JP2005271474A - 平版印刷用原版 - Google Patents

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Abstract

【課題】 露光後、現像処理を行うことなく印刷することが可能であって、感度に優れ、しかも地汚れが生じにくい平版印刷用原版を提供する。
【解決手段】 加熱により疎水性に変換可能な親水性層を支持体上に有し、親水性層が疎水性化合物を含む粒子と光熱変換剤とを含む平版印刷用原版において、0乃至0.8の範囲にI/O値を有する疎水性化合物を用いる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、支持体上に画像形成を行う親水性層を有する現像不要のネガ型平版印刷用原版に関する。より詳しくは、デジタル信号に基づいた赤外線走査露光による画像記録が可能であり、画像記録したものは現像処理することなくそのまま印刷が可能な平版印刷用原版に関する。
近年進展が著しいコンピュータ・ツウ・プレート用刷版については、多数の研究がなされている。その中で一層の工程合理化と廃液処理問題の解決を目指すものとして、露光後現像処理をすることなしにそのまま印刷機に装着して印刷できる平版印刷用原版や、印刷機上で露光し、そのまま印刷できる平版印刷用原版が研究され、種々の方法が提案されている。
親水性表面を有する基板上に、熱可塑性ポリマー微粒子を親水性樹脂などのマトリックス中に分散した親水性の画像形成層を有する感熱性平版印刷用原版が開示されている(例えば、特許文献1〜3参照)。赤外線露光などによって、これらの画像形成層に熱を加えると、熱可塑性ポリマー微粒子が溶融合体して、親水性画像形成層表面が芯油性画像部に変換され、この画像部が形成された平版印刷版を印刷機に装着し、版胴を回転しながら印刷版に湿し水とインキを供給することによって、未加熱部分をあたかも現像処理したように除去してしまう方法(機上現像法)によって、従来行われていた自動現像機などを用いる現像処理を省略することができる。
また、光及び熱の少なくとも一方のエネルギーにより分解する基を表面に有するミクロゲルと赤外光吸収剤を画像形成層に含有する平版印刷用材料を機上現像することが提案されている(例えば、特許文献4参照)。
しかしながら、上記の機上現像型の無処理平版印刷版には、未露光部の除去が印刷機の運転開始条件によって左右されたり、親油性成分を多く含んだ除去物が湿し水ローラや湿し水を汚染するため、良好な印刷物を得るのに、数十〜数百枚の印刷が必要だったり、ローラの洗浄を必要とするなど、コストおよび手間のかかる問題がある。
熱可塑性ポリマー微粒子を架橋した親水性樹脂中に分散した感熱層を有する感熱性平版印刷用原版が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。また、架橋した親水性バインダーポリマー中に親油性微粒子として親油成分を内包するマイクロカプセルを分散した親水性層を有する感熱性平版印刷用原版も提案されている(例えば、特許文献5〜8参照)。これらの感熱性平版印刷用原版は、露光による熱で形成された親油性画像部と未露光部の親水性非画像部との表面構成を印刷面として用いることにより、機上現像を必要とせず完全無処理で、湿し水を使用する平版印刷を行える。
しかしながら、上記の熱可塑性ポリマー微粒子を架橋した親水性樹脂中に分散した感熱層を有する感熱性平版印刷用原版では、該熱可塑性ポリマー微粒子を熱可塑化または熱溶融させて周囲の疎水化を行うために、高い熱エネルギーを感材層に与える必要がある。また、親油成分を内包するマイクロカプセルを分散した親水性層を有する感熱性平版印刷用原版では、原理上は低い露光エネルギーでも親油化を進行させることが可能である。しかしながら、保存条件によってはマイクロカプセル中から親油成分が親水性層中に拡散してしまい、非画像部汚れを引き起こしてしまうために、マイクロカプセルの壁膜はある厚み以下に減らすことはできず、感度と非画像部汚れの両立が大変困難である。以上のように、完全無処理の平版印刷用原版においては、非画像部汚れが起きにくく、かつ高い感度を有する画像形成技術は未だ得られていないのが実情である。
以上に述べた従来技術の経緯が示すように、高い感度を持ち、しかも地汚れなどの印刷品質特性を満たそうとする試みは非常に困難であって、未だ十分に満足できる状況に達していない。
特許2938397号公報 特開平9−127683号公報 国際公開第99/10186号パンフレット 特開2000−238452号公報 特開平7−1849号公報 特開平7−1850号公報 特開平10−6468号公報 特開平11−70756号公報 リサーチ・ディスクロージャー誌、1992年1月、第33303号
本発明の目的は、露光後、現像処理を行うことなく印刷することが可能であって、感度に優れ、しかも地汚れが生じにくい平版印刷用原版を提供することである。
本発明者は、印刷版の製版において、疎水性化合物を含む粒子が親水性層を疎水性にする作用について研究を進めた。本発明者が粒子に含まれる疎水性化合物を検討した結果、地汚れ悪化を伴わない疎水性化合物があることが判明した。
本発明は、下記(1)〜(3)の平版印刷原版を提供する。
(1)加熱により疎水性に変換可能な親水性層を支持体上に有し、親水性層が疎水性化合物を含む粒子と光熱変換剤とを含む平版印刷用原版であって、疎水性化合物が0乃至0.8の範囲にI/O値を有することを特徴とする平版印刷用原版。
(2)疎水性化合物が重合性基を有する(1)に記載の平版印刷用原版。
(3)疎水性化合物を含む粒子がマイクロカプセルである(1)に記載の平版印刷用原版。
本発明は、支持体上に、疎水性化合物を含む微粒子と、光熱変換剤料とを含む、熱によって疎水性化可能な親水性層を有する平版印刷用原版に関してなされた発明であって、その特徴は、微粒子に含まれる疎水性化合物にI/O値が0〜0.8の範囲にある化合物、特に好ましくは0.01〜0.7の範囲である化合物を使用し、粒子の安定性を増したことである。これらの化合物を使用することによって、室温において粒子から親水性層へと疎水性化合物が拡散することを原因とする、非画像部汚れの発生が抑制できる。これにより、従来は地汚れ抑制との両立が困難だったために適用できなかった、粒子中のシェル部材量減等による高感度化を適用することが可能となり、高感度かつ地汚れが生じにくい平版印刷用原版を実現することができる。
上記I/O値とは、甲田善生「有機概念図 ―基礎と応用―」(三共出版、1984年)、藤田穆・赤塚政美「系統的有機定性分析(混合物編)」(風間書房、1974)記載の方法で算出される、有機性、無機性を定性的に数値化した整数値について、無機性を表す値を、有機性を表す値で除した値である。なお、本発明におけるI/O値0とは、無機性を有しない、すなわち無機性を表す値が0であることを意味する。I/O値は、2つの異なる化合物間での親和性や相溶性などを評価するのに用いることができる値であって、I/O値が小さいほど有機性が高く無機性は低くなるため無機性の高い化合物や親水性の高い化合物との親和性が下がる。したがって、疎水性化合物として低いI/O値を有する化合物を用いると、無機顔料および親水性化合物とからなる親水性層、および、高I/O値の素材からなる、疎水性化合物を含む粒子シェル部との親和性が低下し、疎水性化合物は上記親水性層および上記シェル部を透過・拡散することができなくなる。この効果は上記シェル部の、疎水性化合物を含む粒子全体に対する重量比を減じても効果がある。このため、疎水性化合物を含む粒子全体に対する上記シェル部の重量比を減じて高感度化を図っても、疎水性化合物として低いI/O値を有する化合物を用いれば、室温における疎水性化合物拡散に起因する非画像部汚れを引き起こすことなく高感度を果たすことが可能である。
[疎水性化合物を含む粒子]
本発明では、微粒子が疎水性化合物を含む。本発明において、疎水性化合物は、I/O値が0〜0.8の範囲、好ましくは0.01〜0.7の範囲に含まれる化合物である。
好ましい微粒子は、疎水性化合物と親水性化合物との複合構成の表面親水性の粒子分散物である。熱または光の作用によって疎水性化合物が粒子及びその近傍の親水性層を疎水性に変換するする機能を有することが好ましい。複合粒子の形態としては、コアシェル型を始めとする表面・内部の二重構造となっている粒子、マイクロカプセル型粒子、および架橋構造粒子がある。マイクロカプセル型粒子が特に好ましい。
粒子中におけるシェル部材と疎水性化合物の重量比は、用いるシェル部材と疎水性化合物の組合せ、さらにはその他適宜加えられる添加物、例えば光熱変換剤や分散材、シェル部材の架橋促進材の量により適宜選択されるが、好ましくはシェル部材:疎水性化合物の重量比が80:20乃至10:90の範囲に含まれ、より好ましくは70:30乃至80:20の範囲、特に好ましくは60:40乃至25:75の範囲に含まれる。この範囲のシェル部材:疎水性化合物の重量比において疎水性化合物を含む粒子を作成することにより、粒子から疎水性化合物が拡散することによる非画像部汚れを伴うことなく、高感度な印刷版を得ることが可能である。
[マイクロカプセル]
本発明におけるマイクロカプセルは公知の方法によって作成されるマイクロカプセル一般が使用可能であるが、好ましくは、界面重合法、in situ重合法によって作成される。なかでも、界面重合法によって作成されるマイクロカプセルが、作成の簡便さおよび設備の簡便さの為、より好ましく適用される。
上記マイクロカプセル型粒子の壁材として用いられる化合物としては、公知のマイクロカプセル作成方法において使用される壁材一般が使用可能である。具体例としては、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アミノアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリレート共重合樹脂、ゼラチン、ポリビニルアルコール等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、また、これらのうち2種類以上の壁材を併用してマイクロカプセル壁とすることも可能である。中でも、ポリウレタン・ポリウレア樹脂が特に好ましく使用される。
上記界面重合法による、ポリウレタン・ポリウレア樹脂を壁材としたマイクロカプセル作成の具体例を以下に述べる。すなわち、多価イソシアネート等の壁材をカプセル化するべき芯物質を含む油相中に混合し、ポリビニルアルコール等の保護コロイド物質を溶解した水性媒体中に乳化分散し、液温を上昇させて油滴界面で高分子形成反応を起こすことによって作成される。芯物質は、疎水性化合物を含む油相であっても、または疎水性化合物そのものであってもよい。また、必要に応じて、後述の光熱変換剤を芯物質または壁材中に加えることが可能である。このようにして作成されたマイクロカプセルは、疎水性化合物を含む粒子として特に好ましく使用される。
ここで多価イソシアネート化合物の具体例を以下に示すと例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネート、3,3´−ジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネート、キシレン−1,4−ジイソシアネート、4,4´−ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロへキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロへキシレン−1,4−ジイソシアネート等のジイソシアネート類、4,4´,4”、トリフェニルメタントリイソシアネート、トルエン−2,4,6−トリイソシアネート等のトリイソシアネート類、4,4´−ジフェニルメタン−2,2´,5,5´−テトライソシアネート等のテトライソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物、2,4−トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物、キシリレンジイソシアネートとヘキサントリオールとの付加物等のイソシアネートプレポリマーなどが挙げられる。また、必要に応じ二種類以上の併用も可能である。これらのうち特に好ましいものは分子内にイソシアネート基を三個以上有するものである。
芯物質への多価イソシアネート化合物の溶解を補助するために、有機溶剤を加えることが可能である。好ましい有機溶剤の具体例としては、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、メチレンクロライド、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられ、特に好ましくは酢酸エチルが使用される。
また、マイクロカプセル化の際に分散媒側に用いられる保護コロイドとしては、ゼラチン、ゼラチン誘導体、ポリビニルアルコール、ヒドロキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、カゼインなど、マイクロカプセル芯剤側の乳化分散の際に壁材成分側に添加する高分子材料として前記した各種保護コロイドを用いることが出来る。
さらに、多価イソシアネート類の壁膜形成反応促進や、形成されるポリウレタン・ポリウレア膜の物性を制御することを目的として、適当な助剤を添加することが可能である。具体的な例としては、フェノール化合物、アルコール化合物、アミン化合物、アミド化合物、スルホンアミド化合物などがあり、これらは、芯物質中に含有させてもよいし、分散媒中に含有させてもよい。
[疎水性化合物]
本発明に用いる疎水性化合物は、前述のようにI/O値が0〜0.8の範囲、好ましくは0.01〜0.7の範囲に含まれる化合物であることを特徴とする。かかる疎水性化合物の例としては、炭素数7以上のアルカン類およびアルキン類や、アリール類、炭素数が8以上のエステル類、および上述した化合物に、ハロゲン、アルキルオキシ基、アルキルメルカプト基を付与した化合物などが挙げられる。ただし、上述の算出法においてI/O値が0乃至0.8の範囲に含まれる限り、本発明に用いられる疎水性化合物は、以上に挙げた化学種に限定されるものではない。
上記の炭素数7以上のアルカン類および環状アルカン類の具体例としては、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、メチルシクロヘキサン、1−ヘプテン、2−ヘプテン、n−オクタン、2,2−ジメチルヘキサン、2−メチルヘプタン、シクロオクタン、シクロオクテン、1,2−ジメチルシクロヘキサン、1−オクテン、n−ノナン、イソプロピルシクロヘキサン、2,3−ジメチルヘプタン、n−デカン、ブチルシクロヘキサン、デカリン、n−ウンデカン、n−ドデカン、ビシクロヘキシル、n−トリデカン等が挙げられる。また、これらの構造異性体も使用可能である。マイクロカプセル合成時の油相への溶解性から、炭素数は18以下であることが好ましく、さらには8乃至12の範囲であるものが特に好ましい。
