JP2005264275A - 耐高速衝撃貫通性および溶接性に優れる高強度鋼およびその製造方法 - Google Patents

耐高速衝撃貫通性および溶接性に優れる高強度鋼およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 耐高速衝撃貫通性および溶接性に優れる高強度鋼およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 本発明鋼は、質量%で、C:0.30〜0.42%、Si:0.15〜0.5%、Mn:0.1〜0.6%、Ni:2〜5%、Mo:0.3%以上、1%未満、Nb:0.01〜0.04%、かつ、Mo+25Nbが1%以上、Ti:0.005〜0.03%、P:0.005%以下、S:0.002%以下、N:0.0025〜0.006%を含有し、必要に応じて、さらに、Cr:0.2〜0.8%、V:0.03〜0.12%、W:0.5〜1.5%、B:0.0005〜0.005%、Co:2〜5%のうちの1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、ミクロ組織がマルテンサイトと残留オーステナイトの混合組織であり、残留オーステナイトの組織分率が3%以下であることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

この発明は、耐高速衝撃貫通性および溶接性に優れる超高強度鋼およびその製造方法に関する。
高強度の鋼は、その高い強度や、セラミックス等に比べて靱性が高く破壊しにくいなどの特徴から、弾丸や砲弾破片から人命や機材を防御する、いわゆる装甲用の板材として用いられる。装甲用板の受ける衝撃は銃器や弾薬によりさまざまであるが、ライフルでは弾速が900m/sを超えるものもあり、このような高速弾に対しても有効な性能が求められる。
また、装甲用の材料は、実用上、軽量であることが非常に重要であり、できるだけ薄い板厚で、所期の耐弾性能を具備することが必要である。板厚が薄くなるほど、かかる高速衝撃に対して耐弾性を有するためにはより高い強度が必要となる。一方、高強度になるほど靱性が低下し被弾時の衝撃波によって割れが生じやすくなり、さらに、高速のひずみ変形を受けると強いせん断力によって栓状に打ち抜かれる、いわゆるプラッギング現象が起きやすくなるため、高強度化と割れや貫通の回避を両立させることは容易ではない。
本発明者は、こうした課題を解決した高い耐高速衝撃貫通性を有する鋼材を、先に特許文献1にて開示した。同特許文献1に記載の発明の要旨とするところは、まず、C量を高くし、十分に焼き入れることによって転位密度の高いマルテンサイトとすることが、飛翔体の速度が900m/sを超えるような高速の衝撃を受けたときの耐高速衝撃性を高めるうえで必要不可欠な要素となるというものである。そのために、C量を0.3%以上としたうえで、ほぼ完全にマルテンサイト組織とするものである。さらに、高い転位密度を持ちながら、衝撃波による割れ発生を確実に回避するために、Ni添加および低温焼戻しによる靭性向上が図られている。また、高速衝撃を受けるときに、大きなせん断力によって断熱的に急速な温度上昇が起きて局所的に鋼板の強度が低下するために、鋼板が栓状に打ち抜かれることによって貫通する現象であるプラッギングを回避するために、Moが添加されている。
特開平11−264050号公報
しかしながら、装甲用途によっては構造物として用いるために溶接施工が必要な場合もあり、その際には溶接性が要求されるが、上記特許文献1に記載の発明の鋼材は、溶接性を考慮したものではなく、一般的な溶接施工はできない。このように、高い耐高速衝撃貫通性と溶接性を両立できる鋼は、これまで存在しなかった。
そこで、本発明は、耐高速衝撃貫通性に優れ、かつ溶接性にも優れる高強度鋼およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
