JP2005256216A - 多層不織布 - Google Patents

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富夫 鈴木
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Abstract

【課題】しなやかで且つ形態が安定しており、しかも表面の感触が通常の熱溶融樹脂を乾燥加熱により溶融させて構成繊維同士を融着させる不織布や噴射液体流を付与することにより得られる不織布よりも一段とソフト間に優れ、嵩高性に富んだ、短繊維を構成繊維とする不織布を提供する。 【解決手段】多くの短繊維が接着材料を介して接着されてなる不織布である。同不織布が同種の主構成繊維を含む少なくとも2層からなる積層構造を有しており、表裏両面のうち、少なくとも片側の表層を構成する繊維層の多くの構成繊維は互いに交差及び/又は交絡しながら三次元方向に延在し、反対側の表層方向に向けて存在する他の繊維層よりも繊維間に空隙を多く有し、前記他の繊維層に向かう繊維間の空隙の大きさがランダムに変化しながら漸減している。また、前記他の繊維層を構成する多くの構成繊維は、各繊維間で交差しながら二次元方向に延在している。
【選択図】図10

Description

本発明は、同種の短繊維を主構成繊維とする2以上の繊維層からなる不織布に関し、詳しくは少なくとも全体が撓みやすく且つふかふか感に優れ、少なくとも一表面は手触りがソフトであり、しかも極めて形態の安定した多層不織布に関する。
短繊維からなる不織布を製造するには多様な手法が用いられるが、その代表的な方法は、繊維ウェブに向けてニードルを往復動させ、ニードルを刺し通して短繊維を交絡させて結合する、いわゆるニードルパンチによる方法、繊維ウェブに接着剤を噴霧したのち固化させる方法、短繊維を分散させた液体を一方向に回動する高メッシュ状のエンドレスベルト上に流出させる、いわゆる長網抄紙法による方法、熱溶融性樹脂材料を混在させた繊維ウェブを加熱して熱溶融性樹脂材料を溶融させ、構成繊維間を溶融樹脂により接着させる方法、繊維ウェブに高圧流体流を付与して構成繊維同士を交絡結合させる方法などが挙げられる。
これらの手法のうち、高圧流体流により構成繊維同士を交絡させることにより交絡不織布を製造する技術は、例えば特開昭51−133579号公報(特許文献1)、特開平9−256254号公報(特許文献2)、特開2000−144564号公報(特許文献3)などに開示されている。しかるに、これらの文献1〜3に開示された高圧流体には主として高圧液体が使われている。こうした高圧液体流の噴出による交絡不織布の構造は、高圧液体流による繊維の方向性が生じ、多くの繊維が繊維ウェブの厚さ方向に延在し、ウェブ全体を見ると繊維同士が立体的に交絡している。更に、この高圧液体流の噴出による交絡不織布の製造では、通常、高圧水流の噴射により製造される繊維交絡不織布には、例えば上記特許文献3にも記載されているように、繊維ウェブ面に噴射流体による打撃痕や開孔痕が残る。通常、繊維ウェブは上下両面をメッシュベルトにより挟持されて移送される途中で高圧液体流が噴出される。そのため、メッシュベルトのメッシュを水流が通り抜け、その部分に水流による開孔痕が発生する。
一方、例えば上記特許文献1及び特許文献3には、高圧の液体に代えて高圧水蒸気を使ってもよい旨の記載がなされてはいるものの、それらの文献は繊維を積極的に交絡させるものでなかったり、或いは液体流と水蒸気流の相違を認識しないままに採用しているものであった。その結果、これらの文献1、3では液体流と水蒸気流とを格別に意識することなく同一構造をもつ噴射ノズルが使われており、噴射液体と噴射水蒸気との間における特有の挙動の差を配慮したノズル構造、或いは元来が液体とは異なる水蒸気の供給機構や排出機構などに関して、具体的な開示が一切なされていないし、製造される不織布の具体的構造も明らかにされていない。
しかして、上述のごとき高圧液体流による繊維交絡不織布の課題を解消すべく、例えば国際公開第95/06769号パンフレット(特許文献4)や特開平7−310267号公報(特許文献5)には、高圧流体流による不織布の製造にあたり、高圧流体として積極的に水蒸気を使うことを提案している。このような水蒸気を使うと、ウオータージェット法による水の使用量を比べると水の使用量を大幅に減少させることができると同時にその排出処理設備も小型化でき、騒音の発生も低減されて作業環境の改善を図ることができるだけでなく、乾燥装置を排除又は小型化できて省エネルギーが実現でき、しかも液体流による繊維交絡不織布に特有な不織布表面に表出する打撃痕や開孔痕の発生を軽減させることができる。
前記特許文献4の不織布の製造方法によれば、繊維ウェブの構成繊維の全て又は一部に水蒸気或いは過熱水蒸気の温度よりも低い融点を有する繊維を配合し、液体流により繊維ウェブの構成繊維を交絡させて予め布帛(不織布)を作成しておき、次いで同布帛表面から水蒸気或いは過熱水蒸気を布帛内部に向けて噴出して、繊維ウェブの構成繊維のうち低融点の繊維を溶融させながら融着させて最終製品(不織布)を製造している。また、前記特許文献5に記載の繊維ウェブの交絡方法は高圧流体として水蒸気を用いることによって繊維ウェブを構成する繊維を相互に交絡させるというものである。
特開昭51−133579号公報 特開平9−256254号公報 特開2000−144564号公報 国際公開第95/06769号パンフレット 特開平7−310267号公報
しかるに、上記特許文献4の内容を分析するかぎり、そこには高温の水蒸気を使う点についての言及はなされているものの、その噴射時の水蒸気圧やノズル孔の大きさ、形状など、水蒸気による繊維交絡に求められる特有の各種条件に関する具体的な記載はない。このことから、同文献4に開示された高温の例えば過熱水蒸気流による不織布の製造は、その水蒸気流による繊維交絡が主目的ではなく、いわゆる水蒸気熱をもって熱溶融性材料からなる繊維ウェブの構成繊維を溶融させることを目的としていることが理解できる。通常、高圧水流の噴射により製造される繊維交絡不織布には、上述したとおり繊維ウェブ面に噴射流体による打撃痕や開孔痕が残る。この特許文献4の図4及び図5に示されているように、前述の打撃痕や開孔痕が小さくはなっていても、未だ完全には除去されていないことが理解でき、構成繊維の交絡は主に噴射水流によると考えられ、高温水蒸気により積極的に交絡されているとは言いがたい。
また、この特許文献4の不織布の製造方法は、前述のように繊維ウェブに対して水蒸気を噴射する前工程で、予め噴射水流を付与して繊維交絡を行っている。従って、この噴射水流により繊維交絡がなされた布帛には、当然に上記打撃痕や開孔痕が形成されており、そこに噴射される高温水蒸気は布帛の全面にわたってその厚さ方向に貫通するものではなく、主に前記打撃痕や開孔痕を通過するとき、その周辺の繊維を分散させながら、これらの打撃痕や開孔痕を小さくすると同時に、打撃痕や開孔痕が形成されていない他の繊維ウェブ表面に存在する低融点の繊維を溶融する。このことは、同文献4の図4〜図5に前記打撃痕や開孔痕が形成されていない領域においても繊維同士が融着している部分が存在することからも認識できるところである。つまり、繊維ウェブの繊維間の交絡の殆どは噴射水流に依存しており、水蒸気の噴射は繊維の交絡を促進することを主目的になされたものではなく、上記熱溶融性材料を溶融させて繊維同士を融着させる加熱を主目的の一つとしているものと思われる。