上記アリール類の例として、ベンゼン類(下記一般式(I))、ナフタレン類(下記一般式(II))、ビフェニル類(下記一般式(III))、ジフェニルメタン類(下記一般式(IV))、アントラセン類(下記一般式(V))、フェナンスレン(下記一般式(VI))が挙げられる。特にトルエン、p−キシレン、m−キシレン、o−キシレン、メシチレン、スチレン、4−メチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、2,7−ジイソプロピルナフタレン、ジフェニルメタンが好ましく使用される。
Figure 2005271474
(R〜R10は、H、アルキル基、アリール基、ビニル基、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、アルキルオキシ基、ビニルオキシ基、アルキルメルカプト基のいずれかであることを表し、R11、R12はH、アルキル基、アリール基、ビニル基のいずれかであることを表す。ただし、アルキルオキシ基、ビニルオキシ基、アルキルメルカプト基を有する(I)〜(VI)の化合物の具体的な構造および上記置換基の数に関しては、化合物のI/O値が0.8以下となるものに限定される。)
上記炭素数8以上のエステル類の具体例としては、酢酸シクロヘキシル、酢酸ヘキシル、酢酸ベンジル、安息香酸メチル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、フタル酸ジn−オクチル、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)が挙げられるが、I/O値が0乃至0.8の範囲に含まれる限り、これらの化合物に限定されるものではない。また、下記に具体例が記されているような、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、イタコン酸エステル、クロトン酸エステル、イソクロトン酸エステルなども好適に使用される。
これらの疎水性化合物は2種類以上を混合して使用しても良い。
本発明に用いる疎水性化合物はさらに、重合性基を含んでいることが好ましく、かかる重合性基として、エチレン性不飽和二重結合が特に好ましい。該エチレン性不飽和二重結合を該疎水性化化合物中に少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物が好ましく使用される。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつことが可能である。モノマー及びその共重合体の例として、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸など)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和ホスホン酸エステル、スチレン、ビニルエーテル等の化合物群が使用可能である。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類、およびスチレン、ビニルエーテル類と、単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはスチレン、ビニルエーテル類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはスチレン、ビニルエーテル類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
イタコン酸エステルとしては、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート等がある。クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート等がある。イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート等がある。
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926、特公昭51−47334、特開昭57−196231記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240、特開昭59−5241、特開平2−226149記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613記載のアミノ基を含有するもの等から選ばれる、I/O値が0〜0.8の範囲のものも好適に用いられる。更に、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
また、上記のアリール類に上記不飽和カルボン酸エステルを含む官能基を付与した化合物も好適に用いられる。すなわち、上記一般式(I)〜(VI)において、置換基Rとして不飽和カルボン酸エステルを含むアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルメルカプト基を適用した化合物が好適に用いられる。上記一般式(I)〜(VI)に該当しないアリール類に同様の置換基を付与した化合物も、同様に好ましく用いられる。ただし、アリール化合物、不飽和カルボン酸エステル基の数、および、不飽和カルボン酸エステルを含むアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルメルカプト基の構造は、化合物全体のI/O値が0乃至0.8の範囲であるものに限定される。
疎水性化合物として用いる化合物は、化合物固有の疎水性の観点から炭素数7以上のアルカンおよび環状アルカン、炭素と水素のみから構成されるアリール類が特に好ましい。また、重合性基を有する化合物の場合は、メタクリル酸エステル類、アクリル酸エステル類の使用が好ましい。
これら疎水性化合物は、疎水性化合物を含む粒子中に90質量%から20質量%含まれることが好ましく、80質量%から30質量%含まれることがさらに好ましい。75質量%から40質量%含まれることが特に好ましい。この範囲の含有量において疎水性化合物を、疎水性化合物を含む粒子中に含有させることによって、未露光部における疎水性化合物の、疎水性化合物を含む粒子からの拡散に起因する地汚れを伴うことなく、高感度な印刷版を得ることが可能である。
スチレン類としては、スチレン、4−メチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン等アルキルスチレン類、4−tert−ブトキシスチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
[光熱変換剤]
親水性層に含まれる光熱変換剤は、吸光度が少なくとも0.3×10cm−1の物質を指しており、好ましくは1×10cm−1以上、さらに好ましくは1×10cm−1以上でかつ吸収光は実質的に蛍光や燐光に変換されない物質を指す。なお、吸光度は透過濃度を厚みで除した値である。また、染料のように媒質中に実質的に分子分散している場合は、媒質の光吸収係数が上記の値である。いうまでもなく、多くの物質は多少とも光を吸収し、光を吸収すればそれによって励起したその物質のエネルギー準位は、基底準位に戻るとき蛍燐光を発しないかぎり熱の放出となるので厳密には殆どの物質がたとえ僅かであっても光熱変換機能を持っていると言える。したがって、光熱変換性の物質という場合には、目的とする変化をもたらすことのできる大きさの光吸収特性を有する物質を指すのが適切であり、本発明における光熱変換剤は、その目的から少なくとも上記の吸光度を持っている物質を意味している。本発明に用いられる上記の要件を満たした光熱変換剤は、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物、金属炭化物等の金属化合物、非金属単体および化合物、炭素単体、顔料および染料のいずれであってもよい。また、本発明において光熱変換剤は、親水性層の親水性部分中に含まれてもよいし、親水性層中の微粒子に含まれてもよいし、この両方に含まれてもよい。
光熱変換性の金属化合物微粒子は、それ自体が疎水性の物質からなるものも、親水性の物質からなるものも、またその中間のもののいずれでもよい。
この種の好ましい金属化合物は、遷移金属の酸化物、周期律表の2〜8族の金属元素の硫化物及び周期律表の3〜8族の金属の窒化物である。遷移金属酸化物には鉄、コバルト、クロム、マンガン、ニッケル、モリブデン、テルル、ニオブ、イットリウム、ジルコニウム、ビスマス、ルテニウム、バナジウムなどの酸化物が含まれる。また、必ずしも遷移金属に含めない分類法もあるが、亜鉛、水銀、カドミウム、銀、銅の酸化物も本発明に用いることができる。これらの中では、FeO,Fe2 3 ,Fe3 4 ,CoO,Cr2 3 ,MnO2 ,ZrO2,Bi2 3 ,CuO,CuO2 ,AgO,PbO,PbO2 、VOx (x=1〜5)がとくに好ましい金属酸化物の例として挙げられる。VOx には、黒色のVO、V2 3 、VO2 、や褐色のV2 5 が挙げられる。
好ましい無機金属酸化物としては、TiOx (x=1.0〜2.0)、SiOx (x=0.6〜2.0)、AlOx (x=1.0〜2.0)も挙げることができる。TiOx (x=1.0〜2.0)には、黒色のTiO、黒紫色のTi2 3 、結晶形と狭雑物によって種々の色を呈するTiO2 類がある。SiOx (x=0.6〜2.0)には、SiO、Si3 2 、無色あるいは共存物質によって紫、青、赤などの色を示すSiO2 が挙げられる。また、AlOx (x=1.5)には、無色あるいは共存物質によって赤、青、緑などに呈色するコランダムなどが挙げられる。
金属酸化物が多価金属の低次酸化物の場合は、光熱変換剤であって、かつ自己発熱型の空気酸化反応物質でもある場合がある。その場合は、光吸収したエネルギーのほかに自己発熱反応の結果発生した熱エネルギーも利用できるので、好ましい。これらの多価金属の低次酸化物は、Fe,Co,Niなどの低次酸化物が挙げられる。具体的には、酸化第一鉄、四三酸化鉄、一酸化チタン、酸化第一錫、酸化第一クロムなどが挙げられる。その中でも酸化第一鉄、四三酸化鉄及び一酸化チタンが好ましい。
自己発熱反応が起こるかどうかは、示差熱天秤(TG/DTA)により容易に確認することができる。示差熱天秤に、自己発熱反応物質を挿入して、温度を一定速度で上昇させていくと、ある温度で発熱ピークが出現して発熱反応が起こったことが観測される。金属あるいは低次酸化金属の酸化反応を自己発熱反応として用いた場合、発熱ピークが現れるとともに、熱天秤では重量が増えることも同様に観測される。繰り返しになるが、光・熱変換機構に加えて自己発熱反応エネルギーを利用することにより、従来よりも単位輻射線量当たり、より多くの熱エネルギーを、しかも持続的に利用することができ、そのために感度を向上させることができる。
光熱変換性微粒子が金属硫化物からなる場合、好ましい金属硫化物は、遷移金属などの重金属硫化物である。中でも好ましい硫化物には鉄、コバルト、クロム、マンガン、ニッケル、モリブデン、テルル、ストロンチウム、錫、銅、銀、鉛、カドミウムの硫化物が挙げられ、とりわけ、硫化銀、硫化第一鉄及び硫化コバルトが好ましい。
光熱変換性微粒子が金属窒化物からなる場合、好ましい金属窒化物は、金属のアジド化合物である。とくに銅、銀及び錫のアジド化物が好ましい。これらのアジド化合物は、光分解によって発熱する自己発熱性化合物でもある。そのほかの好ましい無機金属窒化物には、TiNx (x=1.0〜2.0)、SiNx (x=1.0〜2.0)、AlNx (x=1.0〜2.0)などが挙げられる。TiNx (x=1.0〜2.0)としては、青銅色のTiNや褐色のTiNx (x=1.3)が挙げられる。SiNx (x=1.0〜2.0)としては、Si2 3 ,SiN,Si3 4 が挙げられる。また、AlNx (x=1.0〜2.0)にはAlNなどを挙げることができる。
上記の各金属酸化物、硫化物及び窒化物は、いずれも公知の製造方法によって得られる。また、チタンブラック、鉄黒、モリブデン赤、エメラルドグリーン、カドミウム赤、コバルト青、紺青、ウルトラマリンなどの名称で市販されているものも多い。
これら親水性の金属化合物の粒子サイズは、粒子を構成する物質の屈折率や吸光係数によって最適サイズがことなるが、一般に0.005〜5μmであり、好ましくは0.01〜3μmである。粒子サイズが、微小に過ぎると光散乱により、粗大に過ぎると粒子界面反射により、光吸収の非効率化がおこる。
金属粒子の多くは、光熱変換性であってかつ自己発熱性でもあって光吸収によって熱を発生させた上にその熱をトリガーとする発熱反応によってさらに多量の熱を供給する。
微粒子としては、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Pb等の微粒子が含まれる。これらの金属微粒子は光熱変換性であると同時に自己発熱性でもある。この中でも、吸収光の光熱変換によって得た熱エネルギーにより、酸化反応等の発熱反応を容易に起こすものが好ましく、具体的には、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Mo、Ag、In、Sn、Wが好ましい。その中でもとくに輻射線の吸光度が高く、自己発熱反応熱エネルギーの大きいものとして、Fe、Co、Ni、Cr、Ti、Zrが好ましい。
また、これらの金属は、単体粒子のみでなく、2成分以上の合金で構成されていてもよく、また、金属と前記した金属酸化物、窒化物、硫化物及び炭化物等で構成された粒子でもよい。金属単体の方が酸化等の自己発熱反応熱エネルギーは大きいが、空気中での取り扱いが煩雑で、空気に触れると自然発火する危険があるものもある。そのような金属粉体は、表面から数nmの厚みは金属の酸化物、窒化物、硫化物、炭化物等で覆われている方が好ましい。これらの粒子の粒径は、10μm以下、好ましくは、0.005〜5μm、さらに好ましくは、0.01〜3μmである。0.01μm以下では、粒子の分散が難しく、10μm以上では、印刷物の解像度が悪くなる。
本発明では、上記の金属化合物及び金属のほかに、非金属単体及び非金属化合物の光熱変換性微粒子も必要に応じて用いられる。これらの光熱変換性微粒子には、カーボンブラック、黒鉛(グラファイト)、骨炭(ボーンブラック)などの単体粒子のほか各種の有機、無機顔料が挙げられる。
本発明には、画像形成用の照射光に対して光熱変換性の微粒子分散性の任意の顔料及び染料を用いることができる。顔料は、金属錯体顔料、非金属顔料のいずれであってもよい。また、複合粒子内に分子分散(狭義の染料)状態で存在してもよい。したがって以下の記述において、顔料という場合には、分子分散した染料も含めることもある。また、染料という場合には、顔料と狭義の染料を含めた広義の意味で用いる。固体粒子状態か分子分散状態かは、媒体の状態によって変わりうることであり、光熱変換性はいずれの状態でも発現できるので、本明細書においては、両者を纏めて説明する。
