を施したものを使用してもよい。
次に、上記紙支持体に用いられる原紙について詳述する。
上記原紙としては、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプ、或いはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。上記木材パルプとしては、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。
但し、LBSPおよび/またはLDPの比率としては、10質量%以上、70質量%以下が好ましい。
上記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸パルプ)が好ましく用いられ、漂白処理をおこなって白色度を向上させたパルプも有用である。
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
抄紙に使用するパルプの濾水度としては、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長が、JIS P−8207に規定される24メッシュ残分質量%と42メッシュ算分の質量%との和が30〜70%であることが好ましい。なお、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。
原紙の坪量としては、30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さとしては、40〜250μmが好ましい。原紙は、抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS P−8118)が一般的である。
更に、原紙剛度としては、JIS P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
原紙表面には表面サイズ剤を塗布してもよく、表面サイズ剤としては、上記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。
原紙のpHは、JIS P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
原紙表面および裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)および/または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
特に、インク受容層を形成する側のポリエチレン層は、写真用印画紙で広くおこなわれているように、ルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをポリエチレン中に添加し、不透明度および白色度を改良したものが好ましい。ここで、酸化チタン含有量としては、ポリエチレンに対して、概ね3〜20質量%が好ましく、4〜13質量%がより好ましい。
ポリエチレン被覆紙は、光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際に、いわゆる型付け処理をおこなって通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成したものも使用できる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例中の「%」および「部」は、特に指定しない限り各々「質量%」および「質量部」を表す。
[実施例1]
−支持体の作製−
LBKP100部からなる木材パルプをダブルディスクリファイナーによりカナディアンフリーネス300mlまで叩解し、エポキシ化ベヘン酸アミド0.5部、アニオンポリアクリルアミド1.0部、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン0.1部、カチオンポリアクリルアミド0.5部を、いずれもパルプに対する絶乾質量比で添加し、長網抄紙機により秤量し170g/m2の原紙を抄造した。
上記原紙の表面サイズを調整するため、ポリビニルアルコール4%水溶液に蛍光増白剤(商品名:Whitex BB、住友化学工業(株)製)を0.04%添加し、これを絶乾質量換算で0.5g/m2となるように上記原紙に含漫させ、乾燥した後、さらにキャレンダー処理を施して密度1.05g/mlに調整された基紙を得た。
得られた基紙のワイヤー面(裏面)側にコロナ放電処理を行なった後、溶融押出機を用いて高密度ポリエチレンを厚さ25μmとなるようにコーティングし、マット面からなる樹脂層を形成した(以下、樹脂層面を「裏面」と称する。)。この裏面側の樹脂層に更にコロナ放電処理を施し、その後、帯電防止剤として、酸化アルミニウム(商品名:アルミナゾル100、日産化学工業(株)製)と二酸化ケイ素(商品名:スノーテックスO、日産化学工業(株)製)とを質量比1:2で水に分散した分散液を、乾燥質量が0.2g/m2となるように塗布した。