一方、上記特許文献5には、水蒸気の噴出ノズルの一形態の構造が図示されてはいるものの、同噴出ノズルの構造やサイズ並びにそのノズルによる不織布の製造条件等についての具体的な記載が一切なされていないため、その噴出ノズルを使用して得られる不織布がいかなる構造を有しているか推し量ることは不可能である。
しかして、いずれにしても従来の不織布は柔軟性とソフト感に乏しい。
本発明は、以上の課題を解決すべくなされたものであり、その目的はしなやかで且つ形態が安定しており、しかも表面の感触が通常の熱溶融樹脂を乾燥加熱により溶融させて構成繊維同士を融着させる不織布や噴射液体流を付与することにより得られる不織布と比較して一段とソフト間に優れ、嵩高性に富んだ、短繊維を構成繊維とする不織布を提供することにある。
本発明に係る不織布の基本構成は、多くの短繊維同士が接着材料を介して接着されてなる不織布であって、同不織布が少なくとも2以上の層からなる積層構造を有し、表裏両面のうち、少なくとも片側の表層は反対側の表層方向に向けて存在する他の繊維層よりも繊維間に空隙が多く有し、前記片側の表層から前記他の層に向かう繊維間の空隙量の大きさがランダムに変化しながら漸減していることを特徴としている。
好適には、前記空隙の多い表層を構成する繊維層の多くの構成繊維は互いに交差及び/又は交絡しながら三次元方向に延在し、前記他の繊維層を構成する多くの構成の繊維は、各繊維間で交差しながら二次元方向に延在している。
本発明の不織布における繊維間の典型的な結合構造は、三次元方向に延在する繊維が多く存在する空隙の大きい表層と、同表層とは反対側の二次元方向に延在する繊維が多く存在する空隙の小さい表層とを構成する各構成繊維の多くは、その交差部において接着材料により融着して密着接合され、前記他の繊維層においては、構成繊維間を糸引き状に連結した接着材料と糸引き状の途中で裂断した接着材料とが前記表層及び反対側の表層に較べて多く混在している。前記空隙の大きい表層にも前記他の繊維層と同様に糸引き状の接着材料が皆無ということはない。しかしながら、前記空隙の大きい表層に存在する糸引き状の接着材料の多くは不織布の布面方向に延在し、前記他の繊維層に存在する糸引き状の接着材料の多くは不織布の厚み方向に延在している。
前記接着材料が芯成分と鞘成分からなる複合繊維であり、前記鞘成分が前記芯成分及び他の構成繊維よりも熱溶融温度が低いものである。接着材料は熱により接着する繊維状であることが好ましい。
本発明の不織布は、表層の表面にメッシュ状の模様が表出されてなるものであっても良く、この場合は意匠効果も有する。
本発明の不織布の積層構造は、異繊維が混合又は単一組成からなる繊維ウェブに過熱水蒸気処理を施すことによって、少なくとも片側の表層は短繊維が三次元的な交差及び/又は絡構造をなし、前記表層から繊維断面の内面に向かって徐々に二次元的な交差状態に変化していく構造であり、明確な層構造を有するものではない。あくまでも異繊維が混合又は単一組成からなる繊維ウェブから擬似積層構造が形成されたものであり、これを多層不織布という。
少なくとも片側の表面層では繊維が三次元的に拡がり、同表面層から内側に向かう繊維層は繊維の多くが反対側の表層に向かって空隙を漸減させながら二次元方向に拡がり、不織布全体としては表層部が嵩高でソフト感に優れ、それでいて形態的には安定した多用途に適用できる不織布が得られる。更に本発明にあっては、片面のみならず、不織布の表裏両面の表層部を嵩高に、その中間部の繊維層を緻密に構成させることもでき、この場合には不織布全体として形態的に安定であり嵩高性にも優れ、柔軟でソフト感に富んだフェルト様の不織布となる。
本発明に係る不織布の基本構造は、上述のように少なくとも2以上の繊維層が一体となって構成される。しかも、そのうちの少なくとも1表面側に配される表層の繊維集合体の平均空隙量は、前記表面とは反対側の表層を含む他の層を構成する繊維集合体の平均空隙量よりも遙かに多い。また、空隙の多い前記表層と空隙の少ない前記表層との間は、繊維間の空隙量がランダムに変化して、空隙の多い表層から空隙の少ない他層へと漸次減少している。そのため、空隙の多い表層と他の層との境界領域が判然としないことが多い。不織布を構成する各構成繊維同士の殆どが、繊維ウェブに混入された熱溶融性樹脂材料からなる接着材料により融着している。そのため、得られる不織布は全体的に形態が安定しているにも関わらず、従来の噴射液体流や乾熱加熱による繊維間の交絡と融着がなされた不織布などと較べても、嵩高性が増し且つ空隙の多い表層はふわふわ感に富み且つ全体的に極めて良好なソフト感を備え、可撓性に優れた不織布である。特に水蒸気噴射によれば、噴射液体流によるとき生じる打撃痕や開孔痕などの形成を大幅に軽減させることができる。
前記空隙の多い表層を構成する繊維層の多くの構成繊維は互いに交差及び/又は交絡しながら三次元方向に延在している。そのため、構成繊維間に大きな空隙を生じさせ構造的に嵩高性を与えるとともに柔軟で復元性に富む層となる。これが高いソフト感を与える。一方、前記他の繊維層を構成する多くの繊維は、各繊維間で交差しながら二次元方向に延在している。すなわち、この空隙の小さい繊維層を構成する繊維は、繊維ウェブの厚み方向に延在するものは少なく、その大半が水平平面的に延在している。そのため、この空隙の小さい繊維層は形態が極めて安定しているものの、空隙の大きな表層と比較すると嵩高性に乏しくソフト感も少ない。
また、本発明の不織布における繊維間の典型的な結合構造は、前記空隙の大きい表層も空隙の少ない側の表層も、その構成繊維の多くは交差部において接着材料を介して融着接合している。一方、表裏の表層間に挟まって形成される前記他の繊維層では、構成繊維は空隙の少ない表層と同様に二次元方向に延在しているものの、それらを結合する接着材料による結合構造は、接着材料が溶融して多くの繊維間の交差部において融着接合しているが、繊維間の交差部が離間しており、その間が糸引き状となって残る接着材料により結合された状態と、一旦は糸引き状の接着材料により結合された繊維同士の間の糸引き状にある接着材料が中間で裂断された状態とが多く混在している。勿論、空隙の大きい表層にも同様の状態にある接着材料が見受けられるものの、その数は前記他の繊維層に較べるとその数は極めて少ない。
しかして、前記空隙の大きい表層に存在する糸引き状の接着材料の多くは不織布の布面方向に延在し、前記他の繊維層に存在する糸引き状の接着材料の多くは不織布の厚み方向に延在している。かかる構造が如何なる理由により作り出されるか明らかではないが、このことは、噴出ノズルから噴出する蒸気が高温高圧の水蒸気であれば、噴出ノズルから噴出した瞬間に断熱膨張し、加圧水蒸気を噴出する側の表層部(前記他の繊維層をも含む。)では構成繊維にその膨張圧が大きく作用するものと考えられる。特に、その表層の構成繊維には四方に大きな圧力が作用し、各繊維に様々な挙動を与える。このとき、溶融した接着材料は各繊維の交差部などに一旦融着するが、前述の激しく作用する圧力のため離間しようとする。その繊維の挙動は四方に向けて動くものの、上下方向では屈曲したりするが左右方向には繊維移動が激しく、溶融接着材料は交差する繊維間で水平方向に引き延ばされて、固化し或いは引き千切れて固化するものと推定する。
