JP2005262281A - 疲労寿命にすぐれた溶接継手 - Google Patents

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Abstract

【課題】特殊な装置の使用や母材組成と大きく異なる溶接材料を用いることなく、化粧溶接を活用することにより、疲労強度の高い溶接継手を提供。
【解決手段】 溶接止端部に化粧溶接を施した溶接継手であって、母材を繰返し軟化パラメータが0.95以下の鋼材とし、化粧溶接による余盛止端部の弾性応力集中係数Ktが2.0以下である疲労強度にすぐれた溶接継手、および溶接棒径d(mm)に対し、溶接電流(A)をイルミナイト系溶接材料の場合は40d〜60dA、イルミナイト系以外の溶接材料の場合は60d〜80dAとして化粧溶接をおこなう疲労強度にすぐれた溶接継手の製造方法。
【選択図】図6

Description

本発明は繰り返し荷重が作用する部位に使用される、溶接鋼構造物の疲労寿命にすぐれた溶接継手に関する。
近年鋼構造物の大型化とともにその安全性に対する要求は一段と厳しくなっており、とくに繰り返し荷重のかかる構造物に対しては、溶接継手部における疲労破壊が危惧されている。疲労破壊が発生する場合、施工終了後長期間を経た後に現れることが多いので、その対策は、構造物の設計や建設段階だけではなく建設後のメンテナンスにおいても重要な課題である。
一般に鋼材の疲労強度は、その引張強さにほぼ比例して高くなることはよく知られている。
しかしながら、溶接継手の疲労強度は母材に引張強さの高い鋼材を用いても高くならず、場合によっては低下することさえ報告されている。これは、一つには引張残留応力の増大と、もう一つには溶接により導入される切欠き感受性増大によると考えられている。
溶接施工により、通常、溶接部の表面近傍には引張の残留応力が発生するが、その大きさは局所的には母材の降伏応力に近い。一般に、鋼材は引張強度が高くなるとそれに応じて降伏応力も高くなるため、母材の強度を高くすれば、溶接表面部の引張残留応力もそれだけ高くなる。残留応力は、繰返し応力が加えられる疲労強度に対し、平均応力が印加された状態として取り扱われる。
一方、鋼のヤング率は引張強度が高くても低くてもほぼ同等なので、弾性限界内で繰返し応力が加わる場合、その応力の大きさが同じであれば強度の如何にかかわらず鋼材の変形量はほぼ同じである。このため、母材の引張強度が高いほど降伏強度は高くなるので残留応力は増し、溶接部分は高い平均応力下で疲労特性を評価していることになって、結果的に疲労強度に対し高強度材は不利になる。
また、繰返し応力の加わる部分に欠陥あるいは切欠が存在すると、その部分に応力が集中してき裂が発生し、それが伝播して破壊に至るので鋼材の疲労強度を低下させる。応力集中の大きさはその切欠きの形状により定まり、材料には無関係であるが、同じ切欠きでも鋼材により疲労強度が異なることが知られている。
これは切欠き感受性として評価され、平滑な試験片を用いて求めた疲労強度と、応力集中源となる切欠きを設けた試験片による疲労強度との比率を指標に用いる。切欠きの応力集中係数に比べて、平滑材の疲労強度に対する切欠き材の疲労強度が大きく低下する場合を切欠き感受性が高いと表現し、逆を切欠き感受性が低いとする。この切欠き感受性は、材料ごとに固有の値を有し、切欠き感受性が低いことは、切欠き部を起点とする疲労き裂の進展に対しその抵抗性がすぐれていることを示している。
疲労強度の切欠き感受性は、鋼材の強度が高くなるほど高くなり、強度が低下すると低くなる傾向がある。そして溶接継手があればその止端が切欠きと同じ作用を呈し、止端が破壊の起点となることが多い。
このように母材鋼材の引張強度が高くなると、母材自体の疲労強度は向上するが引張残留応力の増大、切欠き感受性上昇の点で、継手部の疲労強度には不利に作用し、その結果、母材の引張強度の向上は、そのまま溶接継手の疲労強度を向上させる効果をもたらすとは必ずしも言えないことになる。
溶接構造物の疲労破壊は、溶接継手部のとくに形状から来る応力集中や引張り残留応力の生じやすい溶接止端部で疲労き裂が発生し、そのき裂が進展することにより起こる場合が大半を占める。このため従来から、溶接止端を起点とするき裂発生の抑止による疲労破壊防止技術について、多数の方法が提案されてきた。