更に、樹脂層の設けられていない側のフェルト面(表面)側にコロナ放電処理を施した。その後、アナターゼ型二酸化チタン10%、微量の群青、および蛍光増白剤0.01%(対ポリエチレン)を含有し、MFR(メルトフローレート)3.8の低密度ポリエチレンを、溶融押出機を用いて、厚み22μmとなるように押し出し、高光沢な熱可塑性樹脂層を基紙の表面側に形成して(以下、この高光沢面を「オモテ面」と称する。)、支持体とした。
−気相法シリカAの作製−
気相法シリカA(本発明における気相法シリカ)を、下記方法により作製した。まず、表面処理を施していない通常の親水性気相法シリカ(商品名:アエロジル300、日本アエロジル(株)製)に、ジメチルジクロロシラン処理を行い、シラノール基密度2.0個SiOH/nm2の気相法シリカAを作製した。
−インク受容層用塗布液の調製−
(1)シリカ分散液Aの調製
イオン交換水4000gに、エタノール144.1gと、分散剤としてカチオン性樹脂(商品名:シャロールDC−902P、第一工業製薬(株)製)65.5gとを添加した。続いて気相法シリカA750gを添加し、ディゾルバーにて6000rpmで20分間分散した。分散後、更に酢酸ジルコニル(商品名:ZA−30、第一稀元素化学工業(株)製)40.4gを添加し、ディゾルバーにて3500rpmで5分間分散した。得られた分散液を、ダイノミル(商品名:KDP、(株)シンマルエンタープライズ製)を用いて更に2回分散し、シリカ分散液Aを得た。得られたシリカ分散液Aの物性は、粘度:220mPa・s(30℃)、pH=3.32であった。
尚シリカ分散液Aは、粘度の安定性を得るため45℃の環境下で20時間保管した後、23℃の環境下で保管した。
(2)ポリビニルアルコール(PVA)液Aの調製
イオン交換水73.06kg、ノニオン性界面活性剤(商品名:エマルゲン109P、10%水溶液、花王(株)製)0.712kg、ジエチレングリコールモノブチルエーテル0.928kg、N,N’−ビス(カルバモイルメチル)エチレンジアミン0.156kg、および、ポリビニルアルコール(商品名:PVA235、(株)クラレ製)5.599kgを混合して水溶液を調製し、90℃で60分間加熱しPVA液Aを得た。得られたPVA液Aは、590mPa・s(30℃)、pH=4.04であった。
(3)インク受容層塗布液の調製
上記シリカ分散液A754.5g、イオン交換水15.3g、65.86gのイオン交換水に硼酸4.3gを溶解した硼酸水溶液、カチオン性樹脂(商品名:SC−505、ハイモ(株)製)2.9gを添加しディゾルバーにて2000rpmで10分間撹拌した。攪拌後、更に、PVA液A329.6gおよびジエチレングリコールモノブチルエーテル2.9gを添加し、1400rpmで10分間撹拌した。次いで、水分散製ウレタンポリマー(商品名:スーパーフレックス600B、第一工業製薬(株)製)14.1g、40%エタノール水70.4gを添加しディゾルバーにて1400rpmで5分間撹拌した。更に、両性界面活性剤(商品名:アンヒトール24B、花王(株)製)2.1g、ノニオン性界面活性剤(商品名:エマルゲン109P、2%水溶液、花王(株)製)7.0gを添加しディゾルバーにて1400rpmで5分間撹拌し、インク受容層塗布液Aを調製した。得られたインク受容層塗布液Aは、30℃で保管し、塗布直前(塗布の10分前)に、ポリ塩化アルミニウム(商品名:アルファイン83、大明化学(株)製)の5倍希釈水溶液をインク受容層塗布液A1000部に対して62.5部を添加しディゾルバーにて1400rpmで5分間撹拌した。これをインク受容層塗布液AAとした。
インク受容層塗布液Aの物性は、粘度:254mPa・s(30℃)、pH=3.80、表面張力:41.7mN/cmであった。
また、インク受容層塗布液AAの粘度は、160mPa・s(30℃)であった。
−硬膜剤溶液Aの調製−
イオン交換水811.1g、硼酸7.8g、炭酸アンモニウム 42.0g、炭酸ジルコニウム(商品名:ジルコゾールAC−7、第一稀元素化学工業(株))30.5g、ヒドロキシプロピルセルロース(商品名:HPC−SL、7%水溶液、日本曹運(株)製)68.6g、ノニオン性界面活性剤(商品名:エマルゲン109P、2%水溶液、花王(株)製)240.0gを添加し硬膜剤溶液Aを調製した。
硬膜剤溶液Aの物性は、粘度:1.38mPa・s(30℃)、pH=8.02、表面張力は31.5mN/cmであった。
−インクジェット記録用シートの作製−