染料としては、市販の染料および文献(例えば「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、金属チオレート錯体などの染料が挙げられる。好ましい染料としては例えば特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許第434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
また、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号公報に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収色素を挙げることができる。上記の中でも赤外線領域に強い吸収域をもつ染料が好ましく、それらは、ポリメチン色素、シアニン色素、スクアリリウム色素、ピリリウム色素、ジインモニウム色素、フタロシアニン化合物、トリアリールメタン色素、金属ジチオレンから選ばれる色素である。これらのうち更に好ましいものとしては、ポリメチン色素、シアニン色素、スクアリリウム色素、ピリリウム色素、ジインモニウム色素、フタロシアニン化合物であり、その中でも合成適性の観点からポリメチン色素、シアニン色素、フタロシアニン化合物がもっとも好ましい。
本発明において使用される顔料としては、市販の顔料およびカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレンおよびペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理をほどこして用いてもよい。表面処理の方法には樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤やエポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)および「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることがさらに好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。顔料の粒径が0.01μm未満のときは分散物の感光性組成物の塗布液中での安定性の点で好ましくなく、また、10μmを越えると塗布後の親水性層の均一性の点で好ましくない。顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載がある。
また、下記の染料も本発明に用いることができる。すなわち、コバルトグリーン(C.I.77335),エメラルドグリーン(C.I.77410),フタロシアニンブル−(C.I.74100),銅フタロシアニン(C.I.74160),ウルトラマリン(C.I.77007),紺青(C.I.77510),コバルト紫(C.I.77360),パリオジェン赤310(C.I.71155),パーマネントレッドBL(C.I.71137),ペリレン赤(C.I.71140),ローダミンレーキB(C.I.45170:2),ヘリオボルドーBL(C.I.14830),ライトファーストレッドトーナーR(C.I.12455),ファーストスカーレットVD、リゾールファーストスカーレットG(C.I.12315),パーマネントブラウンFG(C.I.12480),インダンスレンブリリアントオレンジRK(C.I.59300),赤口黄鉛(C.I.77601),ハンザイエロー10G(C.I.11710),チタンイエロー(C.I.77738),亜鉛黄(C.I.77955),クロムイエロー(C.I.77600)などが挙げられる。そのほかには、静電記録用トナーに用いられる各種の顔料も好ましく用いることができる。
これらの染料は、親水性層の組成物全固形分に対し0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜10質量%、染料の場合特に好ましくは0.5〜10質量%、顔料の場合特に好ましくは1.0〜10質量%の割合で添加することができる。顔料、染料などの添加量が0.01質量%未満であると感度が低くなり、また50質量%を越えると印刷時非画像部に汚れが発生しやすい。
また、上記の金属化合物、金属粉体、非金属単体あるいは染料(顔料)などの光熱変換剤の親水性層における含有量は、複合粒子の固形の構成成分の1〜95質量%であり、好ましくは、3〜90質量%、より好ましくは、5〜80質量%である。1質量%以下では発熱量が不足し、95質量%以上では膜強度が低下する。
上記の金属化合物、金属粉体、非金属単体、顔料などの各光熱変換剤が粒子状の場合、それらの粒子はそれ自体の表面が疎水性、親水性あるいは中間的な性質のいずれであってもよい。表面疎水性の場合は、大抵の例では疎水性化前駆体と共存できるが、表面親水性の光熱変換剤や疎水性であっても分散性改良などのために必要であれば、粒子の表面に、界面活性剤による表面処理、脱気後水蒸気存在下でプラズマ照射を行う水酸基導入処理や、テトラエトキシシランなどによるシリケート処理を施すなどの公知の方法によって表面の親水性・疎水性の程度を調節してもよい。
[親水性バインダー]
本発明において疎水性化前駆体及び光熱変換剤を含む親水性層は、親水性バインダーを含むことが好ましい。
親水性バインダーは、親水性ポリマー、あるいは金属水酸化物と金属酸化物との系からなるゾル・ゲル変換性材料であることが好ましく、その中でもポリシロキサンのゲル組織を形成する性質を有するゾル・ゲル変換系が最も好ましい。表面親水性である光熱変換剤および、表面親水性である疎水化前駆体微粒子の表面の親水性層が結着剤としての機能をも備えている場合には、結着剤を新たに用いなくてもよい。 結着剤は親水性層の構成成分の分散媒として作用し、層の物理的強度の向上、層を構成する組成物相互の分散性の向上、塗布性の向上、印刷適性の向上、製版作業性の便宜上など、種々の目的に適う構成となっている。
親水性バインダーは、親水性層の全固形分に対して、30〜50質量%であることが好ましく、さらには35質量%〜45質量%であることが好ましい。30%以下では親水層が十分な耐水性および耐磨耗性を得ることができず、50%以上では親水層の疎水性化を十分に行うことができず画像が形成されない。
本発明の平版印刷版用原版の親水性層に好適に使用される親水性ポリマーバインダーとしては、親水性層としての適度な強度と表面の親水性を付与する目的の、水酸基を有する有機高分子化合物を用いることができる。具体的には、ポリビニルアルコール(PVA),カルボキシ変性PVA等の変性PVA,澱粉およびその誘導体、カルボキシメチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズのようなセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリアクリル酸及びその塩、ポリアクリアミド、及びアクリル酸、アクリアミドなど水溶性のアクリル系モノマーを主な構成成分として含む水溶性アクリル系共重合体等の水溶性樹脂が挙げられる。
又、上記水酸基を有する有機高分子化合物を架橋し、硬化させる耐水化剤としては、グリオキザール、メラミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等のアミノプラストの初期縮合物、メチロール化ポリアミド樹脂、ポリアミド・ポリアミン・エピクロルヒドリン付加物、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂、変性ポリアミドポリイミド樹脂等が挙げられる。その他、更には、塩化アンモニウム、シランカップリング剤の架橋触媒等が併用できる。
本発明に好ましく適用できるゾル・ゲル変換が可能な系は、多価元素から出ている結合基が酸素原子を介して網目状構造を形成し、同時に多価金属は未結合の水酸基やアルコキシ基も有していてこれらが混在した樹脂状構造となっている高分子体であって、塗布前のアルコキシ基や水酸基が多い段階ではゾル状態であり、塗布後、エステル結合化が進行するのに伴って網目状の樹脂状構造が強固となり、ゲル状態になる。また、樹脂組織の親水性度が変化する性質に加えて、水酸基の一部が固体微粒子に結合することによって固体微粒子の表面を修飾し、親水性度を変化させる働きをも併せ持っている。ゾル・ゲル変換を行う水酸基やアルコキシ基を有する化合物の多価結合元素は、アルミニウム、珪素、チタン及びジルコニウムなどであり、これらはいずれも本発明に用いることができるが、以下はもっとも好ましく用いることのできるシロキサン結合によるゾル・ゲル変換系について説明する。アルミニウム、チタン及びジルコニウムを用いるゾル・ゲル変換は、下記の説明の珪素をそれぞれの元素に置き換えて実施することができる。
ゾルゲル変換によって形成される親水性マトリックスは、好ましくはシロキサン結合およびシラノール基を有する樹脂であり、本発明の平版印刷版用原版の親水性層は、少なくとも1個のシラノール基を有するシラン化合物を含んだゾルの系である塗布液を、塗布後の経時の間に、シラノール基の加水分解縮合が進んでシロキサン骨格の構造が形成され、ゲル化が進行することにより形成される。ゲル構造を形成するシロキサン樹脂は、下記一般式(I)で、また少なくとも1個のシラノール基を有するシラン化合物は、下記一般式(II)で示される。また、親水性層に含まれる親水性から疎水性に変化する物質系は、必ずしも一般式(II)のシラン化合物単独である必要はなく、一般には、シラン化合物が部分加水重合したオリゴマーからなっていてもよく、あるいは、シラン化合物とそのオリゴマーの混合組成であってもよい。
Figure 2005271474
上記一般式(I)のシロキサン系樹脂は、下記一般式(II)で示されるシラン化合物の少なくとも1種を含有する分散液からゾル−ゲル変換によって形成され、一般式(I)中のR01〜R03の少なくとも一つは水酸基を表し、他は下記一般式(II)中の記号のR0及びY1から選ばれる有機残基を表わす。
一般式(II)
(R0nSi(Y1)4-n
一般式(II)中、R0は、水酸基、炭化水素基又はヘテロ環基を表わす。Y1は水素原子、ハロゲン原子、−OR11、−OCOR12、又は、−N(R13)(R14)を表す(R11、R12は、各々炭化水素基を表し、R13、R14は同じでも異なってもよく、水素原子又は炭化水素基を表す)。nは0、1、2又は3を表わす。
一般式(II)中のRの炭化水素基又はヘテロ環基としては、炭素数1〜12の置換されてもよい直鎖状もしくは分岐状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等;これらの基に置換される基としては、ハロゲン原子(塩素原子、フッ素原子、臭素原子)、ヒドロキシ基、チオール基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、エポキシ基、−OR′基(R′は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、2−ヒドロキシエチル基、3−クロロプロピル基、2−シアノエチル基、N,N−ジメチルアミノエチル基、2−ブロモエチル基、2−(2−メトキシエチル)オキシエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、3−カルボキシプロピル基、ベンジル基等を示す)、
−OCOR”基(R”は、前記R′と同一の内容を表わす)、−COOR”基、−COR”基、−N(R”’)( R”’)(R”’は、水素原子又は前記R′と同一の内容を表わし、各々同じでも異なってもよい)、−NHCONHR”基、−NHCOOR”基、−Si(R″)3 基、−CONHR”’基、−NHCOR”基、等が挙げられる。これらの置換基はアルキル基中に複数置換されてもよい)、炭素数2〜12の置換されていてもよい直鎖状又は分岐状のアルケニル基(例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、ドデセニル基等、これらの基に置換される基としては、前記アルキル基に置換される基と同一の内容のものが挙げられる)、炭素数7〜14の置換されていてもよいアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、2−ナフチルエチル基等;これらの基に置換される基としては、前記アルキル基に置換される基と同一の内容のものが挙げられ、又複数置換されてもよい)、
炭素数5〜10の置換されてもよい脂環式基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−シクロヘキシルエチル基、2−シクロペンチルエチル基、ノルボニル基、アダマンチル基等、これらの基に置換される基としては、前記アルキル基の置換基と同一の内容のものが挙げられ、又複数置換されてもよい)、炭素数6〜12の置換されてもよいアリール基(例えばフェニル基、ナフチル基で、置換基としては前記アルキル基に置換される基と同一の内容のものが挙げられ、又、複数置換されてもよい)、又は、窒素原子、酸素原子、イオウ原子から選ばれる少なくとも1種の原子を含有する縮環してもよいヘテロ環基(例えば該ヘテロ環としては、ピラン環、フラン環、チオフェン環、モルホリン環、ピロール環、チアゾール環、オキサゾール環、ピリジン環、ピペリジン環、ピロリドン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、テトラヒドロフラン環等で、置換基を含有してもよい。置換基としては、前記アルキル基中の置換基と同一の内容のものが挙げられ、又複数置換されてもよい)を表わす。
一般式(II)中のY1の−OR11基、−OCOR12基又は−N(R13)(R14)基としては、たとえば以下の基を表す。−OR11基において、R11は炭素数1〜10の置換されてもよい脂肪族基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブトキシ基、ヘプチル基、ヘキシル基、ペンチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘプテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基、2−(メトキシエチルオキソ)エチル基、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル基、2−メトキシプロピル基、2−シアノエチル基、3−メチルオキサプロピル基、2−クロロエチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロオクチル基、クロロシクロヘキシル基、メトキシシクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、ジメトキシベンジル基、メチルベンジル基、ブロモベンジル基等が挙げられる)を表わす。