たとえば、特許文献1に提示されたすみ肉溶接継手のビードの整形方法は、溶接して形成されたビードに棒状肉盛り材の長さ方向に対する垂直断面を押しつけ、その肉盛り材を長さ方向の軸を中心に高速回転させて生じた摩擦熱により両者の接触面に塑性流動化部を生じさせ、これをビード方向にスライドさせていくことによってビード表面を滑らかに整形し、溶接止端部の応力集中を排除する。しかし、この方法の実施には特殊な高速回転およびスライド設備を別途必要とする。
また、特許文献2には、溶接止端部の温度が溶接後200℃以上かつ600℃以下になったとき、表面に冷媒を噴射することにより、平均冷却速度10℃以上にて冷却する発明が開示されている。この温度範囲からの表面の急冷により、内部が高温である間に表面の温度を下げておき、引き続いて起きる内部の冷却による熱収縮にて表面に圧縮の残留応力を生じさせ、溶接止端部に応力を加えて、疲労強度を向上させようとするものである。しかし、液体窒素などの冷媒やそれを吹き付ける冷却装置が必要であり、その上、外観上残留応力変化は確認できず処理による効果の品質保証が困難であるという問題がある。
通常の溶接後、化粧ビード(化粧溶接)あるいは付加ビード(付加溶接)などと呼ばれる溶接ビードを、止端上に重ねて形成させることにより、止端部形状を滑らかにする技術も古くから知られている。この技術はとくに別の設備を必要としない点で実施容易であり、特許文献3には、この化粧溶接用に溶接金属が低温変態する溶接材料を使用する発明が開示されている。
通常の溶接施工条件において、溶接金属が低温でマルテンサイト変態するような溶接材料を使用する発明は、たとえば特許文献4に示されており、溶接継手の疲労強度向上に効果があるとしている。熱膨張係数が母材のそれとほぼ等しい溶接金属の場合、溶接をおこなった後の冷却時には、母材より遅れて温度が降下するので、高温の容易に塑性変形する温度域を過ぎて室温近くまで降下してくると、熱収縮によって引張応力が残留しやすく、この溶接金属表面近傍の引張応力の残留は、継手の疲労強度を大きく低下させる。これに対し、溶接により生成する溶接金属を、溶接後の冷却過程における室温に近い温度域でマルテンサイト変態が起きる組成にする。そうすると、変態に伴い膨張が発生するので、塑性変形を起こしにくい室温近くの低温域にて溶接金属の熱収縮を緩和し、さらには圧縮の残留応力を発生させて継手の疲労強度を向上させる。
特許文献3に開示された発明は、このような変態による膨張によって導入される効果を化粧ビードに適用しようとするものであり、さらに化粧ビードを形成させる際、あらかじめその部位が引張り応力状態にあるように外力を付与すれば、疲労強度はより一層向上するとしている。しかしながら、溶接金属の組成は母材と溶接材料との組合せで決まるものであり、その混合比率は溶接電流等により大きく影響を受けるので、変態温度を支配する溶接金属の組成を安定して制御することは必ずしも容易ではない。
溶接により必然的に生じる引張の残留応力を解消する点において、この溶接金属を低温で変態する材料とする方法はすぐれていると考えられる。しかし、このようなマルテンサイト変態による金属の高強度化は避けられず、溶接金属が母材に比して著しく硬化していることに起因する、割れを初めとする各種の溶接不具合が発生しやすくなる傾向がある。
さらに特許文献5には、この低温で変態する溶接金属を当初の溶接ビード止端の上に付加溶接することに加えて、その止端部の応力集中係数Ktを1.3以上2.8以下となるように付加溶接をおこなう溶接継手の発明が開示されている。この応力集中係数Ktは、板厚や幅など使用鋼材の寸法と、溶接金属の余盛角度、止端半径等により定まるが、溶接時において上記範囲内に応力集中係数Ktを制御する手段については、単にKtが上記範囲内となるよう付加溶接をおこなうとのみ記述されているだけで、具体的な溶接条件については何一つ説明されていない。
特開2002−263836号公報 特開平6−262385号公報 特開2002−113577号公報 特開平11−138290号公報 特開2003−251489号公報 後川理、他1名「溶接継手部の応力集中」石川島播磨技報、石川島播磨重工株式会社、昭和58年7月 第23巻、第4号、p.351-355
