しかるに、上記特許文献1に開示された高温の、例えば加熱蒸気流による不織布の製造は、その蒸気流による繊維交絡が主目的ではなく、いわゆる蒸気熱をもって熱溶融性材料からなる繊維ウェブの構成繊維を溶融させることを主な目的としている。通常、高圧水流の噴射により製造される交絡不織布には、例えば上記特許文献2及び3にも記載されているように、繊維ウェブ面に噴射流体による打撃痕や開孔痕が残る。
さらに前記特許文献1の不織布の製造方法では、繊維ウェブに対して蒸気を噴射する前工程として、高圧の噴射水流による繊維交絡を行っている。従って、この噴射水流により繊維交絡がなされた布帛にも、当然に上記打撃痕や開孔痕が残っており、そこに噴射される高温蒸気は布帛全面にわたってその厚さ方向に貫通するものではなく、主に前記打撃痕や開孔痕を通過するものと考えられる。勿論、このとき前記打撃痕や開孔痕が形成されていない他のウェブ表面に存在する低融点の繊維も同時に溶融する。このことは、同文献1の図4〜図5に、前記打撃痕や開孔痕が形成されていない領域においても繊維同士が融着している部分が存在することからも伺い知ることができる。その結果、同図に示された不織布も柔軟性では従来のポイント接着による不織布と変わるところがなく、特にその表面は多くの溶着材料による硬化部分が存在することになる。
一方、上記特許文献2及び3の内容について見ると、そこには特許文献1と同様、高温高圧の蒸気を使う点が記載されてはいるが、その噴射時の蒸気中に含まれる水分の発生機構や、水分を含むことによる繊維シート状物に対する各種加工時に受ける具体的な影響について格別な分析及び検討がなされていない。
本発明は、こうした課題を解決すべくなされたものであり、その目的は構造が簡単で、しかも高圧蒸気を均一に且つ連続して噴出させることができ、繊維シート状物の構成繊維の一部もしくは殆どを確実に交絡させて所要の強度が得られるとともに、得られる不織布の表面の柔軟性が確保でき且つその内部形態の改善をも図ることを可能にする高圧蒸気噴出ノズルと、同ノズルを使って高圧蒸気を噴射させることにより繊維ウェブの構成繊維を確実に交絡させる効率的な不織布の製造方法、更には染色などの仕上げ加工が施された不織布や織編物などの繊維シート状物の洗浄、乾燥などの各種加工が効率的かつ省力化の下
で行うことを可能にする、前記噴出ノズルを使った高圧蒸気による高品質の繊維シートの連続加工方法を提供することにある。
課題を解決するための手段及び作用効果
そこで、本発明者等は、特に上記特許文献2及び3に開示された繊維シート状物の上記加工/製造装置とその加工/製造方法について詳細に検討した結果、前述のような装置を用いて工業的に安定して良好な生産状態を維持するためには、これらの特許文献2及び3に記載された要件の他にも数多くの要件が存在することを知った。その他の要件の中でも、特に高圧蒸気の噴射ノズルを構成する各部材における放熱や断熱膨張等の影響を排除し徹底的に蒸気温度の均一化を図り、冷却等による凝縮水を含む蒸気(凝縮蒸気)の発生を極力防止し、凝縮蒸気が止むなく発生した場合にも速やかに除去することが極めて重要であるとの認識を持った。噴出蒸気そのものや噴射ノズルの構成各部に局部的に凝縮蒸気が偏在する場合,被加工物上では噴射蒸気の通過性が阻害され、結果的に更なる低温部が発生し、また蒸気の通過性の差異に起因して交絡度等の加工度に斑が発生したり、特に水に対して感応性を有するポリマー等を含む繊維素材であれば、加工異常部が発生する原因となる等により、加工物の外観や物性等の製品品質の均一性に甚大な悪影響を及ぼすことが明らかとなった。
本発明に係る上記高圧蒸気噴出ノズルの基本構成は、一端に加圧蒸気供給源に接続される蒸気導入口を有し、他端に外部の蒸気排出管に接続する蒸気排出口を有するとともに、一方向に走行する繊維シート状物と対向する面に長さ方向に沿った開口を有する中空筒状のノズルホルダーと、前記開口側のノズルホルダー部分に脱着可能で且つ前記開口に対向して形成された多数のノズル孔を有するノズル部材とを備えた高圧蒸気噴出ノズルであって、前記開口と前記ノズル部材との間の高圧蒸気噴出通路内に生じる凝縮液と蒸気とを分離して、蒸気を前記ノズル孔に導入案内するための第1の気液分離手段が前記高圧蒸気噴出通路内に設けられてなることを特徴としている。
好適な態様によれば、前記第1の気液分離手段が前記ノズル孔の上流側直近に配されており、好ましくは第1の気液分離手段が凝縮液流路と同凝縮液流路内に配された蒸気噴出路とを有し、前記凝縮液流路と前記蒸気噴出路との間に凝縮液と蒸気とを分離する堰構造を有している。この前記堰構造は前記凝縮液流路から前記上方に向けて直立し、内部が連通する中空状の筒体を含んでいるとよい。また、前記第1の気液分離手段が更に蒸気圧の分布を均等化するためのバッファ部材を含み、同バッファ部材は前記第1の気液分離手段の上流側直近に配されていることが好ましい。
また、更に好ましい態様によれば、前記ノズルホルダーの底部に、同ノズルホルダー内に生じる凝縮液と蒸気とを分離して、蒸気だけを上記開口へと導き、前記凝縮液を前記ノズルホルダーの底部近傍に形成された集液路に集液する第2の気液分離手段を有している。ここで、前記集液路に集液された凝縮液をノズル外に排出するドレン排出路を有することが望ましく、そのドレン排出路に開閉バルブを配するとよい。そして、前記集液路は蒸気排出口側に向けて下傾斜させることが好ましい。
更に、上述のごとき冷却による影響以外に、ノズルホルダー内の蒸気の移動速度が一定以上の速度を有する場合、運動エネルギーや摩擦損失との関連でノズルホルダー内部における温度低下や圧力低下の影響を受けて蒸気温度の分布が均等でなくなったり、凝縮液を含む蒸気の発生原因となることが明らかとなった。様々な検討の結果、このような現象を避けるためにはホルダー内を移動する蒸気流量に対して所定のホルダー長さを与えたとき、供給蒸気圧力に対する圧力低下を許容限度内に抑えるための好適な条件式があることを見出した。
ここで、本発明に係る高圧蒸気噴出ノズルにあって、最も前提となる構成は、上記特許文献2及び3と同様に、ノズルホルダーの一端に蒸気導入口を、他端に蒸気排出口を有する点にある。高圧蒸気噴出ノズルから、常に蒸気を噴出させておくことはできない。例えば、定期点検時や機械の停止時には蒸気の供給も停止させざるを得ない。この停止時には、当然にノズル内の温度も急激に低下する。蒸気の噴出を再開させて繊維シート状物の各種加工を開始するには、蒸気噴出ノズルの内部を所定の温度まで昇温させておく必要がある。この昇温時に、従来の噴出ノズルのごとく蒸気導入口以外を密閉状態に構成する場合には、ノズルホルダー内に導入される蒸気量はノズル孔から噴出する量に止まり、熱量の交換量が少なくノズル自体を昇温させるために長時間を要することになる。
そのため、本発明にあっても、上述のごとくノズルホルダーの他端に蒸気排出口を設けて、同蒸気排出口に接続された蒸気排出管に、例えば後述するように開閉バルブなどを取り付けて蒸気排出口を開閉可能にする。いま、繊維シート状物の加工を再開する前に、ノズルホルダーに高温高圧の蒸気を導入する。このとき、前記開閉バルブを開けて蒸気排出口を開口させておき、蒸気導入口から導入される蒸気を蒸気排出口を通して連続して外部へと排出できるようにしておく。ノズルホルダーの温度を測定し、その温度が所要の高温に達すると、前記蒸気排出口を閉鎖する。この閉鎖と同時に蒸気導入口における蒸気圧を測定し、その蒸気圧が所定の圧力に達したとき繊維シート状物の加工装置を始動させる。このときの始動までに要する時間は、ノズルホルダー内を通過する新たな高温蒸気によりノズルホルダーが速やかに昇温されるため、従来のごとく蒸気排出口が存在しない場合と較べると大幅に短縮される。
本発明における中空筒状のノズルホルダーの構造としては、上記特許文献2及び3に開示されたノズルホルダーの形状と同様、単一の円筒状や矩形筒状のノズルホルダーであってもよいが、前記ノズルホルダーが2重管から構成され、その内側管部の蒸気導入側開口は前記蒸気導入口と連通し、該内側管部に多数の貫通孔が形成されていると、外側管部と内側管部との間に充満する長さ方向の蒸気分布に偏差が生じにくくなる。特にノズルホルダーが円筒状であれば、高圧蒸気の均一な流れを得やすいことや製作の容易性などの点から好ましい。また、実際の作業時には、かかるノズルホルダーの内部にノズルホルダーと相似断面をもつ高メッシュの筒状フイルターを同一軸線上に配することが望ましい。だが、必ずしもこれらに限定されない。
また前記内側管部に代えて、上記特許文献2及び3に記載されたノズルホルダーと同様に、ノズルホルダーの内部に高メッシュの円筒状フィルターを同一軸線上に配することもでき、ノズルホルダーの一端に設けられた蒸気導入口から導入される高温高圧の蒸気は円筒状フィルターの内部へと導入され、同フィルターを通過してノズルホルダーの開口に対向して配されるノズル部材のノズル孔に達し、同ノズル孔から外部へと噴出する。このとき、ノズルホルダーの内壁面における長手方向の圧力分布は円筒状フィルターにより均一化されるとともに、蒸気導入時に含まれる微細な異物が円筒状フィルターによって蒸気中から除去されるため、ノズルホルダーの長手方向に沿って形成されたノズル部材の多数のノズル孔を閉塞させることがなく、同ノズル孔から均等な噴出圧をもって高圧蒸気が安定して噴出されるようになる。