このような課題を解決するために、本発明者は、特許文献1に記載の発明で得られた高い耐高速衝撃貫通性を具備するための知見に加えて、さらに同時に溶接性を兼ね備える方法について鋭意検討を重ねた。特許文献1に記載の発明について再検討してみると、C量を0.3%以上としたうえで、転位密度の高いマルテンサイト組織とすることは、耐高速衝撃性を得るためにはやはり不可欠である。また、プラッギングの回避も不可欠であり、Moの効果は重要であるが、一方でMoを多く含む鋼は溶接性が低下する問題がある。C量が0.3%以上で、かつ特許文献1に記載の発明のようにMoを1%以上含む鋼材では、どうしても溶接性を具備することは容易ではない。
そこで、本発明者は、Mo添加以外で、かつ溶接性を低下させない方法によりプラッギングを回避する可能性を探るべく、断熱的な高速のせん断変形に対する抵抗への合金元素やプロセスの影響についてさらに詳細な検討を重ねた。その結果、Nbを適量添加し、さらに適切な制御圧延を行なうことによってもプラッギングを回避する効果が向上することを見出した。すなわち、Nbは、適切な圧延条件のもとで圧延中および圧延終了後短時間のうちに転位上にNb(CN)などのかたちで微細析出する。これが固溶Moと同様に、焼入れ組織の高密度の転位を固着するので、断熱的な高速せん断変形に対する抵抗を向上させるものと考えられる。しかしながら、ここで前提とするC添加量が比較的多いためNbが多いとNbの固溶温度が高くなり、一方で鋼片または鋳片の加熱温度には設備上の限界があるため、自ずからNbの有効な添加量には限界があり、Nb単独では十分な転位の固着効果を得ることはできなかった。したがって、所期の耐プラッギング性能を得るには、MoとNbを複合添加することが必要となった。本発明者は、種々の組成の鋼板の貫通試験を実施し解析を行った結果、図1に示すように、Mo+25Nb(質量%)と耐プラッギング性との間にはよい相関関係があることをみいだした。すなわち図1に示すように、Mo+25Nbが1%未満では耐プラッギング性が不十分であるため貫通しやすいが、Mo+25Nbが1%以上であれば十分な耐プラッギング性を有し、優れた耐貫通性を示す。
また、本発明者は、組織微細化、特に焼入れ後のマルテンサイト組織のラス長さの微細化は破壊の単位を小さくして、溶接熱影響部の靭性を向上させるなど溶接割れの回避にも有効であると考え、圧延中に微細析出するNb(CN)を、制御圧延効果を高め組織の微細化を図る手段として有効活用することを検討した。
また、Ti添加によりTiNを形成させて、そのピニング効果により結晶粒成長を抑制して溶接熱影響部組織の靭性を向上させるべく、Tiの適量添加量についても検討した。
上記のようにして、本発明者は、Nbを適量添加して適切な制御圧延を行なうことよって、Mo添加量を1%未満に抑制してもプラッギングが回避できること、またNb(CN)析出による制御圧延効果増大による組織微細化に加え、Tiの適量添加によって鋼材の溶接性を大きく改善することができ、その結果、高い耐高速衝撃貫通性と溶接性を両立できる鋼を得ることができることを確認した。
また、Cr、V、Wなどの高温強度を高める元素には、MoやNbほど顕著ではないが、やはりプラッギングを抑制する効果がある。これに対してNiは過剰に添加するとプラッギングを起こしやすくなり、貫通しやすくなる。Niは靭性を確保して被弾時に割れを回避するためには非常に有効であり本発明鋼においても不可欠な元素であるが、Ni添加量は靭性確保に必要な量にとどめるべきである。図2に示すように、Niが2%未満では靭性が低く被弾時に割れが生じるために耐貫通性が低下する。またNiが5%を超えると靭性は高くなるにもかかわらず、プラッギングにより貫通しやすくなる。
鋼ミクロ組織はできるだけフルマルテンサイトに近い組織が望ましい。残留オーステナイト分率が高くなると硬さが低下するとともにプラッギングを起こしやすくなり、貫通しやすくなる。特に、図3に示すように残留オーステナイト分率が3%を超えると耐貫通性の低下が著しいので、残留オーステナイト分率は3%以下とすることが望ましい。
本発明は、これらの知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは下記のとおりである。