本発明の目的は、特殊な装置の使用や母材組成と大きく異なる溶接材料を用いることなく、化粧溶接を活用することにより、疲労強度の高い溶接継手を提供することにある。
本発明は上記の疲労強度の高い溶接継手を、施工の容易な化粧溶接を溶接止端の上に施すことにより得ようとするものであり、その要旨は次のとおりである。
(1)溶接止端部に化粧溶接を施した溶接継手であって、母材は繰返し軟化パラメータが0.95以下の鋼材であり、化粧溶接による余盛止端部の弾性応力集中係数Ktが2.0以下であることを特徴とする疲労強度にすぐれた溶接継手。
(2)化粧溶接がイルミナイト系溶接材料を用いたものであることを特徴とする上記(1)の疲労強度にすぐれた溶接継手。
(3)溶接棒の径d(mm)に対し、溶接電流(A)をイルミナイト系溶接材料の場合は40〜60dA、イルミナイト系以外の溶接材料の場合は60d〜80dAとして化粧溶接をおこなうことを特徴とする上記(1)または(2)の疲労強度にすぐれた溶接継手の製造方法。
本発明の溶接継手は疲労強度が高く、簡単な化粧溶接により特殊な装置や母材組成と大きく異なる溶接材料を用いることなく容易に製造することができる。
本発明者らは、溶接継手の疲労強度は溶接部の形状に基づく切欠き効果の影響を強く受けることから、切欠き材の疲労強度におよぼす要因を解明することにより、その疲労強度改善が可能との視点に立ち、まず引張り強度の異なる鋼材にて、切欠き底での応力集中係数と、切欠き感受性との関係を調査した。
各種強度の鋼板から作製した平滑試験片と、機械加工により応力集中係数の異なる切欠きを設けた試験片とにより疲労試験を実施し、切欠き係数すなわち(平滑材疲労限)/(切欠き材疲労限)を求めた。結果を図1に示す。
この図1の結果から、同じ応力集中係数の切欠きであっても、鋼板の強度が高くなると疲労強度に対する切欠き係数すなわち切欠き感受性が高くなっており、同じ引張り強さの鋼板でも切欠き感受性の低い材料があることがわかる。そしてこの切欠き感受性の材料による差は、切欠き底の応力集中係数が小さい場合ほど顕著である。
この同じ引張り強さでも切欠き感受性が低い結果を示す鋼についてさらに諸性質を調べてみたところ、繰返し軟化を示す鋼材であることがわかった。そこで、繰り返し負荷を印加した後の耐力を測定し、その耐力と切欠き係数との相関を見ると引張り強さと切欠き係数との関係で見られるような鋼による相違がなくなってしまう。すなわち切欠き材の疲労強度を決定しているのは、鋼材の引張り強さではなく、繰返し負荷後の耐力であることがあきらかになってきた。
通常、鋼材の引張り強さと繰返し負荷後の耐力との間には相関関係があり、どちらの特性を用いても切欠き試験片の疲労強度と好い相関を示すと思われる。ところが、同じ引張り強さであっても、繰返し軟化が大きい鋼材であれば切欠き感受性は低下し、さらに溶接施工時に止端に生じる切欠きの応力集中係数を低くできれば、母材の強度に相応して溶接継手の疲労強度を大幅に向上させることができることになる。
また、疲労に対する切欠き感受性は多大の時間を要する疲労試験をおこなわなければ求まらないが、繰返し軟化は短時間で比較的容易に求めることができる。
そこで次に、溶接継手における応力集中係数の低減法として、特別の装置を必要とせず容易に実施できる化粧溶接について検討をおこなった。対象は図2に模式的に示す母材鋼板1とリブ2とのT継手のすみ肉溶接とした。化粧溶接とはすみ肉溶接3をおこなった後、止端の上に余盛4を形成させる溶接である。ここで、止端における応力集中係数Ktは、図3の諸元に基づく下記の後川らの式(非特許文献1)により求めた。
t=[1+f(θ)×{g(ρ)−1}] (1)
ここで f(θ):溶接余盛り角の影響、g(ρ):止端半径の影響
f(θ)=[1−exp{−0.90×(W/2h)0.5×(π−θ)}]
/[1−exp{−0.90×(W/2h)0.5×(π/2)}] (2)
g(ρ)=1+2.2×[(h/ρ)/{2.8×(W/t)−2}]0.65 (3)
ここで W=(t+4×h)+0.3×(tP+2×hP)
h:リブ方向脚長、θ:余盛角、t:主板(母材)厚、tP:リブ板厚
hP:主板方向脚長、ρ:止端半径