前記ノズルホルダーは、その底部(下面)近傍に同ノズルホルダー内に生じる凝縮液と蒸気とを分離して、蒸気だけをその開口へと導き、前記凝縮液を前記ノズルホルダーの底部に形成された集液路に集める気液分離手段を有している。なお、本発明に係る高圧蒸気噴出ノズルは、被加工物である繊維シート状物の一面に向けて配されるものの、そのノズル孔を繊維シート状物の上方近接位置に配する場合と、ノズル孔を繊維シート状物の下方近接位置に配する場合とがある。前者の場合、ノズルホルダーの上記開口は底部に形成され、後者の場合、ノズルホルダーの上記開口は天井側に形成される。しかして、凝縮液類
は常に下方に向けて流動する。そこで、前記気液分離手段の一部構成をなす前記集液路は、いずれにしてもノズルホルダーの底部近傍に形成される。本発明では、このノズルホルダーに設けられる気液分離手段を第2気液分離手段と称し、ノズル孔をもつ上記ノズル部材に設けられる後述する第1気液分離手段と区別している。
ここでは、ノズル孔を走行する繊維シート状物の上面に向けて高圧噴出ノズルを繊維シート状物の上面近接位置に配したときの前記第2気液分離手段の具体的な構成について述べる。上記開口はノズルホルダーの底部に形成されている。本態様による前記開口は、ノズルホルダーの長さ方向に並ぶ多数の高圧蒸気噴出通路である蒸気噴出孔により構成されている。この多数の蒸気噴出孔は単列であってもよいが、繊維シート状物の幅方向に満遍なく行き渡るためには千鳥状に配列することが望ましい。しかも、前記蒸気噴出孔は単なる孔ではなく、当該孔に連通する中空部を有する筒部を前記底部から起立させて、前記孔と筒部とにより蒸気噴出孔を構成する。この蒸気噴出孔における前記筒部が、前記第2気液分離手段を構成する堰として機能する。そして、前記蒸気噴出孔の周囲を取り囲むようにして互いが連通する溝部を形成して集液路としている。
この集液路は外部のドレン排出管との接続口であるドレン排出口に通じており、ドレン排出口に向けて下傾斜している。これは、稼働中にノズルホルダー内に溜まる凝縮液を主とするドレンを外部に排出しやすくするためである。そのため、前記ドレン排出口をノズルホルダーの傾斜方向の低いほうの端部底面に形成し、例えばこのドレン排出口を開閉バルブなどにより開閉自在として、任意の時間帯に同バルブを開いて前記集液路に溜まったドレンを外部へと排出する。このとき、ノズルホルダーは傾斜して配されているため、吸引などの余分な装置を設けなくても自然と外部に排出され、ドレンがノズル孔などの目詰まりを起こさなくなる。
一方、前記ノズルホルダーの下面に形成される上記開口は、ノズルホルダーの長さ方向に連続して形成されるスリット状の開口であってもよい。これらの開口を介してノズル部材に形成されたノズル孔に達する蒸気の圧力を均圧化して、ノズル長手方向に対する蒸気の均一な噴射を可能とする。
一方、上述のとおり、所定のホルダー長さをもつノズルホルダー内を所望の蒸気流量となるように圧力蒸気を供給するとき、その供給蒸気圧力Pに対するノズルホルダー内における圧力低下を許容限度内に抑えるには、ノズルホルダーの口径Dを適正な値とする必要がある。このホルダー口径Dとホルダー末端部(蒸気排出口)における圧力損失ΔPの大きさとの相関式(1) は、次のとおりである。
D≧{KQt2L/ [σ(P+0.1)] }0.2 ……(1)
いま、ホルダー全体からの蒸気の噴出量をQt(kg/s) とする。ホルダーの長さをL(m)とすると、仮想的な単位長さ当たりの線流量q(kg/Hr/m)は、q =Qt/Lとなる。
蒸気供給口から距離x(m)の位置にあるホルダー内部の流量をQx(kg/s)とすると、微小区間dxの流量バランス(dQx=-qdx) から、式Qx=Qt-qx =Qt(1-x/L) が成立する。
−方、微小区間dxにおける圧力損失dpx については次式(2) が成立する。
dpx =βwx2dx/(vD) ……(2) (実用蒸気輸送/日本熱エネルギー技術協会)
ここで、
dp:圧力損失(MPa)
D :ホルダー直径(m)
v :蒸気の比容積(m3 /kg)
wx:位置xにおける蒸気流速(m/s)
β=1.07×10-8
である。
上式(2) において、ホルダー断面積をA(m2 )とすると、下式(3) 、(4) が成立する。
wx=vQx/(A) ……(3)
dpx =β(vQx/A)2dx/vD = (βv/A2D)Qx2dx ……(4)
これを積分すると下式(5) が得られる。
ΔP =(βv/A2D) ∫Qt2(1 −x /L)2 dx=βvQt2l/(DA2) ……(5)
式(4) に A=πD2/4を代入して下式(6) を得る。
△P =16βvQt2L/ (π2D5) ……(6)
ここで、 K=16βv/π2 に置き換えると、
△P =KQt2L/D5 ……(7)
式(7) が得られる。
ここで、繊維シート状物の加工上許容可能な圧力偏差率をσとしたとき、供給蒸気圧力をP (MPa) とすると、下式(8) が成立する。
σ≧△P/(P+0.1) ……(8)
これに上式(8) を代入して、以下の式(1) が得られる。
σ≧KQt2L/ [D5(P+0.1)] → D≧{KQt2L/ [σ(P+0.1)] }0.2 ……(1)
この式(1) から、例えばホルダー全体からの蒸気の噴出量をQt(kg/s) 、ホルダー長さをL(m)、圧力偏差率をσと設定すると、ホルダーの口径Dの最小寸法を求めることができる。
次に、本発明に係る高圧蒸気噴出ノズルの構成部材の一つである、上記ノズル部材の代表的な態様について説明する。このノズル部材は、多数のノズル孔を有するノズルプレートと、同ノズルプレートを支持するプレート支持部材と、前記ノズルプレートと前記プレート支持部材との間に介装される第1気液分離手段の一構成部材をなす、ドレンセパレートプレートとから構成することができる。前記ノズルプレートに形成されるノズル孔は、ノズルプレートの長手方向に単列に形成してもよいが、例えばノズルプレートの幅方向に複数列に形成することもできる。この場合複数列のノズル孔を千鳥状に配すると、噴出蒸気が繊維シート状物の幅方向に満遍なく作用するため好ましい。
前記ノズル孔は蒸気の噴出方向に同一内径からなる単純な円形孔であってもよいが、所要の深さで円形孔部を形成し、その円形孔部の下端面に連続する内径が下方に向けて狭くなる逆円錐台部を形成するとよい。その他に、例えば上記特許文献2に挙げているような様々の形態を採用できるが、円筒状の各筒孔下端に連通する逆円錐台孔に形成すると、ノズル孔から噴出する蒸気流がある点に集束させることができるようになり、例えば繊維ウェブに対する噴出力が増して、同ウェブの表裏を貫通しやすくなる。前記集束点はノズル孔の径と蒸気圧とから決まる。
ノズルプレートを支持する前記プレート支持部材は、上記ノズルホルダーの上記開口の形成領域に対向して、同開口を閉塞するようボルト等により脱着可能に取り付けられる角柱状のブロック体から構成される。このプレート支持部材には、その幅方向中央部に前記ノズルホルダーの開口と上記ノズルプレートのノズル孔とを連通させる連通路が形成されている。この連通路は、本発明における高圧蒸気噴出通路の一部に該当する。この連通路は、好適には前記開口に沿って長さ方向に延びる多数の円形孔からなる孔部と、全ての円形孔間を連結して前記孔部からノズルプレート側に連続するスリット部とを含んでいる。前記孔部に形成される円形孔は、ノズルホルダーの前記開口の長さ方向に沿って一列に並んで形成されてもよいし、或いは開口の長さ方向に沿って千鳥状に配してもよい。
一方、上記ノズルプレートと前記プレート支持部材との間に介装される本発明にとって最も重要な構成部材であるドレンセパレートプレートは、ノズルプレート及びプレート支持部材の幅寸法と同じ寸法の幅をもつプレート材から構成されており、ノズルプレートとプレート支持部材との間に挟まれて、シール部材を介して両者にボルト等により気密に固設される。このドレンセパレートプレートにも、前記プレート支持部材のスリット部とノズルプレートの多数のノズル孔とにそれぞれ連通する高圧蒸気噴出通路が形成されている。この高圧蒸気噴出通路とその周辺の構造が、前記プレート支持部材のスリット部とともに本発明にとって最も特徴部をなす第1気液分離手段を構成する。
本発明にあって、前記ドレンセパレートプレートは、ドレンセパレートプレート本体の他に、ディスクプレートを含む場合がある。このディスクプレートは、前記プレート支持部材のスリット部の幅及び長さより僅かに狭い幅と短い長さをもつ前記スリット部と相似するプレート材からなり、前記スリット部内において、前記ドレンセパレートプレート本体の後述する円筒状貫通孔を構成する筒体と所定の間隔をおいて相対して配され、前記ドレンセパレートプレート本体に固定支持される。このようにドレンセパレートプレート本体に固定支持されたディスクプレートは、ノズルホルダーから送り込まれる高圧蒸気を受けて分散させ、同蒸気の圧力分布を均一化するとともに、蒸気と凝縮液とを分離させたのち、同高圧蒸気をドレンセパレートプレート本体へと送り込む。
