JP2005255591A - 長鎖アルキル基を有するターチオフェン−フラーレン連結化合物及びその重合体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 フラーレン骨格にメチル基もしくはシアノ基を連結したメチル化フラーレン基もしくはシアノ化フラーレン基を側鎖に連結してなる長鎖アルキル基を有するターチオフェン−フラーレン連結化合物とする。長鎖アルキル基としてはC8H17が利用できる。
【選択図】 なし
Description
フラーレンはダイヤモンドや黒鉛と同様に炭素原子のみからなる一連の炭素化合物であって、60個以上の偶数個の炭素原子が球状に結合して分子集合体を構成した球状炭素Cn(n=60、70、76、78、80、82・・・など)である。中でも特に代表的なものは、炭素数が60のC60と70のC70である。このうちC60フラーレンは正二十面体の頂点を全て切り落として正五角形を出した切頭二十面体と呼ばれる多面体構造を有し、その60個の頂点が全て炭素原子で占められた言わばサッカーボール型の分子構造を有する。
C60フラーレンの結晶はC60分子が面心立方構造に配置され、バンドギャップが約1.6eVであって半導体とみなせる。純粋な状態では約1014Ω/cmの電気抵抗を有する。そして、500℃で約1mTorrの蒸気圧があり、昇華によって薄膜を蒸着することができる。C60フラーレンに限らずフラーレン分子は真空又は減圧下において容易に気化できることから、蒸着膜を形成し易い素材であると言える。
例えば、MEH−PPV( ポリ[2−メトキシ、5−( 2’−エチル−ヘキシロキシ)−パラ−フェニレンビニレン] )や、ポリ(3−オクチルチオフェン)とC60フラーレンの質量比1:1混合物に対する光誘起ESR測定の結果、g値がほぼ2と2よりも小さい2本のESRシグナルが観測されている。g値が2以下のシグナルはC60フラーレン一価アニオンのシグナルであることが確認されており、このことから光照射下で導電性重合体からC60フラーレンへの電子移動が起きていることが示唆されている(例えば、非特許文献1参照。)。
本出願人等は先に有機太陽電池、有機トランジスタ、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機固体電解コンデンサ等の電子デバイス用に有用な導電性重合体として、C60フラーレンを側鎖に有するターチオフェン−フラーレン連結化合物を提案した(例えば、非特許文献3参照。)。
L.Smilowitz ら著 「Physical Review B47」,13385 (1993) N.S.Sariciftciら著 「Appl.Phys.Lett.」, Vol.62, No.6, p.585-p.587, 8 Feb.1993 村田 靖次郎ら著 「第25回フラーレン・ナノチューブ総合シンポジウム予稿」(平成15年7月23日発行)
しかし、ターチオフェン−フラーレン連結化合物の溶媒への溶解性が低いため、電解重合によって十分な膜厚を有するターチオフェン−フラーレン連結化合物による重合体膜を形成することは極めて困難である。すなわち、ターチオフェン−フラーレン連結化合物を溶解した電解液に電極を浸漬して電解重合により電極上に当該連結化合物の重合体を形成しようとした場合、当該連結化合物の濃度が低いため、電極上に拡散してくる当該連結化合物の量が少なく、したがって重合の効率が極めて低いという欠点があった。
そこで本発明は、オルトジクロルベンゼン等の有機溶媒に対する溶解性を向上させたC60フラーレンを側鎖に有するターチオフェン−フラーレン連結化合物を得ることを目的とした。
この重合体は電子デバイス用の導電性重合体として有用である。
従って、適度な溶解性を付与するため、Cが6から12の直鎖アルキル基が好ましいが、直鎖でなくても良く、枝分かれのアルキル基でも溶解性は付与される。特に、C8 H17であるアルキル基が好んで用いられる。
シアノ基を付加することによりフラーレンの電子受容性がさらに高くなり電荷分離が起こりやすくなる。また、最高占有軌道と最低非占有軌道の差が小さくなるため、励起に必要なエネルギーが小さくて済む。従って、長波長の光まで吸収し利用できるようになる。
このような構造の化合物とすることにより、可溶性をさらに向上させるとともに、電荷分離後の正孔と電子の再結合を起こりにくくさせる効果がある。
このような構造の化合物とすることにより、シアノ基の付加でフラーレンの電子受容性がさらに高くなるため、励起に必要なエネルギーが小さくて済む。従って、長波長の光まで吸収し利用できるようになる。また、可溶性をさらに向上させるとともに、電荷分離後の正孔と電子の再結合を起こりにくくさせる効果もある。
本発明の重合体は高いπ共役性を有し、高い導電性を示すとともに、主鎖の電子供与性とフラーレンによる電子受容性により、光による電荷分離が起き易いので、有機太陽電池、有機トランジスタ、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機固体電解コンデンサ等の電子デバイス用に極めて有用である。
先ず中間生成物である化学式(5)に示す3,4-(2,2-ジオクチル-1,3-プロピレンジオキシ)チオフェンの合成方法について説明する。