すみ肉溶接を通常の炭酸ガス溶接にておこなった後、止端部に種々条件を変えて化粧溶接をおこない、得られた溶接継手にて化粧溶接止端のKtを測定し、Ktを小さくできる条件を調査した。その結果、溶接材料メーカーの提示している推奨値よりもはるかに大きい電流値で化粧溶接をおこなえば、化粧溶接止端のKtが大きく低減されることが見出された。
手溶接における化粧溶接にて、溶接電流増加の効果を調べた結果の例を図4に示す。この図は炭酸ガス溶接にてT継手のすみ肉溶接をおこなった後、その止端に溶接電圧25V、溶接速度34cm/分の条件で化粧溶接を施す際に電流値を増加させ、化粧溶接止端部の応力集中係数Ktを測定したものである。この図からわかるように、溶接電流がある値を超えるとKtが大きく低下している。
このように溶接電流を増加させて、ある値を超えると急激に化粧溶接止端部のKtが減少することは、イルミナイト系溶接材料による化粧溶接だけでなく、他のCO2溶接、SAW、TIG、MIGなどによる化粧溶接においても、同様な結果の得られることが確認された。ただし、イルミナイト系溶接材料を用いる方が、電流の増加は少なくて済む。
通常おこなわれる溶接条件では、溶接ままにて化粧溶接止端のKtの値を3.0以下にするのは困難であった。これに対し、上述のように溶接電流を増加させてある値以上にすると、応力集中係数Ktを一挙に2.0以下にすることができるようになる。これは、溶接電流を増加することにより止端半径が大きくなり、化粧溶接の余盛のみならず実質的な脚長の増大が同時に生じることによると思われる。
以上のように溶接電流の増大により、化粧溶接のままでKtの値の大幅低減を実現させることが可能になった。その限界をさらに調査した結果、溶接棒の直径をd(mm)とすると、イルミナイト系溶接材料の場合には40d〜60d(A)、イルミナイト系以外の溶接材料の場合は60d〜80d(A)の電流値範囲でおこなえばよいことがわかった。
このように電流の増加の範囲に最適範囲があるのは、上記の下限値を下回る電流値ではKtの大幅低下が得られず2.0以下とすることは困難であり、電流を増しすぎて上記の上限を超えると、アンダーカットが発生しやすくなるためである。上記条件で化粧溶接を施せば、Ktの値は2.0以下とすることが容易になる。なお、Ktの値は1.0にできるだけ近づけることが理想であるが、上記の方法で溶接ままにて到達できるのは1.1程度までである。
上述のように溶接止端に化粧溶接を施し、Ktの値を低下させたとき、用いる溶接鋼材に繰返し軟化の大きい鋼を用いれば、溶接継手の疲労強度をより一層向上させることができる。繰返し軟化が大きいのは冷間加工硬化、析出効果、マルテンサイト変態強化などにより強化された鋼であり、母材にはこのような鋼材を用いるのが好ましい。
繰返し軟化の程度は繰返し軟化パラメータで表示される。このパラメータは、繰返し数が増すと軟化は飽和してその鋼に特有のレベルに達するので、鋼材の当初の引張り試験における耐力と繰返し負荷後耐力との比としてもよいし、繰り返し応力を加える際の当初の最大ひずみの応力σ1と、軟化がほぼ飽和する所定回数(n回)繰返し負荷後の最大ひずみ時応力σnとの比σn/σ1から求めてもよい。
具体例を示せば、最大引張・圧縮ひずみで±0.012、繰返し速度0.5Hz、最大ひずみでの波数12の漸増、漸減繰返し負荷を15回与えた時の、1回目の最大ひずみ時の応力σ1と15回目の最大ひずみ時の応力σ15との比σ15/σ1で求められる値を繰返し軟化パラメータとする。
この場合、鋼材に負荷するひずみは、引張りと圧縮とが交互に付与される両振り波形とし、漸増・漸減波形にて繰り返し速度を0.5Hz、ひずみ漸増後のひずみ範囲は0.024とした。漸増過程では12波で最大ひずみに達し、漸減過程でも12波でひずみ量が0となるようにする。この漸増・漸減過程を1ブロックとし第1ブロック目の最大ひずみに対応する応力をσ1、第15ブロック目の最大ひずみに対応する応力をσ15とする。このようにして求めた繰返し軟化パラメータは、通常用いられる応力拡大係数範囲(△K)の20MPa・m0.5における疲労き裂進展速度(da/dN)とよい相関を示す。