上記高圧蒸気噴出通路における最も好ましい態様は、ドレンセパレートプレート本体に多数の円筒状貫通孔を形成することであり、この円筒状貫通孔を前記スリット部に対面してドレンセパレートプレートの長手方向に沿って単列に配することができる。ただし、この高圧蒸気噴出通路となる円筒状貫通孔の構造は本発明にあって特異な形状をもつ。これを具体的に述べると、平板状のドレンセパレートプレート本体の幅中央部には、上記プレート支持部材の上記スリット部の開口よりも一回り大きく且つドレンセパレートプレート本体の厚さの1/2の深さをもつ凹溝部を前記スリット部に沿って形成しており、その凹溝部の底部中央には、その長さ方向に単列に並んで前記円筒状貫通孔の半分の高さを占める多数の円筒体が突設されている。
前記プレート支持部材のスリット部には、その開口周縁に沿って連続する突壁部が前記ドレンセパレートプレートの前記凹溝部に向けて突設されている。この突壁部は前記凹溝部の溝底に達しない高さをもち、その外周形状は前記スリット部の内周面形状に一致させている。従って、前記プレート支持部材に前記ドレンセパレートプレートを組み付けるときは、ドレンセパレートプレート本体の前記凹溝部の内面にプレート支持部材の突壁部を密嵌させる。この突壁部の密嵌時、同突壁部と前記ドレンセパレートプレート本体の前記円筒体との間には空間が形成され、この空間に凝縮液を含む高圧蒸気(凝縮蒸気)が充満する。この凝縮蒸気中の凝縮液はドレンとなって前記円筒状貫通孔の周辺の上記凹溝部内に溜まる一方、蒸気は前記円筒状貫通孔の貫通孔を通って下方に配されたノズルプレートのノズル孔から外部へと噴出する。前記凹溝部に溜まったドレンは、所定の時間ごとに凹溝部のドレン排出口に設けた開閉バルブを開いて系外へと排出する。この多数の円筒体を囲む凹溝部が、本発明における凝縮液流路に相当し、前記円筒体が本発明における堰部となる。
以上の構成を備えた本発明の高圧蒸気噴出ノズルは、次のような本発明の繊維シート状物の加工方法に好適に適用される。
すなわち、繊維シート状物の加工方法に係る発明の基本構成は、一端に高圧蒸気供給源に接続される蒸気導入口を有し、他端に外部の蒸気排出管に接続する蒸気排出口を有するとともに、一方向に走行する繊維シート状物と対向する面のシート幅方向に沿って開口を有する中空筒状のノズルホルダーと、前記開口側のノズルホルダー部分に脱着可能で且つ前記開口に対向して形成された多数のノズル孔を有するノズル部材とを備えた高圧蒸気噴
出ノズルを使って、繊維シート状物の表面に向けて高圧蒸気を噴射する、繊維シート状物の加工方法にある。
ところで、本発明でいう繊維シート状物は、少なくとも織物、編物、不織布、又はこれらの積層シートを含んでなり蒸気が貫通する構造を有するものであればよく、例えばパーフォレートフィルムと織物の積層したものも繊維製布帛である。本発明の布帛を構成する繊維は、有機繊維(羊毛、麻、絹等の天然繊維、及びポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリアミド繊維等の合成繊維、並びにアセテート繊維などのような半合成繊維、レーヨンに代表される再生繊維など)、無機繊維(ガラス繊維、鉱物繊維、金属繊維など)の単独、又は有機繊維同士又は無機繊維同士若しくは有機繊維と無機繊維をそれらの併用したものである。
本発明による高圧蒸気噴出加工方法によれば、例えば布帛の洗浄処理、脱色処理、液体処理後の布帛の脱液処理、布帛の風合改良処理、布帛に対する各種の薬剤処理を行うことが可能となる。これらの例示のうち布帛の風合改良処理、或いは通常の熱セットなどに蒸熱処理を行うことはあるが、その他の処理については、一般に流体処理が採用され、しかも前記蒸熱処理にしても布帛を高温蒸気の雰囲気中におき、或いは同雰囲気中を単に通して処理している。
本発明による繊維シート状物の加工方法は、既述したとおり繊維製布帛に向けて加圧蒸気噴出ノズルから加圧蒸気を噴出して同布帛を貫通させることにより、上述のような多様な処理を行おうとするものである。従って、本発明の加圧蒸気噴出ノズルから噴出される加熱蒸気処理方法は従来の液体による処理方法とは本質的に異なる処理方法であり、また従来の蒸熱処理とも、蒸気を使う点では一致するものの、その構成は勿論のこと、機能と効果の点では全く異なる。
本発明による布帛の洗浄処理は、従来のような余剰の染料などを洗浄液や水による除去と同様の除去ができるが、更には布帛又はその構成繊維に付着する糊剤、油剤、各種樹脂などの付着物をも確実に除去することが可能となる。これは、布帛を構成する繊維や糸条に付着する糊剤、油剤、各種樹脂など、付着物の材質に影響されることなく、加圧蒸気が布帛を貫通するとき、それらの付着物を同蒸気により瞬間的に布帛の外へと随伴させることによる。例えば、金属繊維からなる織物又は編物は、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布の製造工程における繊維ウェブの移送手段として用いられているが、前記織物又は編物からなる布帛上で溶融状態にある繊維状に形成されたポリマーが冷却する際、布帛にこびり付いた付着物を洗浄する場合にも用いることが可能である。
本発明では液体処理ではなく蒸気(気体)処理であるがため、布帛を構成する繊維や糸条に水分を付着させることなしに各種の処理を行うことができる。そのため、後述するように洗浄後の布帛を改めて加熱乾燥工程や溶剤などの除去工程を通過させる必要がない。これは設備費やエネルギーコストの大幅な削減につながる。ただし、本発明の加工方法にあって、前記繊維シート状物に、熱収縮差を有するコンジュゲート繊維を含むとき、例えば不織布の製造であれば、ソフトな風合いを損なわずに繊維間の交絡度が増して形態安定性に優れた、多分野に応用可能な不織布が得られる。
また上記脱色処理は、例えば従来の脱色剤を使った脱色に代えて、本発明の蒸気処理方法により、簡単に製品になる以前の原反のとき、その染色の一部を簡単に脱色することができ、或いは布帛の移送速度と布帛と移送手段との間の幅方向の振動とを適当に組み合わせて制御すれば、モアレ調の模様を作成することができ、しかも原反までも傷めるようなことがない。
更に、上記液体処理後、例えば洗浄後の布帛に対する脱液(乾燥)処理についても上記洗浄処理と同様に、布帛には全工程における大量の処理液体が含浸あるいは付着している。つまり、通常の乾燥工程のごとく布帛から液分を効率的に除去できるため、従来の全ての乾燥工程に代えて本発明方法を適用すればよい。この場合、大型の乾燥チャンバー、多数の加熱ランプ、加熱ドラムや加熱ロール、これらの加熱ランプ、加熱ドラム又は加熱ロールに接続される電気エネルギーや流体エネルギーの供給設備、排気設備などが不要となり、使用エネルギー量も、従来と比較して大幅に低減される。また、上記布帛の風合改良処理も、例えば従来の羊毛織物や編物に対する洗絨法や蒸絨法などと比較すると、工程数が少なくなり、しかも短時間で目が詰まった表面がソフト感に富んだ羊毛製の布帛を連続して効率よく処理することができる。また本発明にあって、蒸気ノズルホルダーの蒸気導入路に更に薬剤注入路を合流させて布帛に加圧蒸気とともに薬剤を噴出すれば、他の処理と同時に薬剤処理を行うこともできる。
そして、これらの多様な処理法は、布帛の移送速度、加圧蒸気の温度と蒸気圧、布帛と前記ノズルの噴出開口端との間隙などの処理条件を好適に組み合わすことにより実施が可能となる。更に、それらの値の決定は、布帛の種類(織物、編物、不織布など)及び構造(織又は編組織、織又は編密度、不織布の繊維密度)、布帛の構成繊維や糸条の材質、布帛の厚さなどの布帛条件に基づいてなされるため、一律に決めることはできない。
さて、上述のように本発明の高圧蒸気噴出ノズルから繊維シート状物の表面に向けて高圧蒸気を噴射させるとき、既述したとおり、繊維シート状物の加工を開始する前に、蒸気排出口に設けた開閉バルブを開けておき、この状態でノズルホルダーに高温高圧の蒸気を導入する。このとき導入される蒸気は、蒸気排出口を通して連続して外部へと排出される。ノズルホルダーの温度が所定の高温に達すると、開閉バルブを閉じて前記蒸気排出口を閉鎖する。この閉鎖と同時に蒸気導入口における蒸気圧を測定し、その蒸気圧が所定の圧力に達したとき繊維シート状物の走行を開始する。このときの始動までに要する時間は、ノズルホルダー内を通過する新たな高温蒸気によりノズルホルダーが速やかに昇温されて、ノズル孔からは所要の高温高圧の蒸気が繊維シート状物の表面に向けて噴出し、速やかに繊維シート状物の内部を表面から裏面へと通過する。このとき同繊維シート状物の裏面の前記ノズル孔との対向位置に吸引手段を配しておき、同吸引手段により繊維シート状物の内部を通過する蒸気を積極的に吸引することが好ましい。
前記ノズル孔から噴出する蒸気には、次の理由から殆ど凝縮液が含まれていない。
すなわち、上記開閉バルブが閉じられたのちにノズルホルダー内に導入された高圧蒸気は、ノズルホルダーの内面を通過する際に放熱することが避けられないが、その放熱により発生する凝縮液を伴って、第2気液分離手段の一部である堰を経てノズル孔に向かおうとするが、このとき凝縮液はノズルホルダーの内面に沿って底部へと流下する。流下した凝縮液は第2気液分離手段の一部である凹溝状の集液路に溜まる一方で、高圧蒸気は同じく第2気液分離手段の一部である堰機能を有する筒体内の中空孔を通って第1気液分離手段に達し、ここでも再び蒸気と凝縮液とに分離され、凝縮液は凝縮液流路に集まり、蒸気は堰構造をもつ蒸気噴出流通路を通ってノズル部材に形成されたノズル孔に向かう。