ナトリウムエトキシド(NaOC2H5)68.0g、1.0molを溶解させた600mLの無水エタノール溶液(C2H5OH)に、化学式(6)に示すマロン酸ジエチル40.0g、0.25molを加え還流させる。この溶液にn−臭化オクチル(n−C8H17 Br)241.0g、1.25molを40分かけて加え、15時間還流させる。放冷後溶媒をエバポレーターで留去し、残渣に氷水を加え、エーテルで抽出する。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を留去し、減圧蒸留(165〜175℃)することにより73.5gの無色液体の化学式(7)に示す2,2-ジオクチルマロン酸ジエチルを得る。
第1工程で得られた2,2-ジオクチルマロン酸ジエチル41.0g、0.11molを120mL無水エーテルに溶解させ、水素化リチウムアルミニウム(LiAlH4 )6.1g、0.16molの無水エーテル懸濁液120mLに滴下する。反応混合物を5時間還流させて放冷した後氷水を加え、さらに20%硫酸水溶液250mLを加えて塩を溶解させる。エーテルで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を留去することにより33.8gの無色液体の化学式(8)に示す2,2-ジオクチル-1,3-プロパンジオールを得る。
ナトリウムメトキシド(NaOMe)35.4g、0.66molを無水メタノール115mLに溶解させ、そこへヨウ化カリウム(KI)198.9mg、酸化銅(CuO)8.6g、0.11mol、化学式(9)で示す3,4-ジブロモチオフェン25.0g、0.10molを加えて3日間還流させ、その後ヨウ化カリウム(KI)204mgを加えてさらに1日間還流させる。放冷後反応混合物に水を加え、エーテルで抽出する。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を留去することにより12.8gの無色液体の化学式(10)で示す3,4-ジメトキシチオフェンが得られる。
この 3,4-(2,2-ジオクチル-1,3-プロピレンジオキシ)チオフェンを出発原料として長鎖アルキル基を有するターチオフェン−フラーレン連結化合物を合成する。
第4工程で得られた化学式(5)で示す 3,4-(2,2-ジオクチル-1,3-プロピレンジオキシ)チオフェンをテトラヒドロフラン(THF)に溶かし、そこにノルマルブチルリチウム(n−BuLi)のヘキサン溶液を滴下して撹拌後、トリメチルティンクロライド(Me3 SnCl)を加えたTHF溶液を加えて撹拌する。得られた溶液を分離精製して、化学式(11)に示すようにチオフェン環の一部をスズ化する。
次に、得られた材料をTHFに溶解して、それに化学式(12)に示した2,3,5-トリブロモチオフェンとジベンジリデンアセトンパラジウム(Pd2dba3)とトリ(2−フリル)フォスフィン(( 2-furyl)3P)を加えて撹拌し、得られた溶液を精製して化学式(13)に示すようなブロモ化したターチオフェンを抽出する。
次に、得られたブロモ化したターチオフェンをピペリジンに溶かして、トリメチルシリルアセチレンとテトラキストリフェニルフォスフィンパラジウムとヨウ化銅(CuI)を加えて還流する。
得られた溶液を精製して化学式(14)に示すようなブロモがトリメチルシリル(TMS)に置換したターチオフェンを抽出する。
次に、テトラノルマルブチルアンモニウムフロライド((n−Bu)4 NF))のTHF溶液に、先に得られたTMSが付加したチオフェンを加えて、化学式(15)に示すようなトリメチルシリル基が水素に変わったものを抽出する。
さらに、得られたものをTHFに溶かして、それにノルマルブチルリチウム(n−BuLi)0.1mLを加える。
一方、フラーレンC60をオルトジクロルベンゼン(ODCB)に加えて溶解し、それと先のリチオ化したアセチレンを溶解させたTHFとを混合して、撹拌後ヨウ化メチルを加えて、さらに撹拌して化学式(16)に示すような長鎖アルキル基を有しメチル基を付加したターチオフェン−フラーレン連結化合物の単量体を得る。
第5工程までは先に記載した工程と全く同様である。
次に、第5工程で得られた材料をTHFに溶解して、それに化学式(12)に示したようなトリブロモチオフェンに替えて、化学式(18)に示す2個のブロモと1個のブロモベンチル基で置換されたチオフェンとジベンジリデンアセトンパラジウム(Pd2dba3)とトリ2−フリルフォスフィン(( 2-furyl)3P)を加えて撹拌し、得られた溶液を精製して化学式(19)に示すようなC5 アルキル基結合を介してブロモ化したチオフェンを抽出する。
次に、得られたターチオフェンをTHFとヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)の2:1の溶液に溶かして、トリメチルシリルエチニルリチウムを加えて還流する。 得られた溶液を精製してC5 アルキル基結合とアセチレン結合を介してトリメチルシリル(TMS)が付加したチオフェンを抽出する。
(第8’工程)
次に、テトラノルマルブチルアンモニウムフロライド((n−Bu)4 NF))のTHF溶液に、先に得られたTMSが付加したチオフェンを加えて、化学式(20)に示すようなトリメチルシリル基が水素に変わったものを抽出する。