(1) 質量%で、C:0.30〜0.42%、Si:0.15〜0.5%、Mn:0.1〜0.6%、Ni:2〜5%、Mo:0.3%以上、1%未満、Nb:0.01〜0.04%、かつ、Mo+25Nbが1%以上、Ti:0.005〜0.03%、P:0.005%以下、S:0.002%以下、N:0.0025〜0.006%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、ミクロ組織がマルテンサイトと残留オーステナイトの混合組織であり、残留オーステナイトの組織分率が3%以下であることを特徴とする、耐高速衝撃貫通性および溶接性に優れる高強度鋼。
(2) 質量%で、さらに、Cr:0.2〜0.8%、V:0.03〜0.12%、W:0.5〜1.5%、B:0.0005〜0.005%、Co:2〜5%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)に記載の耐高速衝撃貫通性および溶接性に優れる高強度鋼。
(3) 質量%で、C:0.30〜0.42%、Si:0.15〜0.5%、Mn:0.1〜0.6%、Ni:2〜5%、Mo:0.3%以上、1%未満、Nb:0.01〜0.04%、かつ、Mo+25Nbが1%以上、Ti:0.005〜0.03%、P:0.005%以下、S:0.002%以下、N:0.0025〜0.006%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼片または鋳片を1200℃以上に加熱して、880℃以下、Ar3変態点以上の温度域で累積圧下率が60%以上の熱間圧延を行った後、Ar3変態点以上の温度から30℃/sec以上の冷却速度で100℃以下まで冷却する焼入れ熱処理を行なうことを特徴とする、耐高速衝撃貫通性および溶接性に優れる高強度鋼の製造方法。
(4) 前記鋼片または鋳片が、質量%で、さらに、Cr:0.2〜0.8%、V:0.03〜0.12%、W:0.5〜1.5%、B:0.0005〜0.005%、Co:2〜5%のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする、上記(3)に記載の耐高速衝撃貫通性および溶接性に優れる高強度鋼の製造方法。
(5) 前記焼入れ熱処理後、さらに、250℃以下の温度で焼戻し熱処理することを特徴とする、上記(3)または(4)に記載の耐高速衝撃貫通性および溶接性に優れる高強度鋼の製造方法。
本発明によれば、非常に高強度でありながら高い靭性と耐プラッギング性を具備することで耐貫通性を高め、かつMo添加量を抑制しながらこれを実現したことから溶接性を改善し、その結果耐高速衝撃貫通性と溶接性が両立する高強度鋼が得られる。また、本発明の製造方法によれば前記高強度鋼を容易に製造することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明の鋼成分の限定理由を述べる。
Cは、マルテンサイトの硬さを決定し、転位密度を高める重要な元素であり、非貫通のための高い転位密度を得るには0.3%以上必要であるが、0.42%を越えて添加すると溶接性が低下するので含有量を0.3%以上、0.42%以下とする。
Siは、脱酸のため通常0.15%以上程度添加する。しかし0.5%を超えて添加すると溶接性が低下する場合があるので、添加量は0.15%以上、0.5%以下とする。
Mnは、MnSを形成することによってSの粒界偏析による靭性低下を抑制する。この目的のためには0.1%以上の添加が必要である。またMnはこのレベルの高強度鋼では強度向上にはあまり大きく寄与せず、むしろ0.6%を超えて添加すると耐貫通性を低下させる。したがって、含有量は0.1%以上0.6%以下とする。
Niは、靱性を向上させ被弾時の割れを回避するためには2%以上は必要であるが、5%を越えて添加すると耐貫通性を低下させるので、含有量は2%以上、5%以下とする。
Moは、耐貫通性を向上させるための重要な元素である。Nbとの複合添加を行った場合でも、十分な耐貫通性を得るには少なくとも0.3%以上の添加は必要であり、望ましくは0.6%以上添加する。1%以上添加すると溶接性を低下させるので、Moの添加量は0.3%以上、望ましくは0.6%以上、1%未満とする。