集液路及び凝縮液流路に集められた凝縮液は時期を見てノズルホルダー及びノズル部材から系外へと排出される。このようにして、ノズルホルダーの内部にて発生する凝縮液とノズル部材の内部に発生する凝縮液とが、第1及び第2気液分離手段によってそれぞれ蒸気と分離されることによって、ノズル孔から噴出する蒸気内から凝縮液を確実に排除するものである。その結果、繊維シート状物に対する噴射蒸気の通過性が向上して低温部の発生がなくなり、また蒸気の通過性の差異に起因する交絡度等の加工度に斑が発生することもなく、特に水に対して感応性を有するポリマー等を含む繊維素材を使っても、加工異常部の発生がなくなる等、加工物の外観や物性等の製品品質の均一性が確保されるようにな
る。
前記高圧蒸気噴出ノズルの上記ノズルホルダーは、通常、断熱材などで被包されており、内部を通る高圧蒸気の温度低下を防止しているが、更に高圧蒸気噴出ノズルの全体を積極的に加熱することもできる。その具体的な手法としては、シリコン系オイルなどの熱媒体による加熱、誘導加熱などの電気ヒーターによる加熱方法があり、その他に例えば高圧蒸気噴出ノズルの全体を高圧蒸気噴出側を開口させたボックス内に収容し、同ボックス内に高温に加熱された熱風を導入する。このように高圧蒸気噴出ノズルの全体を、熱風によって例えば使用する蒸気の飽和蒸気温度以上の温度に昇温しておけば、内部の高圧蒸気の温度低下が効果的に防げるようになる。
ところで、通常は前記高圧蒸気噴出ノズルを走行する繊維ウェブの上方に配して、繊維ウェブの上面に向けて高圧蒸気噴出流を付与するが、前記高圧蒸気噴出ノズルを走行する繊維ウェブの下方に配して高圧蒸気の噴出流を繊維ウェブの下面から上方に向けて付与することもできる。このように高圧蒸気の噴出流を繊維ウェブの下方から上方に向けて噴出させるときは、ノズルホルダーの上面側に配されたノズル孔に凝縮液が溜まりにくくなり、また噴出蒸気にも凝縮液の含有量が少なくなり、圧力分布の均一化と相まって安定した加工が実現できる。
通常、上記高圧蒸気噴出ノズルは所定の位置に固設され不動状態におかれており、上記繊維ウェブ押圧移送手段及び繊維ウェブ担持移送手段も繊維ウェブを一方向に移送するように一方向に移動しているに過ぎないが、本発明にあっては前記高圧蒸気噴出ノズルを繊維ウェブの移送路の横断方向に短い行程で往復動させ、或いは同高圧蒸気噴出ノズルを固定しておき、前記繊維ウェブ押圧移送手段及び繊維ウェブ担持移送手段を繊維ウェブ移送路の横断方向に同じく短い行程をもって往復動させることが好ましい。このように、高圧蒸気噴出ノズル又は繊維ウェブ押圧移送手段及び繊維ウェブ担持移送手段の、いずれかを往復動させる場合には、繊維ウェブの幅方向に均一に高圧蒸気が噴出付与され、製造される不織布の表面にノズル孔から噴出される蒸気によるモアレ状のパターンがつかず、均整な表面形態をもつ不織布が得られる。この往復動の行程幅はノズル間ピッチより多少でも長ければよく、具体的には±5mm程度であり、その往復速度は30〜300回/分である。
本発明の繊維シート状物の加工方法にあっても、繊維ウェブの移送方向にあって、前記高圧蒸気噴出ノズルよりも上流側に蒸気噴出ノズルによるウェブ内の繊維相互の交絡を容易化するための前処理手段を配しておくことが望ましい。このように蒸気の噴出により繊維を交絡させる前段で、繊維ウェブを構成する繊維相互の距離を短くするような前処理を行うことにより高圧蒸気の噴射によっても繊維ウェブ内の繊維相互の交絡を斑なく効率的に行うことができる。その前処理手段としては、繊維ウェブに湿り気を与える程度の水分付与がある。このように高圧蒸気噴出ノズルによる加工を開始する以前に、繊維ウェブ表面に、例えば予め水分を噴霧しておくと、繊維ウェブ表面の毛羽立ちや繊維の飛散が防がれ、繊維ウェブの形態安定性が向上する。
以下、本発明の代表的な実施形態を図面に基づいて具体的に説明する。
図1〜図7は、本発明に係る高圧蒸気噴出ノズルの代表的な第1構造例を示している。この第1構造例による高圧蒸気噴出ノズル10は、図1及び図2に示すように、ノズルホルダー11と、同ノズルホルダー11の両端部に溶接により固着された第1及び第2フランジ12,13と、前記ノズルホルダー11の内部に挿通されて両端部を第1及び第2フランジ12,13により支持された円筒状の高メッシュフィルター14又は内側管部14’と、前記ノズルホルダー11の下面に沿って溶接又はボルト等により固着される多数のノズル孔をもつノズル部材15とを備えている。この実施形態によれば、ノズル部材15はノズルホルダー11の下面に固設されており、高圧蒸気はノズル部材15のノズル孔の下方を走行する図示せぬ繊維シート状物の上面に上方から下方に向けて噴出するときの構造例を示している。本発明にあっては、後述するがノズル部材15をノズルホルダー11の上面に固設して、高圧蒸気をノズル部材15のノズル孔の上方を走行する図示せぬ繊維シート状物の下面に下方から上方に向けて噴出する場合もあり、その場合の構造例を第2構造例とする。なお、上記内側管部14’の材質は、外側管部であるノズルホルダー本体11’と同等の材質であることが好ましい。
本実施形態におけるノズル部材15は、外観的には上記特許文献1及び2に開示されたノズル部材とノズル孔の形状及び部材高さが大きくされている点を除くと、ほぼ類似する形状を有している。図3は、本発明の高圧蒸気噴出ノズル10の、図2に示すIII-III 線に沿って矢印方向に見た拡大断面図である。この図から理解できるように、ノズル部材15は多数のノズル孔15a”を有するノズルプレート15aと、同ノズルプレート15aを支持するプレート支持部材15bと、前記ノズルプレート15aと前記プレート支持部材15bとの間に介装される第1気液分離手段の一構成部材をなす、ドレンセパレートプレート15cとから構成することができる。これらの部材は、各部材間を長さ方向に9本、幅方向に各一対の総計18本の固定用ボルト21によって締結固定される。
前記ノズルホルダー11の蒸気導入側端部に固着された第1フランジ12は中心線に沿
って大径部12a及び小径部12bとからなる貫通孔12cが形成されており、図示せぬ高圧蒸気供給源に接続された図示せぬ高圧蒸気供給管にプラグ17を介して接続される。前記ノズルホルダー11の蒸気排出側端部に固着された第2フランジ13も、その中心線に沿って大径部13a及び小径部13bとからなる貫通孔13cが形成されており、図示せぬ排気ファンに接続された図示せぬ蒸気排出管と接続される。前記高メッシュフィルター14(又は内側管部14’)の両端部には、前記第1及び第2フランジ12,13の各大径部12a,13aに気密に固設されるOリング20を固着している。
ところで、ノズルホルダー11への蒸気の供給配管については、凝縮蒸気の持ち込みを防止するために、立上り配管をノズルホルダー11の蒸気導入口に接続したり、あるいはその接続部の直前にドレンセパレータを設置するなど設計上の配慮が必要である。勿論、供給配管からの放熱による影響で凝縮蒸気が発生することを防止するため、配管部やバルブ等を十分に保温することが重要であり、必要に応じて配管などを外部から強制的に加熱するなどの対策を講じることが望ましい。これらの対策を講じることは重要ではあるが、ノズルホルダー11の外部を積極的に加熱する必要もある。
また、冷却による影響以外にも、ノズルホルダー11内の蒸気の移動速度が一定以上の速度を有する場合には、運動エネルギーや摩擦損失との関連でホルダー内部において温度低下や圧力低下による影響を受けて、蒸気温度の分布や凝縮蒸気の発生原因となることが明らかにされた。種々検討の結果、このような現象の発生を避けるためにはホルダー内を移動する蒸気流量に対して、所要のホルダー長さを与えたときに、供給蒸気圧力に対する圧力低下を許容限度内に抑えるためには、以下のような条件式(1) を満足する必要があることを見い出した。
D≧{KQt2 L/〔σ(P+0.1)〕}0.2 ……(1)
例えば、ホルダー全体からの蒸気の噴出量をQt(kg/s) 、ホルダー長さをL(m) 、圧力偏差率σを設定すると、前記式(1) から、ホルダー径Dの最小寸法を求めることができる。
前記ノズルホルダー11の下面部には、その両端部を残して内部空間に達するまでが平面的に切除されて切除面11aを形成しており、その結果、ノズルホルダー11の下面中央には長手方向に延びるスリット状開口11bが形成される。前記切除面11aは、図1〜図5に示すように、上記ノズル部材15の厚板状のノズルプレート15a、角柱状のプレート支持部材15b及び薄板状のドレンセパレートプレート15cを積層した状態で固定される。その積層は、最下位にノズルプレート15aが配され、最上位にプレート支持部材15bが配され、中間にドレンセパレートプレート15cを配している。これら3層の長さと幅とは同一である。ノズルプレート15aの下面中央部にはその長手方向の両端部を除いて長手方向に連続的に延びるスリット15a’が形成されている。また、その上部中央には、前記スリット15a’に通じる多数のノズル孔15a”が長手方向に一列に配されている。
一方、上記プレート支持部材15bの上半部には、図5に拡大して示すように、上記ノズルホルダー11のスリット状開口11bに臨む千鳥状に配された多数の円孔からなる蒸気通路15b’が形成されている。この蒸気通路15b’が本発明における高圧蒸気噴出通路の一部を構成する。またプレート支持部材15bの下半部には、図5に拡大して示すように、千鳥状に並んだ前記蒸気通路15b’の幅方向外側端縁間の幅をもち、且つ前記蒸気通路15b’の並ぶ方向の形成領域を網羅する長さをもつスリット部15b”が形成されている。このスリット部15b”が前記高圧蒸気噴出通路の他部を構成する。