一方、加圧水蒸気を噴出する側の前記他の繊維層では、常に表層の繊維により下方へと押し付けられているため、構成繊維は繊維方向を上下方向に延在するものは少なく、断熱膨張圧を受けると、繊維の多くは水平方向に延在した状態で上下方向に瞬間的に動く。すなわち、水蒸気が噴出されるウェブ表面からその厚み方向へ、ある距離離間して存在する繊維は、加圧水蒸気の前記断熱膨張の影響は受けて三次元方向に動こうとするものの、表裏両面側の表層に挟まれて、その動きが思うに任せず二次元方向に向いたままで断熱膨張時の圧力が作用し、各繊維はウェブ厚み方向に略平行に移動する。この移動がなされる前に融着した接着材料は、繊維の移動によって糸引き状となり、或いは糸引き状の途中にて裂断し、断熱膨張の影響がなくなった瞬間にもとの位置に復帰する、いわゆる振動する。その結果、上記他の繊維層には繊維間の交差部が離間して糸引き状となって残る接着材料と、糸引き状の途中にて裂断した接着材料とが多く混在することになると考えられる。
他方、上記水蒸気噴射がなされた繊維ウェブ表面とは反対側の表層では、水蒸気噴射時に発生する断熱膨張の影響は少なくなり、同時に繊維ウェブを支持する側の表層であればそのウェブ重量を受けることになり、同表層内にある構成繊維の動きは極めて抑制されることになる。その結果、水蒸気噴射がなされない側の表層を構成する繊維は、その殆どが二次元方向を向いて延在するとともに、構成繊維間はその交差部において溶融した接着材料により互いに密着して接合されると考えられる。
いま、移送される繊維ウェブの表裏両面に、例えば高温の加圧水蒸気を噴射して不織布を製造する場合にも、上述の現象が生じる。その結果、繊維ウェブの表裏両面側の表層部分では共に、三次元方向に延在する構成繊維が多くなる。すなわち、表裏面側の表層内の構成繊維の多くは立体的に交差して延在しており、その交差部にて接着材料により融着接合している。一方、他の繊維層は相変わらず上述の構造を備えている。ところで、通常、加圧水蒸気による加工処理では、繊維ウェブを上下のメッシュ状のエンドレスベルトにより挟んで一方向に移送する。その移送の間に、前述のように繊維ウェブの一表面側に或いは表裏両面から加圧水蒸気を噴射する。ここで、表裏両面に加圧水蒸気が噴射される場合には、前述のごとく裏面側の表層も三次元方向に延在する繊維が増加し、嵩高となる。しかしながら、この繊維ウェブの裏面側はメッシュベルトにより支持されるとともに同ウェブの重量を受けるため、そのウェブ厚み方向には大きな動きができず、多くの繊維は斜めに立ち上がって接合される傾向にあるため、空隙量は表面側の表層と比較して少なく且つ嵩高性も低い。
しかしながら、表裏片面側から或いは表裏両面側から加圧水蒸気を噴射しても、得られる不織布はいずれも通常の蒸熱処理がなされた布帛と同様に、不織布表面の風合いに優れ、特にソフト感と柔軟性に富み、長期の使用によっても嵩高性とその風合いが保持される。
以下、本発明の代表的な実施形態を図面に基づいて具体的に説明する。
始めに、本発明の不織布を製造するに好適な加圧水蒸気噴射法による製造装置と同装置を使った製造方法について詳しく説明する。本実施形態における製造装置には、次に説明する水蒸気噴射に特に適した構造を有する水蒸気噴出ノズルを用いており、またその製造方法では、水蒸気として特に不織布を製造するに適する過熱水蒸気が使われている。
図1〜図4は、前記噴出ノズルの代表的な構造例を示している。前記噴出ノズルに代えて、既述した特許文献5である本出願人が所有する特許第03437873号に開示された噴出ノズルも当然に使用することが可能である。
図1〜図4に示した水蒸気噴出ノズル10は、ノズルホルダー11と、同ノズルホルダー11の両端部に溶接により固着された第1及び第2フランジ12,13と、前記ノズルホルダー11の内部に挿通されて両端部を第1及び第2フランジ12,13により支持された円筒状の高メッシュフィルター14と、前記ノズルホルダー11の下面に沿って溶接又はボルト等により固着される複数のノズル孔をもつノズル部材15とを備えている。図示例によるノズル部材15は、第1及び第2のノズルプレート支持部材15a,15bと、第1及び第2のノズルプレート支持部材15a,15bの間に固定用ボルトによって締結されるノズルプレート16とを備えている。
前記ノズルホルダー11の水蒸気導入側端部に固着された第1フランジ12は中心線に沿って大径部12a及び小径部12bとからなる貫通孔12cが形成されており、図示せぬ加圧水蒸気供給源に接続された図示せぬ加圧水蒸気供給管にプラグ17を介して接続される。前記ノズルホルダー11の水蒸気排出側端部に固着された第2フランジ13も、その中心線に沿って大径部13a及び小径部13bとからなる貫通孔13cが形成されており、図示せぬ水蒸気排出管と接続される。前記高メッシュフィルター14の両端部には、前記第1及び第2フランジ12,13の各大径部12a,13aに気密に固設されるリング状の固着部材18,19を固着してある。
前記ノズルホルダー11の下面部には、その両端部を残して内部空間に達するまで平面的に切除されて切除面11aを形成している。その結果、ノズルホルダー11の下面中央には長手方向に延びるスリット状開口11bが形成される。上記ノズル部材15は、図1及び図2に示すように、角柱状の第1ノズルプレート支持部材15aと同第1支持部材15aと同じ長さと幅を有する板状の第2ノズルプレート支持部材15bとから構成される。第1ノズルプレート支持部材15aの下面中央部にはその長手方向の両端部を除いて長手方向に延びる凹陥部15a' が形成されている。また、その上面中央部には、前記凹陥部15a' に通じる複数の貫通孔15a″が図4に拡大して示すように長手方向に千鳥状に配されて形成されている。
一方、前記第2ノズルプレート支持部材15bには、図4に拡大して示すように、前記凹陥部15a' に対応する部位に長手方向に延びるスリット状の開口15b' が形成されている。このスリット状開口15b' の断面は、前記凹陥部15a' の対向側に縦長の矩形断面を呈し、その下端に連続して下方に拡開する台形断面を呈している。また、第2ノズルプレート支持部材15bの前記スリット状開口15b' が形成された部位は他の部分よりも所定の幅をもって薄肉部15b″に形成され、この薄肉部15b″に対向する第1ノズルプレート支持部材15aの下面は、前記薄肉部15b″に嵌合する突出部15cを有している。
上記ノズルプレート16は前記薄肉部15b″に嵌め込まれる大きさと形状を有する細長い薄板片からなり、その幅方向の中央には所定のピッチをもって長手方向に一列又は多列に並んで形成された複数のノズル孔16aを有している。第1ノズルプレート支持部材15aは、図1及び図3に示すように、同第1ノズルプレート支持部材15aの上面をノズルホルダー11の上記切除面11aに密接させた状態で、溶接により固設一体化されている。前記ノズルプレート16は、上記第1ノズルプレート支持部材15aの突出部15cと第2ノズルプレート支持部材15bの薄肉部15b″との合わせ面の間にて挟持された状態で、第1ノズルプレート支持部材15a及び第2ノズルプレート支持部材15bとがOリングを介してボルトにより気密に固着されることにより強固に支持される。従って、ノズルプレート16はボルトを外すことにより、容易に取り外すことができるため、洗浄や交換が簡単にできる。
かかる構成を備えた水蒸気噴出ノズル10によれば、例えば水蒸気噴出ノズル10から高温高圧の水蒸気を噴出させるとき、始動時にはパイプ状ノズルホルダー11の一端から水蒸気を導入して、その他端から放出させる。そのため、始動時に高温高圧の新鮮な水蒸気がノズルホルダー11の内部を何らの障害もなく通過させることができるため、温度の低下したノズルホルダー11を短時間で所定の温度まで昇温させることができる。これは、従来のようにノズルホルダーに水蒸気の導入開口のみが設けられているとき、ノズルホルダーに新鮮な高温高圧の水蒸気を導入しても、水蒸気はノズルホルダーの内部を流通せず、該ホルダー内に充満するため、水蒸気の凝縮が起こりやすくなり、ノズルホルダーの昇温に長時間を要することになるが、こうした時間が短縮できるだけでなく、始動時の作業の煩雑さを回避できる。