Nbは、Moと同様本発明において耐貫通性を向上させるための重要な元素である。この効果を発揮するためには0.01%以上の添加が必要であるが、Cが0.3%以上である場合には0.04%を超えて添加しても通常のスラブ加熱温度範囲では十分に固溶せず、0.04%を超えて添加する意味はないので、添加量は0.01%以上、0.04%以下とする。0.04%を超えるNbは有効に作用しないので、Nb単独では十分な耐貫通性を得ることはできず、MoとNbとを複合添加することが必要である。十分な耐貫通性を得るために必要なMo、Nbの添加量は、Mo+25Nbが1%以上である。
Tiは、TiNを形成してピニング効果により溶接熱影響部の粗大化を抑制し、溶接性を向上させる。このような効果を発揮するためには0.005%以上は必要であるが、0.03%を超えて添加するとTiNが粗大化してかえって溶接性を損ねるので、添加量は0.005%以上、0.03%以下とする。
Nは、Tiと結びついてTiNを形成させるために0.0025%以上が必要であるが、0.006%を超えて添加するとかえって靭性を阻害するため、その添加量は0.0025%以上、0.006%以下とする。
PおよびSは、結晶粒界に偏析してこのような高強度鋼においては少量で靭性を低下させるため、極力低減することが必要である。Pは0.005%以下、Sは0.002%以下とする。
以上は本発明における鋼の基本成分であるが、さらに本発明では上記成分の他に、Cr、V、W、B、Coのうち一種または二種以上添加することができる。
高温強度を高めることは非貫通性を高める上で有効である。Cr、V、Wは、いずれも高温強度を高め、同時に焼入性も高める。それらの効果を発揮するには、それぞれCrが0.2%以上、Vが0.03%以上、Wが0.5%以上必要である。しかし、Crは0.8%、Vは0.12%、Wは1.5%を超えてそれぞれ添加すると溶接性を阻害する。したがって、これらを添加する場合にはそれぞれ、Crは0.2%以上、0.8%以下、Vは0.03%以上、0.12%以下、Wは0.5%以上、1.5%以下とする。
Bは、焼入性を高めて硬さを上昇させる。その効果を発揮するには0.0005%以上必要であるが、0.005%以上では靱性が低下しやすい。したがって、Bの含有量は0.0005〜0.005%とすることが望ましい。
Coは、靱性向上に有効な元素であり、その効果は2%以上で発揮される。しかし、5%を越えて添加してもそれ以上の靱性向上効果はなく、コストも高くなるので、Coの添加量は2%以上、5%以下とすることが望ましい。
さらに、Alは、脱酸元素または介在物形態制御元素として0.001〜0.1%含有してもかまわない。
前記のように、本発明は鋼組成に加え、ミクロ組織をほぼ完全にマルテンサイト組織とすることで高い耐高速衝撃貫通性が得られたものである。ミクロ組織は、マルテンサイトと残留オーステナイトの混合組織であり、残留オーステナイトの組織分率(体積分率)が3%以下であることを特徴とする。残留オーステナイトは、マルテンサイト組織と形態的には類似しており、ミクロ組織の観察から残留オーステナイトとマルテンサイトを判別することは容易ではない。残留オーステナイトの組織分率は、X線分析によりフェライトの積分強度とオーステナイトの積分強度の比から定量的に求めることができる。
次に製造方法について述べる。
まず、上記の鋼成分組成の、鋼片または鋳片を加熱して熱間圧延を行なう。加熱温度はNbを完全に固溶させるために1200℃以上とする。
熱間圧延は、Nb(CN)を析出させ、制御圧延効果を得るために、880℃以下、Ar3変態点以上の温度域で累積圧下率を60%以上を確保する。その後、一旦Ar3変態点未満に冷却した後、再びAc3変態点以上の温度に加熱して焼き入れる(再加熱焼入れ)か、または熱間圧延後直ちにAr3変態点以上の温度から焼き入れる(直接焼入れ)かいずれかの方法で、Ar3変態点以上の温度から焼入れ熱処理を行なう。この際、残留オーステナイト分率が3%以下のマルテンサイト組織を得るためには、100℃以下まで30℃/sec以上の冷却速度が必要である。さらに、強度や靭性を調整する場合など、必要に応じて250℃以下の温度で焼戻し熱処理をする。