−OCOR12基において、R12は、R11と同一の内容の脂肪族基又は炭素数6〜12の置換されてもよい芳香族基(芳香族基としては、前記R中のアリール基で例示したと同様のものが挙げられる)を表わす。又−N(R13)(R14)基において、R13、R14は、互いに同じでも異なってもよく、各々、水素原子又は炭素数1〜10の置換されてもよい脂肪族基(例えば、前記の−OR11基のR11と同様の内容のものが挙げられる)を表わす。より好ましくは、R11とR12の炭素数の総和が16個以内である。一般式(II)で示されるシラン化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる。
テトラクロルシラン、テトラブロムシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリクロルシラン、メチルトリブロムシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリt−ブトキシシラン、エチルトリクロルシラン、エチルトリブロムシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリt−ブトキシシラン、n−プロピルトリクロルシラン、n−プロピルトリブロムシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリt−ブトキシシラン、n−ヘキシルトリクロルシラン、n−ヘキシルトリブロムシラン、n−へキシルトリメトキシシラン、n−へキシルトリエトキシシラン、n−へキシルトリイソプロポキシシラン、n−へキシルトリt−ブトキシシラン、n−デシルトリクロルシラン、n−デシルトリブロムシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−デシルトリイソプロポキシシラン、n−デシルトリt−ブトキシシラン、n−オクタデシルトリクロルシラン、n−オクタデシルトリブロムシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリイソプロポキシシラン、n−オクタデシルトリt−ブトキシシラン、
フェニルトリクロルシラン、フェニルトリブロムシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリt−ブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジクロルシラン、ジフェニルジブロムシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、トリエトキシヒドロシラン、トリブロムヒドロシラン、トリメトキシヒドロシラン、イソプロポキシヒドロシラン、トリt−ブトキシヒドロシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリブロムシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリt−ブトキシシラン、トリフルオロプロピルトリクロルシラン、トリフルオロプロピルトリブロムシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、
トリフルオロプロピルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリt−ブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリt−ブトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリt−ブトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリt−ブトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリt−ブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
本発明の親水性層形成に用いる一般式(II)で示されるシラン化合物とともに、Ti、Zn、Sn、Zr、Al等のゾル−ゲル変換の際に樹脂に結合して成膜可能な金属化合物を併用することができる。用いられる金属化合物として、例えば、Ti(OR″)(R″はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)、TiCl、Zn(OR″)、Zn(CHCOCHCOCH、Sn(OR″)、Sn(CHCOCHCOCH、Sn(OCOR″)、SnCl、Zr(OR″)、Zr(CHCOCHCOCH、Al(OR″)等が挙げられる。
また、このゲル構造のマトリックスの中には、膜強度、柔軟性などの物理的性能向上や、塗布性の向上、親水性の調節などの目的で、ポリマー主鎖末端にシランカップリング基を有する親水性ポリマーや、架橋剤を加えることが可能である。
ポリマー主鎖末端にシランカップリング基を有する親水性ポリマーとしては、下記一般式(1)で表されるポリマーが挙げられる。
Figure 2005271474
一般式(1)において、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ水素原子または炭素数8以下の炭化水素基を表し、mは0、1又は2を表し、nは1〜8の整数を表し、pは30〜300の整数を表す。Yは−NHCOCH3、−CONH2、−CON(CH32、−COCH3、−OCH3、−OH、−CO2M又は−CONHC(CH32SO3Mを表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びオニウムからなる群から選択されるいずれかを表す。
Lは、単結合又は有機連結基を表すが、ここで有機連結基とは、非金属原子からなる多価の連結基を示し、具体的には1〜60個の炭素原子、0〜10個の窒素原子、0〜50個の酸素原子、1〜100個の水素原子,0〜20個の硫黄原子から成り立つ基である。より具体的な連結基としては下記の構造単位またはこれらが組み合わされて構成された基を挙げることができる。
Figure 2005271474
一般式(1)のシランカップリング基を有する親水性ポリマーの具体例としては以下のポリマーを挙げることができる。なお、下記具体例において、pは100〜250の間のいずれを採ることもできる。
Figure 2005271474
本発明に係る上記親水性ポリマーは、下記一般式(2)で表されるラジカル重合可能なモノマーと、下記一般式(3)で表されるラジカル重合において連鎖移動能を有するシランカップリング剤とを用いてラジカル重合させることによって合成することができる。シランカップリング剤(式3)が連鎖移動能を有するため、ラジカル重合においてポリマー主鎖末端にシランカップリング基が導入されたポリマーを合成することができる。
Figure 2005271474
[固体微粒子]
本発明に係る印刷用原版上の親水性層に含まれる親水性マトリックスは、さらに固体微粒子を含有していることが好ましく、上記したシランカップリング基を有する親水性ポリマーは、固体微粒子の表面に化学的に結合した形態で存在することが好ましい。また、上記以外の親水性ポリマーを表面に結合させた形態をも含んでいることも好ましい。本明細書では、固体粒子の表面に親水性ポリマーが化学的に結合することを、表面修飾とも言う。
親水性ポリマーが結合する固体粒子としては、金属酸化物微粒子が好ましく、例えば酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化鉄、ジルコニアなどの金属酸化物;無水ケイ酸、含水ケイ酸カルシウム及び含水ケイ酸アルミニウムなどの、それ自体は可視域に吸収を持たないケイ素含有酸化物(ホワイトカーボンとも呼ばれる)、クレー、タルク、カオリン、ふっ石などの粘土鉱物粒子等が使用できる。
無機粒子の平均粒径は10μm以下であることが好ましく、より好ましくは5nm〜5μm、更に好ましくは10nm〜5μmである。この範囲内において、以下に述べる光架橋性粒子の製造段階において、安定に製造することが可能であるとともに、支持体との良好な接着性が保て、また、表面付近の粒子も良好に保持される。
親水性と膜強度、更に親水性ポリマーによる表面修飾の容易性の観点から、上記無機粒子のうち特にケイ素含有酸化物が好ましい。具体的には、日産化学工業(株)製スノーテックスZL(粒径70〜100nmシリカ40%コロイド水溶液)、富士シリシア化学(株)製サイリシア350(粒径3.5μm)、日本アエロジル(株)製AEROSIL130(粒径160nmシリカ)、日本アエロジル(株)製AEROSIL200(粒径16nmシリカ)、水澤化学工業(株)製ミズカシルP−527U(粒径60nmシリカ)等が挙げられる。
本発明で用いる、表面修飾された、あるいは表面修飾されていなくても表面親水性のゾル状粒子(これらを総括して、単にシリカ粒子ということもある)の各々の粒径が、前記範囲内において、親水性層の膜強度が充分に保持され、レーザー光等により露光して製版し、印刷版として印刷すると、非画像部への印刷インクの付着汚れを生じない極めて親水性に優れたものになるという効果を発現する。また、親水性ゾル状粒子を親水性層に添加する場合、その添加量は、親水性層の固定物成分の5〜80質量%であり、好ましくは20〜60質量%である。
親水性ポリマーによる表面修飾は、従来から公知の方法を適宜応用することによって製造することができる。例えば、ポリマー主鎖末端にシランカップリング基を有する親水牲ポリマーを用いてゾルゲル反応によりシリカ粒子表面に親水性ポリマーを容易に導入することができる。
用いることができる親水性ポリマーは、特に限定されないが、上記一般式(1)で示したシランカップリング基を含む親水性ポリマーを含んでいることがとくに好ましい。親水性ポリマーが有する親水性官能基としては、前記の一般式(1)の置換基Y及びLYのほかにカルボン酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、及びその塩、アミド基、水酸基、エーテル基、ポリオキシエチレン基などを挙げることができる。
したがって、シランカップリング基を有する親水性ポリマーにより表面修飾する方法としては、上記一般式(1)で示されるポリマーを固体微粒子に直接結合させる方法の他に、シリカ表面を重合開始能を有するシランカップリング剤で処理し、その後、親水性モノマーをグラフト重合反応させる方法が挙げられ、これにより親水性ポリマーにより修飾された表面修飾粒子を得ることができる。
用いることができる親水性モノマーとしては、以下のモノマーを挙げることができる。例えば、(メタ)アクリル酸もしくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミンもしくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸もしくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ビニルスルホン酸もしくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチレン(メタ)アクリレート、3−スルホプロピレン(メタ)アクリレートもしくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸もしくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリルアミンもしくはそのハロゲン化水素酸塩等の、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸、アミノ基もしくはそれらの塩、2−トリメチルアミノエチル(メタ)アクリレートもしくはそのハロゲン化水素酸塩等の、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸、アミノ基もしくはそれらの塩、等を使用することができる。
上記の表面修飾方法について、具体的には、鈴木昇、湯沢信子、遠藤敦、宇津木弘「色材」57巻、429頁(1984)、吉岡博、池野正行「表面」21巻、33頁(1983)、字津木弘「表面」16巻、525頁(1978)、K. Tanaka, et al., Bull.Chem. Soc. Jpn., 53巻、 1242頁 (1980)、M.L. Hair, W. Hertl. J. Phys. Chem. 77巻、1965頁 (1973)、Ya.Davydov et Al., Chromatographia, 14巻、13頁 (1981)、K.Unger et al., Colloid Polym. Sci, 252巻、317頁 (1974)、R. Burwell, O. Lea1, J.Chem. Soc. Chem. Commun., 342頁 (1974)、W. Stoeber, Kolloid-Z 149頁、39頁(1956)、K. Yoshinaga, et. al., Polym. Adv. Technol, 3巻91頁(1992)、N. Tsubokawa, et al., Polym. J. 21巻、475頁(1989)、Franz.Pat.1368765、DAS 1163784等の総説及びそれに引例の文献、特許等の記載の方法に従って合成することができる。
表面修飾層の強化あるいは表面修飾された粒子同士の結着性の強化のために用いることができる架橋剤としては、下記一般式(II)で表される加水分解重合性化合物を挙げることができる。この際に、加水分解重合を促進してゲル層の硬化を効果的に行なうために上記したアセチルアセトン誘導体の金属錯体が触媒として用いられる。金属錯体の添加量は、少なくとも加水分解重合反応の触媒作用が現れる濃度であるが、好ましい添加量は、シロキサン単位当たり10-4〜10-1モル/モル、より好ましくは10-3〜10-1モル/モルである。
Figure 2005271474
一般式(III)において、R5およびR6は同一であっても異なっていてもよく、アルキル基又はアリール基を表し、XはSi、Al、TiまたはZrを表し、mは0〜2の整数を表す。R5またはR6がアルキル基を表す場合の炭素数は好ましくは1から4である。またアルキル基またはアリール基は置換基を有してもよい。尚、この化合物は低分子化合物であり、分子量1000以下であることが好ましい。
加水分解重合性化合物中にアルミニウムを含むものとしては、例えば、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、テトラエトキシアルミネート等を挙げることができる。チタンを含むものとしては、例えば、トリメトキシチタネート、テトラメトキシチタネート、トリエトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、クロロトリメトキシチタネート、クロロトリエトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート、フェニルトリエトキシチタネート等を挙げることができる。ジルコニウムを含むものとしては、例えば、前記チタンを含むものに対応するジルコネートを挙げることができる。
加水分解重合性化合物中にケイ素を含むものとしては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。