繰返し軟化パラメータが0.95以下である母材により、Ktの値は2.0以下となる前述の化粧溶接を施すと、継手の疲労強度が大きく向上する。軟化パラメータが低いということは疲労き裂の進展に対し抵抗性が大きいとも言える。また、溶接施工による引張りの残留応力は、当然のことながら溶接母材の耐力以上には上がらないので、繰返し負荷により材料が軟化した場合、軟化後の耐力レベルまで緩和され、それによっても疲労寿命が大きく延伸されたものと思われる。
母材の繰返し軟化パラメータは、0.95を超えると溶接継手部の疲労き裂進展速度は速くなるが、さらに溶接継手部の疲労強度の低下を来すおそれもある。しかし、低くなりすぎて0.65を下回るようになると、疲労き裂進展速度は遅くなるが、鋼材の靱性や溶接性の劣化があり、構造用鋼としての用途が限定されてしまう。したがって母材の繰返し軟化パラメータは0.65〜0.95であることが望ましい。
このような繰返し軟化パラメータが0.95以下となる鋼材の組成およびその製造方法は、以下のようにするとよい。なお、以下に示す成分の含有量はいずれも質量%である。
C:0.02〜0.20%。Cは構造用鋼材の強度確保に有効な元素である。その含有量は0.02%未満では十分な強度が得られないが、0.20%を超えると溶接性が低下して溶接施工が困難になるので、構造用鋼としての使用範囲が限定されてしまう。十分な強度と良好な溶接性を確保するには0.04〜0.15%とするのが望ましい。
Si:0.6%以下。Siは脱酸を目的として添加するが、その含有量は0.6%を超えると靱性が劣化する。望ましいのは0.05〜0.5%である。
Mn:0.50〜2.0%。Mnは強度の確保に有効な元素であり、そのためには0.50%以上の含有が必要である。しかし2.0%を超えると靱性が劣化する。望ましいのは0.70〜1.80%とすることである。
Al:0.003〜0.10%。Alは脱酸を目的に含有させる。0.003%未満ではその効果が十分でなく、酸化物系の介在物が増加して靱性が劣化することがあり、0.10%を超えると靱性の低下を来す。望ましい含有量は0.010〜0.050%である。
上記の成分元素に加えて、鋼の性質を向上させるため下記4群の成分元素の1種以上を含有していることが好ましい。
(i) Cu:0.1〜1.5%、Ni:0.05〜1.5%、Cr:0.1〜1.2%、Mo:0.05〜1.0%、V:0.01〜0.1%およびW:0.05〜0.50%
(ii) Nb:0.01〜0.10%およびTi:0.005〜0.05%
(iii) B:0.0003〜0.0020
(iv) Ca:0.0005〜0.010%、Mg:0.0005〜0.010%およびREM:0.0005〜0.010%
上記(i)群の元素は焼き入れ性を向上させ、鋼の強度を高めるのに有効な元素である。しかし、上に示した上限範囲を超えて含有させると、靱性の劣化や溶接性の低下をもたらす。また、Cu、NiおよびCrはこれらの効果の他に、鋼の耐食性向上にも効果がある。鋼の軟化パラメータを低下させ、かつ強度および靱性を確保するために、これらの元素それぞれのより望ましい範囲は、Cu:0.01〜1.0%、Ni:0.05〜1.3%、Cr:0.1〜1.0%、Mo:0.05〜0.8%およびV:0.01〜0.08%である。
(ii)群の元素は金属組織の結晶粒を微細化させ、鋼の靱性を向上させる。しかし上記の限度を超えて含有するとかえって靱性が劣化してしまう。鋼の軟化パラメータを低下させ、かつ結晶粒の微細化および靱性向上をもたらすための、より望ましい範囲はNb:0.020〜0.050%およびTi:0.010〜0.050%である。
(iii)群のBは、溶接性を劣化させることなく鋼の焼き入れ性を高め、フェライト量を制御するのに有効な元素である。ただし、含有量が上記の限度を超えると鋼の靱性が劣化する。鋼の軟化パラメータを低下させ、かつその効果を十分維持するための、より好ましい含有範囲は0.0008〜0.0015%である。
(iv)群の元素は非金属介在物を球状化させ、鋼の靱性を向上させる効果がある。しかし、過剰の含有は酸化物などの介在物を生成させ靱性を低下させるので、上記の範囲以下とするのがよい。鋼の軟化パラメータを低下させ、かつ靱性を向上させるには、いずれの元素も0.001〜0.005%も範囲とするのがより望ましい。