このような製造方法で得られる鋼は、残留オーステナイト分率が3%以下のマルテンサイト組織であり、高い耐高速衝撃貫通性を示す。
装甲用途としては、車体、船体、航空機、あるいは建造物の部材としての用途、あるいは盾としての用途などが考えられ、それぞれの用途に応じて、厚板または薄板として用いてもよい。
鋼材単体で用いてもよいし、あるいは複数枚を積層して用いてもよい。さらに表面か裏面または両面に防弾シートやアルミニウム(合金)、チタン(合金)等他の材料や別の鋼板を貼り合わせる形状としてもよい。
表1に示す組成を有する鋼を溶製して得られた鋼片を、1250℃加熱後、880℃以下、Ar3変態点以上の温度域で累積圧下率を60%以上として熱間圧延を行なった。次いで、それぞれ表2に示す本発明と比較法のそれぞれの製造条件に基づいて、板厚6mm〜12mmの鋼板を製造した。
これらの鋼板について、高速飛翔体を衝突させる耐弾試験により、耐高速衝撃貫通性を調査した。耐弾試験は、ブリネル硬さHB200、径7.62mmの鈍頭円柱弾を、速度を変化させて鋼板と垂直に衝突させ、貫通せずかつ鋼板に割れを生じることなく停止する確率が50%となる限界の速度を求め、これを耐弾限界速度V50とした。耐弾試験鋼板の板厚は、減厚加工などによりすべて7mmに統一した。溶接性の評価は、JIS Z 3154に準拠した溶接割れ試験により、割れが発生しなくなる予熱温度を求めた。溶接条件はL−55溶接棒を用い、入熱1.7kJ/mmとした。予熱温度が100℃以上となると実施工面での制約が大きいと考えられる。靱性は−40℃におけるシャルピー衝撃試験の1cmあたりの吸収エネルギー値の3本の平均値で評価した。試験片は板厚中心部から圧延方向に直角に採取し、5mm幅サブサイズのJIS Z 2201 4号シャルピー試験片とした。靭性が低い場合、加工などの問題が生じることがあるほか、被弾時に割れが発生しやすくなり耐弾性能が低下する場合がある。残留オーステナイト体積分率Vγ(%)は、理学電機製微小焦点X線応力測定装置PSPC−MSF型を用い、Cr−Kαターゲット、管電圧30kV、管電流20mAの条件で、X線によりフェライト(211)面とオーステナイト(220)面の積分強度比を求め、(1)式により算出した。
Vγ(%)={1/〔(K×2Ia/Ir)+1〕}×100 (1)
ここで、Ia:フェライトの積分強度、
Ir:オーステナイトの積分強度、
K :補正係数(=0.30)
なお、表中で下線を付した数値は、本発明外の成分値、温度条件および特性が不十分なものを示す。
表2の本発明例1−A〜10−Jにおいては、すべて耐弾限界速度V50が900m/sを超える非常に優れた耐高速衝撃貫通性を示すとともに、−40℃におけるシャルピー吸収エネルギーは15J/cm以上と靭性が良好であり、かつ割れなく溶接できる予熱温度が75℃以下であり実用上問題のない良好な溶接性を有する。これに対し、本発明により限定された化学組成範囲を逸脱した比較鋼においては、製造法は本発明法であるにもかかわらず、比較例11−KはC量が低いため、比較例15−OはMn量が高いため、比較例19−SはNi量が高いため、それぞれ貫通しやすく、耐弾限界速度V50が低い。比較例20−T、比較例22−Vおよび比較例23−WはそれぞれMo+25Nbの量が1%未満であるため貫通しやすく、耐弾限界速度V50が低い。また、比較例12−LはC量が高いため、比較例17−QはS量が高いため、それぞれ靭性が低く割れやすいので耐弾限界速度V50が低く、かつ溶接性も良くない。また、比較例16−PはP量が高いため、比較例18−RはNi量が低いため、それぞれ靭性が低く割れやすいので耐弾限界速度V50が低い。また、比較例14−NはMn量が低いため、比較例25−YはTi量が高いため、比較例26−ZはN量が高いため、比較例30−ADはB量が高いため、それぞれ靭性が低くかつ溶接性が良くない。また、比較例13−MはSi量が高いため、比較例21−UはMo量が高いため、比較例24−XはTi量が低いため、比較例27−AAはCr量が高いため、比較例28−ABはV量が高いため、比較例29−ACはW量が高いため、それぞれ溶接性が良くない。さらに、本発明鋼であっても本発明の製造法を逸脱した比較例31−Aは再加熱焼入れ温度が低いため、比較例32−Aは焼入時の冷却速度が低いため、比較例33−Aは水冷停止温度が低いため、34−Aは焼戻し温度が高いため、それぞれ貫通しやすく、耐弾限界速度V50が低い。