更に図示例によれば、図5に拡大して示すように、前記プレート支持部材15bにおけ
る各蒸気通路15b’の上半部を中空状の筒体15b’−1に形成されており、その周辺をも含めた長さ方向の蒸気通路15b’の形成領域を舟形状の凹陥部15b’−2としている。前記円筒状の筒体15b’−1及び舟形状の凹陥部15b’−2が、本発明における特徴部の一つである第2気液分離手段を構成し、前記筒体15b’−1が堰としての機能を発揮し、前記凹陥部15b’−2が凝縮液(含むドレン)を集める集液路となる。
このように、図示例では、第2気液分離手段をプレート支持部材15bの上記ノズルホルダー11の切除面11aとの密接面に設けているが、ノズルホルダー11の切除面11aに直接第2気液分離手段を設けることもできる。この場合、加工は難しいが、前記切除面11aの上記スリット状開口11bを囲むように凹溝部を形成し、その凹溝部の底面に沿って等ピッチで前述と同様の貫通孔となる筒体15b’−1を起立させて並べるとよい。
一般に、ノズルホルダーに導入される高温高圧の蒸気の熱は、ノズルホルダーを介して外部に放熱され、そのための温度低下に基づき凝縮液が発生する。この凝縮液は蒸気とともに下方の上記高圧蒸気噴出通路へと流れ込もうとする。このとき、本発明にあっても、凝縮液の大半はノズルホルダー11の内面を伝わり下方へと移動する。また蒸気中に含まれる凝縮液が上記第2気液分離手段に達するまでに、その大半が蒸気と凝縮液とに分離され、内部圧のため蒸気は上記筒体15b’−1の孔を介して下方のノズルプレート15aに向けて流動を続けるが、一方の凝縮液は前記筒体15b’−1の筒壁部により中空孔内への流れが阻止され、前記凹陥部15b’−2に集まって一時的に貯留される。この凹陥部15b’−2に集められた凝縮液は、所定の時間ごとに同凹陥部15b’−2に通じるドレン排出口に配された図示せぬ開閉バルブを開けることにより系外へと排出される。
上記ドレンセパレートプレート15cは、その名称が示すとおり、上記第2気液分離手段と同様に蒸気と凝縮液とを分離するための部材であり、ドレンセパレートプレート本体15c’単独で構成してもよいが、本実施形態では図3、図6及び図7に示すように、ドレンセパレートプレート本体15c’とディスクプレート15c”との2部材から構成され、本発明における第1気液分離手段を構成する。ここで、ディスクプレート15c”は、図4、図11及び図12に示すように、前記ドレンセパレートプレート本体15c’よりも薄肉で且つ幅狭であり、ドレンセパレートプレート本体15c’より短尺なプレート材からなり、前記ドレンセパレートプレート本体15c’の蒸気流れ方向の上流側直近に配される。図示例によれば、図3及び図4に示すように、前記ディスクプレート15c”が上記プレート支持部材15bに形成されたスリット部15b”の空間内に配されている。凝縮液を含む蒸気がドレンセパレートプレート本体15c’に達する以前に凝縮液を含む蒸気を前記ディスクプレート15c”に当てて、蒸気中の凝縮液を蒸気から分離させるとともに、ドレンセパレートプレート本体15c’に向かう蒸気圧を分散させて、その圧力分布を均一化するバッファとしても機能する。
一方、上記ドレンセパレートプレート本体15c’の厚さ方向の上半部には、図4及び図8に拡大して示すように、その幅方向の中央部に上記プレート支持部材15bの上記スリット部15b”の開口よりも一回り大きく、ドレンセパレートプレート本体15c’の1/2の深さをもつ凹溝部15c’−2が前記スリット部15b”に沿って形成されている。前記凹溝部15c’−2の底部幅方向中央には長さ方向に沿って多数の貫通孔15c’−3が等ピッチに形成されている。この凹溝部15c’−2の凝縮液排出側端部の底面には、図9に拡大して示すように、ドレンセパレートプレート本体15c’の端面まで延びて後述するトラップ管路(C4)と接続する凝縮液排出口15c’−1が形成されている。
他方、凹溝部15c’−2の底面には、前記貫通孔15c’−3と連通する中空状の円
筒体15c’−4が凹溝部15c’−2と一体化して直立している。この円筒体15c’−4は各貫通孔15c’−3と同じ内径をもち、また前記貫通孔15c’−3の内径よりも大きな外径をもち、貫通孔15c’−3と同等の高さをもっている。この円筒体15c’−4が本発明における第1気液分離手段の堰構造を構成し、前記凹溝部15c’−2が凝縮液流路を構成する。
前記ディスクプレート15c”に当たって分散化された蒸気には僅かではあっても、いまだ凝縮液が含まれている可能性が高い。前記ドレンセパレートプレート本体15c’は、そうした蒸気中に残った凝縮液を凹溝部15c’−2に集めて、蒸気だけを前記中空状の円筒体15c’−4の中空部と前記貫通孔15c’−3とを通してドレンセパレートプレート本体15c’の下面に密着して配されたノズルプレート15aのノズル孔15a”へと送り込む。このとき、前記円筒体15c’−4は凝縮液が中空部へと侵入するのを阻止して、蒸気のみを中空部へと送り込み、ここで分離された凝縮液が前記凹溝部15c’−2に集められる。この凹溝部15c’−2に溜まった凝縮液は、所定の時間ごとに図示せぬ開閉バルブが開いて凹溝部15c’−2と連通するドレン排出口を通して系外へと排出する。なお、本実施形態にあっては前記円筒体15c’−4は前記凹溝部15c’−2の底面に沿って等ピッチで単列に配されているが、これに限定されない。
上記ノズルプレート15aは、その幅方向の中央に所定のピッチをもって長手方向に一列又は多列に並んで形成された多数のノズル孔15a”を有している。本実施形態によれば、前記ノズル孔15a”は一列に配されており、上部の1/5の高さ部分に単なる円形孔15a”−1が形成され、その下面に連続して前記円形孔15a”−1の径よりも小さな径をもち、その上端開口から逆円錐台形孔15a”−2に形成されている。また、この逆円錐台形孔15a”−2の下端噴出口までノズルプレート15aの長さ方向に連続して延びるスリット15a’が形成されている。かかる孔形状を採用するときは、高精度の孔加工と噴射流の良好な均一性の確保を可能にする。
上記プレート支持部材15bは、図1及び図3に示すように、同プレート支持部材15bの上面をノズルホルダー11の上記切除面11aに密接させた状態で、溶接により固設一体化されている。前記プレート支持部材15bには、上記スリット部15b”の開口下端縁部に沿って下方へと突出する突壁部15b”−1が連続して形成されている。プレート支持部材15bの前記突壁部15b”−1が、上記ドレンセパレートプレート本体15c’に形成された上記凹溝部15c’−2の内壁面に密嵌する状態で嵌着され、プレート支持部材15bとノズルプレート15aとの間に挟持固定される。
このときの固定は、図3及び図4に拡大して示すように、プレート支持部材15bとドレンセパレートプレート本体15c’との間、及びノズルプレート15aとドレンセパレートプレート本体15c’との間を、それぞれOリング20を介して共通のボルト21をもって気密に固着することにより強固に支持する。従って、ノズルプレート15a及びドレンセパレートプレート15cは前記ボルト21を外すことにより、プレート支持部材15bから容易に取り外すことができるため、洗浄や交換が簡単にできる。また、前記ドレンセパレートプレート本体15c’の前記凹溝部15c’−2に密嵌されたプレート支持部材15bの前記突壁部15b”−1の内面と上記円筒体15c’−4との間には、既述したとおり空間が形成されており、この空間が本発明の第1気液分離手段の一部である凝縮液流路となる。
図10は、本発明の高圧蒸気噴出ノズル10の第2構造例を示している。なお、この第2構造例にあって、上記第1構造例と実質的に均等な部材には同一名称を用い、同一符号を付している。この第2構造例は、一方向に走行する繊維シート状物の下面に向けて高温高圧の蒸気を上方に噴出する場合の高圧蒸気噴出ノズル10の構造例である。そのため、
この第2構造例では、ノズルホルダー11とノズル部材15との配置が第1構造例と逆になる。また、ノズル部材を構成する、ノズルプレート15aとドレンセパレートプレート15cとプレート支持部材15との配置関係も逆となる。
この第2構造例によれば、前記ノズルホルダー11は高圧蒸気噴出ノズル10の最下位に配され、その切除面11aは上面に形成され、スリット状開口11bも上方に向けて開口する。この切除面11aとノズル部材15のプレート支持部材15bとの配置が、上記第1構造例における切除面11aとノズル部材15のプレート支持部材15bとの配置とは上下逆になる。このときの固定は溶接により一体化される。なお、プレート支持部材15bの構造は上記第1構造例におけるプレート支持部材15bの構造と変わるところがない。ただし、この第2構造例によれば、前記プレート支持部材15bに上記ドレンセパレートプレート150cを直接には密接固定せず、両者の間に薄板状のスペーサー15dが介装される。スペーサー15dにはプレート支持部材15bのスリット部15b’の開口縁に沿って形成された上記突壁部15b”−1が密嵌される開口15d’が設けられている。このスペーサー15dは、前述のとおり第1構造例におけるプレート支持部材15bを流用すべく設けられたものである。