上述のような組成の鋼片にて、1000〜1250℃に加熱し、熱間圧延をおこなう。熱間圧延の仕上げ圧延においては、各パスの圧下率を10%以上とするのが望ましく、圧延後直ちに急冷するか、もしくはAc1点以上に再加熱後、500℃以下に急冷する。この冷却時に重要なことは、冷却後の復熱温度幅を70℃以下にすることである。復熱温度幅が70℃を超えると、疲労き裂進展速度が大きくなる。復熱温度の幅を小さくするには、冷却開始より冷却速度を急冷、強冷、弱冷の順に落としていき、冷却最後は弱冷として鋼板の表層部と中心部とで温度差が小さくなるようにする。
表1に示す6種の鋼板を用い、まず繰返し軟化パラメータを測定した。測定条件は前述のように、最大引張り・圧縮ひずみが±0.012、繰返し速度0.5Hz、最大ひずみまでの波数12の漸増・漸減繰返し負荷を15回とし、1回目の最大ひずみ時の応力をσ1、15回目の最大歪み時の応力をσ15とするときσ15/σ1で求まる値を軟化パラメータとした。これらの軟化パラメータの値も表1に合わせて示す。
疲労試験は、設計線図上で疲労等級が最も低いガセット継手に対しておこなった。試験に用いたガセット継手の形状および寸法の一例を図5に示す。試験片のガセットの回し溶接は、炭酸ガス溶接とし溶接ワイヤーは(株)神戸製鋼所製DW−100(1.4mmφ)で、CO2流量が25L/分、電流200A、脚長6〜8mmとした。この溶接後、A:溶接まま、B:止端部のグラインダー処理、C:通常の止端部化粧溶接、D:本発明の止端部化粧溶接をそれぞれ施した試験片を作製した。これら試験片について溶接止端部形状を測定し、前述の後川の式により応力集中係数を求めた。これらの溶接継手部分の諸元を表2に示す。
実構造物での疲労寿命は、疲労き裂の発生と進展の和の寿命となるが、本試験では疲労き裂の発生までの寿命にて疲労強度を評価した。すなわち、荷重容量490kNの電気油圧式閉ループの試験機にて、大気中で、荷重制御の荷重比0.1のサイン波形とし、最大荷重時の試験機変位を連続記録して、初期値から1mm増した時点を疲労破断寿命とした。同一条件で作製した3〜7本の溶接継手試験片にてSN曲線を作成し、繰返し数200万回における疲労強度を求めた。
化粧溶接条件等止端に施した処理、応力集中係数、疲労強度測定結果を表3に示す。この応力集中係数と疲労強度測定結果をグラフにプロットすると図6が得られる。これらの結果からあきらかなように、本発明の大電流の化粧溶接を施した継手(試験番号11〜18)では応力集中係数Ktが2.0以下になっており、とくに軟化パラメータが0.95以下の鋼材を用いた場合、疲労強度のすぐれた溶接継手になることがわかる。
また、表3に示されるように溶接材料がイルミナイト系Iでは、非イルミナイト系のH(汎用)またはL(低水素)の場合に比し、より少ない溶接電流にてKtの小さい溶接継手が得られている。
Figure 2005262281
Figure 2005262281
Figure 2005262281
鋼板の引張り強さと疲労強度の切欠き係数との関係を示す図である。 すみ肉溶接における化粧溶接を説明する図である。 溶接止端の応力集中係数Ktを求める時に用いる諸元を示す図である。 化粧溶接の溶接電流と止端での応力集中係数Ktとの関係を示す図である。 疲労試験に用いた試験片の寸法を示す図である。 溶接継手の応力集中係数と200万回疲労強度との関係を示す図である。

Claims (3)

  1. 溶接止端部に化粧溶接を施した溶接継手であって、母材は繰返し軟化パラメータが0.95以下の鋼材であり、化粧溶接による余盛止端部の弾性応力集中係数Kが2.0以下であることを特徴とする疲労強度にすぐれた溶接継手。
  2. 化粧溶接がイルミナイト系溶接材料を用いたものであることを特徴とする請求項1に記載の疲労強度にすぐれた溶接継手。
  3. 溶接棒の径d(mm)に対し、溶接電流(A)をイルミナイト系溶接材料の場合は40d〜60dA、イルミナイト系以外の溶接材料の場合は60d〜80dAとして化粧溶接をおこなうことを特徴とする請求項1または2に記載の疲労強度にすぐれた溶接継手の製造方法。

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