前記ノズルプレート16の板厚は0.5〜1mmが好ましい。0.5mmより小さいと水蒸気圧に耐え得るに十分な強度が得にくく、1mmを越えると微細なノズル孔16aの高精度な加工が難しい。このノズル孔16aの形成加工には、放電加工やレーザ加工が採用される。また、ノズル孔16aの水蒸気噴出口径が0.05mmより小さいとその加工が困難であるばかりでなく、目詰まりを起こしやすくなり、1mmを越えると水蒸気噴出時に所要の噴出力が得にくくなる。ノズル間のピッチは0.5〜3mmであれば、繊維ウェブの構成繊維間で十分な交絡が得られる。
図5及び図6は、前記水蒸気噴出ノズル10が好適に適用される本発明に係る不織布の代表的な製造工程の概要を示している。前記水蒸気噴出ノズル10の下方には、所定の間隔をおいてエンドレスベルト30が配されている。このエンドレスベルト30は前記水蒸気噴出ノズル10を横切るようにして一方向に回動する。そのため、同エンドレスベルト30の両端反転部は、図示せぬ駆動モータにより駆動される駆動ロール31及び従動ロール32により駆動支持されるとともに、下方においてテンションローラ33にて支持し、エンドレスベルト30に適切な張力を与えている。このエンドレスベルト30は、例えば合成樹脂製の太い線条を使って粗目に織り込まれたメッシュ状の織物から構成される。
そのメッシュ度は任意に設定できる。また、前記水蒸気噴出ノズル10とエンドレスベルト30を移送される繊維ウェブとの間隔は、繊維ウェブの繊維密度やその厚さによって0〜30mm以下に設定する。30mmを越えるものでは噴出水蒸気流の温度と勢いが低下する。前記水蒸気噴出ノズル10に導入される水蒸気圧は、繊維ウェブの構成繊維の材質や繊維密度に基づいて、0.1〜2MPaとすることが望ましく、蒸気噴出ノズルから噴出される水蒸気を過熱水蒸気とすれば、ノズル孔16aから噴出する過熱水蒸気が断熱膨張による温度低下を起こしても、霧状の水蒸気とはならず霧散することもなくなる。
前記水蒸気噴出ノズル10の設置部位に対応する前記エンドレスベルト30を挟んで下方にはサクション手段が配されている。本実施形態では、同サクション手段はサクションボックス40と、同サクションボックス40にセパレータタンク41を介して配管により連結された真空ポンプ42と、同真空ポンプ42の排出側に連結されたミストセパレータ43とから構成される。ここで、前記セパレータタンク41はサクションボックス40により吸引される水蒸気を気液に分離するための気液分離タンクであり、前記ミストセパレータ43は真空ポンプ42から排出される水蒸気中の異物や有害ガス或いは液体などを水蒸気から除去して、清浄な水蒸気(気体)を外部に放出するとともに、真空ポンプから発生する騒音を低減化するサイレンサーとしての機能も有する。
上記水蒸気噴出ノズル10は既述した図1〜図4に示すようなノズル構造を備えており、その水蒸気導入側端部には加圧水蒸気供給源S1から供給される高圧の水蒸気が水蒸気導入側主管路(c1)を通して導入される。この水蒸気導入側主管路(c1)では、水蒸気供給源S1から送られる水蒸気を一旦水蒸気貯留部51に導き、その底部に水蒸気中に含まれるドレンを貯留して、これを第1のトラップ管路57を介して図示せぬ回収タンクに回収している。水蒸気貯留部51に導入された水蒸気は圧力制御バルブ52及び精密フィルター53を介して加熱ヒーター54により加熱されて過熱水蒸気となり、水蒸気噴出ノズル10に送り込まれる。
本実施形態にあっては、図5及び図6に示すように前記加熱ヒーター54と水蒸気噴出ノズル10の水蒸気導入側端部との間に、温度検出器TIと圧力検出器PIとが配されている。水蒸気補充管路(c2)は加圧水蒸気供給源S2と接続されている。この水蒸気補充管路(c2)の途中には、前記加熱ヒーター54からの温度検出信号を受けて作動する第1の開閉バルブ55が介装され、前記温度検出器TIにより検出される水蒸気温度が下限の温度より低下すると前記開閉バルブ55を開き新たな水蒸気を水蒸気補充管路(c2)に補給して過熱水蒸気温度を所定の温度範囲まで上昇させる。前記過熱水蒸気温度が所定の温度となるように前記開閉バルブ55の開度を調節し補給水蒸気量を調整する。
上記のようなシステムにより対象とする水蒸気の温度を所定の温度範囲に制御することが可能となる。また、前記圧力検出器PIは上記精密フィルター53の上流側に配された圧力制御バルブ52に接続されており、水蒸気導入側主管路(c1)の水蒸気圧を一定に維持するように調整する。
一方、水蒸気噴出ノズル10の水蒸気排出側端部には第2の温度検出器TIが配され、水蒸気排出側端部は水蒸気排出管路(c3)と接続されている。同水蒸気排出管路(c3)には、前記第2の温度検出器TIに接続されて、同温度検出器TIにより検出された水蒸気温度が設定温度に達すると閉鎖する第2の開閉バルブ56が介装されている。また、前記第2の開閉バルブ56の下流側から第2のトラップ管路57が分岐しており、前記第2の開閉バルブ56が閉まって水蒸気排出管路(c3)が閉鎖されたときでも、水蒸気噴出ノズル10のノズルホルダー11内部に発生するドレンを常に図示せぬ回収タンクに排出するようにしている。
更に本実施形態では、図6に示すようにノズルホルダー11の加圧水蒸気導入側端部にあって、その底面に水蒸気凝縮液の排出口が形成されており、その排出口はドレン管路(c4)と第3開閉バルブ62を介して接続されている。このとき、前記水蒸気噴出ノズル10は、その加圧水蒸気導入側端部を基端部として上記水蒸気排出管路(c3)の端部を上方に僅かに持ち上げ、水蒸気噴出ノズル10を傾斜させておく。ノズルホルダー11に導入される加圧水蒸気は水蒸気噴出ノズル10の稼働中にどうしても凝縮して液化する。既述したとおり、ノズルホルダー11の底面側開口には第1ノズルプレート支持部材15aが嵌め込まれるようにして固着される。そのためノズルホルダー11の底面と第1ノズルプレート支持部材15aとの間には、同支持部材15aの上面が高くなるように段差が作られており、通常はノズルホルダー11の内部に生成される凝縮液(水)がノズルプレート16に達することはないが、凝縮液の量が増加すると前記段差を越えてノズルプレート16に流れ込まないとは限らなくなる。その結果、加圧水蒸気の噴出が円滑になされなくなる。
上述のように、ノズルホルダー11の加圧水蒸気導入側端部の底面に蒸気凝縮液の排出口を形成するとともに第3の開閉バルブ62を介してドレン管路(c4)と接続しておけば、必要に応じて第3の開閉バルブ62を開けて、ノズルホルダー11の底面に溜まった凝縮液を外部に排出することができる。このとき、上述のようにノズルホルダー11の加圧水蒸気導入側端部を水蒸気排出管路(c3)の端部よりも下方に僅かに低くなるように設置しておけば、ノズルホルダー11の底面に溜まった凝縮液は自動的に加圧水蒸気導入側端部の凝縮液の排出口へと集まるため、その排出が容易になる。なお、凝縮液をノズルホルダー11の底面側に集めて円滑に加圧水蒸気導入側端部に流れるようにするには、同ノズルホルダー11の底面に長手方向に沿った凹溝を形成しておくことが好ましい。