前記ドレンセパレートプレート150cは前記スペーサー15dの上面にOリング20を介して共通のボルト21をもって気密に固着される。このときのドレンセパレートプレート本体150c’の配置向きは上記第1構造例におけるドレンセパレートプレート本体15c’の構造及び配置向きと同じにしている。ただし、上記ディスクプレート15c”は、上記第1構造例と異なり、プレート支持部材15bのスリット部15b’の内部ではなく、ノズルプレート15aのノズル孔15a”における長さ方向に連続して延びる長孔部15a”−3の内部に配されている。そのため、前記ノズル孔15a”の構造は、その肉厚方向の下面側に前記長孔部15a”−3が形成され、上半部には上記第1構造例と同様に、多数の円錐台形孔15a”−4が等ピッチで形成されている。前記ドレンセパレートプレート本体150c’と前記ノズルプレート15aとは、Oリング20を介して上記ボルト21をもって気密に固着されている。なお、前記ノズルプレート15aと前記ドレンセパレートプレート本体150c’との間にはシートパッキン(商品名:バイトン)が介装されている。
図10に示す第2の構造例によれば、前記ドレンセパレートプレート本体150c’に支持されるディスクプレート15c”の支持構造例は、ドレンセパレートプレート本体150c’とディスクプレート15c”とは内ネジが切られたフランジ付きスペーサー15eを介して上下一対のネジ21a,21bがねじ込まれて固設される。前記フランジ付きスペーサー15eは前記ドレンセパレートプレート本体150c’の上記円筒体150c’−4の貫通孔に挿入され、そのディスクプレート15c”側に形成されたフランジ部15e’の下面が前記円筒体150c’−4の上端面に当接して、円筒体150c’−4と前記ディスクプレート15c”との間の間隙を作る。
上記構成を備えた高圧蒸気噴出ノズル10によれば、後述するように、例えば高圧蒸気噴出ノズル10から高温高圧の蒸気を噴出させるにあたり、始動時には円筒状のノズルホルダー11の一端から蒸気を導入して、その他端から放出させれば、高温高圧の新鮮な蒸気がノズルホルダー11の内部を何らの障害もなく通過するため、温度が低下したノズルホルダー11を短時間で所定の温度まで昇温させることができる。これが、従来のようにノズルホルダーに蒸気の導入開口のみが設けられているときは、ノズルホルダーに新鮮な高温高圧の蒸気を導入しても、蒸気はノズルホルダーの内部を流通せず、該ホルダー内に充満するだけであるため、熱量の交換が行われず蒸気の凝縮が起こりやすくなり、ノズルホルダーの昇温に長時間を要することになる。
因みに、本実施形態によれば、前記ノズルプレート15aの厚さは25mm、上記プレート支持部材15bの底面からノズルホルダー11の中心までの高さは59mmであり、前記ドレンセパレートプレート本体15c’の厚さは10mmである。前記ドレンセパレートプレート本体15c’の長さは630mmであり、その溝幅は17mm、円筒体15c’−4の外径は8mm、その内径は6mmであり、その凹溝部15c’−2の底面から円筒体15c’−4の上面までの高さは凹溝部15c’−2の深さに等しい5mmとなっている。これらの値は、高圧蒸気噴出ノズルの使用分野により異なり、一概には決められない。なお、前記凹溝部15c’−2と円筒体15c’−4との加工は切削による機械加工によってなされる。
以上の実施形態では、ノズルプレート15aに形成される多数のノズル孔15a”が一列に並んで配された例を挙げているが、本発明ではノズルプレート16に形成される多数のノズル孔15a”を2以上の複数列に配することもできる。このようにノズル孔15a”を、例えば二列に並べて配するときは、列間に配されるノズル孔15a”を1/2ピッチずらして千鳥状に配するようにすることが好ましい。千鳥状にノズル孔15a”を配した場合には、単列である場合と比較して同一列上のノズル孔15a”間のピッチを長くとっても、トータルとして実質的にピッチが短くなり、高圧蒸気噴出ノズル10から噴出する高圧蒸気が移送される繊維ウェブの幅方向に万遍なく付与されるようになり、モアレ状の模様もつきにくくなる。
図13及び図14は、上述の高圧蒸気噴出ノズル10が適用された本発明に係る繊維シート状物の加工工程の好適な実施形態としての不織布の製造工程の一例を概要で示している。前記高圧蒸気噴出ノズル10の下方には、所定の間隔をおいてエンドレスベルト30が配されている。このエンドレスベルト30は前記高圧蒸気噴出ノズル10を横切るようにして一方向に回動する。そのため、同エンドレスベルト30の両端反転部は、図示せぬ駆動モータにより駆動される駆動ロール31及び従動ロール32により駆動支持されるとともに、下方においてテンションローラ33にて支持し、エンドレスベルト30に適切な張力を与えている。このエンドレスベルト30は、例えばステンレス製の金属線を使って粗目に織り込まれたメッシュ状の織物から構成される。
そのメッシュ度は任意に設定できる。また、前記高圧蒸気噴出ノズル10とエンドレスベルト30により移送される繊維ウェブとの間隔は、繊維ウェブの繊維密度やその厚さによって0〜30mm以下に設定する。0mmでは高圧蒸気噴出ノズル10と繊維ウェブとの間で摺接による摩擦が生じ、ノズル孔の変形や蒸気中の異物によりノズル孔15a”が塞がれやすくなり、30mmを越えるものでは噴出蒸気流の温度と勢いが低下する。前記高圧蒸気噴出ノズル10に導入される蒸気圧は、繊維ウェブの構成繊維の材質や繊維密度に基づいて、0.1〜2MPaとすることが望ましく、高圧蒸気噴出ノズルから噴出される蒸気を加熱蒸気とすれば、ノズル孔15a”から噴出する加熱蒸気が断熱膨張による温度低下を起こしても、霧状の蒸気とはならず霧散することもなくなる。このとき、ノズル孔15a”へ供給される蒸気は、湿り度を10%以内、又は加熱度が10℃以上の加熱蒸気とすることが望ましい。
前記高圧蒸気噴出ノズル10の設置部位に対応する前記エンドレスベルト30を挟んで下方にはサクション手段が配されている。本実施形態では、同サクション手段はサクションボックス40と、同サクションボックス40にセパレータタンク41を介して配管により連結された真空ポンプ42と、同真空ポンプ42の排出側に連結されたミストセパレータ43とから構成される。ここで、前記セパレータタンク41はサクションボックス40により吸引される蒸気を気液に分離するための気液分離タンクであり、前記ミストセパレータ43は真空ポンプ42から排出される蒸気中の異物や有害ガス或いは液体などを蒸気から除去して、清浄な蒸気(気体)を外部に放出するとともに、真空ポンプ42から発生
する騒音を低減化するサイレンサーとしての機能も有する。
前記セパレータタンク41の天板部の排気口が開閉バルブ47を介して前記気液分離タンク41と上記真空ポンプ42とを連結する吸引管路(C5)に接続され、同セパレータタンク41の底部は流体ポンプ48を介して上記水供給源Wとに接続させている。また、このセパレータタンク41の上限水位部と下限水位部との間に水位検出器49が配され、同セパレータタンク41の水位が上限を越え又は下限を下回ると、その信号を送って図示せぬ制御装置の指令により前記流体ポンプ48の作動を停止させるようにしている。
上記高圧蒸気噴出ノズル10は、図1〜図12に示し上述したノズル構造を備えており、その蒸気導入側端部には図13及び図14に示すように、高圧蒸気供給源Sから供給される高圧の蒸気が蒸気導入側主管路(C1)を通して導入される。この蒸気導入側主管路(C1)では、高圧蒸気供給源Sから送られる蒸気を一旦ドレン貯留ポット51に導き、その底部に蒸気中に含まれる凝縮液を貯留して、これを第2のトラップ管路57を介して図示せぬ回収タンクに回収している。ドレン貯留ポット51に導入された蒸気は圧力制御バルブ52及び精密フィルター53を介して加熱ヒーター54により加熱されて加熱蒸気となり、高圧蒸気噴出ノズル10に送り込まれる。
本実施形態にあっては、前記加熱ヒーター54と高圧蒸気噴出ノズル10の蒸気導入側端部との間に、温度検出器TIと圧力検出器PIとが配されている。前記蒸気導入側主管路(C1)は、加熱ヒーター54の設置部位から分岐する蒸気補充管路(C2)を有しており、この蒸気補充管路(C2)は高圧蒸気供給源Sと接続されている。この蒸気補充管路(C2)の途中には、前記加熱ヒーター54からの温度検出信号を受けて作動する第1の開閉バルブ55が介装され、前記温度検出器TIにより検出される蒸気温度が下限の温度より低下すると前記第1の開閉バルブ55を開き新たな蒸気を蒸気導入側主管路(C1)に補給して加熱蒸気温度を所定の温度範囲まで上昇させる。蒸気温度が上限の温度を越えると前記第1の開閉バルブ55を閉じ補給蒸気を遮断する。
この実施形態にて採用する高圧蒸気噴出システムは、上記特許文献3(特許第4256749号公報)に準拠しており、その温度制御システムにより蒸気の温度を所定の温度範囲に制御することを可能にしている。また、前記圧力検出器PIは上記精密フィルター53の上流側に配された圧力制御バルブ52に接続されており、蒸気導入側主管路(C1)の蒸気圧を一定に維持するように調整する。