Figure 2005264275
Figure 2005264275
Mo、Nb量とシャルピー靱性および耐弾性(V50)との関係を示す図である。 Ni量とシャルピー靱性および耐弾性(V50)との関係を示す図である。 本発明の鋼組成における残留オーステナイト分率と硬さおよび耐弾性(V50)との関係を示す図である。

Claims (5)

  1. 質量%で、
    C :0.30〜0.42%、
    Si:0.15〜0.5%、
    Mn:0.1〜0.6%、
    Ni:2〜5%、
    Mo:0.3%以上、1%未満、
    Nb:0.01〜0.04%、
    かつ、Mo+25Nbが1%以上、
    Ti:0.005〜0.03%、
    P :0.005%以下、
    S :0.002%以下、
    N :0.0025〜0.006%
    を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、ミクロ組織がマルテンサイトと残留オーステナイトの混合組織であり、残留オーステナイトの組織分率が3%以下であることを特徴とする、耐高速衝撃貫通性および溶接性に優れる高強度鋼。
  2. 質量%で、さらに、
    Cr:0.2〜0.8%、
    V :0.03〜0.12%、
    W :0.5〜1.5%、
    B :0.0005〜0.005%、
    Co:2〜5%
    のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の耐高速衝撃貫通性および溶接性に優れる高強度鋼。
  3. 質量%で、
    C :0.30〜0.42%、
    Si:0.15〜0.5%、
    Mn:0.1〜0.6%、
    Ni:2〜5%、
    Mo:0.3%以上、1%未満、
    Nb:0.01〜0.04%、
    かつ、Mo+25Nbが1%以上、
    Ti:0.005〜0.03%、
    P :0.005%以下、
    S :0.002%以下、
    N :0.0025〜0.006%
    を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼片または鋳片を1200℃以上に加熱して、880℃以下、Ar3変態点以上の温度域で累積圧下率が60%以上の熱間圧延を行った後、Ar3変態点以上の温度から30℃/sec以上の冷却速度で100℃以下まで冷却する焼入れ熱処理を行なうことを特徴とする、耐高速衝撃貫通性および溶接性に優れる高強度鋼の製造方法。
  4. 前記鋼片または鋳片が、質量%で、さらに、
    Cr:0.2〜0.8%、
    V :0.03〜0.12%、
    W :0.5〜1.5%、
    B :0.0005〜0.005%、
    Co:2〜5%
    のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項3に記載の耐高速衝撃貫通性および溶接性に優れる高強度鋼の製造方法。
  5. 前記焼入れ熱処理後、さらに、250℃以下の温度で焼戻し熱処理することを特徴とする、請求項3または請求項4に記載の耐高速衝撃貫通性および溶接性に優れる高強度鋼の製造方法。
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JP2023514864A (ja) * 2020-02-28 2023-04-11 バオシャン アイアン アンド スティール カンパニー リミテッド 降伏比が制御された鋼およびその製造方法

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