更に、本実施形態にあっては、上記水蒸気噴出ノズル10の繊維ウェブ走行方向の上流側に、図示せぬ繊維ウェブの表面に向けて水を付与する水噴射パイプ58が設置されている。この水噴射パイプ58と繊維ウェブとの間に、前記水噴射パイプ58から噴射する水を繊維ウェブ表面に案内する案内板59が配されており、水噴射パイプ58から噴射される水を直接ウェブ表面に付与せずに、前記案内板59を介して水流にして流下させるようにしている。この水噴射パイプ58は、本発明における交絡を容易化するための前処理手段に相当し、水蒸気噴出ノズル10からの加圧水蒸気による打撃を受ける前に、水を付与して繊維ウェブの見かけ上の体積を収縮させそれによりウェブ内の繊維間相互の距離を短縮化し水蒸気噴出ノズル10によるウェブ内の繊維相互の交絡を容易化することが出来る。前記案内板59の設置部位に対応する前記エンドレスベルト30の下方にも第2のサクションボックス45が設置されており、このサクションボックス45も気液分離タンク46を介して上記真空ポンプ42に接続されている。
上記セパレータタンク41の天板部の排気口が開閉バルブ47を介して前記気液分離タンク46と上記真空ポンプ42とを連結する吸引管路(c5)に接続され、同セパレータタンク41の底部は流体ポンプ48を介して、上記水噴射パイプ58と水供給源WAとの接続管路(c6)に合流させている。また、このセパレータタンク41の上限水位部と下限水位部との間に水位検出器49が配され、同セパレータタンク41の水位が上限を越え又は下限を下回ると、その信号を送って図示せぬ制御装置の指令により前記流体ポンプ48の作動を停止させるようにしている。
また本実施形態では、図5に示すように、前記水蒸気噴出ノズル10及び水噴射パイプ58の設置部を被包するようにして開閉蓋60が設置されている。この開閉蓋60の天板部は吸引ポンプ61が接続されており、同吸引ポンプ61により水蒸気噴出ノズル10及び水噴射パイプ58の設置部で発生する霧状の水蒸気を常時吸引して外部に放出するようにしている。なお、本実施形態にあって図示を省略したが、当然に水蒸気噴出ノズル10とその水蒸気導入配管や水蒸気排出管などは、水蒸気噴出ノズル孔を除きアルミ箔付きのガラス繊維マットなどの断熱材で被覆している。
以上のごとく構成された本実施形態である不織布の製造装置によれば、図6に示すように稼働に先立って、先ず上記水蒸気噴出ノズル10の水蒸気排出管路(c3)の第2の開閉バルブ56を開けて水蒸気導入側主管路(c1)から高圧の過熱水蒸気を導入すると、新鮮な過熱水蒸気が水蒸気噴出ノズル10のノズルホルダー11の内部を、その導入側開口から排出側開口へと流れ、ノズルホルダー11を所要の過熱温度まで速やかに昇温させる。このとき、ノズルホルダー11の水蒸気排出側端部に設置された温度検出器TIによりその温度を検出しており、同検出温度が所要の温度に達すると上記第2の開閉バルブ56の開度を調節する。この開閉バルブ56の開度を調節すると同時に、エンドレスベルト30を駆動して、その回動を開始する。
エンドレスベルト30の回動により、同ベルト上を移送される図示せぬ繊維ウェブの表面には、先ず水噴射パイプ58から噴射される水を案内板59を介して水が付与される。このときの水量は、繊維ウェブ表面の繊維を濡らして、その形態を安定化させるだけで十分なため、少量で十分であり、またその水の付与手段としては水の流下によらず、霧状の水を噴霧するだけでもよい。なお、繊維ウェブを構成する繊維の材質によっては、容易に交絡する場合もありその場合には予め交絡を容易化するための手段を講じることはない。一方、繊維ウェブを構成する繊維の材質によっては、水の付与だけでは交絡を容易化することが困難な場合もある。そんなときは、上記水付与に代えて既述した特許文献4に開示されているように従来と同様の高圧水流を噴射してもよいが、この場合にもその水量は必ずしも多量でなく少量であってよい。
表面に水が付与された繊維ウェブの表面には、次いで上記水蒸気噴出ノズル10の各ノズル孔16aから噴出する均等な圧力と温度をもつ柱状又は集束流の過熱水蒸気が付与され、その強力な過熱水蒸気流がウェブ内へと浸入し、周辺繊維を交絡させながら同時に熱融着を行いながらウェブを貫通して水蒸気による交絡繊維不織布が連続して製造される。このとき、水蒸気排出管路(c3)に設置された第2の開閉バルブ56は閉じられた状態にあり、水蒸気噴出ノズル10のノズルホルダー11の内部にはドレンが生じるが、このドレンは、前記第2の開閉バルブ56の上流側から分岐する第2のトラップ管路57を介して常に系外に設置された回収タンクに回収される。
その結果、同ノズル孔16aから噴出される過熱水蒸気は間欠的に噴出することなく安定して連続で噴出するようになる。このように、走行する繊維ウェブの表面に安定した過熱水蒸気が連続して噴出されるため、ウェブ全体に均等な交絡がなされるようになり、所要の強度を備えた極めて高品質な不織布が製造される。
この実施形態にあっては、更に図7に示すように、水蒸気噴出ノズル10の上流側に配設された交絡を容易にするための水付与手段を排除するとともに、上記第1のエンドレスベルト30のウェブ移送面に対向させて、同エンドレスベルト30と同一方向に回動する第2のエンドレスベルト34を配設し、第1及び第2のエンドレスベルト30,34をもって図示せぬ繊維ウェブを挟持した状態で移送し、水蒸気噴出ノズル10から噴出する過熱水蒸気を、前記第2のエンドレスベルト34を介して繊維ウェブの上面から下方の第1エンドレスベルト30に向けている点である。
このように、2枚のエンドレスベルト30及び34をもって繊維ウェブを挟持しながら、ウェブ表面に過熱水蒸気を付与するようにすると、上記実施形態のように水蒸気噴出ノズル10による過熱水蒸気の付与に先立って水を添加する必要がなくなるばかりでなく、水蒸気噴出ノズル10からの過熱水蒸気の噴出による打撃によってもウェブ形態の崩れがなく、その結果、水蒸気噴出ノズル10から噴出される過熱水蒸気の圧力を更に高めることも可能となって、高圧で噴出する過熱水蒸気流が繊維ウェブを確実に貫通することができるようになる。この実施形態にあっては、繊維ウェブの上面に対向する上記第2エンドレスベルト34の空隙率(メッシュ度)は下方のエンドレスベルト40のそれよりも粗く設定しているが、必ずしも粗くせず同等の空隙率に設定することもできる。
以上の不織布の製造工程は多様な変形が可能である。すなわち、例えば水蒸気噴出ノズル10とサクションボックス40との配設位置を逆転させたり、上記水蒸気噴出ノズル10と同ノズル10に対向して配されるサクションボックス40とを一組としたとき、その複数組が繊維ウェブの移送方向に配されており、しかも各組における水蒸気噴出ノズル10及びサクションボックス40の配置を互いに上下逆転させることもできる。また、繊維ウェブを担持して移送する手段として多孔の回転ドラムを採用することもでき、この場合、ウェブを押圧して移送手段としては、上記実施形態と同様に多孔のエンドレスベルトが使われる。
更に本実施形態にあって、本発明の不織布の最も好適な製造工程を図7に要部で示している。図中の符号23は高圧水蒸気噴出ノズルのノズル部材を示し、同ノズル部材23の下面に接近させて繊維ウェブ押圧移送手段である第2エンドレスベルト34を配し、繊維ウェブ担持移送手段である第1のエンドレスベルト30に担持されて移送されてくる繊維ウェブWを前記第2のエンドレスベルト34によって挟持しながら協働して移送し、その挟持移送の間に前記ノズル部材23のノズル孔26を介して高圧の過熱水蒸気を繊維ウェブ表面に噴出させる。前記第1のエンドレスベルト30の下面に近接させて吸引手段であるサクションボックス40が配されている。