一方、高圧蒸気噴出ノズル10の蒸気排出側端部には、図14に示すように、第2の温度検出器TIが配され、蒸気排出側端部は蒸気排出管路(C3)と接続されている。同蒸気排出管路(C3)には、前記第2の温度検出器TIに接続されて、同温度検出器TIにより検出された蒸気温度が設定温度に達すると閉鎖する第2の開閉バルブ56が介装されている。また、前記第2の開閉バルブ56が閉まって蒸気排出管路(C3)が閉鎖されたときでも、高圧蒸気噴出ノズル10のノズルホルダー11内部に発生するドレンを常に図示せぬ回収タンクに排出できるようにしている。
そのため本実施形態では、図14において上記ノズル部材15におけるノズルホルダー11の高圧蒸気排出側の端部には、その底面近傍に蒸気の凝縮液排出口15c’−1(図9参照)が形成されており、その排出口15c’−1は第3の開閉バルブ62を介してトラップ管路(C4)に接続されている。このとき、前記高圧蒸気噴出ノズル10は、その高圧蒸気導入側端部を基端部として上記蒸気排出管路(C3)の端部を下方に僅かに下げて、高圧蒸気噴出ノズル10を傾斜させておく。ノズルホルダー11に導入される高圧蒸気は高圧蒸気噴出ノズル10の稼働中にどうしても凝縮して液化する。既述したとおり、プレート支持部材15bのスリット部開口に形成された上記突壁部15b”−1を、上記
ドレンセパレートプレート本体15c’に形成された上記凹溝部15c’−2の内壁面に密嵌させている。このとき、前記突壁部15b”−1の内面と前記ドレンセパレートプレート本体15c’の円筒体15c’−4との間には間隙が形成され、この間隙が本発明の第1気液分離手段の一部となる凝縮液流路を構成する。
本実施形態における前述のドレンセパレートプレート本体15c’の凝縮液排出側端部は、図9に拡大して示し既述したとおり、ドレンセパレートプレート本体15c’の前記凹溝部15c’−2の凝縮液流路側端部に続いて、同凹溝部15c’−2と上記トラップ管路(C4)との間を連通させるドレン排出流路としての貫通孔15c’−3が形成されている。前記トラップ管路(C4)には、上述のとおり第3の開閉バルブ62が設けられている。この貫通孔15c’−3は、3mm径で長さが30mmのキリ孔からなり、その凹溝部15c’−2と連通する側の端部は、上半部が前記凹溝部15c’−2の底部に直接連通しており、その下半部は前記凹溝部15c’−2の底部の下面へと延設されている。また、この貫通孔15c’−3の前記トラップ管路(C4)との接続側端部の凝縮液排出口15c’−1は7.2mm径のネジ孔からなる。
一方、本実施形態における第2気液分離手段は、図3及び図5に示し既述したとおり、前記プレート支持部材15bの上半部に多数の円孔からなる蒸気通路15b’が形成され、その下半部に同蒸気通路15b’の下端開口面と連通するスリット部15b”が形成されている。前記蒸気通路15b’の上端開口面の幅方向中央部には、ノズル長さ方向にわたって舟形状の凹陥部15b’−2が形成されている。そして、この凹陥部15b’−2の底部には、前述の円孔からなる多数の蒸気通路15b’にそれぞれ連通する中空状の円筒体15b’−4が多数立ち上がっている。この円筒体15b’−4が本発明における堰としての機能を発揮し、前記凹陥部15b’−2が凝縮液(含むドレン)を集める本発明における集液路となる。
ここで、所定の時間ごとに第3の開閉バルブ62を開けると、プレート支持部材15bの上記凹陥部15b’−2に溜まった凝縮液が系外に排出される。このとき、上述のようにノズルホルダー11の高圧蒸気排出側端部を蒸気排出管路(C3)の端部よりも下方に僅かに低くなるように設置しておけば、プレート支持部材15bの凹陥部15b’−2に溜まった凝縮液は自動的に高圧蒸気排出側端部の凝縮液排出口へと流れて、トラップ管路(C4)を介して外部に排出される。
図15は、本発明に係る繊維シート状物の加工工程の第2実施形態の概要を示している。この実施形態において、上記第1実施形態と異なるところは、高圧蒸気噴出ノズル10の上流側に配設された交絡を容易化する手段を設けるとともに、点である。
本実施形態にあっては、上記高圧蒸気噴出ノズル10の繊維ウェブ走行方向の上流側に、図示せぬ繊維ウェブの表面に向けて水を付与する水噴射パイプ58が設置されている。この水噴射パイプ58と繊維ウェブとの間には、前記水噴射パイプ58から噴射する水を繊維ウェブ表面に案内する案内板59が配されており、水噴射パイプ58から噴射される水を直接ウェブ表面に付与せずに、前記案内板59を介して水流にして流下させるようにしている。この水噴射パイプ58は、本発明における交絡を容易化するための前処理手段に相当し、高圧蒸気噴出ノズル10からの高圧蒸気による打撃を受ける前に、水を付与して繊維ウェブの見かけ上の体積を収縮させ、それによりウェブ内の繊維間相互の距離を短縮化し高圧蒸気噴出ノズル10によるウェブ内の繊維相互の交絡を容易化することが出来る。前記案内板59の設置部位に対応する前記エンドレスベルト30の下方にも第2のサクションボックス45が設置されており、この第2のサクションボックス45も気液分離タンク46を介して上記真空ポンプ42に接続されている。ここで、前記水噴射パイプ58は必ず設置しなければならないものではなく、必要に応じて設置すればよい。
上記セパレータタンク41の天板部の排気口が開閉バルブ47を介して前記気液分離タンク46と上記真空ポンプ42とを連結する吸引管路(C5)に接続され、同セパレータタンク41の底部は流体ポンプ48を介して、上記水噴射パイプ58と水供給源Wとの接続管路(C6)に合流させている。また、このセパレータタンク41の上限水位部と下限水位部との間に水位検出器49が配され、同セパレータタンク41の水位が上限を越え又は下限を下回ると、その信号を送って図示せぬ制御装置の指令により前記流体ポンプ48の作動を停止させるようにしている。
また、本実施形態では前記高圧蒸気噴出ノズル10及び水噴射パイプ58の設置部を被包するようにして開閉蓋60が設置されている。この開閉蓋60の天板部は吸引ポンプ61が接続されており、同吸引ポンプ61により高圧蒸気噴出ノズル10及び水噴射パイプ58の設置部で発生する霧状の水蒸気を常時吸引して外部に放出するようにしている。なお、本実施形態にあって図示を省略したが、当然に高圧蒸気噴出ノズル10とその蒸気導入配管や蒸気排出管などは、蒸気噴出ノズル孔を除きアルミ箔付きのガラス繊維マットなどの断熱材で被覆している。
以上のごとく構成された本実施形態による不織布の製造装置によれば、稼働に先立って、先ず上記高圧蒸気噴出ノズル10の蒸気排出管路(C3)の第2の開閉バルブ56を開けて蒸気導入側主管路(C1)から高圧の加熱蒸気を導入すると、新鮮な加熱蒸気が高圧蒸気噴出ノズル10のノズルホルダー11の内部を、その導入側開口から排出側開口へと流れ、ノズルホルダー11を所要の加熱温度まで速やかに昇温させる。このとき、ノズルホルダー11の蒸気排出側端部に設置された温度検出器TIによりその温度を検出しており、同検出温度が所要の温度に達すると上記第2の開閉バルブ56を閉じる。この第2の開閉バルブ56を閉じると同時に、第1及び第2エンドレスベルト30,34を駆動して、その回動を開始する。
これらのエンドレスベルト30,34の回動により同ベルト上を移送される図示せぬ繊維ウェブの表面には、先ず水噴射パイプ58から噴射される水を案内板59を介して水が付与される。このときの水量は、繊維ウェブ表面の繊維を濡らして、その形態を安定化させるだけで十分なため、少量で十分であり、またその水の付与手段としては水の流下によらず、霧状の水を噴霧するだけでもよい。なお、繊維ウェブの構成する繊維の材質によっては、容易に交絡する場合もありその場合には予め交絡を容易化するための手段を講じることはない。一方、繊維ウェブを構成する繊維の材質によっては、水の付与だけでは交絡を容易化することが困難な場合もある。そんなときは、上記水付与に代えて既述した特許文献3に開示されているように従来と同様の高圧水流を噴射してもよいが、この場合にもその水量は必ずしも多量でなく少量であってもよい。
ここで、前記繊維ウェブを構成する材質の一部に熱収縮率の異なる繊維からなるサイドバイサイド繊維や芯鞘構造をもつコンジュゲート繊維を使用すると、繊維ウェブ内へと浸入する加熱蒸気によってコンジュゲート繊維が捲縮して、特に表面層において他の繊維との交絡が更に進み、加工を終えた不織布は極めて形態が安定しており、所定の厚さでありながら柔軟性と弾力性に富む高品質の製品が得られる。
水が付与された繊維ウェブの表面には、次いで上記高圧蒸気噴出ノズル10の各ノズル孔15a”から噴出する均等な圧力と温度をもつ柱状又は収束流の加熱蒸気が付与され、その強力な加熱蒸気流が繊維ウェブ内へと浸入し、周辺繊維を交絡させながら同時に熱セットを行いながらウェブを貫通して蒸気による交絡繊維不織布が連続して製造される。このとき、蒸気排出管路(C3)に設置された第2の開閉バルブ56は閉じられた状態にあり、高圧蒸気噴出ノズル10のノズルホルダー11の内部にはドレンが生じるが、このド
レンは、図14に示すように、前記第2の開閉バルブ56の上流側から分岐する第2のトラップ管路57を介して常に系外に設置された回収タンクに回収される。
その結果、ノズル孔15a”に目詰まりが発生することがなく、同ノズル孔15a”から噴出される加熱蒸気は間欠的に噴出することなく安定して連続で噴出するようになる。このように、走行する繊維ウェブの表面に安定した加熱蒸気が連続して噴出されるため、ウェブ全体に均等な交絡がなされるようになり、所要の強度を備えた極めて高品質な不織布が製造される。本実施形態にあっても、図14に示す上記第1の実施形態と同様の高圧蒸気噴出システムを採用している。