さらに、得られたものをTHFに溶かして、それにノルマルブチルリチウム(n−BuLi)を加える。
一方、フラーレンC60をオルトジクロルベンゼン(ODCB)に加えて溶解し、それと先のリチウムアセチリドを溶解させたTHFとを混合して、撹拌後ヨウ化メチルを加えて、さらに撹拌して化学式(21)に示すような長鎖アルキル基を有しメチル基を付加したターチオフェン−フラーレン連結化合物の単量体を得る。
3,4-(2,2-ジオクチル-1,3-プロピレンジオキシ)チオフェン2.5gをテトラヒドロフラン(THF)10mLに溶かして50mLの2口フラスコに入れ、そこに1.47mol/Lのノルマルブチルリチウム(n−BuLi)のヘキサン溶液4.4mLを滴下して1時間撹拌後、トリメチルティンクロライド(Me3 SnCl)を1mol/L加えたTHF溶液を6.8mL加えて16時間撹拌した。
得られた溶液を分離してシリカゲルカラムとゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を通して精製して、チオフェン環の一部をスズ化した材料を得た。
得られた溶液をシリカゲルカラムとGPCを通して精製し、ブロモがトリメチルシリル(TMS)アセチレンに置換したチオフェンを抽出した。
一方、44mgのC60フラーレンを5mLのオルトジクロルベンゼン(ODCB)に加えて溶解し、それと先のリチウムアセチリドを溶解させたTHFとを混合して、室温で40分間撹拌後1mLのヨウ化メチルを加えて、さらに3時間撹拌して長鎖アルキル基を有しメチル基を付加したターチオフェン−フラーレン連結化合物を得た。
図2において、33.86(δ/ppm)のピークはメチル基のCに伴うピークである。130〜160(δ/ppm)に現れたピークはフラーレンに伴うピーク、15.23(δ/ppm)のピークはオクチルの末端のメチル基に伴うピークである。60.71,62.15(δ/ppm)のピークはメチル基ならびにエチニル基が付加したフラーレンのCに伴うピークである。82.46,92.88(δ/ppm)のピークはアセチレンのピークである。
図3において、1598,1599(m/z)にピークが現れている。
図4において、2330(cm−1)にアセチレンの吸収ピークが現れている。
図5において、100倍に拡大した曲線を見ると636と702(nm)にピークが現れている。
これらの測定結果から、得られた化合物はターチオフェンの真ん中のチオフェンにアセチレン結合を介して側鎖にメチル基を有するフラーレンが結合し、さらに両端のチオフェンにはプロピレンジオキシ構造にCH2C(C8H17 )2CH2 なる長鎖アルキル基を付加したターチオフェン−フラーレン連結化合物であると同定することができた。
電解重合を試みるために、CVで掃引を繰り返したが電流量の増加は認められなかった。電極上で電解重合は起こるものの、生成した重合体はODCBに対する高い溶解度のため電極上に析出することなく、溶解しているものと考えられる。
そこで、ターチオフェン−フラーレン連結化合物のFe(ClO4)3による酸化重合を塩化メチレン中で行い、その後、Na2S2O4 による脱ドープを行うことによって初めて赤紫色の固体を得た。
具体的には、ターチオフェン−フラーレン連結化合物(16)の100mgに対して、Fe(ClO4)3を2mol 倍量加え、塩化メチレン中で50℃で15時間加熱し化学酸化した。そして、Na2S2O4 による脱ドープを行い赤紫色の固体を得た。
この赤紫色の固体をMALDI−TOF MSによって分析したところ、図13に示すように、12量体までのオリゴマーが生成していることが分かった。このオリゴマーを用いてさらに成膜することも可能であった。
上記実施例1において、44mgのフラーレンC60を5mLのオルトジクロルベンゼン(ODCB)に加えて溶解し、それとアセチレン基を付加したチオフェンを溶解させたTHFとを混合して、室温で40分間撹拌後、1mLのヨウ化メチルを加えるのに替えて、70mLのパラトルエンスルフォニルシアニド(TsCN)を加え、さらに室温で3時間撹拌して長鎖アルキル基を有しシアノ基を付加したターチオフェン−フラーレン連結化合物を得た。
図8において、メチル基の33.86(δ/ppm)のピークに替えて、117.29にはシアノ基のCに伴うピークが認められる。
図9において、1608,1610(m/z)にピークが現れている。
図10において、アセチレンの2330(cm−1)の吸収ピークに加えて、2220(cm−1)の吸収ピークが現れている。
図11において、100倍に拡大した曲線を見ると692(nm)にピークが現れている。
これらの測定結果から、得られた化合物はターチオフェンの真ん中のチオフェンにアセチレン結合を介して側鎖にシアノ基を有するフラーレンが結合し、さらに両端のチオフェンにはプロピレンジオキシ構造にジオクチル基を付加したターチオフェン−フラーレン連結化合物であると同定することができた。
電解重合を試みるために、CVで掃引を繰り返したが電流量の増加は認められなかった。電極上で電解重合は起こるものの、生成した重合体はODCBに対する高い溶解度のため電極上に析出することなく、溶解しているものと考えられる。
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