この実施形態では、サクションボックス40の吸引開口はノズル部材23のノズル孔26に対向する位置に配され、その形状は周辺の気体の吸引を可能な限り回避すべくスリット状とされている。このスリット開孔の開口幅は略10mm程度が好適であり、その吸引力も通常の工場内で使われる換気扇の排気能力、すなわち300Pa程度で十分であり、これより大きいと繊維ウェブの構成繊維に配向性を与えやすく、それより小さいと吸引力不足となる。勿論、この吸引力は繊維ウェブの厚さ、密度や、ノズル部材23から噴出するときの水蒸気圧によっても所要の範囲で調整することが必要である。
また、この実施形態ではノズル部材23と第2エンドレスベルト34との間隙、第1エンドレスベルト30とサクションボックス40との間の間隙を維持すべく、第1エンドレスベルト30の下面を支持して案内する複数の支持回転ロール35aと第2エンドレスベルト34の上面位置を規制して案内する複数の規制案内ロール35bとを設けている。これらの支持回転ロール35a及び規制案内ロール35bを設けることにより、第1及び第2エンドレスベルト30,34をもって適切な挟持力をもって繊維ウェブWを挟持移送することが可能となるばかりでなく、各エンドレスベルト30,34とノズル部材23及びサクションボックス40との摺接を回避すると同時に、その対向間隙を微小に維持することが可能となる。なお、これらの支持回転ロール35a及び規制案内ロール35bを公知の上下位置調整手段を使ってそれぞれ調整可能にすることもできる。
上記実施形態にあっては、上述の構造を備えた水蒸気噴出ノズル10のノズル孔16aを単に繊維ウェブWを上方から押圧支持する第2エンドレスベルト34に向けて配設しているが、更に前記水蒸気噴出ノズル10の全体を積極的に加熱して高温を維持させることもできる。図8は、その一例を示している。同図によれば、ノズルホルダー11、ノズルプレート支持部材15及びノズルプレート16を備えた水蒸気噴出ノズル10の全体を収容する加熱ボックス27が使われている。この加熱ボックス27は水蒸気噴出ノズル10の全体を収容するとともに、水蒸気噴出ノズル10のノズル孔16aが向けられる側を全面開口させた細長い直方体からなり、その天板部27aの中央部に熱風導入口27bが形成されている。この熱風導入口27bは外部の熱風供給管路28と接続されている。ファン28aによりフィルター28bを介して導入され、ヒーター28cによって加熱された高温の清浄化された空気が、前記熱風供給管路28を通って加熱ボックス27へと送り込まれて、水蒸気噴出ノズル10の全体を熱風により積極的に加熱する。
このように、水蒸気噴出ノズル10の全体を加熱することにより、ノズルホルダー11の内部に導入される加圧水蒸気や過熱水蒸気の温度低下が効果的に防止され、所要温度を維持して水蒸気噴出ノズル10から繊維ウェブWに向けて噴出させることができる。その結果、効率的な繊維交絡が実現できるようになるばかりでなく、製造される不織布の形態も安定化し所望の強度と風合いが得られる。更に、メッシュ様のエンドレスベルトを用いると、不織布の表層の表面にメッシュ状の模様が表出され、意匠効果をも有す多層不織布となる。
また図示例によれば、加熱ボックス27の繊維ウェブ移送方向の前後壁面27c,27dにあって、その下端部にはシールロール29a,29bの周面が当接されている。このシールロール29a,29bはステンレス製の平滑ロール又は周面に樹脂等がコーティングされたロールであり、自由回転ロールであっても、繊維ウェブWの移送速度に同調させて駆動回転させるようにしてもよい。かかるシールロール29a,29bを配することにより、加熱ボックス27からの熱風の散逸を防ぐと同時に外気の浸入が防止でき、水蒸気噴出ノズル10に対する加熱効率が向上する。
また、この例では更に繊維ウェブWの担持移送体である第1エンドレスベルト30に対向して配されたサクションボックス40の吸引開口部に対応する部分を開口させた外気遮蔽板63を、前記第1エンドレスベルト30とサクションボックス40との間に介装している。この外気遮蔽板63の繊維ウェブ移送方向の前後端部をそれぞれ下方に湾曲させて、繊維ウェブWの通過を円滑に安定するようにしている。このように、第1エンドレスベルト30とサクションボックス40との間に前記外気遮蔽板63を介装することにより、水蒸気噴出ノズル10から噴出する加圧水蒸気又は過熱水蒸気の噴出領域に外気が浸入することを防ぐことができ、噴出された加圧水蒸気又は過熱水蒸気を、繊維ウェブWに効率的に付与することができる。その結果、製造される不織布の表面形態が更に均整化するとともに繊維交絡が緻密化する。
図9は、上記製造装置の更なる変更例を示している。この変更例によれば、前記外気遮蔽板63と同様に、第1エンドレスベルト30とサクションボックス40との間に、水蒸気反射板64を介装している。この蒸気反射板64と前記外気遮蔽板63との異なる点は、前記外気遮蔽板63が中央にノズル孔16aの列方向に延びる開口を有している外は平滑面に形成されているのに対して、前記水蒸気反射板64は多孔の板材から構成されている。いま、水蒸気噴出ノズル10から噴出される加圧蒸気又は過熱水蒸気が第2エンドレスベルト34、繊維ウェブW、第1エンドレスベルト30を貫通すると、その水蒸気の一部はサクションボックス40により吸引されるが、その大半は前記水蒸気反射板64にて反射して、再度繊維ウェブWの下面に作用して、その構成繊維及びその周辺の繊維をウェブ内へと押し込むと同時に交絡させる。その結果、繊維ウェブWの下面側の構成繊維の交絡割合が増加して、外観的にも強度的にも高品質化する。
更に本発明にあっては、図6に矢印で示すように、水蒸気噴出ノズル10をその長手方向に微小に往復動させるか、或いは上記第1及び第2のエンドレスベルト30,34を繊維ウェブとともに繊維ウェブ移送路を横断する方向へ微小に往復動させることができる。その往復動のための駆動機構は、図示は省略するが、例えば従来から長網抄紙機などの網に横振動を与えるための公知の機構を採用することができる。また往復動(振動)の行程は往復動中心から左右に5mm程度が好ましく、その往復動回数は30〜300回/分の範囲で任意に調整される。このように、水蒸気噴出ノズル10を、或いは第1及び第2のエンドレスベルト30,34を往復動させると、列状に配された複数のノズル孔から噴出する加圧水蒸気又は過熱水蒸気が繊維ウェブの表面を幅方向に満遍なく作用するようになり、表面にモアレ状の模様がつくことなく、より均整な繊維交絡と表面形態が得られる。
以上説明したとおり本実施形態による本発明の不織布の好適な製造方法及び装置によれば、簡単な構造を備えた水蒸気噴出ノズルにより確実に高圧高温の水蒸気を繊維ウェブに貫通させることができるようになるばかりでなく、そのノズルホルダーの長手方向の両端を開口させ、特にその水蒸気排出側の開口を開閉バルブ56(図5参照)により開閉可能とするとともに、同開閉バルブの上流側にトラップ管路を分岐させる場合には、不織布の製造開始時には予め同開閉バルブを開けておき、その水蒸気噴出ノズルに新鮮な加圧された水蒸気を導入して前記水蒸気排出側の開口から外部に排出すると、同加圧水蒸気によりノズルホルダーの内部温度が急激に昇温するため、不織布の製造開始時の準備時間が大幅に短縮できるようになる。
不織布の製造が開始されると前記開閉バルブ56が閉じられるが、ノズルホルダーの内部に発生するドレンは前記水蒸気排出側の開口からトラップ管路を通って常時回収タンクに回収されるため、連続して且つ安定して高品質の不織布が製造できるようになる。なお、上記実施形態にあっては、水蒸気として過熱水蒸気を使っているが、繊維ウェブの構成繊維の材質により通常の水蒸気を使うことも可能である。
以下、本発明に係る不織布の実施例を比較例とともに具体的に説明する。