上述のインク受容層塗布液AAを、上記支持体のオモテ面にエクストルージョンダイコーターを用いて194.4g/m2の塗布量で塗布し、熱風乾燥機にて70℃(風速3〜8m/sec)で塗布層の固形分濃度が20%になるまで乾燥させた。塗布層はこの期間、恒率乾燥速度を示した。その直後、上記塗布層を支持体ごと上記硬膜剤溶液Aに5秒浸漬させてその10g/m2を付着させ、その後さらに70℃で10分間乾燥させた。これにより支持体上に乾燥膜厚が34μmのインク受容層を形成し、本発明のインクジェット記録用シートAを作製した。
[実施例2]
実施例1において用いられた「気相法シリカA」に代えて、シラノール基密度1.8個SiOH/nm2の「気相法シリカB」を使用した以外は実施例1と同様にして本発明のインクジェット記録用シートを作製した。
[実施例3]
実施例1において用いた「気相法シリカA」に代えて、シラノール基密度1.5個SiOH/nm2の「気相法シリカC」を使用した以外は実施例1と同様にして本発明のインクジェット記録用シートを作製した。
[実施例4]
実施例1において用いた「気相法シリカA」に代えて、シラノール基密度1.2個SiOH/nm2の「気相法シリカD」を使用した以外は実施例1と同様にして本発明のインクジェット記録用シートを作製した。
[実施例5]
実施例1において、インク受容用塗布液中に下記イオウ化合物Aを1g/mとなるように添加した以外は実施例1と同様にして本発明のインクジェット記録用シートを作製した。
[比較例1]
実施例1において用いられた「気相法シリカA」を、「気相法シリカE(商品名:アエロジル300、日本アエロジル(株)製)」に変更した以外は実施例1と同様して比較用のインクジェット記録用シートを得た。
[比較例2]
実施例1において用いた「気相法シリカA」に代えて、下記のようにして得られた「気相法シリカF」を使用した以外は実施例1と同様にして本発明のインクジェット記録用シートを作製した。
−気相法シリカFの形成−
気相法シリカF(本発明における気相法シリカ)を、下記方法により作製した。まず、表面処理を施していない通常の親水性気相法シリカ(商品名:アエロジル300、日本アエロジル(株)製)に、ジメチルジクロロシラン処理を行い、シラノール基密度0.7個SiOH/nm2の気相法シリカFを作製した。
〔評価〕
各実施例および比較例におけるシリカ微粒子およびインクジェット記録用シートについて下記の評価を行った。
−BET比表面積−
各実施例および比較例で用いた気相法シリカのBET比表面積を、自動BET比表面積測定装置(商品名:Soptpmatic series 1800、CARLO-ERBA社製)を用いて測定した。結果を下記表1に示す。
−シラノール基密度−
各実施例および比較例で用いた気相法シリカのBET比表面積を、「TECHNICAL BULLETIN AEROSIL NO.17「AEROSILの基本性能」P.41、日本アエロジル(株)」に記載のリチウムアルミニウムハイドライド法によって測定した。結果を下記表1に示す。
−インク吸収容量−
水銀ポロンメータ(商品名:ポアサイザー9320−PC2、島津製作所(株)製)を用いて各インクジェット記録用シートの1m2当たりのインク吸収容量を測定した。結果を下記表1に示す。
−光沢度−
各インクジェット記録用シートのインク受容層表面における60°光沢度を、スガ試験機(株)製のデジタル変角光沢度計(商品名:UGV−50DP、スガ試験機(株)製)を用いて測定した。結果を下記表1に示す。
−インク吸収性−
インクジェットプリンタ(商品名:PM−G800、セイコーエプソン(株)製)を用いて、各インクジェット記録用シートのインク受容層表面に、Y(黄)、M(マゼンダ)、C(シアン)、K(黒)、B(青)、G(緑)およびR(赤)のインクによりベタ印字した。次いで、その直後(約10秒後)に紙を印画面に接触押圧し、紙へのインクの転写の有無を目視によって観察し、下記の基準に従ってインク吸収性を評価した。結果を下記表1に示す。
〔基準〕
○:紙にインクがまったく転写されなかった。
×:紙に多くのインクが転写された。
−ビーディング−
インクジェットプリンタ(商品名:PM−G800、セイコーエプソン(株)製)を用いて、各インクジェット記録用シートのインク受容層表面に、Y(黄)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(黒)、B(青)、G(緑)およびR(赤)のベタ画像を印字した。得られた画像についてビーズ玉状の色ムラ(ビーディング)の発生程度を目視により観察し、下記の基準に従って評価した。結果を下記表1に示す。
〔基準〕
○:ビーディングの発生は認められなかった。
×:ビーディングの発生が顕著であった。
−ブロンズ光沢−
インクジェットプリンタ(商品名:PM−G800、セイコーエプソン(株)製)を用いて、各インクジェット記録用シートのインク受容層表面に、B(青)のベタ画像を印字した。得られた画像についてブロンズ光沢の発生程度を目視により観察し、下記の基準に従って評価した。結果を下記表1に示す。