これらの内特に好ましいものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、シフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。
本発明に用いられる表面修飾粒子と一般式(III)で表される化合物は、一種のみ使用しても2種以上を併用してもよい。また、一般式(III)の化合物は、部分的に加水分解後、脱水縮合していてもよい。基板に塗布する前の画像形成材料の溶液の状態における保存安定性を高めるために、一般式(III)で表される加水分解重合性有機金属化合物が部分加水分解重合した無機重合体の活性金属水酸基、例えば、シラノール基(Si−OH)を保護することが有効である。シラノール基の保護は、t−ブタノール、i−プロピルアルコール等の高級アルコールでシラノール基をエーテル化(Si−OR)することにより達成することができる(ここでRは、単に何らかの基であることを意味し、特定の基を表すものではない)。具体的には、シリカ微粒子が分散した無機相に前記高級アルコールを添加することにより実施することができる。このとき無機相の性質により、例えば、無機相を加熱して脱離した水を留去する等の手段により無機相を脱水することにより保存安定性をさらに向上させることができる。
本発明において、表面修飾粒子が一般式(III)で表される架橋剤によって架橋された表面修飾粒子と架橋剤の複合体は平版印刷版用基板の親水性層全固形分に対し2〜90質量%、好ましくは5〜80質量%、特に好ましくは10〜50質量%の量で親水性層中に含有させる。粒子の含有量が2質量%を下回ると保水性が不十分となり、地汚れが生じやすくなる。50質量%を上回ると親水性層の強度が低下して耐刷性が低下し、また、支持体と親水性層との接着性が低下する。
本発明における表面修飾粒子−架橋剤からなる有機無機複合体は、加水分解重合して調製され、その方法は公知のいかなる方法でもよく、例えば、「ゾル−ゲル法の科学」(アグネ承風社)記載の方法を用いることができる。好ましい例として、本発明の表面修飾粒子と架橋剤(例えば一般式(III)の化合物)が分散されたアルコール溶液、好ましくはメタノールまたはエタノール溶液に触媒として酸(リン酸、塩酸、硫酸、酢酸)、特に好ましくはリン酸、塩酸、または、アルカリ(アンモニア水)を添加して、出発溶液を調製する。次に、0〜100°C、好ましくは10〜80°Cで還流下で5分〜6時間、特に好ましくは10分〜2時間攪拌し、加水分解重合させて表面修飾粒子−架橋剤からなる有機無機複合体を形成させることができる。
一般式(III)で示されるシラン化合物、更には併用する前記の金属化合物の加水分解及び重縮合反応を促進するために、硝酸、塩酸などの無機酸又はアンモニアなどの塩基を触媒として使用可能であるが、本発明においては、金属錯体触媒を使用する。好ましい金属錯体触媒は、周期律表の2A,3B,4A及び5A族から選ばれる金属元素とβ―ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物から構成される金属錯体である。
構成金属元素の中では、Mg、Ca、St、Baなどの2A族元素、Al、Gaなどの3B族元素,Ti、Zrなどの4A族元素及びV,Nb及びTaなどの5A族元素が好ましく、それぞれ効果の優れた錯体を形成する。その中でもZr、Al及びTiから得られる錯体が優れている。
上記金属錯体の配位子を構成するオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物は、本発明に置いては、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、2,4−ヘプタンジオンなどのβジケトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチルなどのケトエステル類、乳酸、乳酸メチル、サリチル酸、サリチル酸エチル、サリチル酸フェニル、リンゴ酸,酒石酸、酒石酸メチルなどのヒドロキシカルボン酸及びそのエステル、4−ヒドロキシ−4−メチルー2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチルー2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ヘプタノンなどのケトアルコール類、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチル−モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール類、メチロールメラミン、メチロール尿素、メチロールアクリルアミド、マロン酸ジエチルエステルなどのエノール性活性化合物、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)のメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物が挙げられる。
好ましい配位子はアセチルアセトン誘導体であり、アセチルアセトン誘導体は、本発明においては、アセチルアセトンのメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物を指す。アセチルアセトンのメチル基に置換する置換基としては、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基、アシル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基であり、アセチルアセトンのメチレン基に置換する置換基としてはカルボキシル基、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のカルボキシアルキル基及びヒドロキシアルキル基であり、アセチルアセトンのカルボニル炭素に置換する置換基としては炭素数が1〜3のアルキル基であってこの場合はカルボニル酸素には水素原子が付加して水酸基となる。
好ましいアセチルアセトン誘導体の具体例としては、アセチルアセトン、エチルカルボニルアセトン、n−プロピルカルボニルアセトン、i−プロピルカルボニルアセトン、ジアセチルアセトン、1―アセチル−1−プロピオニル−アセチルアセトン、ヒドロキシエチルカルボニルアセトン、ヒドロキシプロピルカルボニルアセトン、アセト酢酸、アセトプロピオン酸、ジアセト酢酸、3,3−ジアセトプロピオン酸、4,4−ジアセト酪酸、カルボキシエチルカルボニルアセトン、カルボキシプロピルカルボニルアセトン、ジアセトンアルコールが挙げられる。中でも、アセチルアセトン及びジアセチルアセトンがとくに好ましい。
上記のアセチルアセトン誘導体と上記金属元素の錯体は、金属元素1個当たりにアセチルアセトン誘導体が1〜4分子配位する単核錯体であり、金属元素の配位可能の手がアセチルアセトン誘導体の配位可能の手の数の総和よりも多い場合には、水分子、ハロゲンイオン、ニトロ基、アンモニオ基など通常の錯体に汎用される配位子が配位してもよい。
好ましい金属錯体の例としては、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)アルミニウム・アコ錯塩、モノ(アセチルアセトナト)アルミニウム・クロロ錯塩、ジ(ジアセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、(ジアセチルアセトナト)アルミニウム・アコ錯塩、トリス(アセチルアセトナト)バリウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、トリス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩が挙げられ、これらは水系塗布液での安定性及び、乾燥時のゾルゲル反応での触媒効果に優れているが、中でもトリス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩(Ti(acac)3)がもっとも好ましい。
上記した金属錯体の対塩の記載を本明細書においては省略しているが、対塩の種類は、錯体化合物としての電荷の中性を保つ水溶性塩である限り任意であり、例えば硝酸塩、ハロゲン酸塩、硫酸塩、燐酸塩などの化学量論的中性が確保される塩の形が用いられる。
また、金属錯体触媒に加えて、酸性触媒又は塩基性触媒を併用してもよい。その場合は、酸あるいは塩基性化合物をそのままか、あるいは水またはアルコールなどの溶媒に溶解させた状態のもの(以下、それぞれ酸性触媒、塩基性触媒という)を用いる。そのときの濃度については特に限定しないが、濃度が濃い場合は加水分解、重縮合速度が速くなる傾向がある。但し、濃度の濃い塩基性触媒を用いると、ゾル溶液中で沈殿物が生成する場合があるため、塩基性触媒の濃度は1N(水溶液での濃度換算)以下が望ましい。
併用してもよい酸性触媒あるいは塩基性触媒の種類は特に限定されないが、酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、りん酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで表される構造式のRを他元素または置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸など、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などが挙げられる。
以上で述べたゾル−ゲル法によって作成される親水性層は、本発明の平版印刷版用原版にとくに好ましい。上記のゾル−ゲル法のさらに詳細は、作花済夫「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社(刊)(1988年)、平島碩「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作成技術」総合技術センター(刊)(1992年)等の成書等に詳細に記述されている。
[重合開始剤]
本発明の親水性層には、重合性基の反応を開始又は促進する化合物を添加することができる。かかる化合物としては、例えば、熱によりラジカル又はカチオンを発生するような化合物を挙げることができ、ロフィンダイマー、トリハロメチル化合物、過酸化物、アゾ化合物、ジアゾジフェニルアミンなどのジアゾニウム塩やジフェニルヨードニウム塩などを含んだオニウム塩、アシルホスフィン、イミドスルホナートなどが挙げられる。これらの化合物は親水性層において1質量%〜20質量%の範囲で添加することができる。好ましくは3質量%〜10質量%の範囲である。この範囲内で耐刷性を損なうことなく、良好な反応開始又は促進効果が得られる。
ラジカル発生剤は、光、熱、あるいはその両方のエネルギーによりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を開始、促進させる化合物を指す。本発明に係わるラジカル発生剤としては、公知の熱重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな総合を有する化合物などを選択して使用することができ、例えば、オニウム塩、トリハロメチル基を有するs−トリアジン化合物、オキサゾール化合物などの有機ハロゲン化合物、過酸化物、アゾ系重合開始剤、アリールアジド化合物、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、チオキサントン類等のカルボニル化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ素塩化合物、ジスルホン化合物等が挙げられる。
具体的には、例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal etal,Polymer,21, 423(1980)等に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4069055号、同4069056号、特開平3−140140号等に記載のアンモニウム塩、D.C.Necker etal, Macromolecules,17, 2468(1984)、C.S.Wen etal, Teh.Proc.Conf.Rad.Curing ASIA, p478 Tokyo,Oct(1988)、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号等に記載のホスホニウム塩、J.V.Crivello etal, Macromolecules,10(6), 1307(1977)、Chem.& Eng. News, Nov.28, p31(1988)、欧州特許第104143号、米国特許第339049号、同第410201号、特開平2−150848号、特開平2−296514号に記載のヨードニウム塩、J.V.Crivello et al, Polymer J.17, 73(1985)、J.V.Crivello et al, J.Org.Chem.,43, 3055(1978)、W.R.Watt et al, J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,22, 1789(1984)、 J.V.Crivello et al, Polymer Bull.,14, 279(1985)、 J.V.Crivello et al, Macromolecules,14(5), 1141(1981)、 J.V.Crivello et al, J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17, 2877(1979)、欧州特許第370693号、米国特許第3902114号、欧州特許第233567号、同297443号、同297442号、米国特許第4933377号、欧州特許第410201号、同339049号、米国特許第4760013号、同4734444号、同2833827号、独国特許第2904626号、同3604580号、同3604581号等に記載のスルホニウム塩、 J.V.Crivello et al, Macromolecules, 10(6), 1307(1977)、 J.V.Crivello et al, J.Polymer Sci., Polymer Chem.Ed.,17, 1047(1979)等に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al, Teh.Proc.Conf.Rad.Curing ASIA, p478 Tokyo,Oct(1988)等に記載のアルソニウム塩等のオニウム塩等が挙げられる。