図16は、本発明の第3実施形態の概要を示している。この実施形態では、本発明における繊維ウェブ担持移送手段である上記エンドレスベルト30のウェブ移送面に対向させて、図16に示すように、同エンドレスベルト30と同一方向に回動する本発明の繊維ウェブ押圧移送手段である第2エンドレスベルト34を配設し、第1及び第2エンドレスベルト30,34をもって図示せぬ繊維ウェブを挟持した状態で移送し、高圧蒸気噴出ノズル10から噴出する加熱蒸気を、前記第2エンドレスベルト34を介して繊維ウェブの上面から下方のエンドレスベルト30に向けている。
このように、2枚のエンドレスベルト30及び34をもって繊維ウェブを挟持しながら、ウェブ表面に加熱蒸気を付与するようにすると、上記第1実施形態のように高圧蒸気噴出ノズル10による加熱蒸気の付与に先立って交絡を容易化するための手段を講じる必要がなくなるばかりでなく、高圧蒸気噴出ノズル10からの加熱蒸気の噴出による打撃によってもウェブ形態の崩れがなく、その結果、高圧蒸気噴出ノズル10から噴出される加熱蒸気の圧力を更に高めることも可能となって、高圧で噴出する加熱蒸気流が繊維ウェブを確実に貫通することができるようになる。この実施形態にあっては、繊維ウェブの上面に対向する上記第2エンドレスベルト34の空隙率(メッシュ度)は下方のエンドレスベルト40のそれよりも粗く設定しているが、必ずしも粗くせず同等の空隙率に設定することもできる。
図17は、本発明の繊維シート状物の加工工程に係る第4実施形態の概要を示している。この実施形態によれば、上記高圧蒸気噴出ノズル10と同ノズル10に対向して配されるサクションボックス40とを一組としたとき、その複数組(図示例では二組)が繊維ウェブの移送方向に配されており、しかも各組における高圧蒸気噴出ノズル10及びサクションボックス40の配置を互いに上下逆転させている。すなわち、第一組目の高圧蒸気噴出ノズル10のノズル孔15a”を、繊維ウェブの上面を押圧しながら一緒に走行する第2エンドレスベルト34の上面に向けて高圧蒸気噴出ノズル10を配設するとともに、サクションボックス40の吸引開口を繊維ウェブを下方から担持して繊維ウェブを移送する第1エンドレスベルト30の下面に向けてサクションボックス40を配設している。一方、第二組目の高圧蒸気噴出ノズル10は、そのノズル孔15a”を繊維ウェブを下方から担持して移送する第1エンドレスベルト30の下面に向けて配設されるとともに、サクションボックス40は、その吸引開口を繊維ウェブを上方から押圧して一緒に走行する第2エンドレスベルト34の上面に向けて配設している。
こうして、第1及び第2エンドレスベルト30,34によって挟持されて移送される繊維ウェブに対して、上面と下面とに向けて交互に高圧蒸気噴出ノズル10から高圧蒸気を噴出させると、繊維ウェブの表裏両面に対して均等に高圧蒸気が作用することになり、製造された不織布の表裏面において構成繊維が均等に交絡が進み、不織布としての形態安定性が確保されやすくなり、しかも外観的にも表裏の区別がなく商品価値が向上する。
図18は、本発明に係る繊維シート状物の加工工程における最も好適な第5実施形態の
要部を概要で示している。ノズル部材15の下面に接近させて繊維ウェブ押圧移送手段であるエンドレスベルト34を配し、繊維ウェブ担持移送手段である第1エンドレスベルト30に担持されて移送されてくる繊維ウェブWを前記第2エンドレスベルト34によって挟持しながら協働して移送し、その挟持移送の間に前記ノズル部材15のノズル孔15a”を介して高圧の加熱蒸気を繊維ウェブ表面に噴出させる。前記第1エンドレスベルト30の内面に近接させて吸引手段であるサクションボックス40が配されている。
この実施形態では、前記サクションボックス40の吸引開口はノズル部材15のノズル孔15a”に対向する位置に配され、その形状は周辺の気体の吸引を可能な限り回避すべくスリット状とされている。このスリット開孔の開口幅は略10mm程度が好適であり、その吸引力も通常の工場内で使われる換気扇の排気能力、すなわち300Pa程度で十分であり、これより大きいと繊維ウェブの構成繊維に配向性を与えやすく、それより小さいと吸引力不足となる。勿論、この吸引力は繊維ウェブの厚さ、密度や、ノズル部材15から噴出するときの蒸気圧によっても所要の範囲で調整することが必要である。
また、この実施形態ではノズル部材15と第2エンドレスベルト34との間隙、第1エンドレスベルト30とサクションボックス40との間の間隙を維持すべく、第1エンドレスベルト30の下面を支持して案内する複数の支持回転ロール35aと第2エンドレスベルト34の上面位置を規制して案内する複数の規制案内ロール35bとを設けている。これらの支持回転ロール35a及び規制案内ロール35bを設けることにより、第1及び第2エンドレスベルト30,34をもって適切な挟持力をもって繊維ウェブTを挟持移送することが可能となるばかりでなく、各エンドレスベルト30,34とノズル部材15及びサクションボックス40との摺接を回避すると同時に、その対向間隙を微小に維持することが可能となる。なお、これらの支持回転ロール35a及び規制案内ロール35bを公知の上下位置調整手段を使ってそれぞれ調整可能にすることもできる。
上記実施形態にあっては、上述の構造を備えた高圧蒸気噴出ノズル10のノズル孔15a”を単に繊維ウェブの担持移送手段及び/又は押圧移送手段に向けて配設しているが、本発明では更に前記高圧蒸気噴出ノズル10の全体を積極的に加熱して高温を維持させることもできる。図19は、その一例を示している。同図によれば、ノズルホルダー11、ノズルプレート支持部材15b及びノズルプレート15aを備えた高圧蒸気噴出ノズル10の全体を収容する加熱ボックス27が使われている。この加熱ボックス27は高圧蒸気噴出ノズル10の全体を収容するとともに、高圧蒸気噴出ノズル10のノズル孔15a”が向けられる側を全面開口させた細長い直方体からなり、その天板部の中央部に熱風導入口27aが形成されている。この熱風導入口27aは外部の熱風供給管路28と接続されている。ファン28aによりフィルター28bを介して導入され、ヒーター28cによって加熱された高温の清浄化された空気が、前記熱風供給管路28を通って加熱ボックス27へと送り込まれて、高圧蒸気噴出ノズル10の全体を熱風により積極的に加熱する。
このように、高圧蒸気噴出ノズル10の全体を加熱することにより、ノズルホルダー11の内部に導入される高圧蒸気や加熱蒸気の温度低下が効果的に防止され、所要温度を維持して高圧蒸気噴出ノズル10から繊維ウェブWに向けて噴出させることができる。その結果、使用蒸気量の低減が実現されると同時に効率的な繊維交絡が実現できるようになるばかりでなく、製造される不織布の形態も安定化し所望の強度と風合いが得られる。
また図示例によれば、加熱ボックス27の繊維ウェブ移送方向の前後壁面27b,27cにあって、その下端部にはシールロール29a,29bの周面が当接されている。このシールロール29a,29bはステンレス製の平滑ロール又は周面に樹脂がコーティングされたロールであり、自由回転ロールであっても、繊維ウェブWの移送速度に同調させて駆動回転させるようにしてもよい。かかるシールロール29a,29bを配することによ
り、加熱ボックス27からの熱風の散逸を防ぐと同時に外気の浸入が防止でき、高圧蒸気噴出ノズル10に対する加熱効率が向上する。
また、この例では更に繊維ウェブWの担持移送体である第1エンドレスベルト30に対向して配されたサクションボックス40の吸引開口部に対応する部分を開口させた外気遮蔽板63を、前記第1エンドレスベルト30とサクションボックス40との間に介装している。この外気遮蔽板63の繊維ウェブ移送方向の前後端部をそれぞれ下方に湾曲させて、繊維ウェブWの通過を円滑に安定するようにしている。このように、第1エンドレスベルト30とサクションボックス40との間に前記外気遮蔽板63を介装することにより、高圧蒸気噴出ノズル10から噴出する高圧蒸気又は加熱蒸気の噴出領域に外気が浸入することを防ぐことができ、噴出された高圧蒸気又は加熱蒸気を、高圧蒸気噴出ノズル10とサクションボックス40との間を通過する繊維ウェブWに外気により邪魔されることなく、効率的に付与することができる。その結果、製造される不織布の表面形態が更に均整化するとともに繊維交絡が緻密化する。
なお本発明にあっては、高圧蒸気噴出ノズル10をその長手方向に微小に往復動させるか、或いは上記第1及び第2エンドレスベルト30,34を繊維ウェブとともに繊維ウェブ移送路を横断する方向へ微小に往復動させることができる。その往復動のための駆動機構は、図示は省略するが、例えば従来から長網抄紙機などの網に横振動を与えるための公知の機構を採用することができる。また往復動(振動)の行程は往復動中心から左右に5mm程度が好ましく、その往復動回数は30〜300回/分の範囲で任意に調整される。このように、高圧蒸気噴出ノズル10を、或いは第1及び第2エンドレスベルト30,34を往復動させると、列状に配された多数のノズル孔から噴出する高圧蒸気又は加熱蒸気が繊維ウェブの表面を幅方向に満遍なく作用するようになり、表面にモアレ状の模様がつくことなく、より均整な繊維交絡と表面形態が得られる。