〔基準〕
○:ブロンズ光沢の発生は認められなかった。
×:ブロンズ光沢の発生が顕著であった。
−ビジュアル濃度−
インクジェットプリンター(商品名:PM−G800、セイコーエプソン(株)製)を用いて、各インクジェット記録用シートのインク受容層表面に、K(黒)のベタ画像を印画した。印画後、3時間放置し、その後、ビジュアル濃度計(商品名:Xライト310TR、Xライト社製)によってビジュアル濃度(黒Dm)を測定した。結果を下記表1に示す。
−耐オゾン性−
インクジェットプリンター(商品名:PM−G800、セイコーエプソン(株)製)を用いて、各インクジェット記録用媒体のインク受容層上に、M(マゼンタ)のベタ画像を印画した。印画後、オゾン濃度5ppmの環境下で16時間保管し、保管前のマゼンタ濃度(D0)と保管後のマゼンタ濃度(D1)とを、反射濃度測定計(商品名:Xライト938、Xライト社製)にて測定し、マゼンタ濃度の残存率((D1×100)/D0)を算出した。結果を下記表1に示す。
Figure 2005271485
表1から、本発明における気相法シリカを用いた実施例のインクジェット記録用シートは、シラノール基密度が2.5(個SiOH/nm2)の気相法シリカEを用いた比較例1に比べてインク吸収容量が高く、インク吸収性、黒色のDmおよび耐オゾン性に優れ、ビーディングおよびブロンズ光沢の発生が抑制されていることがわかる。また、シラノール基密度が0.7(個SiOH/nm2)の気相法シリカFを用いた比較例2は、インク吸収容量が高く、インク吸収性、および耐オゾン性に優れ、ビーディングおよびブロンズ光沢の発生が抑制されているものの、光沢度および黒色Dmが著しく低下していた。

Claims (11)

  1. 支持体上に、少なくとも気相法シリカと水溶性樹脂とを含むインク受容層を有するインクジェット記録用媒体であって、
    前記気相法シリカのシラノール基密度が1.0〜2.3〔個SiOH/nm2〕であることを特徴とするインクジェット記録用媒体。
  2. 前記気相法シリカは、アルキルシラン処理を施されたものであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用媒体。
  3. 前記水溶性樹脂は、ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録用媒体。
  4. 前記インク受容層は、さらに硬膜剤とカチオン性樹脂とを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録用媒体。
  5. 前記硬膜剤は、ホウ素化合物であることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録用媒体。
  6. 前記インク受容層は、さらに水溶性金属化合物を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録用媒体。
  7. 前記水溶性金属化合物は、アルミニウム塩およびジルコニウム塩から選択される化合物の少なくとも1種であることを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録用媒体。
  8. 前記アルミニウム塩は、ポリ塩化アルミニウムであることを特徴とする請求項7に記載のインクジェット記録用媒体。
  9. 前記インク受容層は、さらに水溶性イオウ化合物を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェット記録用媒体。
  10. 前記水溶性イオウ化合物は、下記一般式(1)および下記一般式(2)の少なくともいずれかで表わされることを特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録用媒体。
    X−Y−S−CH2−CH2−S−Y−X 一般式(1)
    X−Y−S−S−Y−X 一般式(2)
    〔式中、Xはそれぞれ独立にヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸塩基、アシル基、アミノ基、チオカルバモイル基、スルファモイル基またはスルホアミノ基を表わす。Yは、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキレン基を表わす。〕
  11. 前記気相法シリカのBET比表面積は、180m2/g以上であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のインクジェット記録用媒体。
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