短繊維からなるポリエステル繊維50質量%及び熱融着繊維50質量%を混綿した4枚のフリースを重ね、目付50(g/cm2 )の繊維ウェブを作成した。ここで熱融着繊維は芯部がポリプロピレン、鞘部がポリエチレンからなる芯鞘構造をもつ複合繊維である。この繊維ウェブを図1に示した水蒸気噴出ノズルを用いて、以下の加工条件にて図5に示した製造装置に1回通して不織布を製造した。
前記水蒸気噴出ノズルの噴出孔径は0.3mm、繊維ウェブの幅方向の噴射幅を500mmとした。過熱水蒸気の噴射面を繊維ウェブの上面として、一方向に移送される前記繊維ウェブの上面に向けて垂直に蒸気圧0.75〜0.78MPaの過熱水蒸気を噴出させた。このときの加工速度は1m/min、繊維ウェブを担持して移送する第1エンドレスベルトには合成樹脂製モノフィラメントを経緯糸とするメッシュ度76のメッシュ織物を使い、同ウェブを押圧して移送する第2エンドレスベルトには同用の素材からなるメッシュ度14のメッシュ織物を使った。ノズル噴出孔と第2エンドレスベルトとの間の距離(加工距離)は5mmとし、サクション装置の吸引スリット幅を12mm、第1及び第2エンドレスベルトの幅方向の振動幅を5mmとして振動数500回でベルト幅方向に往復動させた。
得られた不織布を移送方向に切断して、その側面の全体断面像を電子顕微鏡カメラにより撮像した。図10は、この撮像写真である。
図10において、本実施例による不織布を全体的に観察すると、上半部が本発明における空隙の大きい表層に相当し、下半部が空隙の少ない繊維層となっていることが分かる。また、特に上面の表層部分を構成する繊維は、三次元的に大きく屈曲しながら互いに交絡しており、その表層部分から下面側に向かう途中では三次元的な拡がりが漸次小さくなっており、厚み方向の下半部ではその殆どの構成繊維が二次元的に拡がっていることが理解できる。この実施例1による不織布は、その構成繊維間の交差部において融着繊維の鞘部を構成するポリエチレンの一部が芯部から溶融して剥離し、繊維の交差部における繊維同士に融着していることが分かる。
ただし、その接着材料による接合構造は、加圧水蒸気が噴射される側の表層部とその反対側の表層部とでは異なっており、図10に示すとおり、加圧水蒸気が噴射される側の表層では構成繊維の大部分が三次元的に大きく拡がっているが、反対側の表層では二次元的な拡がりをもって拡がっているに過ぎない。ここで、注目すべきは構成繊維が三次元的な拡がりと二次元的な拡がりを有する表裏両層の構成繊維間における接着材料(熱融着繊維)による接合構造は、その多くが各交差部において接着材料を介して密着接合している点である。しかも、前記加圧水蒸気が噴射される表層側の略半部の構成繊維は三次元的に拡がってはいるものの、最も空隙の大きい表層と反対側の緻密な表層との間の繊維層では、図10に示すように、裏面側に向かうにつれて三次元的な拡がり、特に繊維ウェブの厚み方向に延びる繊維の本数は少なくなっており、また加圧水蒸気の上記断熱膨張による影響のためと考えられるが、交差部にてポリエチレンにより一旦は融着した繊維間が離間し、その離間時に溶融状態にあるポリエチレンが、図11に示すように、引き延ばされて糸引き状に固まったものと、その途中で裂断したものとが混在していることが分かる。
その結果、加圧水蒸気が噴射される表層側では構成繊維間の空隙が大きく、反対側の表層に向けてその空隙が漸減し、空隙の少ない反対側の表層部では繊維同士が略一様に積み重なった状態で互いが接合している。しかしながら、従来の熱融着性樹脂を使って乾熱加熱又は高温の噴射流体により構成繊維を接合させて製造される不織布と比較すると遙かにふわふわ感があり、柔軟で且つ表面のソフト感に優れている。また、不織布の表層の表面にメッシュ状の模様が表出され、意匠効果をも有するものであった。
実施例2にあっては、繊維ウェブの目付を100g/m2 とし、繊維ウェブの同一面に対して過熱加圧水蒸気を2回噴射している以外は実施例1と同じ条件である。図12は、こうして製造された実施例2の不織布を実施例1と同様に撮像した断面写真である。
この図から理解できるように、繊維ウェブの同一表面に対して2回の過熱加圧水蒸気を噴出させているため、上記実施例1と比較すると水蒸気が噴射された側の三次元方向に拡がるはずの表層の構成繊維の拡がり、特にウェブ厚み方向への拡がりが僅かに小さくなっている。ただ、目付が2倍と大きいため、水蒸気の噴射を受けた表層繊維の三次元的な拡がりが少なくなり、全体としても空隙が少なくなって緻密化している。
実施例3にあっては、上記実施例1において繊維ウェブの表裏を反転させて同一加工条件にて上記製造装置に2回通し、その表裏両面に対して1回づつ過熱水蒸気を噴出させた。その他の加工条件は実施例1と変わるところがない。図13は、こうして製造された実施例3の不織布の断面を実施例1と同様に撮像した断面写真である。
この図面から理解できるように、上下一対の第1及び第2のエンドレスベルトに挟まれるようにして移送される繊維ウェブは、その上面側から水蒸気噴射がなされたのちに下面側からも水蒸気噴射がなされる。その結果、下面側の表層にも三次元的な拡がりをもつ繊維が存在するようになる。ただし、上面側の表層を構成する繊維間では、一旦形成された三次元的拡がりが裏面側に対する噴射により押圧されて嵩が小さくなっている。一方、このように表裏両面から水蒸気噴射を行うと、表裏両表層間に存在する中間層が顕在化してくる。なお、下面側の表層に表出する三次元的拡がりをもつ構成繊維の数及びその拡がりの大きさは、上面側の表層の構成繊維と比較すると、いずれも大きい。
実施例4は、不織布の素材として、ポリエステル短繊維に代えてレーヨン短繊維からなる50質量%と上述の各実施例と同様の芯鞘構造をもつ熱融着繊維50質量%を混綿して、目付40(g/cm2 )の繊維ウェブを作成した。上記実施例1〜3と同じ製造装置を用い、同繊維ウェブを同製造装置に2回通して不織布を製造した。このときの加工条件は上記実施例1と同じである。
この実施例4による本発明の不織布の断面構造は、過熱加圧水蒸気の噴出側表層の構成繊維は各繊維間にて大きな空隙を生じさせながら三次元的に屈曲して拡がり、同表層の下方に隣接する中間層の繊維の多くは二次元方向に拡がっているが、その繊維間にて上下に離間している繊維が多く観察された。一方、最も下部の表層を構成する構成繊維は、殆どが互いに密着して交差し二次元的に拡がっているに過ぎない。そして、上部表層から反対側の表層方向に向けて存在する他の繊維層を経て下部表層に到る間では、構成繊維は三次元的拡がりから漸次二次元的拡がりへと移行している。
また、この不織布における厚み方向の接着材料による繊維間の接合構造は、過熱加圧水蒸気が噴射される側の表層部とその反対側の表層部とでは上記実施例1〜3と同様に異なっており、過熱加圧水蒸気が噴射される側の表層では構成繊維の大部分が三次元的に大きく拡がっているが、反対側の表層では二次元的な拡がりをもって拡がっているに過ぎない。また、三次元的な拡がりと二次元的な拡がりとを見せる表裏両表層部における構成繊維間の接着材料による接着構造についてみると、繊維の延在形態は異なるものの、その大半は繊維間の各交差部において接着材料が融着して互いに密着接合している。しかも、前記加圧水蒸気が噴射される表層側の略半部の構成繊維は三次元的に拡がってはいるものの、最も空隙の大きい表層と反対側の緻密な表層との間の中間の繊維層では、裏面側に向かうにつれて三次元的な拡がり、特に繊維ウェブの厚み方向に延びる繊維の本数が少なくなり、それらの繊維の交差部では上下に離間する繊維間で、図14に示されるような引き延ばされて糸引き状に固まったポリエチレンと、その途中で裂断したポリエチレンとが多く混在している。