有機ハロゲン化合物としては、具体的には、若林ら、Bjll.Chem.Soc.Japan,42, 2924(1969)、米国特許第3,905,815号、特公昭46−4605号、特開昭48−36281号、同55−32070号、同60−239736号、同61−169835号、同61−169837号、同62−58241号、同62−212401号、同63−70243号、同63−298339号、M.P.Hutt etal,J.Heterocycl.Chem.,7(No.3)(1970)等に記載の化合物が挙げられ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物、s−トリアジン化合物が挙げられる。
メタロセン化合物としては、特開昭59−152396号、同61−151197号、同63−41484号、特開平2−249号、同2−4705号、同5−83588号等に記載の種々のチタノセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、特公平6−29285号、米国特許第3,479,185号、同4,311,783号、同4,622,286号等に記載の種々の化合物、特開平1−304453号、同1−152109号記載の鉄−アレーン錯体等が挙げられる。
有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特開昭62−143044号、同62−150242号、特開平9−188685号、同9−188686号、同9−188710号、日本特許第2764769号等の公報、特願2000−310808号明細書、及びKunz,Martin "Rad Tech.'98.Proceeding April 19-22 Chicago"等に記載されている有機ホウ酸塩、特開平6−157623号、同6−175564号、同6−175561号等に記載の有機ホウ素スルホニウム錯塩あるいは有機ホウ素オキソスルホニウム錯塩、特開平6−175554号、同6−175553号等に記載の有機ホウ素ホスホニウム錯体、特開平6−348011号、同7−128785号、同7−140589号、同7−3062527号、同7−292014号などに記載の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられる。
ジスルホン化合物としては、特開昭61−166544号、特願2001−132318号明細書等に記載された化合物が挙げられる。
本発明において、特に好適に用いられるラジカル発生剤としては、オニウム塩、中でも下記一般式(IV)〜(VI)で表されるオニウム塩が挙げられる。
Figure 2005271474
式(IV)中、Ar11及びAr12は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下のアリール基を示す。このアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、または炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。Z11-は無機アニオン又は有機アニオンを表す。
式(V)中、Ar21は、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下のアリール基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、炭素原子数12個以下のアリールオキシ基、炭素原子数12個以下のアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のジアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のアリールアミノ基、又は炭素原子数12個以下のジアリールアミノ基が挙げられる。Z21-は、Z11-と同義の対イオンを表す。
式(VI)中、R31、R32及びR33は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。Z31-は、Z11-と同義の対イオンを表す。
前記一般式(IV)〜(VI)中のZ11-、Z21-、Z31-は、無機アニオン又は有機アニオンを表すが、無機アニオンとしては、ハロゲンイオン(F-、Cl-、Br-、I-)、過塩素酸イオン(ClO4 -)、過臭素酸イオン(BrO4 -)、テトラフルオロボレートイオン(BF4 -)、SbF6 -、PF6 -等が挙げられ、有機アニオンとしては、有機ボレートアニオン、スルホン酸イオン、ホスホン酸イオン、オキシホスホン酸イオン、カルボン酸イオン、R40SO2 -、R40SO2-、R40SO2N−Y−R40イオン(ここで、R40は炭素原子数1〜20のアルキル基、又は炭素原子数6〜20のアリール基を表し、Yは単結合、−CO−、−SO2−を表す。)、及び、下記一般式(VII)で表される5配位シラン化合物イオン等が挙げられる。
Figure 2005271474
上記において、R40は環構造を有していてもよく、アルキル基、アリール基は更に置換基を有していてもよい。ここで導入可能な置換基としては、具体的には、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、シアノ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アミド基、エステル基、カルボニル基、カルボキシ基等が挙げられ、これらは、更に上記のような置換基を有するものであってもよい。更に、2以上の置換基が互いに結合して環を形成してもよく、環構造は窒素原子や硫黄原子等を含むヘテロ環構造であってもよい。中でも、合成適性の観点からは、R40がアリール基であることが好ましい。
一般式(VII)で示される5配位シラン化合物イオンにおいて、式中、A、B、C、D、Eは互いに独立した一価の非金属原子を表す。式中、A、B、C、D、Eは互いに独立した一価の非金属原子を表すが、好ましくは、それぞれ水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、フェノキシ基、アミノ基、ビニル基、アリル基、シアノ基、又はハロゲン原子を表す。なお、これらの基は、更に1つあるいは2つ以上の置換基を有していてもよく、好ましい置換基の例としては、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8の直鎖状あるいは分岐のアルキル基、アリール基、アルケニル基、カルボニル基、カルボキシ基、アミド基、アセチル基、エーテル基、チオエーテル基、エステル基、アミノ基、又はこれらを2種以上組み合わせたものが挙げられる。A、B、C、D、Eのうち隣り合う非金属原子は互いに連結して環を形成してもよい。
これらの5配位シラン化合物イオンのうち、好ましいものとしては、A、B、C、D、Eのいずれかがハロゲン原子、アリール基、又はアルコキシ基であるものが挙げられ、更に好ましいものとして、A、B、C、D、Eのいずれか1以上がフッ素原子である化合物イオンが挙げられる。
本発明において、好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、特開2001−133696号の段落番号[0030]〜[0033]に記載されたものを挙げることができる。
本発明において用いられるオニウム塩は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましく、更に360nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、平版印刷用原版の取り扱いを白灯下で実施することができる。
これらのオニウム塩は、親水性層全固形分に対し0.1〜50%、好ましくは0.5〜30%、特に好ましくは1〜20%の割合で画像形成層中に添加できる。この範囲内で、印刷時の非画像部汚れを発生させることなく、良好な感度が得られる。
これらのオニウム塩は、1種のみを用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらのオニウム塩は、疎水性化合物を含む粒子中に含有してもよい。この場合、非水溶性のオニウム塩が好ましく、疎水性化合物を含む粒子に含有しない場合は、水溶性のオニウム塩が使用できる。
[親水性層の形成]
親水性層は、通常上記各成分を溶媒に溶かして、適当な支持体上に塗布することにより製造することができる。ここで使用する溶媒としては特に限定されるものではなく、例えば、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン、水等を挙げることができる。これらの溶媒は単独あるいは混合して使用される。溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
本発明において、親水性層には塗布面状を向上させるために界面活性剤を用いるのが好ましい。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に用いられるノニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が挙げられる。
本発明に用いられるアニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類が挙げられる。
本発明に用いられるカチオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミダゾリン類が挙げられる。
なお、上記界面活性剤の中で、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の「ポリオキシアルキレン」に読み替えることもでき、本発明においては、それらの界面活性剤も用いることができる。
本発明に用いられるフッ素系界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基および親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基および親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基を含有するウレタン等のノニオン型が挙げられる。また、特開昭62−170950号、同62−226143号および同60−168144号の各公報に記載されているフッ素系界面活性剤も好適に挙げられる。
界面活性剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
界面活性剤の含有量は、親水性層の全固形分に対して、0.001〜10質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましい。
塗布、乾燥後に得られる支持体上の塗布量(固形分)は、一般的に0.5〜5.0g/m2が好ましい。塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
塗布後の乾燥工程及び後加熱(状態調節)工程については、前記した。本発明の親水性層の膜厚は、好ましくは0.001g/m2〜10g/m2、より好ましくは0.01g/m2〜8g/ m2である。塗布、乾燥後に得られる画像形成層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的な平版印刷版用原版についていえば、0.5〜5.0g/m2が好ましく、0.5〜3.0g/m2がより好ましい。この範囲内において、本発明の親水性の効果が良好に発揮し得るとともに、支持体との密着性も良好であり、十分な耐刷性が得られる。
[表面保護層]
平版印刷用原版の表面は、親水性であるので、使用前の取り扱い中に環境の雰囲気の影響によって疎水性化したり、温湿度の影響を受けたり、あるいは機械的な傷など又は汚れなどの影響を受けやすい。通常、製版工程で版面に整面液(ガム液ともいう)を塗布して保護作用を行うが、原版製作の際に、保護液を塗布しておくと製造直後からこのような保護作用が得られること、及び製版工程においてあらたに整面液を塗布する手間が省けて作業性が向上することなどの利点がある。
さらに本発明においては、通常、露光を大気中で行うため、保護層は、親水性層中で露光により生じる画像形成反応を阻害する大気中に存在する酸素、塩基性物質等の低分子化合物の親水性層への混入を防止し、大気中での露光による画像形成反応の阻害を防止する機能を持たせることが可能である。この場合、保護層に望まれる特性は、酸素等の低分子化合物の透過性が低いことであり、更に、露光に用いられる光の透過性が良好で、親水性層との密着性に優れ、かつ、印刷機上で容易に除去することができるものであるのが好ましい。このような特性を有する保護層については、以前より種々検討がなされており、例えば、米国特許第3458311号明細書および特開昭55−49729号公報に詳細に記載されている。
保護層に用いられる材料としては、例えば、比較的、結晶性に優れる水溶性高分子化合物が挙げられる。具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸等の水溶性ポリマーが挙げられる。中でも、ポリビニルアルコール(PVA)を主成分として用いると、酸素遮断性、現像除去性等の基本的な特性に対して最も良好な結果を与える。ポリビニルアルコールは、保護層に必要な酸素遮断性と水溶性を与えるための未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテルまたはアセタールで置換されていてもよく、一部が他の共重合成分を有していてもよい。
ポリビニルアルコールの具体例としては、71〜100%加水分解された重合度300〜2400の範囲のものが好適に挙げられる。具体的には、例えば、株式会社クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8が挙げられる。
保護層の成分(PVAの選択、添加剤の使用等)、塗布量等は、酸素遮断性および印刷機上での除去性のほか、カブリ性、密着性、耐傷性、アブレーション抑制等を考慮して適宜選択される。一般には、PVAの加水分解率が高いほど(即ち、保護層中の未置換ビニルアルコール単位含有率が高いほど)、また、膜厚が厚いほど、酸素遮断性が高くなり、感度の点で好ましい。また、製造時および保存時に不要な重合反応が生じたり、画像露光時に不要なカブリ、画線の太り等を防止するためには、酸素透過性が高くなりすぎないことが好ましい。従って、25℃、1気圧下における酸素透過性Aが0.2〜20(cc/m2・day)であることが好ましい。
保護層の他の組成物として、グリセリン、ジプロピレングリコール等を(共)重合体に対して数質量%相当量添加して可撓性を付与することができ、また、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤;アルキルアミノカルボン酸塩、アルキルアミノジカルボン酸塩等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン界面活性剤を(共)重合体に対して数質量%添加することができる。
保護層の膜厚は、0.05〜4μmが適当であり、特に0.1〜2.5μmが好適である。
[下塗層]
平版印刷方法に用いられる平版印刷版原版においては、必要に応じて、親水性層と支持体との間に下塗層を設けることができる。下塗層が断熱層として機能することにより、赤外線レーザによる露光により発生した熱が支持体に拡散せず、効率よく利用されるようになるため、高感度化が図れるという利点がある。また、本発明においては親水性層が画像部・非画像部の両方を兼ねることから、親水性層は支持体との密着性が高いことが好ましく、下塗り層の設置により支持体と親水性層の密着性の向上が図れるという利点がある。
支持体がプラスチックフィルムの場合は、アクリル系、ウレタン系、セルロース系、エポキシ系などの接着剤の支持体上への塗布、特開平6−316183号、同8−272088号及び同9−179311号、及び特開2001−199175号に記載の下塗り層塗布、すなわち、ポリビニルアルコール又はヒドロキシアルキルアクリレートもしくはメタクリレートの単独重合体又は共重合体、加水分解されたオルトケイ酸テトラエチルあるいはメチル、及び好適には、さらに二酸化ケイ素及び/又は二酸化チタンの微粒子を含有する層を支持体表面に設けること等を挙げることができる。
また金属支持体の場合は、有機又は無機の樹脂を利用することが好ましい。かかる有機又は無機の樹脂としては、公知の疎水性高分子、親水性高分子、親水性高分子を架橋したもの、水酸基やアルコキシ基を有するアルミニウム、珪素、チタン、ジルコニウムなどのゾルゲル変換を行う化合物からの無機高分子等から広く選択することができる。本発明において特に好ましい下塗層は、シリカを含有する下塗層である。
前記下塗層中の好ましいシリカは、アニオン系の二酸化ケイ素である。コロイドシリカは好ましくは少なくとも100m2/gの表面積、更に好ましくは少なくとも300m2/gの表面積を有する。
コロイドシリカの表面積は、J. Amer. Chem. Soc. 60巻(1938年)の309〜312頁にS. Brunauer ,P. H. Emmett 及びE. Teller によって発表されたBET値法により測定する。
シリカ分散液は、他の物質例えばアルミニウム塩、安定剤、殺菌剤等も含有できる。
かかる種類のシリカは、KIESELSOL 100,KIESELSOL 300及びKIESELSOL500 (KIESELSOL はドイツ国レファークゼンの Farbenfabriken Bayer AGの登録商標であり、数字はm2/gでの表面積を表す)の名で市販されている。
シリカを含有する下塗層には、必要に応じて親水性高分子結着材を加えることが可能である。かかる親水性高分子結着材としては、親水性層における親水性バインダーとして用いることができる親水性高分子結着材として前記した物質を利用することが可能である。
下塗層中でのシリカに対する親水性高分子結着材の重量比は、1未満であるのが好ましい。下限はそれ程重要ではないが、少なくとも0.2であるのが好ましい。シリカに対する親水性高分子結着材の重量比は0.25〜0.5であるのが更に好ましい。
前記下塗層の被覆量は、10mg/m2より大であることが好ましく、また5000mg/m2未満であることが好ましい。更に好ましくは50mg/m2〜3000mg/m2である。
前述した下塗層組成物の被覆は、所望によって界面活性剤の存在下に、水性コロイド分散液から行うのが好ましい。
[その他の層]
支持体の裏面には、必要に応じてバックコートが設けられる。かかるバックコートとしては特開平5−45885号公報に記載の有機高分子化合物及び特開平6−35174号公報に記載の有機又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。これらの被覆層のうち、Si(OCH3)4、Si(OC25)4、Si(OC37)4、Si(OC49)4等のケイ素のアルコキシ化合物が安価で入手し易く、それから得られる金属酸化物の被覆層が親水性に優れており特に好ましい。
[支持体]
本発明に使用される支持体としては、寸度的に安定な板状物であり、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネート若しくは蒸着された、紙若しくはプラスチックフィルム等が挙げられる。支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましい。
本発明に使用される好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネート若しくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ましくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.2mm〜0.8mmである。
本発明では、以下に述べるように支持体表面が粗面化されていることが好ましい。
支持体表面に粗面を設けるためには、公知の様々な手段を採用することができる。例えば、支持体表面をサンドブラスト加工やブラシ加工などで機械的にこすり、表面を削って凹部を形成し、粗面を設けることができる。また、機械的エンボス加工でも凹凸を設けることができる。さらに、グラビア印刷などで表面に凸部を形成して粗面を設けてもよい。固体微粒子(マット剤)を含有する層を、塗布あるいは印刷のような手段で支持体表面に粗面を設けてもよい。固体微粒子は、高分子フィルムを作成する段階で高分子フィルム中に含有させ(内添し)、高分子フィルム表面に凹凸を形成することもできる。さらに、溶剤処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、電子線照射処理、X線照射処理等を用いて粗面を形成することもできる。以上の手段を組み合わせて実施してもよい。サンドブラスト加工もしくは樹脂の印刷により粗面を形成する手段もしくは固体微粒子を添加して凹凸を形成する手段が、特に好ましく実施できる。
支持体として特にアルミニウム板を利用する場合、粗面化処理、陽極酸化処理等の表面処理を施すのが好ましい。表面処理により親水性層と支持体との密着性の確保が容易になる。アルミニウム板を粗面化処理するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための界面活性剤、有機溶剤、アルカリ性水溶液等による脱脂処理が行われる。
アルミニウム板表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理(電気化学的に表面を溶解させる粗面化処理)、化学的粗面化処理(化学的に表面を選択溶解させる粗面化処理)が挙げられる。
機械的粗面化処理の方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。また、アルミニウムの圧延段階において凹凸を設けたロールで凹凸形状を転写する転写法も用いてもかまわない。
電気化学的粗面化処理の方法としては、例えば、塩酸、硝酸等の酸を含有する電解液中で交流または直流により行う方法が挙げられる。また、特開昭54−63902号公報に記載されているような混合酸を用いる方法も挙げられる。
粗面化処理されたアルミニウム板は、必要に応じて、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液を用いてアルカリエッチング処理を施され、更に、中和処理された後、所望により、陽極酸化処理を施される。
アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成させる種々の電解質の使用が可能である。一般的には、硫酸、塩酸、シュウ酸、クロム酸またはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
陽極酸化処理の条件は、用いられる電解質により種々変わるので一概に特定することはできないが、一般的には、電解質濃度1〜80質量%溶液、液温5〜70℃、電流密度5〜60A/d m2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分であるのが好ましい。形成される陽極酸化皮膜の量は、1.0〜5.0g/m2であるのが好ましく、1.5〜4.0g/m2であるのがより好ましい。
[製版方法]
次に、この平版印刷版用原版の製版方法について説明する。この平版印刷版用原版は、例えば、熱記録ヘッド等により直接画像様に感熱記録を施したり、波長760〜1200nmの赤外線を放射する固体レーザー又は半導体レーザー、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ光や赤外線ランプ露光などの光熱変換型の露光も用いることができる。
画像の書き込みは、面露光方式、走査方式のいずれでもよい。前者の場合は、赤外線照射方式や、キセノン放電灯の高照度の短時間光を原版上に照射して光・熱変換によって熱を発生させる方式である。赤外線灯などの面露光光源を使用する場合には、その照度によっても好ましい露光量は変化するが、通常は、印刷用画像で変調する前の面露光強度が0.05〜10J/cm2 の範囲であることが好ましく、0.1〜1J/cm2 の範囲であることがより好ましい。支持体が透明である場合は、支持体の裏側から支持体を通して露光することもできる。その露光時間は、0.01〜1msec、好ましくは0.01〜0.1msecの照射で上記の露光強度が得られるように露光照度を選択するのが好ましい。照射時間が長い場合には、熱エネルギーの生成速度と生成した熱エネルギーの拡散速度の競争関係から露光強度を増加させる必要が生じる。
後者の場合には、赤外線成分を多く含むレーザー光源を使用して、レーザービームを画像で変調して原版上を走査する方式が行われる。レーザー光源の例として、半導体レーザー、ヘリウムネオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、YAGレーザーを挙げることができる。レーザー出力が0.1〜300Wのレーザーで照射をすることができる。また、パルスレーザーを用いる場合には、ピーク出力が1000W、好ましくは2000Wのレーザーを照射するのが好ましい。この場合の露光量は、0.05〜10J/cm2 の範囲であることが好ましく、0.05〜1J/cm2 の範囲であることがより好ましい。支持体が透明である場合は、支持体の裏側から支持体を通して露光することもできる。
平版印刷版を製版する際、画像露光したのち、更に必要であれば非画像部を保護するために版面保護剤(いわゆる、ガム液)を含んだ整面液を塗布する「ガム引き」といわれる工程が行なわれることが多いが、本発明の方法で製造した平版印刷用原版は、機上で簡易に製版して印刷できるので、整面液の処理は必要がないが、湿し水処理に代えて整面液処理してもよい。整面液処理は、平版印刷版の親水性表面が空気中の微量混入成分の影響を受けて親水性が低下するのを防ぐため、非画像部の親水性を高めるため、製版後印刷するまでの期間又は印刷を中断してから再び開始するまでの間に平版印刷版が劣化するのを防止するため、印刷機に取りつける場合などのように平版印刷版を取り扱う時に指の油、インキなどが付着して非画像がインキ受容性となって、汚れるのを防止するため、更に、平版印刷版を取り扱う時に非画像部及び画像部に傷が発生することを防止するため、などの種々の目的をもって行われる。
本発明に使用される皮膜形成性を有する水溶性樹脂の好ましい具体例としては、例えばアラビアガム、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルローズ、カルボキシエチルセルローズ、メチルセルローズ等)及びその変性体、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド及びその共重合体、アクリル酸共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、焙焼デキストリン、酸素分解デキストリン、酵素分解エーテル化デキストリン等が挙げられる。
整面液中の保護剤中の上記水溶性樹脂の含有量は、3〜25質量%が適当であり、好ましい範囲は10〜25質量%である。なお、本発明においては上記水溶性樹脂を2種以上混合使用しても良い。
平版印刷版用版面保護剤には、そのほかに種々の界面活性剤を添加してもよい。使用できる界面活性剤としてはアニオン界面活性剤又はノニオン界面活性剤が挙げられる。アニオン界面活性剤としては脂肪族アルコール硫酸エステル塩類、脂酒石酸、リンゴ酸、乳酸、レプリン酸、有機スルホン酸などがあり、鉱酸としては硝酸、硫酸、燐酸等が有用である。鉱酸、有機酸又は無機塩等の少なくとも1種もしくは2種以上併用してもよい。
上記成分の他必要により湿潤剤としてグリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール等の低級多価アルコールも使用することができる。これら湿潤剤の使用量は保護剤中に0.1〜5.0質量%が適当であり、好ましい範囲は0.5〜3.0質量%である。以上の他に本発明の平版印刷版用版面保護剤には、防腐剤などを添加することができる。例えば安息香酸及びその誘導体、フェノール、ホルマリン、デヒドロ酢酸ナトリウム等を0.005〜2.0質量%の範囲で添加できる。版面保護剤には消泡剤を添加することもできる。好ましい消泡剤には有機シリコーン化合物が含まれ、その添加量は0.0001〜0.1質量%の範囲が好ましい。
以下の実施例において、乾燥固形分比は、試料溶液約1gを秤量するとともに、120℃で、1時間乾燥後の試料を秤量し、その質量比により求めた。酸価は、所定量の試料溶液を秤量し、濃度既知の水酸化カリウムのメタノール溶液で滴定して求めた。粒径は、堀場製作所(株)レーザー粒度分布計LA−920で測定した。
[実施例1]
(アルミニウム支持体の作製)
厚み0.24mmのアルミニウム板(材質1050)を、ナイロンブラシと400メッシュのパミストン水懸濁液を用いてその表面を砂目立てし、水でよく洗浄した。この板を15%水酸化ナトリウム水溶液に浸してエッチングをした後、水洗した。更に1%硝酸で中和し、次に0.7%硝酸水溶液中で矩形波交番波形電流を用い、160クーロン/dm2の陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。水洗後、10%水酸化ナトリウム水溶液中に浸してエッチングした後、水洗した。次に30%硫酸水溶液中に浸してデスマットした後、水洗した。更に、20%硫酸水溶液中で直流電流を用いて陽極酸化処理を行い、酸化皮膜量2.7g/m2とした。更に、ケイ酸ナトリウム0.5重量%水溶液を用いて30℃で10秒間処理し、アルミニウム支持体を得た。
(下塗り層の形成)
下記組成の塗布液を調製し、上記のアルミニウム基板上に、0.5g/m厚の下塗り層を塗布して下塗り層を形成した。
────────────────────────────────────────
下塗り層塗布液組成
────────────────────────────────────────
メタノールシリカ(日産化学(株)製30wt%メタノール分散液) 4g
イソプロピルアルコール 21.1g