このレーヨン繊維と上記複合熱融着繊維との混綿繊維ウェブから製造された不織布にあっても、加圧水蒸気が噴射される表層側では構成繊維間の空隙が大きく、反対側の表層に向けてその空隙が漸減し、空隙の少ない反対側の表層部では繊維同士が略一様に積み重なった状態で互いが接合している。そのため、空隙の大きい表層側は嵩高性に富み、反対側の空隙の少ない表層部は嵩高性に乏しいが、従来の熱融着性樹脂を使って乾熱加熱又は高温の噴射流体により構成繊維を接合させて製造される不織布と比較すると遙かにふわふわ感に富み、柔軟で且つ表裏両面ともにソフト感に優れている。
比較例1
短繊維からなるポリエチレン繊維50質量%とポリエステル繊維50質量%を混綿した目付50(g/cm2 )の繊維ウェブを作成した。この繊維ウェブを、ステンレス線材を用いて織成した100番のメッシュ織物上に載置して、予め150℃に温度調節した熱風式恒温乾燥機に10分間静置して不織布を得た。得られた不織布を切断して、その側面の全体断面像(図15)、下部表層部の断面像(図16)を電子顕微鏡カメラにより撮像した。
図15において、本実施例による不織布を全体的に観察すると、構成繊維の全体が屈曲しながら交絡しており、その空隙も全体的に均等に分布されていることが理解できる。また、下部断面写真である図16に代表されるようにこの比較例1の不織布は上部表面層から下部表面層に到る構成繊維の接合構造が各構成繊維の交差部(交絡部)において溶融した接着材料(ポリエチレン繊維)の一部が集まり、強固に融着している。従って、不織布全体として嵩高とはならず、しかもソフト感に乏しくごわついた感触であって、用途が限定されてしまう。
比較例2
短繊維からなるレーヨン繊維50質量%とポリエステル繊維50質量%とを混綿した目付40(g/cm2 )の繊維ウェブを作成した。この繊維ウェブを、ステンレス線材を用いて織成した100番のメッシュベルト上に載置して搬送速度3m/minにて搬送する途中で、ウォータージェットノズルから水量110kg/m2 の水を噴出させるとともに、前記ベルトの下面からサクション装置にて水を吸引排出しながら、各構成繊維を交絡させたのち熱風乾燥機にて乾燥させて不織布を製造した。図17は得られた不織布を切断して、その側面の全体断面像を電子顕微鏡カメラにより撮影した撮像写真である。
本比較例による不織布を全体的に観察すると、構成繊維の多くが交絡しながら上下方向に貫通して延在している。従って、不織布の強度に関する判断は難しいが、その感触は弾性はあるものの嵩高感に乏しく、且つウォータージェット処理により発生する特有の開孔痕が顕著に表出している。
本発明の不織布製造に好適な水蒸気噴出ノズル断面構造例を示す縦断面図である。 同ノズルの裏面図である。 図2におけるIII-III 線に沿った矢視断面図である。 図3に矢印で示すA部の拡大図である。 本発明によ係る不織布の製造工程の一例を概略で示す管路説明図である。 同製造工程における水蒸気噴出ノズルに対する水蒸気管路の概略説明図である。 上記水蒸気噴出ノズルの加熱部の一例を示す縦断面図である。 本発明の繊維ウェブと吸引手段との間に水蒸気反射板を配した一例を示す縦断面図である。 本発明の不織布の他の製造工程の一例を示す概略説明図である。 本発明の第1実施例である不織布の全体断面を示す電子顕微鏡写真である。 同不織布の中間部断面を拡大して示す電子顕微鏡写真である。 本発明の第2実施例である不織布の全体断面を示す電子顕微鏡写真である。 本発明の第3実施例である不織布の全体断面を示す電子顕微鏡写真である。 本発明の第4実施例である不織布の中間部断面を拡大して示す電子顕微鏡写真である。 乾熱加熱による比較例1の不織布の側面の全体断面像を示す電子顕微鏡写真である。 同比較例による不織布の下部表層部の断面を拡大して示す電子顕微鏡写真である。 ウォータージェット噴出により得られる比較例2の不織布の全体断面を拡大して示す電子顕微鏡写真である。
符号の説明
10 (加圧)蒸気噴出ノズル
11 ノズルホルダー
11a 切除面
11b スリット
12,13 第1及び第2フランジ
12a,13a 大径部
12b,13b 小径部
12c,13c 貫通孔
14 高メッシュフィルター
15 ノズル部材
15a,15b 第1及び第2ノズルプレート支持部材
15a’ 凹陥部
15a″ 貫通孔
15b’ スリット状の開口
15b″ 薄肉部
15c 突出部
16 ノズルプレート
16a ノズル孔
16a’ リング片
17 プラグ
18,19 リング状の固着部材
20 Oリング
21 ボルト
22 ジャケット
27 加熱ボックス
27a 熱風導入口
27b,27c 前後壁部
28 熱風導入管路
28a ファン
28b フィルター
28c ヒーター
29a,29b シールロール
30,34 第1及び第2エンドレスベルト
31 駆動ローラ
32 従動ローラ
33 テンションローラ
34 第2エンドレスベルト
35a 支持回転ロール
35b 規制案内ロール
36 多孔の回転ドラム
37 エンドレスベルト
38 サクションボックス
38a 吸引口
38b 第2の吸引口
39 高温高圧の空気噴出装置
40 サクションボックス
41 セパレータタンク
42 真空ポンプ
43 ミストセパレータ
45 第2のサクションボックス
46 気液分離タンク
47 開閉バルブ
48 吸引ポンプ
49 水位検出器
51 ドレン貯留ポット
52 圧力制御バルブ
53 精密フィルター
54 加熱ヒーター
55 第1の開閉バルブ
56 第2の開閉バルブ
57 第2のトラップ管路
58 水噴射パイプ
59 案内板
60 開閉蓋
61 吸引ポンプ
62 第3の開閉バルブ
63 遮蔽板
64 蒸気反射板

Claims (6)

  1. 多くの短繊維が接着材料を介して接着されてなる不織布であって、
    同不織布が同種の主構成繊維を含む少なくとも2層からなる積層構造を有し、
    表裏両面のうち、少なくとも片側の表層は反対側の表層方向に向けて存在する他の繊維層よりも繊維間に空隙を多く有し、
    前記片側の表層から前記他の繊維層に向かう繊維間の空隙の大きさがランダムに変化しながら漸減してなる、
    ことを特徴とする多層不織布。
  2. 前記空隙の多い表層を構成する繊維層の多くの構成繊維は互いに交差及び/又は交絡しながら三次元方向に延在し、
    前記他の繊維層を構成する多くの構成繊維は、各繊維間で交差しながら二次元方向に延在してなる請求項1に記載の多層不織布。
  3. 前記三次元方向に延在する繊維が多く存在する空隙の大きい表層と、同表層とは反対側の二次元方向に延在する繊維が多く存在する空隙の小さい表層とを構成する各構成繊維の多くは、その交差部において接着材料により融着して密着接合され、前記他の繊維層においては、構成繊維間を糸引き状に連結した接着材料と糸引き状の途中で裂断した接着材料とが前記表層及び反対側の表層に較べて多く混在してなる請求項1又は2に記載の多層不織布。
  4. 前記空隙の大きい表層に存在する糸引き状の接着材料の多くは不織布の布面方向に延在し、前記他の繊維層に存在する糸引き状の接着材料の多くは不織布の厚み方向に延在してなる請求項3記載の多層不織布。
  5. 前記接着材料が芯成分と鞘成分からなる複合繊維であり、前記鞘成分が前記芯成分及び他の構成繊維よりも熱溶融温度が低いものである請求項1〜3のいずれかに記載の多層不織布。
  6. 表層の表面には、メッシュ状の模様が表出されてなる請求項1〜3のいずれかに記載の多層不織布。
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