────────────────────────────────────────
(マイクロカプセル分散液の調製)
油相成分として、n−ドデカン9g、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアナートとの付加体(三井武田ケミカル(株)製タケネートD−110N)4g、下記赤外光吸収染料(1)1.5g、パイオニンA41C(竹本油脂(株)界面活性剤)0.1gを酢酸エチル18.4gに溶解した。水相成分としてPVA205(クラレ製ポリビニルアルコール)の4質量%水溶液37.5gを調製した。油相成分及び水相成分を、ホモジナイザーを用い12000rpmで10分間乳化した。その後精製水26gを添加し、65℃で3時間攪拌した。このようにして得られたマイクロカプセルを精製水で、固形分濃度が15重量%となるよう希釈した。得られたマイクロカプセルの平均粒径は0.3μmであった。
Figure 2005271474
(末端にシランカップリング基を有する親水性ポリマーの合成)
三ロフラスコにアクリルアミド25g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン3.5g、ジメチルホルムアミド51.3gを入れて窒素気流下、65℃まで加熱し、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.25g添加し、反応を開始した。6時間攪拌した後、室温まで戻して酢酸エチル1.5L中に投入したところ固体が析出した。その後、濾過を行い、充分酢酸エチルで洗浄し、乾燥を行った(収量21g)。GPC(ポリスチレン標準)により、5000の質量平均分子量を有するポリマーであることを確認した。
(ゾル・ゲル液の調製)
エチルアルコール19.2g、アセチルアセトン0.86g、オルトチタン酸テトラエチル0.98g 精製水8.82g中にテトラメトキシシラン(東京化成工業(株)製)1.04g、合成した末端にシランカップリング基を有する親水性ポリマー0.34gを60℃で2時間攪拌して混合した。その後、室温まで徐冷してゾルゲル液とした。
(親水性層の形成)
下記組成からなる水系塗布液を調製し、バーコーターにて、上記支持体上に乾燥膜質量が3.0g/m2になるように塗布を行い、次いでオーブンにて80℃で10分間乾燥を行い、親水性層を形成し、平版印刷用原版を得た。
────────────────────────────────────────
親水性層塗布液組成
────────────────────────────────────────
コロイダルシリカ(日産化学(株)製、スノ−テックスC、20%HO)
0.69g
上記ゾルゲル液 4.9g
アニオン界面活性剤(日光ケミカルズ社製、ニッコールOTP−100s)の5%水溶液 0.31g
下記の重合開始剤(1) 0.08g
15質量%マイクロカプセル水分散液 5.2g
精製水 4.2g
────────────────────────────────────────
Figure 2005271474
(印刷および評価)
印刷機にRYOBI3200MCDを用い、混し水にEU−3(富士写真フィルム(株)製)の1容量%水溶液を用い、インキは、大日本インキ(株)製GEOS(N)墨を用いて印刷した。
皮膜の接触角、地汚れ性および感度を、以下のように評価した。
皮膜の接触角は、得られた印刷版に対し、協和界面科学(株)製contact analyzer CA-D接触角測定機を用い、空中水滴法で水滴に対する接触角を、滴下後10秒後に測定した。測定は、未露光部と、露光部として200mJ/cm2で露光したベタ部とを用いて行った。
地汚れ性は、通常のインキ/湿し水のバランス量よりも湿し水を絞り(水メモリ3以下)、そのときの非画像部におけるインキの印刷面への付着の程度を下記の3段階で官能評価した。
A:地汚れが全く認められなかった
B:微かに地汚れが認められた
C:激しく地汚れが認められた
印刷用原版を露光して印刷版を作成する際、16ミクロンの細線が再現される版面エネルギーを感度とした。
以上の結果を第1表に示す。
[実施例2]
(マイクロカプセル分散液の調製)
油相成分として、n−ドデカン4.5g、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアナートとの付加体(三井武田ケミカル(株)製タケネートD−110N)10g、赤外光吸収染料(1)1.5g、パイオニンA41C(竹本油脂(株)界面活性剤)0.1gを酢酸エチル18.4gに溶解した。水相成分としてPVA205(クラレ製ポリビニルアルコール)の4質量%水溶液37.5gを調製した。油相成分及び水相成分を、ホモジナイザーを用い12000rpmで10分間乳化した。その後精製水26gを添加し、65℃で3時間攪拌した。このようにして得られたマイクロカプセルを精製水で、固形分濃度が15重量%となるよう希釈した。得られたマイクロカプセルの平均粒径は0.2μmであった。
(平版印刷用原版の作製および評価)
調製したマイクロカプセル分散液を用いた以外は、実施例1と同様に平版印刷用原版を作製して、評価した。結果を第1表に示す。
[実施例3]
(マイクロカプセル分散液の調製)
油相成分として、n−ドデカンの代わりにスチレンを用いる以外は、実施例1と同様にしてマイクロカプセル分散液を得た。得られたマイクロカプセルの平均粒径は0.2μmであった。
(平版印刷用原版の作製および評価)
調製したマイクロカプセル分散液を用いた以外は、実施例1と同様に平版印刷用原版を作製して、評価した。結果を第1表に示す。
[実施例4]
(マイクロカプセル分散液の調製)
油相成分として、n−ドデカンの代わりにスチレンを用いる以外は、実施例2と同様にしてマイクロカプセル分散液を得た。得られたマイクロカプセルの平均粒径は0.3μmであった。
(平版印刷用原版の作製および評価)
調製したマイクロカプセル分散液を用いた以外は、実施例1と同様に平版印刷用原版を作製して、評価した。結果を第1表に示す。
[実施例5]
(マイクロカプセル分散液の調製)
油相成分として、n−ドデカンの代わりにネオペンチルグリコールジアクリレート(新中村化学(株)製、NKエステル−A−NPG)を用いる以外は、実施例1と同様にしてマイクロカプセル分散液を得た。得られたマイクロカプセルの平均粒径は0.2μmであった。
(平版印刷用原版の作製および評価)
調製したマイクロカプセル分散液を用いた以外は、実施例1と同様に平版印刷用原版を作製して、評価した。結果を第1表に示す。
[実施例6]
(マイクロカプセル分散液の調製)
油相成分として、n−ドデカンの代わりにネオペンチルグリコールジアクリレート(新中村化学(株)製、NKエステル−A−NPG)を用いる以外は、実施例1と同様にしてマイクロカプセル分散液を得た。得られたマイクロカプセルの平均粒径は0.3μmであった。
(平版印刷用原版の作製および評価)
調製したマイクロカプセル分散液を用いた以外は、実施例1と同様に平版印刷用原版を作製して、評価した。結果を第1表に示す。
[実施例7]
(マイクロカプセル分散液の調製)
油相成分として、n−ドデカンの代わりにステアリルメタクリレートを用いる以外は、実施例1と同様にしてマイクロカプセル分散液を得た。得られたマイクロカプセルの平均粒径は0.3μmであった。
(平版印刷用原版の作製および評価)
調製したマイクロカプセル分散液を用いた以外は、実施例1と同様に平版印刷用原版を作製して、評価した。結果を第1表に示す。
[実施例8]
(マイクロカプセル分散液の調製)
油相成分として、n−ドデカンの代わりにステアリルメタクリレートを用いる以外は、実施例2と同様にしてマイクロカプセル分散液を得た。得られたマイクロカプセルの平均粒径は0.3μmであった。
(平版印刷用原版の作製および評価)
調製したマイクロカプセル分散液を用いた以外は、実施例1と同様に平版印刷用原版を作製して、評価した。結果を第1表に示す。
[実施例9]
(マイクロカプセル分散液の調製)
油相成分として、n−ドデカンの代わりにトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(日本化薬(株)製、KAYARAD R−684)を用いる以外は、実施例1と同様にしてマイクロカプセル分散液を得た。得られたマイクロカプセルの平均粒径は0.2μmであった
(平版印刷用原版の作製および評価)
調製したマイクロカプセル分散液を用いた以外は、実施例1と同様に平版印刷用原版を作製して、評価した。結果を第1表に示す。
[実施例10]
(マイクロカプセル分散液の調製)
油相成分として、n−ドデカンの代わりにトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(日本化薬(株)製、KAYARAD R−684)を用いる以外は、実施例1と同様にしてマイクロカプセル分散液を得た。得られたマイクロカプセルの平均粒径は0.3μmであった。
(平版印刷用原版の作製および評価)
調製したマイクロカプセル分散液を用いた以外は、実施例1と同様に平版印刷用原版を作製して、評価した。結果を第1表に示す。
[比較例1]
(マイクロカプセル分散液の調製)
油相成分として、n−ドデカンの代わりにフタル酸ジメチルを用いる以外は、実施例1と同様にしてマイクロカプセル分散液を得た。得られたマイクロカプセルの平均粒径は0.3μmであった。
(平版印刷用原版の作製および評価)
調製したマイクロカプセル分散液を用いた以外は、実施例1と同様に平版印刷用原版を作製して、評価した。結果を第1表に示す。
[比較例2]
(マイクロカプセル分散液の調製)
油相成分として、n−ドデカンの代わりにフタル酸ジメチルを用いる以外は、実施例2と同様にしてマイクロカプセル分散液を得た。得られたマイクロカプセルの平均粒径は0.3μmであった。
(平版印刷用原版の作製および評価)
調製したマイクロカプセル分散液を用いた以外は、実施例1と同様に平版印刷用原版を作製して、評価した。結果を第1表に示す。
[比較例3]
(マイクロカプセル分散液の調製)
油相成分として、n−ドデカンの代わりにペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製、NKエステル−A−TMMT)を用いる以外は、実施例1と同様にしてマイクロカプセル分散液を得た。得られたマイクロカプセルの平均粒径は0.4μmであった。
(平版印刷用原版の作製および評価)
調製したマイクロカプセル分散液を用いた以外は、実施例1と同様に平版印刷用原版を作製して、評価した。結果を第1表に示す。
[比較例4]
(マイクロカプセル分散液の調製)
油相成分として、n−ドデカンの代わりにペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製、NKエステル−A−TMMT)を用いる以外は、実施例2と同様にしてマイクロカプセル分散液を得た。得られたマイクロカプセルの平均粒径は0.3μmであった。
(平版印刷用原版の作製および評価)
調製したマイクロカプセル分散液を用いた以外は、実施例1と同様に平版印刷用原版を作製して、評価した。結果を第1表に示す。
[比較例5]
油相成分として、n−ドデカンの代わりにトリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート(東亜合成(株)製、M−315)を用いる以外は、実施例1と同様にしてマイクロカプセル分散液を得た。得られたマイクロカプセルの平均粒径は0.5μmであった。
(平版印刷用原版の作製および評価)
調製したマイクロカプセル分散液を用いた以外は、実施例1と同様に平版印刷用原版を作製して、評価した。結果を第1表に示す。
[比較例6]
油相成分として、n−ドデカンの代わりにトリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート(東亜合成(株)製、M−315)を用いる以外は、実施例2と同様にしてマイクロカプセル分散液を得た。得られたマイクロカプセルの平均粒径は0.4μmであった。
(平版印刷用原版の作製および評価)
調製したマイクロカプセル分散液を用いた以外は、実施例1と同様に平版印刷用原版を作製して、評価した。結果を第1表に示す。
第1表
────────────────────────────────────────
平版印刷 疎水性化合物 D110N 接触角 地汚 感度
用原版 (I/O値)質量% 質量% 未露光部 露光部 れ性 (mJ/cm2)
────────────────────────────────────────
実施例1 1(0) 60 20 拡張濡れ 88° A 250
実施例2 1(0) 30 50 拡張濡れ 64° A 350
実施例3 2(0.11)60 20 拡張濡れ 84° A 300
実施例4 2(0.11)30 50 拡張濡れ 41° A 400
実施例5 3(0.79)60 20 拡張濡れ 68° A 300
実施例6 3(0.79)30 50 拡張濡れ 23° A 400
実施例7 4(0.20)60 20 拡張濡れ 84° A 300
実施例8 4(0.20)30 50 拡張濡れ 55° A 400
実施例9 5(0.49)60 20 拡張濡れ 77° A 300
実施例10 5(0.49)30 50 拡張濡れ 31° A 400
比較例1 x(0.93)60 20 25° 65° C 450
比較例2 x(0.93)30 50 拡張濡れ 24° A 500
比較例3 y(1.02)60 20 33° 53° C 400
比較例4 y(1.02)30 50 15° 41° A 画像形成できず
比較例5 z(1.89)60 20 42° 64° C 450
比較例6 z(1.89)30 50 19° 20° B 画像形成できず
────────────────────────────────────────
(註)
疎水性化合物1:n−ドデカン
疎水性化合物2:スチレン
疎水性化合物3:トリメチロールプロパントリアクリレート
疎水性化合物4:ステアリルメタクリレート
疎水性化合物5:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート
疎水性化合物x:フタル酸ジメチル
疎水性化合物y:ペンタエリスリトールテトラアクリレート
疎水性化合物z:トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート
拡張濡れ:上述の空中水滴法による水滴の接触角測定において、得られた接触角値が0°〜10°の範囲に含まれたもの

Claims (3)

  1. 加熱により疎水性に変換可能な親水性層を支持体上に有し、親水性層が疎水性化合物を含む粒子と光熱変換剤とを含む平版印刷用原版であって、疎水性化合物が0乃至0.8の範囲にI/O値を有することを特徴とする平版印刷用原版。
  2. 疎水性化合物が重合性基を有する請求項1に記載の平版印刷用原版。
  3. 疎水性化合物を含む粒子がマイクロカプセルである請求項1に記載の平版印刷